説明

車両のサイドドア

【課題】 車両のサイドドアとして、横開き式フロントドア及びガルウイング式リヤドアをそなえていても、センターピラーの必要性をなくすようにする。
【解決手段】 車両1のサイドドアが横開き式フロントドア2及びガルウイング式リヤドア3により構成され、リヤドア3を略上下へ開閉自在にルーフ6の端縁へ取り付けているヒンジ7の中心軸が、車両後方に車両中心側へ傾斜しており、ルーフ6の端縁及びサイドシル10にそれぞれ固定されたストライカ11と、フロントドア2の上下にそれぞれ取り付けられたラッチ12とがそれぞれ係合すると共に、サイドシル10の後部に固定されたストライカ13と、リヤドア3の下端に取り付けられたラッチ14とが係合するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドドアが、横開き式フロントドア及びガルウイング式リヤドアにより構成されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサイドドアとして、フロントドアを横開き式にすると共に、リヤドアをガルウイング式にした場合には、閉じられたフロントドアの上端部がルーフ側の車両中心線方向へ湾曲していると、フロントドアの上端部はフロントドアのヒンジ部よりも車両中心線寄りに位置することとなるので、フロントドアが側方へ開かれるときには、フロントドア後端縁の回転軌跡がフロントドアの全閉時より車両後方へはみ出すことは避けられない。
従って、従来は、フロントドア及びリヤドアを同時に開くことができるようにするためには、フロントドア及びリヤドアを隣接配置することなく、両ドア間にセンターピラーを設置して、両ドアの干渉を避ける必要があると考えられていた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−178761号公報
【0004】
しかしながら、フロントドア及びリヤドア間にセンターピラーを設置するということは、車両の前後長さがそれだけ大きくなるか、あるいは、車両の前後長さを小さくするためには、両前後方向における各ドアの幅を短くせざるをえないので、乗降性や荷物の出し入れ性が損なわれるといった問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両のサイドドアとして、横開き式フロントドア及びガルウイング式リヤドアをそなえていても、センターピラーの必要性をなくそうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明にかかる車両のサイドドアは、車両前後方向に隣接配置された横開き式フロントドア及びガルウイング式リヤドアをそなえ、上記リヤドアのヒンジがルーフ端縁に取り付けられて、上記リヤドアの回転軸が車両後方に車両中心線側へ傾斜し、閉じられた上記両ドアの相対向する端縁間にウエザーストリップが配置されている。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、横開き式フロントドア及びガルウイング式リヤドアが車両前後方向に隣接配置されていても、リヤドアのヒンジがルーフ端縁に取り付けられて、リヤドアの回転軸が車両後方に車両中心線側へ傾斜しており、従って、開かれたリヤドアは閉じられているときよりも車両後方へ変位することとなるため、フロントドア及びリヤドアが同時に開かれる場合であっても、両ドアの端縁が干渉することを容易に避けることができるので、両ドア間に必ずしもピラーを設ける必要性はなくなり、両ドアの開放により車両側面の開口を大きく形成させることができて、乗降性や荷物の出し入れ性を容易に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
【実施例】
【0009】
以下、図面に示す本発明の各実施例について、同等部分にはそれぞれ同一符号を付けて説明する。
図1〜図4において、車両1のサイドドアは、車両前後方向に隣接配置された横開き式フロントドア2及びガルウイング式リヤドア3により構成され、フロントドア2はフロントピラー4に設けられた上下方向のヒンジ5により車両側方へ開閉自在に取り付けられている一方、リヤドア3はルーフ6の端縁に設けられたヒンジ7により略上下へ開閉自在に取り付けられているが、ヒンジ7の中心軸は車両後方に車両中心線側へ傾斜しているため、ヒンジ7によるリヤドア3の回転軸が車両後方に車両中心線側へ傾斜していることとなる。
【0010】
また、各図の実線で示されているように、フロントドア2及びリヤドア3が閉じられているとき、リヤドア3の車両前方側端縁3´がフロントドア2の車両後方側端縁2´よりも車両中心線側に位置し、フロントドア車両後方側端縁2´の車両中心線側に配置されたウエザーストリップ8と、リヤドア車両前方側端縁3´の車両中心線と反対側に配置されたウエザーストリップ9とが、それぞれフロントドア車両後方側端縁2´及びリヤドア車両前方側端縁3´に圧接して、両ドア2、3間をシールしている。
【0011】
さらに、ルーフ6の端縁及びサイドシル10にそれぞれストライカ11が固定されて、フロントドア2の上下端にそれぞれ取り付けられたラッチ12がそれぞれストライカ11と係合することにより、フロントドア2の閉じ切りが確保されていると共に、サイドシル10の後部にストライカ13が固定され、リヤドア3の下端に取り付けられたラッチ14がストライカ13と係合することにより、リヤドア3の閉じ切りが確保されている。
なお、15はリヤドア3の開放を助けるために使用された周知のガススプリングである。
【0012】
車両1においては、フロントドア2及びリヤドア3が全閉されている実線の状態から、図中に2点鎖線で示されているように、フロントドア2及びリヤドア3のいずれか一方を個々にそれぞれヒンジ5またはヒンジ7により車両側方または上方へ開くことができ、かつ、フロントドア2の閉じ操作は従来と同様に簡単であると共に、リヤドア3が閉じられるときリヤドア3の車両前方側端縁3´がフロントドア2の車両後方側端縁2´よりも車両中心線側に位置していても、ヒンジ7によるリヤドア3の回転軸が車両後方に車両中心線側へ傾斜しているため、リヤドア3が閉じられようとする場合には、リヤドア3は車両後方側から車両前方へ変位することとなるので、両ドア端縁2´、3´が干渉することなくリヤドア3を容易に閉じることができるようになる。
【0013】
また、フロントドア2及びリヤドア3を同時に開閉する場合、閉じられたフロントドア2の上端部がヒンジ5よりも車両中心線寄りに位置していて、フロントドア2が側方へ開かれるときには、フロントドア車両後方側端縁2´上端部の回転軌跡がフロントドア2の全閉時より車両後方へ少々はみ出すこととなっても、ヒンジ7によるリヤドア3の回転軸が車両後方に車両中心線側へ傾斜していて、リヤドア3の開放時にリヤドア3は車両後方側へ変位していることとなるので、フロントドア2の端縁2´及びリヤドア3の端縁3´が干渉することを容易に回避させることができる。
【0014】
従って、従来のようにフロントドア及びリヤドア間にセンターピラーを設置する必要性はなくなるので、センターピラー設置に要するコストを軽減できると同時に、フロントドア2及びリヤドア3を開いたとき、車両側面に大きな開口を形成させることができて、乗降性や荷物の出し入れ性を容易に向上させることができる大きな長所がある。
【0015】
さらに、フロントドア2及びリヤドア3が閉じられたとき、フロントドア車両後方側端縁2´の車両中心線側に配置されたウエザーストリップ8と、リヤドア車両前方側端縁3´の車両中心線と反対側に配置されたウエザーストリップ9とが、それぞれフロントドア車両後方側端縁2´及びリヤドア車両前方側端縁3´に圧接することにより、両ドア端縁2´、3´間を確実にシールすることができ、この面からもセンターピラーの必要性を解消させることが可能となる。
【0016】
しかも、ルーフ6端縁及びサイドシル10のストライカ11と、それらに係合するフロントドア2上下端のラッチ12とにより、閉じられたフロントドア2による車体の上下剛性を確保できると同時に、サイドシル10後部のストライカ13とそれに係合するリヤドア3下端のラッチ14とにより、閉じられたリヤドア3による車体の上下剛性を確保できる利点がある。
【0017】
図5に示す実施例では、サイドシル10の車両後方側にサイドパネル20が設置され、サイドパネル20の車両前面側にストライカ21が固定されて、フロントドア2の車両後面側に取り付けられたラッチ22がストライカ21と係合することにより、フロントドア2の閉じ切りが確保されていると共に、サイドパネル20の上面にストライカ23が固定され、リヤドア3の下端に取り付けられたラッチ24がストライカ23と係合することにより、リヤドア3の閉じ切りが確保されており、他の部分は上記実施例ととくに変わるところがない。
【0018】
この場合、フロントドア2に対するストライカ21及びラッチ22が各1個ですむため、コスト軽減を容易に図ることができる一方、リヤドア3のラッチ24に対するストライカ23がサイドパネル20の上面に固定されているので、リヤドア3が設けられているにもかかわらず、リヤホイールハウス30を車両前方へ寄せることによりホイールベースを短縮化できるので、車両の小型化を容易に実現することが可能となる特色がある。
【0019】
また、リヤホイールハウス30が車両前方へ寄せられて、リヤドア3より下方に車両側方の開口がえられなくても、リヤドア3を上方へ開くことにより、後席乗降時における乗員頭部付近のスペースを確保できるので、乗降性の低下を抑制することができて便利であり、さらに、上記実施例と同様な作用効果を発揮することができるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例における概略側面図。
【図2】上記実施例の概略前面図。
【図3】上記実施例の概略上面図。
【図4】図1のIV−IV横断面拡大図。
【図5】本発明の他の実施例における概略側面図。
【符号の説明】
【0021】
2 フロントドア
3 リヤドア
7 ヒンジ
8、9 ウエザーストリップ
10 サイドシル
11 ストライカ
12 ラッチ
13 ストライカ
14 ラッチ
20 サイドパネル
21 ストライカ
22 ラッチ
23 ストライカ
24 ラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に隣接配置された横開き式フロントドア及びガルウイング式リヤドアをそなえ、上記リヤドアのヒンジがルーフ端縁に取り付けられて、上記リヤドアの回転軸が車両後方に車両中心線側へ傾斜し、閉じられた上記両ドアの相対向する端縁間にウエザーストリップが配置された車両のサイドドア。
【請求項2】
請求項1において、上記両ドアが閉じられたとき、上記リヤドアの車両前方側端縁が上記フロントドアの車両後方側端縁よりも車両中心線側に位置し、上記ウエザーストリップが上記フロントドア車両後方側端縁の車両中心線側に配置されたウエザーストリップと、上記リヤドア車両前方側端縁の車両中心線と反対側に配置されたウエザーストリップとからなる車両のサイドドア。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、上記リヤドアの下端に取り付けられたラッチが、サイドシルに固定されたストライカと係合するように構成された車両のサイドドア。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、上記リヤドアの下端に取り付けられたラッチが、サイドシルの車両後方側に配置されたサイドパネルに固定のストライカと係合するように構成された車両のサイドドア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−88730(P2006−88730A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273141(P2004−273141)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】