説明

車両のシート装置

【課題】シート上に着座者を拘束するシートベルトの拘束性能を、より向上させる。
【解決手段】車両のシート装置は、左右サイドフレーム23,24を有するシート12のシートクッションフレーム18と、サイドフレーム23,24の前、後部に架設される前、後クロスバー25,26と、ロック状態のシートベルト51に生じる引張応力の増加を抑制するよう作動するフォースリミッタ66とを備える。前クロスバー25が備える前メンバ35よりも後メンバ36を低位置、かつ、低剛性とする。前突時に前方移動する着座者4の腰部が後メンバ36に衝突したとき、後メンバ36が腰部の前上がり状の回転動作Aを抑制するようにする。更に腰部が前メンバ35に衝突したとき、前メンバ35が腰部のそれ以上の前方移動を抑制するようにし、かつ、腰部が前メンバ35に衝突し始めるのと同時、もしくはその手前でフォースリミッタ66が作動し始めるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート上に着座者を拘束するシートベルトと、車両の前突時に、着座者からの外力により上記シートベルトに生じる引張応力の増加を抑制するよう作動するフォースリミッタとを備えた車両のシート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両のシート装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両のシート装置は、シートと、このシート上に着座者を拘束可能とするシートベルト装置とを備えている。上記シートのシートクッションフレームは、車体の前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、車体の幅方向に延び、上記左右サイドフレームの前、後部に架設される前、後クロスバーとを備えている。一方、上記シートベルト装置は、上記シート上の着座者の前面を横切るよう設けられ、その一端部側が上記サイドフレーム側に連結されるシートベルトと、このシートベルトの他端部側を巻き取り可能とする一方、前突時に着座者から上記シートベルトに与えられる外力により、このシートベルトが巻き戻されるとき、この巻き戻しがロック可能とされるリトラクタとを備えている。
【0003】
車両の前進走行時に、この車両が前方の何らかの物体に衝突(前突)した場合には、シート上の着座者はこの着座者に生じていた慣性力により前方移動しようとする。ここで、この着座者の前方移動が過大になるとすると、この着座者は、上記シートの前方に配設されたステアリングハンドルに衝突するなど、不都合を生じるおそれがあり、これは着座者の保護上、好ましくない。
【0004】
そこで、上記従来の技術によれば、前突時に着座者が大きく前方移動したときには、この着座者の腰部が上記前クロスバーに衝突して、この前クロスバーが塑性変形することとされている。これによれば、着座者のそれ以上の前方移動が防止されると共に、この前方移動が防止される際に着座者が上記シートから受ける負担が軽くて済むこととされている。
【0005】
一方、車両のシート装置には、従来、下記特許文献2に示されるものもある。この公報のものによれば、前記特許文献1の構成に加えて、上記シートベルト装置は、前突時にガス圧力により上記リトラクタにシートベルトを巻き取らせるプリテンショナと、上記リトラクタから巻き戻されるシートベルトをロックするロック機構と、このロック機構によるシートベルトのロック状態で、上記外力によりシートベルトに生じる引張応力が所定値に達したとき、この引張応力の増加を抑制するよう作動するフォースリミッタとを備えている。
【0006】
そして、前突時には、まず、上記プリテンショナのガス発生器によって発生したガス圧力により、上記リトラクタにシートベルトの他端部側が巻き取られる。これにより、シートベルトに生じていた遊びである弛みが除去され、このシートベルトにより、その後に着座者を拘束するための準備が整えられる。
【0007】
次に、着座者がその慣性力により前方移動し始めると、この着座者からの外力により、上記シートベルトの他端部側は上記リトラクタから巻き戻され始める。この際、前突を検出した加速度センサーなどのセンサーからの前突検出信号に基づき、上記リトラクタから巻き戻され始めるシートベルトが上記ロック機構により直ちにロックされて、この巻き戻しが阻止される。
【0008】
そして、上記シートベルトのロック状態から、更に上記着座者が前方移動すると、この着座者から上記シートベルトに対しより大きい外力が与えられ、これに伴い、上記シートベルトに生じる引張応力は漸増しようとする。しかし、この引張応力が所定値に達すれば、上記フォースリミッタが作動し、上記引張応力の増加が抑制される。つまり、前突時には、着座者は前方移動してシートベルトに外力を与える一方、このシートベルトからの反力である拘束力を与えられるが、この拘束力による着座者の負担は、上記フォースリミッタの作動により緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−193040号公報
【特許文献2】特開2005−349983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前突時に着座者が前方移動し始めるとき、通常、この着座者の腰部は前上がり状に回転動作しがちとなる。そして、この場合には、着座者の胸部の前面は前下がり状となるため、この胸部の前面に当接しているシートベルトの部分がせり上がるよう移動し、このシートベルトの拘束性能が低下するおそれを生じて、好ましくない。
【0011】
また、上記したように着座者が前方移動するとき、腰部が上記前クロスバーに達するまでに、上記シートベルトの引張応力が前記所定値となるまで上昇して、上記フォースリミッタが作動し始めたとすると、前記した着座者の腰部の前上がり状の回転動作が助長されることとなり、これは、上記シートベルトの拘束性能を更に低下させるおそれがある。
【0012】
一方、上記着座者の前方移動により腰部が上記前クロスバーに達してそれ以上の前方移動が抑制されつつあるとき、着座者からの外力による上記シートベルトの引張応力が、未だ前記所定値には達しておらず、つまり、上記フォースリミッタが作動していないとすると、上記外力によるシートベルトの巻き戻しが継続されて、着座者の胸部は更に前方移動する。よって、この場合には、シートベルトの拘束性能が不十分であることから、着座者の上体が前のめり状となって、この着座者の負担が過大になるおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、シート上に着座者を拘束するシートベルトの拘束性能を、より向上させるようにすることである。
【0014】
請求項1の発明は、左右一対のサイドフレーム23,24を有するシート12のシートクッションフレーム18と、上記左右サイドフレーム23,24の前、後部に架設される前、後クロスバー25,26と、上記シート12上の着座者4の前面を横切るよう設けられ、その一端部側が上記サイドフレーム23,24側に連結されるシートベルト51と、このシートベルト51の他端部側を巻き取り可能とする一方、前突時に着座者4から上記シートベルト51に与えられる外力により、このシートベルト51を巻き戻し可能とするリトラクタ57と、このリトラクタ57から巻き戻されるシートベルト51をロックするロック機構65と、このロック機構65によるシートベルト51のロック状態で、上記外力によりシートベルト51に生じる引張応力が所定値に達したとき、この引張応力の増加を抑制するよう作動するフォースリミッタ66とを備えた車両のシート装置において、
上記前クロスバー25が前後に離れて配置される前、後メンバ35,36を備え、前メンバ35よりも後メンバ36を低位置、かつ、低剛性とし、前突時に前方移動する着座者4の腰部が上記後メンバ36に衝突したとき、この後メンバ36が上記腰部の前上がり状の回転動作Aを抑制するようにし、更に上記腰部が前方移動して上記前メンバ35に衝突したとき、この前メンバ35が上記腰部のそれ以上の前方移動を抑制するようにし、かつ、上記腰部が上記前メンバ35に衝突し始めるのと同時、もしくはその手前で上記フォースリミッタ66が作動し始めるようにしたことを特徴とする車両のシート装置である。
【0015】
請求項2の発明は、車体2の幅方向に延び、その長手方向の一端部が上記左右サイドフレーム23,24のうちのいずれか一方のサイドフレーム24の前部に固着され、他端部が自由端とされるトーションバー39と、このトーションバー39の前上方に配置されてこのトーションバー39に沿って延び、このトーションバー39の他端部側に固着されるリンクバー40と、上記後クロスバー26とリンクバー40とに張設されるネットシート20とを備え、上記トーションバー39とリンクバー40とのうち、少なくともいずれか一方のバー39,40を上記前メンバ35としたことを特徴とする請求項1に記載の車両のシート装置である。
【0016】
請求項3の発明は、上記左右サイドフレーム23,24の後部に上記シートベルト51の一端部を固着し、上記サイドフレーム23,24の前部における上部が上記後メンバ36の端部を支持し、上記サイドフレーム23,24の前部における上、下部の間に脆弱部32を形成したことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の車両のシート装置である。
【0017】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明による効果は、次の如くである。
【0019】
請求項1の発明は、左右一対のサイドフレームを有するシートのシートクッションフレームと、上記左右サイドフレームの前、後部に架設される前、後クロスバーと、上記シート上の着座者の前面を横切るよう設けられ、その一端部側が上記サイドフレーム側に連結されるシートベルトと、このシートベルトの他端部側を巻き取り可能とする一方、前突時に着座者から上記シートベルトに与えられる外力により、このシートベルトを巻き戻し可能とするリトラクタと、このリトラクタから巻き戻されるシートベルトをロックするロック機構と、このロック機構によるシートベルトのロック状態で、上記外力によりシートベルトに生じる引張応力が所定値に達したとき、この引張応力の増加を抑制するよう作動するフォースリミッタとを備えた車両のシート装置において、
上記前クロスバーが前後に離れて配置される前、後メンバを備え、前メンバよりも後メンバを低位置、かつ、低剛性とし、前突時に前方移動する着座者の腰部が上記後メンバに衝突したとき、この後メンバが上記腰部の前上がり状の回転動作を抑制するようにし、更に上記腰部が前方移動して上記前メンバに衝突したとき、この前メンバが上記腰部のそれ以上の前方移動を抑制するようにし、かつ、上記腰部が上記前メンバに衝突し始めるのと同時、もしくはその手前で上記フォースリミッタが作動し始めるようにしている。
【0020】
このため、車両の前突時に、着座者がその慣性力で前方移動して腰部が上記後メンバに衝突したとき、この後メンバにより着座者の腰部の前上がり状の回転動作は抑制されるが、上記したように前メンバよりも後メンバを低位置としたため、この後メンバに衝突するときの腰部のうち、より低部位が後メンバに衝突する。よって、着座者の腰部の前上がり状の回転動作が、より確実に抑制される。
【0021】
しかも、上記したように、前メンバよりも後メンバを低剛性としたため、この後メンバに着座者の腰部が衝突すると、この後メンバはその長手方向の中途部が下方に向かって容易に屈曲しようとする。そして、この後メンバの下方への屈曲により、この後メンバから腰部への反力は、この腰部の、より低部位に与えられるため、この腰部の前上がり状の回転動作は更に確実に抑制される。
【0022】
そして、上記したように前突時に前方移動する着座者の腰部の前上がり状の回転動作がより確実に抑制される分、この着座者の胸部の前面が前下がり状になることがより確実に防止されることから、特に、この胸部に対するシートベルトの拘束性能の向上が達成される。しかも、上記後メンバの屈曲により、この後メンバへの腰部の衝突時の衝撃力が効果的に緩和される。
【0023】
また、上記したように、腰部が前メンバに衝突し始めるのと同時、もしくはその手前で上記フォースリミッタが作動し始めるようにしているため、前突時に着座者が前方移動して腰部が上記したように後メンバに衝突した後には、上記シートベルトに対するフォースリミッタの作動開始により、上記胸部が上記シートベルトから反力を与えられて、着座者の上体が前のめり状になることが防止される。よって、上記後メンバへの衝突後に上体が前のめりに状になることによる着座者の負担の発生が防止されて、上記シートベルトの拘束性能の向上がより確実に向上する。
【0024】
請求項2の発明は、車体の幅方向に延び、その長手方向の一端部が上記左右サイドフレームのうちのいずれか一方のサイドフレームの前部に固着され、他端部が自由端とされるトーションバーと、このトーションバーの前上方に配置されてこのトーションバーに沿って延び、このトーションバーの他端部側に固着されるリンクバーと、上記後クロスバーとリンクバーとに張設されるネットシートとを備え、上記トーションバーとリンクバーとのうち、少なくともいずれか一方のバーを上記前メンバとしている。
【0025】
このため、上記したように、トーションバーにより弾性的に付勢されたリンクバーによってネットシートが張設されるようにしたシートにおいて、前突時に前方移動する着座者の腰部が衝突してそれ以上の前方移動を抑制する前メンバとして、上記トーションバーやリンクバーが利用されたことから、この利用の分、前記したシートベルトの拘束性能の向上は簡単な構成によって達成される。
【0026】
ここで、上記前メンバとしてトーションバーを用いた場合、このトーションバーは、その機能上、剛性が大きいものであり、このため、前方移動する着座者の腰部が上記トーションバーに衝突したとき、このトーションバーにより、それ以上の着座者の腰部の前方移動は、より確実に防止される。一方、上記前メンバとしてリンクバーを用いた場合、このリンクバーは、上記トーションバーよりも上方に位置しているため、前方移動する着座者の腰部は上記リンクバーに対し、より確実に衝突する。よって、この点でも、上記着座者の腰部のそれ以上の前方移動は、より確実に防止される。
【0027】
請求項3の発明は、上記左右サイドフレームの後部に上記シートベルトの一端部を固着し、上記サイドフレームの前部における上部が上記後メンバの端部を支持し、上記サイドフレームの前部における上、下部の間に脆弱部を形成している。
【0028】
このため、前記したように前突時に前方移動した着座者の腰部が上記後メンバに衝突したとき、上記腰部からの外力は上記後メンバを介しこの後メンバを支持している上記各サイドフレームの前上部に与えられる。すると、上記各脆弱部に応力集中が生じて、上記後メンバの各端部を支持している上記各サイドフレームの前上部がシートの幅方向内方側に向かって容易に内倒れするよう上記各脆弱部が屈曲させられる。
【0029】
よって、上記各サイドフレームの前上部が容易に内倒れすることにより、この前上部に支持されている上記後メンバの下方への屈曲が助長される。そして、この後メンバの下方への屈曲により、この後メンバから腰部への反力は、この腰部の、より低部位に与えられるため、この腰部の前上がり状の回転動作は更に確実に抑制され、しかも、後メンバへの腰部の衝突時の衝撃力が効果的に緩和される。
【0030】
そして、上記したように前突時に前方移動する着座者の腰部の前上がり状の回転動作がより確実に抑制される分、この着座者の胸部が前下がり状になることが防止されることから、特に、この胸部に対するシートベルトの拘束性能の向上がより確実に達成される。
【0031】
また、上記したように前方移動する着座者の腰部が後メンバに衝突したとき、上記各サイドフレームの脆弱部を屈曲させて、その前上部を内倒れさせるようにしたため、前突時の着座者の腰部からの外力により、上記各サイドフレームの全体が変形することは防止される。
【0032】
よって、第1に、上記各サイドフレームの全体的な変形により、上記後メンバが過大に下方に向かって屈曲することが防止されて、前突時に前方移動する着座者の腰部が過大に沈み込むことが防止される。また、第2に、上記各サイドフレームにおいて、その後部に一端部側が連結されているシートベルトは、前突時の着座者の外力に基づく上記各サイドフレームの前上部の内倒れ変形には影響されないため、この点でも、上記シートベルトの拘束性能の向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】側面図である。
【図2】斜視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視部分断面図である。
【図4】図3のIV部拡大断面図である。
【図5】図1のV−V線矢視断面図である。
【図6】図1のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】図1のVII−VII線矢視断面図である。
【図8】シートベルトの引張応力およびシートからの反力を経時的に示した図である。
【図9】車両を図式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の車両のシート装置に関し、シート上に着座者を拘束するシートベルトの拘束性能を、より向上させるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0035】
即ち、車両のシート装置は、シートと、このシート上に着座者を拘束可能とするシートベルト装置とを備えている。
【0036】
上記シートのシートクッションフレームは、車体の前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、車体の幅方向に延び、上記左右サイドフレームの前、後部に架設される前、後クロスバーとを備えている。一方、上記シートベルト装置は、上記シート上の着座者の前面を横切るよう設けられ、その一端部側が上記サイドフレーム側に連結されるシートベルトと、このシートベルトの他端部側を巻き取り可能とする一方、前突時に着座者から上記シートベルトに与えられる外力により、このシートベルトを巻き戻し可能とするリトラクタと、このリトラクタから巻き戻されるシートベルトをロックするロック機構と、このロック機構によるシートベルトのロック状態で、上記外力によりシートベルトに生じる引張応力が所定値に達したとき、この引張応力の増加を抑制するよう作動するフォースリミッタとを備えている。
【0037】
上記前クロスバーは前後に離れて配置される前、後メンバを備えている。そして、上記前メンバよりも後メンバは低位置、かつ、低剛性とされている。前突時に前方移動する着座者の腰部が上記後メンバに衝突したとき、この後メンバが上記腰部の前上がり状の回転動作を抑制するようにし、更に上記腰部が前方移動して上記前メンバに衝突したとき、この前メンバが上記腰部のそれ以上の前方移動を抑制するようにしている。また、上記腰部が上記前メンバに衝突し始めるのと同時、もしくはその手前で上記フォースリミッタが作動し始めるようにしている。
【実施例】
【0038】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0039】
図1〜7において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、車両1の前方に向かってのこの車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0040】
上記車体2の内部が車室3とされる。この車室3には、着座者4が車体2の前方に向かって着座可能なシート装置5と、このシート装置5の前方に配置されるステアリングハンドル6と、このハンドル6に取り付けられるエアバッグ装置7とが設けられている。上記シート装置5は、上記車室3の下面を形成するフロアパネル10上にシートレール11を介し設置されるシート12と、このシート12上に着座者4を拘束可能とする三点式のシートベルト装置13とを備えている。
【0041】
上記シート12は、上記フロアパネル10上にシートレール11を介して支持されるシートクッション16と、このシートクッション16の後端部から上方に突設されるシートバック17とを備えている。上記シートクッション16は、その骨格部材を構成し、上記シートレール11を介しフロアパネル10上に支持されるシートクッションフレーム18と、このシートクッションフレーム18をその上方から覆ってこのシートクッションフレーム18に取り付けられるクッション部材19とを備え、このクッション部材19は具体的にはネットシート20とされている。
【0042】
上記シートクッションフレーム18は、車体2の幅方向に離れて配置され、それぞれ車体2の前後方向に延びる左右サイドフレーム23,24と、車体2の幅方向に延び、上記左右サイドフレーム23,24の前、後部に架設される前、後クロスバー25,26とを備えている。
【0043】
上記各サイドフレーム23,24は、板金製で、それぞれ車体2の幅方向で対面する内、外側パネル28,29を備え、これら両パネル28,29の外縁部は、詳図しないが、ヘム加工やスポット溶接により互いに結合されており、上記各サイドフレーム23,24は全体的に剛性の大きい閉断面構造とされている。
【0044】
上記各サイドフレーム23,24の前部における上部では、それぞれ内、外側パネル28,29同士が互いに重ね合わされて、強度と剛性の大きい重ね合わせ部30が形成されている。また、上記各サイドフレーム23,24の前部における下部では、それぞれ内、外側パネル28,29に上下方向に延びる前後複数(2本)のビード31が形成されている。これら各ビード31は、上記各サイドフレーム23,24の内部側に向かって上記内、外側パネル28,29の各部分をそれぞれ膨出させることにより形成されている。上記各ビード31の外面同士は互いに当接させられて、上下複数(3つ)のスポット溶接Sにより互いに結合されている。そして、これら各ビード31により、上記各サイドフレーム23,24の前下部が強固に補強されている。
【0045】
上記重ね合わせ部30の下端縁は前下がり状に直線的に傾斜している。一方、上記各ビード31の上端部は上記重ね合わせ部30の下端縁部の下方近傍で、この下端縁に沿うよう前下がり状に直線的に配置されている。これにより、上記各サイドフレーム23,24の前部における上、下部の間には、外力により応力集中が生じ易い脆弱部32が形成され、この脆弱部32は、上記各サイドフレーム23,24の上縁部から前縁部にまで直線的に延びている。
【0046】
上記前クロスバー25は、前後に離れて配置される前、後メンバ35,36を備えている。このうち、前メンバ35は、車体2の幅方向に延びる断面円形のトーションバー39を備えている。このトーションバー39の一端部(右端部)は、上記左右サイドフレーム23,24のうち、右サイドフレーム24の重ね合わせ部30の前端部に固着され、他端部(左端部)は自由端とされて、上記左サイドフレーム23の重ね合わせ部30の前端部に、その軸心回りに回転可能となるよう支持されている。
【0047】
また、上記前メンバ35は、上記トーションバー39の前上方に配置されてこのトーションバー39に沿って延びる断面円形パイプであるリンクバー40を備えている。このリンクバー40の一端部(右端部)と他端部(左端部)とにはそれぞれアーム41が突設されている。上記リンクバー40の他端部のアーム41は上記トーションバー39の他端部に固着され、上記リンクバー40の一端部のアーム41は、上記トーションバー39の一端部にその軸心回りに回動可能となるよう支持されている。
【0048】
前記後メンバ36は断面円形のパイプであって、その各端部は上記各サイドフレーム23,24の重ね合わせ部30の後端部に固着されている。また、上記後メンバ36は、上記前メンバ35のクッション部材49およびリンクバー40よりもそれぞれ低位置、かつ、低剛性とされている。具体的には、上記後メンバ36は外径がより小さくされたり、薄肉にされたりするなど、断面係数がより小さくされている。
【0049】
前記後クロスバー26は、上記した前クロスバー25の前メンバ35と同構成とされ、トーションバー43、リンクバー44、およびアーム45を備えている。この場合、リンクバー44はトーションバー43の後上方に配置されている。
【0050】
前記ネットシート20は、上記前クロスバー25の前メンバ35のリンクバー40と、後クロスバー26のリンクバー44とに架設されている。上記ネットシート20の自由状態で、上記各リンクバー40,44は、上記各トーションバー39,43の初期戻りにより、互いに前後方向に離反するよう弾性的に付勢されている。これにより、上記ネットシート20には常時引張力が付与されている。
【0051】
前記シートバック17は、その骨格部材を構成し、前記シートクッションフレーム18の後端部に支持されるシートバックフレーム48と、このシートバックフレーム48をその前方から覆ってこのシートバックフレーム48に取り付けられるクッション部材49とを備えている。
【0052】
前記シートベルト装置13は、上記シート12上の着座者4の前面を横切るよう設けられるシートベルト51を備えている。このシートベルト51の一端部側の端部は左右サイドフレーム23,24のうち、左サイドフレーム23の後部にアンカ52により連結されているが、フロアパネル10に連結してもよい。また、右サイドフレーム24の後部にはバックル53が連結されて、上記シートベルト51の一端部側の長手方向中途部に係合したタングプレート54が上記バックル53に係脱可能に係止され、これにより、上記シートベルト51の一端部側の中途部は上記右サイドフレーム24の後部に連結されている。
【0053】
上記シートバック17のシートバックフレーム48の左上端部に上記シートベルト51の長手方向の中途部を挿通させるベルト係合体56が取り付けられている。このベルト係合体56の下方で上記シートバックフレーム48に取り付けられ、上記ベルト係合体56に挿通された後の上記シートベルト51の他端部側を巻き取り可能とするリトラクタ57が設けられている。このリトラクタ57は上記シートバックフレーム48に固着されるハウジング58と、このハウジング58に支持され、上記シートベルト51の他端部側を巻き取り可能とする巻き取り軸59と、上記シートベルト51を巻き取るよう上記巻き取り軸59を弾性的に付勢するばね60とを備えている。
【0054】
上記アンカ52からバックル53に係止されたタングプレート54に至る上記シートベルト51の中途部により、上記シート12上の着座者4の腰部がその前方から拘束される。また、上記タングプレート54からベルト係合体56に至る上記シートベルト51の他の中途部により、上記シート12上の着座者4の胸部がその前方から拘束される。
【0055】
車両1の前突時に、着座者4に生じた慣性力により、この着座者4が前方移動するとき、この着座者4から上記シートベルト51に与えられた外力により、このシートベルト51は上記ばね60の付勢力に対抗しながら上記リトラクタ57から巻き戻し可能とされる。なお、この巻き戻しは、着座者4が上記シートベルト51を引張することによっても可能である。
【0056】
車両1の前突時の加速度の変化を検出して、前突であるとの検出信号を出力する加速度センサー62が設けられる。また、前突時におけるこの加速度センサー62からの検出信号に基づき瞬間的にガスを発生するガス発生器63が設けられる。そして、このガス発生器63によって発生したガス圧力により上記リトラクタ57の巻き取り軸59にシートベルト51の他端部側を巻き取らせる公知のプリテンショナ64が設けられる。上記ガス発生器63は、火薬を点火、燃焼させて瞬間的に燃焼ガスを発生するものである。また、上記ガス圧力による上記リトラクタ57の巻き取り動作は一時的に行われる。
【0057】
また、上記加速度センサー62の検出信号に基づき、上記リトラクタ57から巻き戻されるシートベルト51をロックする公知のロック機構65が設けられている。このロック機構65は、上記リトラクタ57のばね60やプリテンショナ64によるシートベルト51の巻き取り動作は許容する一方、上記のように巻き戻されるシートベルト51のみを直ちにロックする。
【0058】
また、上記ロック機構65によるシートベルト51のロック状態で、上記着座者4からの外力によりシートベルト51に生じる引張応力が所定値に達したとき、この引張応力の増加を抑制する公知のフォースリミッタ66が設けられている。このフォースリミッタ66は、上記ロック機構65により、上記リトラクタ57のハウジング58側に対し巻き取り軸59の一端部のみをロックさせ、この巻き取り軸59をトーションバーとして機能させる。つまり、着座者4からの外力により巻き戻されようとするシートベルト51が上記巻き取り軸59を弾性的に戻り変形させ、これにより、上記シートベルト51に生じる引張応力がほぼ一定値に維持される。
【0059】
車両1の前進走行中において、上記シート12のネットシート20上に着座している着座者4の腰は、上記各トーションバー39,43の戻り弾性力に対抗して、上記ネットシート20を押し下げている(図1中、実線)。
【0060】
上記状態での車両1の前突時には、上記着座者4は、その慣性力により上記ネットシート20を更に押し下げようとする(図1中、一点鎖線)。すると、上記ネットシート20に生じる引張応力により、上記前、後クロスバー25,26の各リンクバー40,44は、前後方向で互いに引き寄せられると共に上記トーションバー39,43を中心として上方に回動する(図1中、一点鎖線)。そして、これら回動に連動して、上記各トーションバー39,43の戻り弾性力が増大して、上記ネットシート20から着座者4に与えられる反力が増大する。このため、上記各リンクバー40,44の上方回動と、上記ネットシート20の反力の増大とにより、上記着座者4の腰部が前上がり状に回転動作Aすることは効果的に抑制される。
【0061】
また、車両1の前突時に、着座者4がその慣性力で前方移動して腰部が上記後メンバ36に衝突したとき(図1中、一点鎖線)、この後メンバ36により着座者4の腰部の前上がり状の回転動作Aが抑制される。この場合、前記したように前メンバ35よりも後メンバ36を低位置としたため、この後メンバ36に衝突するときの腰部のうち、より低部位が後メンバ35に衝突する。よって、着座者4の腰部の前上がり状の回転動作Aが、より確実に抑制される。
【0062】
しかも、上記したように、前メンバ35よりも後メンバ36を低剛性としたため、この後メンバ36に着座者4の腰部が衝突すると、この後メンバ36はその長手方向の中途部が下方に向かって容易に屈曲しようとする。また、この際、上記腰部からの外力は上記後メンバ36を介しこの後メンバ36を支持している上記各サイドフレーム23,24の前上部に与えられる。すると、上記各脆弱部32に応力集中が生じて、上記後メンバ36の各端部を支持している上記各サイドフレーム23,24の前上部がシート12の幅方向内方側に向かって容易に内倒れするよう上記各脆弱部32が屈曲させられる。
【0063】
よって、上記各サイドフレーム23,24の前上部が容易に内倒れすることにより、この前上部に支持されている上記後メンバ36の下方への屈曲が助長される(図3,4中、一点鎖線)。そして、この後メンバ36の下方への屈曲により、この後メンバ36から腰部への反力は、この腰部の、より低部位に与えられるため、この腰部の前上がり状の回転動作Aは更に確実に抑制され、しかも、後メンバ36への腰部の衝突時の衝撃力が効果的に緩和される。
【0064】
そして、上記したように前突時に前方移動する着座者4の腰部の前上がり状の回転動作Aがより確実に抑制される分、この着座者4の胸部が前下がり状になることがより確実に防止されることから、特に、この胸部に対するシートベルト51の拘束性能の向上がより確実に達成される。
【0065】
また、上記したように前方移動する着座者4の腰部が後メンバ36に衝突したとき、上記各サイドフレーム23,24の脆弱部32を屈曲させて、その前上部を内倒れさせるようにしたため、前突時の着座者4の腰部からの外力により、上記各サイドフレーム23,24の全体が変形することは防止される。
【0066】
よって、第1に、上記各サイドフレーム23,24の全体的な変形により、上記後メンバ36が過大に下方に向かって屈曲することが防止されて、前突時に前方移動する着座者4の腰部が過大に沈み込むことが防止される。また、第2に、上記各サイドフレーム23,24において、剛性が大きいその後部に一端部側が連結されているシートベルト51は、前突時の着座者4の外力に基づく上記各サイドフレーム23,24の前上部の内倒れ変形には影響されないため、この点でも、上記シートベルト51の拘束性能の向上が達成される。
【0067】
また、更に、着座者4の前方移動が進行すると、この着座者4の腰部は上記前クロスバー25の前メンバ35のトーションバー39およびリンクバー40のうち、少なくともいずれかひとつのバーに衝突して、それ以上の前方移動が抑制される(図1中、二点鎖線)。よって、着座者4が過大に前方移動して、上記シート12の前方に配設されたハンドル6に衝突するなど、不都合の発生が防止される。
【0068】
また、上記したように、トーションバー39,43によって弾性的に付勢されたリンクバー40,44によりネットシート20が張設されるようにしたシート12において、前突時に前方移動する着座者4の腰部が衝突してそれ以上の前方移動を抑制する前メンバ35として、上記トーションバー39やリンクバー40が利用されたことから、この利用の分、前記したシートベルト51の拘束性能の向上は簡単な構成によって達成される。
【0069】
ここで、上記トーションバー39は、その機能上、剛性が大きいものである。このため、前方移動する着座者4の腰部が上記前メンバ35としての上記トーションバー39に衝突したとき、このトーションバー39により、それ以上の着座者4の腰部の前方移動は、より確実に防止される。一方、上記リンクバー40は、上記トーションバー39よりも上方に位置している。このため、前方移動する着座者4の腰部は上記前メンバ35としての上記リンクバー40に対し、より確実に衝突する。よって、この点でも、上記着座者4の腰部のそれ以上の前方移動は、より確実に防止される。
【0070】
図8の上段図は、前突時の着座者4の前方移動に伴い、この着座者4に対するシート12からの反力の増加状態を経時的に示したものである。
【0071】
即ち、前突当初から、この前突により前方移動する着座者4の腰部が上記前クロスバー25の後メンバ36に達するまでの時間がtであり、この後メンバ36に着座者4の腰部が衝突すると、上記後メンバ36による着座者4への反力が増加する。更に着座者4が前方移動として、前突当初から、上記のように前方移動する着座者4の腰部が上記前クロスバー25の前メンバ35に衝突するまでの時間がtであり、この前メンバ35に着座者4の腰部が衝突すると、上記前メンバ35による着座者4への反力が更に増加する。
【0072】
一方、前突時には、まず、前記プリテンショナ64のガス発生器63によって発生したガス圧力により上記リトラクタ57にシートベルト51の他端部側が巻き取られる。これにより、シートベルト51に生じていた遊びである弛みが除去され、このシートベルト51により、その後に着座者4を拘束するための準備が整えられる。
【0073】
次に、着座者4がその慣性力により前方移動し始めると、この着座者4からの外力により、上記シートベルト51の他端部側は上記リトラクタ57から巻き戻され始める。この際、前突を検出した加速度センサー62などのセンサーからの前突検出信号に基づき、上記リトラクタ57から巻き戻され始めるシートベルト51が上記ロック機構65により直ちにロックされて、この巻き戻しが阻止される。
【0074】
そして、上記シートベルト51のロック状態から、更に上記着座者4が前方移動すると、この着座者4から上記シートベルト51に対しより大きい外力が与えられ、これに伴い、上記シートベルト51に生じる引張応力は漸増しようとする。しかし、この引張応力が所定値に達すれば、上記フォースリミッタ66が作動し、上記引張応力の増加が抑制されて、この引張応力がほぼ一定に保たれる。つまり、前突時には、着座者4は前方移動してシートベルト51に外力を与える一方、このシートベルト51からの反力である拘束力を与えられるが、この拘束力による着座者4の負担は、上記フォースリミッタ66の作動により緩和される。
【0075】
図8の下段図は、前突時の着座者4の前方移動に伴い、この着座者4に対するシートベルト51からの反力の増加状態を経時的に示したものである。
【0076】
即ち、前突当初から、上記プリテンショナ64が作動した後にシートベルト51の巻き戻しが上記ロック機構65によりロックされるまでの時間がtで、この時点から、上記フォースリミッタ66が作動するまでの時間がtである。
【0077】
図8の上、下段図において、上記したように腰部が上記前メンバ35に衝突し始めるのと同時、もしくはその手前で上記フォースリミッタ66が作動し始めることとされている。つまり、t≧t+tとされている。
【0078】
ここで、上記t≧t+tが得られるようにするため、上記シート12上に着座者4が通常状態で着座したときのこの着座者4のヒップポイント70から、上記前クロスバー25の前メンバ35に至るまでの車体2の前後方向における距離Lを算出する。この距離Lは、前突時に着座者4の腰部が前方移動して、この腰部が上記前メンバ35に衝突するに至るまでの上記腰部の前方移動量に相当する。
【0079】
図9は、上記算出のため、車両1、着座者4、およびシートベルト51を図式的に示したものである。以下、図9を参照して説明する。
【0080】
m:着座者4の等価質量で45〜80kgを想定している。
【0081】
k:シートベルト51のばね関数
x:前突時の車体2の変位量で、

y:前突時の着座者4の変位量で、

,y:初期変位であって、0とする。
【0082】
:車両1の前突時の初速度であって、

である。
【0083】

【0084】

【0085】
そして、上記の運動方程式により導出されるy(t)が以下の関数を満足するよう上記距離Lを定める。そして、この距離Lにより、車体2の前後方向における上記前メンバ35の位置が設定される。
【0086】

【0087】
上記構成によれば、t≧t+tのため、前突時に着座者4が前方移動して腰部が上記したように後メンバ36に衝突した後には、上記シートベルト51に対するフォースリミッタ66の作動開始により、上記胸部が上記シートベルト51から反力を与えられると共に、膨張したエアバッグ装置7からも反力を与えられて、着座者4の上体が前のめり状になることが防止される。よって、上記後メンバ36への衝突後に上体が前のめりに状になることによる着座者4の負担の発生が防止されて、上記シートベルト51の拘束性能の向上がより確実に向上する。
【0088】
なお、以上は図示の例によるが、上記各サイドフレーム23,24を構成している内、外側パネル28,29は、いずれか一方のパネルのみを設けてもよい。また、上記前クロスバー25の前メンバ35は、トーションバー39とリンクバー40とのうち、いずれか一方のバーのみで構成してもよい。また、前突時における上記前、後クロスバー25,26の各リンクバー40,44の引き上げ動作の駆動源として、上記プリテンショナ64のガス発生器63のような構成を用いてもよい。
【0089】
また、上記前、後クロスバー25,26をそれぞれ単一のパイプで構成して、その各端部を各サイドフレーム23,24に固着させてもよく、このようにした場合には、クッション部材19はネットシート20に代えて、クッションパッドにすればよい。また、上記脆弱部32は、サイドフレーム23,24の一部を薄肉にしたり、貫通孔を列設するなどして形成してもよい。
【0090】
また、上記ベルト係合体56に代え、このベルト係合体56をリトラクタ57としてもよい。また、上記ベルト係合体56やリトラクタ57を上記シート12側方の車体2の側壁に支持させてもよく、上記リトラクタ57はフロアパネル10に支持させてもよい。また、上記ロック機構65はシートベルト51を機械的にロックするものであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 車両
2 車体
4 着座者
5 シート装置
12 シート
13 シートベルト装置
16 シートクッション
17 シートバック
18 シートクッションフレーム
20 ネットシート
23 サイドフレーム
24 サイドフレーム
25 クロスバー
26 クロスバー
32 脆弱部
35 メンバ
36 メンバ
39 トーションバー
40 リンクバー
51 シートベルト
52 アンカ
53 バックル
54 タングプレート
57 リトラクタ
58 ハウジング
59 巻き取り軸
60 ばね
62 加速度センサー
63 ガス発生器
64 プリテンショナ
65 ロック機構
66 フォースリミッタ
70 ヒップポイント
A 回転動作
L 距離
S スポット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のサイドフレームを有するシートのシートクッションフレームと、上記左右サイドフレームの前、後部に架設される前、後クロスバーと、上記シート上の着座者の前面を横切るよう設けられ、その一端部側が上記サイドフレーム側に連結されるシートベルトと、このシートベルトの他端部側を巻き取り可能とする一方、前突時に着座者から上記シートベルトに与えられる外力により、このシートベルトを巻き戻し可能とするリトラクタと、このリトラクタから巻き戻されるシートベルトをロックするロック機構と、このロック機構によるシートベルトのロック状態で、上記外力によりシートベルトに生じる引張応力が所定値に達したとき、この引張応力の増加を抑制するよう作動するフォースリミッタとを備えた車両のシート装置において、
上記前クロスバーが前後に離れて配置される前、後メンバを備え、前メンバよりも後メンバを低位置、かつ、低剛性とし、前突時に前方移動する着座者の腰部が上記後メンバに衝突したとき、この後メンバが上記腰部の前上がり状の回転動作を抑制するようにし、更に上記腰部が前方移動して上記前メンバに衝突したとき、この前メンバが上記腰部のそれ以上の前方移動を抑制するようにし、かつ、上記腰部が上記前メンバに衝突し始めるのと同時、もしくはその手前で上記フォースリミッタが作動し始めるようにしたことを特徴とする車両のシート装置。
【請求項2】
車体の幅方向に延び、その長手方向の一端部が上記左右サイドフレームのうちのいずれか一方のサイドフレームの前部に固着され、他端部が自由端とされるトーションバーと、このトーションバーの前上方に配置されてこのトーションバーに沿って延び、このトーションバーの他端部側に固着されるリンクバーと、上記後クロスバーとリンクバーとに張設されるネットシートとを備え、上記トーションバーとリンクバーとのうち、少なくともいずれか一方のバーを上記前メンバとしたことを特徴とする請求項1に記載の車両のシート装置。
【請求項3】
上記左右サイドフレームの後部に上記シートベルトの一端部を固着し、上記サイドフレームの前部における上部が上記後メンバの端部を支持し、上記サイドフレームの前部における上、下部の間に脆弱部を形成したことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の車両のシート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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