説明

車両のスイッチベース取付け構造

【課題】意匠上の自由度を向上でき、さらに車室内空間が狭くなるのを抑制できる車両のスイッチベース取付け構造を提供する。
【解決手段】
ドアトリム5の一部を構成する支持パネル8には、スイッチベース10が装着される開口8cが形成され、該開口8cの周縁部には、保持壁8dが、前記開口を囲むように形成されており、前記スイッチベース10には取付け壁10aが形成され、該取付け壁10aには、係止爪10dが形成され、前記保持壁8dの前記係止爪10d対向する部位には、一対の切欠き8i,8iが前記係止爪10d両側に位置するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両部品を覆う内装材、例えば自動車のドアの車室内側を覆うドアトリムにスイッチベースを取付けるための車両のスイッチベース取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、ドアの車室内側をドアトリムで覆うのが一般的であり、またドアトリムに各種のスイッチを取付ける場合がある。例えば、特許文献1には、ドアトリムにパワーウインドスイッチを取り付けるための構造が開示されている。この従来の取付け構造では、スイッチユニットの両端部にブラケットを有するボス及びロックばねが固定されている。そしてスイッチユニットをドアトリムの取付け穴に押し込むと、ロックばねが取付け穴の内面に当たって撓むことにより、前記ブラケットがドアトリムに圧接し、もってスイッチユニットがドアトリムに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−16436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1では、スイッチユニット側に、固定用ブラケット及びロックばねを設けているので、スイッチユニットとドアトリムの取付け穴の内面との間にロックばねを設けるスペース及び該ロックばねを通過可能とするスペースが必要であり、その分、取付け穴が大きくなり、それだけドアトリムが車室内側に張り出すおそれがある。その結果、車室内空間が狭くなるとともに、スイッチユニット及びドアトリム側の意匠上の自由度が制約されるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、意匠上の自由度を向上でき、さらに車室内空間が狭くなるのを抑制できる車両のスイッチベース取付け構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車両部品を覆う内装材にスイッチベースを取付ける車両のスイッチベースの取付け構造において、前記内装材には、前記スイッチベースが装着される開口が形成され、該開口の周縁部には、保持壁が、前記周縁部から起立し、かつ前記開口を囲むように形成されており、前記スイッチベースには前記開口の保持壁に装着される取付け壁が、該スイッチベースの外周に沿って形成されており、該取付け壁には、前記保持壁に係止する係止爪が形成され、前記保持壁の前記係止爪に対向する部位には、一対の切欠きが前記係止爪の両側に位置するように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、内装材の開口の周縁部に形成された保持壁の、スイッチベースの取付け壁に形成された係止爪に対向する部位に、一対の切欠きを形成したので、スイッチベースを内装材の開口に押し込むと、内装材の保持壁の係止爪に対向する部位が係止爪に押されて弾性変形し、該部位に係止爪が係止する。この場合、内装材の開口の周縁部に形成された保持部の一部が外方に撓む構造になっているので、スイッチベース側に係止片を設けるためのスペースや、係止片が弾性変形するための隙間を前記開口とスイッチベースとの間に設ける必要がなく、従って開口が大きくなることもない。その結果、内装材が車室内側に張り出すことがない分、車室内空間が狭くなるのを回避でき、またスイッチベースの意匠上の自由度が制約されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係るドアトリムのスイッチベース取付け構造が適用されたドア本体を車室内側から見た側面図である。
【図2】前記ドア本体の断面正面図(図1のI-I線断面図)である。
【図3】前記ドア本体のスイッチベース取付け部の拡大断面図である。
【図4】前記ドア本体のスイッチベース取付け部の断面正面図(図1のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記ドアトリムの開口の側面図である。
【図6】前記開口の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1ないし図6は、本発明の実施例1による自動車のスイッチベース取付け構造を説明するための図である。
【0011】
図において、1は自動車のフロントドアの下半部を構成するドア本体である。このドア本体1は、ドアインナパネル1aとドアアウタパネル1bからなる最中状のものであり、ドアガラス2、ドアガラス昇降機構3、及び各種のリインホースメント4が内蔵されている。
【0012】
そして前記ドア本体1の車室内側は、ドアトリム(内装材)5により覆われている。このドアトリム5の、後部かつ高さ方向略中央部にはアームレスト6が前後方向に延びるように配設され、前部かつ下部にはドアポケット7が前後方向に延び、さらに上方に延びるように形成されている。なお、ドアポケット7は、ドアトリム5の下部5aを車室内側に膨出させ、裏面にポケット構成パネル5bを固定した構造を有する。
【0013】
また、前記ドアトリム5の、前部かつ上部にはパネル開口5cが略円形をなすように形成され、該パネル開口5cには内装材の一部を構成する支持パネル8が装着されている。この支持パネル8は、これの周縁8aを、前記パネル開口5cの周縁に形成された係止溝5dに係止させ、固定ピン8bをドアインナパネル1aに螺挿することにより前記ドアトリム5に固定されている。
【0014】
前記支持パネル8の上部には、インサイドハンドル9が配設されており、下部にはスイッチベース10が配設されている。このスイッチベース10は、パワーウインドスイッチ11等を支持するためのものであり、以下の構造により前記支持パネル8に装着されている。
【0015】
前記支持パネル8には、前記スイッチベース10が装着される開口8cが、略長方形状をなすように形成されており、該開口8cの周縁部には、保持壁8dが形成されている。この保持壁8dは、前記周縁部から起立し、かつ前記開口8cを囲むように形成された縦壁8eを有する。この縦壁8eには、補強用のリブ8kが形成されている。
【0016】
そして前記縦壁8eの、車室内側に位置する部分の上縁には、前記開口8cの内方に向かって屈曲する内側係止辺8fが形成され、車室外側に位置する部分の下縁には、前記開口8cの内方に向かって屈曲する外側係止辺8gが形成されている。また前記外側係止辺8gには係止口8hが形成されている。
【0017】
前記スイッチベース10には、前記開口8cの保持壁8dに装着される取付け壁10aが、該スイッチベース10の外周に沿って形成され、さらに該取付け壁10aの車室内側部分の上縁には、係止壁10bが下方に屈曲するように形成されている。また前記取付け壁10aの車室外側部分には、3つの係止脚10cが形成され、車室内側部分には1つの係止爪10dが形成されている。
【0018】
さらまた、前記支持パネル8の保持壁8dの、前記係止爪10dに対向する部位には、一対の切欠き8i,8iが前記係止爪10dの両側に位置するように形成されている。即ち、前記保持壁8dの前記一対の切欠き8i,8iで挟まれた部分は、スイッチベース10の取付け時に、前記係止爪10dに押されて外方に弾性変形する係止片8jとなっている。なお、この係止片8jには、前記リブ8kに相当するものは形成されていない。
【0019】
本実施例1のスイッチベース取付け構造において、スイッチベース10をドアトリムの一部を構成する支持パネル8に装着する場合は、スイッチベース10の各係止脚10cを前記開口8cの縁部に形成された各係止口8hに係止させ、スイッチベース10の車室側部分を下方に回動させる。すると取付け壁10aの係止爪10dが前記係止片8jを外方に弾性変形させつつ進入し、該スイッチベース10の係止壁10bが支持パネル8の開口縁部に当接するとともに、係止爪10dが内側係止辺8fの下面に係止し、これによりスイッチベース10は支持パネル8に装着される。
【0020】
本実施例1によれば、支持パネル8の開口8cの周縁部に形成された保持壁8dの、スイッチベース10の取付け壁10aに形成された係止爪10dに対向する部位に、一対の切欠き8i,8iを形成し、該切欠き8i,8iの間の部分を係止片8jとした。そのため、スイッチベース10を支持パネル8の開口8c内に押し込むと、前記係止片8jが係止爪10dに押されて弾性変形し、その後、係止爪10dが係止片8jに係止する。
【0021】
このように、支持パネル8の開口8cの周縁部に形成された保持壁8dの一部である係止片8jを外方に撓ませる構造としたので、前記開口8cとスイッチベース10との間に隙間を設ける必要がなく、従って開口が大きくなることもない。また開口が大きくならないので、スイッチベース10の取付け部を大きくする必要もない。
【0022】
その結果、支持パネル8が車室内側に張り出すことがない分、車室内空間が狭くなるのを回避でき、またスイッチベース10の意匠上の制約も生じない。仮に、スイッチベース側に係止脚を設け、これを弾性変形させるように構成すると、罫紙脚を設けるスペースが必要となり、また前記弾性変形に対応した隙間が必要となり、その分開口も大きくなる。その結果、車室内空間が狭くなったり、スイッチベースの意匠上の制約が生じたりするおそれがある。
【符号の説明】
【0023】
1 ドア本体(車両部品)
8 支持パネル(内装材)
8c 開口
8d 保持壁
8i 切欠き
10 スイッチベース
10a 取付け壁
10d 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部品を覆う内装材にスイッチベースを取付ける車両のスイッチベース取付け構造において、
前記内装材には、前記スイッチベースが装着される開口が形成され、
該開口の周縁部には、保持壁が、前記周縁部から起立し、かつ前記開口を囲むように形成されており、
前記スイッチベースには、前記開口の保持壁に装着される取付け壁が、該スイッチベースの外周に沿って形成されており
該取付け壁には、前記保持壁に係止する係止爪が形成され、
前記保持壁の前記係止爪に対向する部位には、一対の切欠きが前記係止爪の両側に位置するように形成されている
ことを特徴とする車両のスイッチベース取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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