車両のステアリング装置
【課題】 センターテイクオフ式の車両のステアリング装置において、エンジンなどの熱源からの輻射熱を的確に遮断する。
【解決手段】 ブラケット41は、操舵ハンドル11の操舵操作に応じて左右方向に変位するラックバー21の中央位置に一体変位するように固定されている。ブラケット41には、ボールジョイント機構50A,50が組み付けられている。ボールジョイント機構50A,50Bは、タイロッド31,32の内側端を回転可能に支持し、ラックバー21の変位に応じてタイロッド31,32を揺動させて、左右前輪FW1,FW2を操舵する。ヒートインシュレータ61は、互いに対向する上板部及び下板部を有するように一体形成されていて、ボールジョイント機構50A,50Bを覆うようにブラケット41に固定されている。
【解決手段】 ブラケット41は、操舵ハンドル11の操舵操作に応じて左右方向に変位するラックバー21の中央位置に一体変位するように固定されている。ブラケット41には、ボールジョイント機構50A,50が組み付けられている。ボールジョイント機構50A,50Bは、タイロッド31,32の内側端を回転可能に支持し、ラックバー21の変位に応じてタイロッド31,32を揺動させて、左右前輪FW1,FW2を操舵する。ヒートインシュレータ61は、互いに対向する上板部及び下板部を有するように一体形成されていて、ボールジョイント機構50A,50Bを覆うようにブラケット41に固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右操舵輪をラックバーの左右方向の変位に応じて操舵するように、左右のタイロッドの内側端をラックバーの中央部に接続したセンターテイクオフ式の車両のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、センターテイクオフ式の車両のステアリング装置は知られている。この車両のステアリング装置は、軸線方向を左右方向にして延設され、操舵ハンドルの操舵操作に応じて左右方向に変位するラックバーと、左右操舵輪を外側端にてそれぞれ接続し、左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、ラックバーの軸線方向の中央部に固定されるとともに、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続する一対の連結部を有し、ラックバーと一体的に左右方向に変位して、左右操舵輪を左右に操舵するために左右一対のタイロッドを揺動させる連結器とを備えている。
【特許文献1】特開平11−321694号公報
【発明の開示】
【0003】
この場合、連結部を、左右のタイロッドの内側端をいずれの方向にも回転可能に支持するボールジョイント機構で構成したり、左右のタイロッドの内側端をラックバーと直交する方向回りに回転可能に支持する円筒状の回転支持機構で構成したりできる。これらの機構においては、タイロッドの内側端の回転を円滑にするために、樹脂部材、ゴム部材などが介装されているとともに、グリースなども塗布されている。しかし、センターテイクオフ式のステアリング装置においては、タイロッドの内側端の位置が高くなり、タイロッドの内側端の前方斜め下方に位置するエンジン及びその付属装置の輻射熱を受け易い。そして、この輻射熱によって、樹脂部材が変形したり、ゴム部材及びグリースなどが変質したりし易く、ステアリング装置の強度、耐久性、摩擦特性などの性能が悪化する。
【0004】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、エンジン及びその付属装置から、タイロッドの内側端をラックバーの中央部に連結する連結器への輻射熱を有効に遮断して、ステアリング装置の強度、耐久性、摩擦特性などの性能を良好に保つ車両のステアリング装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、軸線方向を左右方向にして延設され、操舵ハンドルの操舵操作に応じて左右方向に変位するラックバーと、左右操舵輪を外側端にてそれぞれ接続し、左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、ラックバーの軸線方向の中央部に固定されるとともに、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続した連結部を有し、ラックバーと一体的に左右方向に変位して、左右操舵輪を左右に操舵するために左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、前後方向におけるラックバーと反対側端にて連結されて互いに対向する上板部及び下板部を有するように一体形成されていて、一対の連結部を覆うように連結器に固定され、連結器の前方に位置する熱源から一対の連結部への輻射熱を遮断するヒートインシュレータとを備えたことにある。
【0006】
上記本発明の特徴によれば、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続した連結部の近傍、言い換えれば熱源であるエンジン及びその付属部品から遠い位置にヒートインシュレータを設けたので、熱源から連結部への輻射熱を効果的に遮断することができる。たとえば、エンジン及びその付属部品側にヒートインシュレータを設ける場合に比べて、前記輻射熱を効果的に遮断することができる。これにより、熱による変形及び変質し易い樹脂部材、ゴム部材、グリースなどを含む連結部を熱源から効果的に遮断することができ、連結器の性能を良好に保つことができる。また、ヒートインシュレータはラックバーと共に変位する連結器側に固定されているので、ラックバーが左右操舵輪の操舵のために左右方向に変位したり、タイロッドの内側端が左右前輪のバウンド及びリバウンドにより上下方向に変位したりしても、ヒートインシュレータは連結部を常に同じ状態で覆うことになる。これにより、ヒートインシュレータをラックバー及びタイロッドが相対変位する車体側などに設ける場合に比べて、ヒートインシュレータを小さく構成できる。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、ラックバーからの距離がラックバーから連結部までの距離よりも短い連結器上の位置に、ヒートインシュレータを固定部材により固定したことにある。この場合、好ましくは、ラックバーにできる限り近い位置にて、ヒートインシュレータを連結器に固定するとよい。これによれば、ヒートインシュレータの熱が大きな熱容量を有するラックバーに多く伝達され、ヒートインシュレータ自体の温度上昇を防ぐことができるとともに、連結部への熱の伝達量を少なく抑えることもできる。その結果、連結部の温度上昇を効果的に抑制でき、連結部の熱の影響を少なくすることができて、連結部の性能を良好に保つことができる。また、この場合、前記固定部材は金属製のボルトで構成するとよい。これによれば、ヒートインシュレータの熱は、ボルト及び連結器を介して、ラックバーにより伝達され易くなる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、連結器の上面及び下面のうちの少なくともいずれか一方のラックバー側位置に平坦な座面部を形成するとともに、ヒートインシュレータの上板部及び下板部のうちの少なくとも一方の左右方向中央位置に平面部を形成し、ヒートインシュレータの平面部の内側面を連結器の座面部に密着させて固定部材により固定したことにある。この場合、ヒートインシュレータはラックバー側の位置で連結器に固定されるので、ヒートインシュレータは片持ち梁状に連結器に支持されることになり、ヒートインシュレータのラックバーと反対側の端部側部分が上下方向に振動し易くなる。しかし、この本発明の他の特徴によれば、ヒートインシュレータの平面部の内側面を連結器の座面部に密着させるようにしたので、ヒートインシュレータは面接触状態で連結器に固定されることになり、前記振動が抑制される。言い換えれば、連結器の座面部に面接触するヒートインシュレータの平面部が振動抑制用のリブとして作用し、ヒートインシュレータの振動が良好に抑制される。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータを上下の2点で連結器に固定したことにある。前記のように、ヒートインシュレータは片持ち梁状に連結器に支持されるので、連結器のラックバーと反対側の座面部端に接触するヒートインシュレータの境界線には前記ヒートインシュレータの振動による応力が集中する。しかし、前記特徴のように、ヒートインシュレータを上下の2点で連結器に固定するようにしたので、前記境界線に集中する応力を上板部及び下板部に分散させることができ、ヒートインシュレータの剛性を高めることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、連結器の上面及び下面の少なくとも一方に段差部を設け、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の端面の一部を連結器に設けた段差部の端面に当接させたことにある。この場合、連結器に設けた段差部は、ラックバー側にて高くなるように形成され、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方のラックバー側の端面を連結器に設けた段差部の端面に当接させるように構成するとよい。
【0011】
また、前記連結器に設けた段差部をラックバー側にて高くなるように構成した場合において、さらに、段差部におけるラックバー側の高くなった部分に前後方向に沿った溝を設けるとよい。そして、ヒートインシュレータのラックバー側の端面の一部にラックバー側に突出させた突出部を設け、ヒートインシュレータの突出部を連結器の溝に侵入させて突出部の左又は右側面を溝の内壁に当接させるとともに、ヒートインシュレータの突出部以外のラックバー側の端面を連結器の段差部の端面に当接させるようにする。この場合、突出部は、例えば方形状である。
【0012】
また、連結器の段差部を、ラックバー側にて高くなるように形成した部分にラックバー側に入り込むように形成した方形状の凹部により構成し、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方のラックバー側の端部を方形状に形成し、方形状の端部を連結器に形成した方形状の凹部に侵入させて、ヒートインシュレータの方形状の端部のラックバー側の端面を、連結器の凹部のラックバーの軸線方向に平行な端面に当接させ、かつヒートインシュレータの方形状の端部のラックバーの軸線方向と直交する両端面の一方を、連結器の凹部のラックバーの軸線方向と直交する両端面の一方に当接させるとよい。
【0013】
また、連結器に設けた段差部を、ラックバー側位置にラックバー側に向かうに従って狭い幅となる溝で構成し、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方のラックバー側端部に、ラックバー側に向かうに従って狭い幅となる突出部を形成し、突出部を溝に侵入させて、突出部の両側面を溝の両内側面にそれぞれ当接させるように構成するとよい。
【0014】
このように、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の端面の一部を連結器に設けた段差部の端面に当接させることにより、ヒートインシュレータの連結器に対する位置決めが正確になされ、ヒートインシュレータの連結器への組付け精度が向上する。その結果、ヒートインシュレータがラックバーと共に左右に変位し、またタイロッドがラックバーの左右の変位に応じて揺動しても、ヒートインシュレータとタイロッドを含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータの固定部材よりもラックバー側位置にて、ヒートインシュレータと連結器をピンにより位置決めするようにしたことにある。これによっても、インシュレータの連結器に対する位置決めが正確になされ、ヒートインシュレータの連結器への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータとタイロッドを含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータにおける上板部の面積を下板部の面積よりも小さくしたことにある。この場合、例えば、ヒートインシュレータにおける上板部を、方形からラックバー側の左右両側を斜め前方に切り欠いた形状に形成し、かつ下板部を方形状に形成するとよい。この場合、ラックバーの左右の変位によって連結部がいずれの左右位置に変位しても、上板部及び下板部は、熱源から連結部への輻射熱を常に遮断した状態に保つ。これによれば、ヒートインシュレータの上板部と下板部に挟まれた空間内の高熱の空気が上方に流れ易くなり、ヒートインシュレータ内に熱がこもることがなくなるので、連結部の温度上昇も良好に抑制することができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータを取り付ける連結器の上下座面間の上下方向の厚みがラックバー側に向かうに従って厚くなるように連結器を形成し、上板部及び下板部間の上下方向の間隔がラックバー側に向かうに従って大きくなるようにヒートインシュレータを構成し、かつヒートインシュレータを連結器に組付ける前の状態で、ヒートインシュレータの上板部と下板部によって挟まれる角度を、連結器の上下座面によって挟まれる角度よりも小さくしたことにある。これによれば、ヒートインシュレータを連結器に組付けると、ヒートインシュレータの上板部及び下板部は連結器を挟み込もうとする締代力を発生するとともに、ヒートインシュレータには連結器から遠ざかろうとする逃げ力が発生し、これらの2つの力がバランスした位置でヒートインシュレータは連結器上に静止する傾向にある。したがって、この力のバランスを利用して、ヒートインシュレータを連結器に固定するようにすれば、ヒートインシュレータの連結器への組み付け位置が安定する。その結果、この特徴によっても、ヒートインシュレータの連結器への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータとタイロッドを含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータの上板部及び下板部のうちの少なくとも一方におけるラックバー側端部を連結器側に折り曲げて、折り曲げた部分を連結器のラックバー側の端面に当接させたことにある。この折り曲げた部分の連結器の端面への当接により、ヒートインシュレータの連結器への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータとタイロッドを含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。特に、この場合、ヒートインシュレータを連結器に組付けた際に締代力及び逃げ力が発生する前記構成と併用すると、位置決め精度がより良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両のステアリング装置の全体外観図である。図2は、図1の2点鎖線で囲んだ部分の拡大横断面図である。なお、本願明細書においては、前後方向とは車両の前後方向を意味し、左右方向とは車両の左右方向を意味する。
【0020】
この車両のステアリング装置は、操舵ハンドル11、ラックバー21、左右一対のタイロッド31,32、連結器40及びヒートインシュレータ61を備えている。操舵ハンドル11は、操舵輪としての左右前輪FW1,FW2を操舵するために、運転者によって操舵操作される。ラックバー21は、操舵ハンドル11の操舵操作に応じて車両の左右方向に変位する。タイロッド31,32は、ラックバー21の左右方向への変位に応じて揺動して左右前輪FW1,FW2を左右に操舵する。連結器40は、ラックバー21とタイロッド31,32とを連結して、ラックバー21の左右方向への変位に応じてタイロッド31,32を揺動させる。ヒートインシュレータ61は、連結器40を覆って熱源から連結器40への輻射熱を遮断する。
【0021】
ラックバー21は、金属材料で長尺状に形成され、その一部にラック歯を有する。ラックバー21は、金属材料で円筒状に形成されたラックバーハウジング22内に、ラックバーハウジング22と軸線方向を同一にして、軸線方向に変位可能に組み込まれている。ラックバー21のラック歯には、ラックバーハウジング22に組み付けられたギヤボックス12内にて、ステアリングシャフト13の下端部に設けたピニオンギヤが噛み合っている。ステアリングシャフト13の上端には、操舵ハンドル11が組み付けられている。操舵ハンドル11が回動されると、ステアリングシャフト13が軸線回りに回転して、ラックバー21は左右方向に変位する。ラックバー21の中央前面側には、ラックバー21が中立位置にある状態で、車両の左右方向の中心位置を挟んで左右対称位置に、円形の凹部21a,21bがそれぞれ形成されている。また、ラックバー21の中央前面側には、凹部21a,21bの底面中心位置から後方に向かって内周面に雌ねじを形成した有底のねじ孔21c,21dが形成されている。
【0022】
ラックバーハウジング22は、車両の左右方向に延設された状態で、図示しない車体に固定されている。ラックバーハウジング22の中央部前側には、ラックバー21と連結器40の一体的な左右方向の変位を許容するために、横長の方形状の開口部22aが設けられている。この開口部22aの横方向の長さは、ラックバー21の左右方向への最大変位量よりも若干長く設定されている。
【0023】
ラックバーハウジング22の左右両端部を除く部分は、ダストブーツ23によって覆われている。ダストブーツ23は、ゴム材料で一体的に成型され、その中央部23aを厚肉に形成し、中央部23aの両側にて薄肉の蛇腹部23b,23cを有する。中央部23aは円筒状に形成され、その前側部分に垂直な平面を形成する凹部23a1を有する。この凹部23a1には、ラックバー21が中立状態にあるときにねじ孔21c,21dが対向する位置に、貫通孔23a2,23a3が設けられている。ダストブーツ23の両端部は、ラックバーハウジング22の外周上に固定されている。ダストブーツ23の中央部23aは、詳しくは後述するように、連結器40によりラックバー21に組み付けられている。したがって、ダストブーツ23の中央部23aは、ラックバー21の左右方向の変位に応じて、蛇腹部23b,23cの伸縮を伴いながら左右方向に変位する。
【0024】
タイロッド31,32は、各外側端にて、図示しないナックルアームを介して、揺動により左右前輪FW1,FW2を操舵可能にそれぞれ連結している。タイロッド31,32の各内側端は、連結器40の左右方向の変位に応じて左右方向に変位するように連結器40に接続されている。
【0025】
連結器40は、ブラケット41及び左右一対のボールジョイント機構50A,50Bからなる。ブラケット41は、図4A〜図4Eに示すように、本体部41a及び取付け部41b,41cからなり、金属材料を一体成型して平面視T字状に形成されている。図4Aは、ブラケット41の正面図、すなわち車両への組み付け状態にてブラケット41を前方から見た図である。図4Bはブラケット41の平面図であり、図4Cはブラケット41の側面図である。図4Dは図4Aの4D−4D線に沿って見たブラケット41の断面図であり、図4Eは図4Aの4E−4Eに沿って見たブラケット41の断面図である。
【0026】
本体部41aは、前端から後端近傍位置まで横方向に同一の幅を有し、後端部にて後方に向けて横方向の幅が徐々に大きくなるような形状に形成されている。また、この本体部41aは、横方向から見て、後部にてU字状(すなわち円弧状)の上下対称の外形を有し、後部にて直線状の上下対称の外形を有する。そして、後部の上面及び下面は平面を形成しており、この後部の上面及び下面は、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けた際の座面41a1,41a2を構成する。本体部41aの後端部には、横方向から見て、座面41a1,41a2から上方及び下方にそれぞれ突出して、座面41a1,41a2の後端にて横方向に直線上に延びた段差を形成する突出部41a3,41a4が設けられている。これらの突出部41a3,41a4の前後方向の幅は、座面41a1,41a2の前後方向の長さに比べて小さい。本体部41aの前部には、横方向に貫通して内周面に雌ねじを形成したねじ孔41a5が設けられている。本体部41aの中間部には、座面41a1,41a2から内部に向けて内周面に雌ねじを形成した有底のねじ孔41a6,41a7が設けられている。
【0027】
取付け部41b,41cは、本体部41aの後端部(突出部41a3,41a4の前後位置に対応)から左右方向へそれぞれ延設されている。取付け部41b,41cの前後方向の幅は、突出部41a3,41a4の前後方向の幅に等しい。取付け部41b,41cは、正面から見てU字状(すなわち円弧状)の左右対称の外形を有する。また、両取付け部41b,41cには、前後方向に貫通する孔41b1,41c1が設けられている。
【0028】
ブラケット41は、取付け部41b,41cにて、一対のボルト42,43を用いてラックバー21に固定されている。ボルト42,43は、取付け部41b,41cの孔41b1,41c1及びダストブーツ23の貫通孔23a2,23a3を貫通して、ラックバー21のねじ孔21c,21dにねじ結合されている。連結器41をラックバー21及びダストブーツ23の正確な位置に堅固に固定するために、ボルト42,43の外周上には金属製のカラー44,45及び樹脂製の支持部材46が組み付けられている。カラー44,45は、段付き円筒状に形成され、前端部をラックバー21の凹部21a,21bに嵌合させるとともに、前端部をダストブーツ23の貫通孔23a2,23a3に嵌合させて、ボルト42,43を貫通させている。支持部材46は、長円状に一体成型されて一対の貫通孔を有し、貫通孔にボルト42,43及びカラー44,45を貫通させている。また、支持部材46は、カラー44,45の段差部とダストブーツ23の凹部23a1との間に介装されて、凹部23a1を連結器40との間に挟み込むようにしている。
【0029】
ボールジョイント機構50A,50Bは、金属製の球座部材51,52及び金属製のボール部材53,54を有する。球座部材51,52は、それらの内側部に設けた雄ねじ部51a,52aをブラケット41のねじ孔41a5に外側からそれぞれねじ結合させて、ブラケット41に固定されている。球座部材51,52の球座部51b,52bは、樹脂製のシート55,56を介して、ボール部材53,54の球状のボール部53a,54aを回転可能に支持している。球座部51b,52bは、ゴム製のダストブーツ57,58により覆われている。ボール部材53,54の外側部分にそれぞれ設けた雄ねじ部53b,54bは、タイロッド31,32の内側端部の内周面に設けた雌ねじにねじ結合されている。そして、ロックナット59,60により、ボール部材53,54はタイロッド31,32に堅固に固定されている。なお、ボール部53a,54aの円滑な回転を確保するために、球座部51b,52b内にはグリースなどが封入されている。このようなボールジョイント機構50A,50Bが、タイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続した本願発明の連結部を構成する。
【0030】
ヒートインシュレータ61は、連結器40を前側から覆って、連結器40の前下方に位置するエンジン及びその付属部品から連結器40への輻射熱を遮断することにより、連結器40を保護する。特に、ヒートインシュレータ61は、連結器40内のシート55,56、球座部51b,52b内に封入されたグリースなどへの前記輻射熱を遮断して、ボールジョイント機構50A,50Bを保護する。このヒートインシュレータ61は、図5A〜図5Eに示されている。図5Aは、ヒートインシュレータ61の正面図、すなわち車両への組み付け状態にてヒートインシュレータ61を前方から見た図である。図5Bはヒートインシュレータ61の平面図であり、図5Cはヒートインシュレータ61の側面図である。図5Dは、図5Cの矢印5Dによって示された部分のヒートインシュレータ61の部分拡大図である。図5Eは、図5Cの矢印5Eによって示された部分のヒートインシュレータ61の部分拡大図である。
【0031】
ヒートインシュレータ61は、金属プレート(例えば、鉄製の金属プレート)を曲げ加工して形成したもので、連結器40への組み付け状態にて前側に位置する連結部61aにて一体的に連結された上板部61b及び下板部61cを有する。上板部61b及び下板部61cは互いに上下に対向し、連結部61aと共に、縦断面U字状の後方に開放された空間SPを形成する。なお、この空間SPは、左右側方においても開放されている。下板部61cは、方形状に形成され、左右前端部において左右対称に小さく円弧状に切り欠かれている。上板部61bも、下板部61cの同じ方形状に形成され、中央部から左右対称に斜め前方に比較的大きく切り欠かれている。そして、上板部61bの面積は下板部61cの面積よりも小さく設定されている。言い換えれば、上板部61bが空間SPを覆う面積は、上板部61bの前記斜め前方に切り欠いた面積分だけ、下板部61cが空間SPを覆う面積よりも小さい。また、連結部61a、上板部61b及び下板部61cは、左右方向の中央部分を外側部分よりも窪ませて形成されている。
【0032】
上板部61b及び下板部61cの中央位置には、前端近傍位置から後方に向けて所定幅の平面部61b1,61c1が形成されている。平面部61b1,61c1の後端部分は、それらよりも左右外側の上板部61b及び下板部61cの後端面よりも方形状に突出して、突出部61b2,61c2を構成する。突出部61b2,61c2の前方の左右方向中心位置には、ブラケット41に設けたねじ孔41a6,41a7と同径の円形の貫通孔61b3,61c3が形成されている。これらの貫通孔61b3,61c3の入口の最も後方の位置から突出部61b2,61c2の前端までの長さは、ブラケット41のねじ孔41a6、41a7の入口の最も後方の位置から座面41a1,41a2に設けた突出部41a3、41a4の段差までの長さに等しい。これは、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けた際に、ヒートインシュレータ61の突出部61b2,61c2の前端面を、ブラケット41の突出部41a3、41a4による段差面に当接させることにより、ヒートインシュレータ61を位置決めするためである。ヒートインシュレータ61に関しては、プレス打ち抜きにより、突出部61b2,61c2の端面を高精度に加工しておくとよい。また、ブラケット41の突出部41a3,41a4に関しては、切削などの機械加工により、高精度に突出部41a3,41a4の段差面を成型しておくとよい。
【0033】
このように構成したヒートインシュレータ61は、図3A及び図3Bに示すように、ブラケット41の本体部41aに固定される。図3Aは、図1及び図2からブラケット41及びヒートインシュレータ61のみを取り出して、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組付け状態を示す平面図である。図3Bは、図3Aの3B−3B線に沿って見た断面図である。
【0034】
ヒートインシュレータ61は、上板部61bの平面部61b1の下面をブラケット41の座面41a1上に密着させるとともに、下板部61cの平面部61c1の下面をブラケット41の座面41a2上に密着させる。そして、ヒートインシュレータ61の上板部61bの突出部61b2の後端面をブラケット41の突出部41a3の段差面に当接させるとともに、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2の後端面をブラケット41の突出部41a4の段差面に当接させる。そして、ボルト62,63を、ヒートインシュレータ61の貫通孔61b3,61c3を介してブラケット41のねじ孔41a6,41a7に侵入させてねじ結合させる。これにより、ヒートインシュレータ61は、ブラケット41に固定される。
【0035】
上記のように構成した実施形態の動作について説明する。運転者が操舵ハンドル11を左右に回動操作すると、操舵ハンドル11の回動はステアリングシャフト13を介してラックバー21に伝達されて、ラックバー21は左右方向に変位する。このラックバー21の左右方向の変位により、ブラケット41及び球座部材51,52もラックバー21と一体的に左右に変位する。球座部材51,52の左右方向の変位により、ボール部材53,54のボール部53a,54aの回転を伴いながら、タイロッド31,32はボール部材53,54と一体的に揺動し、左右前輪FW1,FW2は操舵される。したがって、左右前輪FW1,FW2は、操舵ハンドル11の回動操作により操舵される。
【0036】
また、ヒートインシュレータ61は、エンジン及びその付属部品から連結器40、特にボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b、ボール部53a,54aへの輻射熱を遮断する。したがって、シート55,56、球座部51b、52b内のグリースなどが高い温度まで上昇しなくなるので、シート55,56、グリースなどが熱によって変形及び変質し難くなり、ボールジョイント機構50A、50Bの良好な作動が維持される。
【0037】
次に、上記のように構成されかつ動作する実施形態の具体的な作用効果について説明する。上記実施形態においては、熱源から保護すべき対象物すなわちボールジョイント機構50A,50B近傍にヒートインシュレータ61を設けた。言い換えれば、エンジン及びその付属部品すなわち熱源側ではなく、熱源から遠い位置にヒートインシュレータ61を設けた。これにより、熱源からボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aへの輻射熱を効果的に遮断することができる。このことは、熱源からの距離と同距離を隔てた位置における温度との関係を示した図6のグラフからも理解できる。図6のグラフにおいて、一点差線はヒートインシュレータ61を設けない場合の距離と温度との関係を示し、破線は熱源の近傍位置にヒートインシュレータ61を配置した場合の距離と温度との関係を示している。実線は、本願実施形態のように、熱源から遠い位置にヒートインシュレータ61を配置した場合の距離と温度との関係を示しており、この場合、特に、熱源による保護すべき対象物の温度上昇を的確に抑えることができる。その結果、熱の影響を受け易いボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aの良好な作動が維持される。
【0038】
また、ヒートインシュレータ61はラックバー21と共に変位する連結器40に固定されるようにした。したがって、ラックバー21が左右前輪FW1,FW2の操舵のために左右方向に変位したり、タイロッド31,32の内側端が左右前輪FW1,FW2のバウンド及びリバウンドにより上下方向に変位したりしても、ヒートインシュレータ61は、ボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aを、常にほぼ同じ状態で覆うことになる。これにより、ヒートインシュレータ61をラックバー21及びタイロッド31,32が相対変位する車体側などに設ける場合に比べて、ヒートインシュレータ61を小さく構成できる。
【0039】
また、上記実施形態においては、ヒートインシュレータ61は、前後方向における球座部材51,52とラックバー21との間の位置(図2にて破線で示す位置P1)にて、ボルト62,63を用いてブラケット41に固定されている。すなわち、ヒートインシュレータ61は、ラックバー21からの距離がラックバー21からボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aまでの距離よりも短いブラケット41上の位置に固定されている。したがって、ヒートインシュレータ61の熱が大きな熱容量を有するラックバー21にボルト62,63及びブラケット41を介して多く伝達されて、ヒートインシュレータ61自体の温度上昇を防ぐことができる。また、シート55,56、球座部51b,52b及びボール部53a,54aへの熱の伝達量を少なく抑えることもできる。これは、ヒートインシュレータ61を、球座部材51,52よりも前方位置にて、ブラケット41に固定することを想定すれば容易に理解される。その結果、シート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aの温度上昇を効果的に抑制できて、ボールジョイント機構50A,50Bの熱の影響を少なくすることができて、ボールジョイント機構50A,50Bの性能を良好に保つことができる。
【0040】
また、上記実施形態では、ブラケット41の上面及び下面のラックバー21側の位置に平坦な座面41a1,41a2をそれぞれ形成するとともに、ヒートインシュレータ61の上板部61b及び下板部61cの左右方向中央位置に平面部61b1,61c1をそれぞれ形成した。そして、図7に示すように、ヒートインシュレータ61の平面部61b1,61c1の内側面をブラケット41の座面41a1,41a2にそれぞれ密着させて、ヒートインシュレータ61をブラケット41にボルト62,63を用いて上下2点で固定した。この場合、ヒートインシュレータ61はラックバー21側の位置でブラケット41に固定されるので、ヒートインシュレータ61は片持ち梁状にブラケット41に支持されることになり、ヒートインシュレータ61のラックバー21と反対側の端部側部分が上下方向に振動し易くなる。しかし、前記のように、ヒートインシュレータ61の平面部61b1,61c1の内側面をブラケット41の座面41a1,41a2にそれぞれ密着させるようにしたので、ヒートインシュレータ61は面接触状態すなわち図7の模様を付した部分でブラケット41に固定されることになり、前記振動が抑制される。言い換えれば、ブラケット41の座面41a1,41a2に面接触するヒートインシュレータ61の平面部61b1,61c1が振動抑制用のリブとして作用し、ヒートインシュレータ61の振動が良好に防止される。
【0041】
また、前記のように、ヒートインシュレータ61は片持ち梁状にブラケット41に支持されるので、ブラケット41のラックバー21と反対側の座面41a1,41a2の端部に接触するヒートインシュレータ61の境界線L1にはヒートインシュレータ61の振動による応力が集中する。しかし、前記のように、ヒートインシュレータ61を上下の2点でブラケット41に固定するようにしたので、前記境界線L1に集中する応力を上板部61b及び下板部61cに分散させることができ、ヒートインシュレータ61の剛性を高めることができる。上側又は下側の一方でヒートインシュレータ61をブラケット41に固定しても、ヒートインシュレータ61のラックバー21と反対側の端部側部分の上下方向の振動を充分に抑制でき、かつヒートインシュレータ61の剛性を高めることができれば、ヒートインシュレータ61の平面部61b1,61c1の一方の内側面を、ブラケット41の座面41a1,41a2の一方のみに密着させて、ヒートインシュレータ61をブラケット41にボルト62,63の一方のみを用いて上側または下側の1点で固定するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、ブラケット41の上下の座面41a1,41a2のラックバー21側の端部に上方及び下方に突出した突出部41a3,41a4をそれぞれ設けて、座面41a1,41a2上にラックバー21の軸線方向に平行な段差部をそれぞれ設けた。そして、図3A及び図3Bに示すように、ヒートインシュレータ61の平面部61b1及び平面部61c1のラックバー21側の端面を前記段差部の端面にそれぞれ当接させるようにした。これにより、ヒートインシュレータ61のブラケット41に対する組付けの位置決めが正確になされ、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組付け精度が向上する。その結果、ヒートインシュレータ61がラックバー21と共に左右に変位し、またタイロッド31,32がラックバー21の左右の変位に応じて揺動しても、ヒートインシュレータ61とタイロッド31,32を含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0043】
また、上記実施形態では、ヒートインシュレータ61における上板部61bの面積を下板部61cの面積よりも小さくしている。具体的は、ヒートインシュレータ61における上板部61bは方形からラックバー21側の左右両側を斜め前方に切り欠いた形状に形成され、かつ下板部61cは方形状に形成されている。ただし、下板部61cのラックバー21側の両端は若干量だけ円形に切り欠かれている。また、ラックバー21の左右の変位によってブラケット41がいずれの左右位置に変位しても、上板部61b及び下板部61cは、熱源からボールジョイント機構50A,50Bの球座部51b,52b、ボール部53a,54a及びシート55,56への輻射熱を常に遮断するように構成されている。これによれば、ヒートインシュレータ61の上板部61bと下板部61cに挟まれた空間SP内の高熱の空気が上方に流れ易くなり、ヒートインシュレータ61内に熱がこもることがなくなるので、ブラケット41の温度上昇も良好に防ぐことができる。
【0044】
さらに、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0045】
上記実施形態においては、ブラケット41に設けた突出部41a3の前端面を単に平面に形成した。しかし、これに代えて、突出部41a3の左右方向の一部において、図8Aに示すように、前端面から後方向に延びた方形状の溝41a8を形成してもよい。この溝41a8の左右側面は平面に形成され、底面は座面41a1と同一の平面である。一方、ヒートインシュレータ61の突出部61b2の後端面の左右方向の一部に、後方に突出した方形状の第2突出部61b4を設ける。第2突出部61b4の左右方向の幅はブラケット41に設けた溝41a8の左右方向の幅よりも小さく、第2突出部61b4の底面は突出部61b2と同じである。そして、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付ける際には、第2突出部61b4をラックバー21の溝41a8に前方から侵入させて、第2突出部61b4の左右側面の一方を溝41a8の左右内側面の一方に当接させる。また、ヒートインシュレータ61の突出部61b2の第2突出部61b4以外の後端面に関しては、ブラケット41の突出部41a3の前端面に当接させる。
【0046】
また、図示しないが、ブラケット41の下面側の突出部41a4にも、溝41a8と同様な溝が形成され、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2にも、第2突出部61b4と同様な第2突出部が設けられている。なお、前記溝41a8は、前記変形例では突出部41a3の前端面から後端面まで延設させるようにしたが、溝41a8を、突出部41a3の前端面から後端面まで延設させなくても、突出部41a3の前後方向の中間位置までとしてもよい。この変形例によれば、ヒートインシュレータ61の回転に対する位置決めも的確になされる。
【0047】
また、図8Bに示すように、ブラケット41の突出部41a3の前端面から後方に向けて方形状の凹部41a9を設けるようにしてもよい。この凹部41a9の左右及び後側の内面は平面に形成され、底面は座面41a1と同一の平面である。一方、ヒートインシュレータ61の突出部61b2の前後方向の長さは上記実施形態の場合よりも若干長く、突出部61b2の左右方向の長さは凹部41a9の左右方向の長さよりも若干短い。また、突出部61b2の左右側面も後端面と同様に平面に形成されている。そして、ヒートインシュレータ61をラックバー41に組み付ける際には、突出部61b2をラックバー41の凹部41a9に前方から侵入させて、突出部61b2の後端面をブラケット41の凹部41a9の後面に当接させるとともに、突出部61b2の左右側面の一方を凹部41a9の左右内側面の一方に当接させる。
【0048】
また、図示しないが、ブラケット41の下面側の突出部41a4にも、凹部41a9と同様な凹部が形成され、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2は、この変形例に係る突出部61b2と同様に構成されている。この変形例によっても、ヒートインシュレータ61の回転に対する位置決めも的確になされる。
【0049】
また、図8Cに示すように、ブラケット41の突出部41a3の前端面から後方に向けて狭い幅となる溝41a10すなわちテーパ状の溝41a10を形成するようにしてもよい。この溝41a10の左右内側面は共に平面に形成され、底面は座面41a1と同一の平面である。一方、ヒートインシュレータ61の突出部61b2も、前記溝41a10と同一の傾斜をもって後方に向けて狭い幅すなわちテーパ状に形成する。突出部61b2の左右両側面も平面に形成されている。突出部61b2の後端の左右方向の長さは、溝41a10の前端の左右方向の長さよりも短く、溝41a10の後端の左右方向の長さよりも長い。突出部61b2の前端の左右方向の長さは、溝41a10の前端の左右方向の長さよりも長い。そして、ヒートインシュレータ61をラックバー41に組み付ける際には、突出部61b2をラックバー41の溝41a10に前方から侵入させて、突出部61b2の左右両側面をブラケット41の溝部41a10の左右内側面にそれぞれ当接させる。
【0050】
また、図示しないが、ブラケット41の下面側の突出部41a4にも、溝41a10と同様な溝が形成され、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2は、この変形例に係る突出部61b2と同様に構成されている。なお、前記溝41a10は、前記変形例では突出部41a3の前端面から後端面まで延設させるようにしたが、溝41a10を、突出部41a3の前端面から後端面まで延設させなくても、突出部41a3の前後方向の中間位置までとしてもよい。この変形例によれば、ヒートインシュレータ61の回転に対する位置決めも的確になされる。
【0051】
また、図8Dに示すように、ブラケット41の突出部41a3の前端面から後方に向けて前後方向に沿った溝41a11を設けるようにしてもよい。この溝41a11の底面は、座面41a1と同一の平面である。一方、ヒートインシュレータ61の突出部61b2の前後方向の長さは上記実施形態の場合よりも若干長く、突出部61b2の左右方向の長さは溝41a11の左右方向の長さよりも若干短い。また、溝41a11及び突出部61b2の対向する位置には、ピン孔が設けられている。そして、ヒートインシュレータ61をラックバー41に組み付ける際には、突出部61b2をラックバー41の溝41a11に前方から侵入させて、ピン47を溝41a11及び突出部61b2に設けたピン孔に圧入することにより、ブラケット41に対するヒートインシュレータ61の位置を決定する。
【0052】
また、図示しないが、ブラケット41の下面側の突出部41a4にも、溝41a10と同様な溝及びピン孔が設けられ、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2も、この変形例に係る突出部61b2と同様に構成されている。この変形例によっても、ヒートインシュレータ61の位置決めが的確になされる。
【0053】
また、上記図8A〜図8Dの変形例においては、ブラケット41の突出部41a3,41a4に設けた溝41a8,41a10及び凹部41a9、ヒートインシュレータ61に設けた第2突出部61b4及び突出部61b2、並びにピン47を、左右方向の上下同一位置に設けるようにした。しかし、これに代えて、これらのブラケット41の突出部41a3,41a4に設けた溝41a8,41a10及び凹部41a9、ヒートインシュレータ61に設けた第2突出部61b4及び突出部61b2、並びにピン47を、上側及び下側において左右方向の異なる位置に設けるようにしてもよい。これによれば、ヒートインシュレータ61をブラケット41に上下逆さまに組み付けることが回避される。
【0054】
さらに、ヒートインシュレータ61のブラケット41に対する締め付け力を用いて、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けることもできる。この場合、図9A 及び図9Bに示すように、上記実施形態においてブラケット41に設けた突出部41a3,41a4をなくして、座面41a1,41a2がブラケット41の後端面まで延長される。なお、この場合も、ブラケット41の後端部には、上記実施形態と同様に、取付け部41b、41cが左右に延設されている。ヒートインシュレータ61は、上記実施形態と同様に構成されている。
【0055】
そして、この変形例は次の点を特徴としている。ブラケット41は、その座面41a1,41a2間の上下方向の厚みがラックバー21側に向かうに従って厚くなるように形成されている。ヒートインシュレータ61も、平面部61b1,61c1間の上下方向の間隔がラックバー21側に向かうに従って大きくなるように形成されている。そして、ヒートインシュレータ61の上板部61bの平面部61b1と下板部61cの平面部61c1とによって挟まれる角度θ1は、ブラケット41の上下の座面41a1,41a2によって挟まれる角度θ2よりも小さく設定されている。
【0056】
このように構成した変形例においては、図9Aに示すように、ブラケット41の前方からヒートインシュレータ61を後方へ組付け力F1を加えると、ヒートインシュレータ61の上下の平面部61b1,61c1がブラケット41の上下の座面41a1,41a2上を摺動しながら後方へ移動する。このとき、両平面部61b1,61c1間の角度θ1が両座面41a1,41a2間の角度θ2よりも小さく設定されているので、図9Bに示すように、ヒートインシュレータ61は、ブラケット41を上下方向に締め付ける締代力F2(すなわち締付け力F2)を発生するとともに、ブラケット41から遠ざけようとする前方への逃げ力F3を受ける。そして、これらの2つの力F2,F3がバランスした位置で、ヒートインシュレータ61はブラケット41に静止する傾向にある。なお、このとき、ブラケット41とヒートインシュレータ61との間にはわずかな摩擦力も作用している。
【0057】
したがって、前記組付け力F1を加えてヒートインシュレータ61を前方にある程度大きく押し込んだ後、前記組付け力F1を解除すると、ヒートインシュレータ61が前方に戻る。そして、前記力F2,F3がバランスしてヒートインシュレータ61がブラケット41上に静止している状態で、ボルト62,63により、ヒートインシュレータ61をブラケット41上に固定する。これにより、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組み付け位置が安定する。その結果、この変形例によっても、ヒートインシュレータのブラケット41への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータ61とタイロッド31,32を含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0058】
また、上記実施形態を次のようにも変形することもできる。上記実施形態においてブラケット41に設けた突出部41a3,41a4の代わりに、図10に示すように、ブラケット41の後端部に、上側の座面41a1から下方に向けた段差面41a12を設けるとともに、下側の座面41a2から上方に向けた段差面41a13を設ける。そして、この場合も、前記変形例と同様な構成により、ヒートインシュレータ61の上板部61bの平面部61b1と下板部61cの平面部61c1によって挟まれる角度θ1は、ブラケット41の上下の座面41a1,41a2によって挟まれる角度θ2よりも小さく設定されている。
【0059】
そして、この場合には、ブラケット41の前方からヒートインシュレータ61を後方へ組付け力を加えて、ヒートインシュレータ61の上下の平面部61b1,61c1の後端面がブラケット41の上下の座面41a1,41a2の後端面よりも後方に位置するようにヒートインシュレータ61を後方へ移動させる。その後、平面部61b1の後端部を下方にかしめてブラケット41の段差面41a12上に当接させるとともに、平面部61c1の後端部を上方にかしめてブラケット41の段差面41a13上に当接させる。なお、平面部61b1,61c1の後端部のかしめ位置は、予め決められている。この平面部61b1,61c1の後端部をかしめた状態では、ヒートインシュレータ61は、図10に示すように、前記かしめた部分に戻り力F4を発生する。
【0060】
前記戻り力F4の発生により、ヒートインシュレータ61は、ブラケット41に対して前後方向に正確に位置決めされる。そして、この状態で、ボルト62,63により、ヒートインシュレータ61をブラケット41上に固定する。その結果、この変形例によっても、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータ61とタイロッド31,32を含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0061】
さらに、上記実施形態及び変形例においては、ヒートインシュレータ61の上下後端部をブラケット41の上下後端部にそれぞれ固定するようにした。しかし、ヒートインシュレータ61のブラケット41に対する前述した振動及び位置決めの問題を解消することができれば、ヒートインシュレータ61の上側の後端部又は下側の後端部の一方のみを、ブラケット41の上側の後端部又は下側の後端部に固定するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態及び変形例では、ヒートインシュレータ61の上板部61b及び下板部61cの一部を平面に形成した平面部61b1,61c1を、ブラケット41の上面及び下面の一部を平面に形成した座面41a,41bに密着させるようにした。しかし、前記平面部61b1,61c1に該当するヒートインシュレータ61の部分と、ブラケット41の座面41a,41bを密着させることが可能であれば、特に、ヒートインシュレータ61の前記部分とブラケット41の座面41a,41bを平面にする必要もない。例えば、ヒートインシュレータ61の前記部分とブラケット41の座面41a,41bを、断面円弧状に形成したり、球面状に形成したりして、湾曲をもたせるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態及び変形例では、1枚の金属プレートを曲げ加工して連結部61a、上板部61ba及び下板部61cbを有するヒートインシュレータ61を一体形成するようにした。しかし、これに代えて、上板部61ba及び下板部61cを別々に形成しておいて、別々に形成した上板部61ba及び下板部61cbをその後に連結するようにしてもよい。この場合、上板部61ba及び下板部61cbを同一の材料で構成してもよいが、異なる材料で構成するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、ボールジョイント機構50A,50Bを用いて、タイロッド31,32の内側端をブラケット41に対して回転可能に接続するようにした。ボールジョイント機構50A,50Bを用いることは好ましいことであるが、本発明は、樹脂、ゴムなどを含む連結器を介して、タイロッド31,32の内側端をラックバー21の中央部位置にて回転可能に接続し、ラックバー21の左右方向の変位に応じてタイロッド31,32を揺動させて、左右前輪FW1,FW2を操舵する車両のステアリング装置に広く適用できる。具体的には、例えば、タイロッド31,32の内側端に形成した円筒部を貫通してラックバー21に固定されたボルトを設け、円筒部の内周面とボルトの外周面との間に、円筒状のゴムブッシュを介在させるように構成したステアリング装置にも適用できる。この場合も、ラックバー21が左右前輪FW1,FW2を操舵するために左右方向に変位したり、タイロッド31,32の内側端が左右前輪FW1,FW2のバウンド及びリバウンドにより上下方向に変位したりしても、ヒートインシュレータ61は、エンジン及びその付属部品から円筒状のゴムブッシュへの輻射熱を遮断するように、ボルト、ゴムブッシュなどを含む連結器を前方から後方に向けて覆うようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のステアリング装置の全体外観図である。
【図2】図1の2点鎖線で囲んだ部分の拡大横断面図である。
【図3A】ヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す平面図である。
【図3B】図3Aの3B−3B線に沿って見た断面図である。
【図4A】ブラケットの正面図、すなわち車両への組み付け状態にてブラケットを前方から見た図である。
【図4B】ブラケットの平面図である。
【図4C】ブラケットの側面図である。
【図4D】図4Aの4D−4D線に沿って見たブラケットの断面図である。
【図4E】図4Aの4E−4E線に沿って見たブラケットの断面図である。
【図5A】ヒートインシュレータの正面図、すなわち車両への組み付け状態にてヒートインシュレータを前方から見た図である。
【図5B】ヒートインシュレータの平面図である。
【図5C】ヒートインシュレータの側面図である。
【図5D】図5Cの矢印5Dによって示された部分のヒートインシュレータの部分拡大図である。
【図5E】図5Cの矢印5Eによって示された部分のヒートインシュレータの部分拡大図である。
【図6】ヒートインシュレータの作用を説明するための、熱源からの距離に対する温度の変化特性を示すグラフである。
【図7】ブラケットに対するヒートインシュレータの組付け状態を説明する説明図である。
【図8A】変形例に係るヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す部分平面図である。
【図8B】他の変形例に係るヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す部分平面図である。
【図8C】他の変形例に係るヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す部分平面図である。
【図8D】他の変形例に係るヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す部分平面図である。
【図9A】他の変形例に係り、ヒートインシュレータのブラケットへの組付け前の状態を示す縦断面図である。
【図9B】図9Aの変形例に係り、ヒートインシュレータのブラケットへの組付け後の状態を示す縦断面図である。
【図10】他の変形例に係り、ヒートインシュレータのブラケットへの組付け後の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
11…操舵ハンドル、13…ステアリングシャフト、21…ラックバー、22…ラックバーハウジング、23…ダストブーツ、31,32…タイロッド、40…連結器、41…ブラケット、41a…本体部、41a1,41a2…座面、41a3,41a4…突出部、41a8,41a10,41a11…溝、41a9…凹部、41b,41c…取付け部、47…ピン、50A,50B…ボールジョイント機構、51,52…球座部材、53,54…ボール部材、55,56…シート、61…ヒートインシュレータ、61b…上板部、61c…下板部、61b1,61c1…平面部、61b2,61c2,61b4…突出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右操舵輪をラックバーの左右方向の変位に応じて操舵するように、左右のタイロッドの内側端をラックバーの中央部に接続したセンターテイクオフ式の車両のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、センターテイクオフ式の車両のステアリング装置は知られている。この車両のステアリング装置は、軸線方向を左右方向にして延設され、操舵ハンドルの操舵操作に応じて左右方向に変位するラックバーと、左右操舵輪を外側端にてそれぞれ接続し、左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、ラックバーの軸線方向の中央部に固定されるとともに、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続する一対の連結部を有し、ラックバーと一体的に左右方向に変位して、左右操舵輪を左右に操舵するために左右一対のタイロッドを揺動させる連結器とを備えている。
【特許文献1】特開平11−321694号公報
【発明の開示】
【0003】
この場合、連結部を、左右のタイロッドの内側端をいずれの方向にも回転可能に支持するボールジョイント機構で構成したり、左右のタイロッドの内側端をラックバーと直交する方向回りに回転可能に支持する円筒状の回転支持機構で構成したりできる。これらの機構においては、タイロッドの内側端の回転を円滑にするために、樹脂部材、ゴム部材などが介装されているとともに、グリースなども塗布されている。しかし、センターテイクオフ式のステアリング装置においては、タイロッドの内側端の位置が高くなり、タイロッドの内側端の前方斜め下方に位置するエンジン及びその付属装置の輻射熱を受け易い。そして、この輻射熱によって、樹脂部材が変形したり、ゴム部材及びグリースなどが変質したりし易く、ステアリング装置の強度、耐久性、摩擦特性などの性能が悪化する。
【0004】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、エンジン及びその付属装置から、タイロッドの内側端をラックバーの中央部に連結する連結器への輻射熱を有効に遮断して、ステアリング装置の強度、耐久性、摩擦特性などの性能を良好に保つ車両のステアリング装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、軸線方向を左右方向にして延設され、操舵ハンドルの操舵操作に応じて左右方向に変位するラックバーと、左右操舵輪を外側端にてそれぞれ接続し、左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、ラックバーの軸線方向の中央部に固定されるとともに、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続した連結部を有し、ラックバーと一体的に左右方向に変位して、左右操舵輪を左右に操舵するために左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、前後方向におけるラックバーと反対側端にて連結されて互いに対向する上板部及び下板部を有するように一体形成されていて、一対の連結部を覆うように連結器に固定され、連結器の前方に位置する熱源から一対の連結部への輻射熱を遮断するヒートインシュレータとを備えたことにある。
【0006】
上記本発明の特徴によれば、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続した連結部の近傍、言い換えれば熱源であるエンジン及びその付属部品から遠い位置にヒートインシュレータを設けたので、熱源から連結部への輻射熱を効果的に遮断することができる。たとえば、エンジン及びその付属部品側にヒートインシュレータを設ける場合に比べて、前記輻射熱を効果的に遮断することができる。これにより、熱による変形及び変質し易い樹脂部材、ゴム部材、グリースなどを含む連結部を熱源から効果的に遮断することができ、連結器の性能を良好に保つことができる。また、ヒートインシュレータはラックバーと共に変位する連結器側に固定されているので、ラックバーが左右操舵輪の操舵のために左右方向に変位したり、タイロッドの内側端が左右前輪のバウンド及びリバウンドにより上下方向に変位したりしても、ヒートインシュレータは連結部を常に同じ状態で覆うことになる。これにより、ヒートインシュレータをラックバー及びタイロッドが相対変位する車体側などに設ける場合に比べて、ヒートインシュレータを小さく構成できる。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、ラックバーからの距離がラックバーから連結部までの距離よりも短い連結器上の位置に、ヒートインシュレータを固定部材により固定したことにある。この場合、好ましくは、ラックバーにできる限り近い位置にて、ヒートインシュレータを連結器に固定するとよい。これによれば、ヒートインシュレータの熱が大きな熱容量を有するラックバーに多く伝達され、ヒートインシュレータ自体の温度上昇を防ぐことができるとともに、連結部への熱の伝達量を少なく抑えることもできる。その結果、連結部の温度上昇を効果的に抑制でき、連結部の熱の影響を少なくすることができて、連結部の性能を良好に保つことができる。また、この場合、前記固定部材は金属製のボルトで構成するとよい。これによれば、ヒートインシュレータの熱は、ボルト及び連結器を介して、ラックバーにより伝達され易くなる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、連結器の上面及び下面のうちの少なくともいずれか一方のラックバー側位置に平坦な座面部を形成するとともに、ヒートインシュレータの上板部及び下板部のうちの少なくとも一方の左右方向中央位置に平面部を形成し、ヒートインシュレータの平面部の内側面を連結器の座面部に密着させて固定部材により固定したことにある。この場合、ヒートインシュレータはラックバー側の位置で連結器に固定されるので、ヒートインシュレータは片持ち梁状に連結器に支持されることになり、ヒートインシュレータのラックバーと反対側の端部側部分が上下方向に振動し易くなる。しかし、この本発明の他の特徴によれば、ヒートインシュレータの平面部の内側面を連結器の座面部に密着させるようにしたので、ヒートインシュレータは面接触状態で連結器に固定されることになり、前記振動が抑制される。言い換えれば、連結器の座面部に面接触するヒートインシュレータの平面部が振動抑制用のリブとして作用し、ヒートインシュレータの振動が良好に抑制される。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータを上下の2点で連結器に固定したことにある。前記のように、ヒートインシュレータは片持ち梁状に連結器に支持されるので、連結器のラックバーと反対側の座面部端に接触するヒートインシュレータの境界線には前記ヒートインシュレータの振動による応力が集中する。しかし、前記特徴のように、ヒートインシュレータを上下の2点で連結器に固定するようにしたので、前記境界線に集中する応力を上板部及び下板部に分散させることができ、ヒートインシュレータの剛性を高めることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、連結器の上面及び下面の少なくとも一方に段差部を設け、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の端面の一部を連結器に設けた段差部の端面に当接させたことにある。この場合、連結器に設けた段差部は、ラックバー側にて高くなるように形成され、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方のラックバー側の端面を連結器に設けた段差部の端面に当接させるように構成するとよい。
【0011】
また、前記連結器に設けた段差部をラックバー側にて高くなるように構成した場合において、さらに、段差部におけるラックバー側の高くなった部分に前後方向に沿った溝を設けるとよい。そして、ヒートインシュレータのラックバー側の端面の一部にラックバー側に突出させた突出部を設け、ヒートインシュレータの突出部を連結器の溝に侵入させて突出部の左又は右側面を溝の内壁に当接させるとともに、ヒートインシュレータの突出部以外のラックバー側の端面を連結器の段差部の端面に当接させるようにする。この場合、突出部は、例えば方形状である。
【0012】
また、連結器の段差部を、ラックバー側にて高くなるように形成した部分にラックバー側に入り込むように形成した方形状の凹部により構成し、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方のラックバー側の端部を方形状に形成し、方形状の端部を連結器に形成した方形状の凹部に侵入させて、ヒートインシュレータの方形状の端部のラックバー側の端面を、連結器の凹部のラックバーの軸線方向に平行な端面に当接させ、かつヒートインシュレータの方形状の端部のラックバーの軸線方向と直交する両端面の一方を、連結器の凹部のラックバーの軸線方向と直交する両端面の一方に当接させるとよい。
【0013】
また、連結器に設けた段差部を、ラックバー側位置にラックバー側に向かうに従って狭い幅となる溝で構成し、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方のラックバー側端部に、ラックバー側に向かうに従って狭い幅となる突出部を形成し、突出部を溝に侵入させて、突出部の両側面を溝の両内側面にそれぞれ当接させるように構成するとよい。
【0014】
このように、ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の端面の一部を連結器に設けた段差部の端面に当接させることにより、ヒートインシュレータの連結器に対する位置決めが正確になされ、ヒートインシュレータの連結器への組付け精度が向上する。その結果、ヒートインシュレータがラックバーと共に左右に変位し、またタイロッドがラックバーの左右の変位に応じて揺動しても、ヒートインシュレータとタイロッドを含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータの固定部材よりもラックバー側位置にて、ヒートインシュレータと連結器をピンにより位置決めするようにしたことにある。これによっても、インシュレータの連結器に対する位置決めが正確になされ、ヒートインシュレータの連結器への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータとタイロッドを含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータにおける上板部の面積を下板部の面積よりも小さくしたことにある。この場合、例えば、ヒートインシュレータにおける上板部を、方形からラックバー側の左右両側を斜め前方に切り欠いた形状に形成し、かつ下板部を方形状に形成するとよい。この場合、ラックバーの左右の変位によって連結部がいずれの左右位置に変位しても、上板部及び下板部は、熱源から連結部への輻射熱を常に遮断した状態に保つ。これによれば、ヒートインシュレータの上板部と下板部に挟まれた空間内の高熱の空気が上方に流れ易くなり、ヒートインシュレータ内に熱がこもることがなくなるので、連結部の温度上昇も良好に抑制することができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータを取り付ける連結器の上下座面間の上下方向の厚みがラックバー側に向かうに従って厚くなるように連結器を形成し、上板部及び下板部間の上下方向の間隔がラックバー側に向かうに従って大きくなるようにヒートインシュレータを構成し、かつヒートインシュレータを連結器に組付ける前の状態で、ヒートインシュレータの上板部と下板部によって挟まれる角度を、連結器の上下座面によって挟まれる角度よりも小さくしたことにある。これによれば、ヒートインシュレータを連結器に組付けると、ヒートインシュレータの上板部及び下板部は連結器を挟み込もうとする締代力を発生するとともに、ヒートインシュレータには連結器から遠ざかろうとする逃げ力が発生し、これらの2つの力がバランスした位置でヒートインシュレータは連結器上に静止する傾向にある。したがって、この力のバランスを利用して、ヒートインシュレータを連結器に固定するようにすれば、ヒートインシュレータの連結器への組み付け位置が安定する。その結果、この特徴によっても、ヒートインシュレータの連結器への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータとタイロッドを含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、ヒートインシュレータの上板部及び下板部のうちの少なくとも一方におけるラックバー側端部を連結器側に折り曲げて、折り曲げた部分を連結器のラックバー側の端面に当接させたことにある。この折り曲げた部分の連結器の端面への当接により、ヒートインシュレータの連結器への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータとタイロッドを含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。特に、この場合、ヒートインシュレータを連結器に組付けた際に締代力及び逃げ力が発生する前記構成と併用すると、位置決め精度がより良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両のステアリング装置の全体外観図である。図2は、図1の2点鎖線で囲んだ部分の拡大横断面図である。なお、本願明細書においては、前後方向とは車両の前後方向を意味し、左右方向とは車両の左右方向を意味する。
【0020】
この車両のステアリング装置は、操舵ハンドル11、ラックバー21、左右一対のタイロッド31,32、連結器40及びヒートインシュレータ61を備えている。操舵ハンドル11は、操舵輪としての左右前輪FW1,FW2を操舵するために、運転者によって操舵操作される。ラックバー21は、操舵ハンドル11の操舵操作に応じて車両の左右方向に変位する。タイロッド31,32は、ラックバー21の左右方向への変位に応じて揺動して左右前輪FW1,FW2を左右に操舵する。連結器40は、ラックバー21とタイロッド31,32とを連結して、ラックバー21の左右方向への変位に応じてタイロッド31,32を揺動させる。ヒートインシュレータ61は、連結器40を覆って熱源から連結器40への輻射熱を遮断する。
【0021】
ラックバー21は、金属材料で長尺状に形成され、その一部にラック歯を有する。ラックバー21は、金属材料で円筒状に形成されたラックバーハウジング22内に、ラックバーハウジング22と軸線方向を同一にして、軸線方向に変位可能に組み込まれている。ラックバー21のラック歯には、ラックバーハウジング22に組み付けられたギヤボックス12内にて、ステアリングシャフト13の下端部に設けたピニオンギヤが噛み合っている。ステアリングシャフト13の上端には、操舵ハンドル11が組み付けられている。操舵ハンドル11が回動されると、ステアリングシャフト13が軸線回りに回転して、ラックバー21は左右方向に変位する。ラックバー21の中央前面側には、ラックバー21が中立位置にある状態で、車両の左右方向の中心位置を挟んで左右対称位置に、円形の凹部21a,21bがそれぞれ形成されている。また、ラックバー21の中央前面側には、凹部21a,21bの底面中心位置から後方に向かって内周面に雌ねじを形成した有底のねじ孔21c,21dが形成されている。
【0022】
ラックバーハウジング22は、車両の左右方向に延設された状態で、図示しない車体に固定されている。ラックバーハウジング22の中央部前側には、ラックバー21と連結器40の一体的な左右方向の変位を許容するために、横長の方形状の開口部22aが設けられている。この開口部22aの横方向の長さは、ラックバー21の左右方向への最大変位量よりも若干長く設定されている。
【0023】
ラックバーハウジング22の左右両端部を除く部分は、ダストブーツ23によって覆われている。ダストブーツ23は、ゴム材料で一体的に成型され、その中央部23aを厚肉に形成し、中央部23aの両側にて薄肉の蛇腹部23b,23cを有する。中央部23aは円筒状に形成され、その前側部分に垂直な平面を形成する凹部23a1を有する。この凹部23a1には、ラックバー21が中立状態にあるときにねじ孔21c,21dが対向する位置に、貫通孔23a2,23a3が設けられている。ダストブーツ23の両端部は、ラックバーハウジング22の外周上に固定されている。ダストブーツ23の中央部23aは、詳しくは後述するように、連結器40によりラックバー21に組み付けられている。したがって、ダストブーツ23の中央部23aは、ラックバー21の左右方向の変位に応じて、蛇腹部23b,23cの伸縮を伴いながら左右方向に変位する。
【0024】
タイロッド31,32は、各外側端にて、図示しないナックルアームを介して、揺動により左右前輪FW1,FW2を操舵可能にそれぞれ連結している。タイロッド31,32の各内側端は、連結器40の左右方向の変位に応じて左右方向に変位するように連結器40に接続されている。
【0025】
連結器40は、ブラケット41及び左右一対のボールジョイント機構50A,50Bからなる。ブラケット41は、図4A〜図4Eに示すように、本体部41a及び取付け部41b,41cからなり、金属材料を一体成型して平面視T字状に形成されている。図4Aは、ブラケット41の正面図、すなわち車両への組み付け状態にてブラケット41を前方から見た図である。図4Bはブラケット41の平面図であり、図4Cはブラケット41の側面図である。図4Dは図4Aの4D−4D線に沿って見たブラケット41の断面図であり、図4Eは図4Aの4E−4Eに沿って見たブラケット41の断面図である。
【0026】
本体部41aは、前端から後端近傍位置まで横方向に同一の幅を有し、後端部にて後方に向けて横方向の幅が徐々に大きくなるような形状に形成されている。また、この本体部41aは、横方向から見て、後部にてU字状(すなわち円弧状)の上下対称の外形を有し、後部にて直線状の上下対称の外形を有する。そして、後部の上面及び下面は平面を形成しており、この後部の上面及び下面は、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けた際の座面41a1,41a2を構成する。本体部41aの後端部には、横方向から見て、座面41a1,41a2から上方及び下方にそれぞれ突出して、座面41a1,41a2の後端にて横方向に直線上に延びた段差を形成する突出部41a3,41a4が設けられている。これらの突出部41a3,41a4の前後方向の幅は、座面41a1,41a2の前後方向の長さに比べて小さい。本体部41aの前部には、横方向に貫通して内周面に雌ねじを形成したねじ孔41a5が設けられている。本体部41aの中間部には、座面41a1,41a2から内部に向けて内周面に雌ねじを形成した有底のねじ孔41a6,41a7が設けられている。
【0027】
取付け部41b,41cは、本体部41aの後端部(突出部41a3,41a4の前後位置に対応)から左右方向へそれぞれ延設されている。取付け部41b,41cの前後方向の幅は、突出部41a3,41a4の前後方向の幅に等しい。取付け部41b,41cは、正面から見てU字状(すなわち円弧状)の左右対称の外形を有する。また、両取付け部41b,41cには、前後方向に貫通する孔41b1,41c1が設けられている。
【0028】
ブラケット41は、取付け部41b,41cにて、一対のボルト42,43を用いてラックバー21に固定されている。ボルト42,43は、取付け部41b,41cの孔41b1,41c1及びダストブーツ23の貫通孔23a2,23a3を貫通して、ラックバー21のねじ孔21c,21dにねじ結合されている。連結器41をラックバー21及びダストブーツ23の正確な位置に堅固に固定するために、ボルト42,43の外周上には金属製のカラー44,45及び樹脂製の支持部材46が組み付けられている。カラー44,45は、段付き円筒状に形成され、前端部をラックバー21の凹部21a,21bに嵌合させるとともに、前端部をダストブーツ23の貫通孔23a2,23a3に嵌合させて、ボルト42,43を貫通させている。支持部材46は、長円状に一体成型されて一対の貫通孔を有し、貫通孔にボルト42,43及びカラー44,45を貫通させている。また、支持部材46は、カラー44,45の段差部とダストブーツ23の凹部23a1との間に介装されて、凹部23a1を連結器40との間に挟み込むようにしている。
【0029】
ボールジョイント機構50A,50Bは、金属製の球座部材51,52及び金属製のボール部材53,54を有する。球座部材51,52は、それらの内側部に設けた雄ねじ部51a,52aをブラケット41のねじ孔41a5に外側からそれぞれねじ結合させて、ブラケット41に固定されている。球座部材51,52の球座部51b,52bは、樹脂製のシート55,56を介して、ボール部材53,54の球状のボール部53a,54aを回転可能に支持している。球座部51b,52bは、ゴム製のダストブーツ57,58により覆われている。ボール部材53,54の外側部分にそれぞれ設けた雄ねじ部53b,54bは、タイロッド31,32の内側端部の内周面に設けた雌ねじにねじ結合されている。そして、ロックナット59,60により、ボール部材53,54はタイロッド31,32に堅固に固定されている。なお、ボール部53a,54aの円滑な回転を確保するために、球座部51b,52b内にはグリースなどが封入されている。このようなボールジョイント機構50A,50Bが、タイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続した本願発明の連結部を構成する。
【0030】
ヒートインシュレータ61は、連結器40を前側から覆って、連結器40の前下方に位置するエンジン及びその付属部品から連結器40への輻射熱を遮断することにより、連結器40を保護する。特に、ヒートインシュレータ61は、連結器40内のシート55,56、球座部51b,52b内に封入されたグリースなどへの前記輻射熱を遮断して、ボールジョイント機構50A,50Bを保護する。このヒートインシュレータ61は、図5A〜図5Eに示されている。図5Aは、ヒートインシュレータ61の正面図、すなわち車両への組み付け状態にてヒートインシュレータ61を前方から見た図である。図5Bはヒートインシュレータ61の平面図であり、図5Cはヒートインシュレータ61の側面図である。図5Dは、図5Cの矢印5Dによって示された部分のヒートインシュレータ61の部分拡大図である。図5Eは、図5Cの矢印5Eによって示された部分のヒートインシュレータ61の部分拡大図である。
【0031】
ヒートインシュレータ61は、金属プレート(例えば、鉄製の金属プレート)を曲げ加工して形成したもので、連結器40への組み付け状態にて前側に位置する連結部61aにて一体的に連結された上板部61b及び下板部61cを有する。上板部61b及び下板部61cは互いに上下に対向し、連結部61aと共に、縦断面U字状の後方に開放された空間SPを形成する。なお、この空間SPは、左右側方においても開放されている。下板部61cは、方形状に形成され、左右前端部において左右対称に小さく円弧状に切り欠かれている。上板部61bも、下板部61cの同じ方形状に形成され、中央部から左右対称に斜め前方に比較的大きく切り欠かれている。そして、上板部61bの面積は下板部61cの面積よりも小さく設定されている。言い換えれば、上板部61bが空間SPを覆う面積は、上板部61bの前記斜め前方に切り欠いた面積分だけ、下板部61cが空間SPを覆う面積よりも小さい。また、連結部61a、上板部61b及び下板部61cは、左右方向の中央部分を外側部分よりも窪ませて形成されている。
【0032】
上板部61b及び下板部61cの中央位置には、前端近傍位置から後方に向けて所定幅の平面部61b1,61c1が形成されている。平面部61b1,61c1の後端部分は、それらよりも左右外側の上板部61b及び下板部61cの後端面よりも方形状に突出して、突出部61b2,61c2を構成する。突出部61b2,61c2の前方の左右方向中心位置には、ブラケット41に設けたねじ孔41a6,41a7と同径の円形の貫通孔61b3,61c3が形成されている。これらの貫通孔61b3,61c3の入口の最も後方の位置から突出部61b2,61c2の前端までの長さは、ブラケット41のねじ孔41a6、41a7の入口の最も後方の位置から座面41a1,41a2に設けた突出部41a3、41a4の段差までの長さに等しい。これは、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けた際に、ヒートインシュレータ61の突出部61b2,61c2の前端面を、ブラケット41の突出部41a3、41a4による段差面に当接させることにより、ヒートインシュレータ61を位置決めするためである。ヒートインシュレータ61に関しては、プレス打ち抜きにより、突出部61b2,61c2の端面を高精度に加工しておくとよい。また、ブラケット41の突出部41a3,41a4に関しては、切削などの機械加工により、高精度に突出部41a3,41a4の段差面を成型しておくとよい。
【0033】
このように構成したヒートインシュレータ61は、図3A及び図3Bに示すように、ブラケット41の本体部41aに固定される。図3Aは、図1及び図2からブラケット41及びヒートインシュレータ61のみを取り出して、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組付け状態を示す平面図である。図3Bは、図3Aの3B−3B線に沿って見た断面図である。
【0034】
ヒートインシュレータ61は、上板部61bの平面部61b1の下面をブラケット41の座面41a1上に密着させるとともに、下板部61cの平面部61c1の下面をブラケット41の座面41a2上に密着させる。そして、ヒートインシュレータ61の上板部61bの突出部61b2の後端面をブラケット41の突出部41a3の段差面に当接させるとともに、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2の後端面をブラケット41の突出部41a4の段差面に当接させる。そして、ボルト62,63を、ヒートインシュレータ61の貫通孔61b3,61c3を介してブラケット41のねじ孔41a6,41a7に侵入させてねじ結合させる。これにより、ヒートインシュレータ61は、ブラケット41に固定される。
【0035】
上記のように構成した実施形態の動作について説明する。運転者が操舵ハンドル11を左右に回動操作すると、操舵ハンドル11の回動はステアリングシャフト13を介してラックバー21に伝達されて、ラックバー21は左右方向に変位する。このラックバー21の左右方向の変位により、ブラケット41及び球座部材51,52もラックバー21と一体的に左右に変位する。球座部材51,52の左右方向の変位により、ボール部材53,54のボール部53a,54aの回転を伴いながら、タイロッド31,32はボール部材53,54と一体的に揺動し、左右前輪FW1,FW2は操舵される。したがって、左右前輪FW1,FW2は、操舵ハンドル11の回動操作により操舵される。
【0036】
また、ヒートインシュレータ61は、エンジン及びその付属部品から連結器40、特にボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b、ボール部53a,54aへの輻射熱を遮断する。したがって、シート55,56、球座部51b、52b内のグリースなどが高い温度まで上昇しなくなるので、シート55,56、グリースなどが熱によって変形及び変質し難くなり、ボールジョイント機構50A、50Bの良好な作動が維持される。
【0037】
次に、上記のように構成されかつ動作する実施形態の具体的な作用効果について説明する。上記実施形態においては、熱源から保護すべき対象物すなわちボールジョイント機構50A,50B近傍にヒートインシュレータ61を設けた。言い換えれば、エンジン及びその付属部品すなわち熱源側ではなく、熱源から遠い位置にヒートインシュレータ61を設けた。これにより、熱源からボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aへの輻射熱を効果的に遮断することができる。このことは、熱源からの距離と同距離を隔てた位置における温度との関係を示した図6のグラフからも理解できる。図6のグラフにおいて、一点差線はヒートインシュレータ61を設けない場合の距離と温度との関係を示し、破線は熱源の近傍位置にヒートインシュレータ61を配置した場合の距離と温度との関係を示している。実線は、本願実施形態のように、熱源から遠い位置にヒートインシュレータ61を配置した場合の距離と温度との関係を示しており、この場合、特に、熱源による保護すべき対象物の温度上昇を的確に抑えることができる。その結果、熱の影響を受け易いボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aの良好な作動が維持される。
【0038】
また、ヒートインシュレータ61はラックバー21と共に変位する連結器40に固定されるようにした。したがって、ラックバー21が左右前輪FW1,FW2の操舵のために左右方向に変位したり、タイロッド31,32の内側端が左右前輪FW1,FW2のバウンド及びリバウンドにより上下方向に変位したりしても、ヒートインシュレータ61は、ボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aを、常にほぼ同じ状態で覆うことになる。これにより、ヒートインシュレータ61をラックバー21及びタイロッド31,32が相対変位する車体側などに設ける場合に比べて、ヒートインシュレータ61を小さく構成できる。
【0039】
また、上記実施形態においては、ヒートインシュレータ61は、前後方向における球座部材51,52とラックバー21との間の位置(図2にて破線で示す位置P1)にて、ボルト62,63を用いてブラケット41に固定されている。すなわち、ヒートインシュレータ61は、ラックバー21からの距離がラックバー21からボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aまでの距離よりも短いブラケット41上の位置に固定されている。したがって、ヒートインシュレータ61の熱が大きな熱容量を有するラックバー21にボルト62,63及びブラケット41を介して多く伝達されて、ヒートインシュレータ61自体の温度上昇を防ぐことができる。また、シート55,56、球座部51b,52b及びボール部53a,54aへの熱の伝達量を少なく抑えることもできる。これは、ヒートインシュレータ61を、球座部材51,52よりも前方位置にて、ブラケット41に固定することを想定すれば容易に理解される。その結果、シート55,56、球座部51b、52b及びボール部53a,54aの温度上昇を効果的に抑制できて、ボールジョイント機構50A,50Bの熱の影響を少なくすることができて、ボールジョイント機構50A,50Bの性能を良好に保つことができる。
【0040】
また、上記実施形態では、ブラケット41の上面及び下面のラックバー21側の位置に平坦な座面41a1,41a2をそれぞれ形成するとともに、ヒートインシュレータ61の上板部61b及び下板部61cの左右方向中央位置に平面部61b1,61c1をそれぞれ形成した。そして、図7に示すように、ヒートインシュレータ61の平面部61b1,61c1の内側面をブラケット41の座面41a1,41a2にそれぞれ密着させて、ヒートインシュレータ61をブラケット41にボルト62,63を用いて上下2点で固定した。この場合、ヒートインシュレータ61はラックバー21側の位置でブラケット41に固定されるので、ヒートインシュレータ61は片持ち梁状にブラケット41に支持されることになり、ヒートインシュレータ61のラックバー21と反対側の端部側部分が上下方向に振動し易くなる。しかし、前記のように、ヒートインシュレータ61の平面部61b1,61c1の内側面をブラケット41の座面41a1,41a2にそれぞれ密着させるようにしたので、ヒートインシュレータ61は面接触状態すなわち図7の模様を付した部分でブラケット41に固定されることになり、前記振動が抑制される。言い換えれば、ブラケット41の座面41a1,41a2に面接触するヒートインシュレータ61の平面部61b1,61c1が振動抑制用のリブとして作用し、ヒートインシュレータ61の振動が良好に防止される。
【0041】
また、前記のように、ヒートインシュレータ61は片持ち梁状にブラケット41に支持されるので、ブラケット41のラックバー21と反対側の座面41a1,41a2の端部に接触するヒートインシュレータ61の境界線L1にはヒートインシュレータ61の振動による応力が集中する。しかし、前記のように、ヒートインシュレータ61を上下の2点でブラケット41に固定するようにしたので、前記境界線L1に集中する応力を上板部61b及び下板部61cに分散させることができ、ヒートインシュレータ61の剛性を高めることができる。上側又は下側の一方でヒートインシュレータ61をブラケット41に固定しても、ヒートインシュレータ61のラックバー21と反対側の端部側部分の上下方向の振動を充分に抑制でき、かつヒートインシュレータ61の剛性を高めることができれば、ヒートインシュレータ61の平面部61b1,61c1の一方の内側面を、ブラケット41の座面41a1,41a2の一方のみに密着させて、ヒートインシュレータ61をブラケット41にボルト62,63の一方のみを用いて上側または下側の1点で固定するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、ブラケット41の上下の座面41a1,41a2のラックバー21側の端部に上方及び下方に突出した突出部41a3,41a4をそれぞれ設けて、座面41a1,41a2上にラックバー21の軸線方向に平行な段差部をそれぞれ設けた。そして、図3A及び図3Bに示すように、ヒートインシュレータ61の平面部61b1及び平面部61c1のラックバー21側の端面を前記段差部の端面にそれぞれ当接させるようにした。これにより、ヒートインシュレータ61のブラケット41に対する組付けの位置決めが正確になされ、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組付け精度が向上する。その結果、ヒートインシュレータ61がラックバー21と共に左右に変位し、またタイロッド31,32がラックバー21の左右の変位に応じて揺動しても、ヒートインシュレータ61とタイロッド31,32を含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0043】
また、上記実施形態では、ヒートインシュレータ61における上板部61bの面積を下板部61cの面積よりも小さくしている。具体的は、ヒートインシュレータ61における上板部61bは方形からラックバー21側の左右両側を斜め前方に切り欠いた形状に形成され、かつ下板部61cは方形状に形成されている。ただし、下板部61cのラックバー21側の両端は若干量だけ円形に切り欠かれている。また、ラックバー21の左右の変位によってブラケット41がいずれの左右位置に変位しても、上板部61b及び下板部61cは、熱源からボールジョイント機構50A,50Bの球座部51b,52b、ボール部53a,54a及びシート55,56への輻射熱を常に遮断するように構成されている。これによれば、ヒートインシュレータ61の上板部61bと下板部61cに挟まれた空間SP内の高熱の空気が上方に流れ易くなり、ヒートインシュレータ61内に熱がこもることがなくなるので、ブラケット41の温度上昇も良好に防ぐことができる。
【0044】
さらに、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0045】
上記実施形態においては、ブラケット41に設けた突出部41a3の前端面を単に平面に形成した。しかし、これに代えて、突出部41a3の左右方向の一部において、図8Aに示すように、前端面から後方向に延びた方形状の溝41a8を形成してもよい。この溝41a8の左右側面は平面に形成され、底面は座面41a1と同一の平面である。一方、ヒートインシュレータ61の突出部61b2の後端面の左右方向の一部に、後方に突出した方形状の第2突出部61b4を設ける。第2突出部61b4の左右方向の幅はブラケット41に設けた溝41a8の左右方向の幅よりも小さく、第2突出部61b4の底面は突出部61b2と同じである。そして、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付ける際には、第2突出部61b4をラックバー21の溝41a8に前方から侵入させて、第2突出部61b4の左右側面の一方を溝41a8の左右内側面の一方に当接させる。また、ヒートインシュレータ61の突出部61b2の第2突出部61b4以外の後端面に関しては、ブラケット41の突出部41a3の前端面に当接させる。
【0046】
また、図示しないが、ブラケット41の下面側の突出部41a4にも、溝41a8と同様な溝が形成され、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2にも、第2突出部61b4と同様な第2突出部が設けられている。なお、前記溝41a8は、前記変形例では突出部41a3の前端面から後端面まで延設させるようにしたが、溝41a8を、突出部41a3の前端面から後端面まで延設させなくても、突出部41a3の前後方向の中間位置までとしてもよい。この変形例によれば、ヒートインシュレータ61の回転に対する位置決めも的確になされる。
【0047】
また、図8Bに示すように、ブラケット41の突出部41a3の前端面から後方に向けて方形状の凹部41a9を設けるようにしてもよい。この凹部41a9の左右及び後側の内面は平面に形成され、底面は座面41a1と同一の平面である。一方、ヒートインシュレータ61の突出部61b2の前後方向の長さは上記実施形態の場合よりも若干長く、突出部61b2の左右方向の長さは凹部41a9の左右方向の長さよりも若干短い。また、突出部61b2の左右側面も後端面と同様に平面に形成されている。そして、ヒートインシュレータ61をラックバー41に組み付ける際には、突出部61b2をラックバー41の凹部41a9に前方から侵入させて、突出部61b2の後端面をブラケット41の凹部41a9の後面に当接させるとともに、突出部61b2の左右側面の一方を凹部41a9の左右内側面の一方に当接させる。
【0048】
また、図示しないが、ブラケット41の下面側の突出部41a4にも、凹部41a9と同様な凹部が形成され、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2は、この変形例に係る突出部61b2と同様に構成されている。この変形例によっても、ヒートインシュレータ61の回転に対する位置決めも的確になされる。
【0049】
また、図8Cに示すように、ブラケット41の突出部41a3の前端面から後方に向けて狭い幅となる溝41a10すなわちテーパ状の溝41a10を形成するようにしてもよい。この溝41a10の左右内側面は共に平面に形成され、底面は座面41a1と同一の平面である。一方、ヒートインシュレータ61の突出部61b2も、前記溝41a10と同一の傾斜をもって後方に向けて狭い幅すなわちテーパ状に形成する。突出部61b2の左右両側面も平面に形成されている。突出部61b2の後端の左右方向の長さは、溝41a10の前端の左右方向の長さよりも短く、溝41a10の後端の左右方向の長さよりも長い。突出部61b2の前端の左右方向の長さは、溝41a10の前端の左右方向の長さよりも長い。そして、ヒートインシュレータ61をラックバー41に組み付ける際には、突出部61b2をラックバー41の溝41a10に前方から侵入させて、突出部61b2の左右両側面をブラケット41の溝部41a10の左右内側面にそれぞれ当接させる。
【0050】
また、図示しないが、ブラケット41の下面側の突出部41a4にも、溝41a10と同様な溝が形成され、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2は、この変形例に係る突出部61b2と同様に構成されている。なお、前記溝41a10は、前記変形例では突出部41a3の前端面から後端面まで延設させるようにしたが、溝41a10を、突出部41a3の前端面から後端面まで延設させなくても、突出部41a3の前後方向の中間位置までとしてもよい。この変形例によれば、ヒートインシュレータ61の回転に対する位置決めも的確になされる。
【0051】
また、図8Dに示すように、ブラケット41の突出部41a3の前端面から後方に向けて前後方向に沿った溝41a11を設けるようにしてもよい。この溝41a11の底面は、座面41a1と同一の平面である。一方、ヒートインシュレータ61の突出部61b2の前後方向の長さは上記実施形態の場合よりも若干長く、突出部61b2の左右方向の長さは溝41a11の左右方向の長さよりも若干短い。また、溝41a11及び突出部61b2の対向する位置には、ピン孔が設けられている。そして、ヒートインシュレータ61をラックバー41に組み付ける際には、突出部61b2をラックバー41の溝41a11に前方から侵入させて、ピン47を溝41a11及び突出部61b2に設けたピン孔に圧入することにより、ブラケット41に対するヒートインシュレータ61の位置を決定する。
【0052】
また、図示しないが、ブラケット41の下面側の突出部41a4にも、溝41a10と同様な溝及びピン孔が設けられ、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2も、この変形例に係る突出部61b2と同様に構成されている。この変形例によっても、ヒートインシュレータ61の位置決めが的確になされる。
【0053】
また、上記図8A〜図8Dの変形例においては、ブラケット41の突出部41a3,41a4に設けた溝41a8,41a10及び凹部41a9、ヒートインシュレータ61に設けた第2突出部61b4及び突出部61b2、並びにピン47を、左右方向の上下同一位置に設けるようにした。しかし、これに代えて、これらのブラケット41の突出部41a3,41a4に設けた溝41a8,41a10及び凹部41a9、ヒートインシュレータ61に設けた第2突出部61b4及び突出部61b2、並びにピン47を、上側及び下側において左右方向の異なる位置に設けるようにしてもよい。これによれば、ヒートインシュレータ61をブラケット41に上下逆さまに組み付けることが回避される。
【0054】
さらに、ヒートインシュレータ61のブラケット41に対する締め付け力を用いて、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けることもできる。この場合、図9A 及び図9Bに示すように、上記実施形態においてブラケット41に設けた突出部41a3,41a4をなくして、座面41a1,41a2がブラケット41の後端面まで延長される。なお、この場合も、ブラケット41の後端部には、上記実施形態と同様に、取付け部41b、41cが左右に延設されている。ヒートインシュレータ61は、上記実施形態と同様に構成されている。
【0055】
そして、この変形例は次の点を特徴としている。ブラケット41は、その座面41a1,41a2間の上下方向の厚みがラックバー21側に向かうに従って厚くなるように形成されている。ヒートインシュレータ61も、平面部61b1,61c1間の上下方向の間隔がラックバー21側に向かうに従って大きくなるように形成されている。そして、ヒートインシュレータ61の上板部61bの平面部61b1と下板部61cの平面部61c1とによって挟まれる角度θ1は、ブラケット41の上下の座面41a1,41a2によって挟まれる角度θ2よりも小さく設定されている。
【0056】
このように構成した変形例においては、図9Aに示すように、ブラケット41の前方からヒートインシュレータ61を後方へ組付け力F1を加えると、ヒートインシュレータ61の上下の平面部61b1,61c1がブラケット41の上下の座面41a1,41a2上を摺動しながら後方へ移動する。このとき、両平面部61b1,61c1間の角度θ1が両座面41a1,41a2間の角度θ2よりも小さく設定されているので、図9Bに示すように、ヒートインシュレータ61は、ブラケット41を上下方向に締め付ける締代力F2(すなわち締付け力F2)を発生するとともに、ブラケット41から遠ざけようとする前方への逃げ力F3を受ける。そして、これらの2つの力F2,F3がバランスした位置で、ヒートインシュレータ61はブラケット41に静止する傾向にある。なお、このとき、ブラケット41とヒートインシュレータ61との間にはわずかな摩擦力も作用している。
【0057】
したがって、前記組付け力F1を加えてヒートインシュレータ61を前方にある程度大きく押し込んだ後、前記組付け力F1を解除すると、ヒートインシュレータ61が前方に戻る。そして、前記力F2,F3がバランスしてヒートインシュレータ61がブラケット41上に静止している状態で、ボルト62,63により、ヒートインシュレータ61をブラケット41上に固定する。これにより、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組み付け位置が安定する。その結果、この変形例によっても、ヒートインシュレータのブラケット41への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータ61とタイロッド31,32を含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0058】
また、上記実施形態を次のようにも変形することもできる。上記実施形態においてブラケット41に設けた突出部41a3,41a4の代わりに、図10に示すように、ブラケット41の後端部に、上側の座面41a1から下方に向けた段差面41a12を設けるとともに、下側の座面41a2から上方に向けた段差面41a13を設ける。そして、この場合も、前記変形例と同様な構成により、ヒートインシュレータ61の上板部61bの平面部61b1と下板部61cの平面部61c1によって挟まれる角度θ1は、ブラケット41の上下の座面41a1,41a2によって挟まれる角度θ2よりも小さく設定されている。
【0059】
そして、この場合には、ブラケット41の前方からヒートインシュレータ61を後方へ組付け力を加えて、ヒートインシュレータ61の上下の平面部61b1,61c1の後端面がブラケット41の上下の座面41a1,41a2の後端面よりも後方に位置するようにヒートインシュレータ61を後方へ移動させる。その後、平面部61b1の後端部を下方にかしめてブラケット41の段差面41a12上に当接させるとともに、平面部61c1の後端部を上方にかしめてブラケット41の段差面41a13上に当接させる。なお、平面部61b1,61c1の後端部のかしめ位置は、予め決められている。この平面部61b1,61c1の後端部をかしめた状態では、ヒートインシュレータ61は、図10に示すように、前記かしめた部分に戻り力F4を発生する。
【0060】
前記戻り力F4の発生により、ヒートインシュレータ61は、ブラケット41に対して前後方向に正確に位置決めされる。そして、この状態で、ボルト62,63により、ヒートインシュレータ61をブラケット41上に固定する。その結果、この変形例によっても、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組付け精度が向上し、ヒートインシュレータ61とタイロッド31,32を含む周辺部品との干渉の問題がなくなる。
【0061】
さらに、上記実施形態及び変形例においては、ヒートインシュレータ61の上下後端部をブラケット41の上下後端部にそれぞれ固定するようにした。しかし、ヒートインシュレータ61のブラケット41に対する前述した振動及び位置決めの問題を解消することができれば、ヒートインシュレータ61の上側の後端部又は下側の後端部の一方のみを、ブラケット41の上側の後端部又は下側の後端部に固定するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態及び変形例では、ヒートインシュレータ61の上板部61b及び下板部61cの一部を平面に形成した平面部61b1,61c1を、ブラケット41の上面及び下面の一部を平面に形成した座面41a,41bに密着させるようにした。しかし、前記平面部61b1,61c1に該当するヒートインシュレータ61の部分と、ブラケット41の座面41a,41bを密着させることが可能であれば、特に、ヒートインシュレータ61の前記部分とブラケット41の座面41a,41bを平面にする必要もない。例えば、ヒートインシュレータ61の前記部分とブラケット41の座面41a,41bを、断面円弧状に形成したり、球面状に形成したりして、湾曲をもたせるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態及び変形例では、1枚の金属プレートを曲げ加工して連結部61a、上板部61ba及び下板部61cbを有するヒートインシュレータ61を一体形成するようにした。しかし、これに代えて、上板部61ba及び下板部61cを別々に形成しておいて、別々に形成した上板部61ba及び下板部61cbをその後に連結するようにしてもよい。この場合、上板部61ba及び下板部61cbを同一の材料で構成してもよいが、異なる材料で構成するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、ボールジョイント機構50A,50Bを用いて、タイロッド31,32の内側端をブラケット41に対して回転可能に接続するようにした。ボールジョイント機構50A,50Bを用いることは好ましいことであるが、本発明は、樹脂、ゴムなどを含む連結器を介して、タイロッド31,32の内側端をラックバー21の中央部位置にて回転可能に接続し、ラックバー21の左右方向の変位に応じてタイロッド31,32を揺動させて、左右前輪FW1,FW2を操舵する車両のステアリング装置に広く適用できる。具体的には、例えば、タイロッド31,32の内側端に形成した円筒部を貫通してラックバー21に固定されたボルトを設け、円筒部の内周面とボルトの外周面との間に、円筒状のゴムブッシュを介在させるように構成したステアリング装置にも適用できる。この場合も、ラックバー21が左右前輪FW1,FW2を操舵するために左右方向に変位したり、タイロッド31,32の内側端が左右前輪FW1,FW2のバウンド及びリバウンドにより上下方向に変位したりしても、ヒートインシュレータ61は、エンジン及びその付属部品から円筒状のゴムブッシュへの輻射熱を遮断するように、ボルト、ゴムブッシュなどを含む連結器を前方から後方に向けて覆うようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のステアリング装置の全体外観図である。
【図2】図1の2点鎖線で囲んだ部分の拡大横断面図である。
【図3A】ヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す平面図である。
【図3B】図3Aの3B−3B線に沿って見た断面図である。
【図4A】ブラケットの正面図、すなわち車両への組み付け状態にてブラケットを前方から見た図である。
【図4B】ブラケットの平面図である。
【図4C】ブラケットの側面図である。
【図4D】図4Aの4D−4D線に沿って見たブラケットの断面図である。
【図4E】図4Aの4E−4E線に沿って見たブラケットの断面図である。
【図5A】ヒートインシュレータの正面図、すなわち車両への組み付け状態にてヒートインシュレータを前方から見た図である。
【図5B】ヒートインシュレータの平面図である。
【図5C】ヒートインシュレータの側面図である。
【図5D】図5Cの矢印5Dによって示された部分のヒートインシュレータの部分拡大図である。
【図5E】図5Cの矢印5Eによって示された部分のヒートインシュレータの部分拡大図である。
【図6】ヒートインシュレータの作用を説明するための、熱源からの距離に対する温度の変化特性を示すグラフである。
【図7】ブラケットに対するヒートインシュレータの組付け状態を説明する説明図である。
【図8A】変形例に係るヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す部分平面図である。
【図8B】他の変形例に係るヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す部分平面図である。
【図8C】他の変形例に係るヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す部分平面図である。
【図8D】他の変形例に係るヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す部分平面図である。
【図9A】他の変形例に係り、ヒートインシュレータのブラケットへの組付け前の状態を示す縦断面図である。
【図9B】図9Aの変形例に係り、ヒートインシュレータのブラケットへの組付け後の状態を示す縦断面図である。
【図10】他の変形例に係り、ヒートインシュレータのブラケットへの組付け後の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
11…操舵ハンドル、13…ステアリングシャフト、21…ラックバー、22…ラックバーハウジング、23…ダストブーツ、31,32…タイロッド、40…連結器、41…ブラケット、41a…本体部、41a1,41a2…座面、41a3,41a4…突出部、41a8,41a10,41a11…溝、41a9…凹部、41b,41c…取付け部、47…ピン、50A,50B…ボールジョイント機構、51,52…球座部材、53,54…ボール部材、55,56…シート、61…ヒートインシュレータ、61b…上板部、61c…下板部、61b1,61c1…平面部、61b2,61c2,61b4…突出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向を左右方向にして延設され、操舵ハンドルの操舵操作に応じて左右方向に変位するラックバーと、
左右操舵輪を外側端にてそれぞれ接続し、前記左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、
前記ラックバーの軸線方向の中央部に固定されるとともに、前記左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続した連結部を有し、前記ラックバーと一体的に左右方向に変位して、前記左右操舵輪を左右に操舵するために前記左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、
前後方向における前記ラックバーと反対側端にて連結されて互いに対向する上板部及び下板部を有するように一体形成されていて、前記一対の連結部を覆うように前記連結器に固定され、前記連結器の前方に位置する熱源から前記一対の連結部への輻射熱を遮断するヒートインシュレータと
を備えたことを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記ラックバーからの距離が前記ラックバーから前記連結部までの距離よりも短い前記連結器上の位置に、前記ヒートインシュレータを固定部材により固定したことを特徴とする請求項1に記載した車両のステアリング装置。
【請求項3】
前記固定部材は金属製のボルトである請求項2に記載した車両のステアリング装置。
【請求項4】
前記連結器の上面及び下面のうちの少なくともいずれか一方の前記ラックバー側位置に平坦な座面部を形成するとともに、前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部のうちの少なくとも一方の左右方向中央位置に平面部を形成し、
前記ヒートインシュレータの平面部の内側面を前記連結器の座面部に密着させて前記固定部材により固定した請求項2又は3に記載した車両のステアリング装置。
【請求項5】
前記ヒートインシュレータを上下の2点で前記連結器に固定したことを特徴とする請求項2乃至4のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項6】
前記連結器の上面及び下面の少なくとも一方に段差部を設け、
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の端面の一部を前記連結器に設けた段差部の端面に当接させたことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項7】
前記連結器に設けた段差部は、前記ラックバー側にて高くなるように形成され、
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の前記ラックバー側の端面を前記連結器に設けた段差部の端面に当接させた請求項6に記載した車両のステアリング装置。
【請求項8】
前記連結器に設けた段差部における前記ラックバー側の高くなった部分に前後方向に沿った溝を設け、
前記ヒートインシュレータの前記ラックバー側の端面の一部に前記ラックバー側に突出させて突出部を設け、
前記ヒートインシュレータの前記突出部を前記連結器の溝に侵入させて前記突出部の左又は右側面を前記溝の内壁に当接させるとともに、前記ヒートインシュレータの前記突出部以外の前記ラックバー側の端面を前記連結器の段差部の端面に当接させた請求項7に記載した車両のステアリング装置。
【請求項9】
前記連結器の段差部は、前記ラックバー側にて高くなるように形成した部分に前記ラックバー側に入り込むように形成した方形状の凹部により構成され、
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の前記ラックバー側の端部を方形状に形成し、前記方形状の端部を前記連結器に形成した方形状の凹部に侵入させて、前記ヒートインシュレータの方形状の端部の前記ラックバーの軸線方向に平行な端面を、前記連結器の凹部のラックバーの軸線方向に平行な端面に当接させ、かつ前記ヒートインシュレータの方形状の端部の前記ラックバーの軸線方向と直交する両端面の一方を、前記連結器の凹部のラックバーの軸線方向と直交する両端面の一方に当接させた請求項6に記載した車両のステアリング装置。
【請求項10】
前記連結器に設けた段差部は、前記ラックバー側位置にラックバー側に向かうに従って狭い幅となる溝で構成され、
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の前記ラックバー側端部に、前記ラックバー側に向かうに従って狭い幅となる突出部を形成し、
前記突出部を前記溝に侵入させて、前記突出部の両側面を前記溝の両内側面にそれぞれ当接させるようにしたことを特徴とする請求項6に記載した車両のステアリング装置。
【請求項11】
前記ヒートインシュレータの前記固定部材よりも前記ラックバー側位置にて、前記ヒートインシュレータと前記連結器をピンにより位置決めするようにしたことを特徴とする請求項2乃至5のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項12】
前記ヒートインシュレータにおける上板部の面積を下板部の面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項1乃至11のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項13】
前記ヒートインシュレータの上板部を方形から前記ラックバー側の左右両側を斜め前方に切り欠いた形状に形成し、かつ前記下板部を方形状に形成した請求項12に記載した車両のステアリング装置。
【請求項14】
前記ヒートインシュレータを取り付ける前記連結器の上下座面間の上下方向の厚みが前記ラックバー側に向かうに従って厚くなるように前記連結器を形成し、
前記上板部及び下板部間の上下方向の間隔が前記ラックバー側に向かうに従って大きくなるように前記ヒートインシュレータを構成し、かつ
前記ヒートインシュレータを前記連結器に組付ける前の状態で、前記ヒートインシュレータの上板部と下板部によって挟まれる角度を、前記連結器の上下座面によって挟まれる角度よりも小さくしたことを特徴とする請求項1乃至13のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項15】
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部のうちの少なくとも一方における前記ラックバー側端部を前記連結器側に折り曲げて、前記折り曲げた部分を前記連結器の前記ラックバー側の端面に当接させたことを特徴とする請求項1乃至14のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項1】
軸線方向を左右方向にして延設され、操舵ハンドルの操舵操作に応じて左右方向に変位するラックバーと、
左右操舵輪を外側端にてそれぞれ接続し、前記左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、
前記ラックバーの軸線方向の中央部に固定されるとともに、前記左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ回転可能に接続した連結部を有し、前記ラックバーと一体的に左右方向に変位して、前記左右操舵輪を左右に操舵するために前記左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、
前後方向における前記ラックバーと反対側端にて連結されて互いに対向する上板部及び下板部を有するように一体形成されていて、前記一対の連結部を覆うように前記連結器に固定され、前記連結器の前方に位置する熱源から前記一対の連結部への輻射熱を遮断するヒートインシュレータと
を備えたことを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記ラックバーからの距離が前記ラックバーから前記連結部までの距離よりも短い前記連結器上の位置に、前記ヒートインシュレータを固定部材により固定したことを特徴とする請求項1に記載した車両のステアリング装置。
【請求項3】
前記固定部材は金属製のボルトである請求項2に記載した車両のステアリング装置。
【請求項4】
前記連結器の上面及び下面のうちの少なくともいずれか一方の前記ラックバー側位置に平坦な座面部を形成するとともに、前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部のうちの少なくとも一方の左右方向中央位置に平面部を形成し、
前記ヒートインシュレータの平面部の内側面を前記連結器の座面部に密着させて前記固定部材により固定した請求項2又は3に記載した車両のステアリング装置。
【請求項5】
前記ヒートインシュレータを上下の2点で前記連結器に固定したことを特徴とする請求項2乃至4のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項6】
前記連結器の上面及び下面の少なくとも一方に段差部を設け、
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の端面の一部を前記連結器に設けた段差部の端面に当接させたことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項7】
前記連結器に設けた段差部は、前記ラックバー側にて高くなるように形成され、
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の前記ラックバー側の端面を前記連結器に設けた段差部の端面に当接させた請求項6に記載した車両のステアリング装置。
【請求項8】
前記連結器に設けた段差部における前記ラックバー側の高くなった部分に前後方向に沿った溝を設け、
前記ヒートインシュレータの前記ラックバー側の端面の一部に前記ラックバー側に突出させて突出部を設け、
前記ヒートインシュレータの前記突出部を前記連結器の溝に侵入させて前記突出部の左又は右側面を前記溝の内壁に当接させるとともに、前記ヒートインシュレータの前記突出部以外の前記ラックバー側の端面を前記連結器の段差部の端面に当接させた請求項7に記載した車両のステアリング装置。
【請求項9】
前記連結器の段差部は、前記ラックバー側にて高くなるように形成した部分に前記ラックバー側に入り込むように形成した方形状の凹部により構成され、
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の前記ラックバー側の端部を方形状に形成し、前記方形状の端部を前記連結器に形成した方形状の凹部に侵入させて、前記ヒートインシュレータの方形状の端部の前記ラックバーの軸線方向に平行な端面を、前記連結器の凹部のラックバーの軸線方向に平行な端面に当接させ、かつ前記ヒートインシュレータの方形状の端部の前記ラックバーの軸線方向と直交する両端面の一方を、前記連結器の凹部のラックバーの軸線方向と直交する両端面の一方に当接させた請求項6に記載した車両のステアリング装置。
【請求項10】
前記連結器に設けた段差部は、前記ラックバー側位置にラックバー側に向かうに従って狭い幅となる溝で構成され、
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部の少なくとも一方の前記ラックバー側端部に、前記ラックバー側に向かうに従って狭い幅となる突出部を形成し、
前記突出部を前記溝に侵入させて、前記突出部の両側面を前記溝の両内側面にそれぞれ当接させるようにしたことを特徴とする請求項6に記載した車両のステアリング装置。
【請求項11】
前記ヒートインシュレータの前記固定部材よりも前記ラックバー側位置にて、前記ヒートインシュレータと前記連結器をピンにより位置決めするようにしたことを特徴とする請求項2乃至5のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項12】
前記ヒートインシュレータにおける上板部の面積を下板部の面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項1乃至11のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項13】
前記ヒートインシュレータの上板部を方形から前記ラックバー側の左右両側を斜め前方に切り欠いた形状に形成し、かつ前記下板部を方形状に形成した請求項12に記載した車両のステアリング装置。
【請求項14】
前記ヒートインシュレータを取り付ける前記連結器の上下座面間の上下方向の厚みが前記ラックバー側に向かうに従って厚くなるように前記連結器を形成し、
前記上板部及び下板部間の上下方向の間隔が前記ラックバー側に向かうに従って大きくなるように前記ヒートインシュレータを構成し、かつ
前記ヒートインシュレータを前記連結器に組付ける前の状態で、前記ヒートインシュレータの上板部と下板部によって挟まれる角度を、前記連結器の上下座面によって挟まれる角度よりも小さくしたことを特徴とする請求項1乃至13のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【請求項15】
前記ヒートインシュレータの上板部及び下板部のうちの少なくとも一方における前記ラックバー側端部を前記連結器側に折り曲げて、前記折り曲げた部分を前記連結器の前記ラックバー側の端面に当接させたことを特徴とする請求項1乃至14のうちのいずれか一つに記載した車両のステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公開番号】特開2009−40218(P2009−40218A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207370(P2007−207370)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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