説明

車両のドアアウタハンドル構造

【課題】車両の衝突時にて、レバー部材の慣性力による作動応答性が悪い場合でも、連係機構のドア開方向移動を規制して、ドアラッチ機構のアンラッチ動作を防止する。
【解決手段】ドア開放防止機構40は、車両の衝突時にドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で連係機構30のドア開方向作動を規制して、ドアラッチ機構のアンラッチ動作を防止する。このドア開放防止機構40は、図示のセット回転位置から車内方向の退避回転位置または車外方向のロック回転位置に回転可能なレバー部材41と、このレバー部材41を退避回転位置に向けて付勢する付勢部材42を備えている。レバー部材41がセット回転位置またはロック回転位置にあるときには、レバー部材41の一部41gが連係機構30の連結レバー33における突起33bのドア開方向移動軌跡内に介在していて、突起33aのドア開方向移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアアウタハンドル構造、特に、車両のドアに固定されるベース部材と、このベース部材に車両内外方向にて揺動可能に設けられてドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置間にて操作可能なアウタハンドルと、このアウタハンドルのドア開動作をドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能な連係機構を備えるとともに、車両の衝突時に前記ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で前記連係機構の構成部材のドア開方向作動を規制する(前記連係機構の機能を無効とする)ドア開放防止機構を備えている車両のドアアウタハンドル構造に関する。
【0002】
なお、車両の衝突時において、前記連係機構の構成部材がドア開方向に作動するのは、車両衝突時にドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力でアウタハンドルが開作動することに因るものである。また、ドアラッチ機構のアンラッチ動作は、ラッチ状態のドアラッチ機構をアンラッチ状態とする作動であって、ドアラッチ機構のラッチ状態では車両の閉じたドアを車外方向に向けた力で開放することが不能であり、ドアラッチ機構のアンラッチ状態では車両の閉じたドアを車外方向に向けた力で開放することが可能である。
【背景技術】
【0003】
この種の車両のドアアウタハンドル構造は、例えば、下記特許文献1に示されていて、前記ドア開放防止機構が、前記ベース部材に回転可能に設けられていてセット回転位置(初期位置)から車外方向のロック回転位置に回転可能な慣性ストッパ部材(レバー部材)と、この慣性ストッパ部材をセット回転位置に向けて付勢する付勢部材を備えている。下記特許文献1に記載されている車両のドアアウタハンドル構造では、車両の衝突時の慣性力(車外方向に向けた力)が慣性ストッパ部材に作用して、慣性ストッパ部材が付勢部材の付勢力に抗してセット回転位置から車外方向のロック回転位置に回転作動したとき、慣性ストッパ部材の一部が前記構成部材のドア開方向移動軌跡内に移動して、前記連係機構のドア開方向作動が慣性ストッパ部材によって規制されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−243101号公報
【0005】
上記した特許文献1に記載されている車両のドアアウタハンドル構造においては、慣性ストッパ部材が付勢部材の付勢力によってセット回転位置に保持されているとき(通常時には)、慣性ストッパ部材が前記構成部材のドア開方向移動軌跡外にあって、前記連係機構のドア開方向作動が許容されている。このため、通常時には、アウタハンドルのドア開動作が連係機構によってドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能であり、アウタハンドルのドア開操作によって車両のドアを開放することが可能である。
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、上記した特許文献1に記載されている車両のドアアウタハンドル構造においては、車両の衝突時に、ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力でアウタハンドルが開作動する前に、慣性ストッパ部材に所定の慣性力が作用して、慣性ストッパ部材が付勢部材の付勢力に抗してセット回転位置から車外方向のロック回転位置に回転作動し、慣性ストッパ部材の一部が前記構成部材のドア開方向移動軌跡外からドア開方向移動軌跡内に移動するように設定されている。
【0007】
このため、車両の衝突時において、慣性ストッパ部材が正常に回転作動する場合には、ドア開放防止機構にて所期の作動が得られるものの、慣性ストッパ部材が正常に回転作動しなくて、慣性ストッパ部材の慣性力による車外方向への作動応答性が悪い場合には、連係機構の構成部材が慣性ストッパ部材によってドア開方向作動を規制されないおそれがあり、ドアラッチ機構のアンラッチ動作を的確に防止することができないおそれがある。
【0008】
また、上記した特許文献1に記載されている車両のドアアウタハンドル構造においては、通常時、慣性ストッパ部材が付勢部材の付勢力によってセット回転位置(初期位置)に保持されていて、アウタハンドルの通常操作(日常的なドア開放操作)によっては、慣性ストッパ部材が回転しないように設定されている。このため、慣性ストッパ部材の回転部分に塵や埃が付着して固化するおそれがあり、慣性ストッパ部材の回転が長期間保証されなくて、万一の車両衝突に際して、慣性ストッパ部材の所期の回転作動が得られないおそれがある。
【0009】
(課題を解決するための手段と作用効果)
本発明は、上記した各課題を解決すべくなされたものであり、車両のドアに固定されるベース部材と、このベース部材に車両内外方向にて揺動可能に設けられてドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置間にて操作可能なアウタハンドルと、このアウタハンドルのドア開動作をドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能な連係機構を備えるとともに、車両の衝突時に前記ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で前記連係機構の構成部材のドア開方向作動を規制するドア開放防止機構を備えていて、前記ドア開放防止機構が、セット回転位置から少なくとも車内方向の退避回転位置に回転可能なレバー部材と、このレバー部材を前記退避回転位置に向けて付勢する付勢部材を備えていて、前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置にあるときには前記セット回転位置に保持され、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置から前記ドア開位置に操作されるときにはその操作初期に前記付勢部材の付勢力によって前記セット回転位置から車内方向に回転して前記退避回転位置に移動され、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置より車外方向に回転してロック回転位置に移動されるように設定(又は、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置に留まるように設定)されており、前記レバー部材が前記セット回転位置または前記ロック回転位置にあるときには、前記構成部材のドア開方向移動を規制し、前記レバー部材が前記退避回転位置にあるときには、前記構成部材のドア開方向移動を許容するように設定されている車両のドアアウタハンドル構造(請求項1に係る発明)に特徴がある。
【0010】
上記した請求項1に係る発明においては、レバー部材がセット回転位置またはロック回転位置にあるときには、前記構成部材のドア開方向移動を規制するように設定されている。このため、車両の衝突時において、セット回転位置またはロック回転位置にあるレバー部材によって前記構成部材のドア開方向移動を規制することができて、ドアラッチ機構のアンラッチ動作(ドアが閉じた状態(ラッチ状態)からドアを開き得る状態(アンラッチ状態)に移行する動作)を的確に防止することができる。
【0011】
また、上記した請求項1に係る発明においては、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置から前記ドア開位置に操作されるときには、その操作初期にレバー部材が前記セット回転位置から車内方向に回転して前記退避回転位置に移動されるように設定されている(前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア開位置から前記ドア閉位置に戻るときには、その作動後期にレバー部材が前記退避回転位置から車外方向に回転して前記セット回転位置に移動されるように設定されている)。このため、レバー部材はアウタハンドルの通常操作(日常的なドア開放操作)に伴って付勢部材と協働してセット回転位置と退避回転位置間にて回転する。したがって、レバー部材の回転部分に塵や埃が付着して固化することを防止することができて、レバー部材の回転が長期間保証される。
【0012】
また、本発明は、車両のドアに固定されるベース部材と、このベース部材に車両内外方向にて揺動可能に設けられてドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置間にて操作可能なアウタハンドルと、このアウタハンドルのドア開動作をドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能な連係機構を備えるとともに、車両の衝突時に前記ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で前記連係機構の構成部材のドア開方向作動を規制するドア開放防止機構を備えていて、前記ドア開放防止機構が、前記ベース部材に所定量回転可能に設けられていてセット回転位置から車内方向の退避回転位置または車外方向のロック回転位置に回転可能なレバー部材と、このレバー部材を前記退避回転位置に向けて付勢する付勢部材を備えていて、前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置にあるときには前記セット回転位置に保持され、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置から前記ドア開位置に操作されるときにはその操作初期に前記付勢部材の付勢力によって前記セット回転位置から車内方向に回転して前記退避回転位置に移動され、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置より車外方向に回転して前記ロック回転位置に移動されるように設定されており、前記レバー部材が前記セット回転位置または前記ロック回転位置にあるときには、前記レバー部材の一部が前記構成部材のドア開方向移動軌跡内に介在して前記構成部材のドア開方向移動を規制し、前記レバー部材が前記退避回転位置にあるときには、前記レバー部材の一部が前記構成部材のドア開方向移動軌跡外に退避して前記構成部材のドア開方向移動を許容するように設定されている車両のドアアウタハンドル構造(請求項2に係る発明)に特徴がある。
【0013】
上記した請求項2に係る発明においては、レバー部材がセット回転位置またはロック回転位置にあるときには、レバー部材の一部が前記構成部材のドア開方向移動軌跡内に介在して前記構成部材のドア開方向移動を規制するように設定されている。このため、車両の衝突時において、レバー部材の慣性力による車外方向への作動応答性が悪い場合(所定の慣性力によってレバー部材がセット回転位置からロック回転位置に移動するタイミングが遅れる場合)でも、セット回転位置にあるレバー部材によって前記構成部材のドア開方向移動を規制することができて、ドアラッチ機構のアンラッチ動作(ドアが閉じた状態(ラッチ状態)からドアを開き得る状態(アンラッチ状態)に移行する動作)を的確に防止することができる。
【0014】
また、上記した請求項2に係る発明においては、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置から前記ドア開位置に操作されるときには、その操作初期にレバー部材が前記セット回転位置から車内方向に回転して前記退避回転位置に移動されるように設定されている(前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア開位置から前記ドア閉位置に戻るときには、その作動後期にレバー部材が前記退避回転位置から車外方向に回転して前記セット回転位置に移動されるように設定されている)。このため、レバー部材はアウタハンドルの通常操作(日常的なドア開放操作)に伴って付勢部材と協働してセット回転位置と退避回転位置間にて回転する。したがって、レバー部材の回転部分に塵や埃が付着して固化することを防止することができて、レバー部材の回転が長期間保証され、万一の車両衝突に際してのレバー部材の回転作動を維持(保証)することができる。
【0015】
上記した請求項2に係る発明の実施に際して、前記ドア開放防止機構は、前記レバー部材を前記ロック回転位置にて保持する保持機構を備えていて、前記慣性力が前記レバー部材に作用して前記レバー部材が前記セット回転位置から前記ロック回転位置に移動したときには、前記保持機構が前記レバー部材を前記ロック回転位置にて保持するように設定されていること(請求項3に係る発明)も可能である。この場合には、車両の衝突時において、レバー部材に作用する所定の慣性力にてレバー部材がセット回転位置からロック回転位置に移動したとき、保持機構がレバー部材をロック回転位置にて保持する。このため、その後に、レバー部材に作用する慣性力が変動して(車両の衝突時における慣性力の方向は、交互に入れ替わる可能性がある)、仮に、付勢部材の付勢力より慣性力が小さくなっても、レバー部材は、保持機構によりロック回転位置に保持され、付勢部材の付勢力によってロック回転位置からセット回転位置に戻されることはない。したがって、ドア開放防止機構の機能が慣性力の変動に拘わらず維持されて、安全性が向上する。
【0016】
上記した請求項3に係る発明の実施に際して、前記連係機構は、前記アウタハンドルを前記ドア開位置から前記ドア閉位置に自動的に復帰させる復帰機構を備えるとともに、この復帰機構による復帰動作に連動して前記保持機構によって前記ロック回転位置に保持されている前記レバー部材を前記ロック回転位置から解除するロック解除機構を備えていて、このロック解除機構によって前記ロック回転位置から解除された前記レバー部材は前記付勢部材の付勢力によって前記セット回転位置に復帰するように設定されていること(請求項4に係る発明)も可能である。この場合には、車両の衝突後(すなわち、上記した慣性力が消失した後)に、レバー部材は、上記した復帰機構、ロック解除機構、付勢部材の付勢力等の協働作用により、ロック回転位置から解除されてセット回転位置に復帰する。このため、車両の衝突後にも、アウタハンドルをドア閉位置からドア開位置へ操作して、当該ドアを開けることが可能である。
【0017】
また、上記した各発明の実施に際して、前記レバー部材が、前記セット回転位置では第1係合部にて前記ドア閉位置にある前記アウタハンドルの一部と係合して前記付勢部材による回転を規制され、前記退避回転位置では第2係合部にて前記ベース部材に設けたストッパ部と係合して前記付勢部材による回転を規制されていること(請求項5に係る発明)も可能である。この場合には、シンプルな構成(アウタハンドルの一部とレバー部材の第1係合部)にてアウタハンドルとレバー部材を連係させることが可能であるとともに、シンプルな構成(ベース部材に設けたストッパ部とレバー部材の第2係合部)にてベース部材に対するレバー部材の回転量を規制することが可能であって、安価に実施することが可能である。また、この場合には、ベース部材に対するレバー部材の回転量を必要最小量に規定することが可能であって、省スペース化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による車両のドアアウタハンドル構造を備えた車両用ドアの一実施形態を車両の外側からみた部分斜視図である。
【図2】図1に示した車両のドアアウタハンドル構造における主要構成のセット状態を示した平面図である。
【図3】図2に示した主要構成をドア内側から見た図である。
【図4】図3に示した主要構成を図3の右方(車両後方)から見た図である。
【図5】図3および図4に示した主要構成のドア内側で車両後方から見た斜視図である。
【図6】図3および図4に示した主要構成のドア内側で車両前方から見た斜視図である。
【図7】図2〜図6に示した状態(セット状態)でのベース部材とレバー部材とこれらの間に介装したスプリングの関係を示した縦断正面図である。
【図8】図2〜図6に示した状態(セット状態)でのベース部材とレバー部材とアウタハンドルの関係を示した平面図である。
【図9】図8のA−A線に沿った断面図である。
【図10】図2〜図9に示したベース部材単体のドア内側で車両後方から見た斜視図である。
【図11】図2〜図9に示したベース部材単体のドア内側から見た図である。
【図12】図2〜図9に示したレバー部材単体の正面図である。
【図13】図12に示したレバー部材単体の平面図である。
【図14】図12のB−B線に沿った縦断端面図である。
【図15】図5に示したレバー部材が退避回転位置にあるとき(退避状態)の主要構成のドア内側で車両後方から見た斜視図である。
【図16】図6に示したレバー部材が退避回転位置にあるとき(退避状態)の主要構成のドア内側で車両前方から見た斜視図である。
【図17】図15および図16に示した状態(退避状態)でのベース部材とレバー部材とアウタハンドルの関係を示した平面図である。
【図18】図5に示したレバー部材がロック回転位置にあるとき(ロック状態、すなわち、レバー部材に車外方向への所定の慣性力が作用する車両衝突時)の主要構成のドア内側で車両後方から見た斜視図である。
【図19】図6に示したレバー部材がロック回転位置にあるとき(ロック状態)の主要構成のドア内側で車両前方から見た斜視図である。
【図20】図18および図19に示した主要構成をドア内側から見た図である。
【図21】図18〜図20に示した状態(ロック状態)でのベース部材とレバー部材とこれらの間に介装したスプリングの関係を示した縦断正面図である。
【図22】図18〜図21に示した状態(ロック状態)でのベース部材とレバー部材とアウタハンドルの関係を示した平面図である。
【図23】本発明による車両のドアアウタハンドル構造を備えた車両用ドアの他の実施形態の主要構成をドア内側で車両後方から見た斜視図である。
【図24】図23に示したケースにレバー部材とコイルスプリングを組付けた状態(ケース、レバー部材、コイルスプリング等をサブアッシィ化した状態)の斜視図である。
【図25】図24に示したケース、レバー部材、コイルスプリング等の分解斜視図である。
【図26】図25に示したケース単体の斜視図である。
【図27】図26に示したケース単体のドア外側から見た側面図である。
【図28】図25に示したレバー部材単体のドア外側から見た側面図である。
【図29】図28に示したレバー部材単体の平面図である。
【図30】図23に示した実施形態のセット状態を示した作動説明図である。
【図31】図30に示した状態でのケース、レバー部材、コイルスプリング等の関係を示した断面図である。
【図32】図23に示した実施形態の側突時の状態(レバー部材がロック回転位置に保持されている状態)を示した作動説明図である。
【図33】図23に示した実施形態の側突後の状態(側突後に連結レバーが復帰する状態)を示した作動説明図である。
【図34】図32、図33に示した状態でのケース、レバー部材、コイルスプリングの関係を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図22は本発明による車両のドアアウタハンドル構造を備えた車両用ドアの一実施形態を示していて、この実施形態のドアアウタハンドル構造では、図1に示したように、車両の後方右側に装備されるドア100にベース部材10が固定されている。このベース部材10には、図2に示したように、アウタハンドル20、連係機構30、ドア開放防止機構40等が組付けられている。ベース部材10は、ドア100におけるアウタパネル101の内側に固定されていて(図7参照)、車両後方端部11にはアウタパネル101(図2では省略)を挟む状態にてキャップ50(ベース部材10に対してアウタハンドル20を抜け止めするもの)が組付けられている(図1および図2参照)。
【0020】
アウタハンドル20は、略水平状態でベース部材10に車両内外方向(車幅方向)にて揺動可能に設けられているグリップ型のハンドルであり、アウタパネル101を挟む状態にてベース部材10に組付けられていて、ドア閉位置(図2の実線で示した位置)とこれより車外方向のドア開位置(図2の仮想線で示した位置)間にて操作可能に構成されている。このアウタハンドル20は、車両前方端部21にてベース部材10に揺動可能に組付けられていて、車両後方端部22が図2の実線位置から仮想線位置に向けて車外方向に所要量移動可能に構成されている。また、アウタハンドル20の車両後方端部22には、連係機構30の構成部材であるベルクランク31と係合するとともにドア開放防止機構40の構成部材であるレバー部材41と係合するL字状の係合部22a(図8参照)が形成されている。なお、アウタハンドル20がドア閉位置にあるときには、アウタハンドル20の上下端部がクッション102を介してアウタパネル101に係合(当接)している(図7参照)。アウタハンドル20がドア閉位置にあるとき、図8に示したように、アウタハンドル20の係合部22aがベース部材10のストッパ部19に係合(当接)するようにしてもよい。
【0021】
連係機構30は、アウタハンドル20の車外方向へのドア開動作をドアラッチ機構(図示省略)のアンラッチ動作(ラッチ状態からアンラッチ状態に移行する動作)として伝達可能であり、図2〜図6に示したように、上記したベルクランク31を備えるとともに、コイルスプリング32と、連結レバー33を備えている。なお、ドアラッチ機構(図示省略)は、周知のものであり、車体側に固定されるストライカと、ドア100側に組付けられるラッチおよびポール等を備えていて、ラッチ状態ではポールがストライカに係合するラッチの回転を規制して、ドア開動作(閉じたドア100の開放動作)を不能とし、アンラッチ状態ではポールがストライカに係合するラッチの回転を許容して、ドア開動作を可能とする。
【0022】
ベルクランク31は、軸部31aにてベース部材10に回転可能に組付けられていて、入力アーム部31bと出力アーム部31cを有している。入力アーム部31bは、軸部31aの径方向で下方に延出しており、先端にてアウタハンドル20における係合部22aの車両外側面に係合(当接)している(図8参照)。出力アーム部31cは、軸部31aの径方向で上方に延出していて、連結ピン34(これは連結レバー33に一体的に形成されていてもよい)を介して連結レバー33の上端部33aに連結されている。ここで、出力アーム部31cに、軸部31aに沿って延びるウエイト部(慣性部)を設けて実施することも可能である。なお、出力アーム部31cのウエイト部(慣性部)は、車両衝突時にドア100の車外方向に向けて作用する慣性力でアウタハンドル20が開作動することを規制するためのものであり、この規制力はウエイト部(慣性部)の質量とコイルスプリング32の付勢力によって設定される。
【0023】
コイルスプリング32は、ベルクランク31とアウタハンドル20を図2〜図8に示したセット位置(ドア閉位置)に向けて付勢するリターンスプリング(アウタハンドル20をドア開位置からドア閉位置に自動的に復帰させる復帰機構の構成部材)であり、ベルクランク31の軸部31a外周に組付けられていて、一端にてベース部材10に係合し他端にてベルクランク31に係合しており、ベルクランク31の入力アーム部31bがアウタハンドル20の係合部22aに係合する方向(図4の時計回転方向)に所定の付勢力にて回転付勢している。このため、ベルクランク31の入力アーム部31bは、アウタハンドル20の係合部22aに弾性的に係合している。
【0024】
連結レバー33は、上端部33aにてベルクランク31の出力アーム部31cに連結され、下端部(図示省略)にてドアラッチ機構のポール(図示省略)と連係するアウトサイドオープンレバー(図示省略)に係合していて、アウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に操作されて、ベルクランク31がコイルスプリング32の付勢力に抗して所定量回転するときに、図3および図4に示したセット位置(初期位置)から所定量下方に移動するように構成されている。また、連結レバー33には、ドア開放防止機構40のレバー部材41に対して係合可能な三角形状の突起33bが一体的に形成されている。
【0025】
上記した連係機構30においては、ドア100が閉じた状態で、アウタハンドル20がドア閉位置にあり、連結レバー33が初期位置にあるときには、ドアラッチ機構がラッチ状態とされ、アウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に操作されて、連結レバー33が初期位置から所定量下方に移動したときには、ドアラッチ機構がアンラッチ状態とされるように設定されている。このため、コイルスプリング32の付勢力に抗したベルクランク31の回転と、連結レバー33の下方への移動は、ドア開方向作動である。
【0026】
ドア開放防止機構40は、ドア100が閉じた状態での車両の衝突時にドア100の車外方向に向けて作用する所定の慣性力で連係機構30における連結レバー33の下方への移動(ドア開方向作動)を規制するものであり、ベース部材10に組付けられるレバー部材41と、このレバー部材41とベース部材10間に組付けられるコイルスプリング42を備えている。なお、図11と図12に示したラインaは、レバー部材41が図2〜図9に示したセット回転位置にあるとき上下方向で一致する基準ラインである。
【0027】
レバー部材41は、図12〜図14に示したように、上方軸部41a、中間軸部41b、下方軸部41cを有するとともに、スプリング取付軸部41dを有している。また、レバー部材41は、係合突起部41eとストッパ突起部41fを有するとともに、レバー部41gとシュー部41hを有している。このレバー部材41は、図8に示したセット回転位置(初期回転位置)から図17に示した車内方向の退避回転位置または図22に示した車外方向のロック回転位置に回転可能である。
【0028】
上方軸部41aは、ベース部材10の上方支持部12に対して回転可能かつ軸方向(上下方向)に所要量移動可能に組付けられている。中間軸部41bは、ベース部材10の中間支持部13に対して回転可能かつ軸方向(上下方向)に所要量移動可能に組付けられている。下方軸部41cは、ベース部材10の下方支持部14に対して回転可能かつ軸方向(上下方向)に所要量移動可能に組付けられている。
【0029】
スプリング取付軸部41dは、中間軸部41bと下方軸部41c間に設けられていて、コイルスプリング42のコイル部が伸縮可能に組付けられている。係合突起部41eは、図8に示したように、アウタハンドル20の係合部22aに対して係合・離脱可能であり、アウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に向けて操作されて、ストッパ突起部41fがベース部材10のストッパ部15に当接するまではアウタハンドル20の係合部22aに係合しており、ストッパ突起部41fがベース部材10のストッパ部15に当接した後にはアウタハンドル20の係合部22aから離脱する(図17参照)。ストッパ突起部41fは、ベース部材10のストッパ部15に対して係合・離脱可能である。
【0030】
レバー部41gは、上方軸部41aおよび中間軸部41bから径方向(水平方向)に所要量延出していて、先端部が初期位置にある連結レバー33の突起33bの下方に進入・退避可能である。シュー部41hは、図8および図9に示したように、ベース部材10に設けた段部上面16または段部下面17に対して摺動可能に係合するものであり、ベース部材10の段部上面16と段部下面17間に形成した傾斜面(壁面)18およびコイルスプリング42とによってレバー部材41をロック回転位置にて保持する保持機構HM1を構成する傾斜面41h1を有している。
【0031】
コイルスプリング42は、図7に示したように、ベース部材10とレバー部材41との間に組付けられている付勢部材であり、上端にてベース部材10に係止され、下端にてレバー部材41に係止されていて、ベース部材10に対してレバー部材41を図17に示した退避回転位置に向けて回転方向に付勢するとともに、ベース部材10に対してレバー部材41を図21に示した下方位置(ロック保持位置)に向けて軸方向に付勢している。
【0032】
保持機構HM1において、ベース部材10の段部上面16と段部下面17間に形成した傾斜面18は、図9に示したように、シュー部41hに形成した傾斜面41h1に対して略平行に形成されている。また、傾斜面18は、段部上面16および段部下面17に対して鋭角をなすように形成されている。そのため、レバー部材41が一度ロック回転位置に回転すると、レバー部材41がコイルスプリング42によって下方に押されて、傾斜面41h1が傾斜面18に対向する。このため、その後に、レバー部材41がロック回転位置からセット回転位置側に回転しようとしても、傾斜面41h1と傾斜面18が当接・係合して、レバー部材41はロック回転位置にて保持される。傾斜面41h1と傾斜面18は、段部上面16および段部下面17に対して鋭角をなすように形成されているため、傾斜面41h1と傾斜面18が当接・係合した際には、楔としての役割を果たす。もちろん、傾斜面41h1と傾斜面18は、例えば、段部上面16および段部下面17に対して直角(縦壁面)となるように形成して実施することも可能である。
【0033】
上記のように構成したこの実施形態においては、前記慣性力(ドア100の車外方向に向けて作用する所定の慣性力)が作用しない状態にて、アウタハンドル20がドア閉位置にあるときには、レバー部材41が図2〜図9に示したセット回転位置に保持され、前記慣性力が作用しない状態にて、アウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に操作されるときには、その操作初期にアウタハンドル20の係合部22aがレバー部材41の係合突起部41eから離脱する。これにより、レバー部材41がコイルスプリング42の回転付勢力によって前記セット回転位置から車内方向に回転して図15〜図17に示した退避回転位置に移動される。また、前記慣性力が作用するときには(例えば、車両の側突時には)、ドア100の車外方向に向けて作用する所定の慣性力でアウタハンドル20が開作動する前に、レバー部材41がコイルスプリング42の回転付勢力に抗して前記セット回転位置より車外方向に回転して図18〜図22に示したロック回転位置に移動されるように設定されている。
【0034】
また、この実施形態においては、レバー部材41がセット回転位置またはロック回転位置にあるときには、レバー部材41のレバー部41gが連係機構30の構成部材である連結レバー33のドア開方向移動軌跡内に介在して連結レバー33のドア開方向移動を規制し、レバー部材41が退避回転位置にあるときには、レバー部材41のレバー部41gが連結レバー33のドア開方向移動軌跡外に退避して連結レバー33のドア開方向移動を許容するように設定されている。なお、レバー部材41がセット回転位置にあるときには、図2〜図6に示したように、レバー部41gの先端部が連結レバー33における突起33bの先端部のドア開方向移動軌跡内に介在している。また、レバー部材41がロック回転位置にあるときには、図18〜図20に示したように、レバー部41gの中間部が連結レバー33における突起33bの基端部のドア開方向移動軌跡内に介在していて、レバー部材41がセット回転位置にあるときに比して、レバー部材41のレバー部41gと連結レバー33における突起33bとの係合可能面積が大きくされている。
【0035】
このため、上記した実施形態においては、車両の衝突時において、レバー部材41の慣性力による車外方向への作動応答性が悪い場合(所定の慣性力によってレバー部材41がセット回転位置からロック回転位置に移動するタイミングが遅れる場合)でも、セット回転位置にあるレバー部材41によって連結レバー33のドア開方向移動を規制することができて、ドアラッチ機構のアンラッチ動作(ドア100が閉じた状態(ラッチ状態)からドア100を開き得る状態(アンラッチ状態)に移行する動作)を的確に防止することができる。
【0036】
また、上記した実施形態においては、前記慣性力が作用しない状態にてアウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に操作されるときには、その操作初期にレバー部材41がセット回転位置から車内方向に回転して退避回転位置に移動されるように設定されている(前記慣性力が作用しない状態にてアウタハンドル20がドア開位置からドア閉位置に戻るときには、その作動後期にレバー部材41が退避回転位置から車外方向に回転してセット回転位置に移動されるように設定されている)。このため、レバー部材41はアウタハンドル20の通常操作(日常的なドア開放操作)に伴ってコイルスプリング42と協働してセット回転位置と退避回転位置間にて回転する。したがって、レバー部材41の回転部分に塵や埃が付着して固化することを防止することができて、レバー部材41の回転が長期間保証され、万一の車両衝突に際してのレバー部材41の回転作動を維持(保証)することができる。
【0037】
また、上記した実施形態においては、ドア開放防止機構40が、レバー部材41をロック回転位置にて保持する保持機構HM1(図9参照)を備えている。このため、前記慣性力がレバー部材41に作用してレバー部材41がセット回転位置からロック回転位置に移動したときには、コイルスプリング42の軸方向付勢力によりレバー部材41が軸方向下方(図9の左方)に向けて移動して、シュー部41hの傾斜面41h1がベース部材10の傾斜面18と当接・係合する。これにより、保持機構HM1がレバー部材41をロック回転位置にて保持する。
【0038】
したがって、車両の衝突時において、レバー部材41に作用する所定の慣性力にてレバー部材41がセット回転位置からロック回転位置に移動したとき、保持機構HM1がレバー部材41をロック回転位置にて保持する。このため、その後に、レバー部材41に作用する慣性力が変動して、仮に、コイルスプリング42の付勢力より慣性力が小さくなっても、レバー部材41は、保持機構HM1によりロック回転位置に保持され、コイルスプリング42の付勢力によってロック回転位置からセット回転位置に戻されることはない。したがって、ドア開放防止機構40の機能が慣性力の変動に拘わらず維持されて、安全性が向上する。
【0039】
また、上記した実施形態においては、レバー部材41が、係合突起部41e(第1係合部)とストッパ突起部41f(第2係合部)を有していて、セット回転位置では係合突起部41eにてドア閉位置にあるアウタハンドル20の係合部22aと係合してコイルスプリング42による回転を規制され、退避回転位置ではストッパ突起部41fにてベース部材10に設けたストッパ部15と係合してコイルスプリング42による回転を規制されている。
【0040】
このため、上記した実施形態においては、シンプルな構成(アウタハンドル20の係合部22aとレバー部材41の係合突起部41e)にてアウタハンドル20とレバー部材41を連係させることが可能であるとともに、シンプルな構成(ベース部材10に設けたストッパ部15とレバー部材41のストッパ突起部41f)にてベース部材10に対するレバー部材41の回転量を規制することが可能であって、安価に実施することが可能である。また、上記した実施形態においては、ベース部材10に対するレバー部材41の回転量を必要最小量に規定することが可能であって、省スペース化を図ることが可能である。
【0041】
上記した実施形態(図1〜図22に示した実施形態)においては、ドア開放防止機構40のレバー部材41がベース部材10に直接組付けられることにより、レバー部材41がベース部材10に所定量回転可能に設けられているが、図23〜図34に示した他の実施形態のように、ドア開放防止機構140のレバー部材141がベース部材110にケース160を介して組付けられることにより、レバー部材141がベース部材110に所定量回転可能に設けられていることも可能である。
【0042】
図23〜図34に示した実施形態では、上記実施形態の保持機構HM1と同等の保持機構HM2(図24、図32参照)が設けられている。また、図23〜図34に示した実施形態では、ロック解除機構KM(図33参照)も設けられている。また、図23〜図34に示した実施形態では、上記実施形態の連係機構30と同等の連係機構130が設けられている。なお、連係機構130の構成(ベルクランク131、コイルスプリング132、連結レバー133、連結ピン134等)は、連結レバー133の形状を除いて、上記実施形態の連係機構30の構成(ベルクランク31、コイルスプリング32、連結レバー33、連結ピン34等)と実質的に同じであるため、100番台の同一符号を付して、その説明は省略する。
【0043】
ケース160は、図23〜図27に示したように、レバー部材141の一部を除いた大部分と、コイルスプリング142の略全部を被覆保護していて、上記実施形態の上方支持部12、中間支持部13、下方支持部14に相当する上方支持部(軸部)161と下方支持部(軸部)162を備えるとともに、上記実施形態の段部上面16、段部下面17に相当する段部上面163、段部下面164を備えている。
【0044】
また、ケース160は、取付孔165aを有する取付片165と、ケース160をベース部材110に組付ける際にベース部材110に設けたピン孔110a(図23参照)に嵌合される位置決めピン166と、ケース160をビス170にてベース部材110に組付ける際にケース160が回転しないようにする回り止め突起167を備えている。なお、回り止め突起167は、ベース部材110の一部に係合するように構成されている。
【0045】
レバー部材141は、図23〜図25、図28、図29および図31に示したように、上方軸部(中空軸部)141a、下方軸部(中空軸部)141bを有するとともに、スプリング保持部141cを有している。また、レバー部材141は、係合突起部141dとストッパ係合部141eを有するとともに、レバー部141fとシュー部141gを有している。このレバー部材141は、図23、図30に示したセット回転位置(初期回転位置)から図示省略した車内方向の退避回転位置または図32〜図34に示した車外方向のロック回転位置に回転可能である。
【0046】
上方軸部141aは、ケース160の上方支持部161に対して回転可能かつ軸方向(上下方向)に所要量移動可能に組付けられている。下方軸部141bは、ケース160の下方支持部162に対して回転可能かつ軸方向(上下方向)に所要量移動可能に組付けられている。スプリング保持部141cは、上方軸部141aと下方軸部141b間に設けられていて、コイルスプリング142のコイル部下端部が伸縮可能に収容保持されている。
【0047】
係合突起部141dは、上記実施形態と同様にアウタハンドル120の係合部122aに対して係合・離脱可能であり、アウタハンドル120がドア閉位置からドア開位置に向けて操作されて、ストッパ係合部141eがケース160のストッパ部168に当接するまではアウタハンドル120の係合部122a(図31参照)に係合しており、ストッパ係合部141eがケース160のストッパ部168に当接した後にはアウタハンドル120の係合部122aから離脱する。ストッパ係合部141eは、ケース160のストッパ部168に対して係合・離脱可能である。
【0048】
レバー部141fは、上方軸部141aから径方向(水平方向)に所要量延出していて、先端部が初期位置にある連結レバー133の突起133bの下方に進入・退避可能である。シュー部141gは、図30および図32に示したように、ケース160に設けた段部上面163または段部下面164に対して摺動可能に係合するものであり、ケース160の段部上面163と段部下面164間に形成した縦壁面Wおよびコイルスプリング142とによってレバー部材141をロック回転位置にて保持する保持機構HM2を構成する縦壁を有している。
【0049】
コイルスプリング142は、図24および図31に示したように、ケース160とレバー部材141との間に組付けられている付勢部材であり、上端にてケース160に係止され、下端にてレバー部材141に係止されていて、ケース160に対してレバー部材141を図示省略した退避回転位置に向けて回転方向に付勢するとともに、ケース160に対してレバー部材141を図32〜図34に示した下方位置(ロック保持位置)に向けて軸方向に付勢している。なお、コイルスプリング142のコイル部は、レバー部材141に設けたスプリング保持部141cによって保持されるとともに、ケース160に設けたスプリング保持部169によっても保持されている。
【0050】
ロック解除機構KMは、連係機構130のコイルスプリング132(復帰機構)による復帰動作に連動して前記保持機構HM2によって前記ロック回転位置に保持されているレバー部材141を前記ロック回転位置から解除する(具体的には、レバー部材141をコイルスプリング142の軸方向付勢力に抗して上方に押動する)ものであり、レバー部材141にコ字状の解除部133cを設けることにより構成されている。このロック解除機構KMによって前記ロック回転位置から解除されたレバー部材141は、コイルスプリング142(付勢部材)の回転付勢力によって前記セット回転位置に復帰するように設定されている。
【0051】
なお、図23〜図34に示した実施形態では、ドア開放防止機構140がロック解除機構KM(図33参照)を備えていること、および、ドア開放防止機構140のレバー部材141がベース部材110にケース160を介して組付けられていること等を除いて、上記した実施形態(図1〜図22に示した実施形態)のドア開放防止機構40と同様に構成されている。このため、図23〜図34に示した実施形態でも、上記した実施形態の作用効果(上記した段落番号33〜40の記載内容参照)と実質的に同様の作用効果を得ることが可能である。
【0052】
また、図23〜図34に示した実施形態では、レバー部材141の一部を除いた大部分と、コイルスプリング142の略全部を被覆保護するケース160が設けられている。このため、レバー部材141、コイルスプリング142等が塵、埃、水等による悪影響を受け難くすることができて、例えば、レバー部材141の回転不良を防ぐことができ、当該装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0053】
また、図23〜図34に示した実施形態では、連係機構130のコイルスプリング132による復帰動作に連動して保持機構HM2によってロック回転位置に保持されているレバー部材141をロック回転位置から解除するロック解除機構KM(解除部133c)が設けられていて、このロック解除機構KMによってロック回転位置から解除されたレバー部材141は、コイルスプリング142の回転付勢力によってセット回転位置に復帰するように設定されている。これにより、車両の衝突後(すなわち、上記した慣性力が消失した後)に、レバー部材141は、上記したコイルスプリング132、ロック解除機構KM、コイルスプリング142の付勢力等の協働作用により、ロック回転位置から解除されてセット回転位置に復帰する。このため、車両の衝突後にも、アウタハンドル120をドア閉位置からドア開位置へ操作して、当該ドア100を開けることが可能である。
【0054】
上記した各実施形態においては、ドア開放防止機構40、140のレバー部材41、141が連係機構30、130の連結レバー33、133に対して進入・退避可能(連結レバー33、133における突起33b、133bのドア開方向移動軌跡内に介在・ドア開方向移動軌跡外に退避可能)に構成して実施したが、ドア開放防止機構のレバー部材が連係機構の連結レバー以外の構成部材(例えば、ロッドやベルクランク等)に対して進入・退避可能に構成して実施することも可能である。もちろん、連結レバー33、133の突起33b、133bを別部材にて構成してもよい。
【0055】
また、上記した各実施形態においては、レバー部材41、141をロック回転位置にて保持する保持機構HM1、HM2を設けて実施したが、この保持機構HM、HM2を設けないで実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、レバー部材41にストッパ突起部41fを設けるとともに、ベース部材10にストッパ部15を設けて実施したが、これらを設けないで実施することも可能である。また、ベルクランク31、131にウエイト部(慣性部)を装着して実施することも可能である。
【0056】
また、上記した各実施形態においては、ドア開放防止機構40、140のレバー部材41、141がセット回転位置から車内方向の退避回転位置または車外方向のロック回転位置に回転可能に構成し、車両の衝突時に所定の慣性力で(前記慣性力がレバー部材に作用するとき)レバー部材41、141が付勢部材(コイルスプリング42、142)の付勢力に抗して前記セット回転位置より車外方向に回転して前記ロック回転位置に移動されるように設定して実施したが、ドア開放防止機構のレバー部材がセット回転位置から車内方向の退避回転位置に回転可能に構成し、車両の衝突時に所定の慣性力でレバー部材が付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置に留まるように設定(車外方向のロック回転位置が設定されておらず、車両の衝突時に所定の慣性力でロック回転位置に移動しないように設定)して実施することも可能である。また、上記した実施形態では、ドア開放防止機構のレバー部材と連係機構の構成部材を別体で構成して実施したが、レバー部材と構成部材を一体の部材(一体部材)として、この一体部材がセット回転位置、退避回転位置、ロック回転位置に移動されるように設定して実施することも可能である。
【0057】
また、上記した各実施形態においては、車両の後方右側に装備されるドア100に本発明による車両のドアアウタハンドル構造を設けて実施したが、本発明による車両のドアアウタハンドル構造は、車両の後方左側に装備されるドアは勿論のこと、車両の前方右側または前方左側に装備されるドアにも同様にまたは適宜変更して実施することが可能である。また、本発明による車両のドアアウタハンドル構造は、車両の後側に装備されるドア(バックドア)にも同様にまたは適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
100…ドア、10…ベース部材、11…車両後方端部、12…上方支持部、13…中間支持部、14…下方支持部、15…ストッパ部、16…段部上面、17…段部下面、18…段部上面と段部下面間に形成した傾斜面、19…ストッパ部、20…アウタハンドル、21…車両前方端部、22…車両後方端部、22a…係合部、30…連係機構、31…ベルクランク、31a…軸部、31b…入力アーム部、31c…出力アーム部、32…コイルスプリング、33…連結レバー、33a…上端部、33b…突起、34…連結ピン、40…ドア開放防止機構、41…レバー部材、41a…上方軸部、41b…中間軸部、41c…下方軸部、41d…スプリング取付軸部、41e…係合突起部、41f…ストッパ突起部、41g…レバー部、41h…シュー部、41h1…シュー部に形成した傾斜面、42…コイルスプリング、50…キャップ、HM1…保持機構、132…コイルスプリング(復帰機構)、KM…ロック解除機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに固定されるベース部材と、このベース部材に車両内外方向にて揺動可能に設けられてドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置間にて操作可能なアウタハンドルと、このアウタハンドルのドア開動作をドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能な連係機構を備えるとともに、車両の衝突時に前記ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で前記連係機構の構成部材のドア開方向作動を規制するドア開放防止機構を備えていて、
前記ドア開放防止機構が、セット回転位置から少なくとも車内方向の退避回転位置に回転可能なレバー部材と、このレバー部材を前記退避回転位置に向けて付勢する付勢部材を備えていて、前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置にあるときには前記セット回転位置に保持され、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置から前記ドア開位置に操作されるときにはその操作初期に前記付勢部材の付勢力によって前記セット回転位置から車内方向に回転して前記退避回転位置に移動され、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置より車外方向に回転してロック回転位置に移動されるように設定、又は、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置に留まるように設定されており、
前記レバー部材が前記セット回転位置または前記ロック回転位置にあるときには、前記構成部材のドア開方向移動を規制し、前記レバー部材が前記退避回転位置にあるときには、前記構成部材のドア開方向移動を許容するように設定されている車両のドアアウタハンドル構造。
【請求項2】
車両のドアに固定されるベース部材と、このベース部材に車両内外方向にて揺動可能に設けられてドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置間にて操作可能なアウタハンドルと、このアウタハンドルのドア開動作をドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能な連係機構を備えるとともに、車両の衝突時に前記ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で前記連係機構の構成部材のドア開方向作動を規制するドア開放防止機構を備えていて、
前記ドア開放防止機構が、前記ベース部材に所定量回転可能に設けられていてセット回転位置から車内方向の退避回転位置または車外方向のロック回転位置に回転可能なレバー部材と、このレバー部材を前記退避回転位置に向けて付勢する付勢部材を備えていて、前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置にあるときには前記セット回転位置に保持され、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置から前記ドア開位置に操作されるときにはその操作初期に前記付勢部材の付勢力によって前記セット回転位置から車内方向に回転して前記退避回転位置に移動され、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置より車外方向に回転して前記ロック回転位置に移動されるように設定されており、
前記レバー部材が前記セット回転位置または前記ロック回転位置にあるときには、前記レバー部材の一部が前記構成部材のドア開方向移動軌跡内に介在して前記構成部材のドア開方向移動を規制し、前記レバー部材が前記退避回転位置にあるときには、前記レバー部材の一部が前記構成部材のドア開方向移動軌跡外に退避して前記構成部材のドア開方向移動を許容するように設定されている車両のドアアウタハンドル構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両のドアアウタハンドル構造であって、前記ドア開放防止機構は、前記レバー部材を前記ロック回転位置にて保持する保持機構を備えていて、前記慣性力が前記レバー部材に作用して前記レバー部材が前記セット回転位置から前記ロック回転位置に移動したときには、前記保持機構が前記レバー部材を前記ロック回転位置にて保持するように設定されていることを特徴とする車両のドアアウタハンドル構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両のドアアウタハンドル構造であって、前記連係機構は、前記アウタハンドルを前記ドア開位置から前記ドア閉位置に自動的に復帰させる復帰機構を備えるとともに、この復帰機構による復帰動作に連動して前記保持機構によって前記ロック回転位置に保持されている前記レバー部材を前記ロック回転位置から解除するロック解除機構を備えていて、このロック解除機構によって前記ロック回転位置から解除された前記レバー部材は前記付勢部材の付勢力によって前記セット回転位置に復帰するように設定されていることを特徴とする車両のドアアウタハンドル構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の車両のドアアウタハンドル構造であって、前記レバー部材が、前記セット回転位置では第1係合部にて前記ドア閉位置にある前記アウタハンドルの一部と係合して前記付勢部材による回転を規制され、前記退避回転位置では第2係合部にて前記ベース部材に設けたストッパ部と係合して前記付勢部材による回転を規制されていることを特徴とする車両のドアアウタハンドル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−92640(P2012−92640A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142828(P2011−142828)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】