説明

車両のドアインサイドハンドル装置

【課題】組立作業性が良好で、かつ、インナーケーブルの不用意な脱落を確実に防止することのできる車両のドアインサイドハンドル装置の提供を目的とする。
【解決手段】ハンドルベース1に回転操作可能に軸支され、一端がドア体内のドアロック装置2に連結されるケーブル装置3におけるインナーケーブル4の他端が連結される操作部材5を有し、
前記インナーケーブル4と操作部材5との連結は、インナーケーブル4の先端に形成される連結突部6を操作部材5に開設されたワイヤ嵌合孔7に嵌合させて行われるとともに、操作部材5には連結突部6のワイヤ嵌合孔7からの脱落方向の移動を規制するケーブル押さえ部8が設けられ、
かつ、ハンドルベース1には、前記ケーブル押さえ部8と協働してインナーケーブル4を離隔位置において2点支持してインナーケーブル4の異常変形を規制し、連結突部6のワイヤ嵌合孔7からの脱離を防止するガイド部9が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアインサイドハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブル装置を使用してドアロック装置に操作力を伝達するインサイドハンドル装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、ハンドルベースに連結されるインサイドハンドル(操作部材)にはスリット状開口と真円状開口とが形成され、ケーブル装置の連結は、インナーケーブルの先端に固定される円柱形のケーブルエンドを真円状開口部分に挿入するとともに、ケーブルエンド基端部をスリット状開口に挿通させて行われる。
【0003】
しかし、上述した従来例において、インナーケーブルを挟み付けるスリット状開口は、インナーケーブルの移動方向をガイドしてケーブルエンドの真円状開口からの脱離を防止するために有効であるが、インナーケーブルの摺動による擦過音の防止のために、経路全長にわたる均一なグリース塗布を要し、組立作業性が悪いという問題がある。
【0004】
とりわけ、後述するように、座屈等の変形を防ぐためには、スリット状開口によるガイド経路長を長く取る必要があるため、グリースの均一塗布はより困難になる。
【0005】
この問題は、ケーブルエンドの脱離を防止できる範囲で、インナーケーブルとの摺接が発生しない程度までスリット状開口を拡幅したり、あるいは、スリット状開口の経路長を可及的に短くすることにより解決可能であるが、この場合には、以下の問題が発生する。すなわち、例えば、インナーケーブルが引き出された状態で操作部材がインナーケーブル没入状態に操作されたときにインナーケーブルの追随動作に障害が発生した場合、インナーケーブルが座屈変形してケーブルエンドに脱離方向の力が付加され、インナーケーブルが操作部材から脱落する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-212846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、組立作業性が良好で、かつ、インナーケーブルの不用意な脱落を確実に防止することのできる車両のドアインサイドハンドル装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
インサイドハンドル装置は、ハンドルベース1に回転操作可能に軸支される操作部材5を有し、操作部材5にはワイヤ嵌合孔7とケーブル押さえ部8とが、ハンドルベース1にはガイド部9が設けられる。
【0009】
操作部材5のワイヤ嵌合孔7にはケーブル装置3のインナーケーブル4に形成される連結突部6が嵌合され、ケーブル押さえ部8はインナーケーブル4のワイヤ部、あるいは連結突部6を押さえて連結突部6のワイヤ嵌合孔7からの脱落を防止する。
【0010】
ガイド部9は、ケーブル押さえ部8と協働してインナーケーブル4を離隔位置において2点支持し、例えば、引き出されたインナーケーブル4のアウターケース10内への没入が引っかかり等によって阻害された場合であっても、インナーケーブル4の移動方向をガイドして座屈等の異常変形を規制する。
【0011】
したがって、この発明によれば、ケーブル押さえ部8によるガイド経路長を長くする必要がなくなるために、比較的長い経路長の全長にわたって均一にグリースを塗布するという面倒な作業が不要となり、組立作業性が向上する。
【0012】
また、インナーケーブル4の座屈等による異常変形を確実に防ぐことができるために、インナーケーブル4の操作部材5からの脱落が発生することがない。
【0013】
さらに、ケーブル押さえ部8をワイヤ嵌合孔7に隣接して形成すると、ワイヤ嵌合孔7に供給したグリースがインナーケーブル4の作動とともにケーブル押さえ部8に回り込むために、ワイヤ嵌合孔7へのグリース塗布だけで足りるようになり、作業性がより向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、組立作業性を良好にすることができ、かつ、インナーケーブルの不用意な脱落を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インサイドハンドル装置を示す正面図である。
【図2】図1の断面図で、(a)は2A-2A線断面図、(b)は2B-2B線断面図である。
【図3】図1の断面図で、(a)は3A-3A線断面図、(b)は図3(a)の3B方向矢視図である。
【図4】操作ハンドルを示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の4B方向矢視図、(c)は(b)の4C方向矢視図、(d)は(b)の4D-4D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1以下に示すように、インサイドハンドル装置は、図外のドアパネルに固定されるハンドルベース1に操作ハンドル(操作部材5)と、ロックレバー11とを枢軸12を使用して回転操作可能に軸支して形成される。
【0017】
操作ハンドル5、およびロックレバー11には、アウターケース10内にインナーケーブル4を摺動自在に挿通させたケーブル装置3が連結され、後述するように、操作ハンドル5を初期位置から操作位置まで回転操作すると、ドアロック装置2のロックが解除されてドア体の開放操作が可能になり、ロックレバー11をロック解除位置からロック位置まで回転操作すると、ドアロック装置2のキャンセル部2aが作動し、上記操作ハンドル5からの操作がキャンセルされて操作ハンドル5によるドア体の開放操作が不能となる。
【0018】
図2(b)に示すように、ロックレバー11は、合成樹脂材を射出成形して形成され、ハンドルベース1に装着した際の外部露出面に操作用膨隆部11aが、枢軸12を挟んで反対端部にケーブル装着孔11bが設けられる。
【0019】
このロックレバー11に対応するケーブル装置3のインナーケーブル4には、図1に示すように、先端がL字形状に折曲したケーブルエンド4aが固定されており、該ケーブルエンド4aを上記ケーブル装着孔11bに挿入してロックレバー11に連結される。
【0020】
一方、操作ハンドル5は、図2、4に示すように、回転中心を挟んで一端部に手掛け部5aを、反対端にワイヤ嵌合孔7を備え、枢軸12周りに図2(a)において実線で示す初期位置と、鎖線で示す操作位置との間で回転操作される。図3に示すように、操作ハンドル5には、トーションスプリング13により初期位置側への付勢力が与えられる。
【0021】
操作ハンドル5に対応するケーブル装置3の装着は、図3(b)に示すように、アウターケース10の端部をハンドルベース1に形成されたケーブル係止部1aに係止させるとともに、インナーケーブル4の先端に固定される球状の連結突部6を操作ハンドル5のワイヤ嵌合孔7に嵌合して行われる。アウターケース10から引き出されたインナーケーブル4をワイヤ嵌合孔7に導くために、ハンドルベース1には、インナーケーブル4を挟み付けるようにしてガイド部9が設けられる。
【0022】
図4に示すように、ワイヤ嵌合孔7は操作ハンドル5の側壁面に開設される上記インナーケーブル4の連結突部6が嵌合可能な断面積を有する有底孔として形成されており、ワイヤ挿通スリット14を経由して操作ハンドル5の外部に開放される。
【0023】
ワイヤ挿通スリット14は、ワイヤ嵌合孔7が開放される壁面を基端としてワイヤ嵌合孔7の深さ方向に沿って切り欠かれる導入部14aと、導入部14a終端から周方向に屈曲する開放部14bとを有してクランク状に形成される。開放部14bは作動中のインナーケーブル4との不要な摺接を防ぐために、比較的広い経路幅に形成されており、導入部14aとの境界部のみが、該境界部に突設されるケーブル押さえ部8により幅狭とされている。
【0024】
なお、図4(d)において、導入部14aによる狭隘部はインナーケーブル4の径よりやや幅広に形成する場合が示されているが、ケーブル押さえ部8は、ワイヤ嵌合孔7からの連結突部6の脱落を押さえることができれば足りるために、狭隘部の幅は、図示のものより大寸に形成してもよい。
【0025】
また、図4(d)においては、ケーブル押さえ部8が形成される面に対向する面を平面により形成する場合を示したが、インナーワイヤとの接触面積を少なくするために、ケーブル押さえ部8に対向する部位を除いて窪ませることもできる。
【0026】
以上の構成の下、ケーブル装置3の装着は、まず、インナーケーブル4の連結突部6をワイヤ嵌合孔7に嵌合させるとともに、インナーワイヤをワイヤ保持スリット14の導入部14aに挿通させた後、ケーブル装置3全体を回転させてインナーケーブル4を開放部14bに移動させ、さらに、ハンドルベース1のガイド部9を通過させた後、アウターケース10のケースエンドをハンドルベース1に係止して行われる。
【0027】
ケーブル装置3の装着に際して、ワイヤ嵌合孔7にはグリースが供給され、連結作業に伴ってグリースがケーブル押さえ部8による狭隘部に回り込み、作動時の摺動音の発生が防止される。
【0028】
したがってこの実施の形態において、インナーケーブル4は、図4(d)に示すように、ケーブル押さえ部8による狭隘部と、ハンドルベース1のガイド部9により2点支持状態となる。狭隘部、およびガイド部9は、連結突部6のワイヤ嵌合孔7からの脱落を惹起するインナーケーブル4の座屈等の有害な変形を防止することが可能で、かつ、インナーケーブル4の作動中の摺接が可及的に少なくなる位置、寸法が、例えば、実験的に求められ、この結果、インナーケーブル4のガイド経路長が長くなることによるグリース塗布の管理が不要となる上に、インナーケーブル4の操作ハンドル5からの脱落も生じることがない。
【0029】
なお、以上において、操作部材5として操作ハンドル5のみを対象としたが、ロックレバー11側に同様の構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ハンドルベース
2 ドアロック装置
3 ケーブル装置
4 インナーケーブル
5 操作部材
6 連結突部
7 ワイヤ嵌合孔
8 ケーブル押さえ部
9 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルベースに回転操作可能に軸支され、一端がドア体内のドアロック装置に連結されるケーブル装置におけるインナーケーブルの他端が連結される操作部材を有し、
前記インナーケーブルと操作部材との連結は、インナーケーブルの先端に形成される連結突部を操作部材に開設されたワイヤ嵌合孔に嵌合させて行われるとともに、操作部材には連結突部のワイヤ嵌合孔からの脱落方向の移動を規制するケーブル押さえ部が設けられ、
かつ、ハンドルベースには、前記ケーブル押さえ部と協働してインナーケーブルを離隔位置において2点支持してインナーケーブルの異常変形を規制し、連結突部のワイヤ嵌合孔からの脱離を防止するガイド部が設けられる車両のドアインサイドハンドル装置。
【請求項2】
前記ケーブル押さえ部がワイヤ嵌合孔に隣接して形成される請求項1記載の車両のドアインサイドハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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