説明

車両のフロア端部の結合構造

【課題】車両のフロア端部の結合構造において、センターフロアとリアフロアとを接合している接合部の応力の集中を防ぐことで打点亀裂の発生を抑える。
【解決手段】フロアの車両幅方向外側端側において、センターフロア14は、車両後方側において、リアサイドメンバ10とリアホイールハウスインナー12との3枚重ねでスポット溶接32し、リアフロア16は、車両前方側において、リアサイドメンバ10とリアホイールハウスインナー12との3枚重ねでスポット溶接36し、センターフロア14とリアフロア16とを直接接合しない。これにより、センターフロア14とリアフロア16が夫々独立した動きをしてもセンターフロア14、及びリアフロア16の車両幅方向外側端部に応力が集中することがなく、打点亀裂の発生が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロア端部の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車車両のフロア端部の結合構造では、例えば、特許文献1に記載されているように、リアフロアの車両幅方向外側端部が、リアサイドメンバに溶接されている場合や、リアサイドメンバとリアホイールハウスインナーにリアフロアとセンターフロアとが溶接されている場合がある。
【0003】
後者の一例を具体的に説明すると、図6に示すように、車体前後方向(矢印FR方向、及び矢印FR方向とは反対方向)に延びるリアサイドメンバ110が、車体後部のリアホイールハウスインナー112の車両幅方向内側(矢印IN方向側)に配置されており、リアサイドメンバ110の上には車両前方側にセンターフロア114が、センターフロア114の車両後方側にはリアフロア116が配置されている。
【0004】
リアサイドメンバ110は、車両前方側が図7(A)に示すような逆ハット型の断面形状をして上部両側に各々フランジ110Aを備えているが、車両後方側は図7(B)に示すような断面形状をして車両幅方向内側のみフランジ110Aを備え、車両幅方向外側は縦壁部110Bのみとなっている。
【0005】
図6に示すように、センターフロア114は、全体的には略平面状とされて略水平に配置されているが、リアホイールハウスインナー112側には、一部が上方に折り曲げられて縦壁部114Aが形成されている。
【0006】
また、リアフロア116は、全体的には略平面状とされて略水平に配置されているが、リアホイールハウスインナー112側においては、一部が上方に折り曲げられてリア縦壁部116Aが形成されている。
【0007】
リアホイールハウスインナー112の車両前方側には、車両前方に延びるカウル118が配置されている。図6、及び図7(A)に示すように、このカウル118は、車両幅方向外側に配置されるカウルアウタ120と、車両幅方向内側に配置されるカウルインナー122とから成る角パイプ状の閉断面を有している。
【0008】
リアサイドメンバ110の車両幅方向外側のフランジ110Aが、このカウルインナー122の上面に配置されており、図6、及び図7(B)に示すように、リアサイドメンバ110の車両幅方向外側の縦壁部110Bの上部がリアホイールハウスインナー112の縦壁部112Aに接している。
【0009】
次に、上記各部材の接合に付いて説明する。
【0010】
図6に示すように、センターフロア114は、リアサイドメンバ110のフランジ110Aにスポット溶接(符号124。打点を「×」印で示す。)されているが、車両幅方向外側では、カウルインナー122、フランジ110A、及びセンターフロア114が3枚重ねで互いに複数箇所でスポット溶接(符号126)されている。
【0011】
また、センターフロア114の車両後方側では、センターフロア114の車両後方側のセンター水平部分114Bとリアフロア116の車両前方側のリア水平部分116Bとが一定幅重ねられて複数箇所でスポット溶接(符号128。打点を「×」印で示す。)されている。
【0012】
さらに、センターフロア114、及びリアフロア116の車両幅方向外側の端部側においては、図6、及び図7(C)に示すように、リアホイールハウスインナー112の縦壁部112Aと、リアサイドメンバ110の縦壁部110Bと、センターフロア114の縦壁部114Aと、リアフロア116のリア縦壁部116Aとの4枚重ね部分があるが、ここでは、溶接の都合で、センターフロア114の縦壁部114Aの車両後方側部分と、リアフロア116のリア縦壁部116Aの車両前方側部分と、リアサイドメンバ110の縦壁部110Bとが3枚重ねで1箇所のみスポット溶接(符号129。打点を「×」印で示す。)され、リアホイールハウスインナー112の縦壁部112Aはリアサイドメンバ110の縦壁部110Bとスポット溶接されていない。
【0013】
さらに、リアフロア116の車両幅方向外側部分においては、前述したスポット溶接129の他に、リア縦壁部116Aが、リアサイドメンバ110の縦壁部110Bとリアホイールハウスインナー112の縦壁部112Aとの3枚重ねで複数箇所スポット溶接(符号136)されている。ここで、リアフロア116のリア縦壁部116Aには、一部に切欠138が形成されており、この切欠部分においては、リアサイドメンバ110の縦壁部110Bとリアホイールハウスインナー112の縦壁部112Aとが2枚重ねで1箇所のみスポット溶接(符号140。打点を「×」印で示す。)されている。
【0014】
なお、リアフロア116のリア水平部分116Bは、前述したセンターフロア114のセンター水平部分114Bとのスポット溶接128の他に、リアサイドメンバ110のフランジ110Aに対して複数箇所でスポット溶接(符号134。打点を「×」印で示す。)されている。
【0015】
また、図8に示すように、リアサイドメンバ110の車両幅方向外側のフランジ110Aの車両幅方向外側端部分、センターフロア114の車両幅方向外側端部分、及びリアフロア116の車両幅方向外側端部分は、隙間から車室内に水が浸入しないように各々一定幅のシーラー142で被覆されている。
【特許文献1】特開2003―212152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上述した車体構造を有する車両が走行すると、センターフロア114とリアフロア116を接続しているリアホイールハウスインナー側の端部のスポット溶接129が剥離変形をし、高応力となるため、打点亀裂を発生する場合があり、また、シーラー142の割れにより、外部からの水入りが懸念されている。
【0017】
発明者が上記スポット溶接129が剥離変形する理由を調べた結果、悪路入力等で車体が変形するとセンターフロア114とリアフロア116とがそれぞれ別の動きをする場合があり、センターフロア114とリアフロア116とのスポット溶接129に応力が集中することが判明した。
【0018】
シーラー142の割れとしては、リアサイドメンバ110とリアホイールハウスインナー112とを接合している打点ピッチが広いことが原因であった。図7(C)に示すように、スポット溶接129部分では、リアサイドメンバ110とリアホイールハウスインナー112とはスポット溶接で接合されておらず、リアサイドメンバ110とリアホイールハウスインナー112とが接合されている部分は、スポット溶接129の車両後方側に隣接するスポット溶接136部分である。即ち、スポット溶接129の車両後方側に隣接するスポット溶接136部分よりも車両前方側では、リアサイドメンバ110がリアホイールハウスインナー12と接合されていない部分の寸法が長くなっているために、悪路走行等で車体が変形すると、リアサイドメンバ110とリアホイールハウスインナー12との間にシーラー142に割れにつながる隙間が生じやすくことが判明した。
【0019】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、車両のフロア端部の結合構造において、センターフロアとリアフロアとを接合している接合部の応力の集中を防ぐことで打点亀裂の発生を抑えることが第1の目的である。
【0020】
また、車両のフロア端部の結合構造において、シーラーの割れを抑えることが第2の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に記載の車両のフロア端部の結合構造は、車体の後方両側部に配置されるリアホイールハウスインナーと、前記リアホイールハウスインナーの車両幅方向内側に配置され、車両前後方向に延びるリアサイドメンバと、前記リアサイドメンバの車体後方側の上部、かつ前記リアホイールハウスインナーの車両幅方向内側に配置されるリアフロアと、前記リアサイドメンバの車体前方側の上部、かつ前記リアホイールハウスインナーの車両幅方向内側に配置され、前記リアフロアの車両前方側と接合されるセンターフロアと、を有し、前記センターフロア、及び前記リアフロアの車両幅方向外側端部側においては、前記センターフロアと、前記リアサイドメンバと、前記リアホイールハウスインナーとを3枚重ねで接合した第1の接合部が少なくとも1箇所設けられると共に、前記リアフロアと、前記リアサイドメンバと、前記リアホイールハウスインナーとを3枚重ねで接合した第2の接合部が少なくとも1箇所設けられ、かつ、前記センターフロアの最も車両後方端部側の前記第1の接合部よりも車両後方部分と、前記リアフロアの最も車両前方側の前記第2接合部よりも車両前方部分とは、互いに接合していない、ことを特徴としている。
【0022】
次に、請求項1に記載の車両のフロア端部の結合構造の作用を説明する。
【0023】
請求項1に記載の車両のフロア端部の結合構造では、センターフロア、及びリアフロアの車両幅方向外側端側において、センターフロアと、リアサイドメンバと、リアホイールハウスインナーとが3枚重ねで少なくとも1箇所で接合され、リアフロアと、リアサイドメンバと、リアホイールハウスインナーとが3枚重ねで少なくとも1箇所で接合され、センターフロアの最も車両後方端部側の第1の接合部よりも車両後方部分と、リアフロアの最も車両前方側の第2接合部よりも車両前方部分とが互いに接合していないため、センターフロアとリアフロアが夫々独立した動きをしてもセンターフロア、及びリアフロアの車両幅方向外側端部に応力が集中することがなく、打点亀裂の発生が抑えられる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両のフロア端部の結合構造において、前記リアフロアは、前記リアサイドメンバの上部に配置されるリア水平部分、及び前記リア水平部分の前記リアホイールハウスインナー側に形成され前記リア水平部分と交差する方向に延びるリア縦壁部を備え、前記センターフロアは、前記リアサイドメンバの上部に配置されるセンター水平部分、及び前記センター水平部分の前記リアホイールハウスインナー側に形成され前記センター水平部分と交差する方向に延びるセンター縦壁部を備え、前記リア縦壁部、及び前記センター縦壁部が前記リアホイールハウスインナー側に接合され、前記センター縦壁部の最も車両後方端部側の前記第1の接合部よりも車両後方部分と、前記リア縦壁部の最も車両前方側の前記第2接合部よりも車両前方部分とは、互いに接合していない、ことを特徴としている。
【0025】
次に、請求項2に記載の車両のフロア端部の結合構造の作用を説明する。
【0026】
請求項2に記載の車両のフロア端部の結合構造では、センターフロア、及びリアフロアの車両幅方向外側端側において、センターフロアのセンター縦壁部と、リアサイドメンバと、リアホイールハウスインナーとが3枚重ねで少なくとも1箇所で接合され、リアフロアのリア縦壁部と、リアサイドメンバと、リアホイールハウスインナーとが3枚重ねで少なくとも1箇所で接合され、センターフロアの最も車両後方端部側の第1の接合部よりも車両後方部分と、リアフロアの最も車両前方側の第2接合部よりも車両前方部分とが互いに接合していないため、センターフロアとリアフロアが夫々独立した動きをしてもセンターフロアのセンター縦壁部、及びリアフロアのリア縦壁部に応力が集中することがなく、打点亀裂の発生が抑えられる。
【0027】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の車両のフロア端部の結合構造において、前記第1の接合部、及び前記第2の接合部は、一定の間隔で設けられている、ことを特徴としている。
【0028】
次に、請求項3に記載の車両のフロア端部の結合構造の作用を説明する。
【0029】
第1の接合部、及び第2の接合部を一定の間隔で設けることで、リアサイドメンバとリアホイールハウスインナーとの接合が一定の間隔となり、外力により車体の変形した際に、リアサイドメンバとリアホイールハウスインナーとの間に大きな隙間が生ずることを抑制でき、また、各接合部に作用する応力を均一化することができる。
【0030】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両のフロア端部の結合構造において、前記センターフロアの端部、前記リアフロアの端部、及び前記リアサイドメンバの端部は、前記リアホイールハウスインナーと接する部分がシーラーで被覆されている、ことを特徴としている。
【0031】
次に、請求項4に記載の車両のフロア端部の結合構造の作用を説明する。
【0032】
センターフロアの端部、リアフロアの端部、及びリアサイドメンバの端部のリアホイールハウスインナーと接する部分をシーラーで被覆することで、外部から車室内側への水分の浸入を阻止することができる。
【0033】
また、打点亀裂、部材間の隙間の発生を抑えることで、シーラー割れは抑えられる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、請求項1、及び請求項2に記載の車両のフロア端部の結合構造によれば、センターフロアとリアフロアとを接合している接合部の応力の集中を防ぎ、打点亀裂の発生を抑えることができる。
【0035】
請求項3に記載の車両のフロア端部の結合構造によれば、第1の接合部、及び第2の接合部の間隔を一定とすることで、リアサイドメンバとリアホイールハウスインナーとの間に大きな隙間が生ずることを抑制でき、シーラーで被覆した場合、シーラーが割れることを抑えることができる。
【0036】
また、請求項4に記載の車両のフロア端部の結合構造によれば、シーラーにより外部からの水入りを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0038】
本実施形態の車両のフロア端部の結合構造では、図1に示すように、車体前後方向(矢印FR方向、及び矢印FR方向とは反対方向)に延びるリアサイドメンバ10が車体後部のリアホイールハウスインナー12の車両幅方向内側(矢印IN方向側)に配置されており、リアサイドメンバ10の上には車両前方側にセンターフロア14が、センターフロア14の車両後方側にはリアフロア16が配置されている。なお、リアサイドメンバ10、リアホイールハウスインナー12、センターフロア14、及びリアフロア16は、各々鋼板で形成されている。
【0039】
リアサイドメンバ10は、車両前方側が図2(A)に示すような逆ハット型の断面形状をしており上部両側に各々フランジ10Aを備えているが、車両後方側は図2(B)に示すような断面形状をして車両幅方向内側のみフランジ10Aを備え、車両幅方向外側は縦壁部10Bのみとなっている。
【0040】
図1に示すように、センターフロア14は、全体的には略平面状とされて略水平に配置されているが、リアホイールハウスインナー12側においては、一部が上方に折り曲げられてセンター縦壁部14Aが形成されている。
【0041】
また、リアフロア16は、全体的には略平面状とされて略水平に配置されているが、リアホイールハウスインナー12側においては、一部が上方に折り曲げられてリア縦壁部16Aが形成されている。
【0042】
リアホイールハウスインナー12の車両前方側には、車両前方に延びるカウル18が配置されている。図1、及び図2(A)に示すように、このカウル18は、車両幅方向外側に配置されるカウルアウタ20と、車両幅方向内側に配置されるカウルインナー22とから成る角パイプ状の閉断面を有している。
【0043】
図1、及び図2(A)に示すように、リアサイドメンバ10の車両幅方向外側のフランジ10Aが、このカウルインナー22の上面に配置されており、図1、及び図2(B)に示すように、リアサイドメンバ10の車両幅方向外側の縦壁部10Bの上部がリアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aに接している。
【0044】
次に、上記各部材の接合に付いて説明する。
【0045】
図1、及び図2に示すように、センターフロア14は、リアサイドメンバ10の車両幅方向内側のフランジ10Aに各々複数箇所でスポット溶接(符号24)されているが、車両幅方向外側では、カウルインナー22の上面、車両幅方向外側のフランジ10A、及びセンターフロア14の車両幅方向外側端側が3枚重ねで互いに複数箇所でスポット溶接(符号26)されている。
【0046】
また、センターフロア14の車両後方側では、センターフロア14のセンター水平部分14Bの車両後方側とリアフロア16のリア水平部分16Bの車両前方側とが一定幅重ねられて複数箇所でスポット溶接(符号28)されている。なお、リアフロア16の車両前方側では、リアサイドメンバ10の車両幅方向内側のフランジ10Aと対向する位置に、センターフロア14の最も車両後方側のスポット溶接24を避けるように切欠30が形成されている。
【0047】
さらに、図1、及び図2(C)に示すように、センターフロア14の車両後方側では、リアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aと、リアサイドメンバ10の縦壁部10Bと、センターフロア14のセンター縦壁部14Aの4枚重ね部分があるが、この4枚重ね部分ではスポット溶接はされず、4枚重ね部分の車両前方側の近傍では、センターフロア14のセンター縦壁部14Aと、リアサイドメンバ10の縦壁部10Bと、リアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aとが3枚重ねで互いに1箇所のみでスポット溶接(符号32)され、4枚重ね部分の車両後方側の近傍では、リアフロア16のリア縦壁部16Aと、リアサイドメンバ10の縦壁部10Bと、リアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aとが3枚重ねでスポット溶接(符号36)されている。
【0048】
図1に示すように、リアフロア16のリア水平部分16Bは、前述したセンターフロア14とのスポット溶接28の他に、リアサイドメンバ10の車両幅方向内側のフランジ10Aに複数箇所でスポット溶接(符号34)されている。
【0049】
図1、及び図2(B)に示すように、さらに、リアフロア16は、車両幅方向外側部分において、リア縦壁部16Aがリアサイドメンバ10の縦壁部10Bとリアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aとに重ねられ、これら3つの部材の3枚重ね部分が複数箇所でスポット溶接(符号36)されている。
【0050】
なお、図1に示すように、リアフロア16のリア縦壁部16Aには、車両前方側の一部に切欠38が形成されており、この切欠部分においては、リアサイドメンバ10の縦壁部10Bとリアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aとが2枚重ねでスポット溶接(符号40)されている。
【0051】
このように、本実施形態の車両のフロア端部の結合構造では、センターフロア14の車両幅方向外側の端部分の車両後方側部分、即ち、センター縦壁部14Aの車両後方側部分と、リアフロア16の車両幅方向外側の端部分の車両前方側部分、即ち、リア縦壁部16Aの車両前方側部分とが互いにスポット溶接されていないが、リアサイドメンバ10の縦壁部10Bとリアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aとは一定間隔でスポット溶接(符号32,符号40,符号36)されている。
【0052】
なお、本実施形態の車両のフロア端部の結合構造では、センターフロア14、リアフロア16、及びリアサイドメンバ10がスポット溶接により一体化されてアンダーボディーアッシーが作られ、その後、このアンダーボディーアッシーが、リアホイールハウスインナー12、及びカウルインナー22の車両幅方向内側に配置されてリアホイールハウスインナー12、及びカウルインナー22にスポット溶接されている。
【0053】
本実施形態の車両のフロア端部の結合構造では、これらスポット溶接の終了後、リアサイドメンバ10の車両幅方向外側のフランジ10Aの車両幅方向外側端部分、センターフロア14の車両幅方向外側端部分、及びリアフロア16のリア縦壁部16Aの上端部分は、図4に示すように一定幅のシーラー42で被覆される。
(作用)
本実施形態の車両のフロア端部の結合構造では、センターフロア14、及びリアフロア16の車両幅方向外側端側において、センターフロア14のセンター縦壁部14Aは、センターフロア14のセンター縦壁部14Aの車両後方側と、リアサイドメンバ10の縦壁部10Bと、リアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aとが3枚重ねで互いに1箇所のみでスポット溶接(符号32)され、リアフロア16は、リア縦壁部16Aの車両前方側がリアサイドメンバ10の縦壁部10Bとリアホイールハウスインナー12とに重ねられ、これら3つの部材の3枚重ね部分がスポット溶接(符号36)され、センターフロア14の車両幅方向外側端部分とリアフロア16の車両幅方向外側端部分とが直接接合されておらず、その代わりに、センターフロア14の車両幅方向外側端部分の車両後方側がリアホイールハウスインナー側に、リアフロア16の車両幅方向外側端部分の車両前方側がリアホイールハウスインナー側に夫々スポット溶接にて接合されているため、センターフロア14とリアフロア16が夫々独立した動きをしてもセンターフロア14、及びリアフロア16の車両幅方向外側端部に応力が集中することがなく、打点亀裂の発生が抑えられる。
【0054】
また、リアサイドメンバ10とリアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aとの接合に関しては、リアフロア16の最も車両前方側のスポット溶接36(リアフロア16、リアサイドメンバ10の縦壁部10B、及び縦壁部12Aの接合)よりも車両前方側に、スポット溶接32(センターフロア14のセンター縦壁部14A、リアサイドメンバ10の縦壁部10B、及び縦壁部12Aの接合)があるので、リアフロア16の最も車両前方側のスポット溶接36よりも車両前方側において、リアサイドメンバ10の縦壁部10Bとリアホイールハウスインナー12の縦壁部12Aとの接合されていない部分の寸法が従来構造(図6)対比で短くなり、悪路走行等による車体変形時に、縦壁部10Bと縦壁部12Aとの間に隙間が生じ難くなり、フロア端を覆っているシーラー42の割れも抑えられ、外部からの水入りの可能性も抑制できる。
【0055】
なお、従来構造対比で、本実施形態では、スポット溶接の工程が増えないため、製造時間が増加することは無く、生産コストが上昇することも無い。
[その他の実施形態]
上記実施形態では、センターフロア14の車両幅方向外側部分が折り曲げられてセンター縦壁部14Aが形成され、リアフロア16の車両幅方向外側部分が折り曲げられてリア縦壁部16Aが形成されていたが、センター縦壁部14A、及びリア縦壁部16Aは場合によっては無くても良く、図6(A),(B)に示すように、リアホイールハウスインナー12の端部を折り曲げてフランジ状の水平部分12Bを設け、この水平部分12Bにセンターフロア14のセンター水平部分14B、及びリアフロア16のリア水平部分16Bを接合し、センターフロア14と、リアフロア16と、リアサイドメンバ10と、リアホイールハウスインナー12の水平部分12Bとの4枚重ね部分でセンターフロア14とリアフロア16とを接合しないように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のフロア端部の結合構造を示すリアのリアホイールハウスインナー付近を車室内側から見た斜視図である。
【図2】(A)は図1の2(A)−2(A)線断面図であり、(B)は図1の2(B)−2(B)線断面図であり、(C)は図1の2(C)−2(C)線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】シーラーを塗布した車両のフロア端部の結合構造を示すリアのリアホイールハウスインナー付近を車室内側から見た斜視図である。
【図5】(A)は、その他の実施形態に係るリアホイールハウスインナー、リアサイドメンバ、及びセンターフロアの断面であり、(A)は、その他の実施形態に係るリアホイールハウスインナー、リアサイドメンバ、及びリアフロアの断面である。
【図6】従来の車両のフロア端部の結合構造を示すリアのリアホイールハウスインナー付近を車室内側から見た斜視図である。
【図7】(A)は図6の7(A)−7(A)線断面図であり、(B)は図6の7(B)−7(B)線断面図であり、(C)は図6の7(C)−7(C)線断面図である。
【図8】シーラーを塗布した従来の車両のフロア端部の結合構造を示すリアのリアホイールハウスインナー付近を車室内側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
10 リアサイドメンバ
12 リアホイールハウスインナー
14 センターフロア
14A センター縦壁部
16 リアフロア
16A リア縦壁部
24 スポット溶接
28 スポット溶接
32 スポット溶接(第1の接合部)
36 スポット溶接(第2の接合部)
42 シーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後方両側部に配置されるリアホイールハウスインナーと、
前記リアホイールハウスインナーの車両幅方向内側に配置され、車両前後方向に延びるリアサイドメンバと、
前記リアサイドメンバの車体後方側の上部、かつ前記リアホイールハウスインナーの車両幅方向内側に配置されるリアフロアと、
前記リアサイドメンバの車体前方側の上部、かつ前記リアホイールハウスインナーの車両幅方向内側に配置され、前記リアフロアの車両前方側と接合されるセンターフロアと、
を有し、
前記センターフロア、及び前記リアフロアの車両幅方向外側端部側においては、前記センターフロアと、前記リアサイドメンバと、前記リアホイールハウスインナーとを3枚重ねで接合した第1の接合部が少なくとも1箇所設けられると共に、前記リアフロアと、前記リアサイドメンバと、前記リアホイールハウスインナーとを3枚重ねで接合した第2の接合部が少なくとも1箇所設けられ、かつ、前記センターフロアの最も車両後方端部側の前記第1の接合部よりも車両後方部分と、前記リアフロアの最も車両前方側の前記第2接合部よりも車両前方部分とは、互いに接合していない、ことを特徴とする車両のフロア端部の結合構造。
【請求項2】
前記リアフロアは、前記リアサイドメンバの上部に配置されるリア水平部分、及び前記リア水平部分の前記リアホイールハウスインナー側に形成され前記リア水平部分と交差する方向に延びるリア縦壁部を備え、
前記センターフロアは、前記リアサイドメンバの上部に配置されるセンター水平部分、及び前記センター水平部分の前記リアホイールハウスインナー側に形成され前記センター水平部分と交差する方向に延びるセンター縦壁部を備え、
前記リア縦壁部、及び前記センター縦壁部が前記リアホイールハウスインナー側に接合され、
前記センター縦壁部の最も車両後方端部側の前記第1の接合部よりも車両後方部分と、前記リア縦壁部の最も車両前方側の前記第2接合部よりも車両前方部分とは、互いに接合していない、ことを特徴とする請求項1に記載の車両のフロア端部の結合構造。
【請求項3】
前記第1の接合部、及び前記第2の接合部は、一定の間隔で設けられている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のフロア端部の結合構造。
【請求項4】
前記センターフロアの端部、前記リアフロアの端部、及び前記リアサイドメンバの端部は、前記リアホイールハウスインナーと接する部分がシーラーで被覆されている、ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両のフロア端部の結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−90863(P2009−90863A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264589(P2007−264589)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】