説明

車両のホイールサスペンション

本発明は、車両のホイールサスペンションであって、ホイールキャリア2と、該ホイールキャリアに回転可能に支承された車両ホイール11と、前記ホイールキャリアを車両6の車体5に旋回可能にヒンジ接続する少なくとも1つの連結部材3と、少なくとも2つのジョイント7,8と、少なくとも1つの測定装置とを有しており、前記少なくとも2つのジョイントは、そのうちの一方の第1のジョイントが前記連結部材3とホイールキャリア2との間に接続され、他方の第2のジョイントが前記連結部材3と車体5との間に接続されており、前記少なくとも1つの測定装置は、第1のジョイント7内に組み込まれていて、少なくとも1つの角度センサ16,18を有しており、該角度センサによって、第1のジョイント7の変位λが検出されるようになっている形式のものに関する。この場合、前記測定装置は少なくとも1つの加速度センサ23を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールサスペンションであって、ホイールキャリアと、該ホイールキャリアに回転可能に支承された車両ホイールと、前記ホイールキャリアを車両の車体に旋回可能にヒンジ接続する少なくとも1つの連結部材と、少なくとも2つのジョイントと、少なくとも1つの測定装置とを有しており、前記少なくとも2つのジョイントは、そのうちの一方の第1のジョイントが前記連結部材とホイールキャリアとの間に介在され、他方の第2のジョイントが前記連結部材と車体との間に介在されており、前記少なくとも1つの測定装置は、第1のジョイント内に組み込まれていて、少なくとも1つの角度センサを有しており、該角度センサによって、第1のジョイントの変位若しくは傾きが検出されるようになっている形式のものに関する。また本発明は、角度センサの使用法、並びに角度誤差を修正するための方法に関する。
【0002】
車両のホイールサスペンションの領域内に組み込まれた加速度センサは、信号データベース(ホイール垂直方向加速度、ホイール垂直方向速度、ダイナミックなホイール負荷変化)を発生させるために用いられる。このデータベースは、当該シャーシ調整システムを垂直方向にダイナミックに駆動する際の状態検出のために、特に該シャーシ調整システムのセミアクティブな減衰力制御を記録するために必要とされている。一般的に、ホイールキャリア、コントロールアーム又はスプリング・ダンパストラットに定置に配置されたセンサの、典型的なシャーシ運動学のためのアライメントは、ホイールサスペンション内の運動に基づいて保証されない。つまり、車両座標系の垂線に対するセンサ平面の著しい角度誤差が生じる。例えば車両のカーブ走行時(横方向加速度)及び/又は始動時及び制動時(前後方向加速度)において、水平方向に作用する加速度が発生すると、垂直方向加速度センサが前記車両座標系の垂線に対して傾いて、センサ主軸線における加速度成分が測定され、この加速度成分によって、センサ信号の質(方向)及び量(振幅)が狂うことになる。このような、測定された加速度誤差成分は、位置偏差(角度・平面・誤差)の関数、有効な水平方向の加速度ベクトルの関数を表す。この場合、水平線は、路面の座標系を基準にしている。
【0003】
このような加速度誤差成分の問題点は次の通りである:
・加速度センサから数値的な積分によって得られた目標信号(垂直方向加速度)の信号変動を、従来のフィルタリング装置によって避けることは、非常に困難であり、信号の有効性を著しく損なうことによってのみ可能となる。
・測定された加速度値は高い測定誤差を有する(20%まで)。
・特に明らかな旋回運動を実施する構成部材(コントロールアーム、傾斜したスプリング・ダンパストラット)等の所定の箇所は、シャーシにセンサを組み込むために除外される。
・シャーシ内におけるいずれにしても大きい位置変化の他に、相応に大きい傾斜角度若しくは勾配が存在するオフロード上では、信号の数値的な積分を行うことはできない。
【0004】
以上の欠点は、垂直方向の測定を行う加速度センサの高い横方向感度において生じる。この横方向感度は、位置に応じて(特に車両の実際の走行運転中における、時間的に不変である、センサのアライメントにおいて)、修正手段が得られない場合に、信号をさらに処理する際に問題がある。
【0005】
本発明の課題は、車両のホイールサスペンション内における加速度センサの角度誤差を修正するための可能性を提供することである。この場合、基準位置に対して相対的な加速度センサの変位に基づいて得られた、測定された加速度の偏差が角度誤差と称呼される。
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載したホイールサスペンション、請求項10に記載した使用法、及び請求項11に記載した方法によって解決された。本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0007】
車両特に自動車のための、本発明によるホイールサスペンションは、ホイールキャリアと、該ホイールキャリアに回転可能に支承された車両ホイールと、前記ホイールキャリアを車両の車体に旋回可能にヒンジ接続する少なくとも1つの連結部材と、少なくとも2つのジョイントと、少なくとも1つの測定装置とを有しており、前記少なくとも2つのジョイントは、そのうちの一方の第1のジョイントが前記連結部材とホイールキャリアとの間に接続され、他方の第2のジョイントが前記連結部材と車体との間に接続されており、前記少なくとも1つの測定装置は、第1のジョイント内に組み込まれていて、少なくとも1つの角度センサを有しており、該角度センサによって、第1のジョイントの変位が検出されるようになっている形式のものにおいて、前記測定装置が少なくとも1つの加速度センサを有している。
【0008】
測定装置は、角度センサも、また加速度センサも有しており、該加速度センサは角度センサと共に第1のジョイント内に組み込まれていることによって、角度センサと加速度センサとは、空間的に互いに近接して配置されている。角度センサによって第1のジョイントの変位を規定することができ、それに基づいて車体に対して相対的なジョイント位置を規定することができるので、基準位置に対して相対的な加速度センサの傾きを規定することができる。従って、角度誤差は、角度センサによって修正することができる。
【0009】
加速度センサと角度センサとを三次元的に統合したことによって、2つのセンサのために1つのケーブルハーネスを配線するだけでよい。また、センサをシャーシ構造部内に組み込むための対策、並びにセンサを周囲の影響(例えば水の侵入)に対して保護するための対策は、一度実施するだけでよい。さらに、有利には測定装置と共にジョイント内に組み込まれた評価装置を、共通に使用することができる。
【0010】
角度センサは、加速度センサの角度誤差、特に加速度センサによって検出された値又は信号を補整又は修正するために用いられる。付加的に、角度センサは、その他の使用目的のためにも使用することができる。有利には、角度センサは、有利には互いに直角に整列されている2つ又は少なくとも2つの平面におけるジョイントの変位を検出することができる。特に、加速度センサは、3つ又は少なくとも3つの異なる空間方向の加速度を検出することができる。有利には、角度センサと加速度センサとは同一の基板上に配置されている。
【0011】
本発明の実施態様によれば、第1のジョイントはボールジョイントであるか、又はゴム金属ジョイントである。有利には、ホイールキャリアは、第1のジョイントによって連結部材に結合されている。連結部材はトーロッド(Spurstange)である。有利には、連結部材は、ホイールガイドアーム、特にコントロールアーム(横リンク)又はトレーリングアーム(縦リンク)である。
【0012】
第1のジョイントは有利には、ハウジングと、該ハウジング内に配置されたジョイント内部部分とを有しており、該ジョイント内部部分が、前記ハウジングに対して相対的に可動であって、前記測定装置(センサ装置)は特にハウジングの内部に又は外部に配置されている。有利には、角度センサは、前記ジョイント内部部分に固定された磁石と、前記ハウジングの内部に又は外部に固定された少なくとも1つの磁界感応式のセンサとを有している。選択的に、磁気感応式のセンサが内部部分に固定されていて、磁石がハウジングに固定されていてよい。内部部分は有利にはボールピボットであり、このボールピボットはジョンとボールを有していて、このジョイントボールによって回転可能かつ/または旋回可能にハウジング内に支承されているので、第1のジョイントはボールジョイントを形成する。
【0013】
本発明はさらに、加速度センサによって検出された値又は信号の角度誤差を修正するための角度センサの使用法に関する。これらセンサ(加速度センサ及び角度センサ)は、一緒に、車両特に自動車のホイールサスペンションのジョイント内に組み込まれている。ホイールサスペンションは、本発明によれば特に、この関連性において記載されたすべての実施態様に従って構成することができるホイールサスペンションである。
【0014】
また本発明は、加速度センサによって検出された値又は信号の角度誤差を修正するための方法に関する。加速度センサは角度センサと共に、ホイールサスペンションのジョイント内に組み込まれていて、ジョイントの少なくとも1つの変位が測定され、加速度センサの少なくとも1つの値又は信号が測定され、測定された値又は測定された信号が、測定された前記変位を考慮しながら修正される。ホイールサスペンションは、特に、この関連性において記載されたすべての実施態様に従って構成することができる、本発明によるホイールサスペンションである。加速度センサによって検出された値又は信号は、特に加速度若しくは加速度信号である。
【0015】
本発明の実施態様によれば、明確な長さ変化を示す近傍構成部材に組み込まれた加速度センサの信号・オフセット処理を、いわゆるセンサ積分によって行う方法に関する。そのための基礎は、ホイールサスペンションのボールジョイント又はゴム金属ジョイントに取り付けられた、角度センサを有する測定装置であり、この測定装置はさらに三軸式の加速度センサを有している。2つの軸におけるジョイントの相対的な旋回角度が測定され、また3つの軸に沿ったセンサユニットの加速度が測定される。まず最初に、加速度センサによって垂直方向の加速度が、ホイール側のボールジョイント若しくはホイールキャリアによって測定される。
【0016】
本発明の利点は次の通りである:
・分割配置されたセンサシステムと比較して、測定箇所における修正は、固有の信号調整によって行われる。これは、基本的に、ジョイント内に信号若しくはセンサシステムを集中的に設けたことによってはじめて可能である
・センサシステムの配置可能性は、加速度センサによって制限を受けることはない。つまり例えば高集積化されたセンサシステムを非常に短いコントロールアーム(<0.2m)に使用することができる。
・外部の補助信号を使用することによって運転中に欠点が生じることはない。補助信号に対する妨害の影響は避けられ、補助信号の質は改善される。
・一般的な形式で水平方向の加速度値が送信される車両バスシステムは、その他の「消費器」によって負荷されることはない。
・調整機能は分散される。つまり調整システムECU(ECU=電子制御装置)の負担は軽減される。
・3軸式の加速度センサは、安価であり、組み込みが容易であり、しかも頑丈である。
・加速度信号の質は、全体的に改善され、測定誤差は避けられるか若しくは減少される。
【0017】
本発明を以下に図示の実施例を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例によるホイールサスペンションの概略図である。
【図2】図1に示したホイールサスペンションのボールジョイントの断面図である。
【図3】図2に示したボールジョイントの、2つの異なるばねストローク位置における概略図である。
【図4】図2に示した加速度センサに作用する加速度を示す概略図である。
【図5】加速度センサの傾斜角度に応じて、角度誤差を修正するための修正係数を示す線図である。
【0019】
図1には、ホイールキャリア2を備えたホイールサスペンション1が示されており、該ホイールサスペンション1は、ロアコントロールアーム3及びアッパーコントロールアーム4によって、部分的に示された車両6の車体5に旋回可能にヒンジ結合されている。ロアコントロールアーム3は、ボールジョイント7によってホイールキャリア2に接続されていて、ラバーマウント8によって車体5に接続されている。またアッパーコントロールアーム4はボールジョイント9によってホイールキャリア2に接続されていて、ラバーマウント10によって車体5に接続されている。ホイールキャリア2には、車両ホイール11がホイール回転軸線12を中心にして回転可能に支承されている。また、車体前後方向x、車体横方向y、車体上下方向zが示されており、車体前後方向xは、図平面内に侵入する。この場合、軸線x、y、zは、車体5に関連した車体座標系25を形成している。
【0020】
図2には、ボールジョイント7の断面図が示されており、該ボールジョイント7はハウジング13を有していて、該ハウジング13内でボールピボット14が回転可能、かつ旋回可能に支承されている。ハウジング13はロアコントロールアーム3に堅固に結合されていて、これに対して、ボールピボット14は、図2に示されていないホイールキャリア2に固定されている。ボールピボット14はジョイントボール15を有していて、該ジョイントボール15内に永久磁石16が配置されている。永久磁石16の磁界17は、磁界感応式のセンサ18と相互作用する。このセンサ18は、ハウジング13に固定された基板19上に設けられている。磁石16と磁界式のセンサ18とが協働して、角度センサを形成しており、該角度センサによって、ハウジング13に対して相対的なボールピボット14の変位を検出することができる。この変位は、例えば、ハウジング13の長手方向軸線20とボールピボット14の長手方向軸線21との間の角度として規定されている。ボールジョイント7が変位されていない状態で、2つの長手方向軸線20と21とが合致し合う。選択的に、この変位は、ボールピボット14とロアコントロールアーム3(若しくはコントロールアーム3の中心線22)とによって形成される角度を示していてもよい。付加的に、基板19上に加速度センサ23が固定されており、該加速度センサ23は、3つの異なる空間方向の加速度を検出することができる。加速度のための種々異なる検出方向は、x′、y′、z′で示されていて、加速度センサ23に配属されたセンサ座標系26(図4参照)を規定する。有利には、検出方向z′は、ハウジング13の長手方向20に調整されている。
【0021】
図3は、車両ホイール11の異なるばねストロークを有する、2つの異なる位置A及びBにあるボールジョイント7を示す。符号δは、車体上下軸線zとロアコントロールアーム3の中心線22との間の角度を示し、符号λは、ボールピボット14の長手方向軸線21とロアコントロールアーム3の中心線22との間の角度を示す。加速度センサ23のセンサ平面24が示されており、このセンサ平面24は、加速度センサ23の2つの検出方向x′及びy′によって規定若しくは形成されている。追加的に、図3及び図4には補助座標系27が示されており、該補助座標系27は、車体座標系25の基準点を、センサ座標系26の基準点に平行移動運動させることによって得られる。補助座標系27は、車体座標系25にずらされるが、この車体座標系25と同じように調整されるので、補助座標系27は、符号x、y、zによっても示される。基準位置において、センサ座標系26と補助座標系27とは重なり合う。
【0022】
車両ホイール11の純粋な圧縮ばねストローク又は伸張ばねストロークにおいて、センサ平面24は有利には、車体座標系25のyz平面でのみ移動する。圧縮ばねストローク又は伸張ばねストロークによる、センサ平面24の、基準位置に対する傾きは、角度αによって示されており、この角度αは、センサ平面24の回転及びひいては、補助座標系27のx軸線を中心としたセンサ座標系26を表してもいる。角度αは、補助座標系27のz軸線とセンサ座標系26のz′軸線との間の角度を示している。
【0023】
図4には、x方向若しくはy方向における2つの水平加速度ax及びayと、z方向における垂直方向加速度azとが示されている。これらの方向x、y、zは補助座標系27に関連して示されている。センサ座標系26は、補助座標系27のx軸線を中心として角度αだけ回転せしめられているので、加速度センサ23によって検出された、z′軸線方向における垂直方向加速度は、実際の垂直方向加速度azに相当する。補助座標系27に対して相対的なセンサ座標系26の回転を知ることによって、並びに補助座標系27の方向x′,y′及びz′における加速度ax′,ay′及びaz′を知ることによって、実際の垂直方向加速度azが検出可能である。補助座標系27に対して相対的な、センサ座標系26の回転は、ハウジング13又はロアコントロールアーム3に対して相対的なボールピボット14の変位を、角度センサで測定することによって決定することができる。また、加速度ax′,ay′及びaz′は、加速度センサ23によって検出可能である。
【0024】
yz平面における、ボールピボット14の長手方向軸線21とコントロールアーム3の中心線22との間の角度が符号λで示されている。zx平面における、ボールピボット14の長手方向軸線21とx軸線との間の角度は符号Φで示されている。これによって、角度λと角度Φは、互いに垂直に整列された2つの平面における変位を規定し、角度センサによって規定され得る。また、角度βは、補助座標系27のy軸線を中心にした、補助座標系27に対して相対的なセンサ座標系26の回転を表しており、従って、角度αと角度βとは、基準位置に対するセンサ平面24の傾斜を規定する。図面3及び4において、βはゼロである。
【0025】
角度センサによって検出された角度λ及びΦから、角度α及びβを規定するために、電子式の評価装置28が設けられており、該評価装置28は、磁気感応式のセンサ18にも加速度センサ23にも電気的に接続されていて、基板19上に配置されている。
【0026】
例:
圧縮ばねストローク運動によって、運転中の加速度センサ23の平面位置は、定置の水平方向の整列に対して常に変えられる。このような変化は例えば±10°であって、非常に短いコントロールアームにおいては、それ以上である。つまりまず、圧縮ばねストロークに基づく、もちろん車道の傾斜角度にも基づく、垂直方向の加速度信号azのエラーが生じるが、このエラーは、次の式が適用されるので、中程度である。
【0027】
【数1】

【0028】
10°程度のほぼ平らな角度変化において、約1.5%の系統的な測定エラーが発生する。しかしながら走行運転中に、水平方向に著しく高い、部分的には長時間に亘って一定な加速度も発生し、このような水平方向の著しく高い加速度は、異常値として、測定された垂直方向加速度の信号の質(方向)及び量(振幅)に持続的な影響を与える。仮定された側方の加速度ay及び角度のずれαにおいて、垂直方向の測定値は次のようにエラーする。
【0029】
【数2】

【0030】
ay=9.81m/s(重力加速度g)及び平面に対するずれα=10°における、垂直方向加速度の相対的に大きい測定エラーは、次の通りである。
【0031】
【数3】

【0032】
この測定エラーは、通常の垂直方向加速度0においても生じる。
【0033】
車体前後方向軸線を中心とした変位と同じ、車体前後方向軸線を中心としたセンサのカルダン旋回運動が発生するので、センサ23は、垂直方向の加速度に対するいわゆる横方向感度の他に、相応の前後方向感度を有している。実際には、2つの位置のずれが重畳され、この際に、走行方向に対して横方向に懸架されたコントロールアーム(横方向コントロールアーム)における横方向のずれが優先し、これに対して、走行方向で車体前後方向に懸架されたコントロールアーム(トレーリングアーム)における前後方向のずれが顕著になる。
【0034】
【数4】

【0035】
これらすべてのエラーは、長時間に亘って作用し、問題を引き起こすので、補償又は修正が行われる。車両6のその時点における全体的なアライメントと共に圧縮ばねストロークが、角偏差の原因であるので、エラー補整の方法において、ホイールサスペンション11内の既知の運動学的な関係に基づいて、運動学的なセンサの位置偏差が、一次的なジョイント角度のセンサ情報から検出される。さらに、横方向及び前後方向の加速度、つまり水平方向の異常値は、より大きい位置偏差においてさえも、3方向の加速度センサ23によって小さい誤差で測定されるので、測定された垂直方向の加速度成分az′は、直接かつリアルタイムで修正する可能性が得られる。
【0036】
修正のために、次の初期値が用いられる:
・適当な加速度センサ23によって測定された、実際の横方向加速度ayの横方向加速度成分ay′
・適当な加速度センサ23によって測定された、実際の前後方向加速度axの前後方向加速度成分ax′
・ジョイント7の角度センサによって測定されたカルダン角度λ(運動学的な位置偏差αに相当する)
・場合によっては、前記カルダン角度λに対して直交する、ジョイント7の二次的なカルダン角度Φ(いわゆるカルダン傾斜及びひいては位置偏差βに相当する)。
【0037】
すべての入力値は、ジョイント7に配置された測定装置によって測定技術的に検出される。この測定装置は、角度センサ、加速度センサ23及び有利には評価装置28も有している。修正値ax′及びay′は、簡単に得られる。つまり以下に示すように、車体座標に関連した値ax及びayに対して、より小さい測定エラーが生じるだけである。
【0038】
【数5】

及び
【数6】

【0039】
垂直方向加速度の修正は、次の式によって計算される。
【0040】
【数7】

【0041】
上記式中:
重み係数ay
・垂直方向加速度の測定値に対する影響ayのための重み関数
重み係数ax
・垂直方向加速度の測定値に対する影響axのための重み関数
azG-SENSOR_α,β
・加速度センサ23によって検出された垂直方向加速度az′
【0042】
目標信号に対する水平方向加速度の影響を計算するための重み値は、理想的には、まとめられた特性マップとして前もって計算され、評価装置28のメモリーに記憶される。何故ならば、三角関数は場合によっては必要な精度を実現できず、しかも集中計算できないからである。
【0043】
α、λ若しくはΦ、βが互いに直接的に比例関係にあるとの仮定は、場合によってはもはや許容されないか、又は非線形の関係を明確にする必要がある。加速度センサのセンサ平面24の傾斜による測定値に対する影響を示す三角関数は、図5に示されている。重み係数は、特性マップから入力値に基づいて読み取ることができる。例えばコントローラ若しくはチップ固有の電子ハードウエアを有する評価装置28による実時間計算の結果が、測定装置によって出力される、垂直方向加速度ayのエラー処理及びオフセット処理された信号である。
【符号の説明】
【0044】
1 ホイールサスペンション、 2 ホイールキャリア、 3 ロアコントロールアーム、 4 アッパーコントロールアーム、 5 車体、 6 車両、 7 ボールジョイント、 8 ラバーマウント、 9 ボールジョイント、 10 ラバーマウント、 11 車両ホイール、 12 ホール回転軸線、 13 ボールジョイントハウジング、 14 ボールピボット、 15 ジョイントボール、 16 永久磁石、 17 磁界、 18 磁界感応式のセンサ、 19 基板、 20 ボールジョイントハウジングの長手方向軸線、 21 ボールピボットの長手方向軸線、 22 コントロールアームの中心線、 23 加速度センサ、 24 加速度センサのセンサ平面、 25 車体座標系、 26 センサ座標系、 27 補助座標系、 28 評価装置、 x 車体前後方向、 y 車体横方向、 z 車体上下方向、 ay 横方向加速度、 az′ 加速度成分、 λ カルダン角度、 α 位置偏差、 Φ 二次的なカルダン角度、 β 位置偏差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールサスペンションであって、ホイールキャリア(2)と、該ホイールキャリア(2)に回転可能に支承された車両ホイール(11)と、前記ホイールキャリア(2)を車両(6)の車体(5)に旋回可能にヒンジ接続する少なくとも1つの連結部材(3)と、少なくとも2つのジョイント(7,8)と、少なくとも1つの測定装置とを有しており、前記少なくとも2つのジョイント(7,8)は、そのうちの一方の第1のジョイントが前記連結部材(3)とホイールキャリア(2)との間に接続され、他方の第2のジョイントが前記連結部材(3)と車体(5)との間に接続されており、前記少なくとも1つの測定装置は、第1のジョイント(7)内に組み込まれていて、少なくとも1つの角度センサ(16,18)を有しており、前記測定装置によって、第1のジョイント(7)の変位(λ)が検出されるようになっている形式のものにおいて、
前記測定装置が少なくとも1つの加速度センサ(23)を有していることを特徴とする、車両のホイールサスペンション。
【請求項2】
前記角度センサ(16,18)が、加速度センサ(23)によって検出された値又は信号の角度誤差を修正するために用いられる、請求項1記載のホイールサスペンション。
【請求項3】
前記加速度センサ(23)が、少なくとも3つの異なる空間方向の加速度を検出する、請求項1又は2記載のホイールサスペンション。
【請求項4】
前記角度センサ(16,18)が、少なくとも2つの異なる平面におけるジョイントの変位を検出する、請求項1から3までのいずれか1項記載のホイールサスペンション。
【請求項5】
前記角度センサ(16,18)と加速度センサ(23)とが、同じ基板(19)上に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のホイールサスペンション。
【請求項6】
第1のジョイント(7)がボールジョイントであって、該ボールジョイントによってホイールキャリア(2)が前記連結部材(3)に結合されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のホイールサスペンション。
【請求項7】
前記連結部材(3)がホイールコントロールアームである、請求項1から6までのいずれか1項記載のホイールサスペンション。
【請求項8】
第1のジョイント(7)が、ハウジング(13)と、該ハウジング(13)内に配置されたジョイント内部部分(14)とを有しており、該ジョイント内部部分(14)が、前記ハウジング(13)に対して相対的に可動であって、前記測定装置がハウジング(13)の内部に又は外部に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のホイールサスペンション。
【請求項9】
前記角度センサが、前記ジョイント内部部分(14)に固定された磁石(16)と、前記ハウジング(13)の内部に又は外部に固定された少なくとも1つの磁界感応式のセンサ(18)とを有している、請求項8記載のホイールサスペンション。
【請求項10】
加速度センサによって検出された値又は信号の角度誤差を修正するための角度センサ(16,18)の使用法において、
前記複数のセンサ(16,18;23)が一緒に、車両(6)のホイールサスペンション(1)のジョイント(7)内に組み込まれていることを特徴とする、角度センサ(16,18)の使用方法。
【請求項11】
加速度センサ(23)によって検出された値又は信号の角度誤差を修正するための方法において、
加速度センサ(23)を角度センサ(16,18)と共に、ホイールサスペンション(1)のジョイント(7)内に組み込み、該ジョイント(7)の少なくとも1つの変位を前記角度センサ(16,18)によって測定し、
少なくとも1つの値又は信号を前記加速度センサ(23)によって測定し、
測定された値又は測定された信号を、測定された前記変位を考慮して修正する、
ことを特徴とする、加速度センサ(23)によって検出された値又は信号の角度誤差を修正するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−526859(P2011−526859A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516962(P2011−516962)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【国際出願番号】PCT/DE2009/050035
【国際公開番号】WO2010/003409
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(506054589)ツェットエフ フリードリヒスハーフェン アクチエンゲゼルシャフト (151)
【氏名又は名称原語表記】ZF Friedrichshafen AG
【住所又は居所原語表記】D−88038 Friedrichshafen,Germany
【Fターム(参考)】