説明

車両の制御装置

【課題】電気負荷が作動した際の不必要なアイドルアップを防ぎながら、アイドル回転数の安定性を向上させる。
【解決手段】ユーザのスイッチ操作などにより電気負荷(スイッチ操作有)が作動した際にアイドルアップしたアイドルアップ回転数Idle2を中心とし、車両状態などに応じて第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動したときには、バッテリの状態に応じてアイドルアップ回転数Idle2を増減する。このような制御により、不必要なアイドル回転数の上昇を抑えることができ、燃費の向上、及び、エミッション等の環境性能の向上を図ることができる。また、第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動したときのアイドルアップ回転数の増減量βを、ユーザが気づきにくい範囲内の値に設定することで、ユーザが意図しない状況で電気負荷が作動しても、ユーザが違和感を感じないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(以下、エンジンともいう)と、バッテリ及び電気負荷とが搭載された車両の制御装置に関し、さらに詳しくは、電気負荷が作動したときにアイドル回転数を増大するアイドルアップ制御を実行する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンにおいては、吸気通路に設けたスロットルバルブを駆動するアクチュエータ(スロットルモータ)を設け、運転者のアクセルペダルの操作とは独立してスロットル開度を制御可能とした電子スロットルシステムが知られている。
【0003】
電子スロットルシステムでは、エンジン回転数と運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジンの運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットル開度が制御される。
【0004】
具体的には、スロットル開度センサ等を用いてスロットルバルブの実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルモータをフィードバック制御している。また、電子スロットルシステムにおいて、スロットルバルブはアイドル運転時にも開かれており、実際のアイドル回転数が目標アイドル回転数に一致するようにスロットルバルブの開度を調整してアイドル回転数をフィードバック制御している(ISC:Idle Speed Control)。
【0005】
なお、エンジンのアイドル回転数制御として、従来、エンジンの吸気通路に、スロットルバルブをバイパスするバイパス通路を形成し、そのバイパス通路内の空気流量を調整するアイドルスピードコントロールバルブ(ISCV)を設け、実際のアイドル回転数が目標アイドル回転数に一致するようにISCVの開度をフィードバック制御するという方法も採られている。
【0006】
一方、車両に搭載されるエアコンディショナ(以下、「エアコン」という)、ヘッドライト、ラジエータの電動冷却ファンなどの電気負荷は、車載のバッテリからの電源供給によって駆動されるので、それら電気負荷が作動するとバッテリの電気放電量が多くなる。この点を考慮して、電気負荷が増大した際には上記した目標アイドル回転数を所定量だけ増大させるアイドルアップ制御を行っている(例えば、特許文献1及び2参照)。このようなアイドルアップ制御では、例えば最大の電気負荷を考慮し、一定量の余裕を見込んでアイドルアップ量を設定している。
【0007】
また、電気負荷の状態に応じてアイドルアップ量を可変に設定する制御も提案されている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に記載の技術では、電気負荷が小さいほどバッテリの充電の要請が低いので、アイドル回転数を低く設定して燃費の低下と過充電とを防止しており、また、電気負荷が大ききほどバッテリの充電の要請が高いので、アイドル回転数を高く設定して発電量を増大させてることにより過放電を防止している。
【特許文献1】特開2007−154804号公報
【特許文献2】特開平9−189251号公報
【特許文献3】特開平10−327599号公報
【特許文献4】特開2003−254134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したアイドルアップ制御のうち、一定量の余裕を見込んでアイドルアップ量を設定する制御によると、電気負荷が作動した際のバッテリの電気放電量が少ない場合には、必要以上のアイドルアップ量になるため、燃料消費率(燃費)・環境に対して最適な制御とならない場合がある。
【0009】
一方、電気負荷の状態に応じてアイドルアップ量を可変に設定する制御では、燃費等の改善を図ることができるが、ラジエータの電動冷却ファンやワイパなどの間欠作動する電気負荷が投入された場合、アイドル回転数のハンチングが発生してユーザが違和感を感じることがある。
【0010】
また、車両に搭載される電気負荷には、ユーザのスイッチ操作などによって投入される電気負荷(例えば、ヘッドライト、エアコンのコンプレッサ駆動用モータ、デフォッガなど)と、ユーザ操作によらずECU(Electronic Control Unit)が自らの判断で監視制御する電気負荷(例えば、ラジエータの電動冷却ファン、排気ガスセンサに内蔵のヒータ、オートエアコン時の電動送風ファンなど)とがあり、これらの電気負荷のうち、ユーザ操作によらない電気負荷が作動し、その電気負荷の大きさに応じてアイドルアップ量が設定されると、ユーザが違和感を感じることがある。すなわち、ユーザ操作による電気負荷の作動によりアイドル回転数が増加しても、ユーザが自らの意思で電気負荷を作動させたことにより発生する回転数変動であるのでユーザは違和感を感じないが、ラジエータの電動冷却ファンや排気ガスセンサのヒータなどの電気負荷は、車両状態などに応じて、ユーザが意図しない状況で作動するので、それらの電気負荷(車両状態などに応じて作動する電気負荷)の作動によりアイドル回転数が変動した場合はユーザが違和感を感じることがある。
【0011】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、電気負荷が作動した際の不必要なアイドルアップを防ぎながら、アイドル回転数の安定性を向上させることが可能な車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、内燃機関(エンジン)と、バッテリと、電気負荷とが搭載された車両に適用される制御装置であって、前記内燃機関のアイドル運転時に実際のアイドル回転数が目標アイドル回転数に一致するように吸入空気量を制御するアイドル回転数制御、及び、前記電気負荷の作動時に前記アイドル回転数を増大させるアイドルアップ制御を実行する制御手段を備えているとともに、前記電気負荷として、外部からの作動要求信号に応じて前記制御手段(例えばECU)が作動を制御する第1電気負荷と、前記制御手段が自らの判断で作動を制御する第2電気負荷とが搭載された車両の制御装置を前提としており、このような車両の制御装置において、前記第1電気負荷が作動したときに、アイドル回転数を増大させるアイドルアップ制御を実行し、前記第2電気負荷が作動したときには、前記バッテリの状態に応じて、前記アイドルアップしたアイドル回転数を増減することを特徴としている。
【0013】
本発明において、前記第2電気負荷が作動したときのアイドル回転数の増減量は、前記第1電気負荷が作動したときのアイドルアップ量よりも小さく設定する。
【0014】
また、前記第2電気負荷が作動したときに、バッテリの充電状態に関連するパラメータが設定範囲以下である場合は前記アイドルアップ回転数を増量し、前記第2電気負荷が作動したときに、前記バッテリの充電状態に関連するパラメータが前記設定範囲以上である場合はアイドルアップ回転数を減量する。なお、バッテリの充電状態に関連するパラメータが設定範囲内である場合は前記アイドルアップ回転数を維持する。バッテリの状態に関連するパラメータとしては、バッテリ電流、バッテリ電圧、バッテリの充電率(残容量)SOC(State Of Charge)などが挙げられる。
【0015】
本発明によれば、ユーザのスイッチ操作などにより電気負荷(第1電気負荷)が作動した際にアイドルアップしたアイドル回転数を中心とし、車両状態などに応じて電気負荷(第2電気負荷)が作動したときには、バッテリの状態に応じて前記アイドルアップした回転数を増減するので、不必要なアイドル回転数の上昇を抑えることができ、燃費の向上、及びエミッション等の環境性能の向上を図ることができる。また、第2電気負荷が作動した際のアイドルアップ回転数の増減量を、第1電気負荷が作動した際のアイドルアップ量よりも小さい値で、ユーザが気づきにくい範囲(変動量)内の値に設定することで、ユーザが意図しない状況のときに、第2電気負荷(例えばラジエータの電動冷却ファンなど)が作動しても、ユーザに違和感を与えないようにすることができる。
【0016】
本発明において、前記第2電気負荷のうち、一定時間内にオン/オフとなる間欠作動の電気負荷が作動したときには、前記アイドルアップしたアイドル回転数の増減を行わないようにする。このような構成を採用すると、例えばワイパが間欠作動した際に、その間欠作動に伴って短い時間間隔でエンジン回転数が頻繁に変動する、という回転数変動を回避することができ、エンジン回転数の安定性の向上を図ることができる。その結果として、ユーザに違和感を与えないようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気負荷が作動した際の不必要なアイドルアップを防ぎながら、アイドル回転数の安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明の制御装置を適用する車両に搭載されるエンジン1の一例を図1に示す。なお、図1にはエンジンの1気筒の構成のみを示している。
【0020】
−エンジン−
この例のエンジン1は、例えば4気筒ガソリンエンジンであって、燃焼室1aを形成するピストン1b及び出力軸であるクランクシャフト15を備えている。ピストン1bはコネクティングロッド16を介してクランクシャフト15に連結されており、ピストン1bの往復運動がコネクティングロッド16によってクランクシャフト15の回転へと変換される。
【0021】
クランクシャフト15には、外周面に複数の突起(歯)17a・・17aを有するシグナルロータ17が取り付けられている。シグナルロータ17の側方近傍にはエンジン回転数センサ24が配置されている。エンジン回転数センサ24は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト15が回転する際にシグナルロータ17の突起17aに対応するパルス状の信号(出力パルス)を発生する。
【0022】
エンジン1の燃焼室1aには点火プラグ3が配置されている。点火プラグ3の点火タイミングはイグナイタ4によって調整される。イグナイタ4は、後述するECU100によって制御される。エンジン1のシリンダブロック1cには、エンジン水温(冷却水温)を検出する水温センサ21が配置されている。
【0023】
エンジン1の燃焼室1aには吸気通路11と排気通路12が接続されている。吸気通路11と燃焼室1aとの間に吸気バルブ13が設けられており、この吸気バルブ13を開閉駆動することにより、吸気通路11と燃焼室1aとが連通または遮断される。また、排気
通路12と燃焼室1aとの間に排気バルブ14が設けられており、この排気バルブ14を開閉駆動することにより、排気通路12と燃焼室1aとが連通または遮断される。これら吸気バルブ13及び排気バルブ14の開閉駆動は、クランクシャフト15の回転が伝達される吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの各回転によって行われる。
【0024】
吸気通路11には、エアクリーナ9、熱線式のエアフローメータ22、吸気温センサ23(エアフローメータ22に内蔵)、及び、エンジン1の吸入空気量を調整するための電子制御式のスロットルバルブ5などが配置されている。エンジン1の排気通路12には、排気ガス中の酸素濃度を検出する排気ガスセンサ(A/Fセンサ)27や三元触媒10などが配置されている。
【0025】
スロットルバルブ5はスロットルモータ6によって駆動される。スロットルバルブ5の開度はスロットル開度センサ25によって検出される。スロットルバルブ5は、運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ25によって検出される。また、スロットルモータ6はECU100によって駆動制御される。
【0026】
具体的には、エンジン回転数センサ24によって検出されるエンジン回転数と運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ5のスロットル開度を制御している。より詳細には、スロットル開度センサ25を用いてスロットルバルブ5の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ5のスロットルモータ6をフィードバック制御している。
【0027】
そして、吸気通路11には燃料噴射用のインジェクタ(燃料噴射弁)2が配置されている。インジェクタ2には、図示しない燃料タンクから燃料ポンプによって所定圧力の燃料が供給され、吸気通路11に燃料が噴射される。この噴射燃料は吸入空気と混合されて混合気となってエンジン1の燃焼室1aに導入される。燃焼室1aに導入された混合気(燃料+空気)は点火プラグ3にて点火されて燃焼・爆発する。この混合気の燃焼室1a内での燃焼・爆発によりピストン1bが往復運動してクランクシャフト15が回転する。
【0028】
以上のエンジン1が搭載される車両にはオルタネータ(発電機)7及びバッテリ8が搭載されている。
【0029】
オルタネータ7は、プーリ及び伝動ベルト等を介してエンジン1のクランクシャフト15に連結されており、エンジン1の作動に伴って回転して発電を行う。オルタネータ7で発電された電力は車載の各種電気負荷及びバッテリ8に供給される。電気負荷については後述する。
【0030】
オルタネータ7は、例えば三相コイルとしてステータに巻回されたステータコイルと、ステータコイルの内側に位置するロータに巻回されたフィールドコイルとを備えている。オルタネータ7は、フィールドコイルを通電状態で回転させることにより、ステータコイルに誘起電力を発生させ、誘起電流(三相交流電流)を整流器により直流電流に変換してバッテリ8に充電する。また、オルタネータ7は、スイッチング回路により構成されるICレギュレータを備えている。
【0031】
ICレギュレータは、例えば、バッテリ電圧信号を入力して、バッテリ電圧Vbが適切な範囲に収束するようにフィールドコイルの通電時間を調整する。具体的には、バッテリ電圧Vbが低下し始めて放電量が過剰側になろうとする場合には、前記フィールドコイルへの通電時間の比率(以下、F−DUTYという)を上昇させることによりバッテリ8の充電を行う。また、バッテリ電圧Vbが上昇し始めて充電量が過剰側になろうとする場合には、F−DUTYを低下させることにより、オルタネータ7のフィールドコイルへの通電割合を減少してバッテリ8の放電を行う。このようなICレギュレータの動作によりバッテリ8の充電状態を適切な範囲に維持するようにしている。オルタネータ7のF−DUTYはECU100に入力される。
【0032】
バッテリ8にはバッテリ電流センサ31が配置されている。バッテリ電流センサ31はバッテリ8に対して出入りする電流に対応する信号を出力する。バッテリ電流センサ31によって検出されるバッテリ電流Ibは、バッテリ8が放電状態であるときにはマイナスとなり、バッテリ8が充電状態であるときにはプラスとなる。また、バッテリ8にはバッテリ電圧Vbを検出するバッテリ電圧センサ32(図2参照)が配置されている。これらバッテリ電流センサ31及びバッテリ電圧センサ32の出力信号はECU100に入力される。
【0033】
ここで、この例の車両に搭載される電気負荷としては、外部からの要求信号(例えば運転者等のユーザのスイッチ操作などによる要求信号)に応じてECU100が作動を制御する電気負荷(以下、「第1電気負荷(スイッチ入力有)」ともいう)、及び、ECU100が自らの判断で監視制御する電気負荷(以下、「第2電気負荷(スイッチ入力無)」ともいう)がある。
【0034】
第1電気負荷(スイッチ入力有)としては、例えば、図2に示すように、スモールランプ/ヘッドランプ51、エアコンのコンプレッサ駆動用モータ52、デフォッガ53などが挙げられる。なお、コンライトスイッチ42の操作によりライトコントロールシステムが選択されているときのスモールランプ/ヘッドランプ51のオン/オフ作動も、この第1電気負荷(スイッチ入力有)に含まれる。
【0035】
第2電気負荷(スイッチ入力無)としては、例えば、図2に示すように、ラジエータの電動冷却ファン54、エアコンの電動送風ファン55、排気ガスセンサ27に内蔵のヒータ56、間欠作動時のワイパ57などが挙げられる。
【0036】
なお、電気負荷としては、上記に列記したものに限られることなく、車両に一般に搭載される各種電気負荷を対象として、後述するアイドルアップ制御を実施するようにしてもよい。
【0037】
−ECU−
ECU100は、図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、バックアップRAM104、入力インターフェース、及び、出力インターフェース(図示せず)などを備えている。
【0038】
ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参
照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらROM102、CPU101、RAM103及びバックアップRAM104はバスを介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース及び出力インターフェースに接続されている。
【0039】
ECU100の入力インターフェースには、水温センサ21、エアフローメータ22、吸気温センサ23、エンジン回転数センサ24、スロットル開度センサ25、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ26、排気ガスセンサ27、バッテリ電流センサ31、バッテリ電圧センサ32、コンライトセンサ(日照センサ)33、スモールランプ/ヘッドランプ51のオン/オフを操作するためのヘッドライトスイッチ41、コンライトシステムを起動するためのコンライトスイッチ42、オートエアコンスイッチ43、及び、デフォッガスイッチ44などが接続されている。
【0040】
また、ECU100の出力インターフェースには、インジェクタ2、点火プラグ3のイグナイタ4、スロットルバルブ5のスロットルモータ6、オルタネータ7、スモールランプ/ヘッドランプ51、エアコンのコンプレッサ駆動用モータ52、デフォッガ53、ラジエータの電動冷却ファン54、エアコンの電動送風ファン55、排気ガスセンサ27に内蔵のヒータ56、及び、ワイパ57などが接続されている。
【0041】
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力に基づいて、インジェクタ2の駆動制御(燃料噴射制御)、点火プラグ3の点火時期制御、スロットルバルブ5のスロットルモータ6の駆動制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、下記の「アイドル回転数制御」、及び、「アイドルアップ制御」を実行する。
【0042】
以上のECU100により実行されるプログラムによって本発明の車両の制御装置が実現される。
【0043】
−アイドル回転数制御−
アイドル回転数制御は、エンジン1のアイドル運転時に実行される制御であり、アイドル運転時の実際のアイドル回転数が目標アイドル回転数に一致するようにスロットルバルブ5の開度を調整してエンジン1への吸入空気量をフィードバック制御する。
【0044】
具体的には、エンジン1の運転状態(例えば水温センサ21の出力信号から得られる現在のエンジン水温など)に基づいてマップ等を参照して目標アイドル回転数を算出するとともに、エンジン回転数センサ24の出力信号から実際のアイドル回転数(エンジン回転数)を読み込み、その実際のアイドル回転数がアイドル目標回転数に一致するようにスロットルバルブ5の開度を制御してエンジン1への吸入空気量をフィードバック制御する。なお、後述するアイドルアップを行っていないときには、ベースアイドル回転数Idle1を目標アイドル回転数としてアイドル回転数制御を実行する。
【0045】
−アイドルアップ制御−
次に、アイドルアップ制御について図3のフローチャートを参照して説明する。図3の制御ルーチンはECU100において所定周期毎に繰り返して実行される。
【0046】
まず、ステップST101において、スイッチ操作によってスモールランプ/ヘッドランプ51、コンプレッサ駆動用モータ52、デフォッガ53などの第1電気負荷(スイッチ入力有)の作動信号が入力されたか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST102に進む。ステップST101の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0047】
ステップST102では、ベースアイドル回転数Idle1にアイドルアップ補正量αを加え(Idle←Idle1+α)、その補正後のアイドルアップ回転数Idle2を目標アイドル回転数としてアイドル回転数制御を行う。ここで、アイドルアップ回転数Idle2(Idle2=Idle1+α)は、従来制御のアイドルアップ量つまり最大の電気負荷を考慮して一定量の余裕を見込んだアイドルアップ量と比較して低い値であり、第1電気負荷(スイッチ入力有)の作動時のバッテリ8の電気放電量を考慮して実験・計算等によって適合した値を設定する。
【0048】
次に、ステップST103において、例えば、ラジエータの電動冷却ファン54(比較的長い時間連続作動する場合)、排気ガスセンサ27のヒータ56、オートエアコン風量変更時の電動送風ファン55など、車両状態や車内環境などに応じて作動する第2電気負荷(操作スイッチ無)が作動したか否かを判定する。具体的には、バッテリ電流センサ31の出力信号から得られるバッテリ電流値Ibの変化量に基づいて、第2電気負荷(操作スイッチ無)が作動した否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST104に進む。ステップST103の判定結果が否定判定である場合はリターンする。なお、第2電気負荷(操作スイッチ無)が作動したか否かの判定にオルタネータ7の発電量を用いてもよい。
【0049】
ステップST104では、バッテリ8が放電気味または過充電気味ではない状態(バッテリ8の充電量が適正範囲内)であるか否かを判定する。具体的には、バッテリ電流センサ31の出力信号から得られるバッテリ電流値Ibが条件[−A≦Ib≦B]を満たしているか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合は、アイドルアップ回転数Idle2をアイドル目標回転数とするアイドル回転数制御を継続する。ステップST104の判定結果が否定判定である場合(バッテリ8の状態が放電気味または過充電気味である場合)はステップST105に進む。
【0050】
なお、このステップST104においてバッテリ8が放電気味であるか否かを判定する判定値[−A(アンペア)]は、例えば、バッテリ容量[アンペアアワー(Ah)]及びバッテリ切れになるまでの許容時間(h)を考慮して適合した値を設定する。また、バッテリ8が過充電気味であるか否かを判定する判定値[B(アンペア)]についても、同様に、バッテリ容量及び過充電になるまでの許容時間(h)を考慮して適合した値を設定する。
【0051】
ステップST105では、バッテリ8が放電気味(バッテリ電流値Ib<−A)であるのか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST106に進む。
【0052】
ステップST106では、第2電気負荷(スイッチ入力無)の作動状態(オン状態)が一定時間Ta(図5参照)以上継続しているか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合は、ステップST107においてアイドル回転数Idleをアップする(Idle←Idel2+β)。ステップST106の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0053】
一方、ステップST105の判定結果が否定判定である場合(バッテリ8が過充電気味の状態(B<Ib)である場合)はステップST108に進む。
【0054】
ステップST108では第2電気負荷(スイッチ入力無)の作動状態(オン状態)が一定時間Ta以上継続しているか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合は、ステップST109においてアイドル回転数Idleをダウンする(Idle←Idel2−β)。ステップST108の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0055】
ここで、第2電気負荷(スイッチ入力無)が作動した際のアイドルアップ回転数の増減量β(アップ量β及びダウン量β)は、第1電気負荷(スイッチ入力有)が作動した際のアイドルアップ量αよりも小さい値であり、その増減量βの増減によってエンジン回転数が変動してもユーザが気づきにくい値を適合して設定する。
【0056】
次に、以上のアイドルアップ制御の具体的な例について図4のタイミングチャートを参照して説明する。
【0057】
まず、電気負荷が作動していない状態では、エンジン回転数はベースアイドル回転数Idle1に制御される。この状態で、第1電気負荷(スイッチ操作有)が作動した場合、具体的には、例えば、ユーザによるヘッドライトスイッチ41の操作によってスモールランプ/ヘッドランプ51が作動すると、エンジン1のアイドル回転数Idleは、ベースアイドル回転数Idle1に対してアイドルアップ量αだけ大きいアイドルアップ回転数Idle2(Idle2=Idle1+α)を目標アイドル回転数として制御される。
【0058】
次に、第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動した場合、具体的には、例えば、ラジエータの電動冷却ファン54が作動すると、そのときのバッテリ8の状態に応じてアイドルアップ量の維持または増減を行う。
【0059】
例えば、電動冷却ファン54が作動したときに、バッテリ8が放電気味でなく、かつ、過充電気味でない場合(バッテリ電流Ibが[−A≦Ib≦B]の設定範囲にある場合)は、アイドルアップ回転数Idle2を維持する。これに対し、図4に示すように、電動冷却ファン54が作動したときのバッテリ8が放電気味である場合(Ib<−A)は、アイドルアップしたアイドル回転数Idle2を更にアップする(Idle←Idel2+β)。また、図4に示すように、第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動したときのバッテリ8が過充電気味である場合(B<Ib)は、アイドルアップした回転数Idle2をダウンする(Idle←Idel2−β)。
【0060】
以上のように、この例のアイドルアップ制御によれば、ユーザのスイッチ操作などによって電気負荷(スイッチ操作有)が作動した際にアイドルアップしたアイドル回転数Idle2を中心とし、車両状態などに応じて第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動したときには、バッテリ8の状態に応じてアイドルアップ回転数Idle2を増減するので、不必要なアイドル回転数の上昇を抑えることができ、燃費の向上、及び、エミッション等の環境性能の向上を図ることができる。しかも、ラジエータの電動冷却ファン54などの第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動した際のアイドルアップ回転数Idle2の増減量βを、ユーザが気づきにくい範囲(回転数変動量)内の値に設定しているので、ユーザが意図しない状況のときに第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動しても、ユーザに違和感を与えないようにすることができる。
【0061】
しかも、この例のアイドルアップ制御では、例えばワイパ57やラジエータの電動冷却ファン54など、ECU100自体の監視制御によって、短時間内に間欠作動する第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動したときには、上記したアイドルアップ回転数Idle2の増減は行わない。
【0062】
具体的には、図3に示すフローチャートのステップST106及びステップST108の各処理により、時間的なヒステリシス(電気負荷の作動が一定時間Ta以上継続)を持たせて、短時間内に間欠作動する第2電気負荷(スイッチ操作無)が作動した場合は、図5の2点鎖線で示すようなアイドルアップ回転数Idle2の増減は行わずに、アイドルアップ回転数Idle2を維持している。これによって、例えば、ワイパ57やラジエータの電動冷却ファン54が短時間の間に間欠作動した際に、その間欠作動に伴って短い時間間隔でエンジン回転数が頻繁に変動する、という回転数変動を回避することができ、エンジン回転数の安定性の向上を図ることができる。その結果として、ユーザに違和感を与えないようにすることができる。
【0063】
ここで、アイドルアップ回転数Idle2の増減の実施/未実施の判定に用いる一定時間Ta(時間的なヒステリシス)については、ワイパ57などの短時間の間に間欠動作する第2電機負荷(スイッチ操作無)のオン/オフのインターバルを考慮し、そのインターバルよりも長い時間を適合して設定する。
【0064】
−他の実施形態−
以上の例では、アイドルアップ回転数Idle2の増減を、バッテリ8の状態を示すパラメータの1つであるバッテリ電流値Ibを用いて判定しているが、本発明はこれに限られることなく、バッテリ電圧Vb、バッテリ電流Ib及びバッテリ温度Tbに基づいて算出されるバッテリ8の充電率(残容量)SOC[%]を用いて、アイドルアップ回転数Idle2の増減(増減無の場合も含む)を判定するようにしてもよい。また、バッテリ電圧センサ32の出力信号から得られるバッテリ電圧Vbを用いてアイドルアップ回転数Idle2の増減(増減無の場合も含む)を判定するようにしてもよい。
【0065】
以上の例では、スロットルモータにて駆動される電子制御式のスロットルバルブの開度を調整することによりアイドル回転数制御を行うエンジンを搭載した車両の制御に本発明を適用しているが、これに限られることなく、スロットルバルブをバイパスするバイパス通路及びバイパス通路内の空気流量を調整するISCVを備え、そのISCVの開度を、アイドル回転数が目標アイドル回転数に一致するようにフィードバック制御するエンジンを搭載した車両の制御にも本発明は適用可能である。
【0066】
以上の例では、ポート噴射型ガソリンエンジンを搭載した車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、筒内直噴型ガソリンエンジンを搭載した車両の制御にも適用可能である。また、本発明は、ガソリンエンジンを搭載した車両の制御に限られることなく、ディーゼルエンジン等の他のエンジンを搭載した車両の制御にも適用可能である。
【0067】
さらに、本発明は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両、4輪駆動車などの各種車両の制御にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、エンジン、バッテリ及び電気負荷が搭載された車両の制御装置に利用可能であり、さらに詳しくは、電気負荷が作動したときにアイドル回転数を増大するアイドルアップ制御を実行する車両の制御装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の制御装置を適用する車両に搭載されるエンジンの一例を示す概略構成図である。
【図2】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】アイドルアップ制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】アイドルアップ制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】アイドルアップ制御の他の例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 エンジン
5 スロットルバルブ
7 オルタネータ
8 バッテリ
24 エンジン回転数センサ
25 スロットル開度センサ
27 排気ガスセンサ
31 バッテリ電流センサ
32 バッテリ電圧センサ
33 コンライトセンサ(日照センサ)
41 ヘッドライトスイッチ
42 コンライトスイッチ
43 オートエアコンスイッチ
44 デフォッガスイッチ
51 スモールランプ/ヘッドランプ
52 コンプレッサ駆動用モータ
53 デフォッガ
54 電動冷却ファン(ラジエータ)
55 電動送風ファン(エアコン)
56 ヒータ(排気ガスセンサに内蔵)
57 ワイパ
100 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、バッテリと、電気負荷とが搭載された車両に適用される制御装置であって、前記内燃機関のアイドル運転時に実際のアイドル回転数が目標アイドル回転数に一致するように吸入空気量を制御するアイドル回転数制御、及び、前記電気負荷の作動時に前記アイドル回転数を増大させるアイドルアップ制御を実行する制御手段を備えているとともに、前記電気負荷として、外部からの作動要求信号に応じて前記制御手段が作動を制御する第1電気負荷と、前記制御手段が自らの判断で作動を制御する第2電気負荷とが搭載された車両の制御装置において、
前記第1電気負荷が作動したときに、アイドル回転数を増大させるアイドルアップ制御を実行し、前記第2電気負荷が作動したときには、前記バッテリの状態に応じて、前記アイドルアップしたアイドル回転数を増減することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
前記第2電気負荷が作動したときのアイドル回転数の増減量は、前記第1電気負荷が作動したときのアイドルアップ量よりも小さく設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両の制御装置において、
前記第2電気負荷が作動したときに、前記バッテリの充電状態に関連するパラメータが設定範囲以下である場合は前記アイドルアップ回転数を増量し、前記第2電気負荷が作動したときに、前記バッテリの充電状態に関連するパラメータが前記設定範囲以上である場合は前記アイドルアップ回転数を減量することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
前記第2電気負荷のうち、一定時間内にオン/オフとなる間欠作動の電気負荷が作動したときには前記アイドル回転数の増減を行わないことを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−138877(P2010−138877A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318352(P2008−318352)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】