車両の前部構造
【課題】前部車体の側方部に衝突物が当接した場合等においても、該衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるようにする。
【解決手段】車両の前部にバンパフェイス1が配設されるとともに、その後方側に衝撃吸収部材26が設けられ、該衝撃吸収部材26よりも下方には、車両の前部に衝突した衝突物の下部を車両前方へ払うロアスチフナー27が車両の前方に突設され、上記バンパフェイス1の左右側方部にヘッドランプユニット2が配設された車両の前部構造であって、上記ヘッドランプユニット2のランプハウジングが車体部材に支持されるとともに、該ランプハウジングには、バンパフェイス1の縁よりも内側の車両後方側に配設されて衝突荷重を吸収する荷重吸収部18が一体に設けられ、かつ上記バンパフェイス1には、該バンパフェイス1に入力された衝突荷重を上記荷重吸収部18に伝達する荷重伝達部10が設けられた。
【解決手段】車両の前部にバンパフェイス1が配設されるとともに、その後方側に衝撃吸収部材26が設けられ、該衝撃吸収部材26よりも下方には、車両の前部に衝突した衝突物の下部を車両前方へ払うロアスチフナー27が車両の前方に突設され、上記バンパフェイス1の左右側方部にヘッドランプユニット2が配設された車両の前部構造であって、上記ヘッドランプユニット2のランプハウジングが車体部材に支持されるとともに、該ランプハウジングには、バンパフェイス1の縁よりも内側の車両後方側に配設されて衝突荷重を吸収する荷重吸収部18が一体に設けられ、かつ上記バンパフェイス1には、該バンパフェイス1に入力された衝突荷重を上記荷重吸収部18に伝達する荷重伝達部10が設けられた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部にバンパフェイスが配設されるとともに、その左右側方部にヘッドランプユニットが配設された車両の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロントバルクヘッドにラジエータグリルが取り付けられ、このラジエータグリルの下方にバンパビームが設けられた車体前部の衝撃吸収構造において、フロントバルクヘッドの上部を構成するバルクヘッドビームと、バンパビームとにステイが掛け渡され、このステイに衝撃吸収部材が取り付けられ、ラジエータグリルの背面に軸部材が取り付けられ、この軸部材と衝撃吸収部材とが球面軸受で連結された構造とすることにより、ラジエータグリルの揺動軸に向かう荷重や、車体前後方向に対して傾斜した方向からの荷重に対して衝突物が受ける衝撃を効率よく緩和できるようにしたものが知られている。
【0003】
また、下記特許文献2には、ヘッドランプハウジングに、アウタレンズの上方側先端に係止してアウタレンズを支持固定する係止溝部と、この係止溝部から下方に延設されてラジエータコアサポートアッパに固定される車体取付け部とを設け、前記ヘッドランプハウジングの係止溝部から車体取付け部にかけて後方側開断面形状の衝撃吸収部を形成することにより、ヘッドランプユニットのアウタレンズに対して斜め前方から入力される際の衝撃力を吸収して障害物の衝撃を少なくすべく構成された自動車のヘッドランプ取付け構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−6238号公報
【特許文献2】特開2004−207061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された車体前部の衝撃吸収構造では、車体の側方部に衝突物が当接した際の入力荷重を、バンパフェイスの後方側であって車幅方向の中央部に設けられた単一の衝撃吸収部材により吸収するように構成されているため、上記入力荷重を充分に吸収することが困難であり、この点で改良の余地が残されていた。特に、車体デザイン上の観点からバンパフェイスの左右両側辺部を所定の曲率で湾曲させることにより、車体の前面側部を平面視で流線形状に形成した場合には、その側方部に衝突物が当接することにより入力された荷重に応じて上記球面軸受を中心にラジエータグリルを揺動変位させることによる入力荷重の吸収作用に充分に発揮させることができず、衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することはできなかった。
【0006】
また、上記のように前部車体の左右両辺部を所定の曲率で湾曲させた場合には、車体の前面に当接する障害物をボンネット上に跳ね上げる上記ロアスチフナーを前部車体の左右両側部において大きく車体の前方側に突出させることができず、しかも上記障害物に大きな衝突荷重が入力するのを防止するための衝撃吸収部材の厚みを前部車体の左右両側部において充分に確保することが困難であるため、上記衝突物が受ける衝撃を特に効果的に緩和できるようにすることが望まれていた。
【0007】
一方、上記特許文献2に開示された発明では、ヘッドランプハウジングに設けられた係止溝部等により衝撃吸収部を形成したため、ヘッドランプハウジングの設置部に障害物が当接した場合に、該障害物を保護することできる。しかし、上記ヘッドランプハウジングの車幅方向内側に位置するバンパフェイスの側方部等に障害物が当接した場合には、該障害物を上記衝撃吸収部によって効果的に保護することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、前部車体の側方部に衝突物が当接した場合等においても、該衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することができる車両の前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車両の前部にバンパフェイスが配設されるとともに、その後方側には、該バンパフェイスの所定高さに入力された衝突荷重を変形により吸収する衝撃吸収部材が設けられ、該衝撃吸収部材よりも下方には、車両の前部に衝突した衝突物の下部を車両前方へ払うロアスチフナーが車両の前方に突設され、上記バンパフェイスの左右側方部にヘッドランプユニットが配設された車両の前部構造であって、上記ヘッドランプユニットのランプハウジングが、その後方側に位置する車体部材に支持されるとともに、該ランプハウジングには、正面視でバンパフェイスの縁よりも内側の車両後方側に配設されて衝突荷重を吸収する荷重吸収部が一体に設けられ、かつ上記バンパフェイスには、該バンパフェイスに入力された衝突荷重を上記荷重吸収部に伝達する荷重伝達部が設けられたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の前部構造において、上記バンパフェイスの車両後方側には、車体側部材のなかでも比較的、剛性の高いバンパビームが車幅方向に延びるように設置され、該バンパビームの前面に衝撃吸収部材が取り付けられるとともに、該バンパビームの上方に上記荷重吸収部が配設されたものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の車両の前部構造において、上記荷重吸収部は、バンパビームに設けられた衝撃吸収部材の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に離間した位置に配設されたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の前部構造において、平面視で上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部が、バンパフェイスの背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置されるとともに、上記車幅方向外端部の厚みがその車幅方向の内側部の厚みよりも薄く形成されたものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、上記請求項1ないし4の何れか1項に記載の車両の前部構造において、上記ヘッドランプユニットには、バンパビームの後方側に位置する車体部材に取り付けられる複数の主取付部が設けられるとともに、上記荷重吸収部の周囲には、車体部材に取り付けられる副取付部が形成されたものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両の前部構造において、前部車体の左右に配設された車体フレームの間にラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドが設けられ、該ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドに上記ヘッドランプユニットの副取付部が取り付けられたものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、上記荷重吸収部は、背面視において内部に複数のリブが設けられるとともに、上記荷重吸収部と対向した箱枠形状に形成されたものである。
【0016】
請求項8に係る発明は、上記請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、上記バンパフェイスは、バンパフェイス主部と、該バンパフェイス主部に形成された開口部に取り付けられる意匠面部とを有し、該意匠面部に上記荷重伝達部が一体に形成されたものである。
【0017】
請求項9に係る発明は、上記請求項8に記載の車両の前部構造において、上記荷重伝達部は、バンパフェイス主部の後方側に配設されたものである。
【0018】
請求項10に係る発明は、上記請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、上記荷重吸収部の周囲には、位置決め用凹部または位置決め用突部が形成され、上記荷重伝達部の周囲には、該位置決め用凹部または位置決め用突部に対応する位置決め用突部または位置決め用凸部が形成されたものである。
【0019】
請求項11に係る発明は、上記請求項4に記載の車両の前部構造において、上記ロアスチフナーのバンパビームに対する中央部の前方突出量が、その側方部に比べて大きく形成されたものである。
【0020】
請求項12に係る発明は、上記請求項6に記載の車両の前部構造において、上記ロアスチフナーは、ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部に支持され、かつロアスチフナーおよび衝撃吸収部材の側端部と荷重吸収部とがラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部よりも車幅方向外側に配設されたものである。
【0021】
請求項13に係る発明は、上記請求項1〜12のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、上記ロアスチフナーの側端部には、車両の前部に配設された補機との干渉を防止するための切欠きが形成されたものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明では、車両の前面中央部等に障害物が当接した場合に、該障害物に作用する衝突荷重をバンパフェイスの後方側に設けられた衝撃吸収部材により吸収しつつ、上記ロアスチフナーで障害物の下方部を払ってボンネットフードで受け止めることにより保護することができる。また、車両の前面側方部に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝突荷重を、上記衝撃吸収部材により吸収しつつ、バンパフェイスに設けられた荷重伝達部からランプハウジングと一体に設けられた荷重吸収部およびその後方側の車体側部材に効率よく分散して支持することができ、車体の前面部に当接した衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0023】
請求項2に係る発明では、バンパフェイスの車両後方側において車幅方向に延びるように設置されるとともに、前面に衝撃吸収部材が取り付けられたバンパビームの上方に上記荷重吸収部を配設したため、車両の前面部左右等に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を上記衝撃吸収部材およびその上方に位置する荷重吸収部の両方に分散させて効果的に吸収することができ、これによって上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。また、車体側部材のなかでも比較的、剛性の高いバンパビームの前面に衝撃吸収部材を取り付けたため、該バンパビームに障害物が直接当接するのを防止して該障害物が大きな衝撃を受けるのを効果的に抑制しつつ、上記衝撃吸収部材による衝突荷重の吸収効果を充分に発揮させることができる。
【0024】
請求項3に係る発明では、ランプハウジングの荷重吸収部を、バンパビームに設けられた衝撃吸収部材の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に離間した位置に配設したため、上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部近傍に障害物が当接し、該衝撃吸収部材による衝撃吸収効果を充分に発揮させることができない場合においても、上記ランプハウジングに設けられた荷重吸収部を利用して衝突荷重を効率よく吸収することができ、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0025】
請求項4に係る発明では、平面視で上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部を、バンパフェイスの背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置するとともに、上記車幅方向外端部の厚みをその車幅方向の内側部の厚みよりも薄く形成したため、車体を流線形状に形成することによりデザイン性を向上させることができる。そして、車両の前面部左右等に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部において充分に吸収することができない場合においても、上記衝突荷重を衝撃吸収部材の上方に位置する荷重吸収部に伝達して吸収することにより、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することができる。
【0026】
請求項5に係る発明では、バンパビームの後方に位置するラジエータシュラウド支持メンバ等からなる車体部材に取り付けられる複数の主取付部をヘッドランプユニットに設けるとともに、ラジエータシュラウド等からなる車体部材に取り付けられる副取付部を上記荷重吸収部の周囲に形成したため、車両の前突時等に上記バンパフェイスの荷重伝達部を介して上記ランプハウジングの荷重吸収部に伝達された衝突荷重を、上記主取付部からランプハウジングを経て上記ラジエータシュラウド支持メンバ等に伝達するルートと上記副取付部から荷重吸収部を経てラジエータシュラウド等に伝達するルートとに分散して支持することができるため、上記衝突物が受ける衝撃を、より効果的に緩和できるという利点がある。
【0027】
請求項6に係る発明では、左右の車体フレーム間に配設されて該車体フレームに取り付けられるラジエータシュラウドまたは上記車体フレームと一体に形成されたフロントバルクヘッド(特許文献1参照)に上記荷重吸収部の副取付部を取り付け、バンパビームの後方に位置する車体側部材により上記ヘッドランプユニット左右両側部を支持するように構成したため、車両の前突時等に上記バンパフェイスの荷重伝達部を介して上記ランプハウジングの荷重吸収部に伝達された衝突荷重を、上記ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの何れか一方とラジエータシュラウド支持メンバ等からなる車体側部材とに伝達して吸収することができるため、上記衝突物が受ける衝撃をさらに効果的に緩和することができる。
【0028】
請求項7に係る発明では、上記荷重吸収部を、背面視において内部に複数のリブが設けられるとともに、上記荷重吸収部と対向した箱枠形状に形成したため、簡単かつ軽量な構成で上記荷重吸収部の荷重吸収能力を充分に確保することができ、車体重量を増大させることなく上記荷重吸収部により衝突荷重を効率よく吸収することができ、これによって車体の前面部に当接した衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0029】
請求項8に係る発明では、バンパフェイスに、バンパフェイス主部と、該バンパフェイス主部に形成された開口部に取り付けられる意匠面部とを設け、該意匠面部の背面に上記荷重伝達部を一体に形成したため、バンパフェイスを構成する意匠面部を利用してバンパフェイスに入力された衝突荷重を、上記荷重吸収部に効率よく伝達して効果的に吸収することができる。
【0030】
請求項9に係る発明では、上記意匠面部に形成された荷重伝達部を、バンパフェイス主部の後方側に配設したため、該バンパフェイス主部に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を、上記荷重伝達部から荷重吸収部に効率よく伝達して効果的に支持することができるため、上記障害物が受ける衝撃を充に緩和できるという利点がある。
【0031】
請求項10に係る発明では、荷重吸収部の周囲に位置決め用凹部または位置決め用突部を形成するとともに、該位置決め用凹部または位置決め用突部に対応するまたは位置決め用突部または位置決め用凸部を上記荷重伝達部の周囲に形成したため、該位置決め用凸部を上記位置決め用凹部に嵌入することにより、上記荷重伝達部が形成されたバンパフェイスの移動を規制してその取付状態を安定させることができる。したがって、大きな面積を有する上記バンパフェイスを剛性の低い薄板材で形成し、あるいはバンパフェイスに経年変化が生じた場合等においても、その取付状態が不安定になることを効果的に防止し、バンパフェイスの取付状態を長期間に亘り安定して維持できるという利点がある。
【0032】
請求項11に係る発明では、上記ロアスチフナーのバンパビームに対する中央部の前方突出量を側方部に比べて大きく形成したため、該ロアスチフナーにより車両の前面中央部等に衝突した障害物を効果的に跳ね上げてボンネットフードで受け止めることができる。一方、車両の前面側方部に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝撃荷重を、上記バンパフェイスの左右側方部に設けられた衝撃吸収部材および荷重吸収部により効果的に軽減することができる。
【0033】
請求項12に係る発明では、上記ロアスチフナーを、ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部に支持し、かつロアスチフナーおよび衝撃吸収部材の側端部と、上記荷重吸収部とをラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部よりも車幅方向外側に位置させることにより、車両の前面側方部に当接した障害物を上記ロアスチフナーにより効果的に払い上げることが困難となった場合でも、車両の前面側方部に配設された衝撃吸収部材および荷重吸収部により上記障害物に作用する衝撃荷重を効果的に軽減できるという利点がある。
【0034】
請求項13に係る発明では、上記ロアスチフナーの側端部に切欠きが形成されているため、車両の前面側方部に障害物が当接した場合に、上記ロアスチフナーによる障害物の払い上げ機能を充分に発揮することができないが、車両の前面側方部に配設された上記衝撃吸収部材および荷重吸収部により上記障害物を効果的に保護できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る車両の前部構造の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】車両前面部の具体的構成を示す正面図である。
【図3】ヘッドランプユニットの取付状態を示す正面図である。
【図4】バンパフェイスの具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】ヘッドランプユニットの具体的構成を示す背面図である。
【図6】ヘッドランプユニットの取付状態を示す平面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線断面図である。
【図9】意匠面部の他の例を示す背面図である。
【図10】バンパフェイスの変形例を示す平面断面図である。
【図11】バンパフェイスの他の変形例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1〜図3は、本発明に係る車両の前部構造の実施形態を示している。この前部車体構造は、車両の前面部を構成するバンパフェイス1と、該バンパフェイス1の上部左右に配設されたヘッドランプユニット2と、上記バンパフェイス1の車両後方側に配設されるとともに、その上下方向中央部に沿って車幅方向に延びるように設置されたバンパビーム3と、該バンパビーム3の車両後方側においてエンジンルームの前部を覆うように設置されたラジエータシュラウド4とを有している。
【0037】
上記バンパフェイス1は、図4に示すように、上部左右にヘッドランプユニット2の設置部が設けられたバンパフェイス主部5と、該バンパフェイス主部5の上部中央であって上記ヘッドランプユニット2の設置部間に形成された開口部6をその背面側から覆う意匠面部7とからなっている。該意匠面部7は、多数の空気導入口を有するプラスチック成形品等からなるラジエータグリルであって、その外周部に形成された係合孔9に、上記開口部6の周縁部に突設された係止部8が係合されることにより、上記バンパフェイス主部5に取り付けられるようになっている。
【0038】
上記意匠面部7の背面には、格子状の突状部からなる荷重伝達部10が一体に形成されている。該荷重伝達部10は、上記バンパフェイス1の後方側に配設されて該バンパフェイス1に入力された衝突荷重を後述の荷重吸収部18に伝達するものであり、上記バンパビーム3の前面に取り付けられた後述の衝撃吸収部材26の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に所定距離を置いて離間した位置において、ヘッドランプユニット2に設けられた荷重吸収部18の前面と対向するように設置されている(図3参照)。
【0039】
また、意匠面部7の背面に設けられた荷重伝達部10の下方には、車両後方に向けて突出する位置決め用凸部11が一体に形成されている。該位置決め用凸部11は、バンパフェイス1を車体に組み付ける際に、上記荷重吸収部18の下方に設けられた後述の位置決め用凹部19に嵌入されることにより、バンパフェイス1の上下移動および左右移動を規制してその取付状態を安定させるために設けられたものである。
【0040】
上記ヘッドランプユニット2は、図5および図6に示すように、前面がレンズにより覆われたランプハウジング13を有している。該ランプハウジング13の外周部には、その後方側に配設された車体部材、つまり前部車体の側壁部を構成するエプロンパネル(図示せず)の前端からヘッドランプユニット2の上部後方を通って車体の前方側に延びるように設置された図略のシュラウド支持メンバ等からなる車体部材に取付ボルト等を介して取り付けられる複数個の主取付部14が設けられている。
【0041】
また、上記ランプハウジング13の車幅方向内端部には、正面視で上記バンパフェイス1の縁よりも内側の車後方側に荷重吸収部18が配設されている。該荷重吸収部18は、上記荷重伝達部10の裏面と対向するように設置された前面板15と、その外周辺部から車両後方に向けて突設された四角形状の枠体16とを有するとともに、背面視において内部に複数のリブ17が設けられた箱枠形状体からなっている。
【0042】
上記荷重吸収部18の下方には、意匠面部7に設けられた位置決め用凸部11が嵌入される位置決め用凹部19が形成されている。さらに、上記ランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18および位置決め用凹部19の車幅方向内端部には、上記ラジエータシュラウド4の前面左右に突設された固定部20に取付ボルト21を介して取り付けられる副取付部22が設けられている。なお、上記ラジエータシュラウド4に代え、フロントサイドフレーム23からなる車体フレームと一体に形成されたフロントバルクヘッドに上記ランプハウジング13の副取付部22を取り付けるように構成してもよい。
【0043】
上記前部車体の両側辺部には、図1および図7に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム23からなる車体フレームが車両の前後方向に延びるように設置されている。該フロントサイドフレーム23の前端部には、上記荷重吸収部18よりも高剛性の部材からなるクラッシュカン24が取り付けられ、該クラッシュカン24により上記バンパビーム3の左右両端部が支持されている。該バンパビーム3は、車両後方側に突出するコ字状本体部と、その上下両辺部に連設されたフランジ部とを有する断面ハット型に形成されることにより車体側部材のなかでも特に高い剛性を有し、上記クラッシュカン24よりも剛性が高く設定されている。また、上記バンパフェイス1およびバンパビーム3の左右両側辺部を所定の曲率で湾曲させることにより、車体の前面側部を平面視で流線形状に形成している。
【0044】
上記バンパビーム3の前面には、その車幅方向略全長に亘って発泡樹脂製の弾性体等からなる衝撃吸収部材26が取り付けられている。該衝撃吸収部材26は、バンパフェイス1の背面と対向するとともに、その上下方向中央部に沿って車幅方向に延びるように設置され、バンパフェイス1に衝突物が当接した際に入力される衝突荷重に応じて弾性変形することにより、該衝突荷重を吸収して上記衝突物に作用する衝撃を緩和する機能を有している。
【0045】
上記衝撃吸収部材26の車幅方向外端部は、図7に示すように、バンパフェイス1の背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置されるとともに、上記車幅方向外端部の厚みaがその車幅方向内側部の厚みbよりも薄く形成されることにより、平面視の形状が上記バンパフェイス1に対応して流線形状に形成されている。さらに、図3に示すように、上記衝撃吸収部材26の正面視において、車幅方向外端部の上下寸法αが、その車幅方向中央部の上下寸法βに比べて大きく形成されている。
【0046】
また、上記バンパビーム3の下方には、上記バンパフェイス1の背面下部に沿って車幅方向に延びるようにロアスチフナー27が設置されている。該ロアスチフナー27は、車両の前端部に衝突する衝突物の下端部を払い除ける機能を有するものであり、その前端部が側面視で上記バンパビーム3よりも前方に突設されている。当実施形態では、側面視において、ロアスチフナー27の前端部が衝撃吸収部材26の前面よりも前方側に突設されている。
【0047】
上記ロアスチフナー27は、左右フロントサイドフレーム23の間に配設された上記ラジエータシュラウド4の下方部に取り付けられている。そして、図8に示すように、平面視において上記ロアスチフナー27のバンパビーム3に対する中央部の前方突出量cが、側方部の突出量dに比べて大きく形成され、かつロアスチフナー27および上記衝撃吸収部材26の側端部と、上記荷重吸収部18とが、ラジエータシュラウド4の下部よりも車幅方向外側に配設されている。また、図8に示すように、上記ロアスチフナー27の側端部には、車両前部に配設された補機、具体的にはラジエータシュラウド4の前方側に配設されたインタークーラ29(図1参照)とエンジン本体とを接続する接続管30との干渉を防止するための切欠き31が形成されている。
【0048】
上記構成において、車両の前面中央部に歩行者等が当接した場合には、まず上記ロアスチフナー27で歩行者の足が払われて車両の前部上に倒れ込んだ歩行者等が図外のボンネットフードで受け止められることにより保護される。また、上記車両の前面に他車等の衝突物が軽く当接する軽衝突事故等が発生した場合には、車両の後方側に押動されたバンパフェイス1が上記衝撃吸収部材26に当接して該衝撃吸収部材26が弾性変形することにより、衝突荷重が吸収されて上記衝突物が受ける衝撃が緩和されることになる。
【0049】
さらに、上記バンパフェイス1の上部左右に伝達された衝突荷重に応じ、上記意匠面部7の荷重伝達部10をランプハウジング13の荷重吸収部18に当接させることにより、該荷重吸収部18において上記衝突荷重を支持しつつ吸収することができる。以上のように、当実施形態では、上記衝撃吸収部材26の耐力が、ロアスチフナー27や荷重吸収部18の耐力よりも低く設定されるとともに、該ロアスチフナー27や荷重吸収部18および荷重伝達部10の耐力が、上記クラッシュカン24やバンパビーム3の耐力よりも低く設定されている。
【0050】
例えば、上記衝撃吸収部材26の耐力は2kNで底付きするように設定されるとともに、ロアスチフナー27の耐力は4kNで底付きするように設定され、かつ上記荷重伝達部10および荷重吸収部18の耐力は7kNで底付きするように設定されている。なお、上記各部材の耐力は、上記の例に限定されるものではなく、車体構成や、衝突安全基準などの目標とする衝撃緩和量の変化等に応じて種々の値に変更可能であることは勿論であり、シミュレーションや実験等により適切な値を求めることも可能である。
【0051】
上記衝撃吸収部材26および荷重吸収部18等を弾性変形させるだけでは吸収することができない大きな衝突荷重が入力された場合には、上記バンパビーム3およびクラッシュカン24が塑性変形することにより上記衝突荷重が吸収され、さらに上記フロントサイドフレーム23の前方部分において上記衝突荷重が支持されつつ吸収されることにより、上記衝突荷重がエンジン等の設置部に及ぶことが効果的に防止されるようになっている。
【0052】
そして、車両の前面側方部に歩行者または他車等の衝突物が軽く当接する軽衝突事故が発生して上記バンパフェイス1の側方部が斜め後方側等に押動された場合には、上記衝撃吸収部材26を弾性変形させることにより、衝突荷重を吸収することができるとともに、上記意匠面部7の背面に設けられた荷重伝達部10を上記ヘッドランプユニット12のランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18に当接させることにより、上記荷重伝達部10から荷重吸収部18に衝突荷重を伝達してこれを吸収することができる。
【0053】
上記のように車両の前部にバンパフェイス1が配設されるとともに、その後方側には、該バンパフェイス1の所定高さに入力された衝突荷重を変形により吸収する衝撃吸収部材26が設けられ、該衝撃吸収部材26よりも下方には、車両の前部に衝突した衝突物の下部を車両前方へ払うロアスチフナー27が車両の前方に突設され、上記バンパフェイス1の左右側方部にヘッドランプユニット2が配設された車両の前部構造において、上記ヘッドランプユニット2のランプハウジング13が、その後方側に位置するシュラウド支持メンバやラジエータシュラウド4等からなる車体部材に支持されるとともに、該ランプハウジング13には、バンパフェイス1の縁よりも内側で車両後方側に配設されて衝突荷重を受け止める荷重吸収部18が一体に設けられ、かつ上記バンパフェイス1には、該バンパフェイス1に入力された衝突荷重を上記荷重吸収部18に伝達する荷重伝達部10が設けられた構造としたため、前部車体の側方部に衝突物が当接した場合等においても、上記ランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18を利用して衝突荷重を効率よく吸収することにより、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0054】
すなわち、車両の前面中央部等に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝突荷重をバンパフェイス1の後方側に設けられた衝撃吸収部材26により吸収しつつ、上記ロアスチフナー27で障害物の下方部を払ってボンネットフードで受け止めることにより保護することができる。一方、車両の前面側方部に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝突荷重を、上記衝撃吸収部材26により吸収しつつ、バンパフェイス1に設けられた荷重伝達部10からランプハウジング13と一体に設けられた荷重吸収部28およびその後方側の車体側部材に効率よく分散して支持することができ、車体の前面部に当接した衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0055】
また、上記実施形態では、バンパフェイス1の車両後方側において車幅方向に延びるように設置されたバンパビーム3の前面に衝撃吸収部材26を取り付けるとともに、該バンパビーム3の上方に上記荷重吸収部18を配設したため、車両の前面部左右等に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を上記衝撃吸収部材26および荷重吸収部18の両方に分散させて効果的に吸収することができ、これによって上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することができる。しかも、車体側部材のなかでも比較的、剛性の高いバンパビーム3の前面に上記衝撃吸収部材26を取り付けたため、該バンパビーム3に障害物が直接当接するのを防止して該障害物が大きな衝撃を受けるのを効果的に抑制しつつ、上記衝撃吸収部材26による衝突荷重の吸収効果を充分に発揮させることができる。
【0056】
上記実施形態では、ランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18を、バンパビーム3の前面に取り付けられた衝撃吸収部材26の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に離間した位置に配設したため、上記衝撃吸収部材26の車幅方向外端部近傍に障害物が当接し、該衝撃吸収部材26による衝撃吸収効果を充分に発揮させることができない場合においても、上記ランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18を利用して衝突荷重を効率よく吸収することができ、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0057】
また、上記実施形態では、衝撃吸収部材26の車幅方向外端部を、平面視でバンパフェイス1の背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置するとともに、上記車幅方向外端部の厚みaをその車幅方向の内側部の厚みbよりも薄く形成したため、車体を流線形状に形成することによりデザイン性を向上させることができる。そして、車両の前面部左右等に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を上記衝撃吸収部材26の車幅方向外端部において充分に吸収することができない場合においても、上記衝突荷重を衝撃吸収部材26の上方に位置する荷重吸収部28に伝達して吸収することにより、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することができる。特に、図3に示すように、正面視において、上記衝撃吸収部材26の車幅方向外端部における上下寸法αを、その車幅方向中央部の上下寸法βに比べて大きく形成した場合には、車両の前面部左右等に当接した障害物が受ける衝撃を、より効果的に緩和できるという利点がある。
【0058】
さらに、上記実施形態に示すように、バンパビーム3の後方側に位置するラジエータシュラウド支持メンバ等からなる車体部材に取り付けられる複数の主取付部14をヘッドランプユニット12に設けるとともに、ラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッド等からなる車体部材に取り付けられる副取付部22を上記荷重吸収部18の周囲に形成した場合には、車両の前突時等に上記バンパフェイス1の荷重伝達部10を介して上記ランプハウジング13の荷重吸収部18に伝達された衝突荷重を、上記主取付部14からランプハウジング13を経てラジエータシュラウド支持メンバ等に伝達するルートと上記副取付部22から荷重吸収部18を経てラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッド等に伝達するルートとに分散して支持することができるため、上記衝突物が受ける衝撃を、より効果的に緩和できるという利点がある。
【0059】
また、上記実施形態では、前部車体の左右に配設されたフロントサイドフレーム23からなる車体フレームの間にラジエータシュラウド4が設けられた車両の前部車体構造において、該ラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッドに上記ヘッドランプユニット2の副取付部22を取り付けるように構成したため、車両の前突時等に上記バンパフェイス1の荷重伝達部10を介して上記ランプハウジング13の荷重吸収部28に伝達された衝突荷重を、ラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッドの一方と、ラジエータシュラウド支持メンバ等からなる車体側部材とに伝達して吸収することができるため、上記衝突物が受ける衝撃をさらに効果的に緩和することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、ヘッドランプユニット2に設けられた荷重吸収部18を、背面視において内部に複数のリブ17が設けられるとともに、上記荷重吸収部18と対向した箱枠形状に形成したため、簡単かつ軽量な構成で上記荷重吸収部18の荷重吸収能力を充分に確保することができ、車体重量を増大させることなく上記荷重吸収部18により衝突荷重を効率よく吸収して、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0061】
さらに、上記実施形態に示すように、バンパフェイス1に、バンパフェイス主部5と、該バンパフェイス主部5に形成された開口部6に取り付けられるラジエータグリルを備えた意匠面部7とを設け、該意匠面部7の背面に上記荷重伝達部10を一体に形成した場合には、上記意匠面部7を利用してバンパフェイス1に入力された衝突荷重を上記荷重吸収部18に効率よく伝達して効果的に吸収することができる。
【0062】
特に、上記実施形態に示すように、上記荷重伝達部10を、バンパフェイス主部5の後方側に配設した場合には、該バンパフェイス主部5に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を、上記荷重伝達部10から荷重吸収部28に効率よく伝達して効果的に支持することができるため、上記障害物が受ける衝撃を充に緩和できるという利点がある。なお、図9に示すように、上記意匠面部7に形成されたラジエータグリルの側辺部が下窄まりに傾斜している場合において、ラジエータグリルの側辺部に沿わせるように上記荷重伝達部10を傾斜させた状態で設置した構造としてもよく、このように構成した場合には、上記意匠面部7の製造時にヒケが発生するのを効果的に防止することができる。
【0063】
また、上記実施形態に示すように、荷重吸収部18の周囲に位置決め用凹部19を形成するとともに、該位置決め用凹部19に対応する位置決め用凸部11を上記荷重伝達部10の周囲に形成した場合には、該位置決め用凸部11を上記位置決め用凹部19に嵌入することにより、上記荷重伝達部10が形成されたバンパフェイス1の移動を規制してその取付状態を安定させることができる。したがって、大きな面積を有する上記バンパフェイス1を剛性の低い薄板材で形成し、あるいはバンパフェイス1に経年変化が生じた場合においても、その取付状態が不安定になることを効果的に防止し、バンパフェイス1の取付状態を長期間に亘り安定して維持できるという利点がある。
【0064】
なお、上記荷重吸収部18の周囲に位置決め用凹部19を形成するとともに、該位置決め用凹部19に対応する位置決め用凸部11を上記荷重伝達部10の周囲に形成してなる上記実施形態に代え、荷重吸収部18の周囲に位置決め用凸部を形成するとともに、該位置決め用凸部に対応する位置決め用凹部を上記荷重伝達部10の周囲に形成してもよいことは勿論である。上記実施形態では、ヘッドランプユニット2に設けられた荷重吸収部18が荷重を受けた場合に積極的に変形するものとなっていないが、これに限られず、上記荷重吸収部18を荷重に応じて変形可能な構造としてもよいことは勿論である。
【0065】
また、上記実施形態では、ロアスチフナー27のバンパビーム3に対する中央部の前方突出量cを、その側方部の突出量dに比べて大きく形成したため、該ロアスチフナー27により車両の前面中央部等に衝突した障害物を効果的に跳ね上げてボンネットフードで受け止めることができる。一方、車両の前面側方部に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝撃荷重を、上記バンパフェイス1の左右側方部に設けられた衝撃吸収部材26および荷重吸収部28により効果的に軽減することができる。
【0066】
上記実施形態では、ロアスチフナー27を、ラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッドの下部に支持し、かつロアスチフナー27および衝撃吸収部材26の側端部と、上記荷重吸収部28とをラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッドの下部よりも車幅方向外側に位置させたため、車両の前面側方部に障害物が当接した場合に、該障害物を上記ロアスチフナー27により効果的に払い上げることが困難であるが、車両の前面側方部に配設された衝撃吸収部材26および荷重吸収部28により上記障害物に作用する衝撃荷重を効果的に軽減できるという利点がある。
【0067】
また、上記実施形態では、ロアスチフナー27の側端部に、車両の前部に配設されたインタークーラ29用の接続管30からなる補機との干渉を防止するための切欠き31を形成し、車両の前面側方部に障害物が当接した場合に、上記ロアスチフナー27による障害物の払い上げ機能を発揮することが、より困難な構造となっているが、車両の前面側方部に配設された上記衝撃吸収部材26および荷重吸収部28により上記障害物に大きな衝撃荷重が入力されるのを防止することができるため、該障害物を効果的に保護できるという利点がある。
【0068】
なお、上記実施形態では、図7に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部1aを所定の曲率で湾曲させることにより、平面視で車体の前面側部を流線形状に形成した例について説明したが、図10に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部を直線状に傾斜させることにより平面視で車両後下がり形状に形成してもよく、あるいは図11に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部を、図8に示す例よりも大きな曲率で湾曲させて、より顕著な流線形に形成してもよい。このようにバンパフェイス1の左右両側辺部を直線状に傾斜させることにより平面視で大きく車両後下がり形状に形成した場合、あるいはバンパフェイス1の左右両側辺部を、図8に示す例よりも大きな曲率で湾曲させた場合には、空力特性および小回り性を、より効果的に向上できるという利点がある。
【0069】
図10に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部を直線状に傾斜させ、あるいは図11に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部を大きな曲率で湾曲させた場合においても、前面衝突時のクラッシュ領域を確保するという観点から、クラッシュカン24の全長を短くすることができないため、衝撃吸収部材26の車幅方向外端部がその車幅方向の内側部に比べて、より薄くせざるを得ず、該衝撃吸収部材26の側辺部における衝撃吸収機能を充分に発揮させることができない傾向がある。しかし、このような場合においても、車両の前面部左右等に障害物が当接した際に入力された衝突荷重を、上記衝撃吸収部材26およびその上方に位置する荷重吸収部28に伝達して吸収するように構成することにより、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【符号の説明】
【0070】
1 バンパフェイス
2 ヘッドランプユニット
3 バンパビーム
4 ラジエータシュラウド
5 バンパフェイス主部
6 開口部
7 意匠面部
10 荷重伝達部
11 位置決め用突部
13 ランプハウジング
14 主取付部
17 リブ
18 荷重吸収部
19 位置決め用凹部
22 副取付部
26 衝撃吸収部材
27 ロアスチフナー
30 インタークーラ用接続管(補機)
31 切欠き
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部にバンパフェイスが配設されるとともに、その左右側方部にヘッドランプユニットが配設された車両の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロントバルクヘッドにラジエータグリルが取り付けられ、このラジエータグリルの下方にバンパビームが設けられた車体前部の衝撃吸収構造において、フロントバルクヘッドの上部を構成するバルクヘッドビームと、バンパビームとにステイが掛け渡され、このステイに衝撃吸収部材が取り付けられ、ラジエータグリルの背面に軸部材が取り付けられ、この軸部材と衝撃吸収部材とが球面軸受で連結された構造とすることにより、ラジエータグリルの揺動軸に向かう荷重や、車体前後方向に対して傾斜した方向からの荷重に対して衝突物が受ける衝撃を効率よく緩和できるようにしたものが知られている。
【0003】
また、下記特許文献2には、ヘッドランプハウジングに、アウタレンズの上方側先端に係止してアウタレンズを支持固定する係止溝部と、この係止溝部から下方に延設されてラジエータコアサポートアッパに固定される車体取付け部とを設け、前記ヘッドランプハウジングの係止溝部から車体取付け部にかけて後方側開断面形状の衝撃吸収部を形成することにより、ヘッドランプユニットのアウタレンズに対して斜め前方から入力される際の衝撃力を吸収して障害物の衝撃を少なくすべく構成された自動車のヘッドランプ取付け構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−6238号公報
【特許文献2】特開2004−207061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された車体前部の衝撃吸収構造では、車体の側方部に衝突物が当接した際の入力荷重を、バンパフェイスの後方側であって車幅方向の中央部に設けられた単一の衝撃吸収部材により吸収するように構成されているため、上記入力荷重を充分に吸収することが困難であり、この点で改良の余地が残されていた。特に、車体デザイン上の観点からバンパフェイスの左右両側辺部を所定の曲率で湾曲させることにより、車体の前面側部を平面視で流線形状に形成した場合には、その側方部に衝突物が当接することにより入力された荷重に応じて上記球面軸受を中心にラジエータグリルを揺動変位させることによる入力荷重の吸収作用に充分に発揮させることができず、衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することはできなかった。
【0006】
また、上記のように前部車体の左右両辺部を所定の曲率で湾曲させた場合には、車体の前面に当接する障害物をボンネット上に跳ね上げる上記ロアスチフナーを前部車体の左右両側部において大きく車体の前方側に突出させることができず、しかも上記障害物に大きな衝突荷重が入力するのを防止するための衝撃吸収部材の厚みを前部車体の左右両側部において充分に確保することが困難であるため、上記衝突物が受ける衝撃を特に効果的に緩和できるようにすることが望まれていた。
【0007】
一方、上記特許文献2に開示された発明では、ヘッドランプハウジングに設けられた係止溝部等により衝撃吸収部を形成したため、ヘッドランプハウジングの設置部に障害物が当接した場合に、該障害物を保護することできる。しかし、上記ヘッドランプハウジングの車幅方向内側に位置するバンパフェイスの側方部等に障害物が当接した場合には、該障害物を上記衝撃吸収部によって効果的に保護することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、前部車体の側方部に衝突物が当接した場合等においても、該衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することができる車両の前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車両の前部にバンパフェイスが配設されるとともに、その後方側には、該バンパフェイスの所定高さに入力された衝突荷重を変形により吸収する衝撃吸収部材が設けられ、該衝撃吸収部材よりも下方には、車両の前部に衝突した衝突物の下部を車両前方へ払うロアスチフナーが車両の前方に突設され、上記バンパフェイスの左右側方部にヘッドランプユニットが配設された車両の前部構造であって、上記ヘッドランプユニットのランプハウジングが、その後方側に位置する車体部材に支持されるとともに、該ランプハウジングには、正面視でバンパフェイスの縁よりも内側の車両後方側に配設されて衝突荷重を吸収する荷重吸収部が一体に設けられ、かつ上記バンパフェイスには、該バンパフェイスに入力された衝突荷重を上記荷重吸収部に伝達する荷重伝達部が設けられたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の前部構造において、上記バンパフェイスの車両後方側には、車体側部材のなかでも比較的、剛性の高いバンパビームが車幅方向に延びるように設置され、該バンパビームの前面に衝撃吸収部材が取り付けられるとともに、該バンパビームの上方に上記荷重吸収部が配設されたものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の車両の前部構造において、上記荷重吸収部は、バンパビームに設けられた衝撃吸収部材の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に離間した位置に配設されたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の前部構造において、平面視で上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部が、バンパフェイスの背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置されるとともに、上記車幅方向外端部の厚みがその車幅方向の内側部の厚みよりも薄く形成されたものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、上記請求項1ないし4の何れか1項に記載の車両の前部構造において、上記ヘッドランプユニットには、バンパビームの後方側に位置する車体部材に取り付けられる複数の主取付部が設けられるとともに、上記荷重吸収部の周囲には、車体部材に取り付けられる副取付部が形成されたものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両の前部構造において、前部車体の左右に配設された車体フレームの間にラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドが設けられ、該ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドに上記ヘッドランプユニットの副取付部が取り付けられたものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、上記荷重吸収部は、背面視において内部に複数のリブが設けられるとともに、上記荷重吸収部と対向した箱枠形状に形成されたものである。
【0016】
請求項8に係る発明は、上記請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、上記バンパフェイスは、バンパフェイス主部と、該バンパフェイス主部に形成された開口部に取り付けられる意匠面部とを有し、該意匠面部に上記荷重伝達部が一体に形成されたものである。
【0017】
請求項9に係る発明は、上記請求項8に記載の車両の前部構造において、上記荷重伝達部は、バンパフェイス主部の後方側に配設されたものである。
【0018】
請求項10に係る発明は、上記請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、上記荷重吸収部の周囲には、位置決め用凹部または位置決め用突部が形成され、上記荷重伝達部の周囲には、該位置決め用凹部または位置決め用突部に対応する位置決め用突部または位置決め用凸部が形成されたものである。
【0019】
請求項11に係る発明は、上記請求項4に記載の車両の前部構造において、上記ロアスチフナーのバンパビームに対する中央部の前方突出量が、その側方部に比べて大きく形成されたものである。
【0020】
請求項12に係る発明は、上記請求項6に記載の車両の前部構造において、上記ロアスチフナーは、ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部に支持され、かつロアスチフナーおよび衝撃吸収部材の側端部と荷重吸収部とがラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部よりも車幅方向外側に配設されたものである。
【0021】
請求項13に係る発明は、上記請求項1〜12のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、上記ロアスチフナーの側端部には、車両の前部に配設された補機との干渉を防止するための切欠きが形成されたものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明では、車両の前面中央部等に障害物が当接した場合に、該障害物に作用する衝突荷重をバンパフェイスの後方側に設けられた衝撃吸収部材により吸収しつつ、上記ロアスチフナーで障害物の下方部を払ってボンネットフードで受け止めることにより保護することができる。また、車両の前面側方部に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝突荷重を、上記衝撃吸収部材により吸収しつつ、バンパフェイスに設けられた荷重伝達部からランプハウジングと一体に設けられた荷重吸収部およびその後方側の車体側部材に効率よく分散して支持することができ、車体の前面部に当接した衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0023】
請求項2に係る発明では、バンパフェイスの車両後方側において車幅方向に延びるように設置されるとともに、前面に衝撃吸収部材が取り付けられたバンパビームの上方に上記荷重吸収部を配設したため、車両の前面部左右等に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を上記衝撃吸収部材およびその上方に位置する荷重吸収部の両方に分散させて効果的に吸収することができ、これによって上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。また、車体側部材のなかでも比較的、剛性の高いバンパビームの前面に衝撃吸収部材を取り付けたため、該バンパビームに障害物が直接当接するのを防止して該障害物が大きな衝撃を受けるのを効果的に抑制しつつ、上記衝撃吸収部材による衝突荷重の吸収効果を充分に発揮させることができる。
【0024】
請求項3に係る発明では、ランプハウジングの荷重吸収部を、バンパビームに設けられた衝撃吸収部材の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に離間した位置に配設したため、上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部近傍に障害物が当接し、該衝撃吸収部材による衝撃吸収効果を充分に発揮させることができない場合においても、上記ランプハウジングに設けられた荷重吸収部を利用して衝突荷重を効率よく吸収することができ、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0025】
請求項4に係る発明では、平面視で上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部を、バンパフェイスの背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置するとともに、上記車幅方向外端部の厚みをその車幅方向の内側部の厚みよりも薄く形成したため、車体を流線形状に形成することによりデザイン性を向上させることができる。そして、車両の前面部左右等に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部において充分に吸収することができない場合においても、上記衝突荷重を衝撃吸収部材の上方に位置する荷重吸収部に伝達して吸収することにより、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することができる。
【0026】
請求項5に係る発明では、バンパビームの後方に位置するラジエータシュラウド支持メンバ等からなる車体部材に取り付けられる複数の主取付部をヘッドランプユニットに設けるとともに、ラジエータシュラウド等からなる車体部材に取り付けられる副取付部を上記荷重吸収部の周囲に形成したため、車両の前突時等に上記バンパフェイスの荷重伝達部を介して上記ランプハウジングの荷重吸収部に伝達された衝突荷重を、上記主取付部からランプハウジングを経て上記ラジエータシュラウド支持メンバ等に伝達するルートと上記副取付部から荷重吸収部を経てラジエータシュラウド等に伝達するルートとに分散して支持することができるため、上記衝突物が受ける衝撃を、より効果的に緩和できるという利点がある。
【0027】
請求項6に係る発明では、左右の車体フレーム間に配設されて該車体フレームに取り付けられるラジエータシュラウドまたは上記車体フレームと一体に形成されたフロントバルクヘッド(特許文献1参照)に上記荷重吸収部の副取付部を取り付け、バンパビームの後方に位置する車体側部材により上記ヘッドランプユニット左右両側部を支持するように構成したため、車両の前突時等に上記バンパフェイスの荷重伝達部を介して上記ランプハウジングの荷重吸収部に伝達された衝突荷重を、上記ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの何れか一方とラジエータシュラウド支持メンバ等からなる車体側部材とに伝達して吸収することができるため、上記衝突物が受ける衝撃をさらに効果的に緩和することができる。
【0028】
請求項7に係る発明では、上記荷重吸収部を、背面視において内部に複数のリブが設けられるとともに、上記荷重吸収部と対向した箱枠形状に形成したため、簡単かつ軽量な構成で上記荷重吸収部の荷重吸収能力を充分に確保することができ、車体重量を増大させることなく上記荷重吸収部により衝突荷重を効率よく吸収することができ、これによって車体の前面部に当接した衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0029】
請求項8に係る発明では、バンパフェイスに、バンパフェイス主部と、該バンパフェイス主部に形成された開口部に取り付けられる意匠面部とを設け、該意匠面部の背面に上記荷重伝達部を一体に形成したため、バンパフェイスを構成する意匠面部を利用してバンパフェイスに入力された衝突荷重を、上記荷重吸収部に効率よく伝達して効果的に吸収することができる。
【0030】
請求項9に係る発明では、上記意匠面部に形成された荷重伝達部を、バンパフェイス主部の後方側に配設したため、該バンパフェイス主部に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を、上記荷重伝達部から荷重吸収部に効率よく伝達して効果的に支持することができるため、上記障害物が受ける衝撃を充に緩和できるという利点がある。
【0031】
請求項10に係る発明では、荷重吸収部の周囲に位置決め用凹部または位置決め用突部を形成するとともに、該位置決め用凹部または位置決め用突部に対応するまたは位置決め用突部または位置決め用凸部を上記荷重伝達部の周囲に形成したため、該位置決め用凸部を上記位置決め用凹部に嵌入することにより、上記荷重伝達部が形成されたバンパフェイスの移動を規制してその取付状態を安定させることができる。したがって、大きな面積を有する上記バンパフェイスを剛性の低い薄板材で形成し、あるいはバンパフェイスに経年変化が生じた場合等においても、その取付状態が不安定になることを効果的に防止し、バンパフェイスの取付状態を長期間に亘り安定して維持できるという利点がある。
【0032】
請求項11に係る発明では、上記ロアスチフナーのバンパビームに対する中央部の前方突出量を側方部に比べて大きく形成したため、該ロアスチフナーにより車両の前面中央部等に衝突した障害物を効果的に跳ね上げてボンネットフードで受け止めることができる。一方、車両の前面側方部に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝撃荷重を、上記バンパフェイスの左右側方部に設けられた衝撃吸収部材および荷重吸収部により効果的に軽減することができる。
【0033】
請求項12に係る発明では、上記ロアスチフナーを、ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部に支持し、かつロアスチフナーおよび衝撃吸収部材の側端部と、上記荷重吸収部とをラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部よりも車幅方向外側に位置させることにより、車両の前面側方部に当接した障害物を上記ロアスチフナーにより効果的に払い上げることが困難となった場合でも、車両の前面側方部に配設された衝撃吸収部材および荷重吸収部により上記障害物に作用する衝撃荷重を効果的に軽減できるという利点がある。
【0034】
請求項13に係る発明では、上記ロアスチフナーの側端部に切欠きが形成されているため、車両の前面側方部に障害物が当接した場合に、上記ロアスチフナーによる障害物の払い上げ機能を充分に発揮することができないが、車両の前面側方部に配設された上記衝撃吸収部材および荷重吸収部により上記障害物を効果的に保護できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る車両の前部構造の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】車両前面部の具体的構成を示す正面図である。
【図3】ヘッドランプユニットの取付状態を示す正面図である。
【図4】バンパフェイスの具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】ヘッドランプユニットの具体的構成を示す背面図である。
【図6】ヘッドランプユニットの取付状態を示す平面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線断面図である。
【図9】意匠面部の他の例を示す背面図である。
【図10】バンパフェイスの変形例を示す平面断面図である。
【図11】バンパフェイスの他の変形例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1〜図3は、本発明に係る車両の前部構造の実施形態を示している。この前部車体構造は、車両の前面部を構成するバンパフェイス1と、該バンパフェイス1の上部左右に配設されたヘッドランプユニット2と、上記バンパフェイス1の車両後方側に配設されるとともに、その上下方向中央部に沿って車幅方向に延びるように設置されたバンパビーム3と、該バンパビーム3の車両後方側においてエンジンルームの前部を覆うように設置されたラジエータシュラウド4とを有している。
【0037】
上記バンパフェイス1は、図4に示すように、上部左右にヘッドランプユニット2の設置部が設けられたバンパフェイス主部5と、該バンパフェイス主部5の上部中央であって上記ヘッドランプユニット2の設置部間に形成された開口部6をその背面側から覆う意匠面部7とからなっている。該意匠面部7は、多数の空気導入口を有するプラスチック成形品等からなるラジエータグリルであって、その外周部に形成された係合孔9に、上記開口部6の周縁部に突設された係止部8が係合されることにより、上記バンパフェイス主部5に取り付けられるようになっている。
【0038】
上記意匠面部7の背面には、格子状の突状部からなる荷重伝達部10が一体に形成されている。該荷重伝達部10は、上記バンパフェイス1の後方側に配設されて該バンパフェイス1に入力された衝突荷重を後述の荷重吸収部18に伝達するものであり、上記バンパビーム3の前面に取り付けられた後述の衝撃吸収部材26の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に所定距離を置いて離間した位置において、ヘッドランプユニット2に設けられた荷重吸収部18の前面と対向するように設置されている(図3参照)。
【0039】
また、意匠面部7の背面に設けられた荷重伝達部10の下方には、車両後方に向けて突出する位置決め用凸部11が一体に形成されている。該位置決め用凸部11は、バンパフェイス1を車体に組み付ける際に、上記荷重吸収部18の下方に設けられた後述の位置決め用凹部19に嵌入されることにより、バンパフェイス1の上下移動および左右移動を規制してその取付状態を安定させるために設けられたものである。
【0040】
上記ヘッドランプユニット2は、図5および図6に示すように、前面がレンズにより覆われたランプハウジング13を有している。該ランプハウジング13の外周部には、その後方側に配設された車体部材、つまり前部車体の側壁部を構成するエプロンパネル(図示せず)の前端からヘッドランプユニット2の上部後方を通って車体の前方側に延びるように設置された図略のシュラウド支持メンバ等からなる車体部材に取付ボルト等を介して取り付けられる複数個の主取付部14が設けられている。
【0041】
また、上記ランプハウジング13の車幅方向内端部には、正面視で上記バンパフェイス1の縁よりも内側の車後方側に荷重吸収部18が配設されている。該荷重吸収部18は、上記荷重伝達部10の裏面と対向するように設置された前面板15と、その外周辺部から車両後方に向けて突設された四角形状の枠体16とを有するとともに、背面視において内部に複数のリブ17が設けられた箱枠形状体からなっている。
【0042】
上記荷重吸収部18の下方には、意匠面部7に設けられた位置決め用凸部11が嵌入される位置決め用凹部19が形成されている。さらに、上記ランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18および位置決め用凹部19の車幅方向内端部には、上記ラジエータシュラウド4の前面左右に突設された固定部20に取付ボルト21を介して取り付けられる副取付部22が設けられている。なお、上記ラジエータシュラウド4に代え、フロントサイドフレーム23からなる車体フレームと一体に形成されたフロントバルクヘッドに上記ランプハウジング13の副取付部22を取り付けるように構成してもよい。
【0043】
上記前部車体の両側辺部には、図1および図7に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム23からなる車体フレームが車両の前後方向に延びるように設置されている。該フロントサイドフレーム23の前端部には、上記荷重吸収部18よりも高剛性の部材からなるクラッシュカン24が取り付けられ、該クラッシュカン24により上記バンパビーム3の左右両端部が支持されている。該バンパビーム3は、車両後方側に突出するコ字状本体部と、その上下両辺部に連設されたフランジ部とを有する断面ハット型に形成されることにより車体側部材のなかでも特に高い剛性を有し、上記クラッシュカン24よりも剛性が高く設定されている。また、上記バンパフェイス1およびバンパビーム3の左右両側辺部を所定の曲率で湾曲させることにより、車体の前面側部を平面視で流線形状に形成している。
【0044】
上記バンパビーム3の前面には、その車幅方向略全長に亘って発泡樹脂製の弾性体等からなる衝撃吸収部材26が取り付けられている。該衝撃吸収部材26は、バンパフェイス1の背面と対向するとともに、その上下方向中央部に沿って車幅方向に延びるように設置され、バンパフェイス1に衝突物が当接した際に入力される衝突荷重に応じて弾性変形することにより、該衝突荷重を吸収して上記衝突物に作用する衝撃を緩和する機能を有している。
【0045】
上記衝撃吸収部材26の車幅方向外端部は、図7に示すように、バンパフェイス1の背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置されるとともに、上記車幅方向外端部の厚みaがその車幅方向内側部の厚みbよりも薄く形成されることにより、平面視の形状が上記バンパフェイス1に対応して流線形状に形成されている。さらに、図3に示すように、上記衝撃吸収部材26の正面視において、車幅方向外端部の上下寸法αが、その車幅方向中央部の上下寸法βに比べて大きく形成されている。
【0046】
また、上記バンパビーム3の下方には、上記バンパフェイス1の背面下部に沿って車幅方向に延びるようにロアスチフナー27が設置されている。該ロアスチフナー27は、車両の前端部に衝突する衝突物の下端部を払い除ける機能を有するものであり、その前端部が側面視で上記バンパビーム3よりも前方に突設されている。当実施形態では、側面視において、ロアスチフナー27の前端部が衝撃吸収部材26の前面よりも前方側に突設されている。
【0047】
上記ロアスチフナー27は、左右フロントサイドフレーム23の間に配設された上記ラジエータシュラウド4の下方部に取り付けられている。そして、図8に示すように、平面視において上記ロアスチフナー27のバンパビーム3に対する中央部の前方突出量cが、側方部の突出量dに比べて大きく形成され、かつロアスチフナー27および上記衝撃吸収部材26の側端部と、上記荷重吸収部18とが、ラジエータシュラウド4の下部よりも車幅方向外側に配設されている。また、図8に示すように、上記ロアスチフナー27の側端部には、車両前部に配設された補機、具体的にはラジエータシュラウド4の前方側に配設されたインタークーラ29(図1参照)とエンジン本体とを接続する接続管30との干渉を防止するための切欠き31が形成されている。
【0048】
上記構成において、車両の前面中央部に歩行者等が当接した場合には、まず上記ロアスチフナー27で歩行者の足が払われて車両の前部上に倒れ込んだ歩行者等が図外のボンネットフードで受け止められることにより保護される。また、上記車両の前面に他車等の衝突物が軽く当接する軽衝突事故等が発生した場合には、車両の後方側に押動されたバンパフェイス1が上記衝撃吸収部材26に当接して該衝撃吸収部材26が弾性変形することにより、衝突荷重が吸収されて上記衝突物が受ける衝撃が緩和されることになる。
【0049】
さらに、上記バンパフェイス1の上部左右に伝達された衝突荷重に応じ、上記意匠面部7の荷重伝達部10をランプハウジング13の荷重吸収部18に当接させることにより、該荷重吸収部18において上記衝突荷重を支持しつつ吸収することができる。以上のように、当実施形態では、上記衝撃吸収部材26の耐力が、ロアスチフナー27や荷重吸収部18の耐力よりも低く設定されるとともに、該ロアスチフナー27や荷重吸収部18および荷重伝達部10の耐力が、上記クラッシュカン24やバンパビーム3の耐力よりも低く設定されている。
【0050】
例えば、上記衝撃吸収部材26の耐力は2kNで底付きするように設定されるとともに、ロアスチフナー27の耐力は4kNで底付きするように設定され、かつ上記荷重伝達部10および荷重吸収部18の耐力は7kNで底付きするように設定されている。なお、上記各部材の耐力は、上記の例に限定されるものではなく、車体構成や、衝突安全基準などの目標とする衝撃緩和量の変化等に応じて種々の値に変更可能であることは勿論であり、シミュレーションや実験等により適切な値を求めることも可能である。
【0051】
上記衝撃吸収部材26および荷重吸収部18等を弾性変形させるだけでは吸収することができない大きな衝突荷重が入力された場合には、上記バンパビーム3およびクラッシュカン24が塑性変形することにより上記衝突荷重が吸収され、さらに上記フロントサイドフレーム23の前方部分において上記衝突荷重が支持されつつ吸収されることにより、上記衝突荷重がエンジン等の設置部に及ぶことが効果的に防止されるようになっている。
【0052】
そして、車両の前面側方部に歩行者または他車等の衝突物が軽く当接する軽衝突事故が発生して上記バンパフェイス1の側方部が斜め後方側等に押動された場合には、上記衝撃吸収部材26を弾性変形させることにより、衝突荷重を吸収することができるとともに、上記意匠面部7の背面に設けられた荷重伝達部10を上記ヘッドランプユニット12のランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18に当接させることにより、上記荷重伝達部10から荷重吸収部18に衝突荷重を伝達してこれを吸収することができる。
【0053】
上記のように車両の前部にバンパフェイス1が配設されるとともに、その後方側には、該バンパフェイス1の所定高さに入力された衝突荷重を変形により吸収する衝撃吸収部材26が設けられ、該衝撃吸収部材26よりも下方には、車両の前部に衝突した衝突物の下部を車両前方へ払うロアスチフナー27が車両の前方に突設され、上記バンパフェイス1の左右側方部にヘッドランプユニット2が配設された車両の前部構造において、上記ヘッドランプユニット2のランプハウジング13が、その後方側に位置するシュラウド支持メンバやラジエータシュラウド4等からなる車体部材に支持されるとともに、該ランプハウジング13には、バンパフェイス1の縁よりも内側で車両後方側に配設されて衝突荷重を受け止める荷重吸収部18が一体に設けられ、かつ上記バンパフェイス1には、該バンパフェイス1に入力された衝突荷重を上記荷重吸収部18に伝達する荷重伝達部10が設けられた構造としたため、前部車体の側方部に衝突物が当接した場合等においても、上記ランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18を利用して衝突荷重を効率よく吸収することにより、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0054】
すなわち、車両の前面中央部等に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝突荷重をバンパフェイス1の後方側に設けられた衝撃吸収部材26により吸収しつつ、上記ロアスチフナー27で障害物の下方部を払ってボンネットフードで受け止めることにより保護することができる。一方、車両の前面側方部に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝突荷重を、上記衝撃吸収部材26により吸収しつつ、バンパフェイス1に設けられた荷重伝達部10からランプハウジング13と一体に設けられた荷重吸収部28およびその後方側の車体側部材に効率よく分散して支持することができ、車体の前面部に当接した衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0055】
また、上記実施形態では、バンパフェイス1の車両後方側において車幅方向に延びるように設置されたバンパビーム3の前面に衝撃吸収部材26を取り付けるとともに、該バンパビーム3の上方に上記荷重吸収部18を配設したため、車両の前面部左右等に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を上記衝撃吸収部材26および荷重吸収部18の両方に分散させて効果的に吸収することができ、これによって上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することができる。しかも、車体側部材のなかでも比較的、剛性の高いバンパビーム3の前面に上記衝撃吸収部材26を取り付けたため、該バンパビーム3に障害物が直接当接するのを防止して該障害物が大きな衝撃を受けるのを効果的に抑制しつつ、上記衝撃吸収部材26による衝突荷重の吸収効果を充分に発揮させることができる。
【0056】
上記実施形態では、ランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18を、バンパビーム3の前面に取り付けられた衝撃吸収部材26の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に離間した位置に配設したため、上記衝撃吸収部材26の車幅方向外端部近傍に障害物が当接し、該衝撃吸収部材26による衝撃吸収効果を充分に発揮させることができない場合においても、上記ランプハウジング13に設けられた荷重吸収部18を利用して衝突荷重を効率よく吸収することができ、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0057】
また、上記実施形態では、衝撃吸収部材26の車幅方向外端部を、平面視でバンパフェイス1の背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置するとともに、上記車幅方向外端部の厚みaをその車幅方向の内側部の厚みbよりも薄く形成したため、車体を流線形状に形成することによりデザイン性を向上させることができる。そして、車両の前面部左右等に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を上記衝撃吸収部材26の車幅方向外端部において充分に吸収することができない場合においても、上記衝突荷重を衝撃吸収部材26の上方に位置する荷重吸収部28に伝達して吸収することにより、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和することができる。特に、図3に示すように、正面視において、上記衝撃吸収部材26の車幅方向外端部における上下寸法αを、その車幅方向中央部の上下寸法βに比べて大きく形成した場合には、車両の前面部左右等に当接した障害物が受ける衝撃を、より効果的に緩和できるという利点がある。
【0058】
さらに、上記実施形態に示すように、バンパビーム3の後方側に位置するラジエータシュラウド支持メンバ等からなる車体部材に取り付けられる複数の主取付部14をヘッドランプユニット12に設けるとともに、ラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッド等からなる車体部材に取り付けられる副取付部22を上記荷重吸収部18の周囲に形成した場合には、車両の前突時等に上記バンパフェイス1の荷重伝達部10を介して上記ランプハウジング13の荷重吸収部18に伝達された衝突荷重を、上記主取付部14からランプハウジング13を経てラジエータシュラウド支持メンバ等に伝達するルートと上記副取付部22から荷重吸収部18を経てラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッド等に伝達するルートとに分散して支持することができるため、上記衝突物が受ける衝撃を、より効果的に緩和できるという利点がある。
【0059】
また、上記実施形態では、前部車体の左右に配設されたフロントサイドフレーム23からなる車体フレームの間にラジエータシュラウド4が設けられた車両の前部車体構造において、該ラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッドに上記ヘッドランプユニット2の副取付部22を取り付けるように構成したため、車両の前突時等に上記バンパフェイス1の荷重伝達部10を介して上記ランプハウジング13の荷重吸収部28に伝達された衝突荷重を、ラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッドの一方と、ラジエータシュラウド支持メンバ等からなる車体側部材とに伝達して吸収することができるため、上記衝突物が受ける衝撃をさらに効果的に緩和することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、ヘッドランプユニット2に設けられた荷重吸収部18を、背面視において内部に複数のリブ17が設けられるとともに、上記荷重吸収部18と対向した箱枠形状に形成したため、簡単かつ軽量な構成で上記荷重吸収部18の荷重吸収能力を充分に確保することができ、車体重量を増大させることなく上記荷重吸収部18により衝突荷重を効率よく吸収して、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0061】
さらに、上記実施形態に示すように、バンパフェイス1に、バンパフェイス主部5と、該バンパフェイス主部5に形成された開口部6に取り付けられるラジエータグリルを備えた意匠面部7とを設け、該意匠面部7の背面に上記荷重伝達部10を一体に形成した場合には、上記意匠面部7を利用してバンパフェイス1に入力された衝突荷重を上記荷重吸収部18に効率よく伝達して効果的に吸収することができる。
【0062】
特に、上記実施形態に示すように、上記荷重伝達部10を、バンパフェイス主部5の後方側に配設した場合には、該バンパフェイス主部5に障害物が当接することにより入力された衝突荷重を、上記荷重伝達部10から荷重吸収部28に効率よく伝達して効果的に支持することができるため、上記障害物が受ける衝撃を充に緩和できるという利点がある。なお、図9に示すように、上記意匠面部7に形成されたラジエータグリルの側辺部が下窄まりに傾斜している場合において、ラジエータグリルの側辺部に沿わせるように上記荷重伝達部10を傾斜させた状態で設置した構造としてもよく、このように構成した場合には、上記意匠面部7の製造時にヒケが発生するのを効果的に防止することができる。
【0063】
また、上記実施形態に示すように、荷重吸収部18の周囲に位置決め用凹部19を形成するとともに、該位置決め用凹部19に対応する位置決め用凸部11を上記荷重伝達部10の周囲に形成した場合には、該位置決め用凸部11を上記位置決め用凹部19に嵌入することにより、上記荷重伝達部10が形成されたバンパフェイス1の移動を規制してその取付状態を安定させることができる。したがって、大きな面積を有する上記バンパフェイス1を剛性の低い薄板材で形成し、あるいはバンパフェイス1に経年変化が生じた場合においても、その取付状態が不安定になることを効果的に防止し、バンパフェイス1の取付状態を長期間に亘り安定して維持できるという利点がある。
【0064】
なお、上記荷重吸収部18の周囲に位置決め用凹部19を形成するとともに、該位置決め用凹部19に対応する位置決め用凸部11を上記荷重伝達部10の周囲に形成してなる上記実施形態に代え、荷重吸収部18の周囲に位置決め用凸部を形成するとともに、該位置決め用凸部に対応する位置決め用凹部を上記荷重伝達部10の周囲に形成してもよいことは勿論である。上記実施形態では、ヘッドランプユニット2に設けられた荷重吸収部18が荷重を受けた場合に積極的に変形するものとなっていないが、これに限られず、上記荷重吸収部18を荷重に応じて変形可能な構造としてもよいことは勿論である。
【0065】
また、上記実施形態では、ロアスチフナー27のバンパビーム3に対する中央部の前方突出量cを、その側方部の突出量dに比べて大きく形成したため、該ロアスチフナー27により車両の前面中央部等に衝突した障害物を効果的に跳ね上げてボンネットフードで受け止めることができる。一方、車両の前面側方部に障害物が当接した場合には、該障害物に作用する衝撃荷重を、上記バンパフェイス1の左右側方部に設けられた衝撃吸収部材26および荷重吸収部28により効果的に軽減することができる。
【0066】
上記実施形態では、ロアスチフナー27を、ラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッドの下部に支持し、かつロアスチフナー27および衝撃吸収部材26の側端部と、上記荷重吸収部28とをラジエータシュラウド4またはフロントバルクヘッドの下部よりも車幅方向外側に位置させたため、車両の前面側方部に障害物が当接した場合に、該障害物を上記ロアスチフナー27により効果的に払い上げることが困難であるが、車両の前面側方部に配設された衝撃吸収部材26および荷重吸収部28により上記障害物に作用する衝撃荷重を効果的に軽減できるという利点がある。
【0067】
また、上記実施形態では、ロアスチフナー27の側端部に、車両の前部に配設されたインタークーラ29用の接続管30からなる補機との干渉を防止するための切欠き31を形成し、車両の前面側方部に障害物が当接した場合に、上記ロアスチフナー27による障害物の払い上げ機能を発揮することが、より困難な構造となっているが、車両の前面側方部に配設された上記衝撃吸収部材26および荷重吸収部28により上記障害物に大きな衝撃荷重が入力されるのを防止することができるため、該障害物を効果的に保護できるという利点がある。
【0068】
なお、上記実施形態では、図7に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部1aを所定の曲率で湾曲させることにより、平面視で車体の前面側部を流線形状に形成した例について説明したが、図10に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部を直線状に傾斜させることにより平面視で車両後下がり形状に形成してもよく、あるいは図11に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部を、図8に示す例よりも大きな曲率で湾曲させて、より顕著な流線形に形成してもよい。このようにバンパフェイス1の左右両側辺部を直線状に傾斜させることにより平面視で大きく車両後下がり形状に形成した場合、あるいはバンパフェイス1の左右両側辺部を、図8に示す例よりも大きな曲率で湾曲させた場合には、空力特性および小回り性を、より効果的に向上できるという利点がある。
【0069】
図10に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部を直線状に傾斜させ、あるいは図11に示すように、バンパフェイス1の左右両側辺部を大きな曲率で湾曲させた場合においても、前面衝突時のクラッシュ領域を確保するという観点から、クラッシュカン24の全長を短くすることができないため、衝撃吸収部材26の車幅方向外端部がその車幅方向の内側部に比べて、より薄くせざるを得ず、該衝撃吸収部材26の側辺部における衝撃吸収機能を充分に発揮させることができない傾向がある。しかし、このような場合においても、車両の前面部左右等に障害物が当接した際に入力された衝突荷重を、上記衝撃吸収部材26およびその上方に位置する荷重吸収部28に伝達して吸収するように構成することにより、上記衝突物が受ける衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【符号の説明】
【0070】
1 バンパフェイス
2 ヘッドランプユニット
3 バンパビーム
4 ラジエータシュラウド
5 バンパフェイス主部
6 開口部
7 意匠面部
10 荷重伝達部
11 位置決め用突部
13 ランプハウジング
14 主取付部
17 リブ
18 荷重吸収部
19 位置決め用凹部
22 副取付部
26 衝撃吸収部材
27 ロアスチフナー
30 インタークーラ用接続管(補機)
31 切欠き
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部にバンパフェイスが配設されるとともに、その後方側には、該バンパフェイスの所定高さに入力された衝突荷重を変形により吸収する衝撃吸収部材が設けられ、該衝撃吸収部材よりも下方には、車両の前部に衝突した衝突物の下部を車両前方へ払うロアスチフナーが車両の前方に突設され、上記バンパフェイスの左右側方部にヘッドランプユニットが配設された車両の前部構造であって、上記ヘッドランプユニットのランプハウジングが、その後方側に位置する車体部材に支持されるとともに、該ランプハウジングには、正面視でバンパフェイスの縁よりも内側の車両後方側に配設されて衝突荷重を吸収する荷重吸収部が一体に設けられ、かつ上記バンパフェイスには、該バンパフェイスに入力された衝突荷重を上記荷重吸収部に伝達する荷重伝達部が設けられたことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
上記バンパフェイスの車両後方側には、車体側部材のなかでも比較的、剛性の高いバンパビームが車幅方向に延びるように設置され、該バンパビームの前面に衝撃吸収部材が取り付けられるとともに、該バンパビームの上方に上記荷重吸収部が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
上記荷重吸収部は、バンパビームに設けられた衝撃吸収部材の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に離間した位置に配設されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
平面視で上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部が、バンパフェイスの背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置されるとともに、上記車幅方向外端部の厚みがその車幅方向の内側部の厚みよりも薄く形成されたことを特徴とする請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
上記ヘッドランプユニットには、バンパビームの後方側に位置する車体部材に取り付けられる複数の主取付部が設けられるとともに、上記荷重吸収部の周囲には、車体部材に取り付けられる副取付部が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項6】
前部車体の左右に配設された車体フレームの間にラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドが設けられ、該ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドに上記ヘッドランプユニットの副取付部が取り付けられたことを特徴とする請求項5に記載の車両の前部構造。
【請求項7】
上記荷重吸収部は、背面視において内部に複数のリブが設けられるとともに、上記荷重吸収部と対向した箱枠形状に形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項8】
上記バンパフェイスは、バンパフェイス主部と、該バンパフェイス主部に形成された開口部に取り付けられる意匠面部とを有し、該意匠面部に上記荷重伝達部が一体に形成されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項9】
上記荷重伝達部は、バンパフェイス主部の後方側に配設されたことを特徴とする請求項8に記載の車両の前部構造。
【請求項10】
上記荷重吸収部の周囲には、位置決め用凹部または位置決め用突部が形成され、上記荷重伝達部の周囲には、該位置決め用凹部または位置決め用突部に対応する位置決め用突部または位置決め用凸部が形成されたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項11】
上記ロアスチフナーのバンパビームに対する中央部の前方突出量が、その側方部に比べて大きく形成されたことを特徴とする請求項4に記載の車両の前部構造。
【請求項12】
上記ロアスチフナーは、ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部に支持され、かつロアスチフナーおよび衝撃吸収部材の側端部と、上記荷重吸収部とがバンパーシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部よりも車幅方向外側に配設されたことを特徴とする請求項6に記載の車両の前部構造。
【請求項13】
上記ロアスチフナーの側端部には、車両の前部に配設された補機との干渉を防止するための切欠きが形成されたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項1】
車両の前部にバンパフェイスが配設されるとともに、その後方側には、該バンパフェイスの所定高さに入力された衝突荷重を変形により吸収する衝撃吸収部材が設けられ、該衝撃吸収部材よりも下方には、車両の前部に衝突した衝突物の下部を車両前方へ払うロアスチフナーが車両の前方に突設され、上記バンパフェイスの左右側方部にヘッドランプユニットが配設された車両の前部構造であって、上記ヘッドランプユニットのランプハウジングが、その後方側に位置する車体部材に支持されるとともに、該ランプハウジングには、正面視でバンパフェイスの縁よりも内側の車両後方側に配設されて衝突荷重を吸収する荷重吸収部が一体に設けられ、かつ上記バンパフェイスには、該バンパフェイスに入力された衝突荷重を上記荷重吸収部に伝達する荷重伝達部が設けられたことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
上記バンパフェイスの車両後方側には、車体側部材のなかでも比較的、剛性の高いバンパビームが車幅方向に延びるように設置され、該バンパビームの前面に衝撃吸収部材が取り付けられるとともに、該バンパビームの上方に上記荷重吸収部が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
上記荷重吸収部は、バンパビームに設けられた衝撃吸収部材の車幅方向外端部寄りの位置で、その上方に離間した位置に配設されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
平面視で上記衝撃吸収部材の車幅方向外端部が、バンパフェイスの背面に沿って車幅方向の外側後方に延びるように設置されるとともに、上記車幅方向外端部の厚みがその車幅方向の内側部の厚みよりも薄く形成されたことを特徴とする請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
上記ヘッドランプユニットには、バンパビームの後方側に位置する車体部材に取り付けられる複数の主取付部が設けられるとともに、上記荷重吸収部の周囲には、車体部材に取り付けられる副取付部が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項6】
前部車体の左右に配設された車体フレームの間にラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドが設けられ、該ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドに上記ヘッドランプユニットの副取付部が取り付けられたことを特徴とする請求項5に記載の車両の前部構造。
【請求項7】
上記荷重吸収部は、背面視において内部に複数のリブが設けられるとともに、上記荷重吸収部と対向した箱枠形状に形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項8】
上記バンパフェイスは、バンパフェイス主部と、該バンパフェイス主部に形成された開口部に取り付けられる意匠面部とを有し、該意匠面部に上記荷重伝達部が一体に形成されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項9】
上記荷重伝達部は、バンパフェイス主部の後方側に配設されたことを特徴とする請求項8に記載の車両の前部構造。
【請求項10】
上記荷重吸収部の周囲には、位置決め用凹部または位置決め用突部が形成され、上記荷重伝達部の周囲には、該位置決め用凹部または位置決め用突部に対応する位置決め用突部または位置決め用凸部が形成されたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項11】
上記ロアスチフナーのバンパビームに対する中央部の前方突出量が、その側方部に比べて大きく形成されたことを特徴とする請求項4に記載の車両の前部構造。
【請求項12】
上記ロアスチフナーは、ラジエータシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部に支持され、かつロアスチフナーおよび衝撃吸収部材の側端部と、上記荷重吸収部とがバンパーシュラウドまたはフロントバルクヘッドの下部よりも車幅方向外側に配設されたことを特徴とする請求項6に記載の車両の前部構造。
【請求項13】
上記ロアスチフナーの側端部には、車両の前部に配設された補機との干渉を防止するための切欠きが形成されたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−71818(P2012−71818A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108287(P2011−108287)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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