説明

車両の後処理装置

【課題】再生中に、車体後方から車体に近づく物体が存在するか否かを確実に把握することができる車両の後処理装置の提供。
【解決手段】エンジン2の排気通路3に設けられ、PMを捕集するフィルタ4と、このフィルタ4に堆積したPM堆積量を検知するPM捕集堆積量検知手段6と、フィルタ4に堆積したPMを燃焼除去させて、フィルタ4の再生を行なう燃料噴射インジェクタ7と、車体の後方を監視する後方監視カメラ8と、この後方監視カメラ8からの監視情報を表示する表示装置9と、燃料噴射インジェクタ7を作動させて再生を実施させる制御処理を行なう再生処理部を有するコントローラ10とを備え、このコントローラ10が、燃料噴射インジェクタ7による再生処理の間、後方監視カメラ8からの監視情報を、表示装置9の表示画面9aに表示させ続ける制御処理を行なう表示継続処理部を含む構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械等の車両に備えられるエンジンの排気通路に、排気微粒子を捕集するフィルタを設けるとともに、このフィルタを再生する再生手段を備えた車両の後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、エンジンの排気通路に設けられ、排気微粒子を捕集するパーティキュレートフィルタ、すなわちPMを捕集するフィルタを備えている。また、パーティキュレートフィルタの上下流に配置され、差圧を検出する排気圧力センサ、すなわちフィルタに堆積したPM堆積量を検知するPM捕集堆積量検知手段と、エンジンへの燃料を供給するとともに、フィルタの再生のために活用される燃料噴射弁すなわち再生を行なう再生手段、及びこの再生手段を操作する手動再生スイッチとを備えている。また、車両の後方近傍を撮影可能な撮影カメラ、すなわち車体の後方を監視する車体後方監視手段と、撮影カメラの画像を表示するナビゲーションシステムの表示画面、すなわち車体後方監視手段からの監視情報を表示する表示装置と、燃料噴射弁による再生を制御するコントロールユニット、すなわち再生手段による再生を実施させる制御処理を行なう再生処理部を有する制御装置を備えている。
【0003】
この従来技術では、手動再生スイッチが操作されたときに、車体後方に存在する別車両等の物体との距離が近い場合のみ、表示画面上に車体後方の画像が表示されるようになっている。すなわち、上述した別車両等の物体との距離が所定値以上のときには、表示画面上には車体後方画像は表示されることがなく、このように車体後方画像が表示されない状態において再生が実施されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−127206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、フィルタの再生中には表示画面上に車体後方画像が表示されないので、このような再生中に、車体後方の排気系の周囲に人、燃えやすいもの等の何らかの物体が近づいた場合には、そのような物体に対する火災や災害等の危険を回避させるための迅速な対応を取ることができない懸念がある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、再生中に、車体後方から車体に近づく物体が存在するか否かを確実に把握することができる車両の後処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る車両の後処理装置は、エンジンを有する車両に備えられ、上記エンジンの排気通路に設けられ、PMを捕集するフィルタと、このフィルタに堆積したPM堆積量を検知するPM捕集堆積量検知手段と、上記フィルタに流入する排気の温度を上昇させて上記フィルタに堆積したPMを燃焼除去させ、上記フィルタの再生を行なう再生手段と、車体の後方を監視する車体後方監視手段と、この車体後方監視手段からの監視情報を表示する表示装置と、
上記再生手段による再生を実施させる制御処理を行なう再生処理部を有する制御装置とを備えた車両の後処理装置において、上記再生手段による再生処理の間、上記車体後方監視手段からの上記監視情報を、上記表示装置に表示させ続ける制御処理を行なう表示継続処理部を備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明は、PM捕集堆積量検知手段で検知されるPM堆積量が、再生が必要とされる値となったときに、制御装置の再生処理部の制御処理によって、再生手段が作動し、フィルタに堆積したPMが燃焼除去されて、フィルタの再生が行なわれる。このような再生手段による再生処理の間、表示継続処理部の制御処理により、車体後方監視手段からの監視情報が表示装置に表示され続ける。この表示装置の表示によって、再生中に、車体後方から車体に近づく物体が存在するか否かを確実に把握することができる。仮に、このような再生中に、車体後方から車体に近づく物体が存在する場合には、その物体に対する危険を回避するための迅速な対応を取ることができる。
【0008】
また、本発明に係る車両の後処理装置は、上記発明において、上記制御装置は、上記表示継続処理部を含むことを特徴としている。このように構成した本発明は、制御装置の数を少なくすることができる。
【0009】
また、本発明に係る車両の後処理装置は、上記発明において、上記再生手段による再生を促す旨を報知する再生要・報知手段と、上記再生手段による再生の開始を指示する手動再生開始手段とを備えるとともに、上記制御装置は、上記PM堆積量検知手段で検知されるPM堆積量が、再生が必要とされる値となったときに、上記車体後方監視手段からの上記監視情報の上記表示装置への表示を開始させる制御処理を行なう表示開始処理部と、この表示開始処理部の制御処理がなされたとき、上記再生要・報知手段を作動させる制御処理を行なう再生要・報知処理部と、上記手動再生開始手段が操作されたとき、上記再生要・報知手段による報知を停止させる制御処理を行なう再生要・報知停止処理部とを有することを特徴としている。このように構成した本発明は、再生要・報知手段による報知に応じてオペレータが手動再生開始手段を操作することによって、オペレータの手動操作に応じたフィルタの再生を実現できる。
【0010】
また、本発明に係る車両の後処理装置は、上記発明において、上記制御装置は、上記PM堆積量検知手段で検知されるPM堆積量が、再生が必要とされる値となったときに、上記車体後方監視手段の上記監視情報の上記表示装置への表示を開始させる制御処理を行なう表示開始処理部と、この表示開始処理部の制御処理に応じて上記再生処理部の制御処理を自動的に開始させる再生開始処理部とを有することを特徴としている。このように構成した本発明は、PM堆積量が再生が必要とされる値となったときに、制御装置の再生開始処理部の制御処理によって、オペレータの手動操作によることなく自動的にフィルタの再生を実現できる。
【0011】
また、本発明に係る車両の後処理装置は、上記発明において、上記再生手段による再生処理の実施中である旨を報知する再生中・報知手段を備えるとともに、上記制御装置は、上記再生処理部の制御処理に応じて、上記再生手段による再生処理の間、上記再生中・報知手段を作動させる制御処理を行なう再生中・報知処理部を有することを特徴としている。このように構成した本発明は、再生中であって、注意すべき状態にあることを、再生中・報知手段の報知によってオペレータ、あるいは周囲にいる者に確実に気付かせることができる。
【0012】
また、本発明に係る車両の後処理装置は、上記発明において、上記再生手段による再生処理の停止を指示する再生停止手段を備えるとともに、上記制御装置は、上記再生停止手段が操作されたとき、上記再生手段によって実施されている再生処理を強制的に停止させる制御処理を行なう再生停止処理部を有することを特徴としている。このように構成した本発明は、再生中に、例えば車体後方に危険物が近づいたときなどに、再生停止手段を操作することによって再生手段による再生処理を強制的に停止させ、これにより迅速に危険を回避させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、再生手段による再生処理の間、車体後方監視手段からの監視情報を、表示装置に表示させ続ける制御処理を行なう表示継続処理部を備えたことから、再生手段による再生動作の間、この表示継続処理部の制御処理によって表示装置に車体後方監視手段からの監視情報が表示され続け、再生中に、車体後方から車体に近づく物体が存在するか否かを確実に把握することができ、これにより、車体に近づく物体に対する危険を回避させるための迅速な対応を取ることが可能となり、従来に比べて安全性の極めて高いフィルタの再生を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下,本発明に係る車両の後処理装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る車両の後処理装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【0016】
この図1に示す第1実施形態に係る後処理装置が備えられる車両は、例えば油圧ショベル1であり、この油圧ショベル1は、走行体1aと、この走行体1a上に配置される旋回体1bと、この旋回体1bに上下方向の回動可能に取り付けられ、掘削作業等の作業を行なうフロント作業機1cとを備えている。旋回体1b上には運転室1dが備えられている。この油圧ショベル1には、走行体1aの走行、旋回体1bの旋回、フロント作業機1cによる掘削作業等を実施させる圧油を供給する図示しない油圧ポンプと、この油圧ポンプを駆動するエンジン2とが備えられている。
【0017】
この第1実施形態に係る後処理装置は、エンジン2の排気通路3に設けられ、排気微粒子、すなわちPM(Particulate Matter)を捕集するフィルタ4と、このフィルタ4に堆積したPM堆積量を検知するPM堆積量検知手段6とを備えている。エンジン2はキースイッチ5によって起動するようになっている。排気通路3は、図示しないマフラに接続されている。
【0018】
また、この第1実施形態は、フィルタ4に流入する排気の温度を上昇させてフィルタ4に堆積したPMを燃焼、除去させ、フィルタ4の再生を行なう再生手段、例えばエンジン2に付設される燃料噴射インジェクタ7を備えている。
【0019】
また、油圧ショベル1の車体後方を監視する車体後方監視手段、例えば旋回体1bの後方部分に配置されるカウンタウエイト上の、上述した図示しないマフラの排気口の近傍位置に設けられる後方監視カメラ8を備えている。
【0020】
また、運転室1d内に配置され、後方監視カメラ8からの監視情報を表示する表示装置9を備えている。この表示装置9は、表示画面9aを備えている他、燃料噴射インジェクタ7によるフィルタ4の再生を促す報知、例えば警告表示を行なう再生要・報知手段9bと、燃料噴射インジェクタ7による再生の開始を指示する例えばスイッチから成る手動再生開始手段9cと、燃料噴射インジエクタ7による再生処理の実施中である旨の報知、例えば警告表示を行なう再生中・報知手段9dとを備えている。なお、上述したキースイッチ5は、例えば燃料噴射インジェクタ7によるフィルタ4の再生処理の停止を指示する再生停止手段を兼ねている。
【0021】
上述したキースイッチ5、PM堆積量検知手段6、燃料噴射インジェクタ7、後方監視カメラ8、及び表示装置9は、燃料噴射インジエクタ7による再生を実現させる制御処理を行なう再生処理部を有する制御装置、すなわちコントローラ10に電気的に接続されている。
【0022】
この第1実施形態は、燃料噴射インジエクタ7による再生処理の間、後方監視カメラ8からの監視情報を、表示装置9の表示画面9aに表示させ続ける制御処理を行なう表示継続処理部を備えている。この表示継続処理部は、例えばコントローラ10に含ませてある。
【0023】
コントローラ10は、上述した再生処理部、及び表示継続処理部の他に、以下の各処理部を含んでいる。すなわち、PM堆積量検知手段6で検知されるPM堆積量が、再生が必要とされる所定値以上となったときに、後方監視カメラ8からの監視情報の表示装置9への表示を開始させる制御処理を行なう表示開始処理部と、この表示開始処理部の制御処理がなされたとき、再生要・報知手段9bを作動させる制御処理を行なう再生要・報知処理部と、手動再生開始手段が操作されたとき、再生要・報知手段9bによる報知を停止させる制御処理を行なう再生要・報知停止処理部を含んでいる。
【0024】
また、手動再生開始手段9cの操作によって上述した再生処理部の制御処理を開始させる手動再生開始処理部と、上述した再生処理部の制御処理に応じた燃料噴射インジエクタ7による再生処理の間、再生中・報知手段9dを作動させる制御処理を行なう再生中・報知処理部と、再生停止手段すなわち上述したキースイッチ5が初期位置に戻されるように操作されたとき、燃料噴射インジェクタ7によって実施されている再生処理を強制的に停止させる制御処理を行なう再生停止処理部を含んでいる。
【0025】
さらに、PM堆積量検知手段6で検知されるPM堆積量が、再生が必要とされない値、すなわち上述した所定値に満たない値となったときに、後方監視カメラ8の監視情報の表示装置9への表示を停止させる制御処理を行なう表示停止処理部と、この表示停止処理部の制御処理に合わせて、再生中・報知手段9dによる報知を停止させる制御処理を行なう再生中・報知停止処理部とを含んでいる。
【0026】
図2は、本発明の第1実施形態に係る後処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【0027】
このような構成を有する第1実施形態に係る後処理装置を備えた油圧ショベル1は、エンジン2の駆動によって上述のように図示しない油圧ホンプが駆動され、この油圧ポンプから吐出される圧油によって、図示しない走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等の油圧アクチュエータが選択的に作動し、走行、旋回、あるいはフロント作業機1cの駆動が行なわれる。
【0028】
このような各操作が実施される間、エンジン2からの排気が図1に示した排気通路3に導かれ、この排気通路3に設けたフィルタ4のPM堆積量が、PM堆積量検知手段6で検知され、その検知信号がコントローラ10に入力される。コントローラ10では、図2の手順S1に示すように、PM堆積量が所定値以上かどうか判断される。PM堆積量が所定値に満たない場合には、フィルタ4を再生しないで済む状態と見做され、再生処理はなされない。
【0029】
手順S1の判断がイエスとなり、フィルタ4の再生処理が必要と見做されたときには、手順S2に移り、このコントローラ10に含まれる表示開始処理部の制御処理によって、後方監視カメラ8からの監視情報、すなわち車体の後方の映像が、表示装置9の表示画面9aに表示される。また、表示開始処理部の制御処理がなされたとき、コントローラ10に含まれる再生要・報知処理部の制御処理によって、表示装置9の再生要・報知手段9bが作動し、フィルタ4の再生をすべき旨の警告表示がなされる。
【0030】
次に手順S3に移り、表示装置9の再生要・報知手段9bの警告表示を確認した運転者、すなわちオペレータは、表示装置9のスイッチから成る手動再生開始手段9cを操作する。手動再生開始手段9cの操作信号はコントローラ10に入力される。
【0031】
次に手順S4に移り、手動再生開始手段9cの操作信号に応じたコントローラ10に含まれる再生要・報知停止処理部の制御処理によって、表示装置9の再生要・報知手段9bの警告表示が停止する。
【0032】
次に手順S6に移り、手動再生開始手段9cの操作信号に応じたコントローラ10に含まれる手動再生開始処理部の制御処理、及び再生処理部の制御処理によって、燃料噴射インジエクタ7から燃料が噴射され、PMの燃焼、除去が開始される。
【0033】
次に手順S6に移り、上述した再生処理部の制御処理に応じて、燃料噴射インジエクタ7によってフィルタ4の再生処理がなされる間、コントローラ10に含まれる再生中・報知処理部の制御処理によって、表示装置9の再生中・報知手段9dが作動し、フィルタ4の再生処理の実施中である旨の警告表示がなされ続ける。
【0034】
次に手順S7に移り、再生停止手段が操作されたかどうか、すなわちキースイッチ5が初期位置に戻されたかどうか判断される。この判断がノーである場合には、手順S8に移り、PM堆積量検知手段6で検知されるPM堆積量が所定値に満たなくなったかどうか判断される。この判断がノーであれば、手順S7に戻り、燃料噴射インジェクタ7から燃料の噴射が続けられて、フィルタ4の再生処理が継続される。
【0035】
上述した手順S8の判断がイエスとなり、PM堆積量検知手段6で検知されるPM堆積量が所定値に満たなくなったときには、フィルタ4の再生が終了したと見做され、手順S9に移る。
【0036】
手順S9では、コントローラ10に含まれる表示停止処理部の制御処理によって、後方監視カメラ8による監視情報の表示装置9への表示が停止する。また、この処理に応じたコントローラ10に含まれる再生中・報知停止処理部の制御処理によって、表示装置9の再生中・報知手段9dの警告表示が停止する。
【0037】
なお、表示装置9の表示画面9aを見ているオペレータが、例えば表示画面9a上において、油圧ショベル1の車体後方に、人や燃えやすいものなどの物体を確認したときには、例えばキースイッチ5が初期位置となるように操作される。すなわち、再生停止手段が操作される。これにより、上述した手順S7の判断はイエスとなり、手順S10に移る。
【0038】
この手順S10では、コントローラ10に含まれる再生停止処理部の制御処理により、強制的に燃料噴射インジェクタ7からの燃料噴射が停止する。これにより、排気通路3内を流れる排気の温度上昇が抑えられる。
【0039】
なお、図2に示すコントローラ10における手順S2〜手順S9,S10の連続的なステップによって、上述した燃料噴射イジェクタ7による再生処理の間、後方監視カメラ8からの監視情報を、表示装置9の表示画面9aに表示させ続ける制御処理を行なう表示継続処理部が構成されている。
【0040】
このように構成した第1実施形態によれば、燃料噴射インジェクタ7からの燃料噴射によってフィルタ4の再生が行なわれている間、コントローラ10に含まれる表示継続処理部の制御処理によって、上述のように表示装置9の表示画面9aに、後方監視カメラ8からの監視情報が表示され続ける。この表示装置9の表示画面9aの表示によって、再生中に、車体後方から車体に近づく物体が存在するか否かをオペレータは確実に把握することができる。このような再生中に、車体後方から車体に近づく物体が表示装置9の表示画面9aに認められた場合には、図2の手順S7、S10に示すように、例えばキースイッチ5が初期位置に戻されるように操作され、再生が強制的に停止される。このようにして、車体に近づく物体に対する危険を回避するための迅速な対応を取ることができる。なお、上述した再生の停止に合わせて、あるいは、再生の停止を行なわずに、油圧ショベル1を危険を回避できる場所まで移動させるようにして対応させてもよい。
【0041】
また、燃料噴射インジエクタ7からの燃料噴射によるフィルタ4の再生処理の間、後方監視カメラ8からの監視情報を、表示装置9の表示画面9aに表示させ続ける制御処理を行なう表示継続処理部を、燃料噴射インジエクタ7による再生を実現させる制御処理を行なう再生処理部を有するコントローラ10に含ませたことから、制御装置の数を少なくすることができ、構成を簡単にすることができて経済的である。
【0042】
また、この第1実施形態では、上述のように表示装置9の再生要・報知手段9bによる報知、すなわちフィルタ4の再生をすべき旨の警告表示によって、オペレータが手動再生開始手段9cを操作することにより、オペレータの手動操作に応じたフィルタ4の再生を実現できる。すなわち、オペレータの判断によって、フィルタ4の再生を開始させることができる。
【0043】
また、表示装置9が、再生中・報知手段9dを備えるとともに、コントローラ10が再生中・報知処理部を含むことから、再生中であって注意すべき状態にあることを、再生中・報知手段9dの報知、すなわちフィルタ4の再生処理の実施中である旨の警告表示によって、オペレータ、あるいは油圧ショベル1の周囲にいる者などに確実に気付かせることができ、これによっても優れた安全性を確保できる。
【0044】
図3は本発明の第2実施形態に係る後処理装置における処理手順を示すフローチャートである。なお、この第2実施形態が備えられる車両も、例えば図1に示す油圧ショベルである。
【0045】
上述の第1実施形態が、オペレータの手動再生開始手段9cの手動操作でフィルタ4の再生が開始されるのに対して、第2実施形態はフィルタ4の再生を自動的に行なうものである。したがって、この第2実施形態では、例えば表示装置9に手動再生開始手段9c及び再生要・報知手段9bが備えられておらず、またコントローラ10には、上述した再生要・報知処理部、再生要・報知停止処理部、及び手動再生開始処理部は含まれていない。
【0046】
この第2実施形態では、コントローラ10が、PM堆積量検知手段6で検知されるPM堆積量が、再生が必要とされる所定値以上となったときに、後方監視カメラ8の監視情報の表示装置9の表示画面9aへの表示を開始させる制御処理を行なう第1実施形態におけるのと同等の表示開始処理部を含むとともに、この表示開始処理部の制御処理に応じて、燃料噴射インジエクタ7を作動させる処理を行なう再生処理部の制御処理を自動的に開始させる自動再生開始処理部を含んでいる。
【0047】
コントローラ10を除いた他の構成、及びコントローラ10に含まれる他の処理部については、上述した第1実施形態におけるのと同等である。
【0048】
このように構成した第2実施形態に係る後処理装置は、エンジン2が駆動されて、走行、旋回、フロント作業機1cの駆動のための各操作が実施される間、エンジン2からの排気が図1に示される排気通路3に導かれ、図3の手順S1に示すように、PM堆積量検知手段6で検知されるPM堆積量が所定値以上かどうか判断される。PM堆積量が所定値に満たない場合は、フィルタ4を再生しないで済む状態と見做され、再生処理はなされない。
【0049】
手順S1の判断がイエスとなり、フィルタ4の再生処理が必要と見做されたときには、手順S12に移り、このコントローラ10に含まれる表示開始処理部の制御処理によって後方監視カメラ8からの監視情報、すなわち車体の後方の映像の、表示装置9の表示画面9aへの表示が開始される。
【0050】
次に手順S13に移り、上述の表示開始処理部の制御処理に応じたコントローラ10に含まれる自動再生開始処理部の制御処理によって、このコントローラ10に含まれる再生処理部の制御処理が自動的に開始され、燃料噴射インジエクタ7からの燃料が噴射され、PMの燃焼、除去が開始される。以降の手順S6〜S9,S10の処理については、上述した第1実施形態と同等である。
【0051】
このように構成した第2実施形態は、図3に示すコントローラ10における手順S12,S13,S6〜S9,S10の連続的なステップによって、燃料噴射インジエクタ7による再生処理の間、後方監視カメラ8からの監視情報を、表示装置9の表示画面9aに表示させ続ける制御処理を行なう表示継続処理部が構成されている。
【0052】
このように構成した第2実施形態も、第1実施形態と同様に、コントローラ10内に再生中、後方監視カメラ8の監視情報を表示装置9の表示画面9aに表示させ続ける表示継続処理部を含ませた構成にしてあることから、第1実施形態と同等の作用効果が得られる。また、この第2実施形態は、オペレータによる操作を要することなく、フィルタ4の再生をすべきときに自動的にフィルタ4の再生処理を行なうことができる。
【0053】
なお、上記第1実施形態にあっては、再生要・報知手段9b、手動再生開始手段9cのそれぞれを、また第1,第2実施形態にあっては、再生中・報知手段9dのそれぞれを、表示装置9に含ませた構成にしてあるが、これらの再生要・報知手段9b、手動再生開始手段9c、再生中・報知手段9dのそれぞれを、表示装置9に備えず、他の部位に独立させて設けた構成にしてもよい。
【0054】
また、再生要・報知手段9b、及び再生中・報知手段9dの報知として警告表示をするようにしてあるが、このような警告表示に代えて警告灯を点灯させるようにしてもよく、また警報を発するように構成してもよい。
【0055】
また、上記第1,第2実施形態にあっては、再生停止手段をエンジン2を起動させるキースイッチ5が兼ねる構成にしてあるが、このキースイッチ5とは独立させて再生停止手段を設けた構成にしてもよい。また、このように独立させて設けた再生停止手段を運転室1d内に配置するようにしてもよい。
【0056】
また、上記第1,第2の実施形態にあっては、再生手段がエンジン2に付設される燃料噴射インジェクタ7によって構成されているが、再生手段をこのようなエンジン2に付設される燃料噴射インジェクタ7と同等の構成の別の燃料噴射インジエクタによって構成し、その別の燃料噴射インジェクタを、エンジン2の排気通路3に燃料を噴射するように設けた構成にしてもよい。
【0057】
また、再生手段として、上述した燃料噴射インジェクタ7等に代えて電熱ヒータを設け、この電熱ヒータによって排気通路3内を、あるいはフィルタ4を加熱するように構成してもよい。
【0058】
また、上記では第1実施形態を手動操作によるフィルタ4の再生が可能な構成にし、第2実施形態をフィルタ4の自動再生が可能な構成にしてあるが、これらの第1実施形態と第2実施形態とを併せて備えた構成にし、手動再生と自動再生を選択的に切り換える切換え手段を設け、必要に応じて上述した第1実施形態の手動再生処理、上述した第2実施形態の自動再生処理が選択的に可能となる構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る車両の後処理装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る後処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る後処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧ショベル(車両)
1a 走行体
1b 旋回体
1c フロント作業機
1d 運転室
2 エンジン
3 排気通路
4 フィルタ
5 キースイッチ(再生停止手段)
6 PM堆積量検知手段
7 燃料噴射インジェクタ(再生手段)
8 後方監視カメラ(車体後方監視手段)
9 表示装置
9a 表示画面
9b 再生要・報知手段
9c 手動再生開始手段
9d 再生中・報知手段
10 コントローラ(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車両に備えられ、
上記エンジンの排気通路に設けられ、PMを捕集するフィルタと、
このフィルタに堆積したPM堆積量を検知するPM捕集堆積量検知手段と、
上記フィルタに流入する排気の温度を上昇させて上記フィルタに堆積したPMを燃焼除去させ、上記フィルタの再生を行なう再生手段と、
車体の後方を監視する車体後方監視手段と、
この車体後方監視手段からの監視情報を表示する表示装置と、
上記再生手段による再生を実施させる制御処理を行なう再生処理部を有する制御装置とを備えた車両の後処理装置において、
上記再生手段による再生処理の間、上記車体後方監視手段からの上記監視情報を、上記表示装置に表示させ続ける制御処理を行なう表示継続処理部を備えたことを特徴とする車両の後処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の後処理装置において、
上記制御装置は、上記表示継続処理部を含むことを特徴とする車両の後処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の後処理装置において、
上記再生手段による再生を促す旨を報知する再生要・報知手段と、上記再生手段による再生の開始を指示する手動再生開始手段とを備えるとともに、
上記制御装置は、
上記PM堆積量検知手段で検知されるPM堆積量が、再生が必要とされる値となったときに、上記車体後方監視手段からの上記監視情報の上記表示装置への表示を開始させる制御処理を行なう表示開始処理部と、この表示開始処理部の制御処理がなされたとき、上記再生要・報知手段を作動させる制御処理を行なう再生要・報知処理部と、上記手動再生開始手段が操作されたとき、上記再生要・報知手段による報知を停止させる制御処理を行なう再生要・報知停止処理部とを有することを特徴とする車両の後処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両の後処理装置において、
上記制御装置は、
上記PM堆積量検知手段で検知されるPM堆積量が、再生が必要とされる値となったときに、上記車体後方監視手段の上記監視情報の上記表示装置への表示を開始させる制御処理を行なう表示開始処理部と、この表示開始処理部の制御処理に応じて上記再生処理部の制御処理を自動的に開始させる再生開始処理部とを有することを特徴とする車両の後処理装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両の後処理装置において、
上記再生手段による再生処理の実施中である旨を報知する再生中・報知手段を備えるとともに、
上記制御装置は、
上記再生処理部の制御処理に応じて、上記再生手段による再生処理の間、上記再生中・報知手段を作動させる制御処理を行なう再生中・報知処理部を有することを特徴とする車両の後処理装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の車両の後処理装置において、
上記再生手段による再生処理の停止を指示する再生停止手段を備えるとともに、
上記制御装置は、
上記再生停止手段が操作されたとき、上記再生手段によって実施されている再生処理を強制的に停止させる制御処理を行なう再生停止処理部を有することを特徴とする車両の後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−19187(P2010−19187A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181359(P2008−181359)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】