説明

車両の後部構造

【課題】車両が追突された時にディフューザが損傷しにくくして、修理コストを低廉化することができる車両の後部構造を提供する。
【解決手段】マフラーパイプ7からの排気ガスを通過させて排出するディフューザ50をリヤバンパ100に取り付け、ディフューザ50の前端部10Aをバックパネル71の下方に配置してバックパネル71よりも車両前方側Frに突出させ、マフラーパイプ7をディフューザ50に挿入し、ディフューザ50の前端10A1とマフラー本体75の車両後方側Rrの後面78との車両前後方向の間隔d2を、バックパネル71の前側パネル面71Aからのディフューザ50の突出長さe1よりも長く設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
マフラー本体と、前記マフラー本体の車両後方側の後面から突出するマフラーパイプとを備えたマフラーを設け、
前記マフラーパイプからの排気ガスを通過させて排出するディフューザをリヤバンパに取り付けてある車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、一般的にリヤバンパの下方に排気口を配置して内燃機関からの排気ガスを車両後方側に排出しているが、リヤバンパが大型化された車両やリヤバンパが下方に位置するようにデザインされた車両などでは、リヤバンパに貫通孔を設けてマフラーパイプを前記貫通孔に挿通させている。
このように、リヤバンパの貫通孔にマフラーパイプを挿通させる車両では、車体に不動状態に固定されたリヤバンパに対してマフラーパイプが振動するために貫通孔が大きくならざるを得ず、その上、リヤバンパからマフラーパイプが突出して見栄えが低下しやすくなる。また、マフラーパイプは高熱になるために、熱に弱い樹脂製のリヤバンパが劣化したり変色したりするおそれもある。
これらの対策として、リヤバンパの孔にデザインを良くした金属製のディフューザを取り付け、リヤバンパの裏側で開口するマフラーパイプの開口をディフューザで包み込んで、排気をディフューザを通して排出している。
【0003】
従来、上記の車両の後部構造では、特許文献1に開示されているように、ディフューザの前端部をバックパネルの後ろ下方に配置してあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−143199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後方から加えられる荷重によって車両のリヤバンパが車両前方側に押されて車両前方側に移動すると、ディフューザも同様に車両前方側に移動する。上記従来の構造によれば、ディフューザの前端部をバックパネルの後ろ下方に配置してあったために、ディフューザの前端部がバックパネルと衝突して損傷することがあった。
ディフューザは、例えばステンレスで形成されるとともに、意匠性を上げるために表面がバフ処理された高額な部品であることから、上記のようにディフューザを損傷させて新しいディフューザと交換した場合、修理コストが高くなるという問題があった。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、車両が後方から荷重を受けた時にディフューザを損傷しにくくして、修理コストを低廉化することができる車両の後部構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
マフラー本体と、前記マフラー本体の車両後方側の後面から突出するマフラーパイプとを備えたマフラーを設け、
前記マフラーパイプからの排気ガスを通過させて排出するディフューザをリヤバンパに取り付けてある車両の後部構造であって、
前記ディフューザの前端部をバックパネルの下方に配置して前記バックパネルよりも車両前方側に突出させ、
前記マフラーパイプを前記ディフューザに挿入してある点にある。(請求項1)
【0007】
この構成によれば、ディフューザの前端部をバックパネルの下方に配置してバックパネルよりも車両前方側に突出させ、マフラーパイプをディフューザに挿入してあるので、後方から加えられる荷重によってリヤバンパとともにディフューザが車両前方側に移動しても、ディフューザの前端部がバックパネルに車両後方側から衝突することがなく、ディフューザの損傷を回避することができる。(請求項1)
【0008】
本発明において、
前記ディフューザの前端と前記マフラー本体の車両後方側の後面との車両前後方向の間隔を、前記バックパネルの前側パネル面からの前記ディフューザの突出長さよりも長く設定してあると前記間隔を大きく取ることができ、荷重を受けて車両前方側に移動する時のディフューザの車両前方側への移動可能量を大きくして、前記ディフューザの前端が前記マフラー本体の車両後方側の後面に衝突しにくくすることができ、ディフューザの損傷を回避しやすくすることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
車両の後方視で、前記リヤバンパの下端縁を前記マフラー本体と重複させ、
前記リヤバンパの下端縁を前記ディフューザの前端よりも車両前方側に突出させてあると、荷重を受けてリヤバンパが車両前方側に移動する時にはディフューザの前端よりも先にリヤバンパの下端縁がマフラー本体に当接するので、ディフューザの前端がマフラー本体に当接することを阻止することができて、ディフューザの損傷を回避することができる。(請求項3)
【0010】
本発明において、
前記マフラー本体から突出するマフラーパイプを直線状に形成するとともに、車両の後方視で、前記マフラーパイプの後端部が前記ディフューザの内周縁の内側に位置すると、荷重を受けてリヤバンパが車両前方側に移動する時にマフラーパイプの後端部が容易にディフューザ内を通過することができ、マフラーパイプの後端部とディフューザの内周縁との干渉を回避することができて、ディフューザの損傷を回避することができる。(請求項4)
【0011】
本発明において、
前記バックパネルの下端部の車幅方向の端部を切り欠いて形成した切り欠き内に前記ディフューザの前端部を配置して、前記ディフューザの前端部を前記バックパネルよりも車両前方側に突出させてあると、ディフューザの前端部をバックパネルよりも車両前方側に突出させるためのバックパネルの改造を小さく抑えることができ、製作コストを低廉化することができる。また、ディフューザとマフラーパイプの配置が容易になり、ディフューザおよびマフラーパイプを比較的高い位置に配置することが可能となる。(請求項5)
【0012】
本発明において、
前記リヤバンパに形成した開口に前記ディフューザの後端部を挿入してあると、リヤバンパでディフューザを安定支持することができる。(請求項6)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、
車両が後方から荷重を受けた時にディフューザを損傷しにくくして、修理コストを低廉化することができる車両の後部構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リヤバンパの分解斜視図
【図2】ディフューザを前斜め上方から見た斜視図
【図3】ディフューザを前斜め下方から見た斜視図
【図4】ディフューザを取り付ける前のリヤバンパを車両前方側から見た斜視図
【図5】ディフューザをリヤバンパに取り付けた状態を示す車両前方側から見た斜視図
【図6】ディフューザを車両後方から見た図(後面図)
【図7】(a)は図1のA−A断面図(b)は第1ディフューザ側取り付け部の構成を示す分解断面図
【図8】図1のB−B断面図
【図9】(a)は図1のC−C断面図(b)は第1ディフューザ側取り付け部の構成を示す分解断面図
【図10】図6のD−D断面図
【図11】バックパネルを車両後方側から見た図
【図12】バックパネルとディフューザを示す斜視図
【図13】バックパネルとディフューザを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1,図10に、マフラー本体75と、マフラー本体75の車両後方側Rrの垂直な後面78から突出する直管状(直線状)のマフラーパイプ7とを備えた内燃機関のマフラー80を設け、マフラーパイプ7からの排気ガスを通過させて排出する金属製の左右一対のディフューザ50を樹脂製のリヤバンパ100の開口1に取り付けてある車両の後部構造を示してある。
【0016】
[リヤバンパ100の構造]
リヤバンパ100は左右方向に沿う後面部2と後面部2の左右両端部から車両前方側Frに延びる左右一対の側面部3とを備えている。後面部2は横断面及び縦断面において車両後方側Rrに少し凸の緩やかな円弧状に形成され、後面部2と側面部3で形成されるコーナー部4は横断面及び縦断面において円弧状に形成されている。前記開口1は後面部2の左右両端部の下端部に左右に長く形成されている。このリヤバンパ100には、開口1の周りのリヤバンパ部分から車両前方側Frに立ち上がる内周壁99(図8参照)が開口1の全周にわたって形成されている。
【0017】
[ディフューザ50の構造]
図2,図3,図8に示すように、前記ディフューザ50は筒状のディフューザ本体部10とディフューザ本体部10の車両後方側Rrの端部に固定された環状のガーニッシュ11とを備えている。ディフューザ本体部10は、車両前方側Frの筒体前半部(ディフューザ本体部分)が車両後方側Rrに行くに従い左右方向に拡径(少し拡径)し、車両後方側Rrの筒体後半部(ディフューザ本体部分)が車両後方側Rrに行くに従い左右方向及び上下方向に拡径(大きく拡径)している。
【0018】
詳しくは、ディフューザ本体部10は上側の半筒状(縦断面下側開放の長円弧状)のアッパパネル14と下側の半筒状(縦断面上側開放の長円弧状)のロアパネル15とから成る。アッパパネル14は、下側の左右両端部に左右外方側に張り出すフランジ14Fを備え、ロアパネル15は、上側の左右両端部に左右外方側に張り出すフランジ15Fを備えている。
【0019】
各フランジ14F,15Fは、アッパパネル14又はロアパネル15の車両前後方向のほぼ全長にわたって形成されている。そして、アッパパネル14の左右一対のフランジ14Fとロアパネル15の左右一対のフランジ15Fとを上下に各別に重ね合わせて溶接接合してある。
【0020】
このように、ディフューザ本体部10をアッパパネル14とロアパネル15の接合構造に構成してあるので、上記の形状を容易に成形できディフューザ本体部10を上記の形状の筒体に容易に構成することができる。図8に示すように、アッパパネル14とロアパネル15の車両後方側Rrの端部14B,15Bは拡径して段差状に形成されている。
【0021】
前記マフラーパイプ7はディフューザ本体部10の筒体前端部に車両前方側Frから挿入されており、マフラーパイプ7の振動で筒体前半部に接触しないように、マフラーパイプ7の外周面と筒体前端部の内周面との間に比較的大きな間隔が空けられている。
【0022】
[ガーニッシュ11の構造]
ガーニッシュ11はディフューザ50の車両後方側Rrの開口端部を装飾する環状の部材である。図8に示すように、このガーニッシュ11は、全周にわたって車両前方側Frが開放した縦断面U字状に形成されており、内周壁61と、内周壁61に対して間隔を空けて位置する外周壁60と、内外周壁61,60を接続する接続部62とを備えている。ガーニッシュ11の車両後方側Rrの意匠面は車幅方向外側ほど車両前方側Frに位置する状態に曲線状に傾斜している。
【0023】
そして、内周壁61の車両前方側Frの端部61Aがディフューザ本体部10の車両後方側Rrの拡径した端部(アッパパネル14とロアパネル15の車両後方側Rrの拡径した端部14B,15B)に内嵌している。これによって排気の流れを円滑にするとともに外観を向上させている。
【0024】
外周壁60の車両前方側Frの端部60Aはリヤバンパ100の開口1内に位置し、開口1の周りのリヤバンパ部分から車両前方側Frに立ち上がるリヤバンパ100側の内周壁99に開口1の径方向内方側から近接している。
【0025】
[リヤバンパへのディフューザの取り付け構造]
図2,図3,図7(a),図7(b),図9(a),図9(b)に示すように、前記ディフューザ50に、車両前方側Frに向かって突出する取り付けボルトB1(スタッドボルト)を備えた左右一対の第1ディフューザ側取り付け部21と、軸芯が上下方向に沿うナットNを備えた第2ディフューザ側取り付け部22とを設けてある。
また、図4,図8に示すように、リヤバンパ100に、軸芯Oが車両前後方向に沿うボルト挿通孔Sを備えた左右一対の第1リヤバンパ側取り付け部31と、軸芯Oが上下方向に沿うボルト挿通孔Sを備えた第2リヤバンパ側取り付け部32とを設けてある。
【0026】
そして、第1ディフューザ側取り付け部21の取り付けボルトB1を第1リヤバンパ側取り付け部31のボルト挿通孔S(詳しくは後述のブッシュ35)に挿通させ、取り付けボルトB1にナットNを螺合させて、第1ディフューザ側取り付け部21を第1リヤバンパ側取り付け部31に取り付けてある。
さらに、図5,図8に示すように、取り付けボルトB1を下方から第2リヤバンパ側取り付け部32のボルト挿通孔Sに挿通させ、第2ディフューザ側取り付け部22のナットNに螺合させて、第2ディフューザ側取り付け部22を第2リヤバンパ側取り付け部32に取り付けてある。
【0027】
[車幅方向外側(車両側方側)の第1ディフューザ側取り付け部21の構造]
図2,図3,図7(a),図7(b)に示すように、左右一対の第1ディフューザ側取り付け部21のうち、車幅方向外側の第1ディフューザ側取り付け部21は、アッパパネル14の車幅方向外側のフランジ14Fの後端部(車両後方側Rrの端部)と、ロアパネル15の車幅方向外側のフランジ15Fの後端部(車両後方側Rrの端部)とに一体に形成されている。
【0028】
すなわち、両フランジ14F,15Fを車幅方向外側に長方形状に延出して互いに重ね合わせるとともに、互いに重なり合った延出部を上方に折曲して車両前後方向を向く取り付け面部23を形成し、この取り付け面部23に取り付けボルトB1を車両後方側Rrから貫通させ、取り付けボルトBの頭部を取り付け面部23に溶接接合してある。取り付け面部23は車両前後方向に対して略垂直に位置している。
【0029】
このように、車幅方向外側の第1ディフューザ側取り付け部21を、別途ブラケットを使用することなくアッパパネル14の車幅方向外側のフランジ14Fとロアパネル15の車幅方向外側のフランジ15Fとで形成してあるので部品点数を削減することができる。しかも、アッパパネル14とロアパネル15の位置合わせにも使用することができて生産性を向上させることができる。
【0030】
[車幅方向内側(車両中央側)の第1ディフューザ側取り付け部21の構造]
図2,図3,図9(a),図9(b)に示すように、車幅方向内側の第1ディフューザ側取り付け部21は、アッパパネル14の車両後方側Rrの拡径した端部14Bの上面とロアパネル15の車両後方側Rrの拡径した端部15Bの側面とに、車両前後方向から見て「く」の字状のブラケット24の両脚部25を各別に溶接接合し、ブラケット24に取り付けボルトB1を貫通・固着して構成されている。
【0031】
前記ブラケット24は板面が車両前後方向を向く一枚板状に形成され、両脚部25に取り付けフランジ25Fがそれぞれ折曲形成されている。そして、この取り付けフランジ25Fがアッパパネル14の車両後方側Rrの拡径した端部14Bの上面とロアパネル15の車両後方側Rrの拡径した端部15Bの側面とに重ねられて溶接接合されている。これにより、上下に長い取り付け距離(ブラケット24の両脚部25の取り付け距離)を確保して剛性のある取り付け面を形成している。
【0032】
両脚部25間のブラケット部分はリヤバンパ100に対する取り付け面部26に構成され、この取り付け面部26に取り付けボルトB1が車両後方側Rrから貫通し、取り付けボルトB1の頭部が取り付け面部26に溶接接合されている。
【0033】
例えば、ブラケット24を細く長く形成して、ブラケット24からリヤバンパ100への伝熱量を抑え、伝熱経路を長く設定した構造では、第1リヤバンパ側取り付け部31に対する取り付け剛性を確保することが困難になる。これに対して、本発明では、比較的短い(小さい)ブラケットを用いて取り付け剛性を確保し、溶接箇所のみ接触するようにして、ディフューザ本体部10とブラケット24との接触面積(入熱部)を少なくし、冷却性能を向上させている。
【0034】
[第2ディフューザ側取り付け部22の構造]
図2,図3,図8に示すように、第2ディフューザ側取り付け部22は、車両の側方(車両の左右外方側)から見てクランク状に形成されており、ロアパネル15の車両前方側Frの端部15Aの下面に取り付けられる上側取り付片27と、上側取り付け片27から下方に延びて車両前後方向に対して略垂直に位置する縦壁部28と、縦壁部28の下端部から車両前方側Frに水平に延びて第2リヤバンパ側取り付け部32の取り付け面部40(図4参照)に取り付けられる下側取り付け片29とから成る。
【0035】
上側取り付片27と縦壁部28と下側取り付片29とはいずれも断面ハット形状に形成され、上側取り付け片27の左右一対の上側フランジ27Fがロアパネル15の車両前方側Frの端部15Aの下面に重ね合わされて溶接接合されている。これにより、ロアパネル15の車両前方側Frの端部15Aの下面と、この下面に対向する上側取り付け片27の本体部27Hとの間に走行風の流通路R(図8参照)が形成されている。従って、前記流通路Rを流れる走行風によって第2ディフューザ側取り付け部22を冷却することができる。
【0036】
下側取り付け片29の本体部29Hの中央部にはボルト挿通孔Sが形成され、前記本体部29Hの上面にナットNがボルト挿通孔Sと同芯状に溶接接合されている。
【0037】
第2ディフューザ側取り付け部22は、ディフューザ50の比較的高温となる部位に取り付けられているが、走行風を受けやすい位置に配置されて走行風に対向していることと、縦壁部28が車両前方側Frに開放した断面ハット形状に形成されていることとにより走行風を捕捉しやすくなっている。さらに、前記流通路Rに走行風を流す構造になっているので、車両の走行風によって冷却されやすくなっている。また、リヤバンパ100の下端部側に位置し、熱影響を受けてもリヤバンパ100の劣化や変色が目立たない位置にあることから、第2ディフューザ側取り付け部22には遮熱部材は設けられていない。
【0038】
[第1リヤバンパ側取り付け部31の構造]
図4,図5,図7(a),図7(b),図9(a),図9(b)に示すように、第1リヤバンパ側取り付け部31は、リヤバンパ100の開口1から車両前方側Frにオフセットして、前記開口1の左右端位置で上下の開口部分の周縁を連結するように形成されている。つまり、車両前後方向視でリヤバンパ100の開口1の左右方向の端部に沿う周壁33を開口1の周部から車両前方側Frに向かって立設するとともに、周壁33の車両前方側Frの端部から開口1の径方向内方側に延びる取り付け面部34を車両前後方向に対して略垂直に形成し、この取り付け面部34に、前記径方向内方側が切り欠かれたボルト挿通孔Sを形成してある。このボルト挿通孔Sの切り欠き38は、後述するようにブッシュ35の組み付けを容易にし、組み付け作業性を向上させている。また、この切り欠きはもう一方の第1リヤバンパ側取り付け部31の方向に形成されているので、ディフューザ50が取り付けられた後では、切り欠き38からブッシュ35は抜け出ることができない。
【0039】
第1リヤバンパ側取り付け部31と第1ディフューザ側取り付け部21の取り付けボルトBとの間には、リヤバンパ100の材料(樹脂材)以上の耐熱性を有し、熱伝導率がディフューザ50の熱伝導率よりも小さい遮熱部材としての耐熱ゴム製のブッシュ35を介在させてある。
【0040】
このブッシュ35は、第1リヤバンパ側取り付け部31のボルト挿通孔Sの内周面と、前記ボルト挿通孔Sの周りの第1リヤバンパ側取り付け部31の取り付け面(前記取り付け面部34の取り付け面)31Mと、第1リヤバンパ側取り付け部31の前記取り付け面31Mとは反対側の裏面31Nとに嵌合する嵌合溝36を外周部に備えている。またブッシュ35に金属製の円筒状のカラー37(スペーサー)が内嵌している。そして、前記ブッシュ35を前記ボルト挿通孔Sに、切り欠き38を通過させて横方向から内嵌させるとともに、前記ブッシュ35内のカラー37に取り付けボルトB1を挿通させてある。ブッシュ35を切り欠き38を通過させて横方向から内嵌させているので、嵌合溝36を深く形成することができ、脱落が防止されるとともに、第1リヤバンパ側取り付け部31と第1ディフューザ側取り付け部21との間のブッシュ35の面積を増やすことができるので、ブッシュ35の遮熱性能と耐久性能の向上が可能となる。
【0041】
前記カラー37によってブッシュ35の変形を抑制することができ、取り付けボルトB1の締め付け軸力を確保することができる。取り付けボルトB1の代わりに段付きの取り付けボルトB1を使用すれば、カラー37を廃止することができて部品点数の削減が可能となる。
前記第1リヤバンパ側取り付け部31の取り付け面(前記取り付け面部34の取り付け面)31Mは車両前後方向に対して略垂直に形成されている。また、前記裏面31Nには段差状の取り付け座面が形成されている。
【0042】
図7,図9(a),図9(b)に示すように、車両前方側Frから順に、前記第1リヤバンパ側取り付け部31、第1ディフューザ側取り付け部21、ディフューザ50に設けたガーニッシュ11の周縁部を配置し、車両後方側Rrから見て第1リヤバンパ側取り付け部31と第1ディフューザ側取り付け部21をガーニッシュ11の周縁部で覆い隠してある。
これにより、ガーニッシュ11の周縁部や第1ディフューザ側取り付け部21で温められる前の温度の低い走行風が第1リヤバンパ側取り付け部31に車両前方側から当たり、第1リヤバンパ側取り付け部31を十分冷却することができて、リヤバンパ100の劣化や変色を防止することができる。そして、リヤバンパ100の開口1の内周壁99とガーニッシュ11との間の隙間が形成されているので、この隙間を通して走行風が車両の後方に流れることになり、ガーニッシュ11を冷却することができて、内周壁99への熱影響を少なくすることができる。
また、第1リヤバンパ側取り付け部31の形状によって走行風を受け入れるとともに、走行風が第1ディフューザ側取り付け部21の近傍を流れることになるので、第1ディフューザ側取り付け部21を冷却することができ、リヤバンパ100への熱影響を少なくすることができる。
【0043】
[第2リヤバンパ側取り付け部32の構造]
図4,図8に示すように、第2リヤバンパ側取り付け部32は、リヤバンパ100の下端部の車両前方側Frの部分に水平な取り付け面部40を段差状に形成し、取り付け面部40にボルト挿通孔Sを設けて構成されている。
【0044】
[組み付け方法]
前記ディフューザ50はリヤバンパ100が車体に搭載される前にリヤバンパ100に次のように部組される。
(1) ディフューザ50をリヤバンパ100の開口1に車両後方側Rrから挿入し、第1ディフューザ側取り付け部21の取り付けボルトB1を、第1リヤバンパ側取り付け部31のブッシュ35内のカラー37に挿入する。
前記取り付けボルトB1は、前記開口1に接近配置されるディフューザ50のガーニッシュ11が開口1に挿入される前に、前記ブッシュ35内のカラー37に挿入される長さとなっている。
これにより、前記取り付けボルトB1をカラー37に挿入した後はリヤバンパ100の開口1に対してディフューザ50の位置が決まる。従って、組み付け作業の際にリヤバンパ100の意匠面にディフューザ50が衝突することを回避できて、リヤバンパ100の意匠面の損傷を回避することができる。
(2) 前記取り付けボルトB1にナットNを螺合させて、第1ディフューザ側取り付け部21を第1リヤバンパ側取り付け部31に取り付ける。さらに、図5,図8に示すように、取り付けボルトB1を下方から第2リヤバンパ側取り付け部32のボルト挿通孔Sに挿通させ、第2ディフューザ側取り付け部22のナットNに螺合させて、第2ディフューザ側取り付け部22を第2リヤバンパ側取り付け部32に取り付ける。
【0045】
[風の流れ]
自動車の走行によってリヤバンパ100の内部に走行風が吹き込み、リヤバンパ100の後ろ側に対してリヤバンパ100の内部は高気圧状態となる。リヤバンパ100の内部の空気は、一部が排気と一緒にディフューザ50内を通過して排気温度とディフューザ50内の温度とを低下させて車両後方に排出される。
また、一部がディフューザ50の外側を流れ、リヤバンパ100の開口1とガーニッシュ11の間の隙間を通過して、前記開口1を冷却させるとともに、ディフューザ50の温度及び第1ディフューザ側取り付け部21の温度を低下させて車両後方側Rrに排出される。
本発明の構成によれば、第1ディフューザ側取り付け部21を風の流れが比較的強い場所となるリヤバンパ100の開口1の近辺に配置したので、風による冷却をより期待できる。
【0046】
[ディフューザ50とマフラー80との配置構造]
図10に示すように、ディフューザ本体部10の前端部10A(ディフューザ50の前端部)を、パネル面が車両前後方向を向くバックパネル71の下方に配置してバックパネル71よりも車両前方側Frに突出させてある。つまり、ディフューザ本体部10は、バックパネル71の下方(後述する切り欠き70部分)に配置され、車両前後方向でバックパネル71の後ろ側から前側にバックパネル71の下方を通過している。そして、マフラーパイプ7を上記のようにディフューザ本体部10に車両前方側Frから挿入し、ディフューザ本体部10の前端10A1とマフラー本体75の車両後方側Rrの後面78との車両前後方向の間隔d2を、バックパネル71の前側パネル面71Aからのディフューザ50の突出長さe1よりも長く設定してある。
【0047】
図11に示すように、バックパネル71は車体の左端部から右端部にわたる車幅方向に長いパネルである。このバックパネル71の左右中央部の上半部を後部の荷室72に対応させて上方に開放する状態に大きく切り欠いてある。そして、バックパネル71に左右一対のバンパメンバ台座74を固着し、連結部材81を介してバンパメンバ台座74に車幅方向に長い上下一対の角パイプ状のバンパメンバ73を連結してある。バンパメンバ73はディフューザ50のガーニッシュ11の上方に位置している。
【0048】
図12,図13に示すように、前記バックパネル71の下端部の車幅方向の端部を切り欠いて形成した切り欠き70内にディフューザ本体部10の前端部10Aを配置して、ディフューザ本体部10の前端部10Aを上記のようにバックパネル71よりも車両前方側Frに突出させてある。
切り欠き70の周縁70Nとディフューザ本体部10の前端部10Aとの間には隙間を形成して、ディフューザ50の熱をバックパネル71に伝えにくくするとともに、ディフューザ50が変位する際にバックパネル71に干渉するのを回避できるようにしてある。
【0049】
そして、車両の後方視で、リヤバンパ100の左右方向の端部の下端縁77(図10参照)をマフラー本体75の下端部と重複させ、前記リヤバンパ100の下端縁77をディフューザ本体部10の前端10A1よりも車両前方側Frに突出させて、荷重を受けてリヤバンパが車両前方側に移動する時には、リヤバンパ100の左右方向の端部の下端縁77がディフューザ本体部10の前端10A1よりも先にマフラー本体75の下端部に当接するよう構成してある。
【0050】
図10に示すように、縦断面におけるディフューザ50の内径は、ディフューザ本体部10とガーニッシュ11の接続部82で最小に設定されており、車両の後方視で(車両後方側Rrから見て)、マフラーパイプ7の後端部7Bが前記接続部82の内周縁82N(ディフューザ50の内周縁に相当)の内側に位置している。マフラーパイプ7の後端部7Bと前記接続部82の内周縁82Nの下側部分との間には隙間d3が形成されている。また、マフラーパイプ7の後端7B1と前記接続部82の最小径の部分の内周縁82Nとを車両前後方向で離間させてある。
【0051】
ディフューザ50の後端縁(ディフューザ50のガーニッシュ11の後端縁11K)はリヤバンパ100の後端縁100Kの前下方に位置している。上記の構造の自動車が後方から荷重を受けてリヤバンパが車両前方側に移動する場合、荷重を加える側の車両のフロントバンパが、ディフューザ50の後ろ上方のリヤバンパ100の後端縁100Kに衝突する。この衝突により、リヤバンパ100を介してバンパメンバ73・連結部材81・バックパネル71に荷重が入力し、リヤバンパ100のみに連結されたディフューザ50がリヤバンパ100と一体に車両前方側Frに移動する。
【0052】
本発明の構成によれば、ディフューザ本体部10の前端部10Aをバックパネル71の下方に配置してバックパネル71よりも車両前方側Frに突出させ、マフラーパイプ7をディフューザ50に挿入してあるので、追突時にディフューザ50が車両前方側Frに移動しても、ディフューザ本体部10の前端部10Aがバックパネル71に車両後方側Rrから衝突することがなく、ディフューザ50の損傷を回避することができる。
【0053】
また、ディフューザ本体部10の前端10A1とマフラー本体75の車両後方側Rrの後面78との車両前後方向の間隔d2を、バックパネル71の前側パネル面71Aからのディフューザ50の突出長さe1よりも長く設定してあるので、前記間隔d2を大きく取ることができ、追突時のディフューザ50の車両前方側Frへの移動可能量を大きくして、ディフューザ本体部10の前端10A1がマフラー本体75の車両後方側Rrの後面78に衝突しにくくすることができ、ディフューザ50の損傷を回避することができる。
【0054】
そして、車両の後方視で、マフラーパイプ7の後端部7Bが前記接続部82の内周縁82Nの内側(径方向内方側)に位置しているので、追突時にマフラーパイプ7の後端部7Bが容易にディフューザ50内を通過することができ、マフラーパイプ7の後端部7Bと前記接続部82の内周縁82Nとの干渉を回避することができて、ディフューザ50の損傷を回避することができる。しかも、ディフューザ50に排気ガスの熱が伝わりにくくすることができ、ディフューザ50を介してリヤバンパ100に排気ガスの熱が伝わりにくくすることができる。
【0055】
また、上記のように、ディフューザ50の後端縁(ディフューザ50のガーニッシュ11の後端縁11K)がリヤバンパ100の後端縁100Kの前下方に位置しているので、歩行者が高温のディフューザ50に触れるのを回避することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 リヤバンパに形成した開口
7 マフラーパイプ
7B マフラーパイプの後端部
10A ディフューザの前端部(ディフューザ本体部の前端部)
10A1 ディフューザの前端
50 ディフューザ
70 切り欠き
71 バックパネル
71A バックパネルの前側パネル面
75 マフラー本体
77 リヤバンパの下端縁
78 マフラー本体の車両後方側の後面
80 マフラー
82N 内周縁
100 リヤバンパ
d2 ディフューザの前端とマフラー本体の車両後方側の後面との車両前後方向の間隔
e1 バックパネルの前側パネル面からのディフューザの突出長さ
Fr 車両前方側
Rr 車両後方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マフラー本体と、前記マフラー本体の車両後方側の後面から突出するマフラーパイプとを備えたマフラーを設け、
前記マフラーパイプからの排気ガスを通過させて排出するディフューザをリヤバンパに取り付けてある車両の後部構造であって、
前記ディフューザの前端部をバックパネルの下方に配置して前記バックパネルよりも車両前方側に突出させ、
前記マフラーパイプを前記ディフューザに挿入してある車両の後部構造。
【請求項2】
前記ディフューザの前端と前記マフラー本体の車両後方側の後面との車両前後方向の間隔を、前記バックパネルの前側パネル面からの前記ディフューザの突出長さよりも長く設定してある請求項1記載の車両の後部構造。
【請求項3】
車両の後方視で、前記リヤバンパの下端縁を前記マフラー本体と重複させ、
前記リヤバンパの下端縁を前記ディフューザの前端よりも車両前方側に突出させてある請求項1又は2記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記マフラー本体から突出するマフラーパイプを直線状に形成するとともに、車両の後方視で、前記マフラーパイプの後端部が前記ディフューザの内周縁の内側に位置する請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両の後部構造。
【請求項5】
前記バックパネルの下端部の車幅方向の端部を切り欠いて形成した切り欠き内に前記ディフューザの前端部を配置して、前記ディフューザの前端部を前記バックパネルよりも車両前方側に突出させてある請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両の後部構造。
【請求項6】
前記リヤバンパに形成した開口に前記ディフューザの後端部を挿入してある請求項1〜5のいずれか一つに記載の車両の後部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−254256(P2010−254256A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110072(P2009−110072)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】