説明

車両の棚下空間用照明装置

【課題】電球や蛍光灯管を光源とする場合に比べて、長寿命でメンテナンスの手間を省くことができ、消費電力が少なくて済み、発光時の発熱がない分だけ冷房負荷を軽減できる、車両の棚下空間用照明装置を提供する。
【解決手段】荷棚4の下面と車室の側壁1とで挟まれる隅部を棚下パネル19で覆って、下面側に投光口20が開口する照明区画Lを形成する。照明区画Lの内部に、前記投光口20を介して棚下空間へ向かって照明光を照射する光源18を配置する。光源18は、第1・第2のLEDユニット26・27と、調光レンズ28・29と、これらを収容するケース24等で構成する。以て、第1のLEDユニット26で棚下空間の側壁1および窓側の領域E1を照明し、第2のLEDユニット27で棚下空間の窓側座席付近の領域E2を照明する。LEDユニット26・27は、帯状の基板38に一群のLED39を配置して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両やバス等の車両に設けられる荷棚の下方空間を照明するための照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室の天井壁には、車室を照明するための主照明装置を有する。しかし、車室の側壁に設けた荷棚の下方空間(以下、棚下空間という)は、荷棚によって照明光が遮られるため充分な照度が得られ難い。とくに、荷棚に臨む窓の周囲壁と、窓側の座席付近が暗くなる。このような照度不足を補うために、荷棚の下面に照明器具を配置することは公知である(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、アルミニウム条材で形成した棚本体の下面に、スポットライト(電球)を配置している。特許文献2においては、一定間隔置きに配置される棚ブラケットと、棚ブラケットで支持される複数本の荷受棒とで荷棚を構成し、棚突端と棚下面とにそれぞれ蛍光灯管を配置したうえで、棚突端に固定した透光材製のモールと、モールに連続して棚下面を覆うカバーで、各蛍光灯管の外面を覆って、棚下空間をくまなく照明できるようにしている。蛍光灯管と対向するカバー壁には、照明光を散乱させるためのV字溝が形成されている。
【0004】
【特許文献1】実開平3−78672号公報(第8頁第9行、第2図)
【特許文献2】実開平5−80900号公報(段落番号0014〜0019、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1・2の照明装置によれば、主照明装置の照度不足を補って棚下空間を照明することができる。しかし、光源として電球や蛍光灯管を用いるので、照明装置全体の消費電力が大きい。電球や蛍光灯管が長寿命化されているとは言え、いずれランプ切れに陥るのを避けられず、その交換に手間や費用が掛かる。電球を光源とする場合には、点灯時の発熱を避けられず、その分だけ車室における冷房負荷が増加する不利もある。僅かではあるが、蛍光灯管においても同様の発熱がある。
【0006】
本発明の目的は、電球や蛍光灯管を光源とする場合に比べて消費電力が少なくて済み、電球や蛍光灯管に比べて長寿命でメンテナンスの手間を省くことができ、発光時の発熱がない分だけ冷房負荷を軽減できる車両の棚下空間用照明装置を提供することにある。本発明の目的は、荷棚に臨む窓の周囲壁と、窓側の座席付近とを、離れた位置にあるにもかかわらず等しく照明して、車室環境をより快適化することにある。本発明の目的は、必要に応じて照明光の照明範囲や照明の方向を種々に変更できるようにすることにある。本発明の目的は、使用者の好みや周囲の状況に応じて明るさを変更調整できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の棚下空間用照明装置においては、荷棚4の下面と車室の側壁1とで挟まれる隅部を棚下パネル19で覆って、下面に投光口20を備えた照明区画Lが形成されている。図1において照明区画Lの内部には、投光口20を介して棚下空間へ向かって照明光を照射する光源18が配置されており、この光源18は、棚下空間の側壁1および窓側の領域E1を照明する第1のLEDユニット26と、棚下空間の窓側座席付近の領域E2を照明する第2のLEDユニット27とを含んでいる。
【0008】
光源18は、第1・第2のLEDユニット26・27と、各LEDユニット26・27の発光面の側に配置された調光レンズ28・29と、これらの部材を収容するケース24とを含んでモジュール化する。
【0009】
第1・第2のLEDユニット26・27のそれぞれは、基板38に多数個のLED39を一定間隔置きに配置して構成し、LED39の発光部分の輪郭を不明確化する拡散板30を、基板38の長手方向に沿って配置する。
【0010】
投光口20は、照明光の透過を許す整光体47で塞いでおくことができる。
【0011】
図6に示すように、LEDユニット26・27を点滅制御する制御回路42と、制御回路42に照度信号を与えるスイッチ43とを備えていると、スイッチ43から発信される信号に基づき、制御回路42が点灯すべきLED39を選択して、LEDユニット26・27の点灯時の照度を複数段に変更調整することができる。
【0012】
また、本発明の別の棚下空間用照明装置においては、荷棚4の下面と車室の側壁1とで挟まれる隅部を棚下パネル19で覆って、下面に投光口20を備えた照明区画Lが形成されており、照明区画Lの内部には、図7に示すように、前記投光口20を介して棚下空間へ向かって照明光を照射する、少なくとも1個のLEDユニット26が配置されており、照明区画Lの投光口20に整光体47が配置されている。
【0013】
そこでは、照明区画Lの内部に、照明光を発光するLEDユニット26と、LEDユニット26から照射された照明光を投光口20を介して棚下空間へ向かって変向案内する鏡体52とが配置してある。
【0014】
図8に示す照明装置においては、LEDユニット26と鏡体52とのいずれか一方が、姿勢変更可能に支持されており、棚下パネル19および側壁1のいずれか一方に設けた調整機構で、LEDユニット26と鏡体52とのいずれかの姿勢を変更調整して、LEDユニット26の照明光の照明範囲、ないし照射方向を変更することができる。
【0015】
図9に示す照明装置では、荷棚4の下面に面状に発光する第2照明装置を備えている。この第2照明装置は、荷棚4の下面に配置される反射パネル63と、隙間Eを介して反射パネル63の下方に対向配置される拡散パネル64と、隙間Eへ向かって照明光を照射するLEDユニット80とを含む。反射パネル63は、LEDユニット80から照射された照明光を拡散パネル64側へ反射する反射層65を備えている。拡散パネル64は、LEDユニット80から照射された照明光、および反射層65で反射された照明光を、散乱し拡散させるための散乱面66を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の棚下空間用照明装置は、荷棚4の下隅に形成した照明区画Lの内部に光源18を配置し、光源18を第1・第2のLEDユニット26・27などで構成して、両LEDユニット26・27の照明光で棚下空間を照明するので、電球や蛍光灯管を光源とする従来のこの種の照明装置に比べて、光源18の消費電力が少なくて済み、光源18を長寿命化して、ランプ交換などのメンテナンスの手間を省くことができる。しかも、発光時の発熱がない分だけ冷房負荷を軽減でき、車両の棚下空間の照明に好適な照明装置が得られる。
【0017】
複数のLEDユニット26・27で光源18を構成し、第1のLEDユニット26で棚下空間の側壁1および窓側の領域E1を照明し、第2のLEDユニット27で棚下空間の窓側座席付近の領域E2を照明するので、光源18が荷棚4の下隅の照明区画Lに配置してあるにもかかわらず、側壁1および窓の周囲壁と窓側座席付近との離れた位置を等しく照明して、車室環境をより快適にできる。
【0018】
第1・第2のLEDユニット26・27、および調光レンズ28・29などをケース24に収容してモジュール化した光源18によれば、移送時や組付時の光源18の取り扱いを容易化できる。光源18を取り扱う際に、LED39や調光レンズ28・29が傷付くのをケース24で防護できるので、例えば組立作業時に光源18が不良品化するのをよく防止できる。各LEDユニット26・27に対応して設けられる調光レンズ28・29は、LED36の発光部の発光領域を収束して、棚下空間をより効果的に照明するために設けてある。
【0019】
基板38の長手方向に沿って拡散板30を配置して、基板38に設けた個々のLED39の発光部分の輪郭を拡散板30で不明確化すると、光源18を直視するときの照明光のまぶしさを解消できる。さらに、拡散板30介して光源18を見るとき、一群のLED39の発光部分が帯状に連続するので、光源18の長手方向の照度むらを解消できる利点もある。
【0020】
投光口20に配置した整光体47は、LEDユニット26・27から照射される照明光の一部を遮断し、あるいは照明光を散乱させるので、光源18を見るときのまぶしさを解消できるうえ、棚下空間を間接照明光と同様の柔らかな照明光で照明して、落着いた雰囲気の照明効果をかもし出せる。
【0021】
LEDユニット26・27を点滅制御する制御回路42、および制御回路42に照度信号を与えるスイッチ43を設け、スイッチ43からの信号に基づいて、制御回路42が点灯すべきLED39を選択できるようにした照明装置によれば、必要に応じてスイッチ43を操作することにより、LEDユニット26・27の点灯時の照度を複数段に変更調整できるので、乗客の好みや、周囲の状況に応じて棚下空間の明るさを変更して、荷棚4の下方により快適な照明空間を形成できる。
【0022】
本発明の別の棚下空間用照明装置においては、下面側が開口する照明区画Lの内部に、投光口20を介して棚下空間へ向かって照明光を照射するLEDユニット26を配置し、その照明光を投光口20に配置した整光体47で調光して棚下空間を照明するので、電球や蛍光灯管を光源とする従来のこの種の照明装置に比べて、照明装置の消費電力が少なくて済む。光源を長寿命化して、ランプ交換などのメンテナンスの手間を省くことができる。発光時の発熱がない分だけ冷房負荷を軽減でき、全体として車両の棚下空間の照明に好適な照明装置が得られる。
【0023】
LEDユニット26から照射される照明光を棚下空間の最も暗い個所へ向かって照射して、側壁1に沿う窓下端から床面までの空間を確実に照明できるうえ、LEDユニット26による照明光の照射方向が概ね下向きになるので、座席に座った乗客に照明光が直接照射されるのを防止できる。投光口20に配置した整光体47と棚下パネル19とは、両者が協同してLEDユニット26を保護する遮蔽部材としての機能を発揮する。
【0024】
照明区画Lの内部にLEDユニット26と、照明光を棚下空間へ向かって変向案内する鏡体52とを配置した照明装置によれば、照明区画Lの内部においてLEDユニット26を自由に配置できるので、照明装置の設計の自由度が高く、車両の構体や荷棚4の構造に応じて照明装置を構成できる利点がある。照明光を鏡体52で棚下空間へ向かって変向案内するので、鏡体52の取付姿勢を調整することで、全ての座席における照明範囲や照明方向を均一化できる。
【0025】
LEDユニット26と鏡体52とのいずれか一方、例えば鏡体52を姿勢変更可能に支持したうえで、調整機構で鏡体52の姿勢を変更調整できるようにすると、LEDユニット26の照明光の照明範囲や照射方向を必要に応じて種種に変更できるので、棚下空間の照明形態をさらに好適化できるし、個々の座席ごとに調整機構を調整できるようにしておけば、乗客の体格や好み、あるいは周囲の状況に応じて照明光を局部的に調整できる。
【0026】
上記の照明装置とは別に、荷棚4の下面に面状に発光する第2照明装置を設けてあると、両照明装置のいずれか一方を選択して、棚下空間を周囲の状況や好みに合わせて照明できるのはもちろんのこと、必要に応じて両照明装置を同時に発光させて、棚下空間をさらに明るい状態で照明することができるので、照明の範囲や明るさの度合いを多様に変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施例1)図1ないし図5は本発明に係る棚下空間用の照明装置の実施例を示す。図2および図3において、符号1は車室の側壁、2は窓、3は座席であり、窓2の上部に沿って荷棚4が配置してある。
【0028】
荷棚4は、側壁1の前後方向に沿って一定間隔置きに固定される棚ブラケット5と、隣接する棚ブラケット5・5の上下面に配置される棚板6および棚下板7と、荷棚4の突端を覆うモール8などで構成されている。符号9は、棚板6および棚下板7の継目を覆う継目カバー、符号10は化粧パネルである。
【0029】
図4において、棚ブラケット5は、側壁1の内部の構体にナット13で締結固定される締結座14と、締結座14の下部に連続して横向きに突出する棚受腕15とを一体に備えたL字状のダイキャスト成形品からなり、概ね座席の前後間隔に一致するよう配置してある。モール8はコーナー部分が丸められた断面コ字状のアルミニウム条材からなり、棚受腕15に締結固定する。
【0030】
車室内の照明は、天井壁に設けた図外の主照明装置で行うが、その照明光の一部が荷棚4によって遮られるため、棚下空間は他の車室空間に比べて照度が低下する。こうした荷棚に臨む窓の周囲壁や、窓側座席等の棚下空間の照度低下を補うために、荷棚4の下面と側壁1とで挟まれる隅部には、本発明に係る照明装置が配置されている。
【0031】
その照明装置は、図1および図4に示すように、荷棚4の下面基部に照明区画Lを形成し、その内部に照明光を照射する光源18を配置してなる。照明区画Lは、荷棚4の下面と側壁1とで挟まれる隅部を棚下パネル19で覆って形成してあり、その下面には投光口20が開口している。
【0032】
棚下パネル19は内凹み状に湾曲するプラスチック板材からなり、その上縁を棚ブラケット5の基端寄り下面にビス21で締結し、パネル下縁を側壁1に固定したブラケット(図示せず)にビスで締結固定する。
【0033】
図5において光源18は、断面コ字状のアルミニウム条材からなるケース24と、ケース24の内部に収容されるベース枠25と、第1のLEDユニット26と、第2のLEDユニット27と、調光レンズ28・29と、ケース24の開口を塞ぐ拡散板30と、拡散板30を固定保持する一対の押さえ枠31などで構成する。
【0034】
ベース枠25はプラスチック条材からなり、その板面に第1のLEDユニット26を装着するための第1装着面33と、第2のLEDユニット27を装着するための傾斜する第2装着面34とを備えている。光源18を構成する部材は、全てケース24に組み込まれてモジュール化される。このようにモジュール化された光源18は、図1に示すように、ケース24をハット形の取付枠35にビス36で固定することにより、棚ブラケット5で支持される。取付枠35は、棚ブラケット5の下面基端にビスで締結固定する。
【0035】
第1のLEDユニット26は、基板38の片面に、多数個のLED39を一定間隔置きに配置して構成してある。第2のLEDユニット27も同様に構成する。LED39は、高輝度LEDに比べて単価が安く発熱量が少ない、表面実装用の汎用LEDチップからなり、その使用個数を多くすることで、光源18として必要な照度を確保している。LED39の発光色は電球の発光色とほぼ同じである。
【0036】
先に説明したように、棚下空間では、照明区画Lの真下に位置する側壁1および窓側部分と、窓側座席の座面付近において照度が不足し暗い。この実施例では、主に側壁および窓側部分を第1のLEDユニット26で照明し、主に窓側座席の座面付近を第2のLEDユニット27で照明することにより、離れた位置にあるこれらの部分を等しく照明する。
【0037】
そのために、図1に示すように、第1のLEDユニット26の照射中心軸を、垂直線から僅かに傾けて(約5度)側壁1側へ指向させている。また、第2のLEDユニット27は、第1のLEDユニット26の傾き方向とは逆向きに傾斜させて(約30度)、その照射中心軸を窓側座席に指向させている。図1および図2に第1のLEDユニット26で照明される領域を符号E1で、第2のLEDユニット27で照明される領域を符号E2で示した。
【0038】
LED36を単体で使用するときの、発光部の発光領域の角度は120度前後あるが、この発光領域を収束してより効果的な照明を行うために、各LEDユニット26・27の発光面に調光レンズ28・29が密着固定されている。
【0039】
第1のLEDユニット26用の調光レンズ28は、断面半円状のプラスチックレンズからなり、発光領域の角度を約70度まで絞り込んで、側壁1および窓側部分を比較的広範に照明する。第2のLEDユニット27用の調光レンズ29は、トンネル断面状のプラスチックレンズからなり、発光領域の角度を約40度まで絞り込んで、窓側座席の座面付近を照明する。図1に示すように各調光レンズ28・29は、基板38に接着固定する。
【0040】
拡散板30は、各LEDユニット26、27と対向する板面に、断面半円状の拡散レンズ41を長手方向へ連続形成した透明なアクリル樹脂成形品からなり、個々のLED36から照射される照明光を一群の拡散レンズ41で拡散させることにより、まぶしさを解消するとともに、各LED36の発光部分の輪郭を不明確化して、発光部分が帯状に連続して見えるようにした。押さえ枠31は透明なアクリル樹脂成形品からなり、照明光を透過できる。
【0041】
(実施例2) 常態におけるLEDユニット26・27は、全てのLED39を点灯した状態で照明光を照射するが、必要に応じて点灯するLED39の数や範囲を調整変更することができる。
【0042】
具体的には、図6に示すように、LEDユニット26・27を点滅制御する制御回路42と、制御回路42に照度信号を与えるスイッチ43とを設けておき、スイッチ43から発信される信号に基づき、制御回路42が点灯すべきLED39を選択して、LEDユニット26・27の点灯時の照度を複数段に変更調整できるようにする。例えば、スイッチ43から1回目のオン信号が発信されたら全てのLED39を点灯させ、2回目のオン信号が発信されたら半数のLED39を点灯できるに制御する。加えて、LEDユニット26・27の照射光量を、前後に隣接する各座席ごとに調整できるようにすると、乗客の好みや状況に応じて棚下空間の明るさを部分的に変更できる。
【0043】
(実施例3) 図7は本発明に係る照明装置の別の実施例3を示す。そこでは、1個のLEDユニット26をブラケット45に装着して棚下空間を照明するようにした。ブラケット45は、側壁1にビス46で締結されるベース壁45aと、ベース壁45aの上端に連続して横向きに突設される上壁45bと、上壁45bから斜下向きに突設される腕壁45cとを一体に備えており、上壁45bの下面にLEDユニット26を装着固定し、腕壁45cの突端に棚下パネル19をビス50で締結する。
【0044】
LEDユニット26から照射される照明光のまぶしさを軽減するために、照明区画Lの投光口20に、ルーバー(整光体)47を照明光の光路と交差する状態で配置する。ルーバー47は、前後方向に長いルーバー枠48と、ルーバー枠48の内面に一定間隔置きに設けた一群のルーバー板49とからなる。ルーバー枠48の外辺部をブラケット45の下端に設けた爪片に係合し、枠内辺部を棚下パネル19とともにビス50で腕壁45cに締結することにより、ルーバー47をLEDユニット26に対して位置決めした状態で確実に固定できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同様に扱う。
【0045】
(実施例4) 図8は本発明に係る照明装置の別の実施例4を示す。そこでは、照明区画Lの内部に、照明光を発光するLEDユニット26と、LEDユニット26から照射された照明光を棚下空間へ向かって変向案内する鏡体52とを配置し、投光口20に光を散乱させる整光体47を配置した。
【0046】
LEDユニット26を支持するブラケット45は、上下一対の締結壁45dと、斜めに傾く取付壁45eとを備えている。取付壁45eに装着したLEDユニット26の光軸中心は、側壁1側から車室中央へ向かって斜め上向きになるが、照射光を鏡体52で変向案内することにより棚下空間を照明できる。
【0047】
鏡体52は、樹脂鏡53と、樹脂鏡53を支持する鏡枠54とからなる。鏡枠54の上端をヒンジ金具55で支持することにより、鏡体52は上下に揺動変位可能に支持する。ヒンジ金具55の一方のヒンジ板は、ビス46でブラケット45と共締め固定してある。鏡体52の傾斜姿勢を変更して、照明光の照明範囲ないし照射方向を変更するために、鏡枠54と棚下パネル19との間に調整機構を設けてある。
【0048】
この調整機構は、棚下パネル19に沿って上下スライドできる操作ノブ56および操作片57と、鏡枠54の揺動先端の上面に突設した受動片58などで構成する。受動片58の突端寄りには受動ピン59が固定してあり、この受動ピン59と係合する長穴状の操作溝57aが操作片57に設けてある。
【0049】
操作ノブ56を上下にスライド操作することにより、鏡体52の傾斜姿勢を変化させることができ、この姿勢変化によって照明光の照射方向を変更し、照明範囲を変えることができる。例えば、図8に実線で示す状態から、操作ノブ56を上向きにスライド操作すると、鏡体52はヒンジ軸まわりに反時計回転方向へ揺動して、想像線で示すように緩やかな傾斜姿勢になる。その結果、照明光の照射中心は側壁1の側から車室中央側へ移動し、照明範囲が同方向へ移動する。
【0050】
投光口20に配置した整光体47は、片面に微小凹凸が形成してあるプラスチック製の透光板60と、透光板60を支持する透光枠61とからなり、LEDユニット26から照射された照明光を透光板60で散乱し、拡散させることによりまぶしさを解消し、棚下空間を柔らかな照明光で照明できるようにしている。透光板60は、透明なプラスチック板材の片面に和紙を貼り付けて形成することができる。
【0051】
(実施例5) 図9は本発明に係る照明装置のさらに別の実施例5を示す。そこでは実施例3で説明した照明装置とは別に、荷棚4の下面に面状に発光する第2照明装置を付加した。第2照明装置は、棚受腕15の下面に配置される反射パネル63と、小さな隙間Eを介して反射パネル63の下方に対向配置される拡散パネル64と、前記隙間Eの照明区画L側の端部に配置されて、照明光を照射するLEDユニット80と、これら三者を荷棚4に固定するための装着構造などで構成する。
【0052】
反射パネル63は、プラスチック板材をベースにして、その下面側に反射層65を形成した一種の鏡からなり、LEDユニット80から照射された照明光を拡散パネル64側へ反射し、さらに、照明光を拡散パネル64のパネル面に広く行き渡らせる。反射層65は、ベース材の下面側にメッキ層、あるいは蒸着層を積層することにより形成できる。反射層65は透明材からなるベース材の上面側に形成してあってもよい。
【0053】
拡散パネル64は、透明もしくは半透明のプラスチック材、あるいは乳白半透明のプラスチック板材などからなり、その上下面のいずれかに、LEDユニット80から照射された照明光、あるいは反射層65で反射された照明光を、散乱し拡散させるための散乱面66を備えている。散乱面66は、プラスチック板材の表面に形成した微小凹凸、例えば多角錐状、あるいは半球状等の微小凹凸からなる。この実施例では、拡散パネル64の上面に散乱面66を形成して、散乱面66への塵埃の付着を防止できるようにした。このように、照明光を散乱面66で散乱し拡散させることにより、棚下空間を面状に拡がる柔らかな照明光で照明することができる。
【0054】
反射パネル63、拡散パネル64、LEDユニット80の三者は、棚受腕15の基端下面にボルト67で固定される基端ブラケット68と、棚受腕15にボルト69で固定される先端部ブラケット70などで固定する。基端ブラケット68は、逆L字状の本体部72と、本体部72の下端に連続する押さえ枠73とを一体に備えた条材からなり、押さえ枠73で拡散パネル64の下面を押さえ支持することにより、反射パネル63と拡散パネル64を固定する。両パネル63・64の間には、隙間Eを確保するためのスペーサー74がLED39を避けて介装してある。本体部72の縦壁を利用して、その隙間E側の壁面にLEDユニット80が配置固定される。
【0055】
先端部ブラケット70は、棚受腕15の突端面に接合固定され断面コ状の金具からなり、その下端に、先端側のスペーサー75を係合するための受爪76が形成してある。スペーサー75は断面鈎形の条材からなり、モール8で拡散パネル64とともに保持固定される。棚板6と、その上面を覆うモール8の上壁とは、先端部ブラケット70の上壁で受け止められて、上壁にねじ込まれるボルト77で共締め固定される。
【0056】
以上のように、照明区画Lに照明装置を配置したうえで、面状に発光する第2照明装置を荷棚4に付加すると、両照明装置のいずれか一方を選択して、棚下空間を周囲の状況や好みに合わせて照明できるうえ、必要があれば両照明装置を同時に発光させて、棚下空間をさらに明るい状態で照明することができる。なお、この実施例におけるLEDユニット80は、基板38に2列のLED39群を設けて、照度を向上している。
【0057】
上記以外に、実施例1の照明装置に、実施例3や実施例4で説明した整光体47を付加することができる。本発明の照明装置は、荷棚4が主照明装置の照明光を遮る場合にとくに有効ではあるが、主照明装置の照明光の一部が荷棚4を透過して、棚下空間に到達する場合にも適用できる。LEDユニット26の照明光を鏡体52で反射する形態の照明装置においては、投光口20を照明区画Lの必要個所に形成することができ、実施例で説明したように照明区画Lの下面側に開口する必要はない。必要があれば、複数箇所に設けた投光口20から照明光を照射することができる。鏡体52は凹面鏡で形成することができる。鏡体52に換えて、LEDユニット26・27、またはそのブラケット45の姿勢を変更して、照射領域と照射方向とを変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】棚下空間用の照明装置を示す縦断正面図
【図2】車両内部の荷棚と座席の関係構造を示す内部正面図
【図3】車両内部の荷棚と座席の関係構造を示す内部側面図
【図4】荷棚と照明装置の関係構造を示す縦断正面図
【図5】光源の分解斜視図
【図6】実施例2に係る光源を示す縦断面図
【図7】実施例3に係る照明装置を示す縦断正面図
【図8】実施例4に係る照明装置を示す縦断正面図
【図9】実施例5に係る照明装置を示す縦断正面図
【符号の説明】
【0059】
1 側壁
4 荷棚
18 光源
19 棚下パネル
20 投光口
26・27 LEDユニット
L 照明区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷棚(4)の下面と車室の側壁(1)とで挟まれる隅部を棚下パネル(19)で覆って、下面に投光口(20)を備えた照明区画(L)が形成されており、
照明区画(L)の内部に、投光口(20)を介して棚下空間へ向かって照明光を照射する光源(18)が配置されており、
光源(18)が、棚下空間の側壁(1)および窓側の領域(E1)を照明する第1のLEDユニット(26)と、棚下空間の窓側座席付近の領域(E2)を照明する第2のLEDユニット(27)とを含んでいることを特徴とする車両の棚下空間用照明装置。
【請求項2】
光源18が、第1・第2のLEDユニット(26・27)と、各LEDユニット(26・27)の発光面の側に配置された調光レンズ(28・29)と、これらの部材を収容するケース(24)とを含んでモジュール化してある請求項1記載の車両の棚下空間用照明装置。
【請求項3】
第1・第2のLEDユニット(26・27)のそれぞれが、基板(38)に多数個のLED(39)を一定間隔置きに配置して構成されており、
LED(39)の発光部分の輪郭を不明確化する拡散板(30)が、基板(38)の長手方向に沿って配置してある請求項1または2記載の車両の棚下空間用照明装置。
【請求項4】
投光口(20)が、照明光の透過を許す整光体(47)で塞いである請求項1記載の車両の棚下空間用照明装置。
【請求項5】
LEDユニット(26・27)を点滅制御する制御回路(42)と、制御回路(42)に照度信号を与えるスイッチ(43)とを備えており、
スイッチ(43)から発信される信号に基づき、制御回路(42)が点灯すべきLED(39)を選択して、LEDユニット(26・27)の点灯時の照度を複数段に変更調整できるようにした請求項1記載の車両の棚下空間用照明装置。
【請求項6】
荷棚(4)の下面と車室の側壁(1)とで挟まれる隅部を棚下パネル(19)で覆って、下面に投光口(20)を備えた照明区画(L)が形成されており、
照明区画(L)の内部に、前記投光口(20)を介して棚下空間へ向かって照明光を照射する、少なくとも1個のLEDユニット(26)が配置されており、
照明区画(L)の投光口(20)に、整光体(47)が配されていることを特徴とする車両の棚下空間用照明装置。
【請求項7】
照明区画(L)の内部に、照明光を発光するLEDユニット(26)と、LEDユニット(26)から照射された照明光を投光口(20)を介して棚下空間へ向かって変向案内する鏡体52とが配置してある請求項6記載の車両の棚下空間用照明装置。
【請求項8】
LEDユニット(26)と鏡体(52)とのいずれか一方が、姿勢変更可能に支持されており、
棚下パネル(19)および側壁(1)のいずれか一方に設けた調整機構で、LEDユニット(26)と鏡体(52)とのいずれかの姿勢を変更調整して、LEDユニット26の照明光の照明範囲、ないし照射方向を変更できるようにした請求項7記載の車両の棚下空間用照明装置。
【請求項9】
荷棚(4)の下面に面状に発光する第2照明装置を備えており、
第2照明装置は、荷棚(4)の下面に配置される反射パネル(63)と、隙間(E)を介して反射パネル(63)の下方に対向配置される拡散パネル(64)と、隙間(E)へ向かって照明光を照射するLEDユニット(80)とを含み、
反射パネル(63)は、LEDユニット(80)から照射された照明光を拡散パネル(64)側へ反射する反射層(65)を備えており、
拡散パネル(64)は、LEDユニット(80)から照射された照明光、および反射層(65)で反射された照明光を、散乱し拡散させるための散乱面(66)を備えている請求項6記載の車両の棚下空間用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−103631(P2006−103631A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296566(P2004−296566)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000181572)篠原電機株式会社 (18)
【Fターム(参考)】