説明

車両の漏電検出装置

【課題】漏電箇所の特定が可能な車両の漏電検出装置を提供する。
【解決手段】リレーシステム2を含む正極母線17と負極母線18で直流電源1と交流電動機5,6の駆動回路3,4を接続し、両母線間には平滑コンデンサ7が接続された車両の漏電検出装置を、発振回路21と抵抗22と結合コンデンサ23の直列回路と抵抗22と結合コンデンサ23の接続点の電圧検出回路25とを備え、結合コンデンサ23が負極母線18に接続する漏電検出回路20と、平滑コンデンサ7の両端電圧測定用の電圧計15と、電圧検出回路25、電圧計15、発振回路21及びリレーシステム2に接続する制御装置16とから構成し、制御装置16によって設定された発振回路21の発振周波数及びリレーシステム2のリレースイッチの接続状態の所定の動作モードに応じた電圧検出回路25と電圧計15の電圧の検出値から、車両における漏電を検出する車両の漏電検出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の漏電検出装置に関するものであり、電気自動車及びハイブリッド自動車に搭載された直流電源である高電圧バッテリ或いは高電圧バッテリに駆動される交流電動機の漏電を検出することができる車両の漏電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車及びハイブリッド自動車には、直流電源として高電圧バッテリを備えている。そして、このような車両には、インバータのような電力変換回路を用いて高電圧バッテリの直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力で走行用の交流電動機やその他の交流電動機、例えば空調機の電動機等の負荷を駆動する電力供給システムが搭載されている。電気自動車及びハイブリッド自動車に搭載された高電圧バッテリは高電圧且つ大容量であるため、電気回路の何れかで漏電が生じると、車両の整備の際に作業員が感電するなどの問題が生じる虞がある。
【0003】
このような電気自動車及びハイブリッド自動車に搭載された高電圧バッテリの漏電検出を行う技術が特許文献1に開示されている。特許文献1では、直流バッテリと、複数のスイッチング素子をオンオフしてバッテリの直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を交流電動機に出力する電力変換回路と、バッテリと電力変換回路を接続する正極電線及び負極電線と、正極電線又は負極電線の上に設けられたコンタクタ(オンオフスイッチ)を備えるシステムの漏電検出において、起動時若しくは停止時に電力変換回路のスイッチング素子を利用して漏電を検出することにより、直流高電圧回路と交流高電圧回路の両方で漏電検出を正しく行うようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007/007749(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の起動時に漏電検出を行う場合は、漏電検出に用いる発振周波数(検出周波数)をキャリア周波数やスイッチング周波数を避けるために低くする処理が必要である上に、漏電検出を行ってから起動するため、乗員がキーを回してイグニッションをオンしてから起動するまでに時間がかかってしまい、起動時に車両の乗員が違和感を覚えること無く漏電検出を行うことが困難であるという課題があった。検出周波数を変更する理由は、検出周波数がキャリア周波数やスイッチング周波数と同じ場合、スイッチングによるノイズと発振回路から出力される検出信号との切り分けができないからである。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、電力変換回路が高電圧バッテリと接続されていない状態で漏電検出を行うことにより、電力変換回路のスイッチング素子のスイッチング周波数やキャリア周波数の制約を受けることなく、漏電検出を行うことができる車両の漏電検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、リレーシステム(2)を含む正極母線(17)と負極母線(18)で直流電源(1)と少なくとも1つの交流電動機(5,6)の駆動回路(3,4)を接続し、両母線間には平滑コンデンサ(7)が接続された車両の漏電検出装置であって、発振回路(21)と抵抗(22)とカプリングコンデンサ(23)を直列に接続した回路と、前記抵抗(22)と前記カプリングコンデンサ(23)の接続点の電圧を検出する電圧検出回路(25)とを備え、前記カプリングコンデンサ(23)が前記負極母線(18)に接続する漏電検出回路(20)と、前記平滑コンデンサ(7)の両端電圧を測定する電圧計(15)と、前記電圧検出回路(25)、前記電圧計(15)、前記発振回路(21)及び前記リレーシステム(2)に接続する制御装置(16)を備え、前記制御装置(16)は、前記発振回路(21)の発振周波数及び前記リレーシステム(2)のリレースイッチの接続状態を所定の動作モードに設定し、該動作モードにおける前記電圧検出回路(25)と前記電圧計(15)からの電圧の検出値に基いて前記車両における漏電を検出することを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0008】
これにより、リレーシステムのリレースイッチの接続状態を所定の動作モードに設定することにより、車両における漏電を検出することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記カプリングコンデンサ(23)は、前記リレーシステム(2)と前記交流電動機の駆動回路(3,4)の間の前記負極母線(18)に接続することを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0010】
これにより、漏電検出回路がリレーシステムよりも電動機側に接続されるため、リレーシステムをオンせず、高電圧バッテリに電動機が接続されない状態においても電動機側の漏電を検出することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記カプリングコンデンサ(23)は、切換スイッチ(51,52)により、前記リレーシステム(2)と前記駆動回路(3,4)の間の前記負極母線(18)と、前記リレーシステム(2)と前記直流電源(1)の間の前記負極母線(18)の何れかに接続されることを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0012】
これにより、リレーシステムのリレースイッチの接続状態を所定の動作モードに設定することにより、電動機側の漏電と直流電源側の漏電を分けて検出することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記漏電検出回路が2組設けられており、一方の漏電検出回路(20)のカプリングコンデンサ(23)は、前記リレーシステム(2)と前記交流電動機の駆動回路(3,4)の間の前記負極母線(18)に接続され、他方の漏電検出回路(60)のカプリングコンデンサ(63)は、前記リレーシステム(2)と前記直流電源(1)の間の前記負極母線(18)に接続されことを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0014】
これにより、通常動作時に両者が検出した電圧を比較することにより、検出器自体の故障検出を行うことができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載の発明において、前記漏電検出回路(20)に、前記発振回路(21)のノイズ成分を抽出して除去するフィルタ回路(24、34)が備えられていることを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0016】
これにより、発振回路のノイズ成分が除去されるので、正確な漏電検出を行うことができる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項2の発明において、前記漏電検出回路(20)に、前記抵抗(22)とカプリングコンデンサ(23)に少なくとも1組の抵抗(32)とカプリングコンデンサ(33)を直列に接続した回路が並列に接続されており、前記制御回路(16)は、切換スイッチ(41,42)によって前記複数の抵抗(22、32)の何れかを前記発振回路(21)に接続することを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0018】
これにより、発振器の発振周波数の変更などによる検出波形の変化に対応できる。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1から6の何れか1項に記載の発明において、前記制御回路(16)は、前記リレーシステム(2)にあるリレースイッチ(11〜13)が全てオフ状態の第1の動作モード時に漏電状態を検出した場合は、前記交流電動機(5,6)側に漏電が発生していると判定し、前記第1の動作モード時に漏電状態を検出していない状態で、前記リレーシステム(2)が前記負極母線(18)を通じて前記直流電源(1)を前記駆動回路(3,4)に接続している第2の動作モード時に漏電状態を検出した場合は、前記直流電源(1)側に漏電が発生していると判定することを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0020】
これにより、第1の動作モード時と第2の動作モード時とで、漏電が交流電動機側で発生しているのか、直流電源側で発生しているのかを区別できる。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1から7の何れか1項に記載の発明において、前記制御回路(16)は、前記電圧検出回路(25)からの電圧の検出値が、その時の動作モードにおける漏電検出閾値を超えている時に漏電状態と判定することを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0022】
これにより、漏電検出時の動作モードにおける漏電検出閾値によって漏電状態を判定しているので、漏電判定が正確に行える。
【0023】
請求項9の発明は、請求項1から8の何れか1項に記載の発明において、前記制御回路(16)は、前記電圧計(15)からの電圧の検出値が、その時の動作モードにおける前記平滑コンデンサ(7)の電圧範囲にない時に、前記リレーシステム(2)のリレースイッチ(11〜13)の何れかに故障があると判定することを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0024】
これにより、漏電判定に加えてリレーシステムのリレースイッチの何れかの故障を判定することができる。
【0025】
請求項10の発明は、請求項7から9の何れか1項に記載の発明において、前記制御回路(16)は、前記第1の動作モード時に行う漏電検出と、前記第2の動作モード時に行う漏電検出とでは、前記発振回路(21)の発振周波数を変更することを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0026】
漏電検出時に発振器の発振周波数を変更することにより、電力変換器のスイッチング周波数やキャリア周波数の制約を受けることなく漏電検出を実現することができる。
【0027】
請求項11の発明は、請求項10に記載の発明において、前記制御回路(16)は、前記第1の動作モード時には前記発振回路(21)の発振周波数を数kHzに設定し、前記第2の動作モード時には前記発振回路(21)の発振周波数を、前記交流電動機の駆動回路(3,4)の電力変換器のキャリア周波数を外した数Hzに設定することを特徴とする車両の漏電検出装置である。
【0028】
これにより、電力変換器のスイッチング周波数やキャリア周波数の制約を受けることなく漏電検出を実現することができる。
【0029】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1の実施例の車両の漏電検出装置の構成を示す全体構成図である。
【図2】第1の実施例の車両の漏電検出装置による、リレーシステムのスイッチング動作を利用して漏電箇所を特定する実施例の特定手順を説明するフローチャートである。
【図3】第1の実施例の車両の漏電検出装置による、漏電検出とリレーシステムの故障検出の実施例の検出手順を説明するフローチャートである。
【図4】本発明に係る第2の実施例の車両の漏電検出装置の構成を示す全体構成図である。
【図5】第2の実施例の車両の漏電検出装置による、漏電検出回路にある発振回路の発振周波数を変更して漏電の有無を検出する手順を説明するフローチャートである。
【図6】本発明に係る第3の実施例の車両の漏電検出装置の構成を示す全体構成図である。
【図7】第3の実施例の車両の漏電検出装置による、漏電検出回路の接続点を変更して漏電の有無を検出する手順を説明するフローチャートである。
【図8】本発明に係る第4の実施例の車両の漏電検出装置の構成を示す全体構成図である。
【図9】第4の実施例の車両の漏電検出装置による、2つの漏電検出回路により接続点を変更して漏電の有無を検出する手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。各実施態様については、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施例の車両の漏電検出装置101の回路構成を示す全体構成図である。車両は電気自動車或いはハイブリッド自動車のような交流電動機を備えた車両が対象である。このような車両における交流電動機は、車両に搭載された直流電源(以後高電圧バッテリと記す)1の直流電圧を駆動回路によって交流に変換して駆動される。高電圧バッテリ1は外部の商用電源を用いて充電することが可能な車両もある。
【0033】
第1の実施例には、交流電動機として、第1の電動機5と第2の電動機6の2つの電動機がある。第1の電動機5は、例えば車両の走行用電動機であり、第2の電動機6は、例えば車両に搭載された空調装置のコンプレッサ用の電動機である。第1の電動機5は第1の電動機の駆動回路3(以後単に駆動回路3と記す)によって駆動され、第2の電動機6は第2の電動機の駆動回路4(以後単に駆動回路4と記す)によって駆動される。駆動回路3と駆動回路4は、正極母線17と負極母線18を通じて高電圧バッテリ1に接続されている。
【0034】
正極母線17と負極母線18の間にはフィルタ用コンデンサ7(以後平滑コンデンサ7と記す)が設けられており、高電圧バッテリ1側の正極母線17と負極母線18には、回路をオンオフするリレーシステム2が設けられている。平滑コンデンサ7にはその両端電圧を検出する電圧計15が取り付けられている。リレーシステム2には、並列接続されて正極母線17側に設けられた2つのリレースイッチ11,12と、負極母線18側に設けられたリレースイッチ13がある。リレースイッチ12には突入電流抑制用の抵抗14が直列に接続されている。また、駆動回路4は、コイル8Lとコンデンサ8Kを備えるLCフィルタ8を介して、リレーシステム2と駆動回路3の間にある正極母線17と負極母線18に接続されている。
【0035】
第1の電動機5は三相交流電動機であり、その駆動回路3は、8つのスイッチング素子3a〜3hとコンデンサ3L及びコイル3Lを備えた三相インバータ回路である。駆動回路3は、第1の電動機5の駆動、高電圧バッテリ1の充電及び高電圧バッテリ1の電圧の昇圧を行う。第2の電動機6も三相交流電動機であり、その駆動回路4は6つのスイッチング素子4a〜4fを備えており、第2の電動機6の駆動のみを行う。3相交流電動機を駆動する駆動回路3と駆動回路4の動作は公知であるので、これ以上の説明は省略する。また、図1には第1の電動機5に絶縁地絡抵抗10、第2の電動機6に絶縁地絡抵抗9が設けられているが、これらは抵抗器として実際に取り付けられているものではない。
【0036】
駆動回路3にあるスイッチング素子3a〜3hのスイッチング動作、駆動回路4にあるスイッチング素子4a〜4fのスイッチング動作、及びリレーシステム2にあるリレースイッチ11〜13のオンオフ動作は、電源制御装置16によって行われる。電源制御装置16は、各リレースイッチ11〜13のオンオフタイミングと電圧計15の電圧検出出力に基いてリレースイッチ11〜13の故障判定を行う部分と、各リレースイッチ11〜13をオンオフする制御部を持つ。また、正極母線17と負極母線18の間に取り付けられた電圧計15で検出された平滑コンデンサ7の両端電圧は、電源制御装置16に入力される。
【0037】
第1の実施例では、以上のように構成された回路に漏電検出回路20を接続している。漏電検出回路20は、図示しない低電圧バッテリを内蔵する発振回路21、発振回路21の信号出力側に直列に接続された検出抵抗22とコンデンサ23、検出抵抗22とコンデンサ23の結合点に接続されたフィルタ回路24、及びフィルタ回路24の出力に接続された電圧検出回路(図面には単に検出回路と記載)25を備えている。発振回路21は、低電圧バッテリがオンされた時に発振動作を行う。コンデンサ23は、正極母線17と負極母線18を備えた主回路と電圧検出回路25とを絶縁するためのカプリングコンデンサ(結合コンデンサ)であり、カプリングコンデンサ8の検出抵抗22と反対側の端子は、リレースイッチ13と駆動回路3の間の負極母線18に接続されている。また、フィルタ回路24はノイズを除去するためのものであり、ノイズが除去された電圧が電圧検出回路25によって検出される。電圧検出回路25が検出した電圧値は電源制御装置16に入力される。
【0038】
ここで、第1の実施例の漏電検出回路20の漏電検出動作を図2に示すフローチャートを用いて説明する。図2に示す手順では、漏電検出回路20によって、リレーシステム2のスイッチング状態によって、漏電箇所をある程度特定することができる。この漏電検出動作のタイミングは特に特定されるものではない。ステップ201ではまず、リレースイッチ11〜13を全てオフしてリレーシステム2をオフする。このとき、発振回路21の低電圧バッテリはオンされており、発振回路21は交流の矩形波パルスを出力している。矩形波パルスの周波数は特に特定されるものではないが、例えば、数kHzである。この矩形波パルスは発振回路21の出力側に接続された検出対抗22、コンデンサ23を通り、第1の電動機5の地絡抵抗10と第2の電動機6の地絡抵抗9に流れる。この結果、検出抵抗22と地絡抵抗9,10の並列抵抗で分圧された電圧が検出抵抗22とフィルタ回路24の接続点に現れるので、この電圧が電圧検出回路25で検出される。
【0039】
第1の電動機5と第2の電動機6の何れかに漏電が発生した時は、地絡抵抗9,10の合成抵抗の値が小さくなり、検出抵抗22とフィルタ回路24の接続点に現れる電圧が低くなる。そこで、ステップ202では漏電検出回路20の検出電圧(電圧検出回路25によって検出された電圧)が、予め定められている漏電検出閾値より大きいか否かを比較する。漏電検出閾値の値は、第1の電動機5と第2の電動機6の何れにも漏電が発生していない時に、発振回路21からの交流の矩形波パルスによって検出抵抗22とフィルタ回路24の接続点に現れる電圧値よりも多少低い値に定めれば良い。
【0040】
ステップ202において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値以下であると判定した場合(NO)は、第1の電動機5と第2の電動機6の何れかに漏電が発生しているのでステップ204に進み、電動機側に漏電ありの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。逆に、ステップ202において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値より大きいと判定した場合(YES)は、第1の電動機5と第2の電動機6の何れにも漏電が発生していないのでステップ203に進み、リレースイッチ13をオンする。
【0041】
ステップ203でリレースイッチ13をオンした後はステップ205に進み、再び漏電検出回路20の検出電圧が、予め定められている漏電検出閾値より大きいか否かを比較する。リレースイッチ13がオンしても、高電圧バッテリ1側に漏電が無ければ検出抵抗22とフィルタ回路24の接続点に現れる電圧は、リレースイッチ13をオンする前と変わりはないが、高電圧バッテリ1側に漏電がある場合は、検出抵抗22とフィルタ回路24の接続点に現れる電圧はリレースイッチ13をオンする前よりも低下する。
【0042】
そこで、ステップ205において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値以下であると判定した場合(NO)は、高電圧バッテリ1側に漏電が発生しているのでステップ207に進み、バッテリ側に漏電ありの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。逆に、ステップ205において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値より大きいと判定した場合(YES)は、バッテリ側に漏電が発生していないのでステップ206に進み、漏電なしの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。
【0043】
このように、第1の実施例では、漏電検出回路20がリレーシステム2よりも電動機5,6側に接続されているので、リレーシステム2をオンせず、高電圧バッテリ1に電動機が接続されない状態において電動機側の漏電検出を実施することができ、電動機側のキャリア周波数に左右されない漏電検出が実現できる。
【0044】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、漏電検出回路20と電源制御装置16による、漏電検出とリレーシステム2の故障検出の実施例の検出手順を説明する。この検出手順は車両の始動時にまず1回行われ、その後漏電を判定するまで、何回繰り返されても良いものである。リレーシステム2のリレースイッチ11〜13は全てオフされているものとする。ステップ301では、平滑コンデンサ7の両端電圧Vcの値が、−Va<Vc<Vaを満たすか否かを判定する。Vaは平滑コンデンサ7の両端に電圧が発生しているかどうかを判定する閾値電圧値であり、その値は検出器誤差を含む最小の値となっている。
【0045】
ステップ301の判定が−Va<Vc<Vaを満たさない場合(NO)、即ち、平滑コンデンサ7の両端に電圧が発生している場合は、リレースイッチ11又はリレースイッチ12、及びリレースイッチ13(図3には単にスイッチと記載)が故障状態でオンしており、高電圧バッテリ1の電圧で平滑コンデンサ7が充電されていると考えられる。よってこの場合は、ステップ302に進み、リレースイッチ11又はリレースイッチ12、及びリレースイッチ13が故障と判定してステップ317に進む。ステップ317ではリレーシステム2に故障ありの診断結果を送信してこのルーチンを終了する。リレーシステム2に故障ありの診断結果は、電源制御装置16から図示しない別の制御装置、例えば車両制御装置に送信される。
【0046】
一方、ステップ301の判定結果がYES、即ち−Va<Vc<Vaが満たされて平滑コンデンサ7の両端に電圧が発生していない場合は、ステップ303に進み、リレースイッチ12をオンする。そして、続くステップ304において平滑コンデンサ7の両端電圧Vcの値が、−Va<Vc<Vaを満たすか否かを判定する。リレースイッチ12をオンしただけでは高電圧バッテリ1の電圧でコンデンサ7は充電されない。よって、ステップ304の判定が−Va<Vc<Vaを満たさない場合(NO)、即ち、平滑コンデンサ7の両端に電圧が発生している場合は、リレースイッチ13が故障状態でオンしており、高電圧バッテリ1の電圧で平滑コンデンサ7が充電されていると考えられる。よってこの場合は、ステップ305に進み、リレースイッチ13が故障と判定してステップ317に進む。ステップ317ではリレーシステム2に故障ありの診断結果を別の制御装置に送信してこのルーチンを終了する。
【0047】
ステップ304の判定結果がYES、即ち−Va<Vc<Vaが満たされて平滑コンデンサ7の両端に電圧が発生していない場合は、ステップ306に進み、リレースイッチ12をオフする。そして、続くステップ307において漏電検出回路20の検出電圧が、予め定められている漏電検出閾値より大きいか否かを比較し、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値以下であると判定した場合(NO)は、第1の電動機5と第2の電動機6の何れかに漏電が発生しているのでステップ308に進み、電動機側に漏電ありの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。逆に、ステップ307において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値より大きいと判定した場合(YES)は、第1の電動機5と第2の電動機6の何れにも漏電が発生していないのでステップ309に進み、リレースイッチ13をオンする。
【0048】
続くステップ310では、再度平滑コンデンサ7の両端電圧Vcの値が−Va<Vc<Vaを満たすか否かを判定する。このとき、リレースイッチ11,12は共にオフされているので、ステップ310の判定結果がNOの場合は、リレースイッチ11,12の何れかが故障でオンしていると考えられる。よってステップ310の判定がNOの場合はステップ311に進み、リレースイッチ11又はリレースイッチ12が故障と判定してステップ317に進む。そして、ステップ317でリレーシステム2に故障ありの診断結果を別の制御装置に送信してこのルーチンを終了する。
【0049】
一方、ステップ310の判定結果がYES、即ち−Va<Vc<Vaが満たされて平滑コンデンサ7の両端に電圧が発生していない場合は、ステップ312に進み、漏電検出回路20の検出電圧が予め定められている漏電検出閾値より大きいか否かを比較する。ステップ312において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値以下であると判定した場合(NO)は、高電圧バッテリ1に漏電が発生していると考えられるのでステップ313に進み、バッテリ側に漏電ありの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。
【0050】
逆に、ステップ312において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値より大きいと判定した場合(YES)は、高電圧バッテリ1には漏電が発生していない。そして、ステップ312の判定結果がYESの場合は、電動機側にもバッテリ側にも漏電がないので、リレーシステム2をオンさせて第1と第2の電動機5,6を駆動することができる。
【0051】
リレーシステム2をオンさせて第1と第2の電動機5,6を駆動する場合は、リレースイッチ13がオンしている状態で、まずステップ314において突入電流抑制用の抵抗14が直列に接続されている方のリレースイッチ12をオンして突入電流がなくなる所定時間が経過するのを待つ。所定時間が経過したら、ステップ315でリレースイッチ11をオンし、続くステップ316でリレースイッチ12をオフする。そして、ステップ318で漏電なしの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。
【0052】
第1の実施例の漏電検出回路20と電源制御装置16による、漏電検出とリレーシステム2の故障検出では、リレーシステム2をオンし、高電圧バッテリ1に電動機5,6が接続されている状態において、漏電検出器20の発振回路21の発振周波数は、電動機駆動回路3,4の動作状況に合わせて、電動機駆動回路3,4のキャリア周波数を避けるように変更しても良い。これにより、発振回路21に内蔵された低電圧バッテリがオンで且つ高電圧バッテリ1が主回路に接続されていない時と、高電圧バッテリ1に電動機5,6が接続されている通常動作時の両方において、電動機5,6側のキャリア周波数に左右されない漏電検出が実現できる。更に、発振回路21から出力される矩形波パルスの振幅を変えることにより、発振周波数の変更などによる検出波形の変化に対応可能となる。
【0053】
図4は、本発明の第2の実施例の車両の漏電検出装置102の構成を示す全体構成図である。第2の実施例の車両の漏電検出装置102の構成は、漏電検出回路20Aの構成を除いて、図1に示した第1の実施例の車両の漏電検出装置101の構成と同じである。そこで、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略すると共に、第1の電動機5の駆動回路3と第2の電動機6の駆動回路4及びLCフィルタ8については、内部の回路構成の図示を省略した。また、第2の実施例でも電源制御装置16と駆動回路3と駆動回路4、リレーシステム2及び電圧検出回路25との接続は第1の実施例と同じであるので、接続線の図示は省略した。
【0054】
第2の実施例が第1の実施例と異なるのは、漏電検出回路20Aの構成である。第1の実施例の漏電検出回路20は、発振回路21、発振回路21の信号出力側に直列に接続された検出抵抗22とコンデンサ23、検出抵抗22とコンデンサ23の結合点に接続されたフィルタ回路24、及びフィルタ回路24の出力に接続された電圧検出回路25を備えている。一方、第2の実施例の漏電検出回路20Aは、第1の実施例の漏電検出回路20の構成に加えて、検出抵抗32とコンデンサ33、及び検出抵抗32とコンデンサ33の結合点に接続されたフィルタ回路34を備えている。そして、検出抵抗22はスイッチ41を介して発振回路21に接続され、検出抵抗32はスイッチ42を介して発振回路21に接続されている。また、コンデンサ23とコンデンサ33は共にリレースイッチ13と駆動回路3の間の負極母線18に接続されており、電圧検出回路25はフィルタ回路34の出力にも接続されており、検出抵抗22とコンデンサ23の結合点の電圧と検出抵抗32とコンデンサ33の結合点の電圧の両方を検出する。電圧検出回路25が検出した電圧値は電源制御装置16に入力される。
【0055】
以上のように構成された第2の実施例の車両の漏電検出装置102では、漏電検出回路20Aにある発振回路21の発振周波数を、リレーシステム2がオンしている時とオフしている時で変更して漏電の有無を検出することができる。この手順を図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0056】
ステップ501ではリレーシステム2がオンしているか、オフしているかを判定する。リレーシステム2がオンしている場合(YES)はステップ502に進み、発振回路21の発振周波数を数Hzに変更し、続くステップ504において電圧検出回路25の閾値電圧の値を高電圧バッテリ1に電動機5,6が接続された通常時用の値に変更する。そして、ステップ506でスイッチ42をオンしてステップ508に進む。一方、リレーシステム2がオフしている場合(NO)はステップ503に進み、発振回路21の発振周波数を数kHzに変更し、続くステップ505において電圧検出回路25の閾値電圧の値を高電圧バッテリオフ時用の値に変更する。そして、ステップ507でスイッチ41をオンしてステップ508に進む。リレーシステム2のオンオフの判定、発振回路21の発振周波数の変更、スイッチ41,42のオンオフは、電源制御装置16によって行われる。
【0057】
ステップ508では漏電検出回路20の検出電圧が、ステップ504又はステップ505で定められた漏電検出閾値より大きいか否かを比較する。漏電検出閾値は、スイッチ41がオンの時は高電圧バッテリオフ時用の値であり、スイッチ42がオンの時は通常時用の値である。ステップ508において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値より大きいと判定した場合(YES)は、スイッチ41がオンの時は電動機側に漏電が発生しておらず、スイッチ42がオンの時は漏電検出回路21に繋がる全ての回路で漏電が発生していない場合である。よってこの時はステップ509に進み、漏電なしの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。
【0058】
一方、ステップ508において、漏電検出回路20の検出電圧が漏電検出閾値以下であると判定した場合(NO)は、スイッチ41がオンの時は第1の電動機5と第2の電動機6の何れかに漏電が発生している場合であり、スイッチ42がオンの時は漏電検出回路21に繋がる全ての回路の何れかで漏電が発生している場合である。よってこの時はステップ510に進み、漏電ありの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。
【0059】
なお、ステップ501の判定がNOとなる場合で、ステップ503で発振回路21の発振周波数が数kHzに変更され、ステップ505で閾値電圧が高電圧バッテリオフ時用の値に変更され、ステップ507でスイッチ41がオンされた場合は、図2で説明した第1の実施例のステップ201でリレーシステム2がオフされた場合と同じである。そこで、ステップ507の後に、前述のステップ202からステップ207の処理を行えば、漏電なしか、漏電箇所が電動機側かバッテリ側かの診断を行うことができる。
【0060】
図6は、本発明の第3の実施例の車両の漏電検出装置103の構成を示す全体構成図である。第3の実施例の車両の漏電検出装置103の構成は、漏電検出回路20Bの構成を除いて、図1に示した第1の実施例の車両の漏電検出装置101の構成と同じである。そこで、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略すると共に、駆動回路3と駆動回路4及びLCフィルタ8については、内部の回路構成の図示を省略した。また、第3の実施例でも電源制御装置16と、駆動回路3と駆動回路4、リレーシステム2及び電圧検出回路25との接続は第1の実施例と同じであるので、接続線の図示は省略した。
【0061】
第3の実施例が第1の実施例と異なるのは、漏電検出回路20Bの構成である。第1の実施例の漏電検出回路20は、発振回路21、発振回路21の信号出力側に直列に接続された検出抵抗22とコンデンサ23、検出抵抗22とコンデンサ23の結合点に接続されたフィルタ回路24、及びフィルタ回路24の出力に接続された電圧検出回路25を備えている。そして、コンデンサ23の一端がリレースイッチ13と駆動回路3の間の負極母線18に直接接続されていた。
【0062】
一方、第3の実施例の漏電検出回路20Bは、第1の実施例の漏電検出回路20におけるコンデンサ23の一端と、リレースイッチ13と第1の電動機の駆動回路3の間の負極母線18とを結ぶ回路の途中にスイッチ51が設けられている点と、コンデンサ23の一端が更に、スイッチ52を介して高電圧バッテリ1の負極とリレースイッチ13との間の負極母線18に接続されている点が異なる。
【0063】
以上のように構成された第3の実施例の車両の漏電検出装置103では、漏電検出回路20Bにある電圧検出回路25の接続先を、リレーシステム2より電動機側にするか、或いは高電圧バッテリ側にするかをスイッチ51,52の切り換えにより実現できる。スイッチ51,52のオンオフは、電源制御装置16によって行われる。これにより、漏電箇所が電動機側か高電圧バッテリ側かを区別することができる。この手順を図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0064】
ステップ701ではリレーシステム2がオンしているか、オフしているかを判定する。リレーシステム2がオンしている場合(YES)はステップ702に進み、スイッチ52をオンする。続くステップ704では漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値より大きいか否かを比較する。第2の実施例と同様に、このときの発振回路21の発振周波数は数Hzとすることができ、漏電検出閾値は電動機5,6が高電圧バッテリ1に接続されている通常時用の値とすることができる。ステップ704において、漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値より大きいと判定した場合(YES)は、ステップ709に進み、漏電なしの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。一方、ステップ704において、漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値以下であると判定した場合(NO)はステップ708に進み、漏電ありの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。この場合、漏電エリアの特定は行わない。
【0065】
ステップ701の判定でリレーシステム2がオンしていない場合(NO)はステップ703に進み、スイッチ51をオンする。続くステップ705では漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値より大きいか否かを比較する。第2の実施例と同様に、このときの発振回路21の発振周波数は数kHzとすることができ、漏電検出閾値は高電圧バッテリオフ時用の値とすることができる。
【0066】
ステップ705において、漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値以下であると判定した場合(NO)は、第1の電動機5と第2の電動機6の何れかに漏電が発生している場合である。よってこの時はステップ711に進み、電動機側に漏電ありの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。一方、ステップ705において、漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値より大きいと判定した場合(YES)は、ステップ706に進み、スイッチ51をオフし、スイッチ52をオンしてステップ707に進む。
【0067】
ステップ707では再び漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値より大きいか否かを比較する。ステップ707において、漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値以下であると判定した場合(NO)は、高電圧バッテリ1側に漏電が発生している場合である。よってこの時はステップ710に進み、バッテリ側に漏電ありの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。一方、ステップ707において、漏電検出回路20Bの検出電圧が漏電検出閾値より大きいと判定した場合(YES)は、ステップ709に進み、漏電なしの診断結果を電圧検出回路25から電源制御装置16に送信してこのルーチンを終了する。
【0068】
図8は、本発明の第4の実施例の車両の漏電検出装置104の構成を示す全体構成図である。第4の実施例の車両の漏電検出装置104の構成は、図1に示した第1の実施例の車両の漏電検出装置101の構成に漏電検出回路60が追加されたものである。そこで、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略すると共に、駆動回路3と駆動回路4及びLCフィルタ8については、内部の回路構成の図示を省略した。また、第4の実施例でも電源制御装置16と、駆動回路3と駆動回路4、リレーシステム2及び電圧検出回路25との接続は第1の実施例と同じであるので、接続線の図示は省略した。
【0069】
第4の実施例では、第1の実施例の漏電検出回路20に加えて、漏電検出回路60が追加されている。追加された漏電検出回路60は、発振回路61、発振回路61の信号出力側に直列に接続された検出抵抗62とコンデンサ63、検出抵抗62とコンデンサ63の結合点に接続されたフィルタ回路64、及びフィルタ回路64の出力に接続された電圧検出回路65を備えている。そして、コンデンサ63の一端がリレースイッチ13と高電圧バッテリ1の間の負極母線18に接続されている。
【0070】
漏電検出回路20の発振回路21の発振周波数は数kHzであり、漏電検出閾値は、高電圧バッテリオフ時用の値であるので、漏電検出回路60の発振回路61の発振周波数は数Hzとすることができ、漏電検出閾値は、電動機5,6が高電圧バッテリ1に接続されている通常時用の値とすることができる。第4の実施例は、第3の実施例の変形例であり、第3の実施例では漏電検出回路20Bが切換スイッチ51,52によって切り換えられて負極母線18の異なる場所に接続されていたが、第4の実施例は、負極母線18の異なる場所にそれぞれ漏電検出回路20と漏電検出回路60が接続されている点が異なるのみである。
【0071】
以上のように構成された第4の実施例の車両の漏電検出装置104では、漏電検出回路20と漏電検出回路60のどちらかを動作させるかによって、漏電箇所が電動機側か高電圧バッテリ側かを区別することができる。漏電検出回路20と漏電検出回路60のどちらを動作させるかは、電源制御装置16によって行われる。第4の実施例の車両の漏電検出装置104を用いた漏電箇所が電動機側か高電圧バッテリ側かの検出手順は第3の実施例と殆ど同じである。この手順を図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0072】
前述のように、第4の実施例の車両の漏電検出装置104を用いた漏電箇所が電動機側か高電圧バッテリ側かの検出手順は、第3の実施例と殆ど同じであるので、図9に示すフローチャートでは、図7に示したフローチャートの手順と同じ手順には同じステップ番号を付してその説明を省略し、手順が異なる部分のみに新たなステップ番号を付してある。第4の実施例では、ステップ701でリレーシステム2がオンしているか、オフしているかを判定した後、リレーシステム2がオンしている場合(YES)に進むステップ702の代わりにステップ901を実行し、リレーシステム2がオンしていない場合(NO)に進むステップ703の代わりにステップ902を実行する。
【0073】
ステップ901では漏電検出回路60を動作させ、ステップ902では漏電検出回路20を動作させる。漏電検出回路60を動作させることは、第3の実施例におけるスイッチ52をオンして、発振回路21の発振周波数を数Hzとし、漏電検出閾値を電動機5,6が高電圧バッテリ1に接続されている通常時用の値とすることに対応する。また、漏電検出回路20を動作させることは、第3の実施例におけるスイッチ51をオンして、発振回路21の発振周波数を数kHzとし、漏電検出閾値を高電圧バッテリオフ時用の値とすることに対応する。
【0074】
そして、第4の実施例の車両の漏電検出装置104を用いた漏電箇所が電動機側か高電圧バッテリ側かの検出手順では、第3の実施例におけるステップ706の代わりにステップ903を実行する。ステップ706におけるスイッチ51をオフしてスイッチ52をオンすることは、スイッチ13をオンして漏電検出回路20を負極母線18を通じて高電圧バッテリ1の負極に接続することに対応する。以上のステップ901〜903の検出手順以外の検出手順は第3の実施例における検出手順と全く同じである。
【0075】
以上本発明の車両の漏電検出装置の実施の対応を第1から第4の実施例に基いて説明したが、以上の実施例以外にも、本発明では以下のような実施例が可能である。
(1)第1の実施例を示す図1の構成において、発振回路21の低電圧バッテリがオンしており、且つ高電圧バッテリ1が主回路に接続されていない時は、電動機5,6の駆動回路3,4における電力変換回路のキャリア周波数や、電動機4,5の駆動による影響がないため、漏電検出回路20からフィルタ回路24を除いた実施例。
(2)第2の実施例を示す図4の構成において、発振回路21の低電圧バッテリがオンしており、且つ高電圧バッテリ1が主回路に接続されていない時は、電動機5,6の駆動回路3,4における電力変換回路のキャリア周波数や、電動機4,5の駆動による影響がないため、漏電検出回路20Aからフィルタ回路24、34を除いた実施例。
(3)第4の実施例を示す図8の構成において、通常動作時に漏電検出回路20と漏電検出回路60の発振回路21,61の発振周波数を合わせ、電圧検出回路25,65の両方が検出した電圧を比較することにより、漏電検出回路20と漏電検出回路60自体の故障検出を行う実施例。
(4)第4の実施例を示す図8の構成において、通常動作時に漏電検出回路20と漏電検出回路60の何れか一方のみを動作させる実施例。
【符号の説明】
【0076】
1 直流電源(高電圧バッテリ)
2 リレーシステム
3 第1の電動補の駆動回路
4 第2の電動補の駆動回路
5 第1の電動機
6 第2の電動機
9,10 絶縁地絡抵抗
11〜13 リレースイッチ
15 電圧計
16 電源制御装置
17 正極母線
18 負極母線
20,20A,20B,60 漏電検出回路
21,61 発振回路
22,32,62 抵抗
24,34,64 フィルタ回路
25,65 電圧検出回路
41、42、51、52 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレーシステム(2)を含む正極母線(17)と負極母線(18)で直流電源(1)と少なくとも1つの交流電動機(5,6)の駆動回路(3,4)を接続し、両母線間には平滑コンデンサ(7)が接続された車両の漏電検出装置であって、
発振回路(21)と抵抗(22)とカプリングコンデンサ(23)を直列に接続した回路と、前記抵抗(22)と前記カプリングコンデンサ(23)の接続点の電圧を検出する電圧検出回路(25)とを備え、前記カプリングコンデンサ(23)が前記負極母線(18)に接続する漏電検出回路(20)と、
前記平滑コンデンサ(7)の両端電圧を測定する電圧計(15)と、
前記電圧検出回路(25)、前記電圧計(15)、前記発振回路(21)及び前記リレーシステム(2)に接続する制御装置(16)を備え、
前記制御装置(16)は、前記発振回路(21)の発振周波数及び前記リレーシステム(2)のリレースイッチの接続状態を所定の動作モードに設定し、該動作モードにおける前記電圧検出回路(25)と前記電圧計(15)からの電圧の検出値に基いて前記車両における漏電を検出することを特徴とする車両の漏電検出装置。
【請求項2】
前記カプリングコンデンサ(23)は、前記リレーシステム(2)と前記交流電動機の駆動回路(3,4)の間の前記負極母線(18)に接続することを特徴とする請求項1に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項3】
前記カプリングコンデンサ(23)は、切換スイッチ(51,52)により、前記リレーシステム(2)と前記駆動回路(3,4)の間の前記負極母線(18)と、前記リレーシステム(2)と前記直流電源(1)の間の前記負極母線(18)の何れかに接続されることを特徴とする請求項1に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項4】
前記漏電検出回路が2組設けられており、一方の漏電検出回路(20)のカプリングコンデンサ(23)は、前記リレーシステム(2)と前記交流電動機の駆動回路(3,4)の間の前記負極母線(18)に接続され、他方の漏電検出回路(60)のカプリングコンデンサ(63)は、前記リレーシステム(2)と前記直流電源(1)の間の前記負極母線(18)に接続されことを特徴とする請求項1に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項5】
前記漏電検出回路(20)に、前記発振回路(21)のノイズ成分を抽出して除去するフィルタ回路(24、34)が備えられていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項6】
前記漏電検出回路(20)に、前記抵抗(22)とカプリングコンデンサ(23)に少なくとも1組の抵抗(32)とカプリングコンデンサ(33)を直列に接続した回路が並列に接続されており、前記制御回路(16)は、切換スイッチ(41,42)によって前記複数の抵抗(22、32)の何れかを前記発振回路(21)に接続することを特徴とする請求項2に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項7】
前記制御回路(16)は、前記リレーシステム(2)にあるリレースイッチ(11〜13)が全てオフ状態の第1の動作モード時に漏電状態を検出した場合は、前記交流電動機(5,6)側に漏電が発生していると判定し、前記第1の動作モード時に漏電状態を検出していない状態で、前記リレーシステム(2)が前記負極母線(18)を通じて前記直流電源(1)を前記駆動回路(3,4)に接続している第2の動作モード時に漏電状態を検出した場合は、前記直流電源(1)側に漏電が発生していると判定することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項8】
前記制御回路(16)は、前記電圧検出回路(25)からの電圧の検出値が、その時の動作モードにおける漏電検出閾値を超えている時に漏電状態と判定することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項9】
前記制御回路(16)は、前記電圧計(15)からの電圧の検出値が、その時の動作モードにおける前記平滑コンデンサ(7)の電圧範囲にない時に、前記リレーシステム(2)のリレースイッチ(11〜13)の何れかに故障があると判定することを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項10】
前記制御回路(16)は、前記第1の動作モード時に行う漏電検出と、前記第2の動作モード時に行う漏電検出とでは、前記発振回路(21)の発振周波数を変更することを特徴とする請求項7から9の何れか1項に記載の車両の漏電検出装置。
【請求項11】
前記制御回路(16)は、前記第1の動作モード時には前記発振回路(21)の発振周波数を数kHzに設定し、前記第2の動作モード時には前記発振回路(21)の発振周波数を、前記交流電動機の駆動回路(3,4)の電力変換器のキャリア周波数を外した数Hzに設定することを特徴とする請求項10に記載の車両の漏電検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79903(P2013−79903A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220946(P2011−220946)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】