説明

車両の異常記録装置

【課題】記録する異常情報の証拠力としての信頼性を高めた車両の異常記録装置を提供する。
【解決手段】車両外部の画像情報を取得するカメラ部26と、カメラ部26からの画像情報を記録する記録部32,34と、車両2の異常状態を検知する異常検知部と、異常検知部が異常を検知した時点での補助データを取得する補助データ検知部と、異常検知部が異常を検知したとき記録部32,34の画像情報に補助データを組み合わせてこの組合せ後の画像情報を異常検知に関連する画像情報として記録する制御部8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダ等の車両の異常記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事故発生時の前後の車外の情報および車両状況情報をメモリに蓄えることによって事故の直前までの記録を証拠として残すドライブレコーダが、自動車事故を未然に防止する有効な手段として普及し始めている。そして種々のドライブレコーダが提案されている。例えば特許文献1において、事故後にメモリへの入力を遮断する手段を設けることでデータの上書き防止および改ざん防止するドライブレコーダが提案されている。
【特許文献1】特開2006−306153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ドライブレコーダに関してはその実用において種々検討すべき課題は多い。
【0004】
本発明の課題は、上記に鑑み、記録する異常情報の証拠力としての信頼性を高めた車両の異常記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、本発明は、車両外部の画像情報を取得するカメラ部と、カメラ部からの画像情報を記録する記録部と、車両の異常状態を検知する異常検知部と、異常検知部が異常を検知した時点での補助データを取得する補助データ検知部と、前記異常検知部が異常を検知したとき前記記録部の画像情報に前記補助データを組み合わせてこの組合せ後の画像情報を異常検知に関連する画像情報として記録する制御部とを有することを特徴とする車両の異常記録装置を提供する。
【0006】
本発明の具体的な特徴によれば、車両外部の音情報を取得するマイク部を有し、前記マイク部からの音情報が前記画像情報とともに記録される。
【0007】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記異常検知に関連する画像情報は、異常検知の所定時間前から異常検知時点までに前記記録部に記録された画像情報を含む。
【0008】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記異常検知に関連する画像情報は、異常検知時点からその所定時間後までに前記記録部に記録された画像情報を含む。
【0009】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記補助データ検知部は、前記異常検知部が異常を検知した時点での時刻データを取得する。
【0010】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記補助データ検知部は、前記異常検知部が異常を検知した時点での車両の位置データを取得する。
【0011】
本発明の他の具体的な特徴によれば、記補助データ検知部は、前記異常検知部が異常を検知した時点までの車両のブレーキ操作データを取得する。
【0012】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記補助データ検知部は、車両進行方向の信号灯情報を受信する受信部を有し、前記補助データは前記異常検知部が異常を検知した時点までの信号灯情報データである。
【0013】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記制御部は、前記記録部の画像情報に前記補助データを電子透かしとして組み合わせる。
【0014】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記制御部は、異常検知時点からその所定時間後まで画像情報が記録された後で前記補助データを電子透かしとして組み合わせる。
【0015】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記制御部は、前記カメラ部が異常検知時点以後の画像情報を取得できないときは、異常検知時点までの画像情報に前記補助データを電子透かしとして組み合わせる
【0016】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記制御部は、前記記録部の画像情報に前記補助データを組み合わるための組合せ用情報に基づいて組合せを実行する。
【0017】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記組合せ用情報を保持する保持部と、前記保持部に保持されている組合せ用情報を更新するために外部から新しい組合せ用情報を受信する受信部を有する。
【0018】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記受信部は組合せ用情報を信号機から受信する。
【0019】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記受信部は組合せ用情報を車両のエネルギー補給スタンドから受信する。
【0020】
本発明の他の具体的な特徴によれば、前記受信部は組合せ用情報を道路通行料自動徴収システムから受信する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係るドライブレコーダシステムの実施例を示すブロック図である。本実施例のドライブレコーダシステムは、事故前後の情報を記録するドライブレコーダを備えたガソリンエンジン車または電気自動車またはガソリンエンジンとモーターを併用するいわゆるハイブリッドタ車のいずれかである車両2を中心とするものであるが、さらに信号機4、および給油/給電スタンド6と共同するシステムを構成している。
【0022】
車両2は、車両全体を制御するコンピュータからなる車両制御部8を有し、車両の運転者による操作部10の操作に応じて、車両機能部12を制御する。この車両制御部8の機能は記憶部14に格納されたソフトウエアによって実行される。記憶部14は、また車両全体の制御に必要な種々のデータを一時的に格納する。また、車両制御部8は、表示部16を制御し、操作部10の操作に必要なGUI表示を行うとともに制御結果の表示を行う。車両制御部8は時計部18を有し、種々の機能においてこの時計部8の時刻データが利用される。また、後述のようにこの時計部18の時刻は外部の時刻情報により適宜正しい時刻に自動修正される。
【0023】
GPS部20は、GPSシステムに基づいて衛星および最寄の放送局より車両2の絶対位置情報である緯度、経度、および高度の情報を得て車両制御部8に送る。カーナビゲーション機能部22は、車両制御部8経由で得られるGPS部20からの絶対位置情報を処理し、地図上での車両2の位置を表示部16に表示する。車両2は、さらに車両近距離通信部24を備えており、後述のように、信号機4および給油/給電スタンド6に接近したときこれらとの間で電波または光により情報の授受を行う。
【0024】
次にドライブレコーダに関する構成を、必要に応じ上記の構成とも関連づけて説明する。カメラ26およびマイク28には、車両が運行状態にあるとき常時車両前方等の画像および音が入力される。なお、運行状態とは実際に走行している場合だけでなく信号待ちで一時停車している状態など、車両の走行に伴って交通事故が発生する可能性のある状態全てを含む。この状況にあるかどうかをチェックするため、カメラで撮影された画像は画像処理によって動体の有無が検知され、エンジンを停止しても、その後画像中に動体が検知されていない状態が所定時間続くことが確認されない限りカメラ26およびマイク28への画像および音の入力が継続される。
【0025】
車両制御部8は20秒程度の不揮発性バッファメモリを備えており、カメラ26およびマイク28から入力された画像および音の情報を先入れ先出し(FIFO)で記憶する。つまり常に最新20秒の情報が常時上書き記憶される。そして、加速度検知部30が衝突などによる大きな加速度変化を検知したときまたは操作部10により手動操作があったとき、カメラ26およびマイク28が破壊されずに情報入力が継続していれば、その時点からさらに10秒程度のバッファメモリへの記憶を続ける。これによってバッファメモリには、加速度変化の検知または手動操作の時点の前後それぞれ10秒程度の画像および音情報が保持される。この前後10秒程度の画像および音情報は、車両制御部8によって所定の処理が行われた後、デジタル圧縮動画情報として車両の異なる部分に設けられた第一記録部32および第二記録部34にそれぞれ記録されるよう構成する。第一記録部32および第二記録部34はそれぞれデジタル圧縮動画情報10件分の容量を持っており、FIFOで上書きされていく。
【0026】
第一記録部32は、例えば車両前部に設けられるとともに第二記録部34は、例えば車両後部に設けられ、これらに同じ情報を記録するよう構成することによって、事故により万一その一方が破壊されても他方が生き残って記録可能となることを期待している。また、記録済みの情報についても、少なくとも一方には残ることを期待している。なお、ドライブレコーダ機能の大半が破壊された場合でも、不揮発性バッファメモリさえ無事ならば、事故前20秒程度の記録が残されることになる。
【0027】
ここで、第一記録部32および第二記録部34に画像及び音情報をそれぞれ記録する際に車両制御部8によって行われる処理について説明する。この処理は、通常の音声つきデジタル圧縮動画情報を作成する処理に加え、この音声つきデジタル圧縮動画情報の改ざんやすり替えを防止して証拠力を高めるとともに、証拠としての情報をより豊富にするための処理を含んでいる。
【0028】
信号機4は、証拠情報を豊富にするための構成であって、信号機制御部36は赤・青・黄の信号灯38を制御している。そして、信号機近距離通信部40はどちら向きの信号灯が今どの色であるかの情報を信号機4近辺に発信している。この信号機近距離通信部40は、信号機システム通信部42から得られる車両情報通信システムからの渋滞情報などを信号機4近辺に発信するための構成を兼用したものである。従って、これらの情報は信号機4のある交差点近辺に車両2が存在すれば車両近距離通信部24によって受信され、車両制御部8に送られる。これによって車両2が交差点を通過中または信号待ち停車中に加速度変化の検知または手動操作があったときには、車両2の進行方向の信号灯38の状態が情報として取得できる。このようにして、カメラ26の画角の限界やカメラ26と信号灯38の同期が原因で信号灯38の状態がカメラ26の画像からは得られない場合であっても、加速度変化の検知または手動操作(以下その代表的な場合として「事故発生」と称する)に至るまでの信号灯38の状況を把握することができるようになる。方位検知部44は、事故発生の直前に車が向いていた方向を検出するもので、上記の信号機4からの情報との組合せで事故発生時に車両2に信号無視があったかどうかの証拠を提供するものである。
【0029】
車両制御部8は、速度計46の速度情報を受け、これを不揮発性バッファメモリにおける20秒程度分の容量にFIFOで順次上書き記録していく。これによって、事故発生時の速度と制限速度との関係および事故発生前20秒程度の間のブレーキ操作履歴などを把握することが可能となる。このような事故発生時の速度情報やブレーキ操作履歴は、上記の事故発生時の進行方向の信号灯情報、時計18からの事故発生時刻情報、ならびにGPS部20からの事故発生地点情報とともに電子透かし処理部48に送られ、電子透かしデータとして扱われる。
【0030】
電子透かし処理部48にはバッファメモリに一時記憶されている事故発生前後それぞれ10秒程度の画像および音情報が送られ、上記の速度情報、ブレーキ操作履歴、信号灯情報、時刻情報、地点情報よりなる電子透かしデータが埋め込まれる。なお、この埋め込みの際には、記憶部14に保持されている電子透かし処理キー情報が設定されて用いられる。このようにして電子透かし処理キー情報を用いて電子すかしデータが埋め込まれた画像および音情報は、車両計測部8に戻されてデジタル圧縮され、それぞれ第一記録部32および第二記録部34に送られる。以上のように、事故発生前後それぞれ10秒程度の画像および音情報には電子透かし処理キー情報を用いて事故発生に関連する電子透かし情報が埋め込まれているので、画像情報および音情報を改ざんすることは困難となる。また、電子透かし情報自体もこれらを抽出することによって事故発生時点の証拠情報が豊富になる。
【0031】
以上、ドライブレコーダ機能については、その制御が車両制御部8で行われるよう説明したが、全ての機能を車両制御部8に負担させる代わりに、ドライブレコーダ機能を担当する専用の制御部を別に設け、機能を分担させてもよい。この場合も、ドライブレコーダ専用制御部は車両制御部8と連携し、全体として上記に説明したような機能を実行する。
【0032】
また、万一の事故が起こったときにドライブレコ
ーダに情報が記録されていないことを防ぎ、記録の信頼性を高めるため、上記のドライブレコーダ機能を達成する構成部分は車両2の所有者にはアクセスできない部分に納められており、車検等の際に資格のある者だけがアクセスできる。またカメラ26やマイク28と車両制御部8を結ぶケーブル等も車両2の所有者には見えない部分に納められる。ドライブレコーダ機能を車両2に後から追加する場合であっても、その取り付けは資格のある者に限られ、ケーブル等も車両2の所有者が勝手に取り外すことができないよう設置される。さらに、誤ってこれらのケーブルが切断される等してドライブレコーダ機能が損なわれたときには、車外表示部50がこれを車両2の外部に表示し、この表示が警察に発見されたときには交通違反となる。
【0033】
一方で、車両2を始動させる毎にドライブレコーダ機能の初期チェックが行われ、正常である旨の表示を表示部16に行う。これに代えてアナウンスによりチェック結果が正常である旨を通知するようにしてもよく、また両者を併用してもよい。交通事故は本来起こってはならないことであり、安全運転者にとっては実際、何年も何事も起こらない可能性が高い。この間、ドライブレコーダが働く機会は一度もないことになるが、上記のように構成することにより、日常的に機能が正常であることが確認でき、万一の場合に情報が記録されないような事態を未然に防止できる。
【0034】
給油/給電スタンド6は、給油または給電のためにスタンドに立ち寄った車両との交信を行うためのスタンド近距離通信部52を備えている。スタンド制御部54はスタンドシステム通信部56から車両2のID情報及び車両2に適用すべき最新の電子透かし処理キー情報を取得している。この最新の電子透かし処理キー情報はスタンド近距離通信部52と車両近距離通信部24の交信により車両2に伝えられ、車両制御部8経由で記憶部14に送られて旧い電子透かし処理キー情報を更新する。このような電子透かし処理キー情報の更新はドライブレコーダによる画像および音情報の改ざんやすり替えを防止するためのものであり、各車両の電子透かし処理キー情報の更新履歴はそれぞれドライブレコーダ管理センターに個別に登録されているので、万一電子透かし処理キー情報が漏洩したとしても、期限切れの電子透かし処理キーで作成したデジタル画像情報は真正の記録とは認められない。なお、この電子透かし処理キー情報の更新は信号機4から頻繁に行うよう構成してもよい。
【0035】
給油/給電部58は、給油/給電部ライン60を介して車両2の給油/給電部に給油/給電部口に給油/給電を行う。このとき、車両2が電気自動車またはハイブリッド車であった場合は、給油/給電部ライン60を介した電力線通信により、電子透かし処理キー情報をスタンド制御部54から車両制御部8に伝達することができる。
【0036】
なお、上記のように本発明の実施例におけるドライブレコーダ情報は車両2の所有者自身が変更することができないものであるが、所有者がパスワードを入力することにより、車両制御部8のカードスロットに挿入したメモリカードにコピーして取り出しするのは自由である。従ってこのようにして取り出したデータを自身の携帯電話やパソコンで見ることは可能である。
【0037】
また、図1では、車両2が給油/給電スタンド6との近距離通信によって電子透かし処理キー情報の更新を行う場合を図示しているが、このような電子透かし処理キー情報の更新はこのような場合に限るものではない。例えば、「給油/給電スタンド6」を「道路通行料自動徴収システム(ETC)6」と読替えるとともにその内部構成52、54および56における「スタンド」を「ETC」に読替えれば、ETC6を通過する毎に電子透かし処理キー情報の更新を行う形でも本発明が実施できることが理解できる。この場合、車両2における車両近距離通信部24とETC6におけるETC近距離通信部52が電子透かし処理キー情報の交信にも兼用されることになる。
【0038】
なお、ETC6のように車両2との契約関係に基づいて近距離通信を行うよう構成され、個人情報管理がしっかりと行われているようなシステムの近距離通信部を兼用する場合は、さらに次のような情報交信を行うことも可能である。つまり、第一記録部32または第二記録部34に何らかのドライブレコーダ情報が記録されている場合にはこれが自動的に車両近距離通信部24からETC近距離通信部52に自動送信され、これがさらにETC通信部56からETCの管理センターに転送されるよう構成することができる。但し、このような転送を自動的に行うかどうかは予め運転者の同意を得ることを条件とし、同意すれば高速道路料金を割り引く等のインセンティブをつける。これによって、運転者の同意の下にひき逃げや当て逃げの証拠がETCの管理センターに蓄積されることになるので、運転者の安全運転への自覚を高めることも可能となる。
【0039】
図2は、車両2の車両制御部8の機能を示す基本フローチャートである。このフローは車両2が走行可能状態になることによってスタートする。具体的には、ガソリンエンジン車の場合はイグニションのオン、ハイブリッド車や電気自動車では走行準備スイッチのオンによって走行可能状態となり、フローがスタートする。なお、走行可能状態とは実際に走行している状態も含む。フローガスターとすると、まずステップS2でドライブレコーダ機能を含む車両機能を初期チェックする。この処理は、チェック結果を表示またはアナウンスによる通知を含む。
【0040】
次いでステップS4でカメラ26およびマイク28からの情報に基づき画像と音の記録が行われる。また、ステップS6では、その時点におけるGPS部20からのGPSデータ、速度計46からの速度データ、方位検知部44からの進行方向データおよび時計18からの時刻データをそれぞれ取得してステップS8に至る。
【0041】
ステップS8では、車両近距離通信部24に信号機灯4からの信号灯データが着信しているかどうかのチェックが行われる。そして車両が交差点に差しかかっていて信号灯データの着信がある場合にはステップS10に進み、このデータを取得してステップS12に移行する。なお、信号機4は車両2にとっての進行方向およびこれに直行する方向の両者についてそれぞれ信号灯38がどのような状態にあるかの情報を発信しており、ステップS10では、車両近距離通信部24により、これらの情報をすべてそのまま取得する。一方、車両が交差点に差しかかっていないか、または交差点にさしかかっていているが信号機に信号灯データ発信機能がなく、この結果信号等データの着信がない場合には、ステップS8から直接ステップS12に移行する。
【0042】
ステップS12では、ステップS4、ステップS6およびステップS10で得られる情報を車両制御部8内の不揮発性バッファメモリにおける20秒程度分の容量にFIFOで上書き記録する。ステップS12においてその時点で得られた情報の記録が終わるとステップS14に以降し、車両近距離通信部による通信相手が通信可能距離範囲に存在して近距離通信が可能かどうかのチェックが行われる。この場合の通信相手とは、例えば給油/給電スタンド6またはETC6であるが、信号機4についても信号灯情報受信以外の通信が可能であれば、この場合の通信相手に該当する。
【0043】
ステップS14で近距離通信が可能と判断されたときはステップS16に進み、近距離通信による交信処理を行ってステップS18に移行する。この場合の車両近距離通信部24によるステップS16での交信処理の内容は、具体的には電子透かし処理キー情報の更新情報の受信であるが、この他、既に述べたように第一記録部32または第二記録部34に記録されているドライブレコーダ情報の送信もステップS16での交信処理に該当する。なお、ステップS14で近距離通信が可能であることが検出されなければ直接ステップS18に移行する。
【0044】
ステップS18では、加速度検知部30によって所定以上の加速度変化が検知されたかどうかのチェックが行われる。ここで、所定以上の加速度変化とは正面衝突のような同一方向での急減速、衝突による進行方向の変化等の車両走行中の加速度変化が含まれるが、車両2自身が停止中であったとしても他車両に衝突された場合の衝撃なども含まれる。
【0045】
ステップS18で所定以上の加速度変化が検出されたときはステップS20に進み、記憶部14から車両2として最新の電子透かし処理キーを読出す。そしてステップS22で種々の電子透かしデータを電子透かし処理キーに基づいて動画の画像/音情報に埋め込む電子透かし処理を行う。この処理の詳細は後述する。そしてステップS24に進み電子透かしが埋め込まれた画像/音情報を圧縮し、第一記録部32および第二記録部34に記録する処理を行い、ステップ26に移行する。なお、ステップS18で所定以上の加速度変化が検出されないときは直接ステップS26に移行する。
【0046】
ステップS26では車両2が走行可能状態であるかどうかチェックし、該当すればステップS4に戻る。一方、イグニションのオフまたは走行準備スイッチのオフによって走行準備状態でなくなっているときはステップS28に進み、カメラ26で取得される画像に基づいて画像中に動体が含まれているどうかの検知を行う。そして動体が検知されれば、ステップS4に戻る。動体が検知されるということは、自分の動力はオフになっているが車両2が惰性または坂道下降によって走行している状態にあるか、車両2自身は停止しているが周囲を車両が走行していて車両2が道路の中にあることを意味し、車両2はまだ安全な状態にはないからである。
【0047】
一方、ステップ28で動体が検出されない場合はステップ30に進み、動体を検出市内状態が所定時間以上続いているかどうかをチェックする。そしてまだ所定時間に達していない場合はステップ4に戻る。事故直後の場合や、車両2が道路中に停止しているがたまたま周囲を車両が走行していない場合は、所定時間動体が検出されないことがあるからである。以上のようにして、ステップ26からステップ30のいずれかからステップ4に戻ったときには、ステップ4の画像/音記録からの処理が行われ、以下、ステップ30で所定時間以上動体が無検知で車両2が安全な場所に停止していると看做されるまではステップS4からステップS30が繰り返され、画像/音データならびに所定データの取得、およびそのFIFO記録が継続され、その間所定以上の加速度が検知される毎に電子透かしが埋め込まれた画像/音情報の圧縮データの記録が行われていく。一方、ステップS30で所定時間以上動体が無検知であることが検知されるとステップS32に進み、動画/音記録および諸データ取得を停止してフローを終了する。
【0048】
図3は、図2のステップS22における電子透かし処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS42で記憶部14から車両2のIDデータを読み出す。このIDは後述のように、電子透かしデータとして使用されるとともに、現在車両2に適用されている電子透かし処理キーのバージョンを特定するデータとしても利用される。つまり、どのバージョンの電子透かし処理キーが現在車両2に適用されているかはドライブレコーダ管理センターに個別に登録されているので、読み出した車両2のIDを付加することにより、登録された真正の電子透かし処理キーによって電子透かしが埋め込まれた画像/音情報の圧縮データであることの証とすることができる。
【0049】
次いで、ステップS44では、図2の3は、図2のステップS20で読み出された電子透かし処理キーが電子透かし処理部48に設定される。次にステップS46では、加速度変化検知後にバッファメモリが破壊されず無事に残っているかどうかのチェックが行われる。そして無事ならばステップS48に進み、加速度変化検知時のGPSデータおよび時刻データがバッファメモリから抽出される。さらにステップS50では、加速度変化検知時の進行方向データをバッファメモリから抽出してステップS52に進む。
【0050】
ステップS52では、バッファメモリ中に信号灯データが存在するかどうかチェックする。信号灯データがあるということは加速度変化検知時点近辺に車両2が交差点近辺にあったことを意味するのでステップS54に進み、加速度変化検知時までの信号灯データを抽出する。そしてステップS56では、ステップS50で抽出された進行方向データを参照して加速度変化検知時までの進行方向の信号灯データを確定してステップS58に移行する。一方、ステップS52でバッファメモリ中に信号灯データが存在しないと判断されたときは直接ステップS58に移行する。
【0051】
ステップS58では、加速度変化検知時までのバッファメモリ内の全速度データ履歴が取り出され、ステップS60でこれらをもとにブレーキ操作の様子を分析してステップS62に進む。以上のようにステップS56およびステップS58の時点で取り出すバッファメモリのデータとしては加速度検知時点前20秒のデータが利用できる。これに対し、画像および音データについては、カメラ26およびマイク28の機能が無事であるかぎり加速度変化検知後もFIFO記録が継続されるので、加速度検知時点前20秒から10秒のデータは加速度検知後10秒のデータで上書きされて消失する。
【0052】
ステップS62では、加速度変化検知後にカメラ26およびマイク28の機能が破壊されず無事に残っているかどうかのチェックが行われる。そして、いずれか一方でも無事ならばステップS64に進む。カメラ26およびマイク28の機能のいずれか一方でも無事ならば加速度変化検知後でもすくなくともそのいずれかから情報が送り続けられているのでバッファメモリへのFIFO記録が継続されている。そこでステップS64では加速度変化検知後に設定されている所定時間(10秒程度)の録画および録音が終了したかどうかチェックして終了を待つ。そして所定時間が経過し、録画および録音が終了するとステップS66に進む。一方、ステップS62で、カメラ26およびマイク28の機能がいずれも破壊され、もはや加速度変化検知後の情報を送りえない状態であることが検知されたときは、直ちにステップS66に移行する。この場合は画像および音データについてもバッファメモリ内の情報は加速度変化検知前20秒のデータとなる。
【0053】
ステップS66では、ステップS42、ステップS48、ステップS56およびステップS60で得られた諸データを埋め込むべき電子透かしデータに変換する。そして、ステップS68で、バッファメモリ内の全ての画像情報および音情報を取り出してステップS70に移行する。ステップS70では、ステップS66およびステップS68で得られた情報に基づき、ステップS44での設定に従って、電子透かしデータの画像および音情報への埋め込み処理を行ってこれが完了するとフローを終了する。なお、ステップS46においてバッファメモリが破壊されていることが検知された場合は、直ちにフローを終了する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るドライブレコーダシステムの実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の車両制御部の機能を示す基本フローチャートである。
【図3】図2のステップS22の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
26 カメラ部 32、34 記録部 44 方位検知部 30 加速度検知部 8 車両制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の画像情報を取得するカメラ部と、カメラ部からの画像情報を記録する記録部と、車両の異常状態を検知する異常検知部と、異常検知部が異常を検知した時点での補助データを取得する補助データ検知部と、前記異常検知部が異常を検知したとき前記記録部の画像情報に前記補助データを組み合わせてこの組合せ後の画像情報を異常検知に関連する画像情報として記録する制御部とを有することを特徴とする車両の異常記録装置。
【請求項2】
車両外部の音情報を取得するマイク部を有し、前記マイク部からの音情報が前記画像情報とともに記録されることを特徴とする請求項1記載の車両の異常記録装置。
【請求項3】
前記異常検知に関連する画像情報は、異常検知の所定時間前から異常検知時点までに前記記録部に記録された画像情報を含むことを特徴とする請求項1または2記載の車両の異常記録装置。
【請求項4】
前記異常検知に関連する画像情報は、異常検知時点からその所定時間後までに前記記録部に記録された画像情報を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両の異常記録装置。
【請求項5】
前記補助データ検知部は、前記異常検知部が異常を検知した時点での時刻データを取得することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両の異常記録装置。
【請求項6】
前記補助データ検知部は、前記異常検知部が異常を検知した時点での車両の位置データを取得することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両の異常記録装置。
【請求項7】
前記補助データ検知部は、前記異常検知部が異常を検知した時点までの車両のブレーキ操作データを取得することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両の異常記録装置。
【請求項8】
前記補助データ検知部は、車両進行方向の信号灯情報を受信する受信部を有し、前記補助データは前記異常検知部が異常を検知した時点までの信号灯情報データであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両の異常記録装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記記録部の画像情報に前記補助データを電子透かしとして組み合わせることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の車両の異常記録装置。
【請求項10】
前記制御部は、異常検知時点からその所定時間後まで画像情報が記録された後で前記補助データを電子透かしとして組み合わせることを特徴とする請求項9記載の車両の異常記録装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記カメラ部が異常検知時点以後の画像情報を取得できないときは、異常検知時点までの画像情報に前記補助データを電子透かしとして組み合わせることを特徴とする請求項10記載の車両の異常記録装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記記録部の画像情報に前記補助データを組み合わるための組合せ用情報に基づいて組合せを実行することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の車両の異常記録装置。
【請求項13】
前記組合せ用情報を保持する保持部と、前記保持部に保持されている組合せ用情報を更新するために外部から新しい組合せ用情報を受信する受信部を有することを特徴とする請求項12記載の車両の異常記録装置。
【請求項14】
前記受信部は組合せ用情報を信号機から受信することを特徴とする請求項13記載の車両の異常記録装置。
【請求項15】
前記受信部は組合せ用情報を車両のエネルギー補給スタンドから受信することを特徴とする請求項13または14記載の車両の異常記録装置。
【請求項16】
前記受信部は組合せ用情報を道路通行料自動徴収システムから受信することを特徴とする請求項13から15のいずれかに14記載の車両の異常記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−9504(P2010−9504A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171105(P2008−171105)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】