説明

車両の空調装置

【課題】熱源からの廃熱とヒートポンプのコンデンサを通過する熱媒体の熱とを用いて車室を暖房する際、その暖房を効果的に行えるようにする。
【解決手段】車室5暖房する際には、パワーユニット1からの廃熱を用いた車室5の暖房の他に、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を利用した車室5の暖房も行われる。このときには、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を用いた車室5の暖房を効果的に行うべく、送風機12の駆動を通じてエバポレータ10に向けて空気(外気)が送られるものの、その空気がパワーユニット1を冷却してしまうおそれがある。こうしたことを考慮して、パワーユニット1からの廃熱による車室5の暖房能力Qhcと、ヒートポンプ6のコンデンサ8を通過する熱媒体の熱による車室5の暖房能力Qhpとの合計値である全体暖房能力QHに基づき、送風機12が駆動制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などの車両においては、同車両に搭載される熱源が少ないことから、その熱源からの廃熱を利用して車室の暖房を行う空調装置を設けたとしても、同装置によって暖房要求に見合った車室の暖房を実現することはできない可能性がある。このため、車両の空調装置として同車両に蒸気圧縮式のヒートポンプを搭載し、そのヒートポンプを用いて車室の暖房を行うことが考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1の空調装置においては、車両に搭載された熱源であるエンジンと熱交換可能な冷却水が循環する冷却水回路が設けられており、その冷却水回路に設けられたヒータコア及びラジエータを通過する冷却水の熱で空気通路を介して車室に送られる空気を加熱することが可能となっている。そして、ヒータコア及びラジエータを通過する冷却水によって加熱された上記空気を車室に送ることで同車室が暖房される。
【0004】
また、上記空調装置には、蒸気圧縮式のヒートポンプも設けられている。このヒートポンプは、熱媒体を圧縮して吐出するコンプレッサと、同コンプレッサにより圧縮されて昇温した熱媒体からの放熱を行うコンデンサと、同コンデンサでの放熱後の熱媒体を膨張させる膨張弁と、同膨張弁にて膨張して温度低下した熱媒体への吸熱を行うエバポレータとを備えている。こうしたヒートポンプでは、コンプレッサの駆動により熱媒体が高圧側熱交換器、膨張弁、及び低圧側熱交換器といった機器を順に通過し、それによって熱媒体の循環が行われる。
【0005】
上記空調装置においては、ヒートポンプのコンデンサ及びエバポレータがそれぞれ上記空気通路に位置している。そして、上記コンデンサを通過する熱媒体が上記空気通路を通過する空気と熱交換可能となっており、且つ、上記エバポレータを通過する熱媒体も上記空気通路を通過する空気と熱交換可能となっている。従って、ヒートポンプにおいて圧縮されて高温となった熱媒体が上記コンデンサを通過する際には、その熱媒体によって上記空気通路を通過する空気が加熱される。これにより、ヒートポンプのコンデンサを通過する熱媒体の熱で車室が暖房される。
【0006】
一方、上記空調装置における空気通路には、ラジエータ周りを通過する空気の流速を調整するための送風機が設けられている。そして、車室の暖房時、冷却水回路におけるヒータコアの温度が低いほど、上記送風機の回転速度を低下させてラジエータ周りを通過する空気の流速が遅くなるようにしている。このようにラジエータ周りを通過する空気の流速を遅くすると、その空気がラジエータ周りを通過する際に冷却水の熱を受けやすくなるため、ラジエータ周りを通過した後の空気の温度が高くなる。従って、冷却水回路におけるヒータコアの温度が低いとき、すなわち冷却水回路の冷却水の温度が低いときでも、その冷却水の熱を用いて空気通路におけるラジエータ周りを通過した後の空気の温度を上昇させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−186643公報(段落[0010]、[0011]、[0037]、[0041]〜[0045]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の空調装置を用いることにより、車両に搭載された熱源からの廃熱で車室を暖房するとともに、同じく車両に搭載されたヒートポンプのコンデンサを通過する熱媒体の熱で車室を暖房することが可能にはなる。また、冷却水回路におけるヒータコアの温度が低くなるほど送風機の回転速度を低下させることで、空気通路におけるラジエータ周りを通過した後の空気の温度を高くすることが可能にはなる。ただし、これらによって車室を効果的に暖房できるか否かは不明である。
【0009】
これは、上記送風機の駆動を通じて空気通路におけるラジエータ周りを通過した後の空気の温度を高くできたとしても、その空気の流量が送風機の回転速度低下に伴って少なくなることは否めず、そのことが車室の効果的な暖房の妨げとなるためである。また、上記空気通路を流れる空気は、冷却水回路のヒータコア及びラジエータ並びにヒートポンプのコンデンサで加熱されるだけでなく、ヒートポンプのエバポレータでは冷却されることから、車室に入るときの上記空気の温度を必ずしも高くできるとは限らないことも、車室を効果的に暖房できない原因となる。
【0010】
このように、特許文献1の空調装置を用いたとしても、車室を効果的に暖房できるとは言い切れない。こうしたことから、電気自動車やハイブリッド自動車など、搭載される熱源が少ない車両において、熱源からの廃熱とヒートポンプのコンデンサを通過する熱媒体の熱とを用いて車室を暖房する際、その暖房をより一層効果的に行えるようにすることが望まれている。
【0011】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、熱源からの廃熱とヒートポンプのコンデンサを通過する熱媒体の熱とを用いて車室を暖房する際、その暖房を効果的に行うことができる車両の空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、車室の暖房が熱源からの廃熱とヒートポンプのコンデンサを通過する熱媒体の熱とを用いて行われる。このときには、ヒートポンプのエバポレータに向けて空気が送られるよう送風機が駆動される。そして、送風機の駆動を通じてエバポレータに向けて空気が送られると、その空気の熱が同エバポレータを通過する熱媒体に付与される。
【0013】
ここで、ヒートポンプにおいては、エバポレータを通過する熱媒体が上記空気からの熱を受けて温度上昇すると、その熱媒体がコンプレッサにより圧縮されて昇温した状態となってコンデンサを通過する際の同熱媒体の温度も上昇する。このようにコンデンサを通過する熱媒体の温度を上昇させることで、同熱媒体の熱による車室の暖房能力が大きくなり、その熱媒体の熱を用いた車室の暖房が効果的に行われる。従って、送風機の風量を多くするほど、ヒートポンプのエバポレータにて熱媒体に付与される空気の熱が多くなることから、ヒートポンプのコンデンサを通過する熱媒体の熱による車室の暖房能力が大きくなり、その熱媒体の熱を用いた車室の暖房がより一層効果的に行われるようになる。
【0014】
ただし、上記エバポレータを通過する熱媒体に熱を付与した後の空気は、その熱の付与に伴って温度低下することになる。このため、車両における熱源とヒートポンプとの搭載位置によっては、上記熱の付与後に温度低下した空気が車両の熱源に流れて同熱源を冷却してしまうおそれがある。この場合、車両の熱源が上記空気により冷却されてしまう分、熱源からの廃熱による車室の暖房能力が小さくなることは避けられない。従って、送風機の風量を多くするほど、車両の熱源が上記空気によって冷却されやすくなることから、その熱源からの廃熱による車室の暖房能力が小さくなり、同熱源からの廃熱を利用した車室の暖房を効果的に行うことが困難になる。
【0015】
この点、請求項1記載の発明では、車両の熱源からの廃熱による車室の暖房能力とヒートポンプの熱媒体の熱による車室の暖房能力との合計値に基づき送風機が駆動制御されるため、それら暖房能力の合計値が大きくなるように送風機を駆動することが可能になる。このように、車両の熱源からの廃熱による車室の暖房能力とヒートポンプの熱媒体の熱による車室の暖房能力との合計値が大きくなるように送風機を駆動することで、熱源からの廃熱とヒートポンプの熱媒体の熱とを用いて車室を暖房する際、その暖房を効果的に行うことができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、車室の暖房時に送風機の駆動を通じてエバポレータに向けて空気を送る際、熱源からの廃熱による車室の暖房能力及びヒートポンプの熱媒体の熱による車室の暖房能力の合計値が基準値以上になるよう上記送風機が駆動される。こうした送風機の駆動の仕方として、より具体的には、例えば請求項3記載の発明のような駆動の仕方をすることが考えられる。すなわち、送風機の風量に応じた上記合計値を同風量別にそれぞれ推定し、それら推定した合計値のうち同合計値が上記基準値以上となるときの風量が得られるよう送風機を駆動制御する。以上により、車室を暖房する際の暖房能力を上記基準値以上の大きい値とすることができ、ひいては車室の効果的な暖房を実現することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、車室の暖房時に送風機の駆動を通じてエバポレータに向けて空気を送る際、熱源からの廃熱による車室の暖房能力及びヒートポンプの熱媒体の熱による車室の暖房能力の合計値が最大となるよう上記送風機が駆動される。こうした送風機の駆動の仕方として、より具体的には、例えば請求項5記載の発明のような駆動の仕方をすることが考えられる。すなわち、送風機の風量に応じた上記合計値を同風量別にそれぞれ推定し、それら推定した合計値のうち同合計値が最大となるときの風量が得られるよう送風機を駆動制御する。以上により、車室を暖房する際の暖房能力を最大とすることができ、ひいては車室の効果的な暖房を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の空調装置の全体構成を示す略図。
【図2】送風機の駆動電圧の変化に伴う暖房能力の変化を示すグラフ。
【図3】車室の暖房時における送風機の駆動手順を示すフローチャート。
【図4】QH算出・記憶処理の詳細な実行手順を示すフローチャート。
【図5】第2実施形態の空調装置の電気的構成を示すブロック図。
【図6】第2実施形態でのQH算出・記憶処理の実行手順を示すフローチャート。
【図7】送風機の駆動電圧の変化に伴う暖房能力の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明を電気自動車の空調装置に具体化した第1実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、電気自動車においては、モータ及びギヤ機構等からなるパワーユニット1が搭載されており、そのパワーユニット1が電気自動車における熱源となっている。電気自動車には、熱源であるパワーユニット1を冷却するための冷却水をウォータポンプ2の駆動を通じて循環させる冷却水回路3が設けられている。そして、冷却水回路3内の冷却水がパワーユニット1との間で熱交換されることにより、そのパワーユニット1が上記冷却水によって冷却されるとともに同パワーユニット1からの廃熱が上記冷却水によって回収される。
【0021】
電気自動車には、車室5の冷房や暖房といった空調を行うための空調装置が設けられている。この空調装置は、上記冷却水回路3に設けられたヒータコア4を備えており、そのヒータコア4を通過する冷却水の熱で空気通路11を介して車室5に送られる空気を加熱することにより車室5を暖房する。ただし、電気自動車のような熱源(パワーユニット1)で生じる熱が少ない車両では、その熱源からの廃熱(直接的には冷却水の熱)を利用した車室5の暖房では暖房要求を満たせない可能性がある。このため、電気自動車には車室5の暖房を行うための装置として蒸気圧縮式のヒートポンプ6が搭載されており、電気自動車の空調装置は上記ヒートポンプ6を用いた車室5の暖房も行うことが可能となっている。
【0022】
上記ヒートポンプ6には、熱媒体を圧縮して吐出するコンプレッサ7が設けられている。そして、このコンプレッサ7の駆動を通じて、上記熱媒体がヒートポンプ6内を循環する。また、ヒートポンプ6は、コンプレッサ7により圧縮されて昇温した熱媒体からの放熱を行うコンデンサ8と、同コンデンサ8での放熱後の熱媒体を膨張させる膨張弁9と、同膨張弁9にて膨張して温度低下した熱媒体への吸熱を行うエバポレータ10とを備えている。こうしたヒートポンプ6では、コンプレッサ7の駆動を通じて、熱媒体がコンプレッサ7、コンデンサ8、膨張弁9、及びエバポレータ10といった機器を順に通過する。そして、ヒートポンプ6においては、上記コンデンサ8を通過する熱媒体が上記空気通路11を通過する空気と熱交換可能となっており、そのコンデンサ8を通過する高温の熱媒体で上記空気通路11を介して車室5に送られる空気を加熱することにより車室5が暖房される。
【0023】
ここで、ヒートポンプ6においては、エバポレータ10を通過する熱媒体の温度が高くなるほど、その熱媒体がコンプレッサ7により圧縮されて昇温した状態となってコンデンサ8を通過する際の同熱媒体の温度も上昇する。このようにコンデンサ8を通過する熱媒体の温度を高くすることができれば、その熱媒体の熱を用いた車室5の暖房が効果的に行われる。このため、電気自動車の空調装置には、車室5の暖房時にエバポレータ10に向けて空気(外気)を送る送風機12が設けられている。そして、車室5の暖房時には送風機12の駆動を通じてエバポレータ10に向けて空気が送られ、その空気とエバポレータ10を通過する冷えた熱媒体との間で熱交換が行われる。これにより、エバポレータ10を通過する冷えた熱媒体に対し上記空気の熱が付与されて同熱媒体の温度が上昇することから、その熱媒体の熱を用いた車室5の暖房が効果的に行われる。
【0024】
次に、空調装置の電気的構成について説明する。
空調装置には、同装置の各種機器を駆動制御するための電子制御装置21が設けられている。この電子制御装置21は、上記各種機器の駆動制御に係る演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えている。
【0025】
電子制御装置21の入力ポートには、以下に示すセンサ及びスイッチ等からの信号が入力される。
・冷却水回路3のヒータコア4を通過する冷却水の温度を検出する水温センサ22。
【0026】
・ヒートポンプ6におけるコンデンサ8内の圧力を検出する圧力センサ23。
・ヒートポンプ6におけるエバポレータ10の温度、言い換えれば同エバポレータ10内を通過する熱媒体の温度を検出するエバポレータ温度センサ24。
【0027】
・外気の温度、すなわち送風機12によりエバポレータ10周りに送られる空気の温度を検出する外気温センサ25。
・電気自動車の車速を検出する車速センサ26。
【0028】
・パワーユニット1におけるギヤ機構の潤滑油の温度を検出する油温センサ27。
電子制御装置21の出力ポートには、パワーユニット1を動作させるための各種機器の駆動回路、ウォータポンプ2の駆動回路、コンプレッサ7の駆動回路、及び送風機12の駆動回路等が接続されている。
【0029】
電子制御装置21は、車室の暖房時、ウォータポンプ2の駆動を通じて冷却水回路3を循環する冷却水によりパワーユニット1からの廃熱を回収する。この廃熱の回収によって温度上昇した冷却水がヒータコア4を通過する際、同冷却水の熱が空気通路11を通過する空気に付与される。このようにヒータコア4での冷却水からの受熱により温度上昇した空気を空気通路11から車室5に送ることにより、パワーユニット1からの廃熱を用いた車室5の暖房が行われる。
【0030】
また、電子制御装置21は、車室5の暖房時、上述したパワーユニット1からの廃熱を用いた車室5の暖房の他に、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を利用した車室5の暖房も行う。詳しくは、コンプレッサ7の駆動を通じてヒートポンプ6の熱媒体を循環させる。そして、コンプレッサ7により圧縮されて高温となった熱媒体がコンデンサ8を通過する際には、この熱媒体の熱が空気通路11を通過する空気に付与される。このようにコンデンサ8での冷却水からの受熱により温度上昇した空気を空気通路11から車室5に送ることにより、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を用いた車室5の暖房が行われる。
【0031】
更に、電子制御装置21は、上述したようにヒートポンプ6を用いて車室5の暖房を行う際、その暖房を効果的なものとするため、送風機12の駆動を通じてエバポレータ10に向けて空気を送る。これにより、送風機12によりエバポレータ10周りに送られる比較的温度の高い空気と、そのエバポレータ10内を通過する冷えた熱媒体との間で熱交換が行われる。こうした熱交換が行われると、エバポレータ10を通過する冷えた熱媒体に対し上記空気の熱が付与されて同熱媒体の温度が上昇することから、その熱媒体がコンプレッサ7により圧縮されて昇温した状態となってコンデンサ8を通過する際の同熱媒体の温度も上昇する。その結果、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を用いた車室5の暖房が効果的に行われる。
【0032】
ところで、送風機12の駆動を通じて上記エバポレータ10周りに送られた空気は、そのエバポレータ10内を通過する冷えた熱媒体に熱を付与した後、その熱の付与に伴って温度低下することになる。このため、電気自動車におけるパワーユニット1とヒートポンプ6との搭載位置によっては、上記熱の付与後に温度低下した空気がパワーユニット1周りに流れて同ユニット1を冷却してしまうおそれがある。この場合、パワーユニット1が上記空気により冷却されてしまう分、同ユニット1からの廃熱による車室5の暖房能力が小さくなり、ひいては上記廃熱を利用した車室5の暖房を効果的に行えなくなるおそれがある。このときの送風機12の駆動電圧viの増加、言い換えれば送風機12の風量の増加に伴う、パワーユニット1からの廃熱による車室5の暖房能力Qhcの変化、ヒートポンプ6のコンデンサ8を通過する熱媒体の熱による車室5の暖房能力Qhp、及び、それら暖房能力Qhc,Qhpの合計値である全体暖房能力QHの変化を図2に示す。
【0033】
なお、上記暖房能力Qhcは、冷却水回路3のヒータコア4内を通過する冷却水から空気通路11を流れる空気に対し付与することの可能な単位時間当たりの熱量を表している。また、上記暖房能力Qhpは、ヒートポンプ6のコンデンサ8内を通過する熱媒体から空気通路11を流れる空気に対し付与することの可能な単位時間当たりの熱量を表している。従って、上記全体暖房能力QHは、ヒータコア4内を通過する冷却水から空気通路11を流れる空気に対し付与することの可能な単位時間当たりの熱量、及び、コンデンサ8内を通過する熱媒体から空気通路11を流れる空気に対し付与することの可能な単位時間当たりの熱量の合計値を表している。図2から分かるように、送風機12の風量(駆動電圧vi)が増加するほど、暖房能力Qhpは徐々に大きくなる一方、暖房能力Qhcは徐々に小さくなってゆく。従って、全体暖房能力QHは、送風機12の風量の増加に伴い、徐々に大きくなって最大値QHmaxとなり、その後に徐々に小さくなってゆくという推移傾向を示す。
【0034】
電子制御装置21は、図2に示す暖房能力Qhc,Qhpの推移傾向を考慮して全体暖房能力QHに基づき送風機12の駆動制御を行い、その駆動制御を通じて上記全体暖房能力QHが大きくなるように送風機12を駆動する。より具体的には、送風機12の駆動電圧vi(風量)に応じた全体暖房能力QHを駆動電圧vi別(風量別)にそれぞれ推定する。例えば、駆動電圧viを送風機12を駆動するための制御範囲内でv1、v2、v3、・・・・・vnと徐々に大きくしたと仮定して、それら各駆動電圧vi(i=1〜n)に対応した全体暖房能力QHをそれぞれ推定する。そして、それら推定した全体暖房能力QHのうち、最大値QHmaxに対応した全体暖房能力QHが得られる駆動電圧vi(駆動電圧VQmax)で送風機12を駆動する。言い換えれば、全体暖房能力QHが最大値QHmaxとなる風量が得られるよう送風機12を駆動する。これにより、全体暖房能力QHが最大値QHmaxとなるため、パワーユニット1からの廃熱とヒートポンプ6の熱媒体の熱とを用いて車室5を暖房する際、その暖房を効果的に行うことができる。
【0035】
次に、車室5の暖房時に送風機12を駆動する際の詳細な手順について、送風機駆動ルーチンを示す図3のフローチャートを参照して説明する。この送風機駆動ルーチンは、電子制御装置21を通じて、車室5の暖房時に例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0036】
同ルーチンにおいては、まず、送風機12の駆動電圧vi(i=1〜n)毎の全体暖房能力QHの推定値の算出中であるか否かを判断するためのフラグFが「0(算出中でない)」であるか否かの判断が行われる(S101)。ここで肯定判定であれば、上記駆動電圧vi(i=1〜n)毎の全体暖房能力QHの推定値の算出タイミングであるか否かが判断される(S102)。例えば、上記駆動電圧vi(i=1〜n)毎の全体暖房能力QHの推定値の算出が完了してから予め定められた所定時間が経過すると、S102で上記駆動電圧vi(i=1〜n)毎の全体暖房能力QHの推定値の算出タイミングである旨判断される。
【0037】
S102で肯定判定がなされると、S103の処理として、駆動電圧viをv1、v2、v3、・・・・・vnと徐々に大きくしたと仮定して、それら各駆動電圧vi(i=1〜n)に対応した全体暖房能力QHの推定値をそれぞれ算出し、それら算出された推定値を電子制御装置21のRAMに記憶する処理(QH算出・記憶処理)が実行される。このQH算出・記憶処理が開始されると、フラグFが「1(算出中)」に設定される(S104)。フラグFが「1」に設定されているときには、S101で否定判定がなされるため、S102の処理をスキップしてS103のQH算出・記憶処理が実行される。
【0038】
また、S103のQH算出・記憶処理が開始されると、S105の処理として、各駆動電圧vi(i=1〜n)に対応した全体暖房能力QHの推定値の算出及び記憶が完了したか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、フラグFが「0(算出中でない)」に設定される(S106)。その後、S103で推定した各駆動電圧viに対応する全体暖房能力QHのうちの最大値QHmaxが得られる駆動電圧vi(駆動電圧VQmax)で送風機12が駆動される(S107)。なお、このS107の実行時にS103での全体暖房能力QHの推定値の算出及び記憶が完了していない場合には、前回完了時に得られた駆動電圧VQmaxで送風機12が駆動される。
【0039】
次に、送風機駆動ルーチンにおけるS103のQH算出・記憶処理の詳細について、QH算出・記憶ルーチンを示す図4のフローチャートを参照して説明する。このQH算出・記憶ルーチンは、送風機駆動ルーチンにおけるS103(図3)に進む毎に電子制御装置21を通じて実行される。
【0040】
図4のQH算出・記憶ルーチンにおいては、まず、全体暖房能力QHの推定値の算出に用いる送風機12の駆動電圧viが設定される(S201)。詳しくは、S201に進む毎に、全体暖房能力QHの推定値の算出に用いる上記駆動電圧viをv1、v2、v3、・・・・・vnと徐々に大きい値に設定してゆく。例えば、QH算出・記憶処理が開始されてから最初にS201に進んだときには、全体暖房能力QHの推定値の算出に用いる送風機12の駆動電圧viが「v1」に設定される。このように駆動電圧viが設定された後、その駆動電圧viで送風機12を駆動したと仮定したときのヒータコア4での暖房能力Qhc、言い換えればパワーユニット1からの廃熱による車室5の暖房能力Qhcを推定するための処理(S202〜S204)が実行される。
【0041】
この一連の処理では、まずパワーユニット1で発生する単位時間当たりの熱量Qev1が推定される(S202)。この熱量Qev1は、パワーユニット1におけるモータの単位時間当たりの発熱量、及び、パワーユニット1におけるギヤ機構の単位時間当たりの発熱量によって変化する。そして、上記モータの単位時間当たりの発熱量はモータを駆動するための電力に基づいて推定することが可能であり、上記ギヤ機構の単位時間当たりの発熱量は電気自動車の車速及び同ギヤ機構の潤滑油の油温によって推定することが可能である。従って、S202の処理では、モータ(パワーユニット1)に対する駆動指令値等から求められる現在のモータの駆動電力、車速センサ26によって検出される現在の電気自動車の車速、及び、油温センサ27によって検出される現在の油温といった各種パラメータに基づき、パワーユニット1で発生する単位時間当たりの熱量Qev1が推定される。なお、こうした熱量Qev1の推定は、上記各種パラメータに基づき、予め実験等により設定されたマップを参照して行うことが考えられる。
【0042】
続いて、パワーユニット1から奪われる単位時間当たりの熱量Qev2が推定される(S203)。この熱量Qev2は、送風機12から送られる空気とパワーユニット1との間の熱伝達率、同空気に対するパワーユニット1の放熱面積、パワーユニット1を通過する冷却水回路3の冷却水の温度、及び送風機12からパワーユニット1周りに送られる空気(外気)の温度によって変化する。上記熱伝達率は送風機12の風量(駆動電圧vi)に基づいて推定することが可能であり、上記放熱面積は電気自動車毎に定められる固定値である。従って、S203の処理では、S201で設定された駆動電圧vi、水温センサ22によって検出される現在の冷却水の温度、及び、外気温センサ25によって検出される外気の温度といった各種パラメータに基づき、パワーユニット1から奪われる単位時間当たりの熱量Qev2が推定される。なお、こうした熱量Qev2の推定は、上記各種パラメータに基づき、予め実験等により設定されたマップを参照して行うことが考えられる。
【0043】
そして、上述したように推定された熱量Qev1,Qev2に基づき、S201で設定された駆動電圧vi(ここでは「v1」)で送風機12を駆動したと仮定したときのヒータコア4での暖房能力Qhc、言い換えればパワーユニット1からの廃熱による車室5の暖房能力Qhcが推定される(S204)。具体的には、熱量Qev1から熱量Qev2を減算した値が上記暖房能力Qhcの推定値として算出される。
【0044】
その後、駆動電圧vi(「v1」)で送風機12を駆動したと仮定したときのコンデンサ8での暖房能力Qhp、すなわちヒートポンプ6のコンデンサ8を通過する熱媒体の熱による車室5の暖房能力Qhpが推定される(S205)。この暖房能力Qhpは、コンプレッサ7の回転速度、コンデンサ8内の圧力、送風機12からエバポレータ10周りに送られる空気(外気)の温度、エバポレータ10を通過する熱媒体の温度、及び、送風機12の風量(駆動電圧vi)に基づいて変化する。なお、上記コンプレッサ7の回転速度の現在値はコンプレッサ7の駆動指令値等から推定することが可能であり、コンデンサ8内の現在の圧力は圧力センサ23によって検出することが可能であり、エバポレータ10内を通過する熱媒体の温度はエバポレータ温度センサ24によって検出することが可能である。そして、S205の処理では、コンプレッサ7の回転速度の現在値、エバポレータ10内を通過する現在の熱媒体の温度、現在の外気の温度、及びS201で設定された駆動電圧vi(「v1」)といった各種パラメータに基づいて上記暖房能力Qhpが、その駆動電圧viで送風機12を駆動したと仮定した場合の推定値として算出される。なお、こうした暖房能力Qhpの推定は、上記各種パラメータに基づき、予め実験等により設定されたマップを参照して行うことが考えられる。
【0045】
上述したように、S201で設定された駆動電圧vi(「v1」)で送風機12を駆動したと仮定したときの暖房能力Qhc,Qhpが算出されると、それら暖房能力Qhc,Qhpの合計値が全体暖房能力QHとして算出される(S206)。このS206の処理では、全体暖房能力QH(推定値)が算出されると、その算出された全体暖房能力QHが電子制御装置21のRAMに記憶される。そして、S201で設定される駆動電圧viをv1からv2、v3、・・・・・vnと順に変化させてゆき、各駆動電圧viに対応した全体暖房能力QHをS202〜S206の処理を通じて駆動電圧vi毎に推定(算出)し、その推定した全体暖房能力QHを電子制御装置21のRAMに記憶してゆく。そして、各駆動電圧vi(v1、v2、v3、・・・・・vn)に対応した全体暖房能力QHの推定及び記憶が完了すると、図3の送風機駆動ルーチンにおけるS105の処理で、全体暖房能力QH(推定値)の推定及び記憶が完了した旨判断される。
【0046】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)車室5を暖房する際には、パワーユニット1からの廃熱を用いた車室5の暖房の他に、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を利用した車室5の暖房も行われる。このときには、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を用いた車室5の暖房を効果的に行うべく、送風機12の駆動を通じてエバポレータ10に向けて空気(外気)が送られる。ただし、電気自動車におけるパワーユニット1とヒートポンプ6との搭載位置によっては、エバポレータ10周りを通過して温度低下した上記空気がパワーユニット1を冷却してしまい、パワーユニット1からの廃熱による車室5の暖房を効果的に行えなくなるおそれがある。こうしたことを考慮して、上記送風機12の駆動制御が、パワーユニット1からの廃熱による車室5の暖房能力Qhcと、ヒートポンプ6のコンデンサ8を通過する熱媒体の熱による車室5の暖房能力Qhpとの合計値である全体暖房能力QHに基づいて行われる。詳しくは、その全体暖房能力QHが最大値QHmaxとなるよう上記送風機12が駆動される。これにより、パワーユニット1からの廃熱とヒートポンプ6の熱媒体の熱とを用いて車室5を暖房する際、その暖房を効果的に行うことができる。
【0047】
(2)上記全体暖房能力QHが最大値QHmaxとなるよう上記送風機12を駆動する仕方として、より具体的には次のような駆動の仕方が採用される。すなわち、送風機12の駆動電圧vi(風量)に応じた全体暖房能力QHを駆動電圧vi別(風量別)にそれぞれ推定する。例えば、駆動電圧viを送風機12を駆動するための制御範囲内でv1、v2、v3、・・・・・vnと徐々に大きくしたと仮定して、それら各駆動電圧vi(i=1〜n)に対応した全体暖房能力QHをそれぞれ推定する。そして、それら推定した全体暖房能力QHのうち、最大値QHmaxに対応した全体暖房能力QHが得られる駆動電圧vi(駆動電圧VQmax)で送風機12を駆動する。言い換えれば、全体暖房能力QHが最大値QHmaxとなる風量が得られるよう送風機12を駆動する。これにより、的確に全体暖房能力QHが最大値QHmaxとなるように、送風機12を駆動することができる。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図5及び図6に基づき説明する。
図5は、この実施形態の空調装置における電気的構成を示すブロック図である。この実施形態は、モータとエンジン(内燃機関)とを原動機として搭載するハイブリッド自動車に本発明を適用したものであり、エンジン31が上記ハイブリッド自動車における熱源となっている。こうしたハイブリッド自動車では、エンジン31からの廃熱が冷却水回路3の冷却水により回収されて車室5の暖房に用いられる。
【0049】
この実施形態においては、電子制御装置21の入力ポートに、エンジン31の運転に関わる以下の各種センサが接続されている。
・ハイブリッド自動車の運転者により踏み込み操作されるアクセルペダルの操作量(アクセル操作量)を検出するためのアクセルポジションセンサ32。
【0050】
・エンジン31の吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルポジションセンサ33。
・エンジン31の吸気通路を通過する空気の量(エンジン31の吸入空気量)を検出するエアフローメータ34。
【0051】
・エンジン31におけるクランクシャフトの回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ35。
また、電子制御装置21の出力ポートには、エンジン31を運転するための各種機器の駆動回路等が接続されている。
【0052】
ここで、本実施形態におけるQH算出・記憶処理について、QH算出・記憶ルーチンを示す図6のフローチャートを参照して説明する。この実施形態のQH算出・記憶ルーチンも、図3の送風機駆動ルーチンにおけるS103に進む毎に電子制御装置21を通じて実行される。
【0053】
図6のQH算出・記憶ルーチンにおいては、まず、全体暖房能力QHの推定値の算出に用いる送風機12の駆動電圧viが設定される(S201)。例えば、QH算出・記憶処理が開始されてから最初にS301に進んだときには、全体暖房能力QHの推定値の算出に用いる送風機12の駆動電圧viが「v1」に設定される。このように駆動電圧viが設定された後、その駆動電圧viで送風機12を駆動したと仮定したときのヒータコア4での暖房能力Qhc、言い換えればエンジン31からの廃熱による車室5の暖房能力Qhcを推定するための処理(S302〜S304)が実行される。
【0054】
この一連の処理では、まずエンジン31で発生する単位時間当たりの熱量Qhv1が推定される(S302)。この熱量Qhv1は、エンジン31の単位時間当たりの発熱量であり、予め実験等により定められたマップを参照してエンジン負荷及びエンジン回転速度に基づいて推定される。なお、上記エンジン負荷は、エンジン31の1サイクル当たりに燃焼室に吸入される空気の量であり、エンジン回転速度及びエンジン31の吸入空気量に対応するパラメータに基づいて求めることが可能である。上記エンジン回転速度は、クランクポジションセンサ35からの検出信号に基づいて求められる。また、上記吸入空気量に対応するパラメータとしては、アクセル開度、スロットル開度、及び吸入空気量といったパラメータを用いることが可能である。
【0055】
続いて、エンジン31から奪われる単位時間当たりの熱量Qhv2が推定される(S303)。この熱量Qhv2は、送風機12から送られる空気とエンジン31との間の熱伝達率、同空気に対するエンジン31の放熱面積、エンジン31を通過する冷却水回路3の冷却水の温度、及び送風機12からエンジン31周りに送られる空気(外気)の温度によって変化する。上記熱伝達率は送風機12の風量(駆動電圧vi)に基づいて推定することが可能であり、上記放熱面積はハイブリッド自動車毎に定められる固定値である。従って、S303の処理では、S301で設定された駆動電圧vi、水温センサ22によって検出される現在の冷却水の温度、及び、外気温センサ25によって検出される外気の温度といった各種パラメータに基づき、エンジン31から奪われる単位時間当たりの熱量Qhv2が推定される。なお、こうした熱量Qhv2の推定は、上記各種パラメータに基づき、予め実験等により設定されたマップを参照して行うことが考えられる。
【0056】
そして、上述したように推定された熱量Qhv1,Qhv2に基づき、S301で設定された駆動電圧vi(ここでは「v1」)で送風機12を駆動したと仮定したときのヒータコア4での暖房能力Qhc、言い換えればエンジン31からの廃熱による車室5の暖房能力Qhcが推定される(S304)。具体的には、熱量Qhv1から熱量Qhv2を減算した値が上記暖房能力Qhcの推定値として算出される。
【0057】
その後、駆動電圧vi(「v1」)で送風機12を駆動したと仮定したときのコンデンサ8での暖房能力Qhp、すなわちヒートポンプ6のコンデンサ8を通過する熱媒体の熱による車室5の暖房能力Qhpが推定される(S305)。詳しくは、コンプレッサ7の回転速度の現在値、エバポレータ10内を通過する現在の熱媒体の温度、現在の外気の温度、及びS301で設定された駆動電圧vi(「v1」)に基づいて上記暖房能力Qhpが、その駆動電圧viで送風機12を駆動したと仮定した場合の推定値として算出される。
【0058】
上述したように、S301で設定された駆動電圧vi(「v1」)で送風機12を駆動したと仮定したときの暖房能力Qhc,Qhpが算出されると、それら暖房能力Qhc,Qhpの合計値が全体暖房能力QHとして算出される(S306)。このS306の処理では、全体暖房能力QH(推定値)が算出されると、その算出された全体暖房能力QHが電子制御装置21のRAMに記憶される。そして、S301で設定される駆動電圧viをS301に進む毎にv1からv2、v3、・・・・・vnと順に変化させてゆき、各駆動電圧viに対応した全体暖房能力QHをS302〜S306の処理を通じて駆動電圧vi毎に推定(算出)し、その推定した全体暖房能力QHを電子制御装置21のRAMに記憶してゆく。
【0059】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(3)車室5を暖房する際には、エンジン31からの廃熱を用いた車室5の暖房の他に、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を利用した車室5の暖房も行われる。このときには、ヒートポンプ6におけるコンデンサ8を通過する熱媒体の熱を用いた車室5の暖房を効果的に行うべく、送風機12の駆動を通じてエバポレータ10に向けて空気(外気)が送られる。ただし、ハイブリッド自動車におけるエンジン31とヒートポンプ6との搭載位置によっては、エバポレータ10周りを通過して温度低下した上記空気がエンジン31を冷却してしまい、エンジン31からの廃熱による車室5の暖房を効果的に行えなくなるおそれがある。こうしたことを考慮して、上記送風機12の駆動制御が、エンジン31からの廃熱による車室5の暖房能力Qhcと、ヒートポンプ6のコンデンサ8を通過する熱媒体の熱による車室5の暖房能力Qhpとの合計値である全体暖房能力QHに基づいて行われる。詳しくは、その全体暖房能力QHが最大値QHmaxとなるよう上記送風機12が駆動される。これにより、パワーユニット1からの廃熱とヒートポンプ6の熱媒体の熱とを用いて車室5を暖房する際、その暖房を効果的に行うことができる。
【0060】
(4)第1実施形態における(2)の効果と同等の効果が得られる。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
【0061】
・第1及び第2実施形態において、全体暖房能力QHが最大値QHmaxとなるよう送風機12を駆動するのではなく、全体暖房能力QHが上記最大値QHmaxよりも小さい基準値QHk以上となるよう送風機12を駆動してもよい。具体的には、第1及び第2実施形態と同様、送風機12の駆動電圧vi(風量)に応じた全体暖房能力QHを駆動電圧vi別(風量別)にそれぞれ推定する。例えば、駆動電圧viを送風機12を駆動するための制御範囲内でv1、v2、v3、・・・・・vnと徐々に大きくしたと仮定して、それら各駆動電圧vi(i=1〜n)に対応した全体暖房能力QHをそれぞれ推定する。そして、それら推定した全体暖房能力QHのうち、基準値QHk以上となる全体暖房能力QHが得られる駆動電圧vi、すなわちv1、v2、v3、・・・・・vnのうち図7における「VQ1〜VQ2」の範囲内にあるもののうちのいずれかで送風機12を駆動する。言い換えれば、全体暖房能力QHが基準値QHk以上となる風量が得られるよう送風機12を駆動する。これにより、全体暖房能力QHが基準値QHk以上の大きい値となるように、送風機12を的確に駆動することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…パワーユニット、2…ウォータポンプ、3…冷却水回路、4…ヒータコア、5…車室、6…ヒートポンプ、7…コンプレッサ、8…コンデンサ、9…膨張弁、10…エバポレータ、11…空気通路、12…送風機、21…電子制御装置(制御手段)、22…水温センサ、23…圧力センサ、24…エバポレータ温度センサ、25…外気温センサ、26…車速センサ、27…油温センサ、31…エンジン、32…アクセルポジションセンサ、33…スロットルポジションセンサ、34…エアフローメータ、35…クランクポジションセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された熱源からの廃熱で車室を暖房するとともに、同じく車両に搭載されたヒートポンプのコンデンサを通過する熱媒体の熱で車室を暖房する車両の空調装置において、
前記ヒートポンプのエバポレータに向けて空気を送ることにより同エバポレータを通過する熱媒体に対し前記空気の熱を付与する送風機と、
前記熱源からの廃熱による車室の暖房能力及び前記ヒートポンプの熱媒体の熱による車室の暖房能力の合計値に基づき前記送風機を駆動制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両の空調装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記熱源からの廃熱による車室の暖房能力及び前記ヒートポンプの熱媒体の熱による車室の暖房能力の合計値が基準値以上になるよう前記送風機を駆動制御する
請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記送風機の風量に応じた前記合計値を同風量別にそれぞれ推定し、それら推定した合計値のうち同合計値が前記基準値以上となるときの風量が得られるよう前記送風機を駆動制御する
請求項2記載の車両の空調装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記熱源からの廃熱による車室の暖房能力及び前記ヒートポンプの熱媒体の熱による車室の暖房能力の合計値が最大となるよう前記送風機を駆動制御する
請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記送風機の風量に応じた前記合計値を同風量別にそれぞれ推定し、それら推定した合計値のうち同合計値が最大となるときの風量が得られるよう前記送風機を駆動制御する
請求項4記載の車両の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6445(P2013−6445A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138551(P2011−138551)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】