説明

車両の荷室構造

【課題】荷室の組み立て作業の作業性を向上させることができ、構造を簡素化することができ、製作コストを低廉化することができる車両の荷室構造を提供する。
【解決手段】パーセルシェルフ10とボード20に、ヒンジ軸芯Oが車幅方向に沿うヒンジ部10H,20Hがそれぞれ設けられて、パーセルシェルフ10とボード20がヒンジ軸芯O周りに折り曲げ可能に構成され、ボード20の全体が水平に設定された第1使用状態と、後ろ側のボード部分23がヒンジ軸芯O周りに起立姿勢に折り曲げられた第2使用状態とに切り換え自在に構成され、第1使用状態と第2使用状態のいずれにおいても、前側のパーセルシェルフ部分11をヒンジ軸芯O周りに上下に折り曲げて荷物Nの収容空間Sを開閉可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
リアシートのシートバックの上端部側から前記上端部の後ろ側にわたって配置され、前記シートバックの後ろ側の荷室を上方から覆い隠すパーセルシェルフと、
前記荷室の上下方向中間部に配置され、荷物を載置させて支持するボードとを備えた車両の荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の車両の荷室構造では、ボードが車両前後方向に複数に分割されていた。そして、ボードの全体が荷室の下部に水平に位置した第1使用状態と、前側ボード部分が荷室の前部の上下方向中間部に水平に位置し、後ろ側ボード部分が起立してその上下方向中間部が前側ボード部分の後端部に当接した第2使用状態とに切り換え自在に構成されていた。前記第2使用状態では、後ろ側ボード部分の下端部は、フロアに載置されたトレイの嵌合溝に上方から内嵌している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3861732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、ボードを分割式としたことにより、分割されたボード部分同士の面倒な連結動作や切り離し動作が必要になり、荷室の組み立て作業の作業性が低下していた。また、ボード部分同士の連結部や他部品(トレイ)に対する連結部の構造が複雑になり、連結した状態の連結部の強度と耐久性を高めなければならなくなって製作コストが高くなっていた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、荷室の組み立て作業の作業性を向上させることができ、構造を簡素化することができ、製作コストを低廉化することができる車両の荷室構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
リアシートのシートバックの上端部側から前記上端部の後ろ側にわたって配置され、前記シートバックの後ろ側の荷室を上方から覆い隠すパーセルシェルフと、
前記荷室の上下方向中間部に配置され、荷物を載置させて支持するボードとを備えた車両の荷室構造であって、
前記パーセルシェルフとボードに、ヒンジ軸芯が車幅方向に沿うヒンジ部がそれぞれ設けられて、前記パーセルシェルフとボードが前記ヒンジ軸芯周りに折り曲げ可能に構成され、
前記ボードの全体が水平に設定された第1使用状態と、前記ボードのヒンジ部よりも後ろ側のボード部分が前記ボードのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに起立姿勢に折り曲げられた第2使用状態とに切り換え自在に構成され、
前記第1使用状態と第2使用状態のいずれにおいても、前記パーセルシェルフのヒンジ部よりも前側のパーセルシェルフ部分を、前記パーセルシェルフのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに上下に折り曲げて前記荷物の収容空間を開閉可能に構成されている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、ボードの全体が水平に設定された第1使用状態では、前記ボードとパーセルシェルフとの間の荷物の収容空間を大きく形成することができ、大きな荷物をボードに載置して収容することができる。
そして、ボードのヒンジ部よりも後ろ側のボード部分がボードのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに起立姿勢に折り曲げられた第2使用状態では、ボードのヒンジ部よりも後ろ側のボード部分と、前側のボード部分と、シートバックと、パーセルシェルフとによって荷物の収容空間を形成することができる。
すなわち、シートバックの後方に、荷室よりも深さが浅く、後方への奥行きが短く、かつ、開閉する前側のパーセルシェル部分で覆われた荷物の収容空間を形成することができる。
これにより、リアシートの乗員により出し入れが頻繁に行われる鞄等の手荷物を車室内側から荷物の収容空間に容易に出し入れできる。しかも、走行時の振動で鞄等の手荷物の後方への移動を前記起立姿勢の後ろ側のボード部分で阻止することができて、前記手荷物が手の届かない荷室の後方部位に落下することがない。
【0007】
パーセルシェルフとボードは互いに分離できないので、荷室のパターンを変更する度に、ボード部分同士の面倒な連結や切り離し動作を行う必要がなく、ボード部分同士の折り曲げ動作のみで荷室のパターンを第1使用状態から第2使用状態に、あるいはその逆の第2使用状態から第1使用状態に変更することができる。その結果、荷室の組み立て作業の作業性を向上させることができる。
また、上記のように、パーセルシェルフ部分同士又はボード部分同士を分離しないので、複雑で高強度のヒンジ構造を必要とせず、構造を簡素化することができ、製作コストを低廉化することができる。
さらに、前記第1使用状態においても、パーセルシェルフのヒンジ部よりも前方の前側パーセルシェルフ部分を、パーセルシェルフのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに上下に折り曲げて荷物の収容空間を開閉可能に構成されているので、車室内から荷物の収容空間に容易にアクセスすることができる。
これにより、乗員が車外に出てからバックドアを開けて荷室の荷物を取り出すのではなく、リアシートに乗ったまま荷室の荷物を出し入れすることができる。(請求項1)
【0008】
本発明において、
前記ボードのヒンジ部よりも後ろ側のボード部分に設けられた第1係止部が、前記パーセルシェルフに設けられた第1被係止部に前記第2使用状態において係止することで、前記後ろ側のボード部分が前記起立姿勢に保持されると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0009】
前記後ろ側のボード部分に設けられた第1係止部をパーセルシェルフに設けられた第1被係止部に係止することで、後ろ側ボード部分を起立姿勢に保持することができ、後ろ側のボード部分を起立姿勢に保持する作業を簡単化することができる。(請求項2)
【0010】
本発明において、
前記ボードの車幅方向両端部に第2被係止部が形成され、
前記第1使用状態において、前記ボードとパーセルシェルフの間の荷物の収容空間を前側荷物収容空間と後ろ側荷物収容空間とに仕切る第1ネット部材が前記パーセルシェルフとボードに架け渡し可能に構成され、
前記第1ネット部材の上端部に設けられた第2係止部が前記パーセルシェルフの第1被係止部に係止するとともに、前記第1ネット部材の下端部に設けられたフックが前記ボードの第2被係止部に係止すると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0011】
荷室の上下方向中間部に車両前後方向に複数の収容空間(前側荷物収容空間と後ろ側荷物収容空間)を設けることができ、荷物を効率よく整理整頓することができる。そして、走行による振動で複数の荷物が混ざってしまうことを防ぐことができる。
また、前記第1ネット部材の上端部に設けられた第2係止部が前記パーセルシェルフの第1被係止部に係止するとともに、前記第1ネット部材の下端部に設けられたフックがボードの第2被係止部に係止するから、第1ネット部材をパーセルシェルフとボードに架け渡す作業を簡単化することができる。
さらに、荷物の収容空間を前側荷物収容空間と後ろ側荷物収容空間とに第1ネット部材で仕切っているから、例えば、板状の部材等で仕切る場合に比べると軽量化できるとともに、第1ネット部材を使用しない時に第1ネット部材をコンパクトに纏めて収納することができる。(請求項3)
【0012】
本発明において、
前記第1使用状態のボードに載置された荷物を第2ネット部材で覆うとともに、前記第2ネット部材の車幅方向両端部に設けられたフックを前記ボードの車幅方向両端部の第2被係止部に各別に係止可能に構成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0013】
第1使用状態のボードに載置された荷物を第2ネット部材で覆うことで、自動車走行時の振動による荷物の散乱を防ぐことができる。また、ボードに形成された第2被係止部を、第1ネット部材のフックの被係止部と第2ネット部材のフックの被係止部とに兼用するから、ボードの構造を簡素化することができるとともに、製作コストを低廉化することができる。(請求項4)
【0014】
本発明において、
前記ボードの車幅方向の端部を載置させて支持する複数の支持部材が、前記荷室の側壁から前記荷室内に突出した作用姿勢と、縦断面において側壁に沿った起立姿勢とに切り換え自在に設けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0015】
支持部材は荷室の側壁から前記荷室内に突出した作用姿勢でボードの車幅方向の端部を載置させて支持する。そして、支持部材でボードを支持しない時は支持部材は縦断面において側壁に沿った起立姿勢に設定される。これにより、支持部材でボードを支持しない時に荷室をより広く使用することができる。(請求項5)
【0016】
本発明において、
前記ボードに前記ヒンジ部が複数設けられ、
前記第2使用状態では、前記ボードの複数のヒンジ部のうち最も後ろ側のヒンジ部よりも後ろ側のボード部分が、前記ボードのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに起立姿勢に折り曲げられ、
前記パーセルシェルフに前記ヒンジ部が複数設けられ、
前記第1使用状態と第2使用状態のいずれにおいても、前記パーセルシェルフの複数のヒンジ部のうち最も前側のヒンジ部よりも前側のパーセルシェルフ部分が、前記パーセルシェルフのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに上下に折り曲げられて前記荷物の収容空間が開閉されると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0017】
前記ボードに前記ヒンジ部が複数設けられ、前記パーセルシェルフに前記ヒンジ部が複数設けられているから、ボードとパーセルシェルフをそれぞれ細かく折り曲げることができる。(請求項6)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、
荷室の組み立て作業の作業性を向上させることができ、構造を簡素化することができ、製作コストを低廉化することができる車両の荷室構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1使用状態の車両の荷室構造の斜視図
【図2】第1使用状態の車両の荷室構造の作用を示す斜視図
【図3】第1使用状態の車両の荷室構造において、第2ネット部材でボード上の荷物を覆った状態を示す斜視図
【図4】第1使用状態の車両の荷室構造において、パーセルシェルフとボードの間に第1ネット部材を架け渡した状態を示す斜視図
【図5】図4のD−D断面図
【図6】図3のX部の拡大斜視図
【図7】第2使用状態の車両の荷室構造の斜視図
【図8】図7のC−C断面図
【図9】別実施形態の作用を示す斜視図(パーセルシェルフは示していない)
【図10】別実施形態の斜視図(パーセルシェルフは示していない)
【図11】図10のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1,図2に自動車の後部の荷室1を示してある。この荷室1は、上端部にヘッドレスト2が連結されたリアシート3のシートバック4と、フロアパネル5と、荷室1の左右の内側壁を形成し、インナパネル(車体パネル)を車室内側(車幅方向内側)から覆う左右一対のクォータトリム6と、後壁を形成するテールエンドトリムと、シートバック4の上端部側から前記上端部の後ろ側にわたって配置され、荷室1を上方から覆い隠して荷物Nの盗難を防ぐパーセルシェルフ10と、荷室1の上下方向中間部に配置され、荷物Nを載置させて支持するボード20とで形成されている。
【0021】
インナパネルは金属で成形され、クォータトリム6・テールエンドトリム・パーセルシェルフ10・ボード20はそれぞれ樹脂で成形されている。シートバック4は車両前方側Frに倒伏自在であり、倒伏したシートバック4はシートクッション7(図5参照)の座面に重なる。また、シートバック4の背面がボード20の上面に車両前後方向で連続して荷室1が車両前方側Frに拡大される。
【0022】
パーセルシェルフ10は左右一対のクォータトリム6間に架設され、シートバック4の上端部の近傍からバックドア(図示せず)の近傍まで延びている。図1,図2,図5,図7,図8に示すように、パーセルシェルフ10に、ヒンジ軸芯Oが車幅方向に沿う薄肉ヒンジ10H(ヒンジ部に相当)が設けられて、パーセルシェルフ10がヒンジ軸芯O周りに折り曲げ可能に構成されている。パーセルシェルフ10は、薄肉ヒンジ10Hによって互いに分離不能な前側のパーセルシェルフ部分11と後ろ側のパーセルシェルフ部分12とに区分けされている。
【0023】
また、ボード20に、ヒンジ軸芯Oが車幅方向に沿う前後一対の薄肉ヒンジ20H(ヒンジ部に相当)が設けられて、ボード20がヒンジ軸芯O周りに折り曲げ可能に構成されている。ボード20は、前後一対の薄肉ヒンジ20Hによって互いに分離不能な三枚のボード部分21,22,23に区分けされている。
【0024】
図11に示すように、ボード20を載置させて支持する複数の支持部材30が、クォータトリム6から荷室1内に突出した作用姿勢と、縦断面においてクォータトリム6に沿った起立姿勢とに切り換え自在に設けられている。図11は、別実施形態を示す図10の断面図であるが、本実施形態と前記別実施形態とではクォータトリム6の構造は同一であり、支持部材30の取り付け構造も同一である。
【0025】
作用姿勢の前記支持部材30は平面視で車幅方向外側が開放したU字状に形成され(図1参照)、支持部材30の開放端部がインナパネルに車両前後方向に沿う軸芯周りに揺動自在に連結されている。作用姿勢の支持部材30はクォータトリム6から荷室1内にほぼ水平に突出し、収納姿勢の支持部材30はほぼ鉛直の姿勢でクォータトリム6に沿う。インナパネルには支持部材30を作用姿勢に保持するロック機構(図示せず)がロック解除自在に設けられている。
【0026】
上記のように、支持部材30でボード20を支持しない時は支持部材30は縦断面においてクォータトリム6に沿った起立姿勢に設定されるから、支持部材30でボード20を支持しない時に荷室1をより広く使用することができる。
【0027】
本実施形態の荷室構造は、ボード20の全体が水平に設定された第1使用状態(図1参照)と、ボード20の薄肉ヒンジ20Hよりも後ろ側のボード部分23(三枚のボード部分のうちの最も後ろ側のボード部分)がボード20の薄肉ヒンジ20Hのヒンジ軸芯O周りに起立姿勢に折り曲げられた第2使用状態(図8参照)とに切り換え自在に構成されている。
【0028】
図8に示すように、前記後ろ側のボード部分23の後端部に第1係止リング24(第1係止部に相当)が設けられ、パーセルシェルフ10の薄肉ヒンジ10Hよりも後ろ側のパーセルシェルフ部分12の前端部に下方に突出するフック13(第1被係止部に相当)が設けられている。
【0029】
前記第1係止リング24は後ろ側のボード部分23の後端部に車幅方向に間隔を空けて複数設けられ、パーセルシェルフ10のフック13は後ろ側のパーセルシェルフ部分12の前端部に車幅方向に間隔を空けて複数設けられている。そして、前記第1係止リング24が後ろ側のパーセルシェルフ部分12のフック13に前記第2使用状態において係止することで、後ろ側のボード部分23が前記起立姿勢に保持されるよう構成されている。
【0030】
図1,図6に示すように、前記ボード20の薄肉ヒンジ20Hによって区分けされた三枚のボード部分21,22,23の車幅方向両端部には被係止部29(第2被係止部に相当)が形成されている。この被係止部29は、前記三枚のボード部分21,22,23の車幅方向の端部に、車両前後方向に間隔を空けて位置する一対の係止孔29Hを形成して構成されている。係止孔29Hは車幅方向に長い長方形状に形成されている。
【0031】
第1使用状態ではボード20の全体を使った単一の荷室1(複数の区画に仕切られていない荷室1)に荷物Nを載置して収容することができる。さらに、図4,図5に示すように、第1使用状態において、ボード20とパーセルシェルフ10の間の荷物Nの収容空間Sを、前側荷物収容空間S1と後ろ側荷物収容空間S2とに仕切る第1ネット部材26がパーセルシェルフ10とボード20に架け渡し可能に構成されている。
【0032】
第1ネット部材26の上端部には第2係止リング27(第2係止部に相当)が設けられ、第2係止リング27が後ろ側のパーセルシェルフ部分12のフック13に係止するとともに、第1ネット部材26の下端部に設けられたフック28が、前側のボード部分21の被係止部29、詳しくは、被係止部29の一対の係止孔29H間の軸部29J(図6参照)に係止する(ボード20を開閉する場合はこの軸部29Jを掴むことにより、ボード20を引き上げることができる)。
【0033】
これにより、荷室1の上下方向中間部に車両前後方向に複数の小分けした前側荷物収容空間S1と後ろ側荷物収容空間S2を設けることができ、荷物Nを効率よく整理整頓することができる。また、走行による振動で複数の荷物Nが混ざってしまうことを防ぐことができる。
【0034】
また、図3,図6に示すように、前記第1使用状態のボード20に載置された荷物Nを第2ネット部材39で覆うとともに、第2ネット部材39の車幅方向両端部に設けられたフック38を三枚のボード部分21,22,23の車幅方向両端部の被係止部29に各別に係止可能に構成されている。
第1使用状態のボード20に載置された荷物Nを第2ネット部材39で覆うことで、自動車走行時の振動による荷物Nの散乱を防ぐことができる。また、前記被係止部29を、第1ネット部材26のフック28の被係止部と第2ネット部材39のフック38の被係止部とに兼用するから、ボード20の構造を簡素化することができるとともに、製作コストを低廉化することができる。
【0035】
図2,図5,図8に示すように、前記第1使用状態と第2使用状態のいずれにおいても、前側のパーセルシェルフ部分11を、パーセルシェルフ10の薄肉ヒンジ10Hのヒンジ軸芯O周りに上下に折り曲げて荷物Nの収容空間Sを開閉可能に構成されている。
そして、パーセルシェルフ10の薄肉ヒンジ10Hよりも後方の後ろ側のパーセルシェルフ部分12を、パーセルシェルフ10の薄肉ヒンジ10Hのヒンジ軸芯O周りに上下に折り曲げて、前記ボード20の薄肉ヒンジ20Hよりも前側のボード部分21と前記前側のパーセルシェルフ部分11との間の荷物Nの収容空間Sを開閉可能に構成されている。つまり、荷物Nの収容空間Sを車両後方側Rrと車両前方側Frの双方から開閉することができる。
【0036】
上記の構成によれば、
(1) 前記第1使用状態では、ボード20とパーセルシェルフ10との間の荷物Nの収容空間Sを大きく形成することができ、大きな荷物Nをボード20に載置して収容することができる。
そして、前記第2使用状態では、ボード20の薄肉ヒンジ20Hよりも後ろ側のボード部分23と、前側のボード部分21と、前後方向中間のボード部分22と、シートバック4と、パーセルシェルフ10とによって荷物Nの収容空間Sを形成することができる。
すなわち、シートバック4の後方に、荷室1よりも深さが浅く、後方への奥行きが短く、かつ、開閉する前側のパーセルシェル部分で覆われた荷物Nの収容空間Sを形成することができる。
これにより、リアシート3の乗員により出し入れが頻繁に行われる鞄等の手荷物Nを車室内側から荷物Nの収容空間Sに容易に出し入れできる。しかも、走行時の振動で鞄等の手荷物Nの後方への移動を前記起立姿勢の後ろ側のボード部分23で阻止することができて、前記手荷物Nが手の届かない荷室1の後方部位に落下することがない。
【0037】
パーセルシェルフ10とボード20は互いに分離できないので、荷室1のパターンを変更する度に、ボード部分同士の面倒な連結や切り離し動作を行う必要がなく、ボード部分21,22,23同士の折り曲げ動作のみで荷室1のパターンを第1使用状態から第2使用状態に、あるいはその逆の第2使用状態から第1使用状態に変更することができる。その結果、荷室1の組み立て作業の作業性を向上させることができる。
また、上記のように、パーセルシェルフ部分11,12同士又はボード部分21,22,23同士を分離しないので、複雑で高強度のヒンジ構造を必要とせず、構造を簡素化することができ、製作コストを低廉化することができる。
さらに、前記第1使用状態においても、パーセルシェルフ10の薄肉ヒンジ10Hよりも前方の前側のパーセルシェルフ部分11を、パーセルシェルフ10の薄肉ヒンジ10Hのヒンジ軸芯O周りに上下に折り曲げて荷物Nの収容空間Sを開閉可能に構成されているので、車室内から荷物Nの収容空間Sに容易にアクセスすることができる。
これにより、乗員が車外に出てからバックドアを開けて荷室1の荷物Nを取り出すのではなく、リアシート3に乗ったまま荷室1の荷物Nを出し入れすることができる。
【0038】
(2) 図4,図5に示すように、第1使用状態において、ボード20とパーセルシェルフ10の間の荷物Nの収容空間Sを、前側荷物収容空間S1と後ろ側荷物収容空間S2とに仕切る第1ネット部材26が前記パーセルシェルフ10とボード20に架け渡されると、荷室1の上下方向中間部に車両前後方向に複数の収容空間S(前側荷物収容空間S1と後ろ側荷物収容空間S2)を設けることができ、荷物Nを効率よく整理整頓することができる。そして、走行による振動で複数の荷物Nが混ざってしまうことを防ぐことができる。
また、第1ネット部材26の上端部に設けられた第2係止リング27が前記パーセルシェルフ10のフック13に係止するとともに、第1ネット部材26の下端部に設けられたフック28がボード20の被係止部29に係止するから、第1ネット部材26をパーセルシェルフ10とボード20に架け渡す作業を簡単化することができる。
さらに、荷物Nの収容空間Sを前側荷物収容空間S1と後ろ側荷物収容空間S2とに第1ネット部材26で仕切っているから、例えば、板状の部材等で仕切る場合に比べると軽量化できるとともに、第1ネット部材26を使用しない時に第1ネット部材26をコンパクトに纏めて収納することができる。
【0039】
[別実施形態]
(1) 前記パーセルシェルフ10のヒンジ部とボード20のヒンジ部は薄肉ヒンジ10H,20H以外のヒンジに構成されていてもよく、例えば、ヒンジ金具を用いたヒンジに構成されていてもよい。
(2) 図10に示すように、前記ボード20は上下方向に3段にレイアウトすることができる。
(3) 図9に示すように、前記前側のボード部分21をヒンジ軸芯O周りに下方に折り曲げたり、後ろ側のボード部分23をヒンジ軸芯O周りに上方又は下方に折り曲げたりして荷室1の形態を変更させてもよい。下方に折り曲げられた前側のボード部分21の下端部や後ろ側のボード部分23の下端部はフロアパネル5に載置する。
【符号の説明】
【0040】
1 荷室
3 リアシート
4 シートバック
6 荷室の側壁(クォータトリム)
10 パーセルシェルフ
10H パーセルシェルフのヒンジ部(薄肉ヒンジ)
11 前側のパーセルシェルフ部分
13 第1被係止部(フック)
20 ボード
20H ボードのヒンジ部(薄肉ヒンジ)
23 後ろ側のボード部分
24 第1係止部(第1係止リング)
26 第1ネット部材
27 第2係止部(第2係止リング)
28 フック(第1ネット部材の下端部に設けられたフック)
29 第2被係止部(被係止部)
30 支持部材
38 フック(第2ネット部材の車幅方向両端部に設けられたフック)
39 第2ネット部材
N 荷物
O ヒンジ軸芯
S 荷物の収容空間
S1 前側荷物収容空間
S2 後ろ側荷物収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアシートのシートバックの上端部側から前記上端部の後ろ側にわたって配置され、前記シートバックの後ろ側の荷室を上方から覆い隠すパーセルシェルフと、
前記荷室の上下方向中間部に配置され、荷物を載置させて支持するボードとを備えた車両の荷室構造であって、
前記パーセルシェルフとボードに、ヒンジ軸芯が車幅方向に沿うヒンジ部がそれぞれ設けられて、前記パーセルシェルフとボードが前記ヒンジ軸芯周りに折り曲げ可能に構成され、
前記ボードの全体が水平に設定された第1使用状態と、前記ボードのヒンジ部よりも後ろ側のボード部分が前記ボードのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに起立姿勢に折り曲げられた第2使用状態とに切り換え自在に構成され、
前記第1使用状態と第2使用状態のいずれにおいても、前記パーセルシェルフのヒンジ部よりも前側のパーセルシェルフ部分を、前記パーセルシェルフのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに上下に折り曲げて前記荷物の収容空間を開閉可能に構成されている車両の荷室構造。
【請求項2】
前記ボードのヒンジ部よりも後ろ側のボード部分に設けられた第1係止部が、前記パーセルシェルフに設けられた第1被係止部に前記第2使用状態において係止することで、前記後ろ側のボード部分が前記起立姿勢に保持される請求項1記載の車両の荷室構造。
【請求項3】
前記ボードの車幅方向両端部に第2被係止部が形成され、
前記第1使用状態において、前記ボードとパーセルシェルフの間の荷物の収容空間を前側荷物収容空間と後ろ側荷物収容空間とに仕切る第1ネット部材が前記パーセルシェルフとボードに架け渡し可能に構成され、
前記第1ネット部材の上端部に設けられた第2係止部が前記パーセルシェルフの第1被係止部に係止するとともに、前記第1ネット部材の下端部に設けられたフックが前記ボードの第2被係止部に係止する請求項2記載の車両の荷室構造。
【請求項4】
前記第1使用状態のボードに載置された荷物を第2ネット部材で覆うとともに、前記第2ネット部材の車幅方向両端部に設けられたフックを前記ボードの車幅方向両端部の第2被係止部に各別に係止可能に構成されている請求項3記載の車両の荷室構造。
【請求項5】
前記ボードの車幅方向の端部を載置させて支持する複数の支持部材が、前記荷室の側壁から前記荷室内に突出した作用姿勢と、縦断面において側壁に沿った起立姿勢とに切り換え自在に設けられている請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両の荷室構造。
【請求項6】
前記ボードに前記ヒンジ部が複数設けられ、
前記第2使用状態では、前記ボードの複数のヒンジ部のうち最も後ろ側のヒンジ部よりも後ろ側のボード部分が、前記ボードのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに起立姿勢に折り曲げられ、
前記パーセルシェルフに前記ヒンジ部が複数設けられ、
前記第1使用状態と第2使用状態のいずれにおいても、前記パーセルシェルフの複数のヒンジ部のうち最も前側のヒンジ部よりも前側のパーセルシェルフ部分が、前記パーセルシェルフのヒンジ部のヒンジ軸芯周りに上下に折り曲げられて前記荷物の収容空間が開閉される請求項1〜5のいずれか一つに記載の車両の荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−35767(P2012−35767A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177864(P2010−177864)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】