説明

車両の蓄電装置支持構造

【課題】蓄電装置を車両の前部に配設する場合に、蓄電装置を、エンジン又はモータからの熱の影響を受け難いような位置に配設しかつ車両の前面衝突時における衝撃吸収性能に出来る限り影響を与えないように支持する。
【解決手段】蓄電装置51を、フロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側に配設するとともに、フロントサイドフレーム5とクラッシュカン6との間のフランジ部5bに支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を蓄電する蓄電装置を備えた車両の蓄電装置支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両に、二次電池(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池)のような、電気を蓄電する蓄電装置を搭載することはよく知られている。この蓄電装置としては、二次電池以外にも、キャパシタが用いられることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような蓄電装置は、例えば特許文献2に示されているように、車両前部のエンジンルーム又はモータルーム(電動車両を駆動するモータが配設される)内に配設されることが多いが、特許文献1に示されているように、車室フロアの下側に配設される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−89040号公報
【特許文献2】特開2006−281806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電装置(特にキャパシタ)は熱を発生するものであるので、車両走行風によって出来る限り冷却することが好ましい。しかし、上記特許文献1のように蓄電装置を車室フロアの下側に配設した場合には、車両走行風が蓄電装置に当たり難くなるため、蓄電装置を効率良く冷却することが困難になる。
【0006】
そこで、蓄電装置を車両の前部に配設することが好ましいが、上記従来例のようにエンジンルームやモータルーム内に配設した場合には、エンジンルーム内に配設されたエンジン又はモータルーム内に配設されたモータからの熱の影響を受け易く、この場合も、蓄電装置を効率良く冷却することが困難になる。
【0007】
また、蓄電装置を車両の前部に配設する場合には、蓄電装置が車両の前面衝突時における衝撃吸収性能に出来る限り影響を与えないようにする必要がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄電装置を車両の前部に配設する場合に、蓄電装置を、エンジン又はモータからの熱の影響を受け難いような位置に配設しかつ車両の前面衝突時における衝撃吸収性能に出来る限り影響を与えないように支持しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレームの前端にそれぞれ配設されたクラッシュカンと、電気を蓄電する蓄電装置とを備えた車両の蓄電装置支持構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、上記蓄電装置は、上記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されているとともに、上記フロントサイドフレームと上記クラッシュカンとの間のフランジ部に支持されていることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、蓄電装置が、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側(エンジンルーム又はモータルームの外側)に配設されているので、蓄電装置がエンジン又はモータからの熱の影響を受け難くなる。これにより、蓄電装置を、車両走行風によって効率良く冷却することが可能になる。また、蓄電装置が、フロントサイドフレームとクラッシュカンとの間のフランジ部に支持されているので、車両の前面衝突時に、蓄電装置がクラッシュカンやフロントサイドフレームによる衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも、蓄電装置の破損も防止することができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記フランジ部は、上記フロントサイドフレームよりも下側まで延びており、上記蓄電装置は、上下方向に長い形状のものであり、上記フランジ部における上記フロントサイドフレームの下面よりも上側の部分と上記フロントサイドフレームの下面よりも下側の部分とに支持されていることを特徴とするものである。
【0013】
蓄電装置の蓄電容量を出来る限り大きくしようとする場合、車両のデザイン性(オーバーハングや車幅)を考慮すると、上記のように蓄電装置が上下方向に長くなる。このような上下方向に長い蓄電装置が、フランジ部におけるフロントサイドフレームの下面よりも上側の部分とフロントサイドフレームの下面よりも下側の部分とに支持されているので、その蓄電装置の支持剛性をより一層高めることができる。
【0014】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記フランジ部は、本体部と、該本体部の車幅方向外側の端部から車両前方へ延びる支持部とを有しており、上記蓄電装置は、上記支持部に支持されていることを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、フランジ部の支持部が、本体部の車幅方向外側の端部から車両前方へ延びているので、車両の前面衝突時に車両前後方向に潰れたクラッシュカンが支持部と干渉することがなく、支持部の破損を防止することができる。
【0016】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記クラッシュカンは、車両の前面衝突時に車両前後方向に潰れるようになっており、上記支持部は、車両の前面衝突時に車両前後方向に潰れたクラッシュカンの前端よりも車両後方に配設されており、上記蓄電装置は、上記クラッシュカンの後端よりも車両後方に配設されていることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、フランジ部の支持部が、車両の前面衝突時に車両前後方向に潰れたクラッシュカンの前端よりも車両後方に配設されているので、クラッシュカンの潰れ残りが支持部と干渉することが確実になく、支持部の破損をより一層防止することができる。また、蓄電装置がクラッシュカンの後端よりも車両後方に配設されているので、蓄電装置がクラッシュカンによる衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも、蓄電装置の破損も防止することができる。
【0018】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記フランジ部は、上記蓄電装置を該フランジ部に固定する際に該蓄電装置を仮支持する仮支持部を有していることを特徴とするものである。
【0019】
これによれば、蓄電装置をフランジ部に固定するときには、蓄電装置がフランジ部の仮支持部によって仮支持されるので、蓄電装置がフランジ部によって仮支持された状態で、蓄電装置をフランジ部に固定することができ、蓄電装置の組付性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、蓄電装置が、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されているので、蓄電装置がエンジン又はモータからの熱の影響を受け難くなり、蓄電装置を、車両走行風によって効率良く冷却することが可能になり、また、蓄電装置が、フロントサイドフレームとクラッシュカンとの間のフランジ部に支持されているので、車両の前面衝突時に、蓄電装置がクラッシュカンやフロントサイドフレームによる衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも、蓄電装置の破損も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄電装置支持構造が適用された車両の前部の要部を示す平面図である。
【図2】上記車両の前部の要部(車両左側部分)を示す平面図である。
【図3】上記車両の前部の要部(車両左側部分)を示す正面図である。
【図4】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す車両左斜め前側から見た斜視図である。
【図5】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す拡大平面図である。
【図6】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す車両左側から見た側面図である。
【図7】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す車両左斜め後側から見た斜視図である。
【図8】上記蓄電装置を示す図5のAから見た斜視図である。
【図9】上記蓄電装置を示す図5のBから見た斜視図である。
【図10】上記車両の前面衝突時における軽衝突時の車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す平面図である。
【図11】上記車両の前面衝突時における重衝突時の車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る蓄電装置支持構造が適用された車両1の前部の要部を示す。この車両1の前部におけるエンジンルーム2内には、不図示のエンジンが配設されており、このエンジンにより当該車両1の左右の前輪3が駆動されるようになっている。尚、図1〜図3では、エンジンルーム2内に搭載されるエンジン及びその他の搭載物の記載は省略している。以下、上記車両1についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。
【0024】
図4〜図7にも示すように、上記エンジンルーム2の車幅方向(左右方向)両端部には、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5が配設されている。各フロントサイドフレーム5の後部は、その高さ位置が後側に向かって徐々に低くなるキック部5a(図1及び図2参照)とされている。このキック部5aと略同じ前後位置には、上記エンジンルーム2と車室とを仕切るダッシュパネル9が設けられている。
【0025】
左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側の面には、ホイールハウスを構成するホイールハウスパネル12がそれぞれ固定され、左右のホイールハウスパネル12の上面には、サスペンションタワー13がそれぞれ設けられている。左右のホイールハウスパネル12の上端部には、前後方向に延びる左右一対のエプロンレインメンバー16がそれぞれ固定されており、左右のサスペンションタワー13の上端部は、左右のエプロンレインメンバー16にそれぞれ固定されている。
【0026】
左右の前輪3かつ左右のホイールハウスパネル12の上側には、フェンダーパネル17がそれぞれ設けられている。左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側の面における前端部には、左右のフェンダーパネル17をステー19を介して支持する支持ブラケット23がそれぞれ溶接固定されている。左右の支持ブラケット23は、左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側の面から車幅方向外側へ延びている。左右の支持ブラケット23は、左右のフロントサイドフレーム5における後述の複数(本実施形態では3つ)の折れ曲がり部(折れ曲がり点)5d以外の部分(折れ曲がり部5dに対して前後方向にオフセットした部位)にそれぞれ固定されている。具体的には、左右の支持ブラケット23は、車両1の前面衝突時における重衝突時に車幅方向内側に突出するように折れ曲がる真ん中の折れ曲がり部5dと車両1の前面衝突時における重衝突時に車幅方向外側に突出するように折れ曲がる一番後側の折れ曲がり部5dとの間の部分において真ん中の折れ曲がり部5dの後側近傍にそれぞれ支持されている。また、左側のフロントサイドフレーム5の支持ブラケット23は、後述の如く車両1の前面衝突時における重衝突時に蓄電装置51が後退する際に左側のフロントサイドフレーム5への固定状態が維持されるようになっている。具体的には、支持ブラケット23のフロントサイドフレーム5への支持状態が保持されるように、支持ブラケット23の厚みや左側のフロントサイドフレーム5への支持剛性などが設定されている。左右のステー19の車幅方向内側の端部は、左右の支持ブラケット23の車幅方向外側の端部に締結部材24(ボルト及びナット(以下、同じ))によってそれぞれ固定されている。左右のステー19は、左右の支持ブラケット23から車幅方向外側かつ上側へ延びており、その車幅方向外側の端部は、左右のフェンダーパネル17の車幅方向外側の端部における前端部にそれぞれ締結固定されている。
【0027】
上記車両1の前端部には、不図示のフロントバンパーが設けられ、このフロントバンパー内に、車幅方向に延びるバンパービーム18が設けられている。このバンパービーム18が、車両1の前面衝突時の衝突荷重を受けることになる。
【0028】
左右のフロントサイドフレーム5の前端には、クラッシュカン6がそれぞれ配設されている。具体的には、各フロントサイドフレーム5の前端にフランジ部5bが形成され、クラッシュカン6の後端にもフランジ部6aが形成されている。これら互いのフランジ部5b,6aが合わされた状態で、締結部材7によって固定されている。尚、左右のクラッシュカン6の前後方向位置は同じである。また、上述した左右にそれぞれ設けられたものは、基本的に、車両1の車幅方向中央を通りかつ前後方向に延びる鉛直面に対して対称の関係にある。
【0029】
上記バンパービーム18の左右両端部は、左右のクラッシュカン6の前端にそれぞれ締結固定されている。これら左右のクラッシュカン6は、バンパービーム18が車両1の前面衝突時の衝突荷重を前側から受けたときに、前後方向に潰れる(塑性変形する)ことで、その衝撃吸収を行うようになっている。尚、軽衝突時には、クラッシュカン6及びフロントサイドフレーム5のうちクラッシュカン6のみが潰れることで衝撃吸収を行えるが(図10参照)、クラッシュカン6のみでは衝撃吸収を行えないような重衝突時には、フロントサイドフレーム5も、前後方向に並ぶように設けられた3つの折れ曲がり部5dにて車幅方向に突出するように折れ曲がることで前後方向に潰れることにより衝撃吸収を行う(図11参照)。尚、図11では、図を見易くするため、支持ブラケット23の周辺物の記載は適宜省略している。
【0030】
バンパービーム18の後方における左右のクラッシュカン6の間には、不図示のラジエータを支持する枠状のシュラウド20が配設されている。このシュラウド20の上側部分を構成するアッパーメンバー21が車幅方向外側かつ後方に延び、アッパーメンバー21の両端部が連結部材22を介して左右のエプロンレインメンバー16の前端にそれぞれ結合されている。これにより、シュラウド20は、左右のエプロンレインメンバー16に支持されることになる。
【0031】
上記シュラウド20の下側部分には、歩行者保護用のスティフナー25が前側に突出するように固定されている。このスティフナー25は、車両1の前面に衝突した歩行者の脚部の下部に接触して該脚部を払うことで、該歩行者を車両側に転倒させ、これにより歩行者の脚部における骨折等の傷害の発生を可及的に防止するものである。尚、スティフナー25の前側は、上記フロントバンパーにより覆われている。
【0032】
サスペンションタワー13と略同じ前後位置には、車幅方向に延びかつ左右両端部にて左右の前輪3をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバー31が配設されている(図2参照)。このサスペンションクロスメンバー31は、車幅方向に延びる本体部31aと、この本体部31aの左右両端部の前縁から前方へ延びる左右の前方延設部31bとを有している。上記本体部31aの左右両端部に、不図示の左右の前輪サスペンションアーム(ロアアーム)がそれぞれ支持されており、該前輪サスペンションアームを介して前輪3がサスペンションクロスメンバー31に支持される。本体部31aの上面における左右両端部には、上方へ延びる上方延設部がそれぞれ設けられ、左右の上方延設部の上端部が、左右のフロントサイドフレーム5の下面にそれぞれ固定されている。
【0033】
左側の前方延設部31bは、左側のフロントサイドフレーム5の下側にて該左側のフロントサイドフレーム5に略沿って前方へ延びている。右側の前方延設部31bは、右側のフロントサイドフレーム5の下側にて該右側のフロントサイドフレーム5に略沿って前方へ延びている。左右の前方延設部31bは、車両1の車幅方向中央を通りかつ前後方向に延びる鉛直面に対して対称の関係にある。
【0034】
左右の前方延設部31bの下面における前端部同士は、車幅方向に延びる連結クロスメンバー32によって連結されている。こうして、サスペンションクロスメンバー31の本体部31a及び左右の前方延設部31b並びに連結クロスメンバー32は、平面視で略矩形枠状をなすペリメータフレームを構成している。
【0035】
上記各前方延設部31bの上面における前端部には、上方へ延びる円筒部材35がそれぞれ固定され、各円筒部材35の上端が、各フロントサイドフレーム5のフランジ部5bにおける後述の本体部5eの下部において略水平状に折り曲げられて形成された固定部5cの下面にそれぞれ締結固定される(図4参照)。また、各前方延設部31bの前端には、上記スティフナー25の左右両端部に結合される不図示の結合部材が締結固定されている。
【0036】
上記スティフナー25の左端から左側のホイールハウスパネル12の前端にかけての部分(車両1の左前角部の下部)、及び、スティフナー25の右端から右側のホイールハウスパネル12の前端にかけての部分(車両1の右前角部の下部)には、それぞれ、ホイールハウスパネル12と一体形成された不図示のアンダーカバーが配設されている。
【0037】
左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(左側)つまりエンジンルーム2の左外側でかつ前後方向において前輪3の前端とクラッシュカン6の後端との間の位置(左側のアンダーカバーの上側)には、電気を蓄電する蓄電装置51(図8及び図9参照)が配設されている。また、この蓄電装置51は、車両正面視で、左側の前輪3(蓄電装置51に近い側の前輪3)に対して車幅方向内側にずれた位置に配設されている(図2及び図3参照)。
【0038】
上記蓄電装置51(蓄電素子52)は、車両1の減速時にオルタネータによって発生した電気を蓄電し、この蓄電装置51から、車両1に搭載された電装品(例えば空調装置、オーディオ装置、ナビゲーション装置、照明装置等)に、上記蓄電した電気(電力)が供給されるように構成されている。また、上記電装品では使い切れない余剰分の電気は、該電装品に電気(電力)を供給する鉛蓄電池(エンジンルーム2内に配設される)に供給されて蓄電される。尚、蓄電装置51の蓄電電圧は、上記鉛蓄電池の電圧よりも高く設定されており、蓄電装置51から上記鉛蓄電池又は上記電装品への電気供給時には、DC/DCコンバータにより降圧される。
【0039】
図8及び図9に示すように、上記蓄電装置51は、上下方向に延びる断面円形の複数の蓄電素子52を有している。本実施形態では、複数の蓄電素子52が上下2段に配列されており、蓄電装置51が、左側のフロントサイドフレーム5(蓄電装置51に近い側のフロントサイドフレーム5)の前部よりも下側まで延びる上下方向に長い形状のものとなっている。すなわち、上段及び下段それぞれ5本ずつの合計10本の蓄電素子52が設けられている。これら蓄電素子52は、キャパシタからなる。そして、全蓄電素子52が、剛性が或る程度高くかつ導電性及び伝熱性が良好な金属(例えばアルミニウム)からなるカバー部材によって覆われた状態で、後述の如くユニット化されている。このカバー部材も、上下方向に長い形状のものとなっている。
【0040】
上下各段の5本の蓄電素子52の上端部は樹脂製の上側キャップ61に嵌められ、下端部は樹脂製の下側キャップ62に嵌められて一体化されている(この各一体化されたものをモジュール60という)。そして、上下のモジュール60が、金属製の前後の板状部材63,64によってユニット化されている。これらの板状部材63,64は、上下のモジュール60の上側及び下側キャップ61,62に締結部材65によってそれぞれ固定されている。
【0041】
上記蓄電装置51の前端部は、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5b(左側のフロントサイドフレーム5と左側のクラッシュカン6との間のフランジ部5b)に支持され、後端部は、左側のフロントサイドフレーム5の支持ブラケット23に支持されている。以下、この支持構造を詳細に説明する。
【0042】
前側の板状部材63は、蓄電装置51の前側を覆う本体部63aと、この本体部63aの右端部(車幅方向内側の端部)から前方へ延びる爪状の上下の取付部63bと、本体部63aの右端部から車幅方向内側へ延びる略L字爪状の上下のフック部63cとを有している。上下の取付部63bは、本体部63aの右端部において前側に折り曲げられて形成され、上下のフック部63cは、本体部63aの右端部において車幅方向内側に折り曲げられて形成されている。上側の取付部63bは、本体部63aの右端部における上端部(左側のフロントサイドフレーム5の前部における下面よりも上側の部分)に配置され、下側の取付部63bは、本体部63aの右端部における上下方向中央部(左側のフロントサイドフレーム5の前部における下面よりも下側の部分)に配置されている。上側のフック部63cは、本体部63aの右端部における上側の取付部63bの下側近傍(上端部近傍)に配置され、下側のフック部63cは、本体部63aの右端部における下側の取付部63bの上側近傍に配置されている。
【0043】
左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bは、略方形鍔状の本体部5eと、この本体部5eの左端部(車幅方向外側の端部)から前方へ延びる爪状の上下の支持部5fと、蓄電装置51をフランジ部5bに締結部材66によって固定する際に該蓄電装置51を仮支持(仮預け)する上下の仮支持部5gとを有している。本体部5eは、左側のフロントサイドフレーム5の前部よりも下側まで延びている(垂下している)。上下の支持部5f及び上下の仮支持部5gは、本体部5eの左端部において前側に折り曲げられて形成されている。上下の支持部5fは、車両1の前面衝突時における軽衝突時に前後方向に潰れたクラッシュカンの前端よりも後方に配設されている。上側の支持部5fは、上側の取付部63bに対応するように本体部5eの左端部における上端部(左側のフロントサイドフレーム5の前部における下面よりも上側の部分)に配置され、爪状をなしている。下側の支持部5fは、下側の取付部63bに対応するように本体部5eの左端部における下端部(左側のフロントサイドフレーム5の前部における下面よりも下側の部分)に配置されている。上側の仮支持部5gは、上側のフック部63cに対応するように本体部5eの左端部における上側の支持部5fの下側近傍(上端部近傍)に配置され、爪状をなしている。下側の仮支持部5gは、下側のフック部63cに対応するように本体部5eの左端部における下側の支持部5fの直ぐ上側(下端部近傍)に配置され、下側の支持部5fと一体となっている。この一体形成されたものが爪状をなしている。
【0044】
そして、上側の取付部63bは、上側の支持部5fに締結部材66によって固定される。また、下側の取付部63bは、下側の支持部5fに締結部材66によって固定される。
【0045】
ここで、蓄電装置51を左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに締結部材66によって固定するときには、前側の板状部材63における上下のフック部63cがフランジ部5bにおける上下の仮支持部5gにそれぞれ引っ掛けられることで蓄電装置51がフランジ部5bによって仮支持されるので、蓄電装置51がフランジ部5bによって仮支持された状態で、蓄電装置51をフランジ部5bに締結部材66によって固定することができ、蓄電装置51の組付性が向上する。
【0046】
また、後側の板状部材64は、蓄電装置51の後側を覆っている。後側の板状部材64の車幅方向内側の端部には、その後面から後側へ延びる略ハット状の取付部材67が締結固定されている。この取付部材67の後端部(後壁部)が、左側のフロントサイドフレーム5の支持ブラケット23における略中央部に締結部材68によって固定される。
【0047】
このように蓄電装置51は、前後の板状部材63,64及び取付部材67を介して、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bと支持ブラケット23とに取り付けられて支持されることになる。
【0048】
上記のように蓄電装置51が、左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(エンジンルーム2の外側)に配設されているので、蓄電装置51がエンジンからの熱の影響を受け難くなる。これにより、蓄電装置51を、車両走行風によって効率良く冷却することが可能になる。また、蓄電装置51が、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに支持されているので、車両1の前面衝突時に、蓄電装置51がクラッシュカン6やフロントサイドフレーム5による衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも、蓄電装置51の破損も防止することができる。さらに、蓄電装置51が、左側のフロントサイドフレーム5に固定されかつフェンダーパネル17を支持する支持ブラケット23に支持されているので、蓄電装置51を支持する支持部材を別途設ける必要はなく、車両1の重量が重くなることを防止することができ、しかも、車両1のコストが高くなることも防止することができる。また、蓄電装置51の前端部が、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5b(左側のフロントサイドフレーム5と左側のクラッシュカン6との間のフランジ部5b)に支持され、後端部が、左側のフロントサイドフレーム5の支持ブラケット23に支持されているので、蓄電装置51の支持剛性をより一層高めることができる。
【0049】
蓄電装置51の蓄電容量を出来る限り大きくしようとする場合、車両1のデザイン性(オーバーハングや車幅)を考慮すると、上記のように蓄電装置51が上下方向に長くなる。このような上下方向に長い蓄電装置51が、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bにおけるフロントサイドフレーム5の前部下面よりも上側の部分(上側の支持部5f)とフロントサイドフレーム5の前部下面よりも下側の部分(下側の支持部5f)とに支持されているので、その蓄電装置51の支持剛性をより一層高めることができる。
【0050】
車両1において前面衝突が生じた場合、その前面衝突が、図10に示すように、クラッシュカン6及びフロントサイドフレーム5のうちクラッシュカン6のみが潰れるような軽衝突であるときには、左右のクラッシュカン6がバンパービーム18から衝突荷重を受けて前後方向に潰れることで、その衝撃吸収が行われる。このとき、蓄電装置51がクラッシュカン6の後端よりも後方に配設されているので、蓄電装置51がクラッシュカン6による衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも、蓄電装置51の破損も防止することができる。また、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bにおける上下の支持部5fが、本体部5eの左端部(車幅方向外側の端部)から前方へ延びているので、車両1の前面衝突時における軽衝突時に前後方向に潰れたクラッシュカン6が上下の支持部5fと干渉することがなく、上下の支持部5fの破損を防止することができる。また、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bにおける上下の支持部5fが、車両1の前面衝突時における軽衝突時に前後方向に潰れたクラッシュカン6の前端よりも後方に配設されているので、クラッシュカン6の潰れ残りが上下の支持部5fと干渉することが確実になく、上下の支持部5fの破損をより一層防止することができる。
【0051】
上記前面衝突が、図11に示すように、クラッシュカン6及びフロントサイドフレーム5の両方が潰れるような重衝突時には、左右のフロントサイドフレーム5の前後方向の潰れによって、その衝撃吸収が行われる。このとき、支持ブラケット23がフロントサイドフレーム5の折れ曲がり部5dに固定されていると、支持ブラケット23がフロントサイドフレーム5の折れ曲がり部5dにおける折れ曲がり(フロントサイドフレーム5の折れ変形モード)を邪魔することになり、フロントサイドフレーム5による衝撃吸収性能に大きく影響を及ぼすことになる。しかし、本実施形態では、支持ブラケット23がフロントサイドフレーム5の折れ曲がり部5d以外の部分に固定されているので、支持ブラケット23がフロントサイドフレーム5の折れ曲がり部5dにおける折れ曲がりを阻害するようなことがなく、フロントサイドフレーム5による良好な衝撃吸収性能を確保することができる。
【0052】
蓄電装置51が左側のフロントサイドフレーム5に支持ブラケット23を介して支持されている場合、車両1の前面衝突時における重衝突時において左側のフロントサイドフレーム5の潰れに伴って蓄電装置51が後退する。この後退時に、蓄電装置51が左側の前輪3と干渉すると、フロントサイドフレーム5による衝撃吸収性能に大きく影響を及ぼすことになる。しかし、本実施形態では、蓄電装置51が、車両正面視で、左側の前輪3に対して車幅方向内側にずれた位置(車幅方向において左側の前輪3と左側のフロントサイドフレーム5との間の位置)に配設されているので、蓄電装置51が左側の前輪3と干渉することがなく、フロントサイドフレーム5による良好な衝撃吸収性能を確保することができる。また、左側のフロントサイドフレーム5の支持ブラケット23が、車両1の前面衝突時における重衝突時に蓄電装置51が後退する際に左側のフロントサイドフレーム5への固定状態が維持されるようになっているので、左側のフロントサイドフレーム5の潰れに伴う蓄電装置51の後退を確実に実現することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、蓄電装置51を、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bと左側のフロントサイドフレーム5の支持ブラケット23に支持するようにしたが、そのフランジ部5bのみに支持するようにしてもよい。但し、上記実施形態のように蓄電装置51が上下方向に長い形状のものであれば、その蓄電装置51を上記実施形態のようにフランジ部5b及び支持ブラケット23の両方に支持することが好ましい。
【0055】
さらに、蓄電装置51を、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに支持するようにしたが、左側のクラッシュカン6のフランジ部6aに支持するようにしてもよい。
【0056】
また、蓄電装置51を、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに2箇所で支持するようにしたが、そのフランジ部5bに1箇所又は3箇所以上で支持するようにしてもよい。但し、上記実施形態のように蓄電装置51が上下方向に長い形状のものであれば、その蓄電装置51を上記実施形態のように左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bにおけるフロントサイドフレーム5の前部下面よりも上側の部分とフロントサイドフレーム5の前部下面よりも下側の部分とに支持することが好ましい。
【0057】
さらに、仮支持部5gは、爪状以外のもの(例えば、蓄電装置51側の部材が引っ掛けられる孔状のもの)であってもよい。
【0058】
また、蓄電装置51は、キャパシタ以外のもの(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池等の二次電池)であってもよい。但し、キャパシタの方が、蓄電装置51に対する電気の入出力が素早く行えて好ましい。
【0059】
さらに、上記実施形態に係る車両1は、エンジンで駆動されるものであるが、車両前部のモータルーム内に配設されるモータで駆動される電動車両であってもよく、エンジンとモータとを併用するハイブリッド車両であってもよい。
【0060】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明に係る車両の蓄電装置支持構造は、蓄電装置を車両の前部に配設する場合に、蓄電装置を、エンジン又はモータからの熱の影響を受け難いような位置に配設しかつ車両の前面衝突時における衝撃吸収性能に出来る限り影響を与えないように支持することが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
3 前輪
5 フロントサイドフレーム
5b フランジ部
5d 折れ曲がり部
5e 本体部
5f 支持部
5g 仮支持部
6 クラッシュカン
6a フランジ部
17 フェンダーパネル
23 支持ブラケット
51 蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレームの前端にそれぞれ配設されたクラッシュカンと、電気を蓄電する蓄電装置とを備えた車両の蓄電装置支持構造であって、
上記蓄電装置は、上記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されているとともに、上記フロントサイドフレームと上記クラッシュカンとの間のフランジ部に支持されていることを特徴とする車両の蓄電装置支持構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の蓄電装置支持構造において、
上記フランジ部は、上記フロントサイドフレームよりも下側まで延びており、
上記蓄電装置は、上下方向に長い形状のものであり、上記フランジ部における上記フロントサイドフレームの下面よりも上側の部分と上記フロントサイドフレームの下面よりも下側の部分とに支持されていることを特徴とする車両の蓄電装置支持構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の蓄電装置支持構造において、
上記フランジ部は、本体部と、該本体部の車幅方向外側の端部から車両前方へ延びる支持部とを有しており、
上記蓄電装置は、上記支持部に支持されていることを特徴とする車両の蓄電装置支持構造。
【請求項4】
請求項3記載の車両の蓄電装置支持構造において、
上記クラッシュカンは、車両の前面衝突時に車両前後方向に潰れるようになっており、 上記支持部は、車両の前面衝突時に車両前後方向に潰れたクラッシュカンの前端よりも車両後方に配設されており、
上記蓄電装置は、上記クラッシュカンの後端よりも車両後方に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置支持構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両の蓄電装置支持構造において、
上記フランジ部は、上記蓄電装置を該フランジ部に固定する際に該蓄電装置を仮支持する仮支持部を有していることを特徴とする車両の蓄電装置支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−192890(P2012−192890A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59780(P2011−59780)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】