説明

車両の衝突検知装置

【課題】 車両の衝突検知装置において、衝突センサをその取付部材に容易かつ確実に取り付けることである。
【解決手段】 車両の衝突検知装置は、車体の前部に配置され車両の衝突時に加わる衝突荷重Fを後方に伝達する荷重伝達部材25と、荷重伝達部材の後方に配置された補強部材20と、荷重伝達部材と補強部材との間に配置され衝突を検知する機械式の衝突センサ30と、を備える。衝突センサは、スナップロックにより荷重伝達部材に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられエアバッグの展開などのために衝突を検知する車両の衝突検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の相手車両などへの衝突などの重大事故から乗員を保護するために乗員保護装置(エアバッグ、シートベルトのプリテンショナ装置)が搭載された車両が増加している。エアバッグ装置は車両の衝突時にエアバッグ(袋体)を展開させて、乗員がインパネなどへ打ち付けられることを防止する。衝突時にエアバッグを確実に展開させるためには、車両の衝突を正確に検知することが前提であり、そのために衝突センサを含む衝突検知装置が開発されている。
【0003】
また、車両と歩行者との衝突時に歩行者を保護するためのフード機構やエアバッグも開発されており、車両の衝突時にこれらの保護装置を起動させるためにも衝突検知装置が必要となる。
【0004】
例えば、従来の車両の前部車体構造(特許文献1参照)では、車両の衝突時にその最前部(バンパ)に加わる衝突荷重を、最前部のバンパから少し後方に離れて配置した衝突センサに伝達している。衝突センサは例えば荷重センサから成り、衝突時に車体の特定部分に加わる荷重を検知する。バンパに加わる荷重をその後方に配置された衝突センサに伝達するために、フロアパネルの一部にクロスメンバを固定し、このクロスメンバに衝突センサを取り付けている。
【特許文献1】特開平8−108862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例は、荷重センサなどの衝突センサをバンパへ取り付ける作業に改良の余地がある。即ち、衝突センサはボルト等の締結工具でバンパに固定したり、両面テープや接着剤などの接着手段でバンパに接着される。しかし、これでは衝突センサのバンパへの取付けに時間及び手間がかかる。のみならず、取付作業時に締付工具で衝突センサを損傷したり、接着剤が衝突センサに付着する虞がある。
【0006】
なお、車両の衝突センサとして車体の前部に車幅方向に沿って配置した長尺状の光ファイバセンサを使用することもある。車両が相手車両や歩行者等に衝突すると前部に配置した光ファイバの一部が変形し、その内部を伝播する光の一部が変形部で失われることを利用して衝突を検知する。この場合も、長尺状の光ファイバセンサを接着手段などでその取付部材(例えばバンパリーンフォース)に接着すると、上記荷重センサ等から成る衝突センサと同様の問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両の相手車両や歩行者等への衝突を検知する衝突センサをその取付部材に容易かつ確実に取り付けることができる車両の衝突検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(イ)本発明者は衝突センサをスナップロックにより取付部材に取り付けることを着想して、本発明を完成した。第1発明にかかる車両の衝突検知装置は、請求項1に記載したように、 車体の前部に配置され車両の衝突時に加わる衝突荷重を後方に伝達する荷重伝達部材と、荷重伝達部材の後方に配置された補強部材と、荷重伝達部材と補強部材との間に配置され車両の衝突を検知する機械式又は光学式の衝突センサとを備える。衝突センサはスナップロックにより荷重伝達部材に取り付けられている。
【0009】
第2発明にかかる車両の衝突検知装置は、請求項4に記載したように、車体の前部に配置され車両の衝突時に衝突エネルギを吸収するエネルギ吸収部材と、エネルギ吸収部材の後方に配置された補強部材と、エネルギ吸収部材と補強部材との間に配置され車両の衝突を検知する機械式又は光学式の衝突センサとを備える。衝突センサは、スナップロックによりエネルギ吸収部材に取り付けられている。
【0010】
第3発明にかかる車両の衝突検知装置は、請求項7に記載したように、車体の前部に配置されたバンパと、バンパの後方に配置され車両の衝突時に衝突エネルギを吸収するエネルギ吸収部材と、バンパとエネルギ吸収部材との配置され車両の衝突を検知する機械式又は光学式の衝突センサとを備える。衝突センサは、スナップロックによりバンパに取り付けられている。
【0011】
(ロ)以下、車両の衝突検知装置の構成要素の種々の態様を説明する。
【0012】
a.車体の前部
第1、第2及び第3発明の衝突検知装置は車両の前部(フロント部)に配置される。フロント部のボデイは一般に、左方サイドメンバ及び右方サイドメンバと、両者を連結する複数のクロスメンバとから成る。これら左方サイドメンバ、右方クロスメンバ及びクロスメンバは、走行時などに繰り返し加わる荷重に十分に耐える剛性と、衝突時に加わる衝撃で変形して衝突エネルギを吸収できる変形性とを持つことが必要である。
【0013】
そのためにフロント部は前方から後方に順にバンパ、エネルギ吸収部材及び補強部材等が配置されることが多い。なお、必要に応じて、エネルギ吸収部材と補強部材との間に荷重伝達部材を配置することができる。バンパ、エネルギ吸収部材、補強部材及び荷重伝達部材の形状や延在方向に特別の制約はない。
【0014】
b.衝突センサ
第1、第2及び第3発明に適用される衝突センサは機械式と光学式とに大別される。機械式の衝突センサは例えば荷重センサから成り、上記バンパ、エネルギ吸収部材、補強部材及び荷重伝達部材などで構成される衝突荷重の伝達経路中に配置される。機械式の衝突センサは衝突を検知する検知部と、取付部材に取り付けられる取付け部とが、衝突荷重が加わる方向に対して直角方向で離れて形成されることが望ましい。検知部の表面に歪ゲージ(箔ゲージ又は半導体ゲージ)が貼り付けられ、外力が加わると歪ゲージが変形してひずみを生じ、ひずみの大きさに応じて電気抵抗が変化する。抵抗の変化を増幅回路で増幅し電圧に変換して、基準値と比較して衝突の有無を判定する。取付け部の凹部の周縁は拡開方向に弾性変形可能であることが望ましい。
【0015】
一つの荷重センサのみを配置しても良いが、より確実に衝突を検知するためには複数の荷重センサを車体の上下方向(車高方向)に離して配置することが望ましい。
【0016】
光学式の衝突センサは例えば長尺状の光ファイバセンサから成り、車体の左右方向(車幅方向)に沿って配置されている。光ファイバセンサは光ファイバと、光ファイバの近傍の曲げ部材と、光ファイバ及び曲げ部材の外周のケースとを含む。ケースには、光ファイバを収容し衝突を検知する検知部と、取付部材に取り付けられる取付け部とが、衝突荷重が加わる方向に対して直角方向で離れて形成されることが望ましい。取付け部の凹部の周縁は拡開方向に弾性変形可能であることが望ましい。車両の衝突時は光ファイバが変形し、発光素子から発せられ光の一部が変形部で失われるので、通過する光量を受光素子で検出することにより車両の衝突を検知できる。
【0017】
機械式の衝突センサも光学式の衝突センサも、スナップロックにより取付部材に取り付けられ、何が取付部材となるかは衝突センサの配置場所により異なる。
【0018】
c.取付部材
上記機械式又は光学式の衝突センサの配置場所即ち取付部材には三つのタイプがある。配置場所が荷重伝達部材とその後方の補強部材との間の場合は、取付部材は荷重伝達部材である。また、取付部材は、衝突センサの配置場所がエネルギ吸収部材とその後方の補強部材との間の場合はエネルギ吸収部材であり、配置場所がバンパとその後方のエネルギ吸収部材との間の場合はバンパである。なお、同じ大きさの衝突荷重が車体に加わっても、
車体内における荷重センサの配置場所や荷重の伝達経路の違いにより、検知される荷重の大きさや波形が異なる場合がある。従って、衝突判定のスレッシュショルドは衝突センサの配置場所を考慮することが望ましい。
【0019】
d.スナップロック
機械式の衝突センサも光学式の衝突センサも、スナップロックにより取付部材に取り付けられる。スナップロックには凸部と凹部とを組み合せたタイプと、鈎部(フック部)を利用したタイプとがある。凸部と凹部との組合せの場合、複数の衝突センサのそれぞれに凹部が形成され、荷重伝達部材等の取付部材に複数の凸部が形成されることが望ましい。但し、その反対に、取付部材に複数の凹部を形成し、複数の衝突センサのそれぞれに凸部を形成しても良い。
【0020】
円滑かつ確実なスナップロックを実現するために、凸部も凹部も球形状であることが望ましいが、これに限定されない。なお、取付部材に複数の凸部を形成する代わりに、車両の左右方向(車幅方向)に延びた長い凸条を形成することもできる。この場合、衝突センサの凹部は幅方向両側を開口させる。鈎部(フック部)を利用する場合、例えば環状で断面L字形状のフックを取付部材に形成し、フックに係止される環状の係止部を衝突センサに形成する。
【発明の効果】
【0021】
第1発明の車両の衝突検知装置によれば、機械式又は光学式の衝突センサをスナップロックで荷重伝達部材に取り付けたので、取付けが容易かつ確実になる。また、締結手段や接着手段が不要となり、取付けに要する時間及び手間が少なくて済む。さらに、衝突センサをその前方の荷重伝達部材に取り付けたので、衝突荷重が荷重伝達荷重から確実に衝突センサに伝達され、衝突の検知が確実になる。
【0022】
請求項2の車両の衝突検知装置によれば、複数の衝突センサのそれぞれに凹部を形成し、荷重伝達部材に複数の凸部を形成したので、凸部に凹部を容易にスナップロックさせることができる。請求項3の車両の衝突検知装置によれば、衝突センサに検知部と取付け部とを別々に形成したので衝突の検知も取付部材への取付けも確実になり、また凹部の周縁は弾性変形可能であるので凸部への凹部のスナップロックが確実になる。
【0023】
第2発明の車両の衝突検知装置によれば、機械式又は光学式の衝突センサをスナップロックでエネルギ吸収部材に取り付けたので、取付けが容易かつ確実になる。また、締結手段や接着手段が不要となり、取付けに要する時間及び手間が少なくて済む。更に、エネルギ吸収部材と補強部材との間の荷重伝達部材を除去でき、車体の構造が簡単になる。第3発明の車両の衝突検知装置によれば、機械式又は光学式の衝突センサをスナップロックでバンパに取り付けたので、取付けが容易かつ確実になる。また、締結手段や接着手段が不要となり、取付けに要する時間及び手間が少なくて済む。更に、衝突センサはバンパのすぐ後方に位置しているので、衝突荷重を正確に検知できる。
【0024】
また、請求項5及び8の車両の衝突検知装置によれば、上記請求項2と同様の効果が得られる。また、請求項6及び9の車両の衝突検知装置によれば、上記請求項3と同様の効果が得られる。請求項10の車両の衝突検知装置によれば、光ファイバで車両の衝突を検知でき、ケースで光ファイバセンサを荷重伝達部材等に取り付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の最良の形態による実施形態(車両の衝突検知装置)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0026】
<第1実施形態>
(イ)構成
図1は車両の前部(フロント部)の縦断面図である。最前部にバンパ10が配置され、車幅方向(図1の紙面と垂直な方向)に延び、車高方向(図1で上下方向)で中央の直線部11と、上下両端の一対の屈曲部12とを含む。バンパ10の後方(図1で右方)にバンパアブソーバ(エネルギ吸収部材)15が配置されている。バンパアブソーバ15は変形しやすい金属から成りブロック形状を呈し、車幅方向、前後方向及び車高方向に所定寸法を持つ。バンパアブソーバ15の後方にバンパリーンフォース(補強部材)20が配置されている。バンパリーンフォース20は剛性が大きな金属から成り、前後方向に離れた前方部21及び後方部22と、上下方向に離れ前方部21と後方部22とを連結する複数の連結部23とを有する。その高さはバンパアブソーバ15の高さよりも少し小さい。
【0027】
バンパアブソーバ15とバンパリーンフォース20との間に荷重伝達部材25及び一対の荷重センサ(衝突センサ)30が配置されている。このうち、荷重伝達部材25は剛性が大きな樹脂又は金属から成り、車高方向に延びた本体26と、上下両端の一対の折曲げ部28とを含む。本体26の高さはバンパアブソーバ15の高さとほぼ等しい。一対の折曲げ部28の先端が上記バンパリーンフォース20の前方部21の両端に係止されている。荷重伝達部材25とバンパリーンフォース20との間に一対の荷重センサ30が車高方向に離れて配置され、荷重伝達部材25に取り付けられている。
【0028】
詳述すると、図1及び図2に示すように、荷重伝達部材25の本体26のうち上下端部26aの後面26b側に、後方に突出する一対の球状凸部27が形成されている。荷重センサ30はセンサ部(検知部)31と取付け部32とを含み、両者は衝突荷重が加わる方向(図2(a)で左右方向)と直角方向(図2(a)で上下方向)に離れて形成されている。センサ部31は歪ゲージ等を含む。取付け部32は球状凹部33を備え、その内径は上記球状凸部27の外径よりも少し小さく選定されている。また球状凹部33の周縁34は開口が開く方向に弾性変形可能となっている。一対の荷重センサ30は、図1及び図2(b)に示すように、その前面30aを荷重伝達部材25の本体26の上下端部26aの後面26bに密着させ、その球状凹部33を球状凸部27にスナップロックすることにより、荷重伝達部材25に取り付けられている。
【0029】
(ロ)作用、効果
次に、この衝突検知装置の作用及び効果を説明する。車両が相手車両や歩行者などに衝突したときは、車両の後方に向かう衝突荷重Fがバンパ10に加わる。衝突荷重Fによりバンパアブソーバ15が主に車両の前後方向に変形し、衝突エネルギを吸収する。衝突荷重Fはバンパアブソーバ15から荷重伝達部材25及び荷重センサ30を介してバンパリーンフォース20に伝達される。バンパリーンフォース20は、荷重伝達部材25の変形及び荷重センサ30の損傷を防止する。荷重センサ30の検知部31が荷重伝達部材25からバンパリーンフォース20に伝達される荷重を検知し、その信号に基づき衝突判定部(不図示)が衝突を判定する。
【0030】
この衝突検知装置によれば、以下の効果が得られる。第1に、一対の荷重センサ30の荷重伝達部材25への取付けが容易である。荷重センサ30の取付け部32の球状凹部33を、荷重伝達部材25の球状凸部27にスナップロックするのみで良い。球状凹部33に、球状凸部27を挿入する際周縁34は弾性で開いて挿入を容易にする。このように、ねじ止めや接着が不要なので、荷重センサ30の荷重伝達部材25への取付けに要する時間及び手間が少なくなる。
【0031】
第2に、一対の荷重センサ30の荷重伝達部材25への取付けが確実である。荷重センサ30の球状凹部33を、荷重伝達部材25の球状凸部27にスナップロックすると、 球状凹部33の周縁34は弾性で閉じ球状凸部27の球面に係合しているので、車体に振動が加わっても容易に外れることはない。第3に、上下方向に離れた上下一対の荷重センサ30を設けたので、仮に何らかの理由で一方の荷重センサ30による衝突荷重の検知が不十分又は不確実な場合があっても、他方の荷重センサ30で衝突荷重が検知される。
【0032】
第4に、検知部31と取付け部32とを衝突荷重Fの加わる方向と直交する方向で離して形成したので、検出も取付けも確実である。第5に、バンパアブソーバ15とバンパリーンフォース20との間に荷重伝達部材25を配置したので、バンパアブソーバ15に加わる衝突荷重Fが荷重伝達部材25を介して確実に荷重センサ30に伝達される。
【0033】
<第2の実施形態>
図3に示す第2の実施形態では、上記第1の実施形態における荷重伝達部材25は除去され、バンパアブソーバ40の後方にバンパリーンフォース20が配置されている。バンパアブソーバ40とバンパリーンフォース20との間に一対の荷重センサ45が配置され、バンパアブソーバ40に取り付けられている。即ち、バンパアブソーバ40の後面40aには、車高方向の中間部に切欠き42が形成され、車高方向に離れて形成された後方に突出した上下一対の突出部43に、一対の球状凸部41が形成されている。バンパアブソーバ40の一対の球状凸部41に、第1の実施形態の荷重センサ30(図2参照)と同様の荷重センサ45が取り付けられている。即ち、一対の球状凸部41に、荷重センサ45の球状凹部46がスナップロックされている。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0034】
第2の実施形態に特有の効果として、荷重センサ45の球状凹部46をバンパアブソーバ40の球状凸部41へスナップロックでき、荷重センサ45のバンパアブソーバ40への取付けが容易かつ確実になる。また、第1の実施形態における荷重伝達部材25を除去したが、バンパアブソーバ40に切欠き42を形成して上下一対の突出部43とバンパリーンフォース20との間に荷重センサ45を配置したので、バンパアブソーバ40から荷重センサ45へ衝突荷重が確実に伝達される。
【0035】
<第3の実施形態>
図4に示す第3の実施形態では、上記第1の実施形態における荷重伝達部材25は除去され、バンパ50の後方に、その前面の車高方向の中間部に切欠き57が形成され、車高方向に離れて形成され前方に突出した上下一対の突出部58を持つバンパアブソーバ55が配置され、その後方にバンパリーンフォース20が配置されている。バンパ50の後面50aとバンパアブソーバ55の一対の突出部58との間に、第1の実施形態の荷重センサ30(図2参照)と同様の一対の荷重センサ60が配置され、バンパ50に取り付けられている。
【0036】
即ち、バンパ50の後面50aに車高方向に離れ後方に突出する一対の球状凸部51が形成されている。第1の実施形態の荷重センサ30と同様の荷重センサ60の球状凹部61が球状凸部51にスナップロックされている。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0037】
第3の実施形態に特有の効果として、荷重センサ60の球状凹部61をバンパ50の球状凸部51へ容易にスナップロックでき、荷重センサ60のバンパ50への取付けが容易かつ確実になる。また、バンパアブソーバ55の前面の車高方向で中間部に切欠き57を、上下両端に突出部58を形成したので、バンパ50に加わる荷重がすぐ後方に配置された荷重センサ60に確実に伝達される。
【0038】
<変形例>
図5に荷重センサの取付部材への取付けの変形例を示す。図5(a)に示す第1変形例は、荷重センサ65の車高方向で下側の検知部66の幅b1及び高さa1が、上側の取付け部68の幅b2及び高さa2よりも大きい。このような寸法関係にすることにより、第1に衝突荷重が荷重伝達部材25から確実に検知部68に加わり、衝突検知が確実になる。第2に、取付け部68が損傷しにくいので、荷重センサ65が荷重伝達部材25等の取付部材から脱落しにくくなる。
【0039】
図5(b)に示す第2変形例は、荷重センサ70の中心部に球形状の検知部71が形成され、その取付け面70a側では検知部71の周囲に環状の取付け部73が形成されている。これに対応して、荷重伝達部材75の環状のフック部76は断面L字形状とされ、荷重センサ70の取付け部73に係止している。その結果、検知部71はフック部76から車両の後方側に高く突出している。このようにすれば、検知部71が衝突荷重を検知しやすく、また、フック部76及び取付け部73が損傷しにくくなる。なお、荷重センサ70の取付け部73を一対の突起で形成し、荷重伝達部材75のフック部76を一対のフックで形成しても良い。
【0040】
図5(c)に示す第3変形例は、荷重センサ80の中心部にブロック形状の検知部81が形成され、取付け面80a側では検知部81の周囲に環状の取付け部83が形成されている。取付け面80aからの取付け部83の表面までの高さh1に比べて、取付け面80aから検知部81の先端面まで高さh2は相当高く選定されている。その結果、検知部81はフック部76よりも高く後方に突出している。このようにすれば、検知部81が衝突荷重を検知しやすく、またフック部76及び取付け部83が損傷しにくい。
【0041】
<第4の実施形態>
図6(a)(b)及び図7(a)(b)に示す第4の実施形態では衝突センサが光ファイバセンサ100から成る。図6(a)は車体の一部の横方向断面図、図6(b)は図6(a)の6−6断面図(縦断面図)である。 図6(a)(b)において、車両の前方から後方に向かってエネルギ吸収部材15、荷重伝達部材25及びバンパリーンフォース20がこの順序で配置され、荷重伝達部材25とバンパリーンフォース20との間に車高方向に離れた二本の光ファイバセンサ100が車幅方向全長にわたって配置されている。
【0042】
光ファイバセンサ100は光ファイバ102と、光ファイバ102の近傍の曲げ部材103と、ゴム製で光ファイバ102及び曲げ部材103の外周側の横断面矩形状のケース105とを含む。各ケース105の上方寄りの取付け部106に前方に開口した球状凹部107が形成され、下方寄りの検知部109に光ファイバ102及び曲げ部材103が収容されている。光ファイバセンサ100はケース105の長手方向に離れた一カ所又は複数カ所において、車高方向に離れた二カ所で荷重伝達部材25にスナップロックされている。即ち、荷重伝達部材25の後面に後方側に突出する二つの球状凸部27が車高方向に離れて形成され、この球状凸部27を球状凹部107にスナップロックすることにより、光ファイバセンサ100が荷重伝達部材25に取り付けられている。ケース105の取付け部106及び検知部109の前面が荷重伝達部材25の後面に当接し、検知部109の後面がバンパリーンフォース20の前面に当接している。
【0043】
図7(a)に示すように、車体の一側に配置された発光素子112が光ファイバセンサ100の一端に近接し、車体の一側に配置された受光素子113が光ファイバセンサ100の他端に近接している。その結果、発光素子112が発せられた光が光ファイバ102の内部を伝播し、受光素子113で受光されるようになっている。車両の衝突時は、 図7(b)に示すように光ファイバセンサ100にその軸方向と直交する方向の力Fが加わり、光ファイバ102が曲げられ、その内部を通過する光の一部が曲げ部で損失する。その結果、発光素子112からの発光量に対して受光素子113での受光量が減少するので、受光素子113での受光量を検知することにより衝突を検知できる。
【0044】
第4の実施形態によれば、球状凹部107に球状凸部27をスナップロックさせるのみで光ファイバセンサ105を荷重伝達部材25へ取り付けることができ、取付けが容易かつ確実である。また、光ファイバセンサ105は車幅方向全長に延びているので、その長手方向のどの部分が変形しても、即ち車両の前部のどの部分が衝突しても、衝突を確実に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の最良の形態の第1の実施形態を示す断面説明図である。
【図2】図1の要部拡大図であり、(a)は組付け前を示し、(b)は組付け後を示す。
【図3】最良の形態の第2の実施形態を示す断面説明図である。
【図4】最良の形態の第3の実施形態を示す断面説明図である。
【図5】(a)(b)及び(c)は第1から第3の実施形態の別々の変形例を示す説明図である。
【図6】(a)は最良の形態の第4の実施形態を示す横方向説明図であり、(b)は6(a)の6−6断面図である。
【図7】(a)は図6の第4実施形態の光ファイバセンサと発光素子及び受光素子との関係を示す断面説明図であり、(b)は第4実施形態の作動説明図である。
【符号の説明】
【0046】
10:バンパ 15:エネルギ吸収部材
20:補強部材 25:荷重伝達部材
27:凸部 30:衝突センサ
33:凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に配置され、車両の衝突時に加わる衝突荷重(F)を後方に伝達する荷重伝達部材(25)と、
前記荷重伝達部材の後方に配置された補強部材(20)と、
前記荷重伝達部材と前記補強部材との間に配置され車両の衝突を検知する機械式又は光学式の衝突センサ(30、100)と、を備え、
前記衝突センサは、スナップロックにより前記荷重伝達部材に取り付けられていることを特徴とする車両の衝突検知装置。
【請求項2】
車高方向に離れて配置された複数の前記衝突センサのそれぞれに凹部(33、107)が形成され、複数の該衝突センサにわたって延びた前記荷重伝達部材に、各該凹部がスナップロックされる複数の凸部(27)が形成されている請求項1に記載の車両の衝突検知装置。
【請求項3】
前記衝突センサは衝突を検知する検知部(31、109)と、前記荷重伝達部材に取り付けられ前記凹部が形成された取付け部(32、106)とが別々に形成され、該取付け部の前記凹部の周縁は弾性変形可能である請求項2に記載の車両の衝突検知装置。
【請求項4】
車体の前部に配置され、車両の衝突時に衝突エネルギを吸収するエネルギ吸収部材(40)と、
前記エネルギ吸収部材の後方に配置された補強部材(20)と、
前記エネルギ吸収部材と前記補強部材との間に配置され車両の衝突を検知する機械式又は光学式の衝突センサ(45)と、を備え、
前記衝突センサは、スナップロックにより前記エネルギ吸収部材に取り付けられていることを特徴とする車両の衝突検知装置。
【請求項5】
車高方向に離れて配置された複数の前記衝突センサのそれぞれに凹部(46)が形成され、複数の該衝突センサにわたって延びた前記エネルギ吸収部材に、各該凹部がスナップロックされる複数の凸部(41)が形成されている請求項4に記載の車両の衝突検知装置。
【請求項6】
前記衝突センサは衝突を検知する検知部と、前記エネルギ吸収部材に取り付けられ前記凹部が形成された取付け部とが別々に形成され、該取付け部の前記凹部の周縁は弾性変形可能である請求項5に記載の車両の衝突検知装置。
【請求項7】
車体の前部に配置されたバンパ(50)と、
前記バンパの後方に配置され、車両の衝突時に衝突エネルギを吸収するエネルギ吸収部材(55)と、
前記バンパと前記エネルギ吸収部材との配置され車両の衝突を検知する機械式又は光学式の衝突センサ(60)と、を備え、
前記衝突センサは、スナップロックにより前記バンパに取り付けられていることを特徴とする車両の衝突検知装置。
【請求項8】
車高方向に離れて配置された複数の前記衝突センサのそれぞれに凹部(61)が形成され、複数の該衝突センサにわたって延びた前記バンパに、各該凹部がスナップロックされる複数の凸部(51)が形成されている請求項7に記載の車両の衝突検知装置。
【請求項9】
前記衝突センサは衝突を検知する検知部と、前記バンパに取り付けられ前記凹部が形成された取付け部とが別々に形成され、該取付け部の前記凹部の周縁は弾性変形可能である請求項8に記載の車両の衝突検知装置。
【請求項10】
前記光学式の衝突センサ(100)は光ファイバ(102)、該光ファイバの近傍の曲げ部材(103)、及び前記光ファイバ及び前記曲げ部材の外周側のケース(105)を含み、前記ケースに、前記荷重伝達部材、前記エネルギ吸収部材又は前記バンパに形成された凸部(27)にスナップロックされる凹部(107)が形成されている請求項1から9の何れか一つに記載の車両の衝突検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−298321(P2006−298321A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126840(P2005−126840)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】