説明

車両ドア操作機構

【課題】モータの失陥等によりドアの閉止保持が不可能な非常時に、迅速にドアの閉止保持が可能な状態に復帰させることが可能な車両ドア操作機構の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の車両ドア操作機構100Kは、モータ動力伝達レバー160が第1回動方向の回動終端位置で異常停止して動かなくなった場合に車内操作ハンドル18を閉方向に操作すると車内ハンドル連動レバー140が原点位置から第2回動方向に回動し、その車内ハンドル連動レバー140に押されて中継レバー190が回動する。すると連結ピン166が動力伝達位置から動力遮断位置に移動してL型第2辺経路154B内を移動可能となり、モータ動力伝達レバー160から車外ハンドル連動レバー150、ラチェット連動レバー130及びラチェット30への動力の伝達が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの動力を利用してラッチ・ラチェット機構によるドアの閉止保持(以下、適宜「ドアラッチ」という)を解除可能な車両ドア操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両ドア操作機構では、ドアラッチを解除した状態でモータが失陥等すると、再度、ドアラッチを行うことができなくなる。そのような非常時に対応可能な従来の車両ドア操作機構として、ドアの内部にモータ切り離し操作部を備えたものが知られている。この車両ドア操作機構では、ドアに貫通形成された操作孔にツールを挿し込んでモータ切り離し操作部を操作することで、上記した非常時にモータをラッチ・ラチェット機構から切り離して、ドアラッチ可能な状態に復帰させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−31569号公報(段落[0079]、[0080]第11図〜第13図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の車両ドア操作機構では、モータ切り離し操作部及びその操作孔の存在を知らないために、非常時に修理関係者に連絡をしたり、車両マニュアルを調べたりする等の対応を強いられ、迅速にドアラッチ可能な状態に復帰させることができない事態が生じ得た。また、モータ切り離し操作部及びその操作孔の存在を知っていても、操作孔越しの困難な操作を強いられるために、迅速にドアラッチ可能な状態に復帰させることが難しかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、モータの失陥等によりドアの閉止保持が不可能な非常時に、迅速にドアの閉止保持が可能な状態に復帰させることが可能な車両ドア操作機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る車両ドア操作機構は、車両のスライドドアを閉止状態に保持するラッチ・ラチェット機構のラチェットに連動し、ラッチ・ラチェット機構による閉止保持を解除する際に原点位置から第1回動方向に回動するラチェット連動部材と、スライドドアの室内面に配置された車内操作ハンドルの原点位置から開方向への操作動力を受けてラチェット連動部材に第1回動方向を向いた動力を付与可能な車内ハンドル連動部材と、スライドドアの室外面に配置された車外操作ハンドルの開方向への操作動力を受けてラチェット連動部材に第1回動方向を向いた動力を付与可能な車外ハンドル連動部材と、車内操作ハンドル又は車外操作ハンドルの開操作に起因してリリースモータから動力を受けてラチェット連動部材に第1回動方向を向いた動力を付与可能なモータ動力伝達部材と、モータ動力伝達部材又は車外ハンドル連動部材の何れか一方に設けられて、リリースモータの動力をモータ動力伝達部材から車外ハンドル連動部材へと伝達する動力伝達位置と、その動力を遮断する動力遮断位置との間を移動可能であると共に、通常は、動力伝達位置に保持された動力中継部材と、車外ハンドル連動部材及びモータ動力伝達部材がラチェット連動部材を原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置に保持した状態でリリースモータが異常停止したときに、車内操作ハンドルの原点位置から閉方向への操作動力を車内ハンドル連動部材から受けて作動し、動力中継部材を動力遮断位置へと移動する動力緊急遮断機構とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両ドア操作機構において、動力中継部材は、モータ動力伝達部材及び車外ハンドル連動部材を貫通して動力伝達位置と動力遮断位置との間を移動可能な連結ピンを有して構成され、動力緊急遮断機構は、車外ハンドル連動部材又はモータ動力伝達部材に回動可能に軸支されかつ、連結ピンが挿通されると共に車内ハンドル連動部材から動力を受けて回動する中継レバーを有して構成されるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両ドア操作機構において、車外ハンドル連動部材及びモータ動力伝達部材は、車外操作ハンドルの開方向への操作動力又はリリースモータの動力を受けて原点位置から回動し、中継レバーは、車外ハンドル連動部材及びモータ動力伝達部材が原点位置に配置された状態で、車内ハンドル連動部材の移動領域外に位置するように構成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の車両ドア操作機構において、ラチェット連動部材、車内ハンドル連動部材、車外ハンドル連動部材及びモータ動力伝達部材をメイン支持軸にて回動自在に支持し、モータ動力伝達部材又は車外ハンドル連動部材の何れか一方の部材に形成され、回動半径方向に延びたL型第1辺経路の一端部からメイン支持軸を中心とした円弧状のL型第2辺経路を延ばしてなりかつ、連結ピンが貫通するL型長孔と、モータ動力伝達部材又は車外ハンドル連動部材の何れか他方の部材に形成され、モータ動力伝達部材及び車外ハンドル連動部材が共に原点位置に配置された状態でL型第1辺経路に重ね合わさりかつ、連結ピンが貫通するI型長孔とを備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明に係る車両ドア操作機構は、車両のスライドドアを閉止状態に保持するラッチ・ラチェット機構のラチェットに連動し、ラッチ・ラチェット機構による閉止保持を解除する際にメイン支持軸回りを原点位置から第1回動方向に回動するラチェット連動部材と、スライドドアの室内面に配置された車内操作ハンドルの原点位置から開方向への操作動力を受けてメイン支持軸回りを原点位置から第1回動方向に回動して、ラチェット連動部材に第1回動方向を向いた動力を付与可能である共に、車内操作ハンドルの原点位置から閉方向への操作動力を受けてメイン支持軸回りを原点位置から第1回動方向と逆の第2回動方向に回動する車内ハンドル連動部材と、スライドドアの室外面に配置された車外操作ハンドルの開方向への操作動力を受けてメイン支持軸回りを原点位置から第1回動方向に回動して、ラチェット連動部材に第1回動方向を向いた動力を付与可能な車外ハンドル連動部材と、リリースモータから動力を受け、メイン支持軸回りを原点位置から第1回動方向に回動するモータ動力伝達部材と、モータ動力伝達部材又は車外ハンドル連動部材の何れか一方の部材に形成され、回動半径方向に延びたL型第1辺経路の一端部からメイン支持軸を中心とした円弧状のL型第2辺経路を延ばしてなるL型長孔と、モータ動力伝達部材又は車外ハンドル連動部材の何れか他方の部材に形成され、モータ動力伝達部材及び車外ハンドル連動部材が共に原点位置に配置された状態でL型第1辺経路に重ね合わさるI型長孔と、I型長孔及びL型長孔を共に貫通して、それらI型長孔及びL型長孔内を長手方向に沿って移動可能な連結ピンと、モータ動力伝達部材又は車外ハンドル連動部材のうちI型長孔を有した方の部材に回動可能に設けられ、連結ピンのI型長孔における位置に応じて回動する中継レバーと、中継レバーを介して連結ピンをI型長孔のうちL型第2辺経路から離れた側の端部に付勢する付勢手段とを備え、中継レバーは、車外ハンドル連動部材及びモータ動力伝達部材が原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置でリリースモータが異常停止したときに、原点位置から第2回動方向に回動する車内ハンドル連動部材に押されて回動し、連結ピンをI型長孔のうちL型第2辺経路側の端部に移動するように構成されたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載の車両ドア操作機構において、I型長孔と共に中継レバーをモータ動力伝達部材に設けたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の発明によれば、スライドドアが閉止保持された状態で車内操作ハンドル又は車外操作ハンドルを開操作すると、その開操作に起因してリリースモータが作動し、その動力がモータ動力伝達部材から車外ハンドル連動部材を経由してラチェット連動部材に伝達され、ラチェット連動部材が原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置に保持される。つまり、ラッチ・ラチェット機構によるドアラッチ解除をリリースモータの動力を利用して維持することができる。
【0013】
ここで、リリースモータの失陥やモータ動力の伝達経路の異常等によりモータ動力伝達部材及び車外ハンドル連動部材がラチェット連動部材を第1回動方向の回動終端位置に保持した状態で異常停止して動かなくなり、スライドドアを閉止保持することができなくなった非常時には、車内操作ハンドルを閉方向に操作すればよい。すると、その閉方向への操作動力が車内ハンドル連動部材から動力中継部材に伝達され、動力中継部材が動力伝達位置から動力遮断位置に移動し、モータ動力伝達部材から車外ハンドル連動部材への動力の伝達が遮断され、その結果、モータ動力の伝達経路に異常を有したリリースモータや失陥したリリースモータがラッチ・ラチェット機構から切り離されて、スライドドアの閉止保持が可能な状態に復帰する。
【0014】
このように本発明の車両ドア操作機構によれば、通常はスライドドアの開閉操作に使用される車内操作ハンドルを、モータ切り離し操作の操作対象に兼用したので、リリースモータの失陥等によりスライドドアの閉止保持が不可能となった非常時に、車両マニュアルを調べる等しなくても、試行錯誤の過程の車内操作ハンドルの操作により迅速にドアの閉止保持が可能な状態に復帰させることができる。しかも、モータ切り離し操作のために従来のようにツールを必要とすることもないので、この点においても迅速にドアの閉止保持が可能な状態に復帰させることができる。また、モータ切り離し操作によりドアを閉止保持させた状態で、車内操作ハンドルを通常時と同じように開操作すれば、車内ハンドル連動部材が、ラチェット連動部材に対して第1回動方向の動力を付与するので、ラッチ・ラチェット機構によるスライドドアの閉止保持を解除して、スライドドアを開けることが可能である。
【0015】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、モータ動力伝達部材及び車外ハンドル連動部材がラチェット連動部材を第1回動方向の回動終端位置に保持した状態で異常停止して動かなくなったときに、車内操作ハンドルを閉方向に操作すると、その操作動力を受けて中継レバーが回動して連結ピンを動力伝達位置から動力遮断位置に移動させる。これにより、モータ動力伝達部材と車外ハンドル連動部材とが切り離され、その結果、リリースモータがラッチ・ラチェット機構から切り離される。
【0016】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、車外ハンドル連動部材及びモータ動力伝達部材が原点位置に配置された状態では、車内操作ハンドルの閉操作に伴って移動する車内ハンドル連動部材と中継レバーとが干渉しないから、正常状態で車内操作ハンドルを閉方向に操作した場合に、中継レバーの回動抵抗が車内操作ハンドルにかかることがなく、車内操作ハンドルをスムーズに閉方向に操作することができる。
【0017】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、車内操作ハンドルを閉方向に操作すると、車内ハンドル連動部材がメイン支持軸回りを原点位置から回動して、連結ピンがI型長孔のうちL型第2辺経路側の端部に移動し、L型第2辺経路内を移動可能となることで、モータ動力伝達部材から車外ハンドル連動部材への動力の伝達が遮断される。その結果、モータ動力の伝達経路に異常を有したリリースモータや失陥したリリースモータがラッチ・ラチェット機構から切り離される。
【0018】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、スライドドアが閉止保持された状態で車内操作ハンドル又は車外操作ハンドルを開操作すると、その開操作に起因してリリースモータが作動し、その動力がモータ動力伝達部材から車外ハンドル連動部材を経由してラチェット連動部材に伝達され、ラチェット連動部材が原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置に保持される。つまり、ラッチ・ラチェット機構によるドアラッチ解除をリリースモータの動力を利用して維持することができる。
【0019】
ここで、リリースモータの失陥やモータ動力の伝達経路の異常等によりモータ動力伝達部材及び車外ハンドル連動部材が第1回動方向の回動終端位置で異常停止して動かなくなり、スライドドアを閉止保持することができなくなった非常時には、車内操作ハンドルを閉方向に操作すればよい。すると、車内ハンドル連動部材が原点位置から第2回動方向に回動して、連結ピンがI型長孔のうちL型第2辺経路側の端部に移動し、L型第2辺経路内を移動可能となることで、モータ動力伝達部材から車外ハンドル連動部材への動力の伝達が遮断され、その結果、モータ動力の伝達経路に異常を有したリリースモータや失陥したリリースモータがラッチ・ラチェット機構から切り離されて、スライドドアの閉止保持が可能な状態に復帰する。
【0020】
このように本発明の車両ドア操作機構によれば、通常はスライドドアの開閉操作に使用される車内操作ハンドルを、モータ切り離し操作の操作対象に兼用したので、リリースモータの失陥等によりスライドドアの閉止保持が不可能となった非常時に、車両マニュアルを調べる等しなくても、試行錯誤の過程の車内操作ハンドルの操作により迅速にドアの閉止保持が可能な状態に復帰させることができる。しかも、モータ切り離し操作のために従来のようにツールを必要とすることもないので、この点においても迅速にドアの閉止保持が可能な状態に復帰させることができる。また、モータ切り離し操作によりドアを閉止保持させた状態で、車内操作ハンドルを通常時と同じように開操作すれば、連結ピンがL型第2辺経路内を移動するので、モータ動力伝達部材を車外ハンドル連動部材から切り離した状態を維持したまま、車外ハンドル連動部材からラチェット連動部材に第1回動方向を向いた動力を付与することができる。即ち、復旧操作を経て閉止保持されたスライドドアを、通常時と同じように車外操作ハンドルを開方向に操作することで開けることが可能になる。
【0021】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、中継レバーをモータ動力伝達部材に設けたことで、車外ハンドル連動部材を軽量化することができ、モータ切り離し操作によって車外ハンドル連動部材を原点位置に復帰させるために必要な力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両ドア操作機構を備えた車両の概念図
【図2】前側ドアロック装置、リモコン装置等を備えたスライドドアの概念図
【図3】ラッチとストライカが噛み合う前のラッチ・ラチェット機構の側面図
【図4】ラッチとストライカが噛み合った状態のラッチ・ラチェット機構の側面図
【図5】リモコン装置の正面図
【図6】リモコン装置の背面図
【図7】原点位置における車両ドア操作機構の正面図
【図8】原点位置における車両ドア操作機構(全開ロックレバーを除く)の正面図
【図9】原点位置におけるラチェット連動レバー、可動ピン貫通レバー、車外ハンドル連動レバー及びモータ動力伝達レバーの正面図
【図10】原点位置におけるラチェット連動レバー、可動ピン貫通レバー及び車外ハンドル連動レバーの正面図
【図11】ラチェット連動レバー、可動ピン貫通レバー及びロッキングレバーの正面図
【図12】車内操作ハンドルを閉操作したときの車両ドア操作機構の正面図
【図13】車内操作ハンドルを開操作したときの車両ドア操作機構の正面図
【図14】車外操作ハンドルの開操作したときの車両ドア操作機構の正面図
【図15】モータ動力伝達レバーの異常停止後、車内操作ハンドルを閉操作したときの車両ドア操作機構の正面図
【図16】復帰後に車外操作ハンドルを開操作したときの車両ドア操作機構の正面図
【図17】復帰後に車内操作ハンドルを開操作したときの車両ドア操作機構の正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、スライドドア90を有する車両200が示されている。このスライドドア90は、車両本体99の昇降口を閉止した状態から斜め後方に後退しかつ、途中から真っ直ぐ後退して全開状態になる。スライドドア90を開閉操作するために、スライドドア90の室外面には車外操作ハンドル17(図5参照)が配置され、室内面には車内操作ハンドル18(図2参照)が配置されている。車外操作ハンドル17は、例えば、グリップ式ハンドルであって手前側に引いて操作する。また、スライドドア90の室内面には、車外操作ハンドル17及び車内操作ハンドル18が開操作されてもスライドドア90が開かないようにドアロックを施錠状態にするための室内ロック操作部16が備えられている。車内操作ハンドル18及び室内ロック操作部16については後述する。
【0024】
図2に示すように、スライドドア90の内部には、スライドドア90を閉止状態に保持するための前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bと、全開状態に保持するための全開ドアロック装置10Cと、それらドアロック装置10A,10B,10Cと連結したリモコン装置100とが備えられている。
【0025】
各ドアロック装置10A,10B,10Cは、スライドドア90における所定各所に配置されており、これらに対応して、ドア枠99W(昇降口の枠)の内側面における三箇所にはストライカ40が設けられている(図1には、二箇所のストライカ40のみが示されている)。
【0026】
図3に示すように、前側ドアロック装置10Aは、ベース盤11に、ラッチ20、ラチェット30、ストライカ受容溝12等を有するラッチ・ラチェット機構20Kを設けた構成となっている。
【0027】
ストライカ受容溝12は水平方向に延びかつ、その一端部が車内側に向かって開放しており、他端部は閉じている。スライドドア90を閉じるとストライカ受容溝12の一端部からストライカ受容溝12内にストライカ40が進入する。
【0028】
ベース盤11のうちストライカ受容溝12より下方には、ラチェット30が回動可能に軸支されている。ラチェット30は、回動軸30Jからラッチ20に向かって突出している。ラチェット30とベース盤11との間にはトーションコイルバネ30Sが備えられ、このトーションコイルバネ30Sによってラチェット30が図3における反時計回り方向に付勢されている。また、ラチェット30は、ベース盤11を隔てて反対側にラチェット駆動レバー30Rを一体に備えており、そのラチェット駆動レバー30Rとリモコン装置100とがオープンケーブル91Wにて連結されている。オープンケーブル91Wは、トーションコイルバネ30Sによってラチェット30側に引っ張られており、トーションコイルバネ30Sの付勢力に抗してオープンケーブル91Wがリモコン装置100側に引っ張られると、ラチェット30が図3における時計回り方向に回動する。
【0029】
ベース盤11のうちストライカ受容溝12より上方にはラッチ20が回動可能に軸支されている。ラッチ20には、1対の係止爪21,22が備えられ、それら係止爪21,22の間がストライカ受容部23になっている。また、ラッチ20は、ベース盤11との間に設けたトーションコイルバネ20Sによりラッチ解除方向(図3における時計回り方向)に付勢されている。そして、スライドドア90を開けた状態では、図3に示すように、ラッチ20がラッチ解除方向の一端に位置決めされる。
【0030】
この状態でスライドドア90を閉方向にスライドさせると、ストライカ受容溝12に進入したストライカ40が図3に示すように、ラッチ20のストライカ受容部23内に受容されると共に、ストライカ40が後側の係止爪22を押してラッチ20がラッチ解除方向とは逆のラッチ方向(図3における反時計回り方向)に回動する。これにより、図4に示すようにラッチ20がストライカ40と噛み合った状態になる。
【0031】
またこのとき、ラッチ20の前側の係止爪21にラチェット30が当接して、ラッチ解除方向(図4における時計回り方向)へのラッチ20の回動が禁止される。即ち、ラッチ20がストライカ40と噛み合った状態に保持される。
【0032】
図4に示すようにラッチ20とストライカ40の噛み合いにより閉止保持されたスライドドア90に対し、車外操作ハンドル17又は車内操作ハンドル18を開操作すると、オープンケーブル91Wがリモコン装置100側に引っ張られる。すると、図4において二点鎖線で示したように、ラチェット30が図4における時計回り方向に回動して、ラッチ20の回動領域の外側に退避し、ラチェット30によるラッチ20の回動規制が解除される。
【0033】
以上が前側ドアロック装置10Aの説明であるが、後側ドアロック装置10Bにも、前側ドアロック装置10Aと同様に動作するラッチ・ラチェット機構(図示せず)が備えられている。後側ドアロック装置10Bのラチェットとリモコン装置100との間はオープンケーブル92W(図2参照)にて連結されており、スライドドア90の車外操作ハンドル17又は車内操作ハンドル18を開操作すると、オープケーブル92Wがリモコン装置100側に引っ張られて、ラチェットによるラッチの回動規制が解除される。
【0034】
そして、前側ドアロック装置10Aと後側ドアロック装置10Bの両方のラッチ・ラチェット機構20Kにおいて、ラッチ20がストライカ40と噛み合った状態(図4に示す状態)に保持されたとき、スライドドア90は閉止状態に保持される。また、前側ドアロック装置10Aと後側ドアロック装置10Bの両方のラッチ・ラチェット機構20Kにおいて、ラチェット30によるラッチ20の回動規制が解除されると、スライドドア90の閉止保持が解除(ラッチ解除)されて、スライドドア90を開ける(開方向にスライドさせる)ことが可能になる。なお、車両200には、スライドドア90を電動で開閉することが可能な図示しない電動ドア開閉装置(所謂、「パワースライドドア装置」)が備えられており、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bによるドアラッチ解除と連動して電動ドア開閉装置が作動して、スライドドア90が電動で開くようになっている。
【0035】
全開ドアロック装置10Cにも前側ドアロック装置10Aと同様にラッチ・ラチェット機構が備えられている。このラッチ・ラチェット機構は、スライドドア90を全開状態にしたときに、ラッチとストライカ40とが噛み合うと共に、そのラッチにラチェットが当接してラッチ解除方向への回動を規制する。全開ドアロック装置10Cのラチェットとリモコン装置100との間はオープンケーブル93W(図2参照)にて連結されている。
【0036】
スライドドア90が全開状態のときに、車外操作ハンドル17又は車内操作ハンドル18を閉操作すると、オープンケーブル93Wがリモコン装置100側に引っ張られる。すると、ラチェットによるラッチの回動規制が解除され、全開状態のスライドドア90を閉める(閉方向にスライドさせる)ことが可能になる。なお、全開ドアロック装置10Cによるドアラッチが解除されると電動ドア開閉装置が作動して、スライドドア90が電動で閉まるようになっている。
【0037】
さて、リモコン装置100は、図2に示すようにスライドドア90の前端寄り位置に配置されている。また、図5に示すようにリモコン装置100は、機構盤101に車両ドア操作機構100Kを設けた構成となっている。
【0038】
図6に示すように、機構盤101のうち車両ドア操作機構100Kとは反対側の面には、車内操作ハンドル18及び室内ロック操作部16が設けられている。機構盤101は、車内操作ハンドル18及び室内ロック操作部16が設けられた方の面をスライドドア90の室内側ドアパネルに内側から宛がって固定されている。
【0039】
車内操作ハンドル18は、上下方向に延びた縦長構造をなし、スライドドア90の室内面に露出している。車内操作ハンドル18は、スライドドア90のスライド方向に傾動可能となっている。具体的には、車内操作ハンドル18は、トーションコイルばね18A(図5参照)によって図6に示す原点位置に付勢されており、原点位置からスライドドア90の閉方向側(図6における左側)に傾動させる閉操作と、原点位置からスライドドア90の開方向側(図6における右側)に傾動させる開操作とを行うことが可能となっている。
【0040】
室内ロック操作部16は、車内操作ハンドル18の下方に配置され、スライドドア90の室内面に露出している。室内ロック操作部16は、スライドドア90のスライド方向に移動可能となっている。具体的には、室内ロック操作部16を図6に示した位置からスライドドア90の閉方向側に移動操作すると、車内操作ハンドル18及び車外操作ハンドル17によりスライドドア90を開けることが不可能な施錠状態になる。逆に、室内ロック操作部16を、スライドドア90の開方向側に移動操作して図6に示した位置にすると、車内操作ハンドル18又は車外操作ハンドル17によりスライドドア90を開けることが可能な解錠状態となる。
【0041】
図5に示すように、車両ドア操作機構100Kは、機構盤101に近い側から順に、可動ピン貫通レバー120、ラチェット連動レバー130、車外ハンドル連動レバー150、モータ動力伝達レバー160、車内ハンドル連動レバー140、全開ロックレバー170が重ねられて、それらが機構盤101から起立したメイン支持軸102に回動可能に軸支されると共に、機構盤101から起立したサブ支持軸103(図6参照)にロッキングレバー180が回動可能に軸支されている。ロッキングレバー180は樹脂製であり、その他のレバー120〜170は金属製である。以下、車両ドア操作機構100Kについて詳説する。
【0042】
図7には車両ドア操作機構100Kの主要部品が示されている。同図に示すように、全開ロックレバー170は、メイン支持軸102から相反する向きに張り出した1対のレバー突片171,172を有している。一方のレバー突片172の先端部にはオープンケーブル93Wを介して全開ドアロック装置10Cのラチェットが連結されている(図2及び図5を参照)。他方のレバー突片171には、メイン支持軸102を中心とした円弧状の長孔175が貫通形成されている。長孔175にはスライドブシュ175Bが摺動可能に支持され、そのスライドブシュ175Bに車内操作ハンドル18から延びたロッド105が固定されている(図5参照)。車内操作ハンドル18を閉操作する(図6における左方向に傾ける)と、全開ロックレバー170がロッド105に押されて、メイン支持軸102回りを図7に示す原点位置から第1回動方向(図7における時計回り方向)に回動する。すると、レバー突片172に連結されたオープンケーブル93Wがリモコン装置100側に引っ張られて、全開ドアロック装置10Cのラチェットによるラッチの回動規制が解除される。ここで、全開ロックレバー170のレバー突片172と機構盤101との間はコイルばね176(図5を参照)にて連結されており、そのコイルばね176により、全開ロックレバー170が第1回動方向とは逆向きの第2回動方向に付勢されている。なお、全開ロックレバー170には、スイッチ押下突片174が一体形成されている。スイッチ押下突片174は、機構盤101に固定されたスイッチ110(図5を参照)に向かって突出しており、全開ロックレバー170が原点位置から第1回動方向に回動したときにスイッチ押下突片174がスイッチ110を押下(オン)するようになっている。
【0043】
図8に示すように、車内ハンドル連動レバー140(本発明の「車内ハンドル連動部材」に相当する)は、メイン支持軸102から相反する向きに張り出した1対のレバー突片141,142を備えている。1対のレバー突片141,142のうち、一方のレバー突片141は、全開ロックレバー170におけるレバー突片172に重ねて配されており、他方のレバー突片142は、全開ロックレバー170におけるレバー突片171に重ねて配されている(図7参照)。
【0044】
一方のレバー突片141のうち、メイン支持軸102から離れた先端部には、車内操作ハンドル18から延びたロッド106の端部が固定されている(図5参照)。車内操作ハンドル18を開操作すると(図6における右方向に傾けると)、ロッド106が車内操作ハンドル18側に引っ張られる。すると、図8から図13への変化に示すように、車内ハンドル連動レバー140がメイン支持軸102回りを原点位置から第1回動方向に回動する。また、車内操作ハンドル18を閉操作すると、ロッド106が車内ハンドル連動レバー140を押す。すると、図8から図12への変化に示すように、車内ハンドル連動レバー140がメイン支持軸102回りを原点位置から第2回動方向(図12における反時計回り方向)に回動する。
【0045】
図8に示すように、車内ハンドル連動レバー140にはスイッチ押下突片143が一体形成されている。スイッチ押下突片143は、機構盤101に固定されたスイッチ111(図5を参照)に向かって突出しており、車内ハンドル連動レバー140が第1回動方向に回動したときに、スイッチ押下突片143がスイッチ111を押下(オン)するようになっている。
【0046】
図11には、車両ドア操作機構100Kを構成する複数のレバーのうち、ラチェット連動レバー130、可動ピン貫通レバー120及びロッキングレバー180のみが示されている。同図に示すように、可動ピン貫通レバー120は、メイン支持軸102から張り出した1対のレバー突片121,122を備えている。メイン支持軸102とレバー突片122との間はトーションコイルばね129にて連結され、そのトーションコイルばね129により可動ピン貫通レバー120が第2回動方向(図11における反時計回り方向)に付勢されている。
【0047】
1対のレバー突片121,122のうち、一方のレバー突片121は、ラチェット連動レバー130に重ねて配されている。そのレバー突片121はメイン支持軸102から回動半径方向に延びかつ先端部で第2回動方向に曲がった鉤形をなしており、その鉤形に倣った鉤型長孔123が貫通形成されている。鉤型長孔123は、回動半径方向に延びた鉤型第1辺経路123Aと、その鉤型第1辺経路123Aのうちメイン支持軸102から離れた端部から第2回動方向に延びた鉤型第2辺経路123Bとからなる。この鉤型長孔123を後述する可動ピン134が貫通している。
【0048】
図8に示すように、可動ピン貫通レバー120のレバー突片122は、車内ハンドル連動レバー140のレバー突片141よりも第1回動方向の前方側に配置されている。レバー突片122には、メイン支持軸102から回動半径方向に延びたチャイルドロック経路124が貫通形成されており、そのチャイルドロック経路124内にチャイルドロックピン125が支持されている。チャイルドロックピン125は、チャイルドロック経路124を貫通しており、チャイルドロック経路124の長手方向に延びた1対の側辺をガイドにしてチャイルドロック経路124内を往復動可能となっている。
【0049】
チャイルドロックピン125をスライドドア90の外部から移動操作するために、リモコン装置100には、チャイルドロック操作部19(図5参照)が備えられている。チャイルドロック操作部19は、機構盤101に回動可能に支持されており、その回動中心から離れた一端部がスライドドア90の端面から露出すると共に、回動中心から離れた他端部がチャイルドロックピン125に連結されている。チャイルドロック操作部19の回動操作により、チャイルドロックピン125は、メイン支持軸102から離れたチャイルドロック位置(図8の二点鎖線で示した位置)と、メイン支持軸102寄りのチャイルドアンロック位置(図8の実線で示した位置)との間で移動可能となっている。チャイルドアンロック位置のとき、チャイルドロックピン125は車内ハンドル連動レバー140におけるレバー突片141の回動領域内に位置するので、チャイルドロックピン125を介して車内ハンドル連動レバー140と可動ピン貫通レバー120とが一体回転可能に連結される。即ち、車内操作ハンドル18の開操作による操作動力を、車内ハンドル連動レバー140を介して可動ピン貫通レバー120に伝達可能となる。これに対し、チャイルドロック位置のとき、チャイルドロックピン125は車内ハンドル連動レバー140におけるレバー突片141の回動領域外に位置するので、車内ハンドル連動レバー140と可動ピン貫通レバー120とが切り離されて連動不可能になる。即ち、車内操作ハンドル18の開操作による操作動力を、可動ピン貫通レバー120に伝達することが不可能となる。
【0050】
なお、可動ピン貫通レバー120には、スイッチ押下突片128が一体形成されている。スイッチ押下突片128は機構盤101に固定されたスイッチ111(図5参照)に向かって突出しており、可動ピン貫通レバー120が第1回動方向に回動したときに、スイッチ押下突片128がスイッチ111を押下(オン)するようになっている。
【0051】
図11に示すように、ラチェット連動レバー130(本発明の「ラチェット連動部材」に相当する)はメイン支持軸102から相反する向きに1対のレバー突片131,132が延びた構成となっている。1対のレバー突片131,132のうち、車内ハンドル連動レバー140のレバー突片141と同じ側に配されたレバー突片131の先端部には、オープンケーブル91W,92Wを介して前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bの各ラチェット30が連結されている(図5参照)。
【0052】
ラチェット連動レバー130のうち、可動ピン貫通レバー120のレバー突片121に重ねられたレバー突片132には、回動半径方向に延びた直線長孔133が貫通形成されている。直線長孔133は、レバー突片132のうちメイン支持軸102から離れた先端寄り部分に形成されている。直線長孔133は、ラチェット連動レバー130及び可動ピン貫通レバー120が共に原点位置のときに、可動ピン貫通レバー120の鉤型第1辺経路123Aと重ね合わせ可能となっており、直線長孔133と鉤型長孔123とを共通の可動ピン134が貫通している。可動ピン134は、直線長孔133に支持されかつ、直線長孔133の長手方向に延びた1対の側辺をガイドにして直線長孔133内を往復動可能となっている。なお、可動ピン134は断面円形状になっているが、直線長孔133の幅に対応した断面矩形状としてもよい。
【0053】
ここで、可動ピン貫通レバー120のレバー突片121のうち第1回動方向を向いた側縁部からはラチェット連動レバー130に向かって(図11の紙面手前側に向かって)連動当接片126が直角に曲げ起こされており、その連動当接片126が、ラチェット連動レバー130のレバー突片131のうち第1回動方向を向いた側縁部と当接可能となっている。従って、ラチェット連動レバー130は、可動ピン貫通レバー120を介してトーションコイルばね129の付勢力を受けることになり、第2回動方向に付勢される。そして、常には、レバー突片131の先端部に備えたストッパ部135が機構盤101と当接することで(図5及び図6参照)、ラチェット連動レバー130及び可動ピン貫通レバー120が共に図8に示す原点位置に位置決めされている。
【0054】
図5に示すように、機構盤101には、可動ピン134を直線長孔133内で移動させるためのロッキングレバー180及びロッキングアクチュエータ185が組み付けられている。図11に示すように、ロッキングレバー180は、サブ支持軸103からロッキングアクチュエータ185に向かって延びたレバー突片181と、サブ支持軸103から可動ピン134に向かって延びたレバー突片182とを有している。
【0055】
ロッキングレバー180のレバー突片182には、円弧状の長孔183が貫通形成されている。長孔183は直線長孔133及び鉤型長孔123と重ね合わせ可能となっており、この長孔183を可動ピン134が移動可能に貫通している。
【0056】
ロッキングアクチュエータ185は、遠隔操作(リモコンキー又は車内の集中ドアロックボタンの操作)により作動する電動モータを主要部とし、その出力レバー186(図5参照)がロッキングレバー180のレバー突片181にピン及び長孔を介して連結されている。また、出力レバー186と室内ロック操作部16は、室内ロック操作部16の移動操作(施解錠操作)によって出力レバー186が回動するように連結されている(図5参照)。
【0057】
室内ロック操作部16の施解錠操作を行うか又はロッキングアクチュエータ185が作動すると、ロッキングレバー180がサブ支持軸103回りに回動して可動ピン134を、直線長孔133のうちメイン支持軸102側のロック解除位置(図11の実線で示す位置)と、直線長孔133のうち鉤型第2辺経路123B側のロック位置(図11の二点鎖線で示す位置)とに移動させる。
【0058】
例えば、室内ロック操作部16を施錠操作(スライドドア90の閉方向に移動操作)した場合、ロッキングレバー180がサブ支持軸103回りを図11における反時計回り方向に回動して同図の実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に回動し、可動ピン134がロック解除位置からロック位置に移動する。一方、室内ロック操作部16を解錠操作(スライドドア90の開方向に移動操作)した場合、ロッキングレバー180がサブ支持軸103回りを図11における時計回り方向に回動して同図の二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に回動し、可動ピン134がロック位置からロック解除位置に移動する。
【0059】
可動ピン134をロック解除位置にすると、ラチェット連動レバー130と可動ピン貫通レバー120とが可動ピン134により一体回転可能に連結される。即ち、車内操作ハンドル18の開操作による操作動力を、車内ハンドル連動レバー140、可動ピン貫通レバー120を介してラチェット連動レバー130に伝達して、それらを第1回動方向に一体回転させることが可能になる。
【0060】
一方、可動ピン134をロック位置にすると、可動ピン134はロック位置に保持された状態で鉤型第2辺経路123B内を移動可能となり、可動ピン貫通レバー120からラチェット連動レバー130への動力の伝達が遮断される。即ち、車内操作ハンドル18の開操作による操作動力はラチェット連動レバー130まで伝達されず、ラチェット連動レバー130は図8に示す原点位置に留まる。
【0061】
図10には、ラチェット連動レバー130、可動ピン貫通レバー120及び車外ハンドル連動レバー150が示されている。車外ハンドル連動レバー150(本発明の「車外ハンドル連動部材」に相当する)は、可動ピン貫通レバー120のレバー突片121と重ねられておりかつ、そのレバー突片121よりも回動半径方向の外側に張り出している。車外ハンドル連動レバー150のうち、メイン支持軸102から離れた先端側部分は略扇形をなしており、その扇の円弧に沿ってメイン支持軸102を中心とした円弧状の長孔153が貫通形成されている。長孔153にはスライドブシュ153Bが摺動可能に支持されており、そのスライドブシュ153Bに車外操作ハンドル17から延びたオープンケーブル94Wの一端が連結されている(図5参照)。
【0062】
車外ハンドル連動レバー150の先端側部分には、長孔153に隣接してL型長孔154が貫通形成されている。L型長孔154は、回動半径方向に延びたL型第1辺経路154Aと、そのL型第1辺経路154Aのうちメイン支持軸102に近い端部から第1回動方向(図10の時計回り方向)に延びたL型第2辺経路154Bとからなる。このL型長孔154を後述する連結ピン166が貫通している。
【0063】
車外ハンドル連動レバー150の回動半径方向の中間部には、1対の連動当接片151,155が形成されている。連動当接片151は、車外ハンドル連動レバー150のうち、第2回動方向を向いた側縁部から可動ピン貫通レバー120に向かって(図10の紙面奥側に向かって)直角に曲げ起こされている。この連動当接片151に対応して、可動ピン貫通レバー120のレバー突片121のうち第2回動方向を向いた側縁部からは、図11に示すように車外ハンドル連動レバー150に向かって(図11の紙面手前側に向かって)連動当接片127が直角に曲げ起こされている。
【0064】
また、図10に示すように、連動当接片155は、車外ハンドル連動レバー150のうち第1回動方向を向いた側縁部から全開ロックレバー170に向かって(図10の紙面手前側に向かって)直角に曲げ起こされている。この連動当接片155に対応して、全開ロックレバー170のレバー突片171のうち第1回動方向側を向いた側縁部からは、図7に示すように車外ハンドル連動レバー150に向かって(図7の紙面奥側に向かって)連動当接片173が直角に曲げ起こされている。
【0065】
車外操作ハンドル17を開操作する(手前に引く)と、オープンケーブル94Wが車外操作ハンドル17側に引っ張られて車外ハンドル連動レバー150がメイン支持軸102回りを図10に示す原点位置から第1回動方向(図10における時計回り方向)に回動する。このとき、連動当接片127,151同士が当接(図10参照)して可動ピン貫通レバー120が車外ハンドル連動レバー150により第1回動方向に押されると共に、連動当接片155,173同士が当接して全開ロックレバー170が車外ハンドル連動レバー150により第1回動方向に押される。即ち、車外操作ハンドル17の開操作による操作動力が、ドアロックの施解錠状態(直線長孔133における可動ピン134の位置)に関係なく、車外ハンドル連動レバー150、可動ピン貫通レバー120及び全開ロックレバー170に伝達されて、それらが常に第1回動方向に一体回転するようになっている。なお、前述したように、可動ピン134をロック解除位置にすると、可動ピン貫通レバー120とラチェット連動レバー130とが一体回転可能に連結されるので、車外操作ハンドル17の開操作による操作動力をラチェット連動レバー130まで伝達させることができる。
【0066】
また、連動当接片127,151同士及び連動当接片155,173同士が当接することで、車外ハンドル連動レバー150がトーションコイルばね129及びコイルばね176の付勢力を受けることになり、第2回動方向に付勢される。
【0067】
リモコン装置100には、リリースモータ60(図5参照)が備えられ、車両ドア操作機構100Kには、リリースモータ60のモータ動力を受けてメイン支持軸102回りを第1回動方向に回動するモータ動力伝達レバー160(本発明の「モータ動力伝達部材」に相当する)が備えられている。リリースモータ60は、車内操作ハンドル18又は車外操作ハンドル17の手動操作によってラッチ・ラチェット機構20Kによるドアラッチが解除された場合に作動する。具体的には、例えば、スイッチ110,111の何れかがオンされかつ後側ドアロック装置10Bのドアラッチが解除されたことを第1の作動条件として作動し、電動ドア開閉装置が作動開始(スライドドア90が電動スライドを開始)するまでの間、ラッチ・ラチェット機構20Kをドアラッチ解除状態に維持する。
【0068】
また、リリースモータ60は、ドアロックが解錠状態(可動ピン134がロック解除位置)でかつ遠隔操作(リモコンキーや車内のドア開閉ボタンの操作)が行われたことを第2の作動条件として作動し、モータ動力伝達レバー160を回転駆動してドアラッチの解除を行う。なお、ドアロックの施解錠状態(可動ピン134の位置)は、ロッキングアクチュエータ185に内蔵した図示しないポジションスイッチにて検出する。
【0069】
図8及び図9に示すように、モータ動力伝達レバー160は、車外ハンドル連動レバー150と可動ピン貫通レバー120との間に挟まれている。モータ動力伝達レバー160は、可動ピン貫通レバー120のレバー突片121よりも回動半径方向の外側に張り出しており、メイン支持軸102から離れた先端部にメイン支持軸102を中心とした円弧状の長孔163が貫通形成されている。長孔163は、車外ハンドル連動レバー150に形成された長孔153よりメイン支持軸102側に配置されている。長孔163には、スライドブシュ163Bが摺動可能に支持され、そのスライドブシュ163Bにリリースモータ60から延びたオープンケーブル95Wの一端が固定されている(図5参照)。リリースモータ60が作動すると、その動力によりオープンケーブル95Wがリリースモータ60側に引っ張られる。これにより、モータ動力伝達レバー160がメイン支持軸102回りを図9に示す原点位置から第1回動方向(図9における時計回り方向)に回動する。
【0070】
モータ動力伝達レバー160のうち第1回動方向を向いた側縁部からは、全開ロックレバー170に向かって(図9の紙面手前側に向かって)連動当接片162が直角に曲げ起こされており、全開ロックレバー170の連動当接片173(図7参照)と当接可能となっている。即ち、リリースモータ60の動力が、ドアロックの施解錠状態(直線長孔133における可動ピン134の位置)に関係なく、モータ動力伝達レバー160から全開ロックレバー170に伝達され、それらレバー160,170が第1回動方向に一体回転するようになっている。
【0071】
モータ動力伝達レバー160の先端側部分には、長孔163の第2回動方向側に隣接してI型長孔165が貫通形成されている。I型長孔165は、回動半径方向に延びており、車外ハンドル連動レバー150及びモータ動力伝達レバー160が共に原点位置に配置された状態で、L型第1辺経路154Aと重ね合わさっている(図9参照)。そして、I型長孔165とL型長孔154とを共通の連結ピン166が貫通している。連結ピン166は、I型長孔165内に支持され、その長手方向に延びた1対の側辺にガイドされてI型長孔165内を往復動可能となっている。連結ピン166は、本発明の「動力中継部材」に相当する。
【0072】
モータ動力伝達レバー160には、連結ピン166をI型長孔165内で移動させるための中継レバー190(本発明の「動力緊急遮断機構」に相当する)が取り付けられている。具体的には、図9に示すように、モータ動力伝達レバー160のうち、I型長孔165を挟んで長孔163と反対側にレバー支持軸167が設けられており、そのレバー支持軸167に中継レバー190が回動可能に軸支されている(図8参照)。
【0073】
中継レバー190は、連結ピン166(I型長孔165)に向かって突出したレバー突片191と、メイン支持軸102に向かって突出したレバー突片192とを備えている。このうち、レバー突片192の先端部は、機構盤101とは反対側(図8の紙面手前側)に直角に曲げ起こされている。
【0074】
一方、レバー突片191には、中継レバー190の回動半径方向に延びた長孔193が貫通形成されている。長孔193は、I型長孔165及びL型長孔154と重ね合わせ可能となっており、この長孔193に連結ピン166の一端部が挿通されている。
【0075】
中継レバー190はトーションコイルばね194(本発明の「付勢手段」に相当する)により、レバー支持軸167回りで第2回動方向(図8における反時計回り方向)に付勢されている。これにより連結ピン166は、常には、I型長孔165のうちメイン支持軸102から離れた側の端部(以下、「動力伝達位置」という)に配置される。連結ピン166が動力伝達位置のとき、車外ハンドル連動レバー150とモータ動力伝達レバー160とが連結ピン166によって一体回転可能に連結される。即ち、車外ハンドル連動レバー150とモータ動力伝達レバー160との間で相互に動力を伝達することが可能となる。これに対し、連結ピン166がI型長孔165のうちメイン支持軸102側の端部(以下、「動力遮断位置」という)に配置されると、連結ピン166がL型第2辺経路154B内を移動可能となるため、モータ動力伝達レバー160と車外ハンドル連動レバー150との間での動力伝達が遮断される。
【0076】
また、中継レバー190は、モータ動力伝達レバー160が図8に示す原点位置のときに、車内ハンドル連動レバー140から離されてレバー突片142の回動領域外に位置すると共に、図14に示すように、モータ動力伝達レバー160が原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置まで回動したときに、車内ハンドル連動レバー140のレバー突片142の回動領域内に中継レバー190のレバー突片192が位置するように構成されている。
【0077】
本実施形態の構成は以上であり、次に、車両ドア操作機構100Kの動作について説明する。スライドドア90が全開状態のときに車内操作ハンドル18を閉操作する(原点位置から閉方向に傾動させる)と、全開ロックレバー170がロッド105に押されてメイン支持軸102回りを第1回動方向(図7における時計回り方向)に回動する。すると、全開ロックレバー170(レバー突片172)に連結されたオープンケーブル93W(図5参照)がリモコン装置100側に引っ張られて、全開ドアロック装置10Cのラッチ・ラチェット機構によるドアラッチが解除される。即ち、スライドドア90を閉方向にスライドさせることが可能な状態になる。
【0078】
ここで、全開ドアロック装置10Cにおけるドアラッチ解除は、電動ドア開閉装置が作動開始するまで、リリースモータ60のモータ動力によって維持される。詳細には、全開ロックレバー170が第1回動方向に回動するとスイッチ110がオンしてリリースモータ60が作動し、そのモータ動力によってモータ動力伝達レバー160及び車外ハンドル連動レバー150が第1回動方向に向かって一体回転する。その回動途中で、ロッド106に押されて第2回動方向に回動した車内ハンドル連動レバー140のレバー突片142(図12参照)が中継レバー190と係合して、中継レバー190が第1回動方向に回動し、連結ピン166が動力伝達位置から動力遮断位置へと移動する。即ち、モータ動力伝達レバー160と車外ハンドル連動レバー150とが第1回動方向への回動途中で切り離される。そして、モータ動力を受けたモータ動力伝達レバー160が全開ロックレバー170を第1回動方向に押すことで、全開ロックレバー170を第1回動方向の回動終端位置に保持して、全開ドアロック装置10Cにおけるドアラッチ解除を維持する。
【0079】
スライドドア90が全開状態のときに車外操作ハンドル17を閉操作する(手前に引く)と、オープンケーブル94Wに引かれて車外ハンドル連動レバー150が第1回動方向に回動し、その車外ハンドル連動レバー150に押されて全開ロックレバー170がメイン支持軸102回りを第1回動方向に一体回転する。すると、オープンケーブル93Wがリモコン装置100側に引っ張られて、全開ドアロック装置10Cによるスライドドア90のドアラッチが解除される。このドアラッチ解除は、リリースモータ60のモータ動力によって、電動ドア開閉装置が作動開始するまで維持される。詳細には、全開ロックレバー170が第1回動方向に回動するとスイッチ110がオンしてリリースモータ60が作動し、そのモータ動力を受けたモータ動力伝達レバー160が全開ロックレバー170を第1回動方向に押すことで、全開ロックレバー170を第1回動方向の回動終端位置に保持して、全開ドアロック装置10Cにおけるドアラッチ解除を維持する。
【0080】
スライドドア90が全開状態のときに、車内操作ハンドル18又は車外操作ハンドル17を操作せずに遠隔操作を行う(リモコンキー又は車内のドア開閉ボタンを操作する)と、リリースモータ60が作動してモータ動力伝達レバー160が第1回動方向に回転駆動され、そのモータ動力伝達レバー160に押されて全開ロックレバー170が第1回動方向に一体回転する。すると、オープンケーブル93Wがリモコン装置100側に引っ張られて、全開ドアロック装置10Cによるスライドドア90の全開保持が解除される。これにより、スライドドア90を全開状態から閉方向に電動スライドさせることが可能になる。なお、正常状態でリリースモータ60が作動した場合、モータ動力伝達レバー160、車外ハンドル連動レバー150、可動ピン貫通レバー120及び全開ロックレバー170が、常に第1回動方向に連動回転し、ドアロックが解錠状態であれば、これらに加えて、ラチェット連動レバー130も第1回動方向に連動回転する。
【0081】
次に、閉止保持状態のスライドドア90を開けるための操作を行った場合の車両ドア操作機構100Kの動作を、チャイルドロックが「解錠状態」(チャイルドロックピン125が図8の実線で示す位置)であるという前提で説明する。
【0082】
ドアロックを「解錠状態」(可動ピン134が図11の実線で示す位置)にして閉止保持状態のスライドドア90を開けるべく車内操作ハンドル18を開操作すると、図8から図13への変化に示すように、車内ハンドル連動レバー140がメイン支持軸102回りを第1回動方向に回動してチャイルドロックピン125を押すことで、可動ピン貫通レバー120が第1回動方向に回動する。可動ピン貫通レバー120の回動は可動ピン134を介してラチェット連動レバー130に伝達され、ラチェット連動レバー130が第1回動方向に回動することでオープンケーブル91W,92Wがリモコン装置100側に引っ張られる。そして、ラチェット連動レバー130が、原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置付近に到達すると、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bの各ラッチ・ラチェット機構20Kによるドアラッチが解除される(図3を参照)と共に、前記したリリースモータ60の第1の作動条件が成立する。
【0083】
すると、リリースモータ60によってモータ動力伝達レバー160が第1回動方向に回転駆動される。このとき連結ピン166を介して連結された車外ハンドル連動レバー150も一体回転し、車外ハンドル連動レバー150の連動当接片151と可動ピン貫通レバー120の連動当接片127とが当接した状態(図14に示す状態)を維持する。即ち、リリースモータ60のモータ動力によって、モータ動力伝達レバー160、車外ハンドル連動レバー150、可動ピン貫通レバー120及びラチェット連動レバー130が、原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置で保持される。この結果、車内操作ハンドル18から手が離れて車内ハンドル連結レバー140が原点位置に戻っても、電動ドア開閉装置が作動開始(スライドドア90が電動スライドを開始)するまでは、ラッチ・ラチェット機構20Kによるドアラッチ解除を維持することができる。
【0084】
ドアロックを「解錠状態」にして車外操作ハンドル17を開操作する(手前に引く)と、図8から図14への変化に示すように、車外ハンドル連動レバー150がメイン支持軸102回りを第1回動方向に回動する。このとき、モータ動力伝達レバー160、可動ピン貫通レバー120及びラチェット連動レバー130が一体となって第1回動方向に回転する。そして、ラチェット連動レバー130が、原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置付近に到達すると、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bの各ラッチ・ラチェット機構20Kによるドアラッチが解除される(図3を参照)と共に、前記したリリースモータ60の第1の作動条件が成立する。
【0085】
すると、リリースモータ60のモータ動力によって車外ハンドル連動レバー150の連動当接片151と、可動ピン貫通レバー120の連動当接片127とが当接した状態(図14に示す状態)に維持される。即ち、リリースモータ60のモータ動力によって、モータ動力伝達レバー160、車外ハンドル連動レバー150、可動ピン貫通レバー120及びラチェット連動レバー130が、原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置で保持される。この結果、車外操作ハンドル17から手が離れて操作動力が車外ハンドル連動レバー150に入力しなくなっても、電動ドア開閉装置が作動開始(スライドドア90が電動スライドを開始)するまでは、ラッチ・ラチェット機構20Kによるドアラッチ解除を維持することができる。
【0086】
ドアロックを「解錠状態」にして、車内操作ハンドル18や車外操作ハンドル17の開操作を行わずに遠隔操作を行った場合には、前記したリリースモータ60の第2の作動条件が成立するので、図8から図14に示すように、原点位置から第1回動方向の回動終端位置まで、リリースモータ60のモータ動力だけでモータ動力伝達レバー160、車外ハンドル連動レバー150、可動ピン貫通レバー120及びラチェット連動レバー130が回転駆動される。これにより、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bに備えた各ラッチ・ラチェット機構20Kによるスライドドア90の閉止保持が解除される。そして、電動ドア開閉装置が作動開始(スライドドア90が電動スライドを開始)するまでは、リリースモータ60のモータ動力によってラッチ・ラチェット機構20Kのドアラッチ解除を維持することができる。
【0087】
ドアロックが「施錠状態」(可動ピン134が図11の二点鎖線で示す位置)のときに車内操作ハンドル18を開操作すると、その操作動力で車内ハンドル連動レバー140及び可動ピン貫通レバー120が第1回動方向に回動するが、可動ピン134は直線長孔133のロック位置に保持された状態で鉤型第2辺経路123B内を移動するため、可動ピン貫通レバー120からラチェット連動レバー130への動力の伝達が遮断される。即ち、車内操作ハンドル18の開操作による操作動力は、ラチェット連動レバー130に伝達されず、ラチェット連動レバー130は図8に示す原点位置に留まるため、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bによるスライドドア90の閉止保持が維持される。
【0088】
ドアロックが「施錠状態」のときに、車外操作ハンドル17を開操作した場合には、車外操作ハンドル17の開操作による操作動力が、車外ハンドル連動レバー150、モータ動力伝達レバー160及び可動ピン貫通レバー120に伝達されてそれらが第1回動方向に一体回転するが、このときも、可動ピン134は鉤型第2辺経路123B内を移動するため、可動ピン貫通レバー120からラチェット連動レバー130への動力の伝達が遮断される。即ち、ラチェット連動レバー130は図8に示す原点位置に留まるため、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bによるスライドドア90の閉止保持が維持される。
【0089】
ドアロックが「施錠状態」のときは遠隔操作を行っても、リリースモータ60は作動しない。よって、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bによるスライドドア90の閉止保持が維持される。
【0090】
なお、チャイルドロックを「施錠状態」として車内操作ハンドル18を開操作した場合、車内ハンドル連動レバー140がメイン支持軸102回りを第1回動方向に回動するが、チャイルドロックピン125はチャイルドロック位置(図8の二点鎖線で示す位置)に配置されているため、車内ハンドル連動レバー140(レバー突片141)から可動ピン貫通レバー120及びラチェット連動レバー130への操作動力の伝達が遮断される。よって、ドアロックが「解錠状態」であっても、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bによりスライドドア90は閉止保持状態に維持される。ここで、チャイルドロックの「施錠状態」は、車内操作ハンドル18の開操作に対してのみ有効である。即ち、チャイルドロックが「施錠状態」であっても、ドアロックが「解錠状態」であれば、上述の如く、車外操作ハンドル17の開操作やリリースモータ60の動力によりスライドドア90を開けることが可能である。
【0091】
さて、図14に示すように、モータ動力伝達レバー160及びラチェット連動レバー130が原点位置から第1回動方向に離れた回動終端位置(或いは第1回動方向への回動途中)に位置した状態で、リリースモータ60の失陥やモータ動力の伝達経路の異常等により、モータ動力伝達レバー160及びラチェット連動レバー130が動かなくなると、ラッチ・ラチェット機構20Kが、ドアラッチを解除した状態(即ち、ラチェット30が図4において二点鎖線で示す位置)から元に戻らなくなり、スライドドア90を閉止保持することができなくなる。
【0092】
このような非常時には、車内操作ハンドル18を閉操作(スライドドア90の閉方向に傾動操作)すればよい。詳細には、図14に示すように、モータ動力伝達レバー160が第1回動方向の回動終端位置に位置するとき、モータ動力伝達レバー160に設けられた中継レバー190が車内ハンドル連動レバー140に近接配置され、中継レバー190のレバー突片192が車内ハンドル連動レバー140のレバー突片142の回動領域内に配置される。この状態で、車内操作ハンドル18を閉操作すると、車内ハンドル連動レバー140がメイン支持軸102回りを原点位置から第2回動方向に回動し、そのレバー突片142が中継レバー190のレバー突片192を押すことで、中継レバー190がレバー支持軸167回りを第1回動方向(図14における時計回り方向)に回動する。これにより、中継レバー190に連結された連結ピン166が、I型長孔165における動力伝達位置から動力遮断位置に移動する。
【0093】
連結ピン166が動力遮断位置になると、モータ動力伝達レバー160と車外ハンドル連動レバー150とが相対回転可能に切り離される(リリースモータ60とラッチ・ラチェット機構20Kとが切り離される)ので、トーションコイルばね129の付勢力により、車外ハンドル連動レバー150、可動ピン貫通レバー120及びラチェット連動レバー130がメイン支持軸102回りを第2回動方向に一体回転し、それぞれ図15に示す原点位置に戻される。このとき、連結ピン166は、動力遮断位置に保持されたまま、L型長孔154におけるL型第2辺経路154B内をL型第1辺経路154Aから離れるように移動する。これにより、オープンケーブル91W,92Wが前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bに備えたラッチ・ラチェット機構20K側に戻されて、それらラッチ・ラチェット機構20Kによるスライドドア90の閉止保持が可能になる。
【0094】
また、上述したモータ切り離し操作(車内操作ハンドル18の閉操作)を行って閉めたスライドドア90は、ドアロックを「解錠状態」にして車外操作ハンドル17を通常時と同じように開操作することで開けることができる。即ち、車外操作ハンドル17を開操作すると、図15から図16への変化に示すように、連結ピン166がL型第2辺経路154B内をL型第1辺経路154A側に移動することで、車外ハンドル連動レバー150がメイン支持軸102回りを第1回動方向に回動する。即ち、モータ動力伝達レバー160を切り離した状態を維持して、車外ハンドル連動レバー150、可動ピン貫通レバー120及びラチェット連動レバー130が第1回動方向に一体回転する。これにより、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bのラッチ・ラチェット機構20Kによるドアラッチを解除して、スライドドア90を開けることが可能になる。
【0095】
また、モータ切り離し操作を行って閉めたスライドドア90は、チャイルドロックが「解錠状態」である場合に、ドアロックを「解錠状態」にして車内操作ハンドル18を通常時と同じように開操作することで開けることができる。即ち、車内操作ハンドル18の開操作による操作動力は、車内ハンドル連動レバー140及び可動ピン貫通レバー120を介してラチェット連動レバー130に伝達されて、図17に示すように、これら各レバー120,130,140が第1回動方向に一体回転する。これにより、前側ドアロック装置10A及び後側ドアロック装置10Bのラッチ・ラチェット機構20Kによるドアラッチを解除して、スライドドア90を開けることが可能になる。
【0096】
このように、本実施形態の車両ドア操作機構100Kによれば、リリースモータ60の失陥やモータ動力の伝達経路の異常等により、モータ動力伝達レバー160が第1回動方向の回動終端位置(或いは第1回動方向への回動途中)で異常停止して動かなくなり、スライドドア90を閉止保持することができなくなった場合に、車内操作ハンドル18を閉方向に操作すると、車内ハンドル連動レバー140が原点位置から第2回動方向に回動し、その車内ハンドル連動レバー140に押されて中継レバー190が回動する。すると、連結ピン166がI型長孔165の動力伝達位置から動力遮断位置に移動してL型第2辺経路154B内を移動可能となり、モータ動力伝達レバー160から車外ハンドル連動レバー150、ラチェット連動レバー130及びラチェット30への動力の伝達が遮断される。即ち、モータ動力の伝達経路に異常を有したリリースモータ60や失陥したリリースモータ60をラッチ・ラチェット機構20Kから切り離すことができる。これにより、車外ハンドル連動レバー150及びラチェット連動レバー130を原点位置に復帰させて、ラッチ・ラチェット機構20Kをスライドドア90の閉止保持が可能な状態に復帰させることができる。そして、通常は、スライドドア90の開閉操作に使用される車内操作ハンドル18を、モータ切り離し操作の操作対象に兼用したので、リリースモータ60の失陥等によりスライドドア90の閉止保持が不可能となった非常時に、車両マニュアルを調べる等しなくても、試行錯誤によって車内操作ハンドル18を操作することにより迅速にスライドドア90の閉止保持が可能な状態に復帰させることができる。しかも、モータ切り離し操作のために従来のようにツールを必要とすることもないので、この点においても迅速にスライドドア90の閉止保持が可能な状態に復帰させることができる。さらに、搭乗者がラッチ・ラチェット機構20Kの異常を認識していなくても、スライドドア90を閉めるために通常と同じように車内操作ハンドル18を閉操作することで、ラッチ・ラチェット機構20Kをスライドドア90の閉止保持が可能な状態に復帰させることができる。
【0097】
さらに、モータ切り離し操作(車内操作ハンドル18の閉操作)によりラッチ・ラチェット機構20Kの復帰を行ってスライドドア90を閉めた後、車内操作ハンドル18又は車外操作ハンドル17を通常時と同じように開操作することで、モータ動力伝達レバー160をラチェット連動レバー130から切り離したまま、ラチェット連動レバー130が第1回動方向に回動して、ラッチ・ラチェット機構20Kによるスライドドア90の閉止保持が解除され、スライドドア90を開けることが可能になる。
【0098】
また、中継レバー190は、モータ動力伝達レバー160が原点位置に配置されているときに、原点位置から第2回動方向に回動する車内ハンドル連動レバー140(レバー突片142)の回動領域の外側に配置されるので、正常状態で車内操作ハンドル18を閉操作した場合に、車内操作ハンドル18に中継レバー190の回動抵抗(トーションコイルばね194の付勢力や連結ピン166の摺動抵抗)がかかることがなく、車内操作ハンドル18をスムーズに閉操作することができる。
【0099】
さらに、中継レバー190をモータ動力伝達レバー160に設けたことで、モータ切り離し操作を行ったときに原点位置に戻される車外ハンドル連動レバー150を軽量化することができる。これにより、車外ハンドル連動レバー150を原点位置に戻すトーションコイルばね129の付勢力を軽減することができる。
【0100】
なお、本実施形態では、モータ切り離し操作を行う際に、室内ロック操作部16を操作した場合の動作を例示したが、リモコンキーや、スライドドア90の室外面に設けられたキーシリンダ(図示せず)にキーを挿し込んで施解錠操作をしても、室内ロック操作部16を操作した場合と同様にリモコン装置100を動作させることができる。
【0101】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0102】
(1)上記実施形態では、モータ動力伝達レバー160にI型長孔165と中継レバー190とを設け、車外ハンドル連動レバー150にL型長孔154を設けていたが、車外ハンドル連動レバー150にI型長孔165と中継レバー190とを設け、モータ動力伝達レバー160にL型長孔154を設けてもよい。モータ動力伝達レバー160にL型長孔154を設ける場合には、L型第1辺経路のメイン支持軸102側の端部から第2回動方向にL型第2辺経路を延ばせばよい。
【0103】
(2)上記実施形態では、チャイルドロック機構(チャイルドロックピン125及びチャイルドロック経路124)を備えていたが、チャイルドロック機構を備えず、車内操作ハンドル18を開操作した場合に、常に、車内ハンドル連動レバー140と可動ピン貫通レバー120とが一体回転するように構成してもよい。
【0104】
(3)上記実施形態では、チャイルドロック機構(チャイルドロックピン125及びチャイルドロック経路124)を可動ピン貫通レバー120に設けていたが、車内ハンドル連動レバー140に設けてもよい。
【0105】
(4)上記実施形態では、ラチェット連動レバー130に直線長孔133を形成し、可動ピン貫通レバー120に鉤型長孔123を形成していたが、ラチェット連動レバー130に鉤型長孔を形成し、可動ピン貫通レバー120に直線長孔を形成してもよい。ラチェット連動レバー130に鉤型経路を形成する場合は、鉤型第1辺経路のメイン支持軸102から離れた端部から第1回動方向に鉤型第2辺経路を延ばせばよい。
【符号の説明】
【0106】
17 車外操作ハンドル
18 車内操作ハンドル
20K ラッチ・ラチェット機構
30 ラチェット
60 リリースモータ
90 スライドドア
100K 車両ドア操作機構
102 メイン支持軸
129 トーションコイルばね
130 ラチェット連動レバー(ラチェット連動部材)
140 車内ハンドル連動レバー(車内ハンドル連動部材)
150 車外ハンドル連動レバー(車外ハンドル連動部材)
154 L型長孔
160 モータ動力伝達レバー(モータ動力伝達部材)
165 I型長孔
166 連結ピン(動力中継部材)
190 中継レバー(動力緊急遮断機構)
194 トーションコイルばね(付勢手段)
200 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスライドドアを閉止状態に保持するラッチ・ラチェット機構のラチェットに連動し、前記ラッチ・ラチェット機構による閉止保持を解除する際に原点位置から第1回動方向に回動するラチェット連動部材と、
前記スライドドアの室内面に配置された車内操作ハンドルの原点位置から開方向への操作動力を受けて前記ラチェット連動部材に前記第1回動方向を向いた動力を付与可能な車内ハンドル連動部材と、
前記スライドドアの室外面に配置された車外操作ハンドルの開方向への操作動力を受けて前記ラチェット連動部材に前記第1回動方向を向いた動力を付与可能な車外ハンドル連動部材と、
前記車内操作ハンドル又は前記車外操作ハンドルの開操作に起因してリリースモータから動力を受けて前記ラチェット連動部材に前記第1回動方向を向いた動力を付与可能なモータ動力伝達部材と、
前記モータ動力伝達部材又は前記車外ハンドル連動部材の何れか一方に設けられて、前記リリースモータの動力を前記モータ動力伝達部材から前記車外ハンドル連動部材へと伝達する動力伝達位置と、その動力を遮断する動力遮断位置との間を移動可能であると共に、通常は、前記動力伝達位置に保持された動力中継部材と、
前記車外ハンドル連動部材及び前記モータ動力伝達部材が前記ラチェット連動部材を前記原点位置から前記第1回動方向に離れた回動終端位置に保持した状態で前記リリースモータが異常停止したときに、前記車内操作ハンドルの原点位置から閉方向への操作動力を前記車内ハンドル連動部材から受けて作動し、前記動力中継部材を前記動力遮断位置へと移動する動力緊急遮断機構とを備えたことを特徴とする車両ドア操作機構。
【請求項2】
前記動力中継部材は、前記モータ動力伝達部材及び前記車外ハンドル連動部材を貫通して前記動力伝達位置と前記動力遮断位置との間を移動可能な連結ピンを有して構成され、
前記動力緊急遮断機構は、前記車外ハンドル連動部材又は前記モータ動力伝達部材に回動可能に軸支されかつ、前記連結ピンが挿通されると共に前記車内ハンドル連動部材から動力を受けて回動する中継レバーを有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の車両ドア操作機構。
【請求項3】
前記車外ハンドル連動部材及び前記モータ動力伝達部材は、前記車外操作ハンドルの開方向への操作動力又は前記リリースモータの動力を受けて原点位置から回動し、
前記中継レバーは、前記車外ハンドル連動部材及び前記モータ動力伝達部材が前記原点位置に配置された状態で、前記車内ハンドル連動部材の移動領域外に位置するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の車両ドア操作機構。
【請求項4】
前記ラチェット連動部材、前記車内ハンドル連動部材、前記車外ハンドル連動部材及び前記モータ動力伝達部材をメイン支持軸にて回動自在に支持し、
前記モータ動力伝達部材又は前記車外ハンドル連動部材の何れか一方の部材に形成され、回動半径方向に延びたL型第1辺経路の一端部から前記メイン支持軸を中心とした円弧状のL型第2辺経路を延ばしてなりかつ、前記連結ピンが貫通するL型長孔と、
前記モータ動力伝達部材又は前記車外ハンドル連動部材の何れか他方の部材に形成され、前記モータ動力伝達部材及び前記車外ハンドル連動部材が共に原点位置に配置された状態で前記L型第1辺経路に重ね合わさりかつ、前記連結ピンが貫通するI型長孔とを備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両ドア操作機構。
【請求項5】
車両のスライドドアを閉止状態に保持するラッチ・ラチェット機構のラチェットに連動し、前記ラッチ・ラチェット機構による閉止保持を解除する際にメイン支持軸回りを原点位置から第1回動方向に回動するラチェット連動部材と、
前記スライドドアの室内面に配置された車内操作ハンドルの原点位置から開方向への操作動力を受けて前記メイン支持軸回りを原点位置から前記第1回動方向に回動して、前記ラチェット連動部材に前記第1回動方向を向いた動力を付与可能である共に、前記車内操作ハンドルの原点位置から閉方向への操作動力を受けて前記メイン支持軸回りを原点位置から前記第1回動方向と逆の第2回動方向に回動する車内ハンドル連動部材と、
前記スライドドアの室外面に配置された車外操作ハンドルの開方向への操作動力を受けて前記メイン支持軸回りを原点位置から前記第1回動方向に回動して、前記ラチェット連動部材に前記第1回動方向を向いた動力を付与可能な車外ハンドル連動部材と、
リリースモータから動力を受け、前記メイン支持軸回りを原点位置から前記第1回動方向に回動するモータ動力伝達部材と、
前記モータ動力伝達部材又は前記車外ハンドル連動部材の何れか一方の部材に形成され、回動半径方向に延びたL型第1辺経路の一端部から前記メイン支持軸を中心とした円弧状のL型第2辺経路を延ばしてなるL型長孔と、
前記モータ動力伝達部材又は前記車外ハンドル連動部材の何れか他方の部材に形成され、前記モータ動力伝達部材及び前記車外ハンドル連動部材が共に原点位置に配置された状態で前記L型第1辺経路に重ね合わさるI型長孔と、
前記I型長孔及び前記L型長孔を共に貫通して、それらI型長孔及びL型長孔内を長手方向に沿って移動可能な連結ピンと、
前記モータ動力伝達部材又は前記車外ハンドル連動部材のうち前記I型長孔を有した方の部材に回動可能に設けられ、前記連結ピンの前記I型長孔における位置に応じて回動する中継レバーと、
前記中継レバーを介して前記連結ピンを前記I型長孔のうち前記L型第2辺経路から離れた側の端部に付勢する付勢手段とを備え、
前記中継レバーは、前記車外ハンドル連動部材及び前記モータ動力伝達部材が原点位置から前記第1回動方向に離れた回動終端位置で前記リリースモータが異常停止したときに、前記原点位置から前記第2回動方向に回動する前記車内ハンドル連動部材に押されて回動し、前記連結ピンを前記I型長孔のうち前記L型第2辺経路側の端部に移動するように構成されたことを特徴とする車両ドア操作機構。
【請求項6】
前記I型長孔と共に前記中継レバーを前記モータ動力伝達部材に設けたことを特徴とする請求項4又は5に記載の車両ドア操作機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−67567(P2012−67567A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215657(P2010−215657)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】