説明

車両ブレーキシステム用リザーバタンク

【課題】液面センサ16のフロート15移動規制用リテーナを無くす。
【解決手段】下殻11aと上殻11bからなるタンク本体11内に液面検出室13を隔離して形成し、その液面検出室内にフロート15及び液面センサ16を設け、その液面検出室からの作動液a流出入規制用仕切り板17を設けた車両ブレーキシステム用リザーバタンクである。フロート15は、液面センサの軸部16aに嵌められ、仕切り板は、下殻に嵌めると、フロートに対しその移動距離を規制する間隔tをもって前記軸部の先端に臨む。これにより、上記リテーナは不要となる。下殻内に、フィルタ、液面センサ及び仕切り板を嵌め、その下殻に上殻を被せて突き合わせ面を接合することにより、フィルタ及び仕切り板の上端面が上殻の隔壁下端面に圧接されて、そのフィルタ及び仕切り板が上下の殻に挟持されてタンク本体内に固定取付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用ブレーキシステム内のマスタシリンダ又は液圧ブースタ等に設けられるリザーバタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のリザーバタンク10は、例えば、図6(b)に示すように、下殻1aと上殻1bからなるタンク本体1内に、隔壁2を適宜に設けて区画して作動液aの妾動を抑制するとともに液面検出室3を隔離して形成し、さらに、タンク本体1に作動液aが流出入する区画室にフィルタ4を設け、前記液面検出室3内に、フロート5及び液面センサ6を設けるとともに、その液面検出室3からの作動液aの流出入を規制する仕切り板7を設け、前記上殻1bには注液栓8を設けた構成である。
そのタンク本体1は、同図(a)に示すように、上下殻1b、1a間に熱板Hを介在させてその突き合わせ面を溶融させた後、同図(b)に示すように、下殻1aに上殻1bを被せて突き合わせ、その溶融面を固化接合させて一体化する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−20660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来のリザーバタンクにおいて、フロート5の液面センサ6からの抜け出し及び移動規制は、その液面センサ6の軸部6a頂部(先端)にスナップリング等を設けてカシメや接着等によるリテーナ9の取り付けにより行っている。
【0004】
このリテーナ9の取付けは、液面センサ6の軸部6aにその取付け代を必要とし、軸部6aを長くする必要などが生じて、リザーバタンクの大型化につながる。大型化は、エンジンルーム内への装填機器の増加に伴う、各機器の小型化に逆行する。
また、リテーナ9を必要とすることによる部品代も嵩む。さらに、そのリテーナ9の取付け作業が必要である。今日のコスト削減要求の下、部品代及び作業工数の削減が望まれる。
【0005】
この発明は、上記リテーナの取付けを無くすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は、フロートに臨む仕切り板によりそのリテーナの役目を担うようにしたのである。
仕切り板がリテーナの役目を担えば、リテーナの別途の取付け作業を削減できて、コストダウンを図ることができる。
【0007】
具体的には、下殻に上殻を被せて突き合わせ面を接合したタンク本体内に液面検出室を隔離して形成し、その液面検出室内にフロート及び液面センサを設けるとともに、その液面検出室からの作動液の流出入を規制する仕切り板を設けた従来周知の車両ブレーキシステム用リザーバタンクにおいて、その仕切り板を、フロートに対しその移動距離を規制する間隔をもって臨ませた構成を採用する。
【0008】
そのフロートと仕切り板の関係のより具体的構成は、下殻内に、フロート、液面センサ及び仕切り板を設け、前記フロートは、下殻内面から立ち上がった軸に上下動自在に嵌められ、仕切り板は、前記軸の先端に臨んでフロートに対しその移動距離を規制する間隔をもっている等とする。
【0009】
この仕切り板によるフロートの移動規制は、リザーバタンク内への全装填部品を下殻に設けた構成に採用すると良い。例えば、下殻に上殻を被せて突き合わせ面を接合したタンク本体内に、液面検出室を隔離して形成するとともに作動液が流出入する区画室にフィルタを設け、前記液面検出室内にフロート及び液面センサを設けるとともに、その液面検出室からの作動液の流出入を規制する仕切り板を設け、前記上殻には注液栓を設けた車両ブレーキシステム用リザーバタンクにおいて、前記フロートは、液面センサの軸部に上下動自在に嵌められ、仕切り板は、下殻に嵌められることにより、フロートに対しその移動距離を規制する間隔をもって前記軸部の先端に臨み、下殻内に、フィルタ、フロート、液面センサ及び仕切り板を設け、その下殻に上殻を被せて突き合わせ面を接合することにより、フィルタ及び仕切り板の上端面が上殻の隔壁下端面に圧接されて、そのフィルタ及び仕切り板が上下の殻に挟持されてタンク本体内に固定取付けされた構成を採用する。
【0010】
このように、仕切り板の下殻への嵌め込みにより、フロートの移動規制がなされるようにすれば、下殻への上殻の接合時にフロートの離脱を危惧すること無くその接合作業を行うことができて作業性がよい。また、下殻にその内に装填する液面センサ等の全部品を設ければ、注液栓等の異なる各種の態様の上殻をそれらの各態様に対応する一態様の下殻に接合することにより、一の態様の下殻でもって、注液栓等の位置・態様の異なる数種類のリザーバタンクを得ることができる。
【0011】
なお、上記仕切り板の下面のフロートの移動軸周りに、突起を間隙をもって設ければ、この突起にフロートが当接することにより、そのフロートの移動が規制されると共に、フロートと仕切り板間の作動液がその間隙から流出するため、その当接はスムースに行われる。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、以上のように、仕切り板により液面センサのフロートの移動規制を行うようにしたので、そのフロート移動規制用リテーナを省略できるとともに、そのリテーナの取付け作業を削減できる。このため、リザーバタンクのコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図5に一実施形態を示し、この実施形態は、車両のブレーキ液圧を制御する車両ブレーキシステム用リザーバタンク10に係わる。このリザーバタンク10は、下殻11aと上殻11bからなる合成樹脂製リザーバタンク本体11をマスタシリンダ30に取り付け、その内に隔壁12を適宜に設けて(図において、隔壁12は適宜に省略 以下の図、同じ)、そのタンク本体11内を区画して作動液aの妾動を抑制するとともに液面検出室13を隔離して形成している。
【0014】
上殻11b上面に作動液aを補給する注液栓18が一体成形で設けられ、下殻11aには、マスタシリンダ30とリザーバタンク10の間に作動液aを流出入させるポート19a及びマスタシリンダ30、ポンプ等の液圧作動機器又はその両者に作動液aを供給する流出入ポート19b等がそれぞれ設けられている。このため、マスタシリンダ30からの作動液aは、流出入ポート19a、19b等からタンク本体11内に送り込まれ、フィルタ14、24によりゴム片などの細紛がろ過されつつ、各液圧作動機器に送り込まれる。
図中、31はブレーキペダルである。また、注液栓18には、図示省略のキャップが着脱自在に取付けられ、そのキャップを外すことにより、作動液aをタンク本体11内に補充する。
【0015】
下殻11a内の液面検出室13内には液面センサ16が設けられ、その液面センサ16の軸部16aにフロート15がその軸方向に移動自在に嵌っており、図1実線から鎖線で示すこのフロート15の作動液面の変化に応じた移動を液面センサ16が検知してその作動液面を検出する(図3参照)。例えば、液面センサ16には近接スイッチを採用する。
【0016】
また、その液面検出室13の上面開口には、その液面検出室13からの作動液aの流出入を規制する仕切り板17が設けられ、その中央の孔17a及び液面検出室13下部の孔29から作動液aを抵抗をもって適宜に流出入させて、車両の振動により、液面検出室13内の液面が大きく変化しないようになっている。これにより、リザーバタンク10内の作動液aの増減が液面センサ16により正確に検出される。仕切り板17は、液面検出室13を成す隔壁12の段部12aに係止し、その位置で固定されることにより、フロート15が当接して、その液面センサ16の軸部16aからの抜け出しを防止するとともに、フロート15に対しその移動距離を規制する間隔tが確保される。
【0017】
仕切り板17の下面には円弧状の突起17bが設けられ(図4参照)、この突起17bの曲率中心が、液面センサ16(フロート15)の軸心上となって、フロート15が同軸上で当接する。このとき、フロート15と仕切り板17間の作動液aが突起17bの間隙17cから流出してその当接はスムースに行われる。間隙17cの位置・大きさ・間隔等はその作動液aの流出入作用をなし得る限りにおいて任意であるが、フロート15がどのような状態(例えば、あらゆる方向に傾いた状態)で当接しても、作動液aを流出入させ得ることから、間隙17cは大きいことが好ましい。
【0018】
このリザーバタンク10は以上の構成部品から成り、その組み立てには、まず、下殻11aに、フィルタ14、24、液面センサ16、そのフロート15、仕切り板17を設ける(嵌める)。
【0019】
つぎに、その仕切り板7等の組み込み後、図5(a)に示すように、上下殻11b、11a間に熱板Hを介在させてその突き合わせ面を溶融させ、その溶融後、同図(b)に示すように、下殻11aに上殻11bを被せて突き合わせ、その溶融面を固化接合させて一体化する。このとき、仕切り板17の下殻11aへの嵌合により、その仕切り板17が液面センサ16の軸部16a頂部(先端)に臨んでその軸部16aからフロート15が抜け出ることを防止する。
【0020】
また、その下殻11aに上殻11bを被せて突き合わせ面を接合することにより、前記フィルタ14及び仕切り板17の上端面が上殻11bの隔壁12下端面に圧接溶着され、そのフィルタ14及び仕切り板17が上下の殻11a、11bに挟持されて上記タンク本体11内に固定取付けされる。上下殻11b、11aの一体化は、熱溶着以外に、接着剤などによる周知の手段を採用できる。
【0021】
この実施形態は、マスタシリンダ30に設けた場合であるが、車両用ブレーキシステム内の液圧ブースタ等の従来からリザーバタンクを設けている各種の機器のそのリザーバタンクにこの発明を採用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態の一部切欠正面図
【図2】同実施形態の上殻を除去した平面図
【図3】同実施形態の液面センサ部の分解斜視図
【図4】同仕切り板を示し、(a)は切断正面図、(b)は下面図
【図5】同実施形態の組み立て作用図
【図6】従来例の組み立て作用図
【符号の説明】
【0023】
10 リザーバタンク
1、11 リザーバタンク本体
1a、11a リザーバタンク本体の下殻
1b、11b リザーバタンク本体の上殻
2、12 隔壁
3、13 液面検出室
14、24 フィルタ
5、15 フロート
6、16 液面センサ
6a、16a 液面センサの軸部
7、17 仕切り板
17a 仕切り板の作動液流出入孔
17b 仕切り板下面の突起
17c 仕切り板下面の間隙
a 作動液
t フロート移動距離規制間隔
H 熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下殻11aに上殻11bを被せて突き合わせ面を接合したタンク本体11内に液面検出室13を隔離して形成し、その液面検出室13内に、フロート15及び液面センサ16を設けるとともに、その液面検出室13からの作動液aの流出入を規制する仕切り板17を設けた車両ブレーキシステム用リザーバタンク10において、
上記仕切り板17は、上記フロート15に対しその移動距離を規制する間隔tをもって臨んでいることを特徴とする車両ブレーキシステム用リザーバタンク。
【請求項2】
上記下殻11a内に、上記フロート15、液面センサ16及び仕切り板17を設け、前記フロート15は、上記下殻11a内面から立ち上がった軸16aに上下動自在に嵌められ、前記仕切り板17は、前記フロート15に対しその移動距離を規制する間隔tをもって前記軸16aの先端に臨んでいることを特徴とする請求項1に記載の車両ブレーキシステム用リザーバタンク。
【請求項3】
下殻11aに上殻11bを被せて突き合わせ面を接合したタンク本体11内に、隔壁12を適宜に設けてそのタンク本体11内を区画して作動液aの妾動を抑制するとともに液面検出室13を隔離して形成し、さらに、タンク本体11に作動液aが流出入する区画室にフィルタ14を設け、前記液面検出室13内にフロート15及び液面センサ16を設けるとともに、その液面検出室13からの作動液aの流出入を規制する仕切り板17を設け、前記上殻11bには注液栓18を設けた車両ブレーキシステム用リザーバタンク10において、
上記フロート15は、上記液面センサ16の軸部16aに上下動自在に嵌められ、上記仕切り板17は、上記下殻11aに嵌められることにより、前記フロート15に対しその移動距離を規制する間隔tをもって前記軸部16aの先端に臨み、
上記下殻11a内に、上記フィルタ14、フロート15、液面センサ16及び仕切り板17を設け、その下殻11aに上殻11bを被せて突き合わせ面を接合することにより、前記フィルタ14及び仕切り板17の上端面が上殻11bの隔壁12下端面に圧接されて、そのフィルタ14及び仕切り板17が上下の殻11a、11bに挟持されて上記タンク本体11内に固定取付けされたことを特徴とする車両ブレーキシステム用リザーバタンク。
【請求項4】
上記仕切り板17の下面のフロート15の移動軸周りに、突起17bを間隙17cをもって設け、この突起17bにフロート15が当接することにより、そのフロート15の移動が規制されると共に、前記間隙17cから作動液aが流出するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車両ブレーキシステム用リザーバタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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