説明

車両共同利用システム

【課題】本発明は、車両が正確な駐車位置に返却されたかどうかの判断を確実に行い、誤差の少ない信頼性の高い車両共同利用システムを構築することを目的としている。
【解決手段】このため、予め登録された個人識別情報により車両利用を許可されていることを確認して、利用者に駐車領域に駐車された車両を貸し出す車両共同利用システムにおいて、車両の後方を撮影する撮影手段を備え、駐車領域は、撮影手段により撮影されると撮影された映像内に含まれ、かつ駐車領域毎に固有で識別可能な駐車位置識別情報を備え、貸し出された車両を返却する場合に、撮影された駐車位置識別情報と、車両を管理する管理装置が保持する駐車位置正規情報とを比較し、一致すれば正常な位置に車両が返却されたと判断する判断手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両共同利用システムに係り、特に利用者によって車両が正確な駐車位置に返却されたかどうかの判断を確実に行い、信頼性の向上を図る車両共同利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両共同利用システムとは、車両を複数の利用者が共同で利用することのできるシステムである。
この車両共同利用システムは、車両に搭載したコントローラ(以下「車載機」という。)で、車両の状態・位置を取得し、インターネット網を経由して、その情報を管理センタに送信して表示することで、管理者が複数の車両を遠隔で集中管理・運営可能となっている。
そして、利用者が車両を利用する際には、インターネット網を経由して管理センタに車両を予約し、個々のICカードリーダを使用して車両にて認証を行い、認証の完了後に車両の利用を開始する。
また、車両の利用終了後は、利用者が車両を元の位置に戻して返却を行う、というシステムとなっている。
【0003】
【特許文献1】特許国際公開番号 WO2006/077638
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両共同利用システムにおいては、車両を利用する際の前提条件として以下のようなものがある。
(1)車両を利用する際には、定められたステーションの駐車領域から車両の利用を開始する。
(2)車両の返却の際には、元の定められたステーションの駐車領域に車両を戻す。
そして、前記車両共同利用システムの管理・運営上の問題点としては、車両が返却される際に、誤った駐車位置に返却されることのないように、返却時に車両の駐車位置を確認する必要がある点である。
このとき、現状の車両共同利用システムにおいては、返却時に車両の駐車位置を確認するために、GPS(「Global Positioning System」や「全地球位置把握システム」、「ナビゲーション装置」または「ナビ」とも言われる。)を用いて位置確認を行っている。
しかし、上述のGPSを用いた位置確認においては、地下駐車場等の電波の届かない場所では位置確認を行うことができないという不具合がある。
この結果、GPS電波の届かない駐車場を前記ステーションに設定する場合には、GPS電波が取得できる位置、例えば、地下のステーションであれば、地上入口付近まで、ステーションの大きさを拡大させなければならないという不都合がある。
また、従来の車両共同利用システムの場合、GPS電波の届かないステーションでは、正確な返却位置でなくとも、車両を返却できてしまうという不具合が惹起され、車両共同利用システムの信頼性が低下し、車両共同利用システムの管理・運営上、好ましくないため、改善が望まれていた。
【0005】
この発明の目的は、車両が正確な駐車位置に返却されたかどうかの判断を確実に行い、誤差の少ない信頼性の高いシステムを構築し得る車両共同利用システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、予め登録された個人識別情報により車両利用を許可されていることを確認して、利用者に駐車領域に駐車された車両を貸し出す車両共同利用システムにおいて、前記車両の後方を撮影する撮影手段を備え、駐車領域は、前記撮影手段により撮影されると撮影された映像内に含まれ、かつ駐車領域毎に固有で識別可能な駐車位置識別情報を備え、貸し出された前記車両を返却する場合に、撮影された駐車位置識別情報と、前記車両を管理する管理装置が保持する駐車位置正規情報とを比較し、一致すれば正常な位置に前記車両が返却されたと判断する判断手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、予め登録された個人識別情報により車両利用を許可されていることを確認して、利用者に駐車領域に駐車された車両を貸し出す車両共同利用システムにおいて、車両の後方を撮影する撮影手段を備え、駐車領域は、撮影手段により撮影されると撮影された映像内に含まれ、かつ駐車領域毎に固有で識別可能な駐車位置識別情報を備え、貸し出された車両を返却する場合に、撮影された駐車位置識別情報と、車両を管理する管理装置が保持する駐車位置正規情報とを比較し、一致すれば正常な位置に車両が返却されたと判断する判断手段を備えている。
従って、車載カメラ(「バックカメラ」ともいう。)からなる撮影手段により撮影可能な駐車位置に書かれた固有の識別情報を、車両が正確な駐車位置に返却されたかどうかの判断に用いるので、誤差の少ない信頼性の高い車両共同利用システムを構築することが可能である。
また、前記車両の後退により車両を駐車するのに使用するために搭載された車両後方撮影用のカメラである車載カメラを利用することができるので、専用のカメラを新たに車両に搭載する必要がなく、構成の簡略化が図れるとともに、設備コストを低廉に維持し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
図1〜図3はこの発明の実施例を示すものである。
図2において、1は車両共同利用システムである。
この車両共同利用システム1は、予め登録された個人識別情報により車両利用を許可されていることを確認して、利用者に駐車領域に駐車された車両2を貸し出すシステムのものであり、図2に示す如く、車両2に搭載されるコントローラ(以下「車載機」という。)3と、この車載機3にインターネット網4を経由して接続される管理センタ(「管理装置」ともいう。)5とを備えている。
つまり、前記車両共同利用システム1において、利用者が前記車両2を利用する際には、利用者の所持する携帯電話やパソコンなどの利用者端末(図示せず)からインターネット網4を経由して管理センタ5に車両2の予約を行い、予約後に利用者は、自己の所持するICカード(図示せず)を予約により指定された車両2に装備されるICカードリーダ(図示せず)に提示し、このICカードリーダを使用して車両2にて認証を行い、認証完了後に指定された車両2の利用を開始する。
そして、前記車載機3には、GPS機能と通信機能とを確保するために、GPS機能付・携帯電話通信モジュール3aが内蔵されている。
なお、上述したインターネット網4に関して、携帯電話の使用のみが行われる場合には、「インターネット網4」の代わりに、「携帯電話通信網4」と言い換えることも可能である。
また、前記車両2の利用終了後は、利用者が車両2を元の位置に戻して返却を行っている。
このとき、前記車両共同利用システム1は、車載機3で車両2の状態・位置を取得し、インターネット網4を経由して、その情報を管理センタ5に送信して表示することで、管理者が管理センタ5にて複数の車両を遠隔で集中管理・運営可能としている。
【0010】
前記車両2には、図2に示す如く、前記車載機3以外にも、「貸出」・「返却」の切り換えを判定するためのスイッチである貸出キー6やシフトレバー(図示せず)のシフト位置を検出するシフト位置検出手段7、前記車両2の後方を撮影する撮影手段である車載カメラ(「バックカメラ」ともいう。)8、バックカメラコントローラ9などが搭載されている。
そして、前記車載機3は、利用者が前記貸出キー6を手動によって「貸出」または「返却」に切換操作した際に、この切換信号を入力している。
また、前記車両2に前記バックカメラコントローラ9が接続されている一方、このバックカメラコントローラ9には、前記シフト位置検出手段7と前記車載カメラ8とが接続されている。
【0011】
このとき、前記車両共同利用システム1において、駐車領域10は、前記撮影手段である車載カメラ8により撮影されると撮影された映像内に含まれ、かつ駐車領域10毎に固有で識別可能な駐車位置識別情報を備え、貸し出された前記車両2を返却する場合に、撮影された駐車位置識別情報と、前記車両2を管理する管理装置である管理センタ5が保持する駐車位置正規情報とを比較し、一致すれば正常な位置に前記車両2が返却されたと判断する判断手段11を備えている。
【0012】
詳述すれば、前記駐車領域10は、図3に示す如く、駐車領域10の左右両側を左側駐車線12及び右側駐車線13により区画される一方、駐車領域10の駐車終点側(図3において上側)を車輪止め14により区画されている。
このとき、図3においては、前記駐車領域10の駐車始点側(図3において下側)である前記車両2の出し入れ側には、何ら区画する線などは記載されていないが、駐車領域10によっては、車両2の先端を規制するための規制線(図示せず)が記載されている場合もある。
【0013】
そして、前記駐車位置識別情報としては、前記駐車領域10内に返却位置コード15を書く。
この返却位置コード15は、例えば、文字や数字、模様(図を含む。)などからなるコードとすることが可能であり、この実施例においては4桁の数字からなる「9999」とする。
また、前記返却位置コード15は、前記駐車領域10内の所定位置にペンキなどで書く構成としたが、前記返却位置コード15の識別可能な方策であればよく、例えば、印刷加工を施して前記返却位置コード15を現出させた合成樹脂製やプラスチック製、金属製などからなるシート状部材、あるいは、印刷または切削加工を施して前記返却位置コード15を現出させたタイルやプラスチック製板、金属製板などからなるプレート状部材を使用する方策とすることも可能である。
更に、前記返却位置コード15として数字のみを使用する以外には、アルファベット文字やギリシャ文字などの文字のみ、「A01」や「あ001」のように文字と数字との組み合わせ、「花(例えば、菊の図)0001」のように模様と数字との組み合わせなどが考えられる。
【0014】
また、前記判断手段11は、前記管理装置である管理センタ5内あるいは別体に設けることが可能であるが、この実施例においては、前記管理装置である管理センタ5内に設けた構成として説明する。
前記判断手段11は、貸し出された前記車両2を返却する場合に機能する。
つまり、前記判断手段11は、貸し出された前記車両2を返却する場合に、前記駐車領域10内に返却位置コード15からなる、前記撮影手段である車載カメラ8により撮影された駐車位置識別情報を入力する一方、前記車両2を管理する管理装置である管理センタ5が保持する駐車位置正規情報とによって、これらの駐車位置識別情報と駐車位置正規情報とを比較する。
そして、前記判断手段11は、この比較動作によって、前記車両2の返却位置の正否を判断し、上述の駐車位置識別情報と駐車位置正規情報とが一致する際には正常な位置に前記車両2が返却されたと判断する。
このとき、前記判断手段11による判断結果は、図2に示す如く、前記管理装置である管理センタ5から前記車両2に返却位置の正否情報として送信される。
【0015】
そして、前記車両2の返却位置が正常な場合には、前記管理装置である管理センタ5から前記車両2の前記車載機3に「正」の情報が送信されるため、利用者はそのまま前記車両2の返却処理を進めることが可能である。
しかし、前記車両2の返却位置が正常でない、つまり異常である場合には、前記管理装置である管理センタ5から前記車両2の前記車載機3に「否」の情報が送信されることとなるため、前記車載機3の図示しない表示装置に例えば「返却位置にありません」のメッセージが表示され、利用者へ正しい返却位置への前記車両2の移動作業を促すものである。
【0016】
次に、前記車両共同利用システム1の撮影手段である車載カメラ8を用いた返却位置確認制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0017】
利用者によって前記車両2の利用中に制御用フローチャートがスタート(101)する。
そして、制御用フローチャートがスタート(101)すると、前記車両2のバックカメラコントローラ9にシフト位置検出手段7からシフトレバーの「R(リバース)」シフト位置の検出信号が入力された際に、前記撮影手段である車載カメラ8が起動する処理(102)に移行する。
また、撮影手段である車載カメラ8が起動する処理(102)の後には、「車両位置情報判定」の処理(103)を行うために、この車載カメラ8が撮影したカメラ画像よりコード読み取りを行い、返却位置コード15からなる駐車位置識別情報として前記バックカメラコントローラ9に出力し、このバックカメラコントローラ9に入力された返却位置コード15からなる駐車位置識別情報は、前記車載機3に出力される。
そして、「車両位置情報判定」の処理(103)の後に、前記シフト位置検出手段7からシフトレバーの「P(パーキング)」シフト位置の検出信号が前記バックカメラコントローラ9に入力されると、前記撮影手段である車載カメラ8を停止する処理(104)に移行する。
【0018】
また、上述の撮影手段である車載カメラ8を停止する処理(104)の後には、前記貸出キー6を「返却」に切換操作したか否かの判断(105)に移行する。
この判断(105)がNOの場合には、上述の制御用フローチャートのスタート(101)に戻る。
また、判断(105)がYESの場合には、前記車載機3に入力されている返却位置コード15からなる駐車位置識別情報を、インターネット網4を経由して管理センタ5にも出力し、「車両位置情報送信」の処理(106)を行う。
更に、前記車載機3からの返却位置コード15からなる駐車位置識別情報を入力した管理センタ5は、入力した駐車位置識別情報と予め保持する駐車位置正規情報とを比較し、「車両位置照合」の処理(107)を行う。
この「車両位置照合」の処理(107)の後には、前記管理センタ5の判断手段11によって、「車両返却位置の正否」判断(108)を行う。
【0019】
そして、前記管理センタ5の判断手段11による「車両返却位置の正否」判断(108)が「否」の場合には、この返却位置の正否情報が前記車載機3に出力されるため、前記車載機3の表示装置に例えば「返却位置にありません」のメッセージが表示され、利用者へ正しい返却位置への前記車両2の移動作業を促す処理(109)に移行し、この処理(109)の後に、上述の制御用フローチャートのスタート(101)に戻る。
また、前記管理センタ5の判断手段11による「車両返却位置の正否」判断(108)が「正」の場合には、この返却位置の正否情報が前記車載機3に出力されるため、利用者はそのまま前記車両2の返却処理を進めることが可能となり、返却完了の処理(110)に移行する。
【0020】
これにより、前記車両共同利用システム1において、駐車領域10は、前記撮影手段である車載カメラ8により撮影されると撮影された映像内に含まれ、かつ駐車領域10毎に固有で識別可能な駐車位置識別情報を備え、貸し出された前記車両2を返却する場合に、撮影された駐車位置識別情報と、前記車両2を管理する管理装置である管理センタ5が保持する駐車位置正規情報とを比較し、一致すれば正常な位置に前記車両2が返却されたと判断する判断手段11を備えている。
従って、前記撮影手段である車載カメラ8の撮影可能な駐車位置に書かれた固有の識別情報を、前記車両2が正確な駐車位置に返却されたかどうかの判断に用いるので、誤差の少ない信頼性の高い車両共同利用システム1を構築することが可能である。
また、前記撮影手段として、前記車両2の後退により車両2を駐車するのに使用するために搭載された車両後方撮影用のカメラである車載カメラ8を利用することができるので、専用のカメラを新たに車両2に搭載する必要がなく、構成の簡略化が図れるとともに、設備コストを低廉に維持し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例を示す車両共同利用システムの撮影手段である車載カメラを用いた返却位置確認制御用フローチャートである。
【図2】車両共同利用システムのシステム図である。
【図3】駐車領域の返却位置コードの表示例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0022】
1 車両共同利用システム
2 車両
3 コントローラ(以下「車載機」という。)
4 インターネット網
5 管理センタ(「管理装置」ともいう。)
6 貸出キー
7 シフト位置検出手段
8 車載カメラ(「バックカメラ」ともいう。)
9 バックカメラコントローラ
10 駐車領域
11 判断手段
15 返却位置コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め登録された個人識別情報により車両利用を許可されていることを確認して、利用者に駐車領域に駐車された車両を貸し出す車両共同利用システムにおいて、前記車両の後方を撮影する撮影手段を備え、駐車領域は、前記撮影手段により撮影されると撮影された映像内に含まれ、かつ駐車領域毎に固有で識別可能な駐車位置識別情報を備え、貸し出された前記車両を返却する場合に、撮影された駐車位置識別情報と、前記車両を管理する管理装置が保持する駐車位置正規情報とを比較し、一致すれば正常な位置に前記車両が返却されたと判断する判断手段を備えていることを特徴とする車両共同利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−146229(P2010−146229A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321869(P2008−321869)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】