説明

車両利用支援装置

【課題】 車両毎又はユーザ毎の車両の利用状況を予測し車両の利用情報を反映した情報を供給する車両利用支援装置を提供すること。
【解決手段】 車両利用支援装置10の電子制御ユニット11は、データ入力部31、出発・到着時刻予測マップ生成部32、走行距離予測マップ生成部33、データ出力部34とからなる。入力部31は出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を入力する。予測マップ生成部32は今後の出発予想時刻マップと今後の到着予想時刻マップを作成する。予測マップ生成部33は、走行距離情報及び予測出発時刻情報を用いて出発時間帯における最長走行距離を予測する出発時間帯別予想走行距離マップを作成する。データ出力部34は、予測マップ生成部32から供給された予想時刻マップと、予測マップ生成部33から供給された予想走行距離マップとに基づいて、各種の情報を生成して提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及びこの車両のユーザの日々の行動に基づき車両の利用状況を予測し、ユーザによる車両の利用を支援する車両利用支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているような、充放電管理装置は知られている。この従来の充放電管理装置は、需要家の充放電行動により享受できる報奨及び充電・放電の実施に関する制約を定めた充放電報奨情報を充電管理中央サーバから受信する充放電報奨情報受信手段と、充放電報奨情報に基づいて報奨が最大となるようにある時間帯の充電量の合計及び放電量の合計と電気自動車の推定使用開始時刻とを含む充放電計画を作成する計算部と、充放電計画に従った充電・放電の開始・終了を電気自動車に指令する充放電指令送信手段と、充電・放電を監視する充放電量監視手段と、監視によって充電・放電の実施内容及び自身を識別する個体識別情報を含む充放電実施結果を充電管理中央サーバに送信する充放電実施結果送信手段とを有するようになっている。これにより、需要家の行動を踏まえつつ、電力系統全体のエネルギー消費性能及び社会環境性能を向上させるようになっている。
【0003】
又、従来から、例えば、下記特許文献2に示されているような、電気自動車充電システム及び電気自動車充電方法も知られている。この従来の電気自動車充電システム及び電気自動車充電方法は、電気自動車が駐車スペースに停車すると、制御装置10が切り替えスイッチ経由で電気自動車と通信して車ID、電池残量、運行情報等を取得し、ニューラルネット等の手法を用いて車IDから特定される客の滞在時間を予測し、電池残量及び充電器の充電速度により充電時間を計算し、その充電時間が滞在時間に収まるように充電スケジュールを作成するようになっている。又、この従来の電気自動車充電システム及び電気自動車充電方法では、計算した充電時間が滞在時間に収まらない場合には、運行情報から帰路に必要な充電量を計算して充電時間を再計算するようになっており、充電量が不十分となる場合には、その旨を示す警報、又は、出発時刻を延長するように促すメッセージを出力するようになっている。これにより、効率的に複数の電気自動車を充電することができるようになっている。
【0004】
更に、従来から、例えば、下記特許文献3に示される電力マネジメントシステムも知られている。この従来の電力マネジメントシステムは、確保電力量演算部を備えており、この確保電力量演算部は、走行履歴取得装置が取得した1トリップの消費電力量を学習して通常走行における必要基本電力量を求め、更に、天候情報検出部からの天候情報に基づいて空調機等の使用のための必要電力を加算して確保電力量を決定するようになっている。これにより、車載バッテリに走行環境に対応した電力を確保することができ、急な外出にも対応できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−81722号公報
【特許文献2】特開2011−83165号公報
【特許文献3】特許第4164996号公報
【発明の概要】
【0006】
ところで、上記特許文献1〜3に示された従来の装置やシステムにおいては、過去の電力需要から走行開始時刻や走行開始距離を予測するようになっている。しかしながら、ユーザがより利便性及び確実性を有して車両を利用しようとする場合には、ユーザの日々の行動(ライフスタイル)をも考慮したより精度のよい車両の利用状況を予測する必要がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、車両毎又はユーザ毎の車両の利用状況を予測し、この予測した車両の利用情報を反映した情報を供給する車両利用支援装置を提供することにある。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、ユーザによる車両の利用状況を予測する利用状況予測手段を備え、前記予測した車両の利用状況に基づいてユーザによる車両の利用を支援する車両利用支援装置であって、前記利用状況予測手段は、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の過去の車両の利用状況に関する情報を取得し、前記取得した情報に基づいて、今後、所定の駐車位置から出発する出発時刻に関する情報及び前記所定の駐車位置に到着する到着時刻に関する情報を、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測して決定し、前記取得した情報及び前記予測した出発時刻に関する情報に基づき、今後、前記予測した出発時刻に関する情報によって表される出発時刻を含む出発時間帯に出発した車両が走行する走行距離に関する情報を、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測して決定し、前記予測した出発時刻に関する情報、前記予測した到着時刻に関する情報及び前記予測した走行距離に関する情報のいずれかを用いて前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の車両の利用状況を予測し、この予測した車両の利用状況を反映した情報をユーザに提供することにある。尚、この場合、前記利用状況予測手段が、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の過去の車両の利用状況に関する情報を取得して入力する入力手段と、前記入力手段によって取得された情報に基づいて、今後、所定の駐車位置から出発する出発時刻に関する情報及び前記所定の駐車位置に到着する到着時刻に関する情報を、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測して決定する時刻予測手段と、前記入力手段によって取得された情報及び前記予測した出発時刻に関する情報に基づき、今後、前記予測した出発時刻に関する情報によって表される出発時刻を含む出発時間帯に出発した車両が走行する走行距離に関する情報を、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測して決定する走行距離予測手段と、前記時刻予測手段によって予測された出発時刻に関する情報、前記時刻予測手段によって予測された到着時刻に関する情報及び前記走行距離予測手段によって予測された走行距離に関する情報のいずれかを用いて前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の車両の利用状況を予測し、この予測した車両の利用状況を反映した情報をユーザに提供する出力手段とを備えることも可能である。
【0009】
この場合、前記過去の車両の利用状況に関する情報は、前記所定の駐車位置からの出発時刻を表す出発時刻情報、前記所定の駐車位置への到着時刻を表す到着時刻情報、及び、前記出発時刻情報によって表される出発時刻に所定の駐車位置を出発してからの走行距離を表す走行距離情報のうちのいずれかであり、前記予測した出発時刻に関する情報は、前記出発時刻情報によって表される出発時刻の出現累積確率を表す情報であり、前記予測した到着時刻に関する情報は、前記到着時刻情報によって表される到着時刻の出現累積確率を表す情報であり、前記予測した走行距離に関する情報は、前記出発時刻の出現累積確率を有する出発時刻を含む出発時間帯における前記走行距離情報によって表される走行距離の出現累積確率を表す情報であるとよい。尚、この場合、前記入力手段が入力して取得する前記過去の車両の利用状況に関する情報は、前記所定の駐車位置からの出発時刻を表す出発時刻情報、前記所定の駐車位置への到着時刻を表す到着時刻情報、及び、前記出発時刻情報によって表される出発時刻に所定の駐車位置を出発してからの走行距離を表す走行距離情報のうちのいずれかであり、前記時刻予測手段が予測する出発時刻に関する情報は、前記出発時刻情報によって表される出発時刻の出現累積確率を表す情報であり、前記時刻予測手段が予測する到着時刻に関する情報は、前記到着時刻情報によって表される到着時刻の出現累積確率を表す情報であり、前記走行距離予測手段が予測する走行距離に関する情報は、前記出発時刻の出現累積確率を有する出発時刻を含む出発時間帯における前記走行距離情報によって表される走行距離の出現累積確率を表す情報であるとよい。
【0010】
又、この場合、前記利用状況予測手段は、少なくとも、前記出発時刻の出現累積確率、又は、前記到着時刻の出現累積確率に対して、担保すべき前記出現累積確率を決定するために前記車両を利用するユーザによって設定される安全確率を考慮して、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の車両の利用状況を予測し、この予測した車両の利用状況を反映した情報をユーザに提供することができる。尚、この場合、前記出力手段は、少なくとも、前記時刻予測手段によって予測された出発時刻の出現累積確率、又は、前記到着時刻の出現累積確率に対して、担保すべき前記出現累積確率を決定するために前記車両を利用するユーザによって設定される安全確率を考慮して、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の車両の利用状況を予測し、この予測した車両の利用状況を反映した情報をユーザに提供することができる。
【0011】
又、これらの場合、前記予測した走行距離に関する情報は、例えば、統計学上の、頻度法、ノンパラメトリックな手法、及び、パラメトリックな手法のうちの少なくとも一つの方法を用いて、前記出発時刻の出現累積確率を有する出発時刻を含む出発時間帯における前記走行距離情報によって表される走行距離の出現累積確率を計算することができる。尚、この場合、前記走行距離予測手段は、前記予測した走行距離に関する情報を、例えば、統計学上の、頻度法、ノンパラメトリックな手法、及び、パラメトリックな手法のうちの少なくとも一つの方法を用いて、前記出発時刻の出現累積確率を有する出発時刻を含む出発時間帯における前記走行距離情報によって表される走行距離の出現累積確率として計算することができる。この場合、前記統計学上のパラメトリックな手法は、例えば、前記出発時刻の出現累積確率を有する出発時刻を含む出発時間帯における前記走行距離情報によって表される走行距離の出現累積確率の分布を表す統計モデルのパラメータに対して事前分布を与える統計モデルを用いることができる。
【0012】
本発明の他の特徴は、前記予測した車両の利用状況を反映した情報が、車両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報としたことにもある。尚、この場合、前記出力手段は、前記予測した車両の利用状況を反映した情報を、車両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報として出力することができる。
【0013】
この場合、前記利用状況予測手段は、例えば、前記車両毎又は車両を利用するユーザ毎の過去の前記車両に搭載されたバッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成し、前記作成したルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻に従って前記両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報を提供することができる。尚、この場合、前記利用状況予測手段が、更に、前記入力手段によって入力されて取得された車両毎又は車両を利用するユーザ毎の過去の前記車両に搭載されたバッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成するルールカーブ作成手段を備え、前記出力手段は、前記ルールカーブ作成手段によって作成されたルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻に従って前記両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報を提供することができる。
【0014】
そして、この場合、前記利用状況予測手段は、例えば、前記作成したルールカーブを用いて、前記ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記バッテリへの充電開始時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、前記バッテリからの放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定し、前記推定して決定した前記最遅充電開始時刻又は前記最遅放電停止時刻に従って前記両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報を提供することができる。尚、この場合、前記出力手段は、前記ルールカーブ作成手段によって作成されたルールカーブを用いて、前記ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記バッテリへの充電開始時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、前記バッテリからの放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定し、前記推定して決定した前記最遅充電開始時刻又は前記最遅放電停止時刻に従って前記両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報を提供することができる。
【0015】
又、この場合、前記利用状況予測手段は、例えば、前記最遅充電開始時刻を推定して決定するための前記線分を、前記バッテリへの充電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリに供給する充電電圧及び前記バッテリに供給する充電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定し、又は、前記最遅放電停止時刻を推定して決定するための前記線分を、前記バッテリによる放電可能量、前記バッテリの放電時における予想気温、前記バッテリから供給する放電電圧及び前記バッテリから供給する放電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定することができる。尚、この場合、前記出力手段は、前記最遅充電開始時刻を推定して決定するための前記線分を、前記バッテリへの充電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリに供給する充電電圧及び前記バッテリに供給する充電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定し、前記最遅放電停止時刻を推定して決定するための前記線分を、前記バッテリによる放電可能量、前記バッテリの放電時における予想気温、前記バッテリから供給する放電電圧及び前記バッテリから供給する放電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定することができる。
【0016】
更に、本発明の他の特徴は、前記予測した車両の利用状況を反映した情報が、車両を複数のユーザによって共用するカーシェアリングに関する情報としたことにもある。尚、この場合、前記出力手段は、前記予測した車両の利用状況を反映した情報が、車両を複数のユーザによって共用するカーシェアリングに関する情報として出力することができる。
【0017】
そして、この場合、前記利用状況予測手段は、例えば、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測して決定した前記出発時刻に関する情報及び前記到着時刻に関する情報を用いて、複数の車両のうちで利用可能となる車両を抽出し、前記抽出した車両を前記カーシェアリングに関する情報として提供することができる。尚、この場合、前記出力手段は、前記時刻予測手段によって車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測されて決定された前記出発時刻に関する情報及び前記到着時刻に関する情報を用いて、複数の車両のうちで利用可能となる車両を抽出し、前記抽出した車両を前記カーシェアリングに関する情報として提供することができる。
【0018】
これらによれば、車両毎又は車両を利用するユーザ毎の出発時刻に関する情報及び到着時刻に関する情報と、出発時間帯に出発した車両の走行距離とを、車両の過去の車両の利用状況に関する情報を用いて極めて精度よく予測することができる。従って、車両の利用状況を極めて精度よく予測して把握することができる。そして、このように、車両の利用状況を精度よく予測することにより、例えば、車両に搭載されたバッテリへの充電やバッテリからの放電においてユーザが車両を利用する時刻までに確実に完了させることができ、又、複数のユーザが車両を共有して利用するカーシェアリングにおいてユーザが希望する条件(例えば、時間帯等)に確実に利用可能な車両に関する情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る車両利用支援装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1の電子制御ユニット内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す機能ブロック図である。
【図3】図2の出発・到着時刻予測マップ生成部によって作成される車両Aに関する出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを説明するための図である。
【図4】図2の出発・到着時刻予測マップ生成部によって作成される車両Bに関する出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを説明するための図である。
【図5】図2の走行距離予測マップ生成部によって作成される車両Aに関する出発時間帯別予想走行距離マップを説明するための図である。
【図6】図2の走行距離予測マップ生成部によって作成される車両Bに関する出発時間帯別予想走行距離マップを説明するための図である。
【図7】ワイブル分布で近似した各時間帯別の走行距離累積度数分布を説明するための図である。
【図8】図2のデータ出力部から出力される、充放電制御の対象となる車両に関する各時刻に対する推定必要電力量(必要バッテリ残量)を表すルールカーブを説明するための図である。
【図9】推定最遅充電開始時刻及び推定最遅放電停止時刻の決定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る車両利用支援装置10(以下、単に「本装置10」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。
【0021】
本装置10は、車両毎又は車両を利用するユーザ毎の日々の行動パターンを取得して蓄積し、この行動パターンに基づいて、将来における車両の利用状況を精度よく予測するものである。すなわち、本装置10は、車両毎又はユーザ毎について、車両が駐車される所定の駐車位置からの出発時刻及び所定の駐車位置への到着時刻と、所定の駐車位置を出発してから所定の駐車位置に到着する(戻る)までに車両が走行した走行距離とを、車両を用いた日々の行動パターン(ライフスタイル)として収集して蓄積する。そして、本装置10は、このように収集して蓄積した車両毎又はユーザ毎の行動パターンから、車両毎の日々の利用状況(より具体的には、曜日毎の利用状況)を精度よく予測する。また、本装置10は、このように精度よく予測した車両毎の利用状況に基づいて、車両のユーザに対して種々の情報を提供するようになっている。
【0022】
ここで、本装置10による利用状況の予測対象となる車両については、如何なる車両であってもよいが、本実施形態においては、車両が、所謂、充電式車両(具体的には、外部の充電スタンドを利用して搭載したバッテリを充電する電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車両(PHV)等)を採用して実施するものとする。又、本装置10による利用状況の予測対象となる車両においては、利用可能な充電スタンドが設置された所定の駐車位置を起点とし、この駐車位置から出発する出発時刻及びこの駐車位置に到着する到着時刻を検出可能であり、この駐車位置を出発してから戻るまでに(到着するまでに)走行した走行距離が検出可能であるとする。この場合、これらの出発時刻、到着時刻及び走行距離の検出については、如何なる方法をも採用可能であるが、例えば、各車両が周知のナビゲーションユニットを搭載しており、このナビゲーションユニットが車両の現在位置を検出することにより、前記所定の駐車位置を起点として、出発時刻、到着時刻及び走行距離を検出するとよい。或いは、本装置10が車両の現在位置を周知の通信を介して直接的に取得することにより、車両の出発時間、到着時間及び走行距離を検出(取得)するようにすることも可能である。
【0023】
そして、本装置10による利用状況の予測対象となる車両においては、上記のように検出された出発時刻、到着時刻及び走行距離について、車両を識別するために予め設定された識別情報(以下、この識別情報を「車両ID」と称呼する。)と互いに関連付けた状態で、本装置10に出力するようになっている。又、本装置10による利用状況の予測対象となる車両においては、この車両を利用しているユーザを認証する周知の認証手段を備えている。尚、この認証手段については、例えば、ユーザが利用する予め登録された電子キーを認証したり、車両に乗車したユーザを車両に搭載されたカメラによって生体認証する等如何なる方法であってもよい。そして、このようにユーザを認証できる場合においては、車両は、上記のように検出された出発時刻、到着時刻、走行距離及び車両IDについて、認証したユーザを表す認証情報(以下、この認証情報を「ユーザID」と称呼する。)をも互いに関連付けた状態で、本装置10に出力するようになっている。このため、車両においては、有線又は無線によって本装置10との通信を可能とする周知の通信手段を備えている。
【0024】
本装置10は、図1に概略的に示すように、互いに通信可能に接続された電子制御ユニット11、通信ユニット12及び記憶ユニット13を必要最小限の構成として備えている。電子制御ユニット11は、CPU、ROM、RAM等を主要構成部品とするマイクロコンピュータであり、各種のプログラムを実行することにより、本装置10の作動を統括的に制御する。通信ユニット12は、有線又は無線によって、車両側から上述したように検出された出発時刻、到着時刻、走行距離、車両ID及びユーザID等の各種の情報を取得するものである。尚、本装置10の設置場所に関し、車両を駐車する所定の駐車位置近傍に本装置10が設置される場合には、通信ユニット12が有線通信又は無線通信によって直接的に車両側から上記各種の情報を取得できるようになっており、車両を駐車する所定の駐車位置から遠方に本装置10が設定される場合には、通信ユニット12が、例えば、インターネット通信網(公衆回線網)や専用通信網を介した有線又は無線通信により、車両側から上記各種の情報を取得できるようになっている。
【0025】
記憶ユニット13は、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶媒体及び同記憶媒体のドライブ装置を含むものであり、電子制御ユニット11が本装置10の作動を統括的に制御するにあたって必要なプログラム及びデータを予め記憶している。そして、記憶ユニット13内には、車両IDデータベース13a、ユーザIDデータベース13b及び車両走行履歴データベース13cが構築されている。車両IDデータベース13aは、本装置10が利用状況を予測する車両(複数の車両)を識別するために上述したように予め設定されている車両ID(例えば、車両登録番号や車台番号等)を検索可能に記憶している。ユーザIDデータベース13bは、本装置10が利用状況を予測する車両を利用するユーザ(複数のユーザ)を識別するために上述した認証に必要なユーザID(例えば、電子キーの登録番号や生体認証情報等)を検索可能に記憶している。車両走行履歴データベース13cは、通信ユニット12を介して、車両側から供給される出発時刻を表す出発時刻情報、到着時刻を表す到着時刻情報、及び、走行距離を表す走行距離情報を一体的に、車両ID又は/及びユーザIDと関連付けることにより、車両毎又はユーザ毎に検索可能に記憶している。
【0026】
次に、上記のように構成した本装置10の動作について、電子制御ユニット11内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す図2の機能ブロック図を用いて説明する。電子制御ユニット11は、データ入力部31、出発・到着時刻予測マップ生成部32、走行距離予測マップ生成部33、データ出力部34とからなる。
【0027】
今、以下の説明を容易とするために、本装置10が利用状況を予測する複数の車両のうちのある車両Aを、複数のユーザのうちのあるユーザAが利用する状況を想定する。この場合、ユーザAが車両Aに乗車すると、車両Aにおいては乗車したユーザAを認証し該当するユーザIDを自身の車両IDとともに所定の記憶手段に記憶しておく。そして、ユーザAが車両Aを所定の駐車位置から走行を開始する(出発する)と、車両Aに搭載されたナビゲーションユニットは、検出している車両Aの現在位置の変化に基づき車両Aが所定の駐車位置から出発したことを検知し、この出発を検知した時刻(すなわち、出発時刻)を表す出発時刻情報を所定の記憶手段に車両ID及びユーザIDとともに記憶する。又、車両Aに搭載されたナビゲーションユニットは、検出している車両Aの現在位置の変化に基づき車両Aが出発してからの走行距離を算出し、最終的に、ユーザAによって車両Aが所定の駐車位置に到着する(戻る)までの走行距離を表す走行距離情報を所定の記憶手段に車両ID、ユーザID及び出発時刻情報とともに記憶する。更に、車両Aに搭載されたナビゲーションユニットは、検出している車両Aの現在位置の変化に基づき車両Aが所定の駐車位置に到着したことを検知し、この到着を検知した時刻(すなわち、到着時刻)を表す到着時刻情報を所定の記憶手段に車両ID、ユーザID、出発時刻情報及び走行距離情報とともに記憶する。そして、車両Aにおいては、所定の駐車位置に駐車されると、記憶手段に記憶している車両ID、ユーザID、出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を通信手段を介して本装置10に出力する。
【0028】
本装置10においては、電子制御ユニット11が通信ユニット12を介して、走行を終えた車両Aから出力された車両ID、ユーザID、出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を受信する。そして、電子制御ユニット11は、出力された車両IDを用いて車両IDデータベース13aを検索することによって車両Aを特定するとともに出力されたユーザIDを用いてユーザIDデータベース13bを検索することによってユーザAを特定する。続いて、電子制御ユニット11は、出力された出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を走行履歴データベース13cに記憶する。このとき、電子制御ユニット11は、走行履歴データベース13c内に予め車両毎及びユーザ毎に形成された記憶位置にて、曜日別に出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を検索可能に蓄積して記憶する。
【0029】
このように、記憶ユニット13の走行履歴データベース13cに対して、車両毎又はユーザ毎に区別され、又、曜日別に出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報が記憶された状態において、電子制御ユニット11を構成するデータ入力部31は、走行履歴データベース13cから出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を入力する。具体的に例示して説明すると、データ入力部31は、走行履歴データベース13cに蓄積されている出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報のうち、例えば、車両Aについて平日である月曜日〜金曜日の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を選択的に入力することができる。或いは、データ入力部31は、走行履歴データベース13cに蓄積されている出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報のうち、例えば、車両Aについて休日である土曜日と日曜日又は祭日の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を選択的に入力することができる。尚、この場合、入力される車両Aの出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報は、ユーザAを含む複数のユーザによって車両Aが利用された場合の各情報が入力される。
【0030】
又、データ入力部31は、走行履歴データベース13cに蓄積されている出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報のうち、例えば、ユーザAについて平日である月曜日〜金曜日の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を選択的に入力することができる。或いは、データ入力部31は、走行履歴データベース13cに蓄積されている出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報のうち、例えば、ユーザAについて休日である土曜日と日曜日又は祭日の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を選択的に入力することができる。尚、この場合、入力されるユーザAの出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報は、車両Aを含む複数の車両を利用した場合の各情報が入力される。
【0031】
そして、このように、例えば、車両A又はユーザAについての曜日別の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を入力すると、データ入力部31は、入力した各情報のうち、曜日別の出発時刻情報及び到着時刻情報を出発・到着時刻予測マップ生成部32に出力するとともに、走行距離情報を走行距離予測マップ生成部33に出力する。尚、曜日別の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を車両IDと関連付ければ以下に説明するように車両Aの利用状況となり、曜日別の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報をユーザIDと関連付ければ、以下に説明における車両Aの場合と同様にユーザAの利用状況となる。
【0032】
出発・到着時刻予測マップ生成部32は、下記式1を用いて、平日と休日別の今後の出発予想時刻マップを作成するとともに、平日と休日別の今後の到着予想時刻マップを作成する。
【数1】

ただし、前記式1中のtjは、データ入力部31によって入力された出発時刻情報が表す出発時刻のうちの早い方からj番目の出発時刻を表すものであり、又、データ入力部31によって入力された到着時刻情報が表す到着時刻のうちの早い方からj番目の到着時刻を表すものである。そして、前記式1中のPtjは、出発時刻tj(j=0,…n)又は到着時刻tj(j=0,…n)の出現累積確率(安全確率)を表す。又、前記式1中のNtjは、出発時刻tj(j=0,…n)又は到着時刻tj(j=0,…n)における度数を表し、NAllは、出発時刻tj(j=0,…n)又は到着時刻tj(j=0,…n)における合計度数を表す。
【0033】
そして、前記式1に従って、例えば、車両Aについて予測した平日と休日の出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップは図3に示すようになる。又、図4は、車両A以外の車両Bについての平日と休日の出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップである。これらのマップを比較すると、車両Aと車両Bとでは、出発時刻及び到着時刻が明らかに異なる。具体的に、例えば、図3及び図4にて実線により示す平日の出発時刻に着目してみると、車両Aはある時間帯(例えば、8時台)に出発する確率が高いが、車両Bは一部で出発する確率が高くなるものの大凡満遍なく出発していることが理解できる。このように、出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを作成すると、出発・到着時刻予測マップ生成部32は、作成した出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップをデータ出力部34に供給するとともに、車両Aに関し、作成した出発予想時刻マップから予測される出発時刻を表す予測出発時間時刻を走行距離予測マップ生成部33に供給する。
【0034】
走行距離予測マップ生成部33は、車両Aについて、データ入力部31から曜日別の走行距離情報を入力するとともに、出発・到着時刻予測マップ生成部32から予測出発時刻情報を入力する。そして、走行距離予測マップ生成部33は、走行距離情報及び予測出発時刻情報を用いて、下記式2に従って、出発時間帯(すなわち、出発時刻)における最長走行距離を予測する平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを作成する。
【数2】

ただし、前記式2中のPhdは、出発時間帯hと、この出発時間帯hにおける距離d(以下、「距離時間帯d」と称呼する。)の出現累積確率(安全確率)を表す。又、前記式2中のNhdは、出発時間帯hと距離時間帯dの度数を表し、Nhは、出発時間帯hの合計度数を表す。
【0035】
そして、前記式2に従って、例えば、車両Aについて予測した平日の出発時間帯別予想走行距離マップ(例えば、8時、9時、10時)は図5に示すようになる。又、図6は、車両A以外の車両Bについての平日の出発時間帯別予想走行距離マップである。これらのマップを比較すると、車両Aと車両Bとでは、出発時刻帯における走行距離が明らかに異なる。具体的に、例えば、平日の出発時刻帯である9時台及び10時台に着目してみると、車両Aは長距離を走行する確率が存在するが、車両Bは比較的近距離を走行する確率が高いことが理解できる。
【0036】
ここで、車両Aについて、出発・到着時刻予測マップ生成部32によって作成された図3に示した平日の出発予想時刻マップに従えば、上述したように、例えば、8時台に出発する確率が高い。すなわち、車両Aに関しては、8時台までは距離時間帯dの度数すなわち走行距離情報によって表されるデータが多く収集され、9時台以降では距離時間帯dの度数すなわち走行距離情報が極端に少なくなる。一方、車両Bについては、出発・到着時刻予測マップ生成部32によって作成された図4に示した平日の出発予想時刻マップに従えば、上述したように、満遍なく出発する確率が高い。すなわち、車両Bに関しては、8時台前後における距離時間帯dの度数すなわち走行距離情報が比較的多く収集される。この場合、前記式2に従って計算される出現累積確率(安全確率)Phdは、Nhdすなわち出発時間帯hと距離時間帯dの度数に依存するため、例えば、度数が極端に少なくなる(或いは度数が「0」)状況では、例えば、図5における9時台及び10時台のように、不自然な分布を有するマップが生成される場合がある。
【0037】
ところで、走行距離のような正の値を取る量の分布は、指数分布、ワイブル分布、ガンマ分布等指数分布族や対数正規分布で表されることが多い。又、このような分布を表す際には、混合正規分布等で表すことも有効である。このため、出発時間帯別予想走行距離マップを作成するにあたり、今、時刻tに出発して距離dだけ走行したことを記録したN個のデータ(t1,d1),(t2,d2),…,(tN,dN)が得られている場合を想定し、このデータから、時刻tと距離dの同時確率密度関数f(d,t)を作成することを検討する。尚、時刻tと距離dの同時確率密度関数f(d,t)は、時刻tに出発する確率密度f(t)と、時刻tに出発した場合に距離dを走行する条件付きの確率密度関数f(d|t)の積f(d,t)=f(d|t)f(t)としても表すことができる。そして、f(d,t)又はf(t)とf(d|t)をデータから決定する方法としては、以下に示すように、大きく分類して3種類の方法が考えられる。ここで、これらの方法を用いる場合には、例えば、曜日、季節、気温、天候等の環境変数を勘案して適切にデータを区分した後にそれぞれの分類について処理を行うことが効果的である。更に、これらの環境変数を質的変数として、例えば一般化線形モデル等を用いて種々の環境に対するパラメータをまとめて表すことも有効である。
【0038】
a.頻度法
頻度法は、ある時間ステップ(例えば、1時間)毎にデータを区切り、各時間帯の走行距離情報によって表されるデータの累積分布をテーブルで表すものである。この頻度法では、各時間帯の走行距離データの累積分布をテーブルで表すことができるため、計算負荷を小さくして任意の分布を保持できる点で有効である。ただし、データ数が少ないと、例えば、図5,6で示したように、階段状の粗い分布しか得られない、データが存在しない時間帯では分布が決められない、或いは、少数のパラメータに情報を集約することができないために他の分布との比較や集計が難しくなる等のデメリットも存在する。
【0039】
b.ノンパラメトリックな手法
上述したa.頻度法において、データ数が少ない場合に階段状の粗い分布が得られることを解消する方法として、母集団の分布型に対して一切の仮定を設けないノンパラメトリックな手法を採用することが可能である。この場合、例えば、カーネル密度推定などの特定の分布形を仮定しない方法を採用することにより、任意の分布を滑らかに求めることができる。ただし、このようなノンパラメトリックな手法を採用する場合であっても、少数のパラメータに情報を集約することができないために他の分布との比較や集計が難しくなる等のデメリットも存在する。
【0040】
c.パラメトリックな手法
b.ノンパラメトリックな手法に対して、予め母集団の分布型に対して何らかの仮定を設けるパラメトリックな手法を採用することが可能である。具体的に、このパラメトリックな手法においては、走行距離方向の分布f(d|t)を、指数分布、ワイブル分布、ガンマ分布等の指数分布族、対数正規分布、混合ガウス分布等のパラメトリックな確率分布で表し、そのパラメータを時間刻み毎(時間ステップ毎)に決定する。これにより、走行距離方向にて滑らかな分布が得られるようになる。尚、この場合、複数の分布の和として表すことも有効となる。そして、このパラメトリックな手法では、パラメータの事前分布を与えておくことにより、データ数が少ない或いは「0」(ゼロ)の場合であっても、事前分布に従ったパラメータを決定することができる。ここで、事前分布に関し、例えば、多くの車両又はユーザに関するパラメータの情報が多く蓄積された場合、これらのパラメータの分布を事前分布とすることも可能である。これにより、所定の集団別にパラメータを集約することにより、未だデータが「0」(ゼロ)の新規の集団に対して、合理的なパラメータの事前分布を与えることができ、又、新規の集団におけるパラメータはその集団におけるデータが増えることによって緩やかに修正される。
【0041】
具体的に例示して説明すると、例えば、f(d|t)=g(d;at)となるように、パラメータ(ベクトル)atで表される分布を用いて時間帯を24時間に区分し各時間帯(1時間毎)のatを求める場合には、a0,…,a23の事前分布p(a0,…,a23)を考える。この場合において、このパラメータからN個のデータが観測される確率(尤度)Lは、下記式3により表すことができる。
【数3】

そして、前記式3をa0,…,a23について最大化することによって、例えば、図7に示すように、パラメータを決定することができる。
【0042】
又、隣り合う時間帯同士の走行距離分布が滑らかに変化するようにするには、隣り合う時間帯のパラメータの差Δat=at−at+1が「0」(ゼロ)に、又は、比Δat=at/at+1が「1」に近づくような事前分布P(Δat)を与えておけばよい。この場合、例えば、下記式4に示すように、「0」(ゼロ)を中心とする正規分布等を事前分布として与えることができる。
【数4】

【0043】
又、このパラメトリックな手法を採用した場合には、走行距離情報によって表されるデータが1つも存在しない時間帯のパラメータは事前分布のみで決まるようになる。このため、事前分布として、例えば、平均走行距離がほぼ「0」(ゼロ)となり、かつ、パラメータが確率最大となる分布を採用することにより、走行距離情報によって表されるデータ数が1つも存在しない時間帯では走行距離がほぼ「0」(ゼロ)となるように走行距離の分布が自然に選択されるようにすることができる。尚、このようにパラメータを決定するときには、例えば、忘却係数を導入しておき、古いデータほど重みを小さくすることによって偶然発生したデータを影響が長く残ることを排除することができる。
【0044】
更に、この場合、例えば、走行距離がほぼ「0」(ゼロ)となる分布の確率密度はデルタ関数で表わすことができるが、下記式5によって表されるワイブル分布において、尺度パラメータTを非常に小さい正の数に設定することにより、デルタ関数のように振る舞うようにすることができる。
【数5】

ただし、前記式5中のmはワイブル係数である。
【0045】
具体的に、尺度パラメータTの事前分布P(T)として、下記式6及び式7に示す分布を採用するとよい。
【数6】

【数7】

【0046】
ここで、図7を説明しておく。図7は、各時間帯別の走行距離累積度数分布をワイブル分布で近似したものであり、ワイブル分布におけるパラメータにガンマ分布による事前分布を与えた場合を示している。図7からも明らかなように、実線により示す実際の走行距離情報によって表されるデータと破線により示すワイブル分布による近似とを比較すると、ワイブル分布によって良好に近似されていることが理解できる。特に、走行距離情報によって表されるデータが1つも存在しない時間帯では、走行距離が「0」(ゼロ)付近で急激に累積度数が「1」に近付き、適切に、走行距離が「0」(ゼロ)であることを示している。又、9時台及び10時台は、長距離となる走行距離情報によって表されるデータが数点(1点又は2点)存在する場合を示しているが、事前分布によって走行距離が「0」(ゼロ)となるように制約しているため、累積分布としては、走行距離が「0」(ゼロ)付近で急激に増加し、その後緩やかに増加することが理解できる。
【0047】
このように、パラメトリックな手法を採用して、走行距離方向の分布f(d|t)を決定することができれば、この分布f(d|t)を走行距離方向にて積分することにより、出発時刻別の累積度数分布F(d|t)を求めることができる。そして、この出発時刻別の累積度数分布F(d|t)において、任意の所定の確率(以下、「所定の安全確率」と称呼する。)に等しくなる走行距離を出発時刻別に求めることにより、出発時刻別及び安全確率別の担保すべき走行距離を求めることができる。尚、平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを作成するにあたっては、上述したa〜cの各手法を組み合わせて実施可能であることは言うまでもない。そして、走行距離予測マップ生成部33は、走行距離情報及び予測出発時刻情報を用いて、平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを作成すると、出発時間帯別予想走行距離マップをデータ出力部34に供給する。
【0048】
データ出力部34においては、出発・到着時刻予測マップ生成部32から供給された出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップと、走行距離予測マップ生成部33から供給された出発時間帯別予想走行距離マップとに基づいて、各種の情報(データ)を生成して出力(提供)する。以下、具体的に、データ出力部34による情報の提供を例を挙げて説明する。
【0049】
上述したように、出発・到着時刻予測マップ生成部32によって平日と休日別の出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップが作成され、走行距離予測マップ生成部33によって平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップが作成されることにより、車両の日々の行動パターン(走行パターン)及びユーザの車両を利用した日々の行動パターン(ライフスタイル)、すなわち、車両の利用状況を精度よく予測することができる。このように車両の利用状況を適切に予測することができることにより、本装置10は、車両が所定の駐車位置に駐車している時間帯や、外出している時間帯、外出して走行する走行距離を良好に把握することができる。このため、車両が充電式車両であれば、本装置10の電子制御ユニット11、より詳しくは、データ出力部34は、効率よくかつ確実にバッテリの充電を完了させたり或いはバッテリの電力を放電させたりするための情報(データ)を提供することができる。以下、この車両の充放電制御に有益な情報を提供する場合について具体的に説明する。
【0050】
充電式車両の充放電制御は、所定の駐車位置等の特定の駐車場に設置される充放電施設である充放電スタンドの充放電用コンセントと車両に搭載されたバッテリとが電気的に接続されることによって実行される。このため、充放電スタンドには、車両のバッテリへの充電又は放電を制御するための制御装置が設けられている。制御装置は、マイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、車両の通信手段との間で近距離無線通信することによって、互いに所定の周期で種々の情報(例えば、充電におけるリクエストコードやレスポンスコード、車両ID、車両に搭載されているバッテリの充電状態を示す値(電力量)であるSOC(State Of Charge)等)を送受信するようになっている。これにより、充放電スタンドの制御装置は、車両に搭載されたバッテリに対して適切な量の電力を供給して充電し、又は、バッテリから適切な量の電力を放電させることができる。
【0051】
そして、このように充放電スタンドに設けられた制御装置が充電式車両に対して充放電制御を行う場合、本装置10の電子制御ユニット11、より具体的には、データ出力部34は、充放電スタンドの制御装置に対して、図8に示すように、充放電制御の対象となる車両に関し、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブ、言い換えれば、各時刻(時間帯別)に対するバッテリ残量(前回の走行で使い切らなかったバッテリ残量及び最低必要バッテリ量)を表すルールカーブを出力して提供する。具体的に説明すると、ルールカーブを充放電スタンドの制御装置に提供するにあたり、まず、車両は通信手段を介して、本装置10に車両ID及びこの車両のバッテリに充電されている単位電力量当たりの走行距離、所謂、電費を表す電費情報を送信する。本装置10においては、電子制御ユニット11が通信ユニット12を介して車両側から送信された車両IDを受信し、この受信した車両IDを用いて車両IDデータベース13aを検索して、車両を特定する。
【0052】
続いて、電子制御ユニット11においては、データ出力部34が、特定された車両の車両IDに対応して走行距離予測マップ生成部33によって作成された平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを取得するとともに、特定された車両からの電費情報を取得する。そして、データ出力部34は、取得した出発時間帯別予想走行距離マップに基づき、各時間帯毎に予測されている走行距離を電費情報によって表される車両の電費で除することによって各時間帯にて必要な電力量(充電量)を推定して決定することによりルールカーブを作成する。更に、データ出力部34は、特定された車両の車両IDに対応して出発・到着時刻予測マップ生成部32によって作成された平日と休日別の出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを取得する。
【0053】
このように、充放電制御の対象となる車両に対応したルールカーブを作成すると、データ出力部34は作成したルールカーブを出力する。又、充放電制御の対象となる車両に対応した出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを取得すると、データ出力部34は取得した出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを出力する。これにより、本装置10においては、通信ユニット12を介して、作成されたルールカーブを表すルールカーブ情報と、出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを表す時刻マップ情報とをまとめて提供情報として車両側に送信する。
【0054】
車両においては、本装置10から送信された提供情報を通信手段を介して受信し、車両内の記憶手段に記憶する。このように、車両側にルールカーブを表すルールカーブ情報と出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを表す時刻マップ情報とからなる提供情報を記憶しておくことにより、例えば、所定の駐車位置以外に車両を駐車して充放電する場合であっても、記憶した提供情報を設置されている充電スタンドに出力することにより、この充電スタンドにおいても、後述するように、本装置10から提供されたルールカーブや出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを利用した充放電制御を実行することができる。
【0055】
そして、車両は、記憶手段に記憶した提供情報を、例えば、近距離無線通信を介して、電気的に接続されている充放電スタンドの制御装置に送信する。充放電スタンドの制御装置においては、車両を介して本装置10から提供された提供情報を用いて、車両のバッテリを充電する充電計画或いは車両のバッテリから放電する放電計画を精度よく作成して実行する。具体的に、制御装置は、例えば、提供情報のうちのルールカーブ情報によって表されるルールカーブにおいて、図9に示すように、精度よく予測されている推定必要電力量の局所最大値近傍の点(例えば、接点)から、下記式8により表される線分(例えば、接線)を想定し、最も電力が必要な時間帯、言い換えれば、最も車両10がバッテリ11の電力を消費して走行する時間帯までに適切な電力量の充電を完了させる推定最遅充電開始時刻を推定して決定する。尚、下記式9によって表される線分は、局所最大値近傍にてルールカーブに接するか又は常にルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分として設定される。
【数8】

ただし、前記式8の右辺θ(t)は時刻tにおけるバッテリへの充電可能量を表し、前記式8中のT(t)は時刻tにおける予想気温を表し、前記式8中のVは充電電圧を表し、前記式8中のAは充電電流を表す。従って、充放電スタンドの制御装置は、予想気温T(t)、充電電圧V及び充電電流Aを入力し、これら入力した各値のうちの少なくとも一つを用いて前記式8によって表される線分(例えば、接線)と所定のバッテリ残量との交点となる推定最遅充電開始時刻を決定する。尚、このように決定される推定最遅充電開始時刻は、ルールカーブにおける局所最大値となる時刻までに充電を完了させるときの最も遅い充電開始時刻として推定される。
【0056】
一方、ルールカーブにおける局所最大値を超えた時間帯においては、走行に必要な推定必要電力量が小さくなる。このため、例えば、車両のバッテリに走行に必要な電力以上の電力が充電されている、すなわち、余剰電力を有している場合には、この余剰電力を、例えば、家屋で利用する電力として放電することもできる。このように、バッテリから電力を放電する放電計画も、上記充電計画と同様に、充電スタンドの制御装置は、ルールカーブ情報によって表されるルールカーブに基づいて精度よく作成することができる。
【0057】
具体的に、制御装置は、例えば、ルールカーブ情報によって表されるルールカーブにおいて、図9に示すように、精度よく予測されている推定必要電力量の局所最大値近傍の点(例えば、接点)から、前記式8と同様に構成される下記式9により表される線分(例えば、接線)を想定し、余剰電力が存在する時間帯からの放電が完了する放電停止時刻を推定して決定する。尚、下記式9によって表される線分は、局所最大値近傍にてルールカーブに接するか又は常にルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分として設定される。
【数9】

ただし、前記式9の右辺φ(t)は時刻tにおけるバッテリからの放電可能量を表す。従って、充放電スタンドの制御装置は、予想気温T(t)、充電電圧V及び充電電流Aを入力し、これら入力した各値のうちの少なくとも一つを用いて前記式9が成立する放電停止時刻(推定最遅放電停止時刻)を決定することができる。
【0058】
又、充放電スタンドの制御装置においては、提供情報のうちの時刻マップ情報によって表される出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを用いて、電気的に接続された車両のバッテリを充放電制御することも可能である。すなわち、この場合においては、制御装置は、精度よく予測されている到着予想時刻マップを用いて、充放電対象である車両が所定の駐車位置に駐車されている可能性の高い時刻(すなわち、出現累積確率(安全確率)Pthが所定の安全確率(例えば、90%)以上となる時刻)を特定する。尚、所定の安全確率については、予め設定されるものであってもよいし、適宜変更されるものであってもよい。このように、車両が所定の駐車位置に駐車されている可能性の高い時刻(時間帯)を特定することにより、制御装置は、この特定した時刻以降(時間帯)に車両のバッテリに電力を供給して充電したり、車両のバッテリから電力を放電させたりすることができる。又、充放電制御を実行している状況にて、制御装置は、精度よく予測されている出発予想時刻マップを用いて、充放電対象である車両が所定の駐車位置から出発する可能性の高い時刻(すなわち、出現累積確率(安全確率)Pthが所定の安全確率(例えば、90%)以上となる時刻)を特定する。尚、所定の安全確率については、予め設定されるものであってもよいし、適宜変更されるものであってもよい。このように、車両が所定の駐車位置から出発する可能性の高い時刻(時間帯)を特定することにより、制御装置は、この特定した時刻(時間帯)までに車両のバッテリに電力を供給して充電したり、車両のバッテリから電力を放電させたりすることができる。
【0059】
このように、本装置10の電子制御ユニット11、より詳しくは、データ出力部34が提供情報として、ルールカーブを表すルールカーブ情報と、出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを表す時刻マップ情報とを充電スタンドの制御装置に提供することにより、充電スタンドの制御装置は、極めて正確にかつ確実に充放電制御を実行することができる。これにより、このような充放電制御の対象となる車両を利用するユーザは、良好なバッテリの充電状態で車両を確実に利用することができて、極めて良好な利便性を享受することができる。
【0060】
又、上述したように、出発・到着時刻予測マップ生成部32によって平日と休日別の出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップが作成され、走行距離予測マップ生成部33によって平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップが作成されることにより、車両の日々の行動パターン(走行パターン)及びユーザの車両を利用した日々の行動パターン(ライフスタイル)、すなわち、車両の利用状況を精度よく予測することができる。このように車両の利用状況を適切に予測することができることにより、本装置10は、車両が所定の駐車位置に駐車している時間帯や、外出している時間帯、外出して走行する走行距離を良好に把握することができる。このため、複数のユーザが車両を共用するカーシェアリングにおいて、本装置10の電子制御ユニット11、より詳しくは、データ出力部34は、ユーザに対して効率よくかつ確実に車両を利用するための情報(データ)を提供することができる。以下、このカーシェアリングに有益な情報を提供する場合について具体的に説明する。
【0061】
カーシェアリングを利用する場合、ユーザは、所有する情報端末装置(例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン等)を用いて、本装置10にアクセスする。尚、このアクセスについては、周知の方法により、例えば、インターネット回線網や専用回線網、或いは、直接的な有線接続等の如何なる方法を採用してもよい。そして、ユーザは、本装置10へのアクセスに際して、予め登録されているユーザIDとともに、自身が車両を利用したい時間帯を指定する。ここで、ユーザが車両を利用したい時間帯を指定する際、情報端末装置を介して、車両を利用する時間帯における出現累積確率(安全確率)Pth,Phdを適宜設定する、言い換えれば、所定の安全確率を任意に設定することができる。これにより、ユーザが出現累積確率(安全確率)Pth,Phdを高くなるように所定の安全確率を高く設定するほどユーザが指定する時間帯により車両を確実に利用できるようになるものの、ユーザによって指定された条件を完全に満たして利用可能な車両が見つかり難くなる場合がある。逆に、ユーザが出現累積確率(安全確率)Pth,Phdを低くなるように所定の安全確率を低く設定するほどユーザによって指定された条件を含んで利用可能な車両は見つかりやすくなるものの、ユーザが指定する時間帯が制限される場合がある。
【0062】
このように、ユーザがカーシェアリングを利用するために本装置10にアクセスすると、本装置10の電子制御ユニット11、より具体的には、データ出力部34は、本装置10が利用状況を予測する全車両及び全ユーザに関し、出発・到着時刻予測マップ生成部32によって作成された平日と休日別の出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを取得するとともに、走行距離予測マップ生成部33によって作成された平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを取得する。そして、データ出力部34は、精度よく予測された出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップと、出発時間帯別予想走行距離マップとに基づき、全車両及び全ユーザの利用状況を解析する。このとき、データ出力部34は、ユーザによって設定された出現累積確率(安全確率)Pth,Phdの大きさを考慮して、利用状況を解析する。
【0063】
このような解析を実行することにより、データ出力部34は、ユーザによって指定された時間帯に利用可能な車両を抽出し、この利用可能な車両を表す利用可能車両情報を提供情報として出力する。尚、この場合、データ出力部34は、例えば、ユーザによって設定された所定の安全確率が低く、ユーザが指定した時間帯が制限(具体的には、利用可能時間の短縮や利用開始時間の変更等)される場合には、その旨を示す情報をも提供情報として出力する。これにより、本装置10においては、通信ユニット12を介して、提供情報としてユーザの情報端末装置に送信する。
【0064】
ユーザにおいては、提供された提供情報に基づき、抽出された車両を利用する場合には、この車両の利用を予約する予約情報をカーシェアリング管理者に送信する。これにより、ユーザは、自身が設定した時間帯において利用可能な車両を極めて容易に事前に予約することができ、又、予約した車両は高い確率によって予定通り所定の駐車位置に既に駐車されているため極めてスムーズに車両を利用することができる。
【0065】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、車両毎又は車両を利用するユーザ毎の出発時刻及び到着時刻と、出発時間帯毎の走行距離とを車両の走行履歴を用いて極めて精度よく予測することができる。従って、車両の利用状況を極めて精度よく予測して把握することができる。そして、このように、車両の利用状況を精度よく予測することにより、例えば、車両が充電式車両である場合に必要なバッテリへの充電やバッテリからの放電においてユーザが車両を利用する時刻までに確実に完了させることができ、又、複数のユーザが車両を共有して利用するカーシェアリングにおいてユーザが希望する時間帯に確実に利用可能な車両に関する情報を提供(提示)することができる。
【0066】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態において、走行距離予測マップ生成部33は、一定の時間間隔(例えば、1時間間隔)でデータ数が少ない状況にて得られる階段状の粗い分布をノンパラメトリックな手法又はパラメトリックな手法を採用して滑らかな分布を有する出発時間帯別予想走行距離マップが得られるように実施した。この場合、存在するデータ数に応じて、例えば、データ数が均等に含まれるように時間間隔を可変長にして実施することも可能である。すなわち、この場合には、データ数が少なくなる時間帯(例えば、夜間)の時間間隔を長くしてこの時間間隔内に含まれるデータ数を増加させ、逆に、データ数が多くなる時間帯における時間間隔を短くしてデータ数を減少させる。このように、各時間間隔内に存在するデータ数が増減するように(或いは、均等化させるように)時間間隔を変更することにより、階段状の粗い分布を改善して滑らかな出発時間帯別予想走行距離マップを得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
10…車両利用支援装置、11…電子制御ユニット、12…通信ユニット、13…記憶ユニット、13a…車両IDデータベース、13b…ユーザIDデータベース、13c…車両走行履歴データベース、31…データ入力部、32…出発・到着時刻予測マップ生成部、33…走行距離予測マップ生成部、34…データ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる車両の利用状況を予測する利用状況予測手段を備え、前記予測した車両の利用状況に基づいてユーザによる車両の利用を支援する車両利用支援装置であって、
前記利用状況予測手段は、
前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の過去の車両の利用状況に関する情報を取得し、
前記取得した情報に基づいて、今後、所定の駐車位置から出発する出発時刻に関する情報及び前記所定の駐車位置に到着する到着時刻に関する情報を、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測して決定し、
前記取得した情報及び前記予測した出発時刻に関する情報に基づき、今後、前記予測した出発時刻に関する情報によって表される出発時刻を含む出発時間帯に出発した車両が走行する走行距離に関する情報を、前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測して決定し、
前記予測した出発時刻に関する情報、前記予測した到着時刻に関する情報及び前記予測した走行距離に関する情報のいずれかを用いて前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の車両の利用状況を予測し、この予測した車両の利用状況を反映した情報をユーザに提供することを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車両利用支援装置において、
前記過去の車両の利用状況に関する情報は、
前記所定の駐車位置からの出発時刻を表す出発時刻情報、前記所定の駐車位置への到着時刻を表す到着時刻情報、及び、前記出発時刻情報によって表される出発時刻に所定の駐車位置を出発してからの走行距離を表す走行距離情報のうちのいずれかであり、
前記予測した出発時刻に関する情報は、
前記出発時刻情報によって表される出発時刻の出現累積確率を表す情報であり、
前記予測した到着時刻に関する情報は、
前記到着時刻情報によって表される到着時刻の出現累積確率を表す情報であり、
前記予測した走行距離に関する情報は、
前記出発時刻の出現累積確率を有する出発時刻を含む出発時間帯における前記走行距離情報によって表される走行距離の出現累積確率を表す情報であることを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載した車両利用支援装置において、
前記利用状況予測手段は、
少なくとも、前記出発時刻の出現累積確率、又は、前記到着時刻の出現累積確率に対して、担保すべき前記出現累積確率を決定するために前記車両を利用するユーザによって設定される安全確率を考慮して、
前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎の車両の利用状況を予測し、この予測した車両の利用状況を反映した情報をユーザに提供することを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載した車両利用支援装置において、
前記予測した走行距離に関する情報を、
統計学上の、頻度法、ノンパラメトリックな手法、及び、パラメトリックな手法のうちの少なくとも一つの方法を用いて、前記出発時刻の出現累積確率を有する出発時刻を含む出発時間帯における前記走行距離情報によって表される走行距離の出現累積確率として計算することを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載した車両利用支援装置において、
前記統計学上のパラメトリックな手法は、前記出発時刻の出現累積確率を有する出発時刻を含む出発時間帯における前記走行距離情報によって表される走行距離の出現累積確率の分布を表す統計モデルのパラメータに対して事前分布を与える統計モデルを用いることを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちの車両利用支援装置において、
前記予測した車両の利用状況を反映した情報は、
車両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報であることを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載した車両利用支援装置において、
前記利用状況予測手段は、
前記車両毎又は車両を利用するユーザ毎の過去の前記車両に搭載されたバッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成し、
前記作成したルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、
前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻に従って前記両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報を提供することを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項8】
請求項7に記載した車両利用支援装置において、
前記利用状況予測手段は、
前記作成したルールカーブを用いて、前記ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記バッテリへの充電開始時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、前記バッテリからの放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定し、
前記推定して決定した前記最遅充電開始時刻又は前記最遅放電停止時刻に従って前記両に搭載されたバッテリの充電又は放電を制御するための充放電制御に関する情報を提供することを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項9】
請求項8に記載した車両利用支援装置において、
前記利用状況予測手段は、
前記最遅充電開始時刻を推定して決定するための前記線分を、
前記バッテリへの充電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリに供給する充電電圧及び前記バッテリに供給する充電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定し、又は、
前記最遅放電停止時刻を推定して決定するための前記線分を、
前記バッテリによる放電可能量、前記バッテリの放電時における予想気温、前記バッテリから供給する放電電圧及び前記バッテリから供給する放電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定することを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項5のうちの車両利用支援装置において、
前記予測した車両の利用状況を反映した情報は、
車両を複数のユーザによって共用するカーシェアリングに関する情報であることを特徴とする車両利用支援装置。
【請求項11】
請求項10に記載した車両利用支援装置において、
前記利用状況予測手段は、
前記車両毎又は前記車両を利用するユーザ毎に予測して決定した前記出発時刻に関する情報及び前記到着時刻に関する情報を用いて、複数の車両のうちで利用可能となる車両を抽出し、
前記抽出した車両を前記カーシェアリングに関する情報として提供することを特徴とする車両利用支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−50902(P2013−50902A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189405(P2011−189405)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】