説明

車両制御システム

【課題】キーレスエントリーシステムを利用してドアの施錠及び開錠の制御と他の車両以外の装置の制御を行うためには、ドアの施錠・開錠信号の通信可能距離と車両以外の装置を制御する信号の通信可能距離とを区別して制限することが必要であるという課題があった。
【解決手段】制御信号の通信可能距離を制限する電界強度領域を、制御信号に含まれる制御コードごとに個別に設け、制御手段が、制御コードが車両を制御する車両制御コードの場合は、検出した制御信号の電界強度と車両制御信号用に定められた電界強度領域とを比較し、また、制御コードが車両以外の装置を制御する装置制御コードの場合は、検出した制御信号の電界強度と車両以外の装置制御信号用に定められた電界強度領域とを比較し、検出した制御信号の電界強度がそれぞれ定められた電界強度領域内にあるときに、制御コードに対応する制御を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される通信装置の起動制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車等の車両に搭載するカーナビゲーション装置が普及してきており、一部のカーナビゲーション装置は、ハードディスクを備え、そのハードディスク内に地図情報や音楽・映像などのマルチメディアデータを蓄積し、それらを再生できるようになっている。また、無線装置を備え、インターネットに接続して、ネットワークを介して地図情報を更新したり、音楽・映像を入手したり、あるいは車両の走行情報等を外部のサーバーに送信するといった機能を有するものも存在している。
【0003】
また、家庭や職場内において、大量の音楽・映像などのマルチメディアデータが蓄積されたパーソナルコンピュータやハードディスクレコーダ等も広く普及してきており、これらの機器の多くは、無線LAN等によってネットワークを構成すると共に、インターネットに接続された状態となっている。
【0004】
このような背景において、車両のカーナビゲーション装置を初めとする車載機器を、無線LAN等を介して家庭や職場内のネットワークと相互に接続することで、家庭内のハードディスクレコーダに記録した映像等の情報をカーナビゲーション装置内のハードディスクに事前に転送しておくことができ、車内でそれら映像等を視聴するなど、車両の快適性を高めることができる。
【0005】
しかしながら、これらの情報を常に受信できるように、車両が停車している間も車両の無線装置を常時待ち受け状態にしておくと、車両のバッテリの電力が消費され、バッテリが上がってしまう恐れがある。
【0006】
このようなことから、車両のバッテリの電力消費を低減させるために、前述の車外の情報を受信するための第1の無線装置とは別に、より消費電力の少ない第2の無線装置を備えておき、駐車時など車両が停車しているときは、第1の無線装置の電源を切れた状態とし、第2の無線装置を常に待ち受け状態にしておき、この第2の無線装置が第1の無線装置を起動させるための起動要求信号を受信すると車両のバッテリから第1の無線装置に電力が供給され、第1の無線装置を所望の情報を受信可能な状態にする通信装置起動制御システムが提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、特許文献1では、前記通信装置起動制御システムにおいて、第2の無線装置として、車両に広く搭載されているドアの施錠・開錠を遠隔地から行うために用いるリモートコントローラの信号を受信する特定小電力無線装置を用いること、つまりキーレスエントリーシステムを利用することを提案している。
【0008】
このようにキーレスエントリーシステムを利用すれば、前記通信装置起動制御システムを安価に実現することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−131054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、一般にキーレスエントリーシステムでは、誤操作により誤って開錠され、盗難にあうといった事態を防止するため、電界強度による通信距離制限を設けており、通信可能な距離は10m程度に制限されている。
【0010】
一方で、車両に搭載された無線装置を起動させるための起動要求信号は、少なくとも家屋などの建物から車両の駐車位置までの距離で通信できることが必要で、一般的な無線LANの通信範囲である数10m程度は通信可能であることが望まれる。
【0011】
つまり、キーレスエントリーシステムをそのまま前記通信装置起動制御システムに利用すると、起動要求信号の通信可能距離が施錠・開錠信号の通信可能距離と同じ距離に制限されてしまい、起動要求信号の場合に必要とされる通信可能距離を満足することができない。
【0012】
従って、キーレスエントリーシステムを前記従来の通信装置起動制御システムに利用するためには、施錠・開錠信号の通信可能距離と起動要求信号の通信可能距離とを区別して制限することが必要であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、車両制御コードもしくは車両以外の装置を制御する装置制御コードを含む制御信号を送信する送信手段と、前記送信手段から送信された前記制御信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された前記制御信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、前記車両制御コード用として定められた第1の電界強度領域と、前記装置制御コード用として定められ、前記第1の電界強度領域とは異なる第2の電界強度領域とを記憶する記憶手段と、前記受信手段によって受信された前記制御信号に基づいて車両もしくは車両以外の装置を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記制御信号に前記車両制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記制御信号の電界強度と前記第1の電界強度領域とを比較し、前記電界強度が前記第1の電界強度領域内にあるときに、前記車両制御コードに応じた制御をし、前記制御信号に前記装置制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記電界強度と前記第2の電界強度領域とを比較し、前記電界強度が前記第2の電界強度領域内にあるときに、前記装置制御コードに応じた制御を行うものとした。
【0014】
また、本発明は、車両制御コードもしくは車両以外の装置を制御する装置制御コードを含む制御信号を送信する送信手段と、前記送信手段から送信された前記制御信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された前記制御信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、前記受信手段によって受信された前記制御信号に基づいて車両もしくは車両以外の装置を制御する制御手段とを備え、前記制御信号は、前記車両制御コードが含まれている場合は、この車両制御コード用として定められた第1の電界強度領域のデータをさらに含み、前記装置制御コードが含まれている場合は、この装置制御コード用として定められた第2の電界強度領域のデータをさらに含み、前記制御手段は、前記制御信号に前記車両制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記制御信号の電界強度と前記制御信号に含まれる第1の電界強度領域のデータとを比較し、前記電界強度が前記第1の電界強度領域内にあるときに、前記車両制御コードに応じた制御をし、前記制御信号に前記装置制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記電界強度と前記制御信号に含まれる前記第2の電界強度領域のデータとを比較し、前記電界強度が前記第2の電界強度領域内にあるときに、前記装置制御コードに応じた制御を行うものとした。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成とすることで本発明は、制御信号の通信可能距離を制限する電界強度領域を、制御信号に含まれる制御コードごとに個別に設け、制御手段が、制御コードが車両を制御する車両制御コードの場合は、検出した制御信号の電界強度と車両制御信号用に定められた電界強度領域とを比較し、また、制御コードが車両以外の装置を制御する装置制御コードの場合は、検出した制御信号の電界強度と車両以外の装置制御信号用に定められた電界強度領域とを比較し、検出した制御信号の電界強度がそれぞれ定められた電界強度領域内にあるときに、制御コードに対応する制御を行うようにしているため、制御信号に含まれる制御コードによって、つまり車両を制御する場合と車両以外の装置を制御する場合とでそれぞれ個別の通信可能距離を定めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図1及び図2を用いて説明する。なお、同様の内容についてはその説明を省略して説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車両制御システムの構成図、図2は同フローチャートである。
【0018】
図1において、1は乗用車等の車両、2は車両1の所有者等のユーザの住居である。
【0019】
ユーザ住居2内には、外部と通信可能な無線LAN装置3が接続され、HDD(Hard Disc Drive)4を備えたパーソナルコンピュータ5と、車両1のドア6の施錠を要求するドア施錠コードもしくはドア6の開錠を要求するドア開錠コード、もしくは後述する車両1に搭載された通信装置としてのカーナビゲーション装置7を情報待ち受け状態とすることを要求する起動要求コードのいずれかを含む制御信号contを送信可能な送信手段としての携帯機8が配置されている。
【0020】
パーソナルコンピュータ5は、音楽や映像等の情報をHDD4に保存しており、それら情報を無線LAN装置3によってカーナビゲーション装置7に送信することができる。
【0021】
また、携帯機8は、携帯機8に備えられた施錠ボタン9、開錠ボタン10、起動ボタン11をユーザが押すことで、それぞれドア施錠コード、ドア開錠コード、起動要求コードを含む制御信号contを送信する。
【0022】
車両1内には、外部と通信可能な無線LAN装置12と接続され、HDD13及びMPU(Micro Proccesing Unit)14を備えた通信装置としてのカーナビゲーション装置7と、携帯機8から送信された制御信号contを受信する受信手段としてのRF回路15、受信された制御信号contの電界強度を測定する電界強度検出手段としての電界強度検知回路16、ドア施錠コードもしくはドア開錠コードが含まれている制御信号contの通信可能距離を制限する第1の電界強度下限値と起動要求コードが含まれている制御信号contの通信可能距離を制限する第2の電界強度下限値とを記憶する記憶手段としてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)17、制御信号contに含まれる制御コードの種類に応じて、ドア6の施錠及び開錠を行うアクチュエータ18の制御及びカーナビゲーション装置7の情報待ち受け状態の起動制御を行う制御手段としてのMPU19からなるキーレスECU(Electrical Control Unit)20とが備わっている。
【0023】
キーレスECU20は、携帯機8から送信された制御信号contを受信すると、その制御信号contの電界強度の測定と制御信号contに含まれる制御コードの種類の判別をし、測定した電界強度が、制御コードがドア施錠コードもしくはドア開錠コードの場合は第1の電界強度下限値よりも大きいときにドア6の施錠もしくは開錠を行うよう制御し、制御コードが起動要求コードの場合には第2の電界強度よりも大きいときに起動要求コードに応じた制御を行う。
【0024】
カーナビゲーション装置7は、車両走行時などイグニッションがオンのときは、無線LAN装置12が情報待ち受け状態となっているが、駐車時などイグニッションがオフのときは、バッテリの電力消費を削減するため、通常は無線LAN装置12の電源が切れた状態となっている。そして、車内ネットワーク21を介してキーレスECU20から情報待ち受け状態の起動信号wakeが送信されたときに、無線LAN装置12が起動し、パーソナルコンピュータ5から送信されたデータを受信することが可能な状態となる。受信可能となったカーナビゲーション装置7は、無線LAN装置3から送信されてきたパーソナルコンピュータ5の情報を、無線LAN装置12によって受信し、その情報をHDD13に保存することができる。HDD13に保存された情報は、例えばその情報が映像である場合には、カーナビゲーション装置を操作することでユーザーはその映像の視聴を行うことができる。
【0025】
ここで、EEPROM17に記憶された第1の電界強度下限値は、誤作動による盗難防止のために、ドア施錠コードもしくはドア開錠コードを含む制御信号contの通信可能距離が10m程度となるように設定されている。つまり、例えば車両1から30m離れた箇所において、ユーザが携帯機8の開錠ボタン10をプッシュしたとしても、送信された制御信号contが車両1に到達した際の電界強度が、第1の電界強度下限値以下になるので、キーレスECU20は制御信号contを受信してもアクチュエータ18にドア6を開錠させる信号を発信しないので、ドア6の開錠は行われない。一方、カーナビゲーション装置7を制御する場合はドア施錠・開錠のように盗難という問題がないので、第2の電界強度下限値は、起動要求コードを含む制御信号contの通信可能距離が車両1とユーザ住居2との間の距離(数10m)となるように第1の電界強度下限値よりも低く設定されている。つまり、同様に車両1から30m離れた箇所において、ユーザが携帯機8の起動ボタン11をプッシュすると、送信された制御信号contが車両1に到達した際の電界強度は第2の電界強度下限値よりも大きくなるので、キーレスECU20は起動要求コードに応じてカーナビゲーション装置7に起動信号wakeを発信し、カーナビゲーション装置7を情報待ち受け状態とすることができる。
【0026】
次に、図2のフローチャートを用いて本実施の形態におけるキーレスECU20の動作を以下に説明する。
【0027】
まず、本実施の形態におけるキーレスECU20では、処理が開始されると、S101において、車両1に搭載されたキーレスECU20のRF回路15が、携帯機8から送信された制御信号contの受信を開始したか否かがMPU19によって判断される。
【0028】
そして、携帯機8から制御信号contが送信され、RF回路15が受信を開始したと判断された場合(S101のYES)は、受信された制御信号contの電界強度が電界強度検知回路16にて測定される(S102)。一方、受信が開始されていないと判断された場合(S101のNO)は、再びS101に戻り、MPU19はRF回路15が受信を開始したか否かの判断を行う。すなわち、この判断動作は、RF回路15が制御信号contの受信を開始したと判断されるまで継続して行われるのであり、この結果、キーレスECU20はRF回路15が制御信号contの受信を開始することを待ち受けることになる。
【0029】
ただし、消費電力を低減させるために、MPU19が、RF回路15が受信を開始していないと判断した場合、MPU19は、S101に戻る前に一旦動作を停止しスリープ状態となった後に判断動作を行うように設定されている。例えば、本実施の形態のキーレスECU20では、MPU19はS101に戻る前に150ms程の間動作を停止するように設定されており、このように、MPU19が連続的に判断動作を行うのではなく、間欠的に行うことで消費電力を低減している。
【0030】
なお、このようにMPU19が間欠的に判断動作を繰り返し、RF回路15による制御信号contの受信開始を待ち受ける状態を、以下では「待ち受け状態」と称する。
【0031】
次に、S102での電界強度測定後、MPU19は、この測定された電界強度と予め設定された電界強度基準値とを比較し(S103)、測定された電解強度が電界強度基準値よりも大きい場合にはRF回路15による制御信号contの受信を継続するように制御する(S103のNO)。一方、測定された電解強度が電界強度基準値以下の場合(S103のYES)には、MPU19は、RF回路15による制御信号contの受信を中止(S104)し、キーレスECU20が待ち受け状態となるように制御する。
【0032】
ここで、電界強度基準値は、EEPROM17に記憶された電界強度下限値のうち最も低い電界強度下限値(本実施の形態においては第2の電界強度下限値)以下に設定されている。
【0033】
つまり、上記のように設定された電界強度基準値よりも測定された電界強度が低い場合は、制御信号contに含まれる制御コードがドア施錠コード、ドア開錠コード、起動要求コードのいずれであったとしても、後のステップのS107において、必ず測定された電界強度はEEPROM17に記憶された電界強度下限値よりも低いと判断され、MPU19はキーレスECU20が待ち受け状態となるように制御するので、これらの余計な処理を省くため、制御信号contの受信が完了し、その制御信号contに含まれる制御コードの種類を判断する前に、S103の時点でキーレスECU20が待ち受け状態となるように制御している。
【0034】
このように電界強度基準値を予め設定しておき、S103を設けることで、例えばノイズなどにより誤って受信を判断した場合に、全ての受信を完了するより前に受信を打ち切ることができるため、その分の電力消費の削減をすることができる。
【0035】
S103において受信が継続された場合は、制御信号contの受信が完了するまで受信を継続する(S105)。
【0036】
そして、RF回路15にて受信が完了すると、MPU19は、その制御信号contに含まれる制御コードを判別し、その制御コードがドア施錠コードもしくはドア開錠コードであった場合は第1の電界強度下限値を、また起動要求コードであった場合は第2の電界強度下限値をEEPROM17から取得し(S106)、電界強度検知回路16にて測定された電界強度と取得した電界強度下限値とを比較する(S107)。
【0037】
測定された電界強度が比較した電界強度下限値よりも大きい場合(S107のNO)には、MPU19にて信号の認証が実施される(S108)。一方、電界強度が比較した電界強度下限値以下の場合(S107のYES)には、信号処理を中止し、キーレスECU20は待ち受け状態となる。
【0038】
S108での認証後、この認証が成功か否かがMPU19によって判断され(S109)、成功した場合(S109のYES)には続けて制御コードの種類が判断され(S110)、認証に失敗した場合(S109のNO)にはキーレスECU20は待ち受け状態となる。
【0039】
そして、S110において制御コードが起動要求コードと判断された場合は、カーナビゲーション装置7を情報待ち受け状態とする起動信号wakeがMPU19から送信され(S111)、ドア施錠コードもしくはドア開錠コードと判断された場合は、ドア6の施錠、開錠をアクチュエータ18に行わせる信号が発信される(S112、S113)。
【0040】
S111〜S113の処理が終了した後は、キーレスECU20は再び待ち受け状態となる。
【0041】
以上のように本実施の形態においては、制御コードがドア施錠コードもしくはドア開錠コードの場合用に第1の電界強度下限値を設け、制御コードが起動要求コードの場合用に、第1の電界強度下限値よりも低く設定された第2の電界強度下限値を設けることで、ドア施錠もしくは開錠を要求する信号の通信可能距離を10m程度にするとともに、カーナビゲーション装置7の情報待ち受け状態を要求する信号の通信可能距離をドア施錠・開錠要求信号よりも長い距離(例えば数10m程度)とすることができるので、車両1の盗難防止のために設けられた通信可能距離に影響されることなく、キーレスエントリーシステムを利用してカーナビゲーション装置の起動も制御することができ、車両駐車時等のイグニッションがオフのときに電力消費を削減した安価な車両制御システムとすることができる。
【0042】
ここで、本実施の形態において、電界強度検知回路16に特定のタイミングで車両1の周囲の電波状況を測定する機能を持たせ、その電波強度に応じて、MPU19が電界強度基準値、第1および第2の電界強度下限値を動的に変更するよう構成することも可能である。例えば1分ごとに車両1の周囲の電波状況を測定しておき、電波状況が悪く制御信号contが車両1に到達しにくい場合は、S103やS107において、MPU19が、測定された電界強度と比較する電界強度値を電界強度基準値やEEPROM17に格納している電界強度下限値よりも低い電界強度値とするように構成する。このようにすることで、車両1の周囲の電波状況によらず通信可能距離を一定に保つことができる。
【0043】
また、本実施の形態において、ユーザの設定に応じて、MPU19が電界強度基準値、第1および第2の電界強度下限値を動的に変更するよう構成することも可能である。例えば、ユーザが降車時にカーナビゲーション装置7を操作し、無線LAN装置12の機能をOFFに設定すると、MPU19が、起動要求コードに対応する第2の電界強度下限値を無限大に変更するよう構成する。このようにすることで、キーレスECU20は、携帯機8と車両1との距離に関わらず、携帯機8から送信された制御信号contに応じた処理を行わないので、携帯機8の誤操作等による無線LAN装置12の起動を防ぐことができる。
【0044】
また、本実施の形態において、ドアの施錠・開錠状態などの車両状態に応じて、MPU19が電界強度基準値、第1および第2の電界強度下限値を動的に変更するよう構成することも可能である。例えば、ドアが開錠されているときには、S107において、MPU19が、測定された電界強度と比較する電界強度を、EEPROM17に格納している第1の電界強度下限値よりも低いものとするよう構成する。このように構成することで、ドアが開錠されているときはドアの施錠がより遠くから行うことができるので、ユーザの利便性を高めることができる。
【0045】
また、第2の電界強度下限値は無線LAN装置12の通信可能距離と一致するように設定することが望ましい。このように設定することで、無線LAN装置12の通信可能距離よりも遠くからの制御信号contを受け付け、無線LAN装置12を用いて通信することができないにも関わらずカーナビゲーション装置7を待ち受け状態にする事態を避けることができるため、消費電力を低減することができる。
【0046】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2において、実施の形態1と異なる点は、第1および第2の電界強度下限値のデータを携帯機8内に格納しておき、制御信号contに、送信する制御コードの種類に対応した電界強度下限値のデータを含めて送信するよう構成した点である。この構成によれば、図1においてキーレスECU20内のEEPROM17は不要になり、MPU19は、S106において電界強度下限値を受信した制御信号contから取り出し、これをS107において測定された電界強度と比較する。
【0047】
その他の形態は実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0048】
このように構成することにより、本実施の形態では、車両1ごとに制御信号contの通信可能距離が定められておらず、ユーザが有する携帯機8ごとに制御信号contの通信可能距離を定めることができるので、例えばディーラーにおけるメンテナンス用の携帯機8では通信距離制限をなくすなど、携帯機を所有しているユーザ毎に通信可能距離を変更することが容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように本発明に係る車両制御システムは、車両を制御する場合と車両以外の装置を制御する場合とでそれぞれ個別の通信可能距離を定めることができるので、盗難防止機能をもったキーレスエントリーシステムを、電力消費を削減した通信装置起動制御システムに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態の車両制御システムの構成図
【図2】本発明の一実施の形態の車両制御システムの動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0051】
1 車両
2 ユーザ住居
3 無線LAN装置
4 HDD
5 パーソナルコンピュータ
6 ドア
7 カーナビゲーション装置
8 携帯機
9 施錠ボタン
10 開錠ボタン
11 起動ボタン
12 無線LAN装置
13 HDD
14 MPU
15 RF回路
16 電界強度検知回路
17 EEPROM
18 アクチュエータ
19 MPU
20 キーレスECU
21 車内ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御コードもしくは車両以外の装置を制御する装置制御コードを含む制御信号を送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された前記制御信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記制御信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、
前記車両制御コード用として定められた第1の電界強度領域と、前記装置制御コード用として定められ、前記第1の電界強度領域とは異なる第2の電界強度領域とを記憶する記憶手段と、
前記受信手段によって受信された前記制御信号に基づいて車両もしくは車両以外の装置を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記制御信号に前記車両制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記制御信号の電界強度と前記第1の電界強度領域とを比較し、前記電界強度が前記第1の電界強度領域内にあるときに、前記車両制御コードに応じた制御をし、
前記制御信号に前記装置制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記電界強度と前記第2の電界強度領域とを比較し、前記電界強度が前記第2の電界強度領域内にあるときに、前記装置制御コードに応じた制御を行う
車両制御システム。
【請求項2】
前記第1の電界強度領域は第1の電界強度下限値であり、前記第2の電界強度領域は第2の電界強度下限値であり、
前記制御手段は、前記制御信号に前記車両制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記制御信号の電界強度と前記第1の電界強度下限値とを比較し、前記電界強度が前記第1の電界強度下限値よりも大きいときに、前記車両制御コードに応じた制御をし、
前記制御信号に前記装置制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記電界強度と前記第2の電界強度下限値とを比較し、前記電界強度が前記第2の電界強度下限値よりも大きいときに、前記装置制御コードに応じた制御を行う
請求項1記載の車両制御システム。
【請求項3】
車両以外の装置は、データを送受信する通信装置であり、
前記車両制御コードは、前記車両のドアの施錠を要求するドア施錠コード、もしくは前記車両のドアの開錠を要求するドア開錠要求コードであり、
前記装置制御コードは、前記通信装置の起動を要求する起動要求コードである
請求項1記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記電界強度検出手段によって検出された前記制御信号の電界強度と、前記記憶手段に記憶された前記第1の電界強度領域もしくは前記第2の電界強度領域とを比較する前に、前記電界強度と予め設定された電界強度基準値とを比較し、
前記電界強度が前記電界強度基準値よりも大きいときに、前記受信手段における前記制御信号の受信モードを継続するように制御する予備チェック機能を付加した
請求項1記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記制御手段は、特定のタイミングで測定された車両の電波状況に応じて、前記検出された電界強度と比較する電界強度領域の下限値を、前記記憶手段に記憶される前記第1の電界強度領域や前記第2の電界強度領域の下限値よりも低い電界強度値とする請求項1記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記制御手段は、通信装置が所定の状態のときに、前記検出された電界強度と比較する電界強度領域の下限値を、無限大とする請求項3記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記第2の電界強度下限値は、前記起動要求コードを含む前記制御信号の通信可能距離が前記通信装置の通信可能距離と等しくなるように設定されている請求項3記載の車両制御システム。
【請求項8】
車両制御コードもしくは車両以外の装置を制御する装置制御コードを含む制御信号を送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された前記制御信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記制御信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、
前記受信手段によって受信された前記制御信号に基づいて車両もしくは車両以外の装置を制御する制御手段と
を備え、
前記制御信号は、前記車両制御コードが含まれている場合は、この車両制御コード用として定められた第1の電界強度領域のデータをさらに含み、前記装置制御コードが含まれている場合は、この装置制御コード用として定められた第2の電界強度領域のデータをさらに含み、
前記制御手段は、前記制御信号に前記車両制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記制御信号の電界強度と前記制御信号に含まれる第1の電界強度領域のデータとを比較し、前記電界強度が前記第1の電界強度領域内にあるときに、前記車両制御コードに応じた制御をし、
前記制御信号に前記装置制御コードが含まれている場合には、前記電界強度検出手段によって検出された前記電界強度と前記制御信号に含まれる前記第2の電界強度領域のデータとを比較し、前記電界強度が前記第2の電界強度領域内にあるときに、前記装置制御コードに応じた制御を行う
車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−250009(P2009−250009A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103320(P2008−103320)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】