車両制御装置
【課題】運転者の感覚に合ったエンジンの始動制御を実行できる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】エンジンと、エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、を備え、エンジンの停止中に手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたとき(S22−N)に、クラッチの滑り量が大きい場合(S23−Y)はエンジンの始動を許容(S24)し、滑り量が小さい場合(S23−N)はエンジンの始動を禁止する。
【解決手段】エンジンと、エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、を備え、エンジンの停止中に手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたとき(S22−N)に、クラッチの滑り量が大きい場合(S23−Y)はエンジンの始動を許容(S24)し、滑り量が小さい場合(S23−N)はエンジンの始動を禁止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの始動や停止を自動的に行う技術が提案されている。例えば、特許文献1には、トランスミッションがニュートラル位置にない時に、クラッチペダルが完全に作動された位置から離れると、ドライブユニットが始動に切り替わる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−156619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの始動制御を運転者の感覚に合ったものとすることについて、なお改良の余地がある。例えば、シフトレバーやクラッチペダル等に対する操作順序あるいは操作タイミングは運転者によって異なる場合があり、エンジン始動の可否や始動タイミングを操作に応じて適切に決定できないと運転者に違和感を与える虞がある。運転者の感覚に合ったエンジンの始動制御を実行できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、運転者の感覚に合ったエンジンの始動制御を実行できる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両制御装置は、エンジンと、前記エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、を備え、前記エンジンの停止中に前記手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたときに、前記クラッチの滑り量が大きい場合は前記エンジンの始動を許容し、前記滑り量が小さい場合は前記エンジンの始動を禁止することを特徴とする。
【0007】
上記車両制御装置において、前記クラッチに対する操作が開始されてからの経過時間に基づいて前記エンジンの始動を許容するか否かを決定することが好ましい。
【0008】
上記車両制御装置において、前記クラッチのストロークに基づいて前記エンジンの始動を許容するか否かを決定することが好ましい。
【0009】
上記車両制御装置において、前記エンジンの始動が禁止されていることを前記運転者に知らせることが好ましい。
【0010】
本発明の車両制御装置は、エンジンと、前記エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、を備え、前記エンジンの停止中に前記手動変速機に対してニュートラルから走行用のシフトポジションへの操作、および前記クラッチを係合させる操作がなされたときに、前記クラッチを係合させる操作が開始されてから前記走行用のシフトポジションへの操作がなされるまでの経過時間が短い場合、前記エンジンの始動を許容し、前記経過時間が長い場合、前記エンジンの始動を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両制御装置は、エンジンの停止中に手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたときに、クラッチの滑り量が大きい場合はエンジンの始動を許容し、滑り量が小さい場合はエンジンの始動を禁止する。本発明に係る車両制御装置によれば、操作に応じて適切にエンジン始動の可否を決定することができ、運転者の感覚に合ったエンジンの始動制御を実行できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、クラッチペダルのストロークを示す図である。
【図3】図3は、基本的なエンジン停止始動制御のエンジン停止制御を示すフローチャートである。
【図4】図4は、基本的なエンジン停止始動制御の説明図である。
【図5】図5は、第一停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第一停止始動制御の説明図である。
【図7】図7は、第二停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャートである。
【図8】図8は、第二停止始動制御の説明図である。
【図9】図9は、第三停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第三停止始動制御の説明図である。
【図11】図11は、停止始動制御の組合せに係るエンジン停止制御を示すフローチャートである。
【図12】図12は、停止始動制御の組合せに係るエンジン始動制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係る車両制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
〔実施形態〕
図1から図12を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両制御装置に関する。図1は、実施形態に係る車両の概略構成を示す図、図2は、クラッチペダルのストロークを示す図、図3は、基本的なエンジン停止始動制御のエンジン停止制御を示すフローチャート、図4は、基本的なエンジン停止始動制御の説明図である。
【0015】
図1に示すように、車両100は、エンジン1、T/M(トランスミッション)2、およびECU30を備える。また、本実施形態の車両制御装置1−1は、エンジン1、T/M2およびECU30を備える。
【0016】
エンジン1は、車両100の動力源としての機能を有する。エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを回転軸の回転運動に変換して出力する。エンジン1は、T/M2を介して駆動輪7と接続されている。T/M2は、クラッチ3を有する手動変速機であり、運転者によってシフトポジションおよびクラッチ3が操作される。T/M2は、運転者の変速操作によって変速段の切替えがなされる。T/M2は、例えば、前進用の複数の変速段および後進用の変速段に変速可能なものである。T/M2のシフトレバーは、前進用の各変速段(シフトポジション)に対応する複数のレンジの他に、R(後進)レンジ、N(中立)レンジに切替え可能である。シフトレバーが各レンジにシフトされると、T/M2において対応するシフトポジションへの切替えが機械的になされる。
【0017】
クラッチ3は、運転者の操作によって係合あるいは開放するものであり、T/M2を介したエンジン1と駆動輪7との動力の伝達を接続あるいは遮断することができる。クラッチ3は、摩擦係合式のクラッチ装置であって、図2に示すクラッチペダル4に対する運転者の踏込み操作によって、完全係合状態、半係合状態あるいは開放状態に操作可能である。クラッチペダル4は、支点4aを回転中心として回動可能に支持されており、予め定められたクラッチストロークの範囲内で運転者の踏込み操作に応じて回動することができる。
【0018】
図1に戻り、T/M2の出力軸は、差動機構6を介して駆動輪7に接続されている。エンジン1が出力する動力は、T/M2および差動機構6を介して駆動輪7に伝達される。
【0019】
エンジン1には、オルタネータ8が配置されている。オルタネータ8は、エンジン1から伝達される動力によって駆動されて発電を行う発電機である。オルタネータ8によって発電された電力は、例えば、電気負荷やバッテリ5に供給される。バッテリ5は、充電および放電が可能な蓄電装置である。
【0020】
スタータ9は、供給される電力によって駆動されてエンジン1を始動する始動装置である。スタータ9は、オルタネータ8およびバッテリ5と接続されており、オルタネータ8あるいはバッテリ5の少なくともいずれか一方から電力の供給を受けることができる。
【0021】
図1に示すように、クラッチ3には、クラッチアッパースイッチ22およびクラッチロワースイッチ23が設けられている。各スイッチ22,23は、例えば、クラッチペダル4の近傍に設けられる。
【0022】
クラッチアッパースイッチ22は、クラッチペダル4が操作されていないことや、クラッチペダル4に対する踏み込みが浅い場合など、クラッチ3が完全係合状態であることを検出する。図2に示すように、クラッチアッパースイッチ22は、クラッチペダル4のストロークが第一閾値Stx以下の領域St1(以下、「小ストローク領域」と記載する。)にある場合にONを出力し、クラッチペダル4のストロークが第一閾値Stxを超えた領域である中間ストローク領域St2あるいは大ストローク領域St3にあるとOFFを出力する。小ストローク領域St1と中間ストローク領域St2との境界値としての第一閾値Stxは、クラッチ3が完全係合するクラッチストロークの範囲内の値である。クラッチアッパースイッチ22は、クラッチストロークが完全係合のストローク範囲にあることを検出する第一スイッチとしての機能を有する。
【0023】
クラッチロワースイッチ23は、クラッチペダル4が完全に踏み込まれてクラッチ3が開放状態であることを検出する。クラッチロワースイッチ23は、クラッチペダル4のストロークが第二閾値Sty以上の領域である大ストローク領域St3にある場合にONを出力し、クラッチペダル4のストロークが第二閾値Sty未満の領域である中間ストトローク領域St2あるいは小ストローク領域St1にあるとOFFを出力する。大ストローク領域St3と中間ストローク領域St2との境界値としての第二閾値Styは、クラッチ3が開放するクラッチストロークの範囲内の値である。クラッチロワースイッチ23は、クラッチストロークが開放のストローク範囲にあることを検出する第二スイッチとしての機能を有する。
【0024】
クラッチ3は、ミートポイントStmにおいて開放状態から係合状態に、あるいは係合状態から開放状態に切り替わる。ミートポイントStmは、踏み込んでいたクラッチペダル4を戻すときにクラッチ3による動力の伝達が開始されるクラッチストロークである。ミートポイントStmは、中間ストロークSt2の範囲のクラッチストロークであり、第一閾値Stxよりも大きく、かつ第二閾値Styよりも小さなクラッチストロークである。
【0025】
図1に戻り、ECU30は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU30は、エンジン1の運転、停止を含むエンジン1の動作を制御できるものである。クラッチアッパースイッチ22およびクラッチロワースイッチ23は、ECU30に接続されており、各スイッチ22,23の検出結果は、ECU30に出力される。ECU30は、クラッチアッパースイッチ22がONからOFFに変化することによってクラッチ3が開放方向に操作されたことを検出することができる。また、ECU30は、クラッチロワースイッチ23がONであることによってクラッチ3の開放を検出することができる。
【0026】
ECU30には、ブレーキスイッチ21が接続されている。ブレーキスイッチ21は、ブレーキペダルに対する踏込み操作の有無を検出するものである。ブレーキスイッチ21は、例えば、ブレーキペダルに対する踏込みがなされていない場合などブレーキペダルのペダルストロークが所定値未満である場合にOFFを出力し、ブレーキペダルのストロークが所定値以上であるとONを出力する。
【0027】
また、ECU30には、車輪速センサ28およびシフトポジションセンサ29が接続されている。車輪速センサ28は、車両100の各車輪の車輪回転速度を検出するものである。シフトポジションセンサ29は、T/M2のシフトポジションを検出するものである。シフトポジションセンサ29は、現在のシフトポジションが前進用の複数のシフトポジションおよび後退用のシフトポジションのいずれのシフトポジションであるかを検出することができる。また、シフトポジションセンサ29は、ニュートラルスイッチを有しており、シフトレバーが前進用あるいは後退用のいずれのレンジにも操作されていない中立(ニュートラル)のシフトポジションであることを検出することができる。
【0028】
車輪速センサ28およびシフトポジションセンサ29の検出結果を示す信号は、ECU30に出力される。ECU30は、車輪速センサ28の検出結果に基づいて車両100の車速を取得することができる。また、ECU30は、シフトポジションセンサ29の検出結果に基づいてT/M2のシフトポジションを取得することができる。
【0029】
また、ECU30には、情報提供装置31が接続されている。情報提供装置31は、エンジン1の始動が禁止されていることを音声(アラーム)やランプ(インジケータ)、画像や文字の表示等によって運転者に知らせることができる。本実施形態の車両制御装置1−1は、エンジン1を自動で停止あるいは始動するアイドルストップ制御(停止始動制御)を実行可能なものである。停止始動制御では、エンジン1の始動を禁止する始動禁止条件が予め定められている。
【0030】
車両制御装置1−1は、停止始動制御においてエンジン1の始動を行うことができない場合、情報提供装置31によって、エンジン1の始動が禁止されていることを運転者に知らせる。なお、情報提供装置31は、更に、運転者に対してエンジン1の始動を可能とする操作を促す機能を有していてもよい。例えば、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達が接続されているためにエンジン始動が禁止されている場合、クラッチ3を開放する操作あるいはシフトポジションをニュートラルとする操作を運転者に促すようにしてもよい。
【0031】
〔エンジン停止始動制御の基本的な考え方〕
図3および図4を参照して、本実施形態のエンジン停止始動制御の基本的な考え方について説明する。基本的なエンジン停止始動制御では、シフトの位置に関係なく、クラッチペダル4が完全に踏み込まれたらエンジン1を停止する。具体的には、クラッチロワースイッチ23がONを出力すると、T/M2のシフトポジションが走行用のシフトポジションであるか、あるいはニュートラルであるかにかかわらずエンジン1が停止される。これにより、従来のアイドルストップ制御ではエンジンが停止されなかったような状況において、アイドルストップに移行することができる。
【0032】
従来は、例えば、T/M2のシフトポジションがニュートラル以外であり、かつクラッチペダル4が踏み込まれていることがアイドルストップ開始の条件とされた。この場合、減速時にシフトをニュートラルにしてしまう運転者の場合、アイドルストップに移行できない事態が発生し得る。これに対して、本実施形態では、T/M2のシフト位置に関係なく、クラッチペダル4の状態に応じてアイドルストップに移行する。クラッチペダル4を踏みさえすればエンジン1が停止されることで、減速時にシフトをニュートラルにして停車するドライバーに対してもアイドルストップに移行してエンジン1を停止させることが可能となる。
【0033】
図3に示す制御フローは、例えば、車両100が停車したときや車両100の停車中に実行されるものである。この制御フローは、例えば、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0034】
まず、ステップS1では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側の状態であるか否かが判定される。ECU30は、クラッチペダル4が奥まで踏み込まれた状態であるか否かを判定する。ECU30は、クラッチロワースイッチ23がONを出力しているときにステップS1で肯定判定を行う。ステップS1の判定の結果、クラッチペダル4が奥側の状態であると判定された場合(ステップS1−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS1−N)にはステップS2に進む。
【0035】
ステップS2では、ECU30により、エンジン停止が禁止される。ECU30は、アイドルストップを禁止してエンジン1の運転を継続する。ステップS2が実行されると、本制御フローは終了する。
【0036】
ステップS3では、ECU30により、エンジン停止が許可される。ECU30は、クラッチストロークが大ストローク領域St3にあり、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達が遮断されていることから、エンジン1の停止を許可する。ECU30は、エンジン1を停止してアイドルストップに移行する。ステップS3が実行されると、本制御フローは終了する。
【0037】
また、基本的なエンジン停止始動制御では、T/M2がニュートラルである場合にエンジン停止が許可される。つまり、ECU30は、クラッチペダル4が完全に踏み込まれている条件、あるいはT/M2のシフトポジションがニュートラルである条件の少なくともいずれか一方が成立する場合、エンジン停止を許可する。なお、クラッチペダル4が完全に踏み込まれている条件とは、本実施形態ではクラッチロワースイッチ23がONを出力している条件であるが、これに限定されるものではない。クラッチペダル4が完全に踏み込まれている条件は、クラッチ3が開放している条件、およびクラッチ3が実質的に開放している条件を含むものである。
【0038】
図4には、基本的なエンジン停止始動制御の説明図が示されている。図4において、縦軸はクラッチストローク、横軸はシフト位置をそれぞれ示す。縦軸において、上に向かうほどクラッチストロークが小さく、下に向かうほどクラッチストロークが大きくなる。横軸において、右半分の領域はニュートラル(N)を示し、左半分は走行用のシフトポジションを示す。ここで、走行用のシフトポジションには、前進用の各シフトポジションおよび後退用のシフトポジション(R)が含まれる。なお、前進用の複数のシフトポジションをまとめて前進用のシフトポジション(D)とも記載する。
【0039】
本実施形態では、シフト位置とクラッチストロークとの組合せを以下の6領域に分類する。
【0040】
(1)RD1領域:シフトポジションが走行用のポジション(DあるいはR)であり、かつクラッチストロークが小ストローク領域St1にある。
(2)RD2領域:シフトポジションが走行用のポジション(DあるいはR)であり、かつクラッチストロークが中間ストローク領域St2にある。
(3)RD3領域:シフトポジションが走行用のポジション(DあるいはR)であり、かつクラッチストロークが大ストローク領域St3にある。
【0041】
(4)RN1領域:シフトポジションがニュートラル(N)であり、かつクラッチストロークが小ストローク領域St1にある。
(5)RN2領域:シフトポジションがニュートラル(N)であり、かつクラッチストロークが中間ストローク領域St2にある。
(6)RN3領域:シフトポジションがニュートラル(N)であり、かつクラッチストロークが大ストローク領域St3にある。
【0042】
ECU30は、領域RD3,RN1,RN2およびRN3ではエンジン停止を許可し、領域RD1およびRD2ではエンジン停止を禁止する。これにより、例えば、前進用のポジションDのままでクラッチペダル4を完全に踏み込んで領域RD3で停車すると、エンジン停止が許可されてアイドルストップが開始される。この状態から、シフトポジションをニュートラルとすれば、クラッチペダル4を戻してもエンジン停止は許可されたままであるため、クラッチペダル4から足を離して足を休めることができ、運転者のクラッチ操作負担が軽減できる。
【0043】
また、シフトポジションをニュートラルとしてクラッチペダル4を離した状態(領域RN1)から、矢印Y1で示すようにクラッチペダル4を完全に踏み込んでシフトレバーを走行用のレンジに操作しても、発進時にクラッチペダル4を戻し始めるまでは、エンジン1は停止されたままである。矢印Y2に示すように、シフトポジションを走行用のポジションとしたままで運転者がクラッチペダル4を戻し、クラッチロワースイッチ23がONからOFFに切り替わると、エンジン1が始動される。このように、基本的なエンジン停止始動制御では、走行用のシフトポジションにおけるクラッチ3を係合させる方向のクラッチペダル4の操作をエンジン始動のトリガー条件としている。つまり、走行用のシフトポジションにシフトした後も、クラッチ3を係合させる操作を開始するまでアイドルストップを継続することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0044】
また、矢印Y3に示すような小ストローク領域St1におけるニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作や、矢印Y4に示す中間ストローク領域St2におけるニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作がなされたとしても、エンジン始動は禁止される。これは、小ストローク領域St1や中間ストローク領域St2にある状態で走行用のシフトポジションでエンジン1を始動すると、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達がなされる状態でエンジン1が始動されてしまう虞があるためである。
【0045】
基本的なエンジン停止始動制御では、ニュートラル以外の走行用のシフトポジションでクラッチペダル4をリリースし始める操作を運転者の発進意思とする。これにより、シフトポジションがニュートラルのままでクラッチペダル4を踏んだり戻したりするだけではエンジン1が始動されない。また、クラッチペダル4が完全に踏み込まれてエンジン1と駆動輪7との動力の伝達が遮断されている状態であれば、ニュートラルと走行用のシフトポジションとの間のシフト操作がなされてもエンジン1が始動されない。よって、アイドルストップの継続時間を延長することができ、燃費の向上を図ることができる。また、走行用のシフトポジションでクラッチペダル4が戻されるときにはエンジン1が始動されて車両100が発進可能となるため、運転者の感覚に合致したタイミングでエンジン1を始動することができる。
【0046】
ここで、中間ストローク領域St2ではニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作(Y4)がなされてもエンジン1の始動を許可しないとすると、クラッチペダル4を完全に踏み込まずに中間ストローク領域St2でシフト操作を行うような運転者は、エンジン始動の制御に対して違和感を覚える可能性がある。
【0047】
〔第一停止始動制御〕
本実施形態の車両制御装置1−1は、基本的なエンジン停止始動制御に加えて、あるいは基本的なエンジン停止始動制御に代えて、第一停止始動制御を実行することができる。図5は、第一停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャート、図6は、第一停止始動制御の説明図である。
【0048】
図6に示すように、第一停止始動制御では、領域RN2、すなわちシフトポジションがニュートラルでかつクラッチストロークが中間ストローク領域St2にある場合、原則的にエンジン停止が禁止される。これにより、RN2領域でエンジン1を運転させておくことが可能となり、運転者のシフト操作(矢印Y4のシフト操作)に対してエンジン始動が禁止される場面の発生を未然に防ぐことで運転者の感覚に合ったエンジン始動制御とすることができる。
【0049】
また、短時間でRN2領域を通過するようなクラッチ操作に対しては、エンジン停止状態が維持される。例えば、エンジン1が停止されてRN1領域にある状態から、短時間でクラッチペダル4を完全に踏み込む操作がなされた場合、RN2領域を通過してもエンジン1は始動されず、エンジン1は停止状態に保たれる。つまり、車両制御装置1−1は、シフトポジションがニュートラルの状態で、エンジン1の停止中にクラッチ3が開放方向に操作されたときに、短い時間でクラッチ3が開放すればエンジン1を停止したままとし、短い時間でクラッチ3が開放しなければエンジン1を始動させる。これにより、アイドルストップ中にクラッチ操作をする度にエンジン1が始動されてしまうようなことを抑制し、運転者の感覚に合ったエンジン始動制御を実現することができる。また、アイドルストップ時間の延長を図ることができる。
【0050】
例えば、シフトポジションがニュートラルでクラッチペダル4を離した状態から、シフトをニュートラル以外にして発進に備えて待機するためにクラッチペダル4を踏み込む場合に、短時間でクラッチペダル4を完全に踏み込めばエンジン停止が継続されたままとなる。走行用のシフトポジションで待機した状態からクラッチペダル4の戻し操作(Y2)を行うまでエンジン停止が継続されるため、アイドルストップ時間を可能な限り長くすることが可能となる。
【0051】
図5を参照して、第一停止始動制御の始動制御について説明する。図5に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0052】
まず、ステップS11では、ECU30により、エンジン1が停止状態であるか否かが判定される。その判定の結果、エンジン停止状態であると判定された場合(ステップS11−Y)にはステップS12に進み、そうでない場合(ステップS11−N)には本制御フローは終了する。
【0053】
ステップS12では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。ECU30は、シフトポジションセンサ29の検出結果に基づいてステップS12の判定を行うことができる。ステップS12の判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS12−Y)にはステップS13に進み、そうでない場合(ステップS12−N)にはステップS14に進む。
【0054】
ステップS13では、ECU30により、クラッチ中間位置状態が規定時間(所定時間)以上経過したか否かが判定される。ステップS13では、クラッチ3が開放方向に操作されてから所定時間内で開放したか否かが判定される。ECU30は、クラッチアッパースイッチ22およびクラッチロワースイッチ23がいずれもOFFを出力している状態、すなわちクラッチストロークが中間ストローク領域St2にある状態が規定時間以上継続しているか否かを判定する。規定時間は、適合実験等に基づいて適宜定めることができる。規定時間は、例えば、800msとされてもよい。
【0055】
ステップS13の判定の結果、クラッチ中間位置状態が規定時間以上経過したと判定された場合(ステップS13−Y)にはステップS15に進み、そうでない場合(ステップS13−N)には本制御フローは終了する。
【0056】
ステップS14では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側状態から奥側ではない状態に変化したか否かが判定される。ECU30は、クラッチロワースイッチ23の出力がONからOFFに変化した場合にステップS14で肯定判定を行う。ステップS14の判定の結果、クラッチペダル4が奥側状態から奥側ではない状態に変化したと判定された場合(ステップS14−Y)にはステップS15に進み、そうでない場合(ステップS14−N)には本制御フローは終了する。
【0057】
ステップS15では、ECU30により、エンジン1が始動される。ECU30は、例えば、ステップS13で肯定判定がなされてステップS15を実行する場合、停止していたエンジン1を再始動する。これにより、中間ストローク領域St2でエンジン1を運転状態としておくことができる。よって、運転者が中間ストローク領域St2でニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作を行った場合、即座に車両100を発進させることができる。
【0058】
また、ステップS14で肯定判定がなされてステップS15を実行する場合、ECU30は、エンジン1を始動する。シフトポジションが走行用のポジションであって、かつ、クラッチペダル4が奥側状態でなくなった(図6の矢印Y2参照)ことから、運転者の発進意思に対応する操作が検出されたとしてエンジン1が始動される。ステップS15が実行されると、本制御フローは終了する。
【0059】
第一停止始動制御によれば、中間ストローク領域St2におけるシフト操作(Y4)に対するエンジン始動禁止を未然に抑制することと、アイドルストップ時間の延長との両立を図ることができる。中間ストローク領域St2でシフトチェンジがなされるケースに対しては予めエンジン1を始動して走行用のシフトポジションへのシフト操作に備えておくことができ、クラッチペダル4を完全に踏み込んでシフトチェンジするケースに対してはエンジン停止を維持することで、エンジン停止時間を長く確保することができる。
【0060】
〔第二停止始動制御〕
図7は、第二停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャート、図8は、第二停止始動制御の説明図である。
【0061】
運転者の操作によっては、基本的なエンジン停止始動制御や上記第一停止始動制御ではエンジン1の始動タイミングを精度よく決定できない場合が考えられる。例えば、シフトポジションがニュートラルで運転者がクラッチペダル4を完全に踏み込んだ状態(領域RN3)から、走行用のシフトポジションに操作するのと同時にクラッチペダル4がリリースされた場合(図8の矢印Y6参照)である。走行用のシフトポジションとなったことが検出される前にクラッチ3を係合させる操作がなされてクラッチロワースイッチ23がOFFとなってしまうと、基本的なエンジン停止始動制御の始動条件(Y2参照)ではエンジン始動が許可されず、図4に矢印Y4で示すシフト操作とみなされてエンジン1を始動することができない虞がある。
【0062】
また、上記第一停止始動制御(図6)では、クラッチ3が中間位置状態となってからの経過時間が短いと、エンジン1が始動されない。クラッチロワースイッチ23がOFFとなった後で、領域RN2にある時間が規定時間に達する前(エンジン始動前)にニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作(図6の矢印Y4参照)がなされてしまうと、エンジン始動が禁止される。つまり、第一停止始動制御でもエンジン1を始動することができない場面が発生する可能性がある。
【0063】
ここで、中間のクラッチストロークに操作されてからの経過時間が同じであっても、クラッチペダル4を踏み込んで中間ストロークとなった場合と、クラッチペダル4を戻して中間ストロークとなった場合とでは、クラッチ3の係合度合いや滑り量が異なると考えられる。クラッチペダル4を踏み込んで中間ストロークとなった場合、中間ストローク領域St2のストロークとなってからの経過時間が短いと、未だクラッチ3が完全係合しているなど、クラッチ3の滑り量が小さい(係合の度合いが大きい)と推定できる。従って、この場合にエンジン始動を許可することは好ましくない。
【0064】
一方、クラッチペダル4を戻して中間ストロークとなった場合、中間ストローク領域St2のストロークとなってからの経過時間が短いと、クラッチ3は未だ係合していないと推定できる。クラッチロワースイッチ23がONからOFFに切り替わる第二閾値StyからミートポイントStmまでのストロークの範囲であれば、クラッチ3は開放しており、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達が遮断された状態、すなわちクラッチ3の滑り量が最大の状態である。このストロークの範囲であれば、エンジン1の始動を許容することができる。
【0065】
第二停止始動制御では、クラッチロワースイッチ23がOFFを出力しているもののクラッチ3が係合していないと推定される間は、ニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作に対してエンジン始動を許容する。言い換えると、クラッチ3を係合させる操作が開始されてから走行用のシフトポジションへの操作がなされるまでの経過時間が短い場合、エンジン1の始動が許容され、当該経過時間が長い場合、エンジン1の始動が禁止される。よって、シフトポジションをニュートラルにしてクラッチペダル4を踏んで待機しているときに、クラッチペダル4をリリースするタイミングがシフトポジションをニュートラル以外にするタイミングより若干早くてもエンジン1を始動させることができる。第二停止始動制御は、上記の基本的なエンジン停止始動制御や第一停止始動制御に代えて、あるいは各停止始動制御と組み合わせて実行することができるものである。
【0066】
図7および図8を参照して、第二停止始動制御のエンジン始動制御について説明する。図7に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0067】
まず、ステップS21では、ECU30により、エンジン停止状態であるか否かが判定される。その判定の結果、エンジン停止状態であると判定された場合(ステップS21−Y)にはステップS22に進み、そうでない場合(ステップS21−N)には本制御フローは終了する。
【0068】
ステップS22では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。その判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS22−Y)には本制御フローは終了し、そうでない場合(ステップS22−N)にはステップS23に進む。
【0069】
ステップS23では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側ではなくなってからシフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間が規定値以下であるか否かが判定される。ECU30は、クラッチロワースイッチ23がOFFとなった時間を起点とし、シフトポジションセンサ29によって検出されるシフトポジションがニュートラルから走行用のシフトポジションに切り替わるまでの経過時間、言い換えるとクラッチペダル4に対する操作が開始されてからシフトチェンジがなされるまでの経過時間を計測している。
【0070】
この経過時間は、図8の矢印Y6で示す一連の操作において、領域RN3から領域RN2へ移行した時刻から、領域RN2から領域RD2に移行する時刻までの経過時間である。この経過時間が短い場合、領域RD2のうち、クラッチ3の開放状態に対応する領域RD22にあると推定できる。一方、上記経過時間が長い場合、既にクラッチ3は係合している可能性が高く、走行用のシフトポジションへのシフト操作がなされた時点で、領域RD2のうち、クラッチ3の係合状態に対応する領域RD21にあると推定できる。
【0071】
クラッチペダル4が奥側ではなくなってからシフトポジションがニュートラル以外になるまでの経過時間が、予め定められた規定値以下である場合、ECU30はステップS23で肯定判定を行う。この規定値は、適合実験等に基づいて適宜定められる。規定値は、例えば、800msとされてもよい。ステップS23の判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS23−Y)にはステップS24に進み、そうでない場合(ステップS23−N)には本制御フローは終了する。
【0072】
ステップS24では、ECU30により、エンジン1が始動される。ステップS24でエンジン1が始動されると、本制御フローは終了する。
【0073】
なお、図8に矢印Y5で示すように、中間ストローク領域St2のクラッチストロークとなってから走行用のシフトポジションへのシフト操作がなされるまでの経過時間が規定時間未満であっても、クラッチペダル4を踏み込むことで中間ストロークとなった場合には、エンジン始動は禁止される。
【0074】
以上説明したように、第二停止始動制御では、エンジン1の停止中に手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたときに、クラッチ3の滑り量が大きい場合はエンジン1の始動を許容し、クラッチ3の滑り量が小さい場合はエンジン1の始動を禁止する。ここで、クラッチ3の滑り量が大きい場合とは、クラッチ3が開放している場合を含むものであり、さらに、クラッチ3が係合しているものの車両100を走行させるだけの動力が駆動輪7に伝達されない場合を含むものであってもよい。クラッチ3における滑り量や滑り率が大きいことは、クラッチ3の係合度合いが小さいことに対応する。一方、クラッチ3の滑り量や滑り率が小さいことは、クラッチ3の係合度合いが大きいことに対応する。第二停止始動制御によれば、走行用のシフトポジションに操作するのと同時にクラッチペダル4がリリースされたような場合にもエンジン1の始動を許可するか否かを適切に決定することができる。
【0075】
また、本実施形態では、クラッチ3のストロークを検出するセンサとしてストロークをリニアに検出できるものではなくON/OFF式のスイッチ22,23を備えている。このため、第二停止始動制御では、クラッチペダル4が離されてから、シフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間に基づいてエンジン始動を許容するか否かが決定される。クラッチペダル4が離されてから、シフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間が短ければエンジン1が始動され、この時間が長ければエンジン始動が禁止される。
【0076】
第二停止始動制御において、クラッチペダル4が奥側ではなくなってからシフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間に加えて、ブレーキの操作状態に基づいてエンジン始動を許容するか否かが決定されてもよい。例えば、シフト操作やクラッチ操作と並行してブレーキOFFの操作がなされた場合、運転者の発進意思の確度が高まる。発進意思の確実性が高い場合、確実性が低い場合よりもステップS23の規定値を長くするようにしてもよい。このようにすれば、発進意思の確実性が高い場合にエンジン始動を許容するクラッチストロークの範囲を係合側に拡大することで、運転者の感覚に合ったエンジン1の始動制御とすることができる。なお、運転者の発進意思を示す操作は、ブレーキ操作に限定されるものではない。例えば、アクセルONの操作やパーキングブレーキをOFFとする操作は、運転者の発進意志を示す操作に含まれる。
【0077】
ステップS23の規定値は、走行環境等に基づいて可変とされてもよい。例えば、上り坂で停車しているときには、エンジン始動が禁止される頻度が少ないことが好ましい。よって、上り勾配の走路では、平坦路におけるよりもステップS23の規定値が長くされるようにしてもよい。また、上り勾配の走路では、クラッチペダル4が奥側ではなくなってからシフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間にかかわらずエンジン始動が許容されるようにしてもよい。
【0078】
なお、車両制御装置1−1がクラッチストロークをリニアに検出できるクラッチストロークセンサを備えるようにすれば、クラッチストロークに基づいてエンジン始動を許容できるか否かを精度よく判定することができる。例えば、シフトポジションがニュートラルからニュートラル以外に入った瞬間に、そのときのクラッチ3の位置(クラッチストローク)と変化スピードを検出する。この検出結果から、エンジン1の始動を行った場合にエンジン1が始動するまでにクラッチミートポイントStmに到達するか否かを判定することができる。エンジン1が始動するまでにミートポイントStmに到達しないと予測されたときのみエンジン始動を許容するようにすればよい。このようにすれば、実際のクラッチ操作に基づくことで、ミートポイントStmに到達する前にエンジン1を始動できるか否かを精度よく予測することができる。
【0079】
〔第三停止始動制御〕
図9は、第三停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャート、図10は、第三停止始動制御の説明図である。
【0080】
第三停止始動制御では、クラッチ3の状態に代えて、あるいはクラッチ3の状態に加えて、ブレーキの操作状態に基づいてエンジン始動判定がなされる。具体的には、シフトポジションが走行用のポジションで、かつクラッチペダル4が完全に踏み込まれている場合、ブレーキONのときのみエンジン1が停止される。すなわち、走行用のポジションで、かつクラッチペダル4が完全に踏み込まれている場合、ブレーキOFFをトリガー条件としてエンジン1が自動始動される。これにより、エンジン始動時のもたつき感を抑制することができる。
【0081】
一連の発進操作において、運転者は、シフトポジションをニュートラル以外の走行用のポジションとしてクラッチペダル4を完全に踏み込んでいる状態から、まずブレーキペダルを離してアクセルペダルを踏み、その後にクラッチペダル4をリリースすることが多い。この場合、ブレーキOFFに応じてエンジン1を始動するようにすれば、クラッチペダル4のリリースに応じてエンジン1を始動する場合よりも早いタイミングでエンジン1を始動することができる。その結果、車両100の発進時の応答性を向上させることができる。
【0082】
また、ブレーキの操作状態に基づくエンジン始動判定は、シフトポジションがニュートラル以外の走行用のポジションである場合に限り有効とされる。シフトポジションがニュートラルの場合、ブレーキの操作状態と運転者の発進意思との関連度合いは高くない。一例として、ニュートラルでブレーキペダルを踏んで待機中に、パーキングブレーキを作動させてブレーキペダルを戻す操作がなされることがある。このときのブレーキOFFの操作は、運転者の発進意思を示すものではない。よって、ニュートラルにおいてブレーキ操作をエンジン1の自動停止条件としてしまうと、運転者の意思とは離れてエンジン1の始動/停止がなされてしまうことになりかねない。
【0083】
第三停止始動制御では、シフトポジションがニュートラルの場合のエンジン始動条件は、ブレーキの操作状態を含んでいない。つまり、ニュートラルの場合はブレーキの操作状態にかかわらず、クラッチ操作あるいはシフト操作の少なくともいずれか一方に基づいてエンジン1の自動始動が行われる。よって、運転者の感覚に合ったエンジン停止始動制御を行うことができる。
【0084】
なお、第三停止始動制御では、基本的なエンジン停止始動制御と同様に、エンジン1の自動停止は、クラッチ3が開放している条件、あるいはシフトポジションがニュートラルである条件の少なくともいずれか一方に基づいて行う。
【0085】
図9および図10を参照して、第三停止始動制御のエンジン始動制御について説明する。図9に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0086】
まず、ステップS31では、ECU30により、エンジン停止状態であるか否かが判定される。その判定の結果、エンジン停止状態であると判定された場合(ステップS31−Y)にはステップS32に進み、そうでない場合(ステップS31−N)には本制御フローは終了する。
【0087】
ステップS32では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。その判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS32―Y)には本制御フローは終了し、そうでない場合(ステップS32−N)にはステップS33に進む。
【0088】
ステップS33では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側状態ではないか否かが判定される。その判定の結果、クラッチペダル4が奥側状態ではないと判定された場合(ステップS33−Y)にはステップS35に進み、そうでない場合(ステップS33−N)にはステップS34に進む。なお、ステップS33では、上記ステップS14と同様に、クラッチペダル4が奥側の状態から奥側でない状態に変化した場合に肯定判定を行うようにしてもよい。
【0089】
ステップS34では、ECU30により、ブレーキ離状態であるか否かが判定される。ステップS34では、ブレーキペダルを戻す操作がなされたか否かが判定される。この判定は、ブレーキ操作量の絶対量に基づいてなされても、ブレーキ操作量の変化に基づいてなされてもよい。ブレーキ操作量の絶対量に基づいてブレーキ離状態であるかを判定する場合、例えば、ブレーキスイッチ21の検出結果が参照される。ECU30は、例えば、ブレーキスイッチ21がOFFを出力している場合にステップS34で肯定判定を行う。
【0090】
ブレーキ操作量の変化に基づいてブレーキ離状態であるかを判定する場合、ブレーキストロークやブレーキ踏力等のブレーキ操作量を検出するセンサの検出結果を参照するようにすればよい。ECU30は、ブレーキペダルを戻す操作に対応するブレーキ操作量の変化が検出された場合に、ステップS34で肯定判定を行う。
【0091】
ステップS34の判定の結果、ブレーキ離状態であると判定された場合(ステップS34−Y)にはステップS35に進み、そうでない場合(ステップS34−N)には本制御フローは終了する。
【0092】
ステップS35では、ECU30により、エンジン1が始動される。ステップS35でエンジン1が始動されると、本制御フローは終了する。
【0093】
このように、第三停止始動制御では、エンジン1の自動始動は、ブレーキの操作状態を含む条件に基づいて行われる。シフトポジションがニュートラルでない(S32−N)場合、クラッチペダル4のリリース操作(S33−Y)あるいはブレーキ戻し操作(S34−Y)のいずれか先に検出された操作に応じてエンジン1が始動(S35)される。よって、運転者によって異なる発進操作の操作手順や操作タイミングに応じて適切なタイミングでエンジン1を始動することができる。
【0094】
ここで、クラッチペダル4を踏み込んでニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作を行う場合に、ブレーキを離したままであると、領域RN3から領域RD3へ移行するタイミングでエンジン1が始動される。このエンジン始動は、運転者にとってはシフト操作に応じてなされたかのように感じられ、運転者の感覚に合ったエンジン始動制御となる。
【0095】
なお、ステップS34の説明で述べたように、エンジン1の始動を許容するか否かを判定するブレーキの操作状態は、ブレーキOFFには限定されない。例えば、ブレーキを開放する操作がなされていることをエンジン1の始動を許容する条件としてもよい。ここで、ブレーキを開放する操作とは、ブレーキペダルのペダルストロークを減少させる操作、すなわち制動力を減少させる操作を示す。
【0096】
上記の各停止始動制御で開示された内容は、以下に説明するエンジン停止制御(図11)やエンジン始動制御(図12)のように組み合わせて実行されてもよい。
【0097】
〔停止始動制御の組合せに係るエンジン停止制御〕
図11は、停止始動制御の組合せに係るエンジン停止制御を示すフローチャートである。図11に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0098】
まず、ステップS41では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。その判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS41−Y)にはステップS42に進み、そうでない場合(ステップS41−N)にはステップS43に進む。
【0099】
ステップS42では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側状態であるか否かが判定される。その判定の結果、クラッチペダル4が奥側状態であると判定された場合(ステップS42−Y)にはステップS44に進み、そうでない場合(ステップS42−N)には本制御フローは終了する。
【0100】
ステップS43では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側状態でかつブレーキ踏状態であるかが判定される。ECU30は、例えば、ブレーキペダルを踏み込む操作がなされている場合や、ブレーキペダルのペダルストロークや踏力が増加している場合にブレーキ踏状態と判断する。ステップS43の判定の結果、クラッチペダル4が奥側状態でかつブレーキ踏状態であると判定された場合(ステップS43−Y)にはステップS44に進み、そうでない場合(ステップS43−N)には本制御フローは終了する。
【0101】
ステップS44では、ECU30により、エンジン停止が許可される。ステップS44が実行されると、本制御フローは終了する。
【0102】
〔停止始動制御の組合せに係るエンジン始動制御〕
図12は、停止始動制御の組合せに係るエンジン始動制御を示すフローチャートである。図12に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0103】
まず、ステップS51では、ECU30により、エンジン停止状態であるか否かが判定される。その判定の結果、エンジン停止状態であると判定された場合(ステップS51−Y)にはステップS52に進み、そうでない場合(ステップS51−N)には本制御フローは終了する。
【0104】
ステップS52では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。その判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS52−Y)にはステップS53に進み、そうでない場合(ステップS52−N)にはステップS54に進む。
【0105】
ステップS53では、ECU30により、クラッチ中間位置状態が規定時間以上経過したか否かが判定される。その判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS53−Y)にはステップS56に進み、そうでない場合(ステップS53−N)には本制御フローは終了する。
【0106】
ステップS54では、ECU30により、クラッチペダル4を離してから、シフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間が規定値以下であるか否かが判定される。ECU30は、クラッチロワースイッチ23がOFFとなってからシフトポジションがニュートラル以外のポジションとなるまでの時間が規定値以下であればステップS54で肯定判定を行う。ステップS54の判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS54−Y)にはステップS56に進み、そうでない場合(ステップS54−N)にはステップS55に進む。
【0107】
ステップS55では、ECU30により、ブレーキペダルが離されたか否かが判定される。ECU30は、ブレーキペダルを戻す操作が検出された場合にステップS55で肯定判定を行う。ステップS55の判定の結果、ブレーキペダルが離されたと判定された場合(ステップS55−Y)にはステップS56に進み、そうでない場合(ステップS55−N)には本制御フローは終了する。
【0108】
ステップS56では、ECU30により、エンジン1が始動される。ステップS56でエンジン1が始動されると、本制御フローは終了する。
【0109】
〔実施形態の変形例〕
上記実施形態では、エンジン1を自動で停止あるいは始動する停止始動制御が車両100の停車中に実行される場合を例に説明したが、これには限定されない。車両100の走行中にエンジン1を自動で停止あるいは始動する制御がなされてもよい。例えば、減速時にエンジン1がアイドル状態である場合に、上記実施形態の停止始動制御の自動停止条件に基づいてエンジン1を停止するようにしてもよい。また、走行中にエンジン1が停止されているときに、上記実施形態の停止始動制御の自動始動条件に基づいてエンジン1を始動するようにしてもよい。
【0110】
なお、走行中は、停車中よりもエンジン始動を迅速に行うことができることが望ましい。例えば、減速中に再加速を開始する場合、運転者の加速意思に応じて速やかにエンジン1を再始動できることが好ましい。ここで、減速中における運転者の加速意思は、ブレーキの操作状態によって最も早く検出できると考えられる。このため、走行中は、ブレーキの操作状態をエンジン始動の判定条件に含むことが好ましい。つまり、上記実施形態の各停止始動制御において、走行中のエンジン始動判定をブレーキの操作状態に基づいて行うようにすることが好ましい。例えば、第三停止始動制御において、停車中は、エンジン1の自動始動をブレーキの操作状態に基づいて行うか否かをシフトポジションに応じて変化させるようにして、走行中は、シフトポジションにかかわらずブレーキの操作状態に基づいてエンジン1の自動始動を行うようにしてもよい。
【0111】
なお、エンジン始動を許容するブレーキの操作状態に関する条件は、例えば、ブレーキオフである条件や、ブレーキを開放する操作がなされている条件とすることができる。また、エンジン始動を許容する条件は、ブレーキペダルの戻し操作がなされるなどにより減速から加速に転じたこととされてもよい。
【0112】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0113】
1−1 車両制御装置
1 エンジン
2 T/M
3 クラッチ
4 クラッチペダル
7 駆動輪
22 クラッチアッパースイッチ
23 クラッチロワースイッチ
29 シフトポジションセンサ
30 ECU
100 車両
St1 小ストローク領域
St2 中間ストローク領域
St3 大ストローク領域
Stm ミートポイント
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの始動や停止を自動的に行う技術が提案されている。例えば、特許文献1には、トランスミッションがニュートラル位置にない時に、クラッチペダルが完全に作動された位置から離れると、ドライブユニットが始動に切り替わる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−156619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの始動制御を運転者の感覚に合ったものとすることについて、なお改良の余地がある。例えば、シフトレバーやクラッチペダル等に対する操作順序あるいは操作タイミングは運転者によって異なる場合があり、エンジン始動の可否や始動タイミングを操作に応じて適切に決定できないと運転者に違和感を与える虞がある。運転者の感覚に合ったエンジンの始動制御を実行できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、運転者の感覚に合ったエンジンの始動制御を実行できる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両制御装置は、エンジンと、前記エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、を備え、前記エンジンの停止中に前記手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたときに、前記クラッチの滑り量が大きい場合は前記エンジンの始動を許容し、前記滑り量が小さい場合は前記エンジンの始動を禁止することを特徴とする。
【0007】
上記車両制御装置において、前記クラッチに対する操作が開始されてからの経過時間に基づいて前記エンジンの始動を許容するか否かを決定することが好ましい。
【0008】
上記車両制御装置において、前記クラッチのストロークに基づいて前記エンジンの始動を許容するか否かを決定することが好ましい。
【0009】
上記車両制御装置において、前記エンジンの始動が禁止されていることを前記運転者に知らせることが好ましい。
【0010】
本発明の車両制御装置は、エンジンと、前記エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、を備え、前記エンジンの停止中に前記手動変速機に対してニュートラルから走行用のシフトポジションへの操作、および前記クラッチを係合させる操作がなされたときに、前記クラッチを係合させる操作が開始されてから前記走行用のシフトポジションへの操作がなされるまでの経過時間が短い場合、前記エンジンの始動を許容し、前記経過時間が長い場合、前記エンジンの始動を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両制御装置は、エンジンの停止中に手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたときに、クラッチの滑り量が大きい場合はエンジンの始動を許容し、滑り量が小さい場合はエンジンの始動を禁止する。本発明に係る車両制御装置によれば、操作に応じて適切にエンジン始動の可否を決定することができ、運転者の感覚に合ったエンジンの始動制御を実行できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、クラッチペダルのストロークを示す図である。
【図3】図3は、基本的なエンジン停止始動制御のエンジン停止制御を示すフローチャートである。
【図4】図4は、基本的なエンジン停止始動制御の説明図である。
【図5】図5は、第一停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第一停止始動制御の説明図である。
【図7】図7は、第二停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャートである。
【図8】図8は、第二停止始動制御の説明図である。
【図9】図9は、第三停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第三停止始動制御の説明図である。
【図11】図11は、停止始動制御の組合せに係るエンジン停止制御を示すフローチャートである。
【図12】図12は、停止始動制御の組合せに係るエンジン始動制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係る車両制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
〔実施形態〕
図1から図12を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両制御装置に関する。図1は、実施形態に係る車両の概略構成を示す図、図2は、クラッチペダルのストロークを示す図、図3は、基本的なエンジン停止始動制御のエンジン停止制御を示すフローチャート、図4は、基本的なエンジン停止始動制御の説明図である。
【0015】
図1に示すように、車両100は、エンジン1、T/M(トランスミッション)2、およびECU30を備える。また、本実施形態の車両制御装置1−1は、エンジン1、T/M2およびECU30を備える。
【0016】
エンジン1は、車両100の動力源としての機能を有する。エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを回転軸の回転運動に変換して出力する。エンジン1は、T/M2を介して駆動輪7と接続されている。T/M2は、クラッチ3を有する手動変速機であり、運転者によってシフトポジションおよびクラッチ3が操作される。T/M2は、運転者の変速操作によって変速段の切替えがなされる。T/M2は、例えば、前進用の複数の変速段および後進用の変速段に変速可能なものである。T/M2のシフトレバーは、前進用の各変速段(シフトポジション)に対応する複数のレンジの他に、R(後進)レンジ、N(中立)レンジに切替え可能である。シフトレバーが各レンジにシフトされると、T/M2において対応するシフトポジションへの切替えが機械的になされる。
【0017】
クラッチ3は、運転者の操作によって係合あるいは開放するものであり、T/M2を介したエンジン1と駆動輪7との動力の伝達を接続あるいは遮断することができる。クラッチ3は、摩擦係合式のクラッチ装置であって、図2に示すクラッチペダル4に対する運転者の踏込み操作によって、完全係合状態、半係合状態あるいは開放状態に操作可能である。クラッチペダル4は、支点4aを回転中心として回動可能に支持されており、予め定められたクラッチストロークの範囲内で運転者の踏込み操作に応じて回動することができる。
【0018】
図1に戻り、T/M2の出力軸は、差動機構6を介して駆動輪7に接続されている。エンジン1が出力する動力は、T/M2および差動機構6を介して駆動輪7に伝達される。
【0019】
エンジン1には、オルタネータ8が配置されている。オルタネータ8は、エンジン1から伝達される動力によって駆動されて発電を行う発電機である。オルタネータ8によって発電された電力は、例えば、電気負荷やバッテリ5に供給される。バッテリ5は、充電および放電が可能な蓄電装置である。
【0020】
スタータ9は、供給される電力によって駆動されてエンジン1を始動する始動装置である。スタータ9は、オルタネータ8およびバッテリ5と接続されており、オルタネータ8あるいはバッテリ5の少なくともいずれか一方から電力の供給を受けることができる。
【0021】
図1に示すように、クラッチ3には、クラッチアッパースイッチ22およびクラッチロワースイッチ23が設けられている。各スイッチ22,23は、例えば、クラッチペダル4の近傍に設けられる。
【0022】
クラッチアッパースイッチ22は、クラッチペダル4が操作されていないことや、クラッチペダル4に対する踏み込みが浅い場合など、クラッチ3が完全係合状態であることを検出する。図2に示すように、クラッチアッパースイッチ22は、クラッチペダル4のストロークが第一閾値Stx以下の領域St1(以下、「小ストローク領域」と記載する。)にある場合にONを出力し、クラッチペダル4のストロークが第一閾値Stxを超えた領域である中間ストローク領域St2あるいは大ストローク領域St3にあるとOFFを出力する。小ストローク領域St1と中間ストローク領域St2との境界値としての第一閾値Stxは、クラッチ3が完全係合するクラッチストロークの範囲内の値である。クラッチアッパースイッチ22は、クラッチストロークが完全係合のストローク範囲にあることを検出する第一スイッチとしての機能を有する。
【0023】
クラッチロワースイッチ23は、クラッチペダル4が完全に踏み込まれてクラッチ3が開放状態であることを検出する。クラッチロワースイッチ23は、クラッチペダル4のストロークが第二閾値Sty以上の領域である大ストローク領域St3にある場合にONを出力し、クラッチペダル4のストロークが第二閾値Sty未満の領域である中間ストトローク領域St2あるいは小ストローク領域St1にあるとOFFを出力する。大ストローク領域St3と中間ストローク領域St2との境界値としての第二閾値Styは、クラッチ3が開放するクラッチストロークの範囲内の値である。クラッチロワースイッチ23は、クラッチストロークが開放のストローク範囲にあることを検出する第二スイッチとしての機能を有する。
【0024】
クラッチ3は、ミートポイントStmにおいて開放状態から係合状態に、あるいは係合状態から開放状態に切り替わる。ミートポイントStmは、踏み込んでいたクラッチペダル4を戻すときにクラッチ3による動力の伝達が開始されるクラッチストロークである。ミートポイントStmは、中間ストロークSt2の範囲のクラッチストロークであり、第一閾値Stxよりも大きく、かつ第二閾値Styよりも小さなクラッチストロークである。
【0025】
図1に戻り、ECU30は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU30は、エンジン1の運転、停止を含むエンジン1の動作を制御できるものである。クラッチアッパースイッチ22およびクラッチロワースイッチ23は、ECU30に接続されており、各スイッチ22,23の検出結果は、ECU30に出力される。ECU30は、クラッチアッパースイッチ22がONからOFFに変化することによってクラッチ3が開放方向に操作されたことを検出することができる。また、ECU30は、クラッチロワースイッチ23がONであることによってクラッチ3の開放を検出することができる。
【0026】
ECU30には、ブレーキスイッチ21が接続されている。ブレーキスイッチ21は、ブレーキペダルに対する踏込み操作の有無を検出するものである。ブレーキスイッチ21は、例えば、ブレーキペダルに対する踏込みがなされていない場合などブレーキペダルのペダルストロークが所定値未満である場合にOFFを出力し、ブレーキペダルのストロークが所定値以上であるとONを出力する。
【0027】
また、ECU30には、車輪速センサ28およびシフトポジションセンサ29が接続されている。車輪速センサ28は、車両100の各車輪の車輪回転速度を検出するものである。シフトポジションセンサ29は、T/M2のシフトポジションを検出するものである。シフトポジションセンサ29は、現在のシフトポジションが前進用の複数のシフトポジションおよび後退用のシフトポジションのいずれのシフトポジションであるかを検出することができる。また、シフトポジションセンサ29は、ニュートラルスイッチを有しており、シフトレバーが前進用あるいは後退用のいずれのレンジにも操作されていない中立(ニュートラル)のシフトポジションであることを検出することができる。
【0028】
車輪速センサ28およびシフトポジションセンサ29の検出結果を示す信号は、ECU30に出力される。ECU30は、車輪速センサ28の検出結果に基づいて車両100の車速を取得することができる。また、ECU30は、シフトポジションセンサ29の検出結果に基づいてT/M2のシフトポジションを取得することができる。
【0029】
また、ECU30には、情報提供装置31が接続されている。情報提供装置31は、エンジン1の始動が禁止されていることを音声(アラーム)やランプ(インジケータ)、画像や文字の表示等によって運転者に知らせることができる。本実施形態の車両制御装置1−1は、エンジン1を自動で停止あるいは始動するアイドルストップ制御(停止始動制御)を実行可能なものである。停止始動制御では、エンジン1の始動を禁止する始動禁止条件が予め定められている。
【0030】
車両制御装置1−1は、停止始動制御においてエンジン1の始動を行うことができない場合、情報提供装置31によって、エンジン1の始動が禁止されていることを運転者に知らせる。なお、情報提供装置31は、更に、運転者に対してエンジン1の始動を可能とする操作を促す機能を有していてもよい。例えば、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達が接続されているためにエンジン始動が禁止されている場合、クラッチ3を開放する操作あるいはシフトポジションをニュートラルとする操作を運転者に促すようにしてもよい。
【0031】
〔エンジン停止始動制御の基本的な考え方〕
図3および図4を参照して、本実施形態のエンジン停止始動制御の基本的な考え方について説明する。基本的なエンジン停止始動制御では、シフトの位置に関係なく、クラッチペダル4が完全に踏み込まれたらエンジン1を停止する。具体的には、クラッチロワースイッチ23がONを出力すると、T/M2のシフトポジションが走行用のシフトポジションであるか、あるいはニュートラルであるかにかかわらずエンジン1が停止される。これにより、従来のアイドルストップ制御ではエンジンが停止されなかったような状況において、アイドルストップに移行することができる。
【0032】
従来は、例えば、T/M2のシフトポジションがニュートラル以外であり、かつクラッチペダル4が踏み込まれていることがアイドルストップ開始の条件とされた。この場合、減速時にシフトをニュートラルにしてしまう運転者の場合、アイドルストップに移行できない事態が発生し得る。これに対して、本実施形態では、T/M2のシフト位置に関係なく、クラッチペダル4の状態に応じてアイドルストップに移行する。クラッチペダル4を踏みさえすればエンジン1が停止されることで、減速時にシフトをニュートラルにして停車するドライバーに対してもアイドルストップに移行してエンジン1を停止させることが可能となる。
【0033】
図3に示す制御フローは、例えば、車両100が停車したときや車両100の停車中に実行されるものである。この制御フローは、例えば、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0034】
まず、ステップS1では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側の状態であるか否かが判定される。ECU30は、クラッチペダル4が奥まで踏み込まれた状態であるか否かを判定する。ECU30は、クラッチロワースイッチ23がONを出力しているときにステップS1で肯定判定を行う。ステップS1の判定の結果、クラッチペダル4が奥側の状態であると判定された場合(ステップS1−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS1−N)にはステップS2に進む。
【0035】
ステップS2では、ECU30により、エンジン停止が禁止される。ECU30は、アイドルストップを禁止してエンジン1の運転を継続する。ステップS2が実行されると、本制御フローは終了する。
【0036】
ステップS3では、ECU30により、エンジン停止が許可される。ECU30は、クラッチストロークが大ストローク領域St3にあり、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達が遮断されていることから、エンジン1の停止を許可する。ECU30は、エンジン1を停止してアイドルストップに移行する。ステップS3が実行されると、本制御フローは終了する。
【0037】
また、基本的なエンジン停止始動制御では、T/M2がニュートラルである場合にエンジン停止が許可される。つまり、ECU30は、クラッチペダル4が完全に踏み込まれている条件、あるいはT/M2のシフトポジションがニュートラルである条件の少なくともいずれか一方が成立する場合、エンジン停止を許可する。なお、クラッチペダル4が完全に踏み込まれている条件とは、本実施形態ではクラッチロワースイッチ23がONを出力している条件であるが、これに限定されるものではない。クラッチペダル4が完全に踏み込まれている条件は、クラッチ3が開放している条件、およびクラッチ3が実質的に開放している条件を含むものである。
【0038】
図4には、基本的なエンジン停止始動制御の説明図が示されている。図4において、縦軸はクラッチストローク、横軸はシフト位置をそれぞれ示す。縦軸において、上に向かうほどクラッチストロークが小さく、下に向かうほどクラッチストロークが大きくなる。横軸において、右半分の領域はニュートラル(N)を示し、左半分は走行用のシフトポジションを示す。ここで、走行用のシフトポジションには、前進用の各シフトポジションおよび後退用のシフトポジション(R)が含まれる。なお、前進用の複数のシフトポジションをまとめて前進用のシフトポジション(D)とも記載する。
【0039】
本実施形態では、シフト位置とクラッチストロークとの組合せを以下の6領域に分類する。
【0040】
(1)RD1領域:シフトポジションが走行用のポジション(DあるいはR)であり、かつクラッチストロークが小ストローク領域St1にある。
(2)RD2領域:シフトポジションが走行用のポジション(DあるいはR)であり、かつクラッチストロークが中間ストローク領域St2にある。
(3)RD3領域:シフトポジションが走行用のポジション(DあるいはR)であり、かつクラッチストロークが大ストローク領域St3にある。
【0041】
(4)RN1領域:シフトポジションがニュートラル(N)であり、かつクラッチストロークが小ストローク領域St1にある。
(5)RN2領域:シフトポジションがニュートラル(N)であり、かつクラッチストロークが中間ストローク領域St2にある。
(6)RN3領域:シフトポジションがニュートラル(N)であり、かつクラッチストロークが大ストローク領域St3にある。
【0042】
ECU30は、領域RD3,RN1,RN2およびRN3ではエンジン停止を許可し、領域RD1およびRD2ではエンジン停止を禁止する。これにより、例えば、前進用のポジションDのままでクラッチペダル4を完全に踏み込んで領域RD3で停車すると、エンジン停止が許可されてアイドルストップが開始される。この状態から、シフトポジションをニュートラルとすれば、クラッチペダル4を戻してもエンジン停止は許可されたままであるため、クラッチペダル4から足を離して足を休めることができ、運転者のクラッチ操作負担が軽減できる。
【0043】
また、シフトポジションをニュートラルとしてクラッチペダル4を離した状態(領域RN1)から、矢印Y1で示すようにクラッチペダル4を完全に踏み込んでシフトレバーを走行用のレンジに操作しても、発進時にクラッチペダル4を戻し始めるまでは、エンジン1は停止されたままである。矢印Y2に示すように、シフトポジションを走行用のポジションとしたままで運転者がクラッチペダル4を戻し、クラッチロワースイッチ23がONからOFFに切り替わると、エンジン1が始動される。このように、基本的なエンジン停止始動制御では、走行用のシフトポジションにおけるクラッチ3を係合させる方向のクラッチペダル4の操作をエンジン始動のトリガー条件としている。つまり、走行用のシフトポジションにシフトした後も、クラッチ3を係合させる操作を開始するまでアイドルストップを継続することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0044】
また、矢印Y3に示すような小ストローク領域St1におけるニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作や、矢印Y4に示す中間ストローク領域St2におけるニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作がなされたとしても、エンジン始動は禁止される。これは、小ストローク領域St1や中間ストローク領域St2にある状態で走行用のシフトポジションでエンジン1を始動すると、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達がなされる状態でエンジン1が始動されてしまう虞があるためである。
【0045】
基本的なエンジン停止始動制御では、ニュートラル以外の走行用のシフトポジションでクラッチペダル4をリリースし始める操作を運転者の発進意思とする。これにより、シフトポジションがニュートラルのままでクラッチペダル4を踏んだり戻したりするだけではエンジン1が始動されない。また、クラッチペダル4が完全に踏み込まれてエンジン1と駆動輪7との動力の伝達が遮断されている状態であれば、ニュートラルと走行用のシフトポジションとの間のシフト操作がなされてもエンジン1が始動されない。よって、アイドルストップの継続時間を延長することができ、燃費の向上を図ることができる。また、走行用のシフトポジションでクラッチペダル4が戻されるときにはエンジン1が始動されて車両100が発進可能となるため、運転者の感覚に合致したタイミングでエンジン1を始動することができる。
【0046】
ここで、中間ストローク領域St2ではニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作(Y4)がなされてもエンジン1の始動を許可しないとすると、クラッチペダル4を完全に踏み込まずに中間ストローク領域St2でシフト操作を行うような運転者は、エンジン始動の制御に対して違和感を覚える可能性がある。
【0047】
〔第一停止始動制御〕
本実施形態の車両制御装置1−1は、基本的なエンジン停止始動制御に加えて、あるいは基本的なエンジン停止始動制御に代えて、第一停止始動制御を実行することができる。図5は、第一停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャート、図6は、第一停止始動制御の説明図である。
【0048】
図6に示すように、第一停止始動制御では、領域RN2、すなわちシフトポジションがニュートラルでかつクラッチストロークが中間ストローク領域St2にある場合、原則的にエンジン停止が禁止される。これにより、RN2領域でエンジン1を運転させておくことが可能となり、運転者のシフト操作(矢印Y4のシフト操作)に対してエンジン始動が禁止される場面の発生を未然に防ぐことで運転者の感覚に合ったエンジン始動制御とすることができる。
【0049】
また、短時間でRN2領域を通過するようなクラッチ操作に対しては、エンジン停止状態が維持される。例えば、エンジン1が停止されてRN1領域にある状態から、短時間でクラッチペダル4を完全に踏み込む操作がなされた場合、RN2領域を通過してもエンジン1は始動されず、エンジン1は停止状態に保たれる。つまり、車両制御装置1−1は、シフトポジションがニュートラルの状態で、エンジン1の停止中にクラッチ3が開放方向に操作されたときに、短い時間でクラッチ3が開放すればエンジン1を停止したままとし、短い時間でクラッチ3が開放しなければエンジン1を始動させる。これにより、アイドルストップ中にクラッチ操作をする度にエンジン1が始動されてしまうようなことを抑制し、運転者の感覚に合ったエンジン始動制御を実現することができる。また、アイドルストップ時間の延長を図ることができる。
【0050】
例えば、シフトポジションがニュートラルでクラッチペダル4を離した状態から、シフトをニュートラル以外にして発進に備えて待機するためにクラッチペダル4を踏み込む場合に、短時間でクラッチペダル4を完全に踏み込めばエンジン停止が継続されたままとなる。走行用のシフトポジションで待機した状態からクラッチペダル4の戻し操作(Y2)を行うまでエンジン停止が継続されるため、アイドルストップ時間を可能な限り長くすることが可能となる。
【0051】
図5を参照して、第一停止始動制御の始動制御について説明する。図5に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0052】
まず、ステップS11では、ECU30により、エンジン1が停止状態であるか否かが判定される。その判定の結果、エンジン停止状態であると判定された場合(ステップS11−Y)にはステップS12に進み、そうでない場合(ステップS11−N)には本制御フローは終了する。
【0053】
ステップS12では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。ECU30は、シフトポジションセンサ29の検出結果に基づいてステップS12の判定を行うことができる。ステップS12の判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS12−Y)にはステップS13に進み、そうでない場合(ステップS12−N)にはステップS14に進む。
【0054】
ステップS13では、ECU30により、クラッチ中間位置状態が規定時間(所定時間)以上経過したか否かが判定される。ステップS13では、クラッチ3が開放方向に操作されてから所定時間内で開放したか否かが判定される。ECU30は、クラッチアッパースイッチ22およびクラッチロワースイッチ23がいずれもOFFを出力している状態、すなわちクラッチストロークが中間ストローク領域St2にある状態が規定時間以上継続しているか否かを判定する。規定時間は、適合実験等に基づいて適宜定めることができる。規定時間は、例えば、800msとされてもよい。
【0055】
ステップS13の判定の結果、クラッチ中間位置状態が規定時間以上経過したと判定された場合(ステップS13−Y)にはステップS15に進み、そうでない場合(ステップS13−N)には本制御フローは終了する。
【0056】
ステップS14では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側状態から奥側ではない状態に変化したか否かが判定される。ECU30は、クラッチロワースイッチ23の出力がONからOFFに変化した場合にステップS14で肯定判定を行う。ステップS14の判定の結果、クラッチペダル4が奥側状態から奥側ではない状態に変化したと判定された場合(ステップS14−Y)にはステップS15に進み、そうでない場合(ステップS14−N)には本制御フローは終了する。
【0057】
ステップS15では、ECU30により、エンジン1が始動される。ECU30は、例えば、ステップS13で肯定判定がなされてステップS15を実行する場合、停止していたエンジン1を再始動する。これにより、中間ストローク領域St2でエンジン1を運転状態としておくことができる。よって、運転者が中間ストローク領域St2でニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作を行った場合、即座に車両100を発進させることができる。
【0058】
また、ステップS14で肯定判定がなされてステップS15を実行する場合、ECU30は、エンジン1を始動する。シフトポジションが走行用のポジションであって、かつ、クラッチペダル4が奥側状態でなくなった(図6の矢印Y2参照)ことから、運転者の発進意思に対応する操作が検出されたとしてエンジン1が始動される。ステップS15が実行されると、本制御フローは終了する。
【0059】
第一停止始動制御によれば、中間ストローク領域St2におけるシフト操作(Y4)に対するエンジン始動禁止を未然に抑制することと、アイドルストップ時間の延長との両立を図ることができる。中間ストローク領域St2でシフトチェンジがなされるケースに対しては予めエンジン1を始動して走行用のシフトポジションへのシフト操作に備えておくことができ、クラッチペダル4を完全に踏み込んでシフトチェンジするケースに対してはエンジン停止を維持することで、エンジン停止時間を長く確保することができる。
【0060】
〔第二停止始動制御〕
図7は、第二停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャート、図8は、第二停止始動制御の説明図である。
【0061】
運転者の操作によっては、基本的なエンジン停止始動制御や上記第一停止始動制御ではエンジン1の始動タイミングを精度よく決定できない場合が考えられる。例えば、シフトポジションがニュートラルで運転者がクラッチペダル4を完全に踏み込んだ状態(領域RN3)から、走行用のシフトポジションに操作するのと同時にクラッチペダル4がリリースされた場合(図8の矢印Y6参照)である。走行用のシフトポジションとなったことが検出される前にクラッチ3を係合させる操作がなされてクラッチロワースイッチ23がOFFとなってしまうと、基本的なエンジン停止始動制御の始動条件(Y2参照)ではエンジン始動が許可されず、図4に矢印Y4で示すシフト操作とみなされてエンジン1を始動することができない虞がある。
【0062】
また、上記第一停止始動制御(図6)では、クラッチ3が中間位置状態となってからの経過時間が短いと、エンジン1が始動されない。クラッチロワースイッチ23がOFFとなった後で、領域RN2にある時間が規定時間に達する前(エンジン始動前)にニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作(図6の矢印Y4参照)がなされてしまうと、エンジン始動が禁止される。つまり、第一停止始動制御でもエンジン1を始動することができない場面が発生する可能性がある。
【0063】
ここで、中間のクラッチストロークに操作されてからの経過時間が同じであっても、クラッチペダル4を踏み込んで中間ストロークとなった場合と、クラッチペダル4を戻して中間ストロークとなった場合とでは、クラッチ3の係合度合いや滑り量が異なると考えられる。クラッチペダル4を踏み込んで中間ストロークとなった場合、中間ストローク領域St2のストロークとなってからの経過時間が短いと、未だクラッチ3が完全係合しているなど、クラッチ3の滑り量が小さい(係合の度合いが大きい)と推定できる。従って、この場合にエンジン始動を許可することは好ましくない。
【0064】
一方、クラッチペダル4を戻して中間ストロークとなった場合、中間ストローク領域St2のストロークとなってからの経過時間が短いと、クラッチ3は未だ係合していないと推定できる。クラッチロワースイッチ23がONからOFFに切り替わる第二閾値StyからミートポイントStmまでのストロークの範囲であれば、クラッチ3は開放しており、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達が遮断された状態、すなわちクラッチ3の滑り量が最大の状態である。このストロークの範囲であれば、エンジン1の始動を許容することができる。
【0065】
第二停止始動制御では、クラッチロワースイッチ23がOFFを出力しているもののクラッチ3が係合していないと推定される間は、ニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作に対してエンジン始動を許容する。言い換えると、クラッチ3を係合させる操作が開始されてから走行用のシフトポジションへの操作がなされるまでの経過時間が短い場合、エンジン1の始動が許容され、当該経過時間が長い場合、エンジン1の始動が禁止される。よって、シフトポジションをニュートラルにしてクラッチペダル4を踏んで待機しているときに、クラッチペダル4をリリースするタイミングがシフトポジションをニュートラル以外にするタイミングより若干早くてもエンジン1を始動させることができる。第二停止始動制御は、上記の基本的なエンジン停止始動制御や第一停止始動制御に代えて、あるいは各停止始動制御と組み合わせて実行することができるものである。
【0066】
図7および図8を参照して、第二停止始動制御のエンジン始動制御について説明する。図7に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0067】
まず、ステップS21では、ECU30により、エンジン停止状態であるか否かが判定される。その判定の結果、エンジン停止状態であると判定された場合(ステップS21−Y)にはステップS22に進み、そうでない場合(ステップS21−N)には本制御フローは終了する。
【0068】
ステップS22では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。その判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS22−Y)には本制御フローは終了し、そうでない場合(ステップS22−N)にはステップS23に進む。
【0069】
ステップS23では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側ではなくなってからシフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間が規定値以下であるか否かが判定される。ECU30は、クラッチロワースイッチ23がOFFとなった時間を起点とし、シフトポジションセンサ29によって検出されるシフトポジションがニュートラルから走行用のシフトポジションに切り替わるまでの経過時間、言い換えるとクラッチペダル4に対する操作が開始されてからシフトチェンジがなされるまでの経過時間を計測している。
【0070】
この経過時間は、図8の矢印Y6で示す一連の操作において、領域RN3から領域RN2へ移行した時刻から、領域RN2から領域RD2に移行する時刻までの経過時間である。この経過時間が短い場合、領域RD2のうち、クラッチ3の開放状態に対応する領域RD22にあると推定できる。一方、上記経過時間が長い場合、既にクラッチ3は係合している可能性が高く、走行用のシフトポジションへのシフト操作がなされた時点で、領域RD2のうち、クラッチ3の係合状態に対応する領域RD21にあると推定できる。
【0071】
クラッチペダル4が奥側ではなくなってからシフトポジションがニュートラル以外になるまでの経過時間が、予め定められた規定値以下である場合、ECU30はステップS23で肯定判定を行う。この規定値は、適合実験等に基づいて適宜定められる。規定値は、例えば、800msとされてもよい。ステップS23の判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS23−Y)にはステップS24に進み、そうでない場合(ステップS23−N)には本制御フローは終了する。
【0072】
ステップS24では、ECU30により、エンジン1が始動される。ステップS24でエンジン1が始動されると、本制御フローは終了する。
【0073】
なお、図8に矢印Y5で示すように、中間ストローク領域St2のクラッチストロークとなってから走行用のシフトポジションへのシフト操作がなされるまでの経過時間が規定時間未満であっても、クラッチペダル4を踏み込むことで中間ストロークとなった場合には、エンジン始動は禁止される。
【0074】
以上説明したように、第二停止始動制御では、エンジン1の停止中に手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたときに、クラッチ3の滑り量が大きい場合はエンジン1の始動を許容し、クラッチ3の滑り量が小さい場合はエンジン1の始動を禁止する。ここで、クラッチ3の滑り量が大きい場合とは、クラッチ3が開放している場合を含むものであり、さらに、クラッチ3が係合しているものの車両100を走行させるだけの動力が駆動輪7に伝達されない場合を含むものであってもよい。クラッチ3における滑り量や滑り率が大きいことは、クラッチ3の係合度合いが小さいことに対応する。一方、クラッチ3の滑り量や滑り率が小さいことは、クラッチ3の係合度合いが大きいことに対応する。第二停止始動制御によれば、走行用のシフトポジションに操作するのと同時にクラッチペダル4がリリースされたような場合にもエンジン1の始動を許可するか否かを適切に決定することができる。
【0075】
また、本実施形態では、クラッチ3のストロークを検出するセンサとしてストロークをリニアに検出できるものではなくON/OFF式のスイッチ22,23を備えている。このため、第二停止始動制御では、クラッチペダル4が離されてから、シフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間に基づいてエンジン始動を許容するか否かが決定される。クラッチペダル4が離されてから、シフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間が短ければエンジン1が始動され、この時間が長ければエンジン始動が禁止される。
【0076】
第二停止始動制御において、クラッチペダル4が奥側ではなくなってからシフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間に加えて、ブレーキの操作状態に基づいてエンジン始動を許容するか否かが決定されてもよい。例えば、シフト操作やクラッチ操作と並行してブレーキOFFの操作がなされた場合、運転者の発進意思の確度が高まる。発進意思の確実性が高い場合、確実性が低い場合よりもステップS23の規定値を長くするようにしてもよい。このようにすれば、発進意思の確実性が高い場合にエンジン始動を許容するクラッチストロークの範囲を係合側に拡大することで、運転者の感覚に合ったエンジン1の始動制御とすることができる。なお、運転者の発進意思を示す操作は、ブレーキ操作に限定されるものではない。例えば、アクセルONの操作やパーキングブレーキをOFFとする操作は、運転者の発進意志を示す操作に含まれる。
【0077】
ステップS23の規定値は、走行環境等に基づいて可変とされてもよい。例えば、上り坂で停車しているときには、エンジン始動が禁止される頻度が少ないことが好ましい。よって、上り勾配の走路では、平坦路におけるよりもステップS23の規定値が長くされるようにしてもよい。また、上り勾配の走路では、クラッチペダル4が奥側ではなくなってからシフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間にかかわらずエンジン始動が許容されるようにしてもよい。
【0078】
なお、車両制御装置1−1がクラッチストロークをリニアに検出できるクラッチストロークセンサを備えるようにすれば、クラッチストロークに基づいてエンジン始動を許容できるか否かを精度よく判定することができる。例えば、シフトポジションがニュートラルからニュートラル以外に入った瞬間に、そのときのクラッチ3の位置(クラッチストローク)と変化スピードを検出する。この検出結果から、エンジン1の始動を行った場合にエンジン1が始動するまでにクラッチミートポイントStmに到達するか否かを判定することができる。エンジン1が始動するまでにミートポイントStmに到達しないと予測されたときのみエンジン始動を許容するようにすればよい。このようにすれば、実際のクラッチ操作に基づくことで、ミートポイントStmに到達する前にエンジン1を始動できるか否かを精度よく予測することができる。
【0079】
〔第三停止始動制御〕
図9は、第三停止始動制御のエンジン始動制御を示すフローチャート、図10は、第三停止始動制御の説明図である。
【0080】
第三停止始動制御では、クラッチ3の状態に代えて、あるいはクラッチ3の状態に加えて、ブレーキの操作状態に基づいてエンジン始動判定がなされる。具体的には、シフトポジションが走行用のポジションで、かつクラッチペダル4が完全に踏み込まれている場合、ブレーキONのときのみエンジン1が停止される。すなわち、走行用のポジションで、かつクラッチペダル4が完全に踏み込まれている場合、ブレーキOFFをトリガー条件としてエンジン1が自動始動される。これにより、エンジン始動時のもたつき感を抑制することができる。
【0081】
一連の発進操作において、運転者は、シフトポジションをニュートラル以外の走行用のポジションとしてクラッチペダル4を完全に踏み込んでいる状態から、まずブレーキペダルを離してアクセルペダルを踏み、その後にクラッチペダル4をリリースすることが多い。この場合、ブレーキOFFに応じてエンジン1を始動するようにすれば、クラッチペダル4のリリースに応じてエンジン1を始動する場合よりも早いタイミングでエンジン1を始動することができる。その結果、車両100の発進時の応答性を向上させることができる。
【0082】
また、ブレーキの操作状態に基づくエンジン始動判定は、シフトポジションがニュートラル以外の走行用のポジションである場合に限り有効とされる。シフトポジションがニュートラルの場合、ブレーキの操作状態と運転者の発進意思との関連度合いは高くない。一例として、ニュートラルでブレーキペダルを踏んで待機中に、パーキングブレーキを作動させてブレーキペダルを戻す操作がなされることがある。このときのブレーキOFFの操作は、運転者の発進意思を示すものではない。よって、ニュートラルにおいてブレーキ操作をエンジン1の自動停止条件としてしまうと、運転者の意思とは離れてエンジン1の始動/停止がなされてしまうことになりかねない。
【0083】
第三停止始動制御では、シフトポジションがニュートラルの場合のエンジン始動条件は、ブレーキの操作状態を含んでいない。つまり、ニュートラルの場合はブレーキの操作状態にかかわらず、クラッチ操作あるいはシフト操作の少なくともいずれか一方に基づいてエンジン1の自動始動が行われる。よって、運転者の感覚に合ったエンジン停止始動制御を行うことができる。
【0084】
なお、第三停止始動制御では、基本的なエンジン停止始動制御と同様に、エンジン1の自動停止は、クラッチ3が開放している条件、あるいはシフトポジションがニュートラルである条件の少なくともいずれか一方に基づいて行う。
【0085】
図9および図10を参照して、第三停止始動制御のエンジン始動制御について説明する。図9に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0086】
まず、ステップS31では、ECU30により、エンジン停止状態であるか否かが判定される。その判定の結果、エンジン停止状態であると判定された場合(ステップS31−Y)にはステップS32に進み、そうでない場合(ステップS31−N)には本制御フローは終了する。
【0087】
ステップS32では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。その判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS32―Y)には本制御フローは終了し、そうでない場合(ステップS32−N)にはステップS33に進む。
【0088】
ステップS33では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側状態ではないか否かが判定される。その判定の結果、クラッチペダル4が奥側状態ではないと判定された場合(ステップS33−Y)にはステップS35に進み、そうでない場合(ステップS33−N)にはステップS34に進む。なお、ステップS33では、上記ステップS14と同様に、クラッチペダル4が奥側の状態から奥側でない状態に変化した場合に肯定判定を行うようにしてもよい。
【0089】
ステップS34では、ECU30により、ブレーキ離状態であるか否かが判定される。ステップS34では、ブレーキペダルを戻す操作がなされたか否かが判定される。この判定は、ブレーキ操作量の絶対量に基づいてなされても、ブレーキ操作量の変化に基づいてなされてもよい。ブレーキ操作量の絶対量に基づいてブレーキ離状態であるかを判定する場合、例えば、ブレーキスイッチ21の検出結果が参照される。ECU30は、例えば、ブレーキスイッチ21がOFFを出力している場合にステップS34で肯定判定を行う。
【0090】
ブレーキ操作量の変化に基づいてブレーキ離状態であるかを判定する場合、ブレーキストロークやブレーキ踏力等のブレーキ操作量を検出するセンサの検出結果を参照するようにすればよい。ECU30は、ブレーキペダルを戻す操作に対応するブレーキ操作量の変化が検出された場合に、ステップS34で肯定判定を行う。
【0091】
ステップS34の判定の結果、ブレーキ離状態であると判定された場合(ステップS34−Y)にはステップS35に進み、そうでない場合(ステップS34−N)には本制御フローは終了する。
【0092】
ステップS35では、ECU30により、エンジン1が始動される。ステップS35でエンジン1が始動されると、本制御フローは終了する。
【0093】
このように、第三停止始動制御では、エンジン1の自動始動は、ブレーキの操作状態を含む条件に基づいて行われる。シフトポジションがニュートラルでない(S32−N)場合、クラッチペダル4のリリース操作(S33−Y)あるいはブレーキ戻し操作(S34−Y)のいずれか先に検出された操作に応じてエンジン1が始動(S35)される。よって、運転者によって異なる発進操作の操作手順や操作タイミングに応じて適切なタイミングでエンジン1を始動することができる。
【0094】
ここで、クラッチペダル4を踏み込んでニュートラルから走行用のシフトポジションへのシフト操作を行う場合に、ブレーキを離したままであると、領域RN3から領域RD3へ移行するタイミングでエンジン1が始動される。このエンジン始動は、運転者にとってはシフト操作に応じてなされたかのように感じられ、運転者の感覚に合ったエンジン始動制御となる。
【0095】
なお、ステップS34の説明で述べたように、エンジン1の始動を許容するか否かを判定するブレーキの操作状態は、ブレーキOFFには限定されない。例えば、ブレーキを開放する操作がなされていることをエンジン1の始動を許容する条件としてもよい。ここで、ブレーキを開放する操作とは、ブレーキペダルのペダルストロークを減少させる操作、すなわち制動力を減少させる操作を示す。
【0096】
上記の各停止始動制御で開示された内容は、以下に説明するエンジン停止制御(図11)やエンジン始動制御(図12)のように組み合わせて実行されてもよい。
【0097】
〔停止始動制御の組合せに係るエンジン停止制御〕
図11は、停止始動制御の組合せに係るエンジン停止制御を示すフローチャートである。図11に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0098】
まず、ステップS41では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。その判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS41−Y)にはステップS42に進み、そうでない場合(ステップS41−N)にはステップS43に進む。
【0099】
ステップS42では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側状態であるか否かが判定される。その判定の結果、クラッチペダル4が奥側状態であると判定された場合(ステップS42−Y)にはステップS44に進み、そうでない場合(ステップS42−N)には本制御フローは終了する。
【0100】
ステップS43では、ECU30により、クラッチペダル4が奥側状態でかつブレーキ踏状態であるかが判定される。ECU30は、例えば、ブレーキペダルを踏み込む操作がなされている場合や、ブレーキペダルのペダルストロークや踏力が増加している場合にブレーキ踏状態と判断する。ステップS43の判定の結果、クラッチペダル4が奥側状態でかつブレーキ踏状態であると判定された場合(ステップS43−Y)にはステップS44に進み、そうでない場合(ステップS43−N)には本制御フローは終了する。
【0101】
ステップS44では、ECU30により、エンジン停止が許可される。ステップS44が実行されると、本制御フローは終了する。
【0102】
〔停止始動制御の組合せに係るエンジン始動制御〕
図12は、停止始動制御の組合せに係るエンジン始動制御を示すフローチャートである。図12に示す制御フローは、例えば、車両100の停車中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0103】
まず、ステップS51では、ECU30により、エンジン停止状態であるか否かが判定される。その判定の結果、エンジン停止状態であると判定された場合(ステップS51−Y)にはステップS52に進み、そうでない場合(ステップS51−N)には本制御フローは終了する。
【0104】
ステップS52では、ECU30により、シフトポジションがニュートラルであるか否かが判定される。その判定の結果、シフトポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS52−Y)にはステップS53に進み、そうでない場合(ステップS52−N)にはステップS54に進む。
【0105】
ステップS53では、ECU30により、クラッチ中間位置状態が規定時間以上経過したか否かが判定される。その判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS53−Y)にはステップS56に進み、そうでない場合(ステップS53−N)には本制御フローは終了する。
【0106】
ステップS54では、ECU30により、クラッチペダル4を離してから、シフトポジションがニュートラル以外になるまでの時間が規定値以下であるか否かが判定される。ECU30は、クラッチロワースイッチ23がOFFとなってからシフトポジションがニュートラル以外のポジションとなるまでの時間が規定値以下であればステップS54で肯定判定を行う。ステップS54の判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS54−Y)にはステップS56に進み、そうでない場合(ステップS54−N)にはステップS55に進む。
【0107】
ステップS55では、ECU30により、ブレーキペダルが離されたか否かが判定される。ECU30は、ブレーキペダルを戻す操作が検出された場合にステップS55で肯定判定を行う。ステップS55の判定の結果、ブレーキペダルが離されたと判定された場合(ステップS55−Y)にはステップS56に進み、そうでない場合(ステップS55−N)には本制御フローは終了する。
【0108】
ステップS56では、ECU30により、エンジン1が始動される。ステップS56でエンジン1が始動されると、本制御フローは終了する。
【0109】
〔実施形態の変形例〕
上記実施形態では、エンジン1を自動で停止あるいは始動する停止始動制御が車両100の停車中に実行される場合を例に説明したが、これには限定されない。車両100の走行中にエンジン1を自動で停止あるいは始動する制御がなされてもよい。例えば、減速時にエンジン1がアイドル状態である場合に、上記実施形態の停止始動制御の自動停止条件に基づいてエンジン1を停止するようにしてもよい。また、走行中にエンジン1が停止されているときに、上記実施形態の停止始動制御の自動始動条件に基づいてエンジン1を始動するようにしてもよい。
【0110】
なお、走行中は、停車中よりもエンジン始動を迅速に行うことができることが望ましい。例えば、減速中に再加速を開始する場合、運転者の加速意思に応じて速やかにエンジン1を再始動できることが好ましい。ここで、減速中における運転者の加速意思は、ブレーキの操作状態によって最も早く検出できると考えられる。このため、走行中は、ブレーキの操作状態をエンジン始動の判定条件に含むことが好ましい。つまり、上記実施形態の各停止始動制御において、走行中のエンジン始動判定をブレーキの操作状態に基づいて行うようにすることが好ましい。例えば、第三停止始動制御において、停車中は、エンジン1の自動始動をブレーキの操作状態に基づいて行うか否かをシフトポジションに応じて変化させるようにして、走行中は、シフトポジションにかかわらずブレーキの操作状態に基づいてエンジン1の自動始動を行うようにしてもよい。
【0111】
なお、エンジン始動を許容するブレーキの操作状態に関する条件は、例えば、ブレーキオフである条件や、ブレーキを開放する操作がなされている条件とすることができる。また、エンジン始動を許容する条件は、ブレーキペダルの戻し操作がなされるなどにより減速から加速に転じたこととされてもよい。
【0112】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0113】
1−1 車両制御装置
1 エンジン
2 T/M
3 クラッチ
4 クラッチペダル
7 駆動輪
22 クラッチアッパースイッチ
23 クラッチロワースイッチ
29 シフトポジションセンサ
30 ECU
100 車両
St1 小ストローク領域
St2 中間ストローク領域
St3 大ストローク領域
Stm ミートポイント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、
を備え、
前記エンジンの停止中に前記手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたときに、前記クラッチの滑り量が大きい場合は前記エンジンの始動を許容し、前記滑り量が小さい場合は前記エンジンの始動を禁止する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記クラッチに対する操作が開始されてからの経過時間に基づいて前記エンジンの始動を許容するか否かを決定する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記クラッチのストロークに基づいて前記エンジンの始動を許容するか否かを決定する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの始動が禁止されていることを前記運転者に知らせる
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
エンジンと、
前記エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、
を備え、
前記エンジンの停止中に前記手動変速機に対してニュートラルから走行用のシフトポジションへの操作、および前記クラッチを係合させる操作がなされたときに、前記クラッチを係合させる操作が開始されてから前記走行用のシフトポジションへの操作がなされるまでの経過時間が短い場合、前記エンジンの始動を許容し、前記経過時間が長い場合、前記エンジンの始動を禁止する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、
を備え、
前記エンジンの停止中に前記手動変速機においてニュートラルから走行用のシフトポジションに操作されたときに、前記クラッチの滑り量が大きい場合は前記エンジンの始動を許容し、前記滑り量が小さい場合は前記エンジンの始動を禁止する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記クラッチに対する操作が開始されてからの経過時間に基づいて前記エンジンの始動を許容するか否かを決定する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記クラッチのストロークに基づいて前記エンジンの始動を許容するか否かを決定する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの始動が禁止されていることを前記運転者に知らせる
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
エンジンと、
前記エンジンと駆動輪とを接続し、かつ運転者によってシフトポジションおよびクラッチが操作される手動変速機と、
を備え、
前記エンジンの停止中に前記手動変速機に対してニュートラルから走行用のシフトポジションへの操作、および前記クラッチを係合させる操作がなされたときに、前記クラッチを係合させる操作が開始されてから前記走行用のシフトポジションへの操作がなされるまでの経過時間が短い場合、前記エンジンの始動を許容し、前記経過時間が長い場合、前記エンジンの始動を禁止する
ことを特徴とする車両制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−149520(P2012−149520A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6428(P2011−6428)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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