説明

車両前方監視装置

【課題】車両前方の監視体制の継続性、連続性を維持することが可能な車両前方監視装置を提供する。
【解決手段】車両前方監視装置は、狭角カメラ、広角カメラ、物体相対距離Dfwに応じて狭角画像情報Dn及び広角画像情報Dwの何れか一方を処理用画像情報として選択する画像情報選択部、処理用画像情報を用いて画像処理を行い自車両前方に存在する前方物体を検出する画像処理部、自車両の進行予定方向Dcpに対する狭画角中心線方向Dclのずれを検知する方向ずれ検知部を備える。画像情報選択部は、方向ずれ検知部により進行予定方向Dcp及び狭画角中心線方向Dclのずれが検知された場合、物体相対距離Dfwに応じて選択すべき処理用画像情報が狭角画像情報Dnである場合においても広角画像情報Dwを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前方監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラやレーダなどを用いて車両前方の状態を監視する車両前方監視装置が公知である。この種の車両前方監視装置では、自車両前方に存在する対向車両(自車両前方をその走行方向と逆方向に走行する車両)、先行車両(自車両前方を、その走行方向と同方向に走行する車両)、障害物、歩行者等の物体(本明細書においては、これらを纏めて「前方物体」と称す)を検出することで、車両前方を監視する。車両前方監視装置による前方物体の検出結果は、例えば衝突時の衝撃を最小限に抑えるプリクラッシュセーフティー(PCS)や、先行車との車間距離を一定に保つアダプティブクルーズコントロール(ACC)等の運転支援システムにおいて利用されている。
【0003】
一般に、レーダは、前方物体との距離に関する検出精度が高い反面、横方向の分解能が比較的低いという特性を有する。そして、カメラは横方向の分解能が高く、前方物体の境界検出が容易であるという利点を有する。そこで例えば、レーダによって、前方物体の自車両からの相対距離を取得し、カメラによって前方物体の大きさや、自車両の前後軸を基準とした場合の相対的な横方向の位置にかかる情報(以下、「横位置情報」ともいう)等を取得することで前方物体の検出が行われている。
【0004】
前方物体の自車両からの相対距離とカメラの画角(視野角)との関係について言及する。自車両に近接する前方物体、例えば自車両のすぐ前方をレーン変更等によって側方から接近してくる先行車両を検出する場合には、画角の大きなカメラで車両前方を撮像すると好適である。画角の大きなカメラは、遠方の物標の分解能があまり高くない。従って、自車両に対して遠方の前方物体を画角の大きなカメラで撮像すると、前方物体の境界検出の精度が低下しやすいという実情がある。そこで、画角が異なる一組のカメラを備え、自車両に比較的近い領域を画角の大きな方のカメラで撮像する一方、自車両から遠方の領域を画角の小さな方のカメラで撮像する技術も提案されている。
【0005】
ところで、自車両がカーブ路に差し掛かかった時や、道路側方の路上駐車車両を回避するためにステアリングを操舵すると、画角が小さい方の狭角カメラの視野(撮像範囲)から遠方に位置する前方物体がはずれてしまう場合がある。これに関連して、ステアリングの操舵に応じて、車両の前後軸に対するカメラの視野中心線のなす角度を調節する技術も提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−95194号公報
【特許文献2】特開2005−81860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、カメラの視野中心線の方向を運転者のステアリング操作に追従して変更しようにも応答遅れが生じてしまい、車両前方の監視体制の継続性、或いは連続性が損なわれてしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車両が
カーブ路に差し掛かかった時や、道路側方の路上駐車車両を回避するためにステアリングを操舵した時においても、車両前方の監視体制の継続性、連続性を維持することが可能な車両前方監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両前方監視装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る車両前方監視装置は、
自車両前方を撮像する車載式の狭角カメラと、
前記狭角カメラよりも広い画角を有し且つ自車両前方を撮像する車載式の広角カメラと、
自車両前方に存在する前方物体と自車両との相対距離に応じて、前記狭角カメラが生成する画像情報である狭角画像情報および前記広角カメラが生成する画像情報である広角画像情報の何れか一方を、画像処理に用いる画像情報である処理用画像情報として選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された方の処理用画像情報を用いて画像処理を行い、自車両前方に存在する前方物体を検出する画像処理手段と、
自車両が進むべき進行方向に対する前記狭角カメラの画角中心線方向のずれを検知する方向ずれ検知手段と、
前記選択手段は、前記方向ずれ検知手段により前記ずれが検知された場合、前記相対距離に応じて選択すべき処理用画像情報が前記狭角画像情報である場合においても前記広角画像情報を選択することを特徴とする。
【0010】
本発明において、狭角画像情報は狭角カメラが撮像した画像を画像信号化したデータであり、広角画像情報は広角カメラが撮像した画像を画像信号化したデータである。また、前方物体の自車両からの相対距離は、例えばレーダ等によって検知することができる。
【0011】
選択手段は、例えば前方物体の自車両との相対距離が比較的短い場合に広角画像情報を処理用画像情報として選択する。これにより、レーン変更等によって自車両の側方から接近してくる先行車両や歩道から急に飛び出してきた歩行者などを好適に検出できる。一方、例えば前方物体の自車両との相対距離が比較的長い場合、狭角画像情報を処理用画像情報として選択する。狭角カメラは広角カメラに比して画角が小さいため、焦点距離が広角カメラよりも長い。狭角画像情報を用いて自車両の遠方に位置する前方物体を検出することで、遠方に位置する前方物体の境界検出にかかる精度を高めることができる。
【0012】
前記選択手段は、前方物体の自車両との相対距離が所定の基準距離以上の場合に狭角画像情報を(処理用画像情報として)選択し、上記相対距離が基準距離未満の場合に広角画像情報を(処理用画像情報として)選択することができる。この基準距離は、例えば広角画像情報を用いて画像処理手段が前方物体の検出するにあたり、その前方物体の境界(エッジ)検出を所望の精度で行うことのできる限度内における前方物体および自車両の相対距離の最大値である。
【0013】
この構成によれば、方向ずれ検知手段により、自車両が進むべき進行方向に対する狭角カメラの画角中心線方向のずれが検知された場合、前方物体の自車両との相対距離に応じて選択すべき処理用画像情報が狭角画像情報である場合においても広角画像情報が選択される。自車両が進むべき進行方向とは、自車両がこれから走行を予定している進路の方向であり、より具体的には走行路に沿っているといえる。例えば、カーブ路走行時における自車両の進むべき進行方向とはカーブ路に沿うような方向として捉えることができ、直線路走行時における自車両の進むべき進行方向とは当該直線路に沿った方向として捉えることができる。
【0014】
自車両の走行路側方の路上駐車車両を回避するためにステアリングを操舵する場合、自車両がカーブ路に差し掛かった場合などには、自車両が進むべき進行方向と狭角カメラの画角中心線方向との間にずれが起こる。このような状況下では、自車両に対して遠方に位置する前方物体が狭角カメラの視野から外れる可能性が高い。そこで、例えば遠方の前方物体を検出する際のように前方物体の自車両との相対距離に応じて選択すべき処理用画像情報が狭角画像情報である場合においても広角画像情報を選択することで、前方物体が使用するカメラの視野外となることによって検出されないという事態を好適に回避することができる。
【0015】
従って、本発明によれば、自車両がカーブ路に差し掛かかった時や、道路側方の路上駐車車両を回避するためにステアリングを操舵した時においても、車両前方の監視体制の継続性、連続性を維持することができる。
【0016】
また、本発明において、自車両のステアリングの操舵角を検出する操舵角検出部を更に備え、前記方向ずれ検知手段は、該操舵角検出部によって検出される操舵角に基づいて前記ずれを検知することができる。
【0017】
例えば、方向ずれ検知手段は、操舵角の変化量である操舵量を演算し、この操舵量が規定量以上であると判別した場合に、自車両が進むべき進行方向に対して狭角カメラの画角中心線方向がずれたことを検知しても良い。また、上記操舵量は、例えば中立操舵角を基準とした場合の操舵角の変化量として捉えることができる。そして、中立操舵角とは、ステアリングホイールの中立位置(ニュートラル位置)に対応する操舵角であり、中立位置とはステアリングホイール(ハンドル)がちょうどセンターになっている時の位置をさす。また、ここでの規定量とは、広角画像情報から狭角画像情報へと処理用画像情報がちょうど切り替えられる距離に対応した位置に存在する前方物体を狭角カメラによって撮像しようとした場合に、前方物体が狭角カメラの視野から外れてしまうことになるときの、ステアリングの操舵量の最小値として捉えることができる。
【0018】
また、本発明において、自車両が走行する走行路の曲率を検出する曲率検出部を更に備え、前記方向ずれ検知手段は、該曲率検出部によって検出される曲率に基づいて前記ずれを検知することができる。
【0019】
走行路の曲率は、走行路の曲がり具合、程度を表す指標であり、カーブ半径(曲率半径)の逆数である。走行路の曲率が大きいほど、カーブ路の曲がり具合が激しい(急である)ことを意味する。方向ずれ検知手段は、走行路の曲率が規定曲率以上であると判別した場合に、自車両が進むべき進行方向に対して狭角カメラの画角中心線方向がずれたことを検知しても良い。ここで規定曲率とは、広角画像情報から狭角画像情報へと処理用画像情報がちょうど切り替えられる距離に対応した位置に存在する前方物体を狭角カメラによって撮像しようとした場合に、前方物体が狭角カメラの視野から外れてしまうことになるときの、走行路の曲率の最小値として捉えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両前方監視装置によれば、自車両がカーブ路に差し掛かかった時や、道路側方の路上駐車車両を回避するためにステアリングを操舵した時においても、車両前方の監視体制の継続性、連続性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る車両前方監視装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】画像情報選択部が画像情報選択フラグFgを1に設定する領域と0に設定する領域の各々を例示した図である。
【図3】自車両が前方路駐車両を回避する回避走行の様子を説明するための説明図である。
【図4】自車両がカーブ路に差し掛かった様子を説明するための説明図である。
【図5】実施例1における制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図6】実施例2に係る車両前方監視装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図7】実施例2における制御ルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
図1は、本実施形態に係る車両前方監視装置1の概略構成を示すブロック図である。車両前方監視装置1は、自車両の前方に存在する他車両(対向車両、先行車両等)、障害物、歩行者等の総称である「前方物体」を検出し、車両前方を監視する装置である。そして、車両前方監視装置1による監視結果に基づいて、プリクラッシュセーフティシステム(PCS)が作動するようになっている。例えば、前方物体と自車両が衝突する可能性が高いと判断された場合、運転者へ警報を発信するとともに衝突被害低減制御が実施される。衝突被害低減制御は、シートベルトの巻き取りやプリクラッシュブレーキによる衝突速度の低減等を例示することができる。
【0024】
車両前方監視装置1は、ミリ波レーダ2、画角(視野角)が互いに相違する一組のカメラ3,4、操舵角センサ5、レーダECU6、システムECU7を具備する。本実施例において、単に「車両」と記す場合には自車両をさすものとする。
【0025】
ミリ波レーダ2は、自車両の前部に設けられており、自車両の前方に存在する前方物体の自車両からの相対距離(以下、「物体相対距離」という)および前方物体の方向を検知する。ミリ波レーダ2は、自車両の前方の所定範囲においてミリ波を走査して、その反射波を受信する。そして、反射波を受信した夫々の方向について物体相対距離を検知する。ミリ波レーダ2による検知は所定時間毎に行われる。ミリ波レーダ2はレーダECU6と電気的に接続されており、検知した前方物体の物体相対距離に応じた電気信号(以下、「物体距離情報」ともいう)をレーダECU6へ逐次出力する。
【0026】
レーダECU6は、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されており、物体相対距離演算部61及び物体相対速度演算部62を有する。物体相対距離演算部61は、ミリ波レーダ2からの物体距離情報に基づいて、前方物体を検知する。また、物体相対距離演算部61は、物体相対距離を演算する。物体相対距離は、自車両の前後軸方向における前方物体と自車両との相対距離である。物体相対速度演算部62は、検知した前方物体の自車両に対する相対速度を演算する。物体相対距離演算部61および物体相対速度演算部62の各々は、演算結果に応じた信号をシステムECU7へ出力する。
【0027】
一組のカメラ3,4のうち、相対的に画角(視野角)が大きい方のカメラ3を「広角カメラ」と称し、画角が小さい方のカメラ4を「狭角カメラ」と称することとする。広角カメラ3および狭角カメラ4は、レンズと、CCD(charge-coupled device)やCMOS
(complementary metal oxide semiconductor)等の撮像素子とを含んで構成されている
。広角カメラ3および狭角カメラ4の夫々は、車室(運転室)内のルームミラーのステイ(図示省略)付近に設置されており、自車両の前方の風景を撮像する。広角カメラ3および狭角カメラ4が撮像した車両前方の画像は、画像信号化された画像情報(画像データ)としてシステムECU7へ逐次出力される。以下、広角カメラ3が撮像した画像から生成
された画像情報を「広角画像情報Dw」と称し、狭角カメラ4が撮像した画像から生成された画像情報を「狭角画像情報Dn」と称する。
【0028】
本実施形態における広角カメラ3、狭角カメラ4による画像の取り込み頻度(撮像頻度)は、例えば30ms(ミリ秒)程度となるように設定されている。また、広角カメラ3および狭角カメラ4の画角(視野)中心線方向は双方ともに、自車両の前後軸に平行である。また、自車両の前後軸方向と画角中心線方向をずらして設定しても良いが、本実施形態では上記2つの方向のなす角度は運転条件、運転状態に応じて変更されるものではない。
【0029】
操舵角センサ5は、自車両のステアリングシャフトに設けられて、自車両のステアリングの操舵角(転舵角とも称呼されることがある)を検出するセンサである。本実施形態においては操舵角センサ5が本発明における操舵角検出部に対応している。操舵角センサ5は、ロータリエンコーダ等を含んで構成されており、自車両の運転者がステアリングホイール(いわゆるハンドル)を介して入力した操舵角の方向、およびその大きさを検出する。すなわち、ステアリングを右に転舵するときと左に転舵するときとでは、操舵角の方向は逆である。操舵角センサ5は、このようにして検出した操舵角の方向及び大きさに応じた操舵角信号をシステムECU7へ出力する。
【0030】
システムECU7は、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されており、画像情報選択部71、画像処理部72、方向ずれ検知部73、衝突判定部74を有する。各部の機能を以下に説明する。
【0031】
レーダはその特性上、前方物体にかかる物体相対距離を検出する精度が高い反面、横方向の分解能が比較的低い。これに対して、カメラは横方向の分解能が優れ、前方物体の境界(エッジ)検出を精度良く行うことができる。更に広角カメラ3および狭角カメラ4を比較すると、狭角カメラ4は、広角カメラ3に比べて画角が小さいために焦点距離が長く、遠方に位置する前方物体に対する分解能が広角カメラ3よりも優れている。一方、広角カメラ3は、自車両に近接している前方物体を視野内に収めやすいという利点がある。そこで、システムECU7は、狭角画像情報Dn及び広角画像情報Dwのうち、前方物体を検出するための画像(解析)処理を行う対象となる画像情報、すなわち画像処理に用いる画像情報を、物体相対距離演算部61が演算した物体相対距離に応じて切り替えるようにする。ここで、画像処理に用いる画像情報を、以下「処理用画像情報」と称する。
【0032】
ここで、具体的には、画像情報選択部71は、物体相対距離演算部61から取得した物体相対距離Dfwが基準距離Db以上である場合、処理用画像情報として狭角画像情報Dnを選択する。この場合、画像情報選択部71は、画像情報選択フラグFgを1に設定(セット)する。画像情報選択フラグFgは、画像情報選択部のRAMに設けられた記憶領域である。一方、物体相対距離Dfwが基準距離Db未満である場合、画像情報選択部71は、広角画像情報Dwを処理用画像情報として選択し、上記画像情報選択フラグFgを0に設定(セット)する。画像情報選択部71は、狭角画像情報Dn及び広角画像情報Dwの何れが処理用画像情報として選択されているかを表す画像選択信号を、画像処理部72へ出力する。画像選択信号は、画像情報選択フラグFgが1と0の何れに設定されているかを表す信号と言い換えることができる。
【0033】
画像処理部72は、画像情報選択部71により選択された方の処理用画像情報を用いて画像処理を行い、前方物体を検出する。具体的には、処理用画像情報に対して例えばエッジ検出処理を施し、画像領域範囲から前方物体を抽出する。そして、この抽出結果を基に前方物体の大きさや横方向の位置に関する横位置情報を取得することで、前方物体を検出する。
【0034】
ここで、狭角画像情報Dn及び広角画像情報Dwの双方ではなく何れか一方を択一的に選択して、選択した方の画像情報を基に前方物体を検出するのは、画像処理部72における処理負荷の軽減を図るためである。また、基準距離Dbは、広角画像情報Dwを用いて画像処理を行い前方物体の検出を試みた場合に、前方物体の境界(エッジ)検出を所望の精度で行うことのできる限度内における自車両と前方物体の最大距離である。
【0035】
図2は、画像情報選択部71が画像情報選択フラグFgを1に設定する領域(図中、斜めハッチングにて示す)と0に設定する領域(図中、格子ハッチングにて示す)の各々を例示した図である。本実施形態において、画像情報選択フラグFgが1に設定される領域(狭角画像情報Dnが処理用画像情報として選択される領域)は狭角カメラ4の視野(撮像範囲)内に含まれている。また、画像情報選択フラグFgが0に設定される領域(広角画像情報Dwが処理用画像情報として選択される領域)は、広角カメラ3の視野内に含まれている。
【0036】
図中、狭角カメラ4の視野は一点鎖線で挟まれた領域であり、広角カメラ3の視野は二点鎖線で挟まれた領域である。狭角カメラ4及び広角カメラ3の各々の画角は、自車両から遠方の前方物体が狭角カメラ4の視野内に含まれ、且つ、自車両に近接する前方物体が広角カメラ3の視野内に含まれるように、それぞれが適正な角度に設定されている。
【0037】
図中の符号「MF1」、「MF2」は自車両に対する前方物体を表したものである。図示のように、前方物体MF1は、車両からの相対距離である物体相対距離Dfwが基準距離Dbより長い。そのため、画像情報選択部71は、物体相対距離演算部61から物体相対距離Dfwの演算結果を受信すると、画像情報選択フラグFgを1に設定する。そして、画像処理部72が、画像情報選択部71からの画像選択信号を受信すると、狭角画像情報Dnに基づいて前方物体MF1を検出する。一方、前方物体MF2は、物体相対距離Dfwが基準距離Dbより短い。そのため、画像情報選択部71は、物体相対距離演算部61から物体相対距離Dfwの演算結果を受信すると、画像情報選択フラグFgを0に設定する。そして、画像処理部72は、画像情報選択部71からの画像選択信号を受信すると、広角画像情報Dwに基づいて前方物体MF2を検出する。
【0038】
以上述べた事項が、本実施形態に係る車両前方監視装置1が自車両前方を監視する際の基本制御内容である。次に、車両前方監視装置1において、特徴的な制御内容について説明する。前方物体が自車両の遠方に位置する場合、情報選択部71は上記基本制御に従うと画像情報選択フラグFgを1に設定するため、画像情報選択部71からの画像選択信号を受信した画像処理部72は、狭角画像情報Dnを用いて画像処理を行い、前方物体を検出することになる。
【0039】
ところが、自車両の走行路側方の路上駐車車両を回避するためにステアリングを操舵する場合、自車両がカーブ(路)に差し掛かった場合などのように、自車両の走行環境が変化すると、狭角カメラ4の画角(視野)中心線方向Dclが自車両の進むべき進行方向(以下、「進行予定方向」という)Dcpに対してずれが生じ、遠方の前方物体が狭角カメラ4の視野からはずれてしまう場合がある。
【0040】
図3は、自車両が前方の路上駐車車両(以下、「前方路駐車両」という)を回避する回避走行の様子を説明するための説明図である。ここで、自車両は直線の道路を走行しており、この直線路を走行する自車両の進行予定方向Dcpは、図示の通り(太実線矢印)当該直線路が延在する方向に一致する。これに対して、自車両の前方に前方路駐車両が存在するとこれを回避しなくてはならないため、自車両の走行環境が変化する。すなわち、運転者のハンドル操作に伴って自車両のステアリングが操舵されることにより、自車両の走
行状態が前方路駐車両を回避する回避走行に移行することになる。
【0041】
ここで、上記のように狭角カメラ4の画角中心線の方向(以下、「狭画角中心線方向」という)Dclと、自車両の前後軸との関係は固定である。そうすると、ステアリングの操舵前に比べて狭画角中心線方向Dclが変化し、これが自車両の進行予定方向Dcpに対してずれてしまう。その結果、自車両の遠方に位置する前方物体(この図では、対向車両)が狭角カメラ4の視野外となってしまい、検出することができない可能性が高くなる。なお、図3の説明から明らかなように、進行予定方向Dcpとは自車両が本来進行すべき方向を意味している。従って、自車両が図示のような直線路を走行している場合、その直線路に沿った方向が進行予定方向Dcpに相当し、上記の回避走行時にステアリングの操舵に追従して一時的に変化する自車両の前後軸の方向が進行予定方向に該当するものではない。
【0042】
図4は、自車両がカーブ路に差し掛かった様子を説明するための説明図である。この図では、自車両が右方向へ曲がるカーブ(右カーブ)を走行しており、自車両の進行予定方向Dcpは、図中実線矢印方向で示されるようにカーブに沿った方向である。直線路を走行中の自車両の前方に図示のようなカーブ路が現れた場合、自車両の走行環境が変化することになる。そして、この場合、自車両から遠ざかるにつれて、狭画角中心線方向Dcl(図中、破線矢印にて表す)が、カーブに沿った進行予定方向Dcpに対してずれてゆくことになる。その結果、自車両の遠方に位置する前方物体(この図では、対向車両)が狭角カメラ4の視野外となってしまい、検出することができない可能性が高くなる。
【0043】
そこで、本実施形態の車両前方監視装置1では、方向ずれ検知部73が、図3および図4において説明したような、自車両の進行予定方向Dcpに対する狭画角中心線方向Dclのずれの有無を検知する。そして、方向ずれ検知部73により進行予定方向Dcpおよび狭画角中心線方向Dclにおけるずれが検知された場合、画像情報選択部71は、物体相対距離Dfwに応じて選択すべき処理用画像情報が狭角画像情報Dnである場合においても、画角のより大きな広角カメラ3によって生成される広角画像情報Dwを選択するようにする。
【0044】
以下、本実施形態における実施例について説明する。まず、実施例1では、図3で説明したような状況、すなわち自車両のステアリング操舵に伴い、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとのずれが起こった場合の制御内容について説明する。次いで、実施例2では、図4で説明したような状況、すなわちカーブ路走行時、或いはカーブ路に進入する手前において、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとのずれが起こった場合の制御内容について説明することにする。
【0045】
図5は、実施例1における制御ルーチンを示したフローチャートである。本制御ルーチンは、レーダECU6およびシステムECU7が協働して一定時間(例えば、100ms程度)毎に繰り返し行われるルーチンである。
【0046】
本ルーチンが実行されると、ステップS101では、物体相対距離演算部61が、ミリ波レーダ2からの出力信号に基づいて物体相対距離Dfwを演算するとともに、画像処理部72によって検出すべき対象となる前方物体を検知する。
【0047】
次に、ステップS102では、物体相対距離Dfwが基準距離Db以上であるか否かが画像情報選択部71によって判定される。肯定判定された場合(Dfw≧Db)、ステップS103の処理に進む。本ステップにおいて、否定判定された場合(Dfw<Db)にはステップS104の処理に進む。ステップS104では、画像情報選択部71は広角画像情報Dwを処理用画像情報として選択し、画像情報選択フラグFgを0に設定(セット
)する。ステップS104の処理が終了すると、ステップS108の処理に進む。
【0048】
ステップS103では、操舵角センサ5により操舵角信号が検出され、その検出結果が方向ずれ検知部73へ入力される。そして、方向ずれ検知部73は、操舵角の方向及び大きさを表す操舵角信号に基づいて、操舵角の変化量(以下、「操舵量」という)θstを演算する。ここで、操舵量θstとは、中立操舵角を基準とした場合の操舵角の変化量である。この中立操舵角とは、ステアリングホイールの中立位置(ニュートラル位置)に対応する操舵(転舵)角であり、中立位置とはステアリングホイールがちょうどセンターになっている時の位置をさす。
【0049】
続くステップS105では、操舵量θstが規定操舵量θstb以上であるか否かを判定する。規定操舵量θstbは、自車両に対する物体相対距離Dfwがちょうど基準距離Dbにある前方物体を狭角カメラ4によって撮像しようとした場合に、その前方物体が狭角カメラ4の視野から外れてしまうことになるときの、操舵角の変化量の最小値として定義される。本実施例においては操舵角センサ5が本発明における操舵角検出部に相当する。また、本実施例においては方向ずれ検知部73が本発明における方向ずれ検知手段に相当する。
【0050】
本ステップにおいて否定判定された場合(θst<θstb)、方向ずれ検知部73は自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じていないことを検知し、ステップS106の処理に進む。なお、ここでの「ずれ」とは、自車両に対する物体相対距離Dfwが基準距離Dbにある前方物体を狭角カメラ4によって撮像しようとした場合に、この前方物体が狭角カメラ4の視野からぎりぎり外れてしまう程度の大きさのずれに相当するものである。ステップS106では、上述した基本制御に則り、画像情報選択部71は狭角画像情報Dnを処理用画像情報として選択し、画像情報選択フラグFgを1に設定(セット)する。ステップS106の処理が終了すると、ステップS108の処理に進む。
【0051】
本ステップにおいて肯定判定された場合(θst≧θstb)、方向ずれ検知部73は、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じたことを検知し、ステップS107の処理に進む。ステップS107では、画像情報選択部71は広角画像情報Dwを処理用画像情報として選択し、画像情報選択フラグFgを0に設定(セット)する。
【0052】
ここで、検出対象たる前方物体の物体相対距離Dfwは基準距離Db以上であるため、物体相対距離Dfwに応じて選択すべき処理用画像情報には、本来的には狭角画像情報Dnが該当することになる。しかし、ここでは前述のステップS105において、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じたことが検知されている。従って、処理用画像情報として狭角画像情報Dnを選択してしまうと、物体相対距離演算部61により検知された自車両遠方に位置する前方物体が、狭角カメラ4の視野から外れてしまい、画像処理部72における画像処理によって検出することが困難となる。そのため、本ステップでは、このように、物体相対距離Dfwに応じて選択すべき処理用画像情報が狭角画像情報Dnである場合においても、敢えて広角画像情報Dwを選択するようにした。ステップS107の処理が終了すると、ステップS108の処理に進む。
【0053】
ステップS108において、画像処理部72は、画像情報選択部71からの画像選択信号に基づいて、画像情報選択フラグFgのセット(設定)値を取得する。そして、狭角画像情報Dn及び広角画像情報Dwのうち、画像情報選択部71が処理用画像情報として選択している方の画像情報である処理用画像情報を用いて前方物体を検出する。すなわち、画像情報選択フラグFgが1にセットされている場合、狭角画像情報Dnを用いて画像処
理を行い、前方物体を検出する。一方、画像情報選択フラグFgが0にセットされている場合、広角画像情報Dwを用いて画像処理を行い、前方物体を検出する。本ステップにおける画像処理とは、例えばエッジ検出を例示できる。エッジとは、画像領域中の各画素において、輝度の高い部分(明るい部分)と輝度の低い(暗い部分)の境界であり、エッジ検出とはこの境界を画像処理により検出することである。
【0054】
なお、ステップS108にかかる処理の実施に際し、画像処理部72は、処理用画像情報の画像領域内において、前方物体の存在領域の周辺にいわゆるウィンドウを設定し、このウィンドウの内部領域に対してエッジ検出を行っても良い。上記ウィンドウの設定は、画像処理の対象領域を全画像領域から画定する(切り出す)ように機能するための技術であり、その内容は周知の技術であるため詳しい説明は省略する。なお、画像領域内における前方物体の存在領域については、ミリ波レーダ2が出力する信号に基づいて求めることができる。ステップS108の処理が終了すると、ステップS109の処理に進む。
【0055】
ステップS109では、衝突判定部74により、画像処理部72が検出した前方物体に自車両が衝突する可能性が高いか否かが判定される。衝突判定部74は、画像処理部72が検出した前方物体の横位置情報(自車両の前後軸を基準とした場合の相対的な横位置および大きさ)、物体相対距離演算部61および物体相対速度演算部62のそれぞれが演算した前方物体の自車両に対する相対距離および相対速度等に基づいて、自車両と前方物体とが衝突する可能性が高いか否かを判定する。
【0056】
本ステップにおいて、前方物体が自車両に衝突する可能性が低いと判定された場合、本ルーチンを一旦終了する。一方、前方物体が自車両に衝突する可能性が高いと判定された場合、ステップS110の処理に進み、シートベルト巻き取り用アクチュエータやプリクラッシュブレーキアクチュエータ等(図示省略)に制御信号を発信することで衝突被害低減制御を実施する。更に、システムECU7は、運転者への警報装置(図示省略)に警報ONの信号を発信し、自車両が前方物体と衝突する可能性が高いことを報知する(警報を発する)。本ステップの処理を終了すると、本ルーチンを一旦終了する。
【0057】
以上説明したように本実施例に係る車両前方監視装置1によれば、自車両のステアリングが操舵されることによって、該自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じた場合、物体相対距離Dfwに応じて選択すべき処理用画像情報が狭角画像情報Dnである場合においても該処理用画像情報として広角画像情報Dwが選択される。すなわち、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じる状況では、近接する前方物体のみならず遠方の前方物体についても、狭角カメラ4に比して画角の大きい広角カメラ3を用いて撮像するとともに広角画像情報Dwを用いて前方物体を検出する。これにより、自車両のステアリングが操舵される状況においても、自車両の遠方に位置する前方物体をより確実に検出することができる。従って、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じる前後において、車両前方の監視体制の継続性、連続性を維持することが可能となる。よって、プリクラッシュセーフティシステム(PCS)を作動させるべき時に同システムをより確実に作動させることができる。
【0058】
なお、遠方の前方物体の検出時において、例えば前方路駐車両の回避走行が終了することで自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間のずれが消失した後は、処理用画像情報を広角画像情報Dwから狭角画像情報Dnに切り替えると良い。上記のずれが消滅すれば、遠方の物標にかかるエッジ検出精度が優れている狭角画像情報Dnを用いた方が好都合であるからである。なお、前方物体が狭角カメラ4の視野内に入ると考えられる程度まで、ステアリングの操舵量θstが減少した時点で、広角画像情報Dwから狭角画像情報Dnへの処理用画像情報の切り替えを行うようにしても良い。
【0059】
次に実施例2について説明する。ここでは、自車両がカーブ路走行時、或いはカーブ路に進入する手前において、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとのずれが起こった場合の制御内容について説明する。図6は、実施例2に係る車両前方監視装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0060】
本実施例に係る車両前方監視装置1では、操舵角センサ5の代わりに、自車両が走行する走行路の曲率を検出する曲率検出部75を備える。本実施例における曲率検出部75は、システムシステムECU7の構成要素の一部である。「曲率」とは、一般に曲線や曲面の曲がり具合、程度を表す物理量である。このような曲線や曲面の曲がり具合を円に近似した場合、その円の半径が「曲率半径」であり、曲率半径の逆数が「曲率」である。本実施例において、方向ずれ検知部73は、曲率検出部75によって検出される走行路(道路)の曲率に基づいて、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間のずれを検知することを特徴とする。なお、本明細書中における走行路の曲率は、カーブ半径の逆数の意味である。
【0061】
図7は、実施例2における制御ルーチンを示したフローチャートである。本制御ルーチンは、レーダECU6およびシステムECU7が協働して一定時間(例えば、100ms程度)毎に繰り返し行われるルーチンである。本ルーチンにおいて、図5で説明した制御ルーチンと共通する処理については、同じステップ番号を付すことで詳しい説明を省略する。
【0062】
本ルーチンのステップS102において肯定判定された場合、すなわち物体相対距離Dfwが基準距離Db以上であると判定された場合には、ステップS201に進む。ステップS201では、曲率検出部75が自車両の走行路の曲率(以下、「道路曲率」という)γcを演算する。曲率検出部75は、例えば、現在の処理用画像情報に基づいて画像処理を行い、自車両が走行している走行レーンの両端を区画する道路区画線(道路に描かれた白線、黄色線や道路上に配置、または埋め込まれたブロック等の場合があるが、以下、「白線」という。)を検出し、自車両が走行する走行レーンを認識する。次いで、曲率検出部75は、認識した一対の白線からその中心を通る線(すなわち、車線の中心)を演算し、車線の中心の半径(カーブ半径R)を演算し、カーブ半径Rから道路曲率γc(=1/R)を演算する。曲率検出部75が演算した道路曲率γcは、方向ずれ検知部73へ入力される。
【0063】
続く、ステップS202では、方向ずれ検知部73は、道路曲率γcが規定曲率γcb以上であるか否かを判定する。ここで、道路曲率γcが大きいほど、自車両が走行するカーブ路の曲り具体が急であることを意味する。規定曲率γcbは、自車両に対する物体相対距離Dfwがちょうど基準距離Dbにある前方物体を狭角カメラ4によって撮像しようとした場合に、その前方物体が狭角カメラ4の視野から外れてしまうことになるときの、走行路の曲率の最小値として定義される。本実施例においては曲率検出部75が本発明における曲率検出部に相当する。また、本実施例においては方向ずれ検知部73が本発明における方向ずれ検知手段に相当する。
【0064】
ステップS202において、否定判定された場合(γc<γcb)、方向ずれ検知部73は自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じていないことを検知し、ステップS106の処理に進む。一方、ステップS202において肯定判定された場合(γc≧γcb)、方向ずれ検知部73は、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じたことを検知し、ステップS107の処理に進む。以降の各ステップに係る処理は既述のため、その説明を省略する。
【0065】
以上説明したように本実施例に係る車両前方監視装置1によれば、カーブ路走行時、或いはカーブ路に進入する手前において、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じた場合、物体相対距離Dfwに応じて選択すべき処理用画像情報が狭角画像情報Dnである場合においても該処理用画像情報として広角画像情報Dwが選択される。すなわち、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じる状況では、近接する前方物体のみならず遠方の前方物体についても、狭角カメラ4に比して画角の大きい広角カメラ3を用いて撮像するとともに広角画像情報Dwを用いて前方物体を検出する。これにより、カーブ路走行時、或いはカーブ路の手前(例えば、カーブ路に進入する直線の直線路も該当する)を走行している時においても、自車両の遠方に位置する前方物体をより確実に検出することができる。従って、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間にずれが生じる前後において、車両前方の監視体制の継続性、連続性を維持することが可能となる。よって、プリクラッシュセーフティシステム(PCS)を作動させるべき時に同システムをより確実に作動させることができる。
【0066】
なお、本実施例に係る制御と、実施例1に係る制御とは組み合わせて実施すると良い。これによれば、車両前方監視装置1における車両前方の監視体制の継続性、連続性をより好適に維持することが可能となる。また、本実施例において、曲率検出部75は、上記以外の方法によって道路曲率γcを求めても良いし、方向ずれ検知部73は他の方法に基づいて自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間のずれを検知しても良い。例えば、車両前方監視装置1はナビゲーションシステムを備え、このナビゲーションシステムによって、自車両がカーブ路に差し掛かるタイミングを取得しても良い。これにより、自車両の進行予定方向Dcpと狭画角中心線方向Dclとの間のずれの発生を好適に検知することができる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・車両前方監視装置
2・・・ミリ波レーダ
3・・・広角カメラ
4・・・狭角カメラ
5・・・操舵角センサ
6・・・レーダECU
7・・・システムECU
61・・物体相対距離演算部
62・・物体相対速度演算部
71・・画像情報選択部
72・・画像処理部
73・・方向ずれ検知部
74・・衝突判定部
75・・曲率検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方を撮像する車載式の狭角カメラと、
前記狭角カメラよりも広い画角を有し且つ自車両前方を撮像する車載式の広角カメラと、
自車両前方に存在する前方物体と自車両との相対距離に応じて、前記狭角カメラが生成する画像情報である狭角画像情報および前記広角カメラが生成する画像情報である広角画像情報の何れか一方を、画像処理に用いる画像情報である処理用画像情報として選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された方の処理用画像情報を用いて画像処理を行い、自車両前方に存在する前方物体を検出する画像処理手段と、
自車両が進むべき進行方向に対する前記狭角カメラの画角中心線方向のずれを検知する方向ずれ検知手段と、
前記選択手段は、前記方向ずれ検知手段により前記ずれが検知された場合、前記相対距離に応じて選択すべき処理用画像情報が前記狭角画像情報である場合においても前記広角画像情報を選択することを特徴とする車両前方監視装置。
【請求項2】
自車両のステアリングの操舵角を検出する操舵角検出部を更に備え、
前記方向ずれ検知手段は、該操舵角検出部によって検出される操舵角に基づいて前記ずれを検知することを特徴とする請求項1に記載の車両前方監視装置。
【請求項3】
自車両が走行する走行路の曲率を検出する曲率検出部を更に備え、
前記方向ずれ検知手段は、該曲率検出部によって検出される曲率に基づいて前記ずれを検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両前方監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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