説明

車両前照灯制御システム

【課題】ユーザの意向に即して車両前照灯主灯を自動点灯あるいは消灯する、車両前照灯制御システムを提供する。
【解決手段】車両周囲の照度が所定照度未満で、かつ車速が所定車速未満である場合には、位置検出器により検出した自車位置が、地図データに予め登録されている、「ユーザにとって常に前照灯主灯の点灯を要する場所」に存在するかどうかを判断する(ステップS270)。そして、自車が前記場所に該当する場所に存在すると判断した(ステップS270:yes)場合には前照灯主灯を消灯しないように制御部を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周囲の明るさ、車速、自車位置に応じて前照灯主灯を自動的に点灯あるいは消灯する車両前照灯制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
夕暮れ時や雨天時など、車両周囲が薄暗くなっているにもかかわらず、ユーザが車両のライト(車幅灯や前照灯)を点灯し忘れていて、無灯火走行する車両が少なくない。これでは、ユーザの視認性や、他車や歩行者からの視認性に欠け、事故を誘発する可能性もある。
【0003】
そのため、車両周囲の明るさ(照度)が所定の閾値未満である場合に、自動的に車幅灯や前照灯を点灯させるオートライトシステムを搭載した車両がある。しかし、このオートライトシステムは、ユーザが予めスイッチ操作(オートの位置にスイッチ操作すること)を行っておかなければ作動しない。すなわちユーザがそのスイッチ操作をし忘れれば作動しない。そこで、このようなユーザの操作忘れによる無灯火走行を防止するための技術が、特許文献に開示されている。
【0004】
たとえば特許文献1には、車両の車速を検出し、その車速が時速1キロメートル以上である場合に、車両周囲の照度が所定の閾値以下ならば、前記オートライトシステムのスイッチ操作がされているか否かにかかわらず、自動的にヘッドライトを点灯させる車両用ライト点灯装置について開示されている。
【特許文献1】特開2000−313275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、たとえば車両がトンネル内で渋滞に遭い、発進停止を繰り返す(いわゆる、のろのろ運転する)場合や、駐車場で車庫入れのために発進停止を繰り返す場合に、車速によってヘッドライト(前照灯主灯)が点灯、消灯を繰り返すこととなる。これではトンネル内や駐車場内で視界を確保したい場合に、ユーザにとって不都合である。
【0006】
本発明は上記の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ユーザが操作をしなくとも、車両周囲の照度に応じて自動的に車両の前照灯主灯を点灯あるいは消灯させるために、車両周囲の照度が所定値未満でかつ車速が閾値以上であれば前記前照灯主灯を点灯させ、逆に閾値未満であれば消灯させるものにおいて、ユーザにとって安全上、運転操作のために常に前照灯主灯が点灯していることが必要な状況下では、前照灯主灯を消灯しない、車両前照灯制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の車両前照灯制御システムによれば、前記車両の前方を照らし出す前照灯と、前記前照灯を点灯あるいは消灯させるための駆動回路と、前記車両の周囲の照度を検出する照度検出手段と、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、前記照度検出手段により検出された照度が所定の照度未満で、かつこのとき前記車速検出手段により検出された車速が所定の車速以上であれば、前記駆動回路に前記前照灯を点灯させ、また、前記検出された車速が所定の車速未満であれば、前記駆動回路に対して前記前照灯を消灯させる制御手段と、から構成される車両前照灯制御システムであって、前記車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、ユーザにとって常に前記前照灯が点灯していることを必要とする場所、のデータを格納する記憶手段と、前記記憶手段に格納されたデータ、前記検出した現在位置、の双方を比較することで、前記現在位置が前記場所にあるか否かを判定する判定手段と、を具備し、前記制御手段は、前記判定手段により前記現在位置が前記場所にあると判定された場合には、前記検出された照度が前記所定の照度未満であることを条件に、前記検出した車速に関わらず、前記駆動回路に前記前照灯を消灯させないこと、を特徴とする。
【0008】
このようにすれば、ユーザが事前に操作をしなくとも、車両の周囲が一定の暗さになり、そのときの車速が所定の車速以上であれば前照灯が自動点灯し、逆に所定車速未満であれば自動消灯するので、ユーザが前記事前の操作をし忘れて前照灯が無灯火のまま走行することがなくなり、安全性が高まる。ここでいう所定の照度とは人間にとって薄暗いと感じる照度であり、具体的には数十乃至数百ルクス程度である。またここでいう所定の車速とは、十分に低速といえる速度であり、たとえば時速零乃至数キロメートル程度である。
【0009】
そして上記ばかりではなく、そのとき車速が、前照灯が自動消灯するべき前記所定の車速未満であっても、ユーザにとって常に前照灯が点灯していることが必要である場所に、車両が存在しているときには、前照灯を自動消灯させないので、ユーザの運転操作における視界確保が的確になされ、ユーザは他車両や歩行者への注意を払うことができ、安全性が高まる。
【0010】
次に、請求項2に記載の車両前照灯制御システムによれば、車両の位置を前記車両の周囲に存在する他車両や歩行者に知らせるための補助灯と、前記車両の前方を照らし出す前照灯と、前記補助灯および前照灯それぞれを点灯あるいは消灯させるための駆動回路と、前記車両の周囲の照度を検出する照度検出手段と、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、前記照度検出手段により検出された照度が所定の照度未満である場合に、前記駆動回路に前記補助灯を点灯させ、かつこのとき前記車速検出手段により検出された車速が所定の車速以上であれば、前記駆動回路に前記前照灯を点灯させ、また、前記検出された車速が所定の車速未満であれば、前記駆動回路に対して前記前照灯を消灯させる制御手段と、から構成される車両前照灯制御システムであって、前記車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、ユーザにとって常に前記前照灯が点灯していることを必要とする場所、のデータを格納する記憶手段と、前記記憶手段に格納されたデータ、前記検出した現在位置、の双方を比較することで、前記現在位置が前記場所にあるか否かを判定する判定手段と、を具備し、前記制御手段は、前記判定手段により前記現在位置が前記場所にあると判定された場合には、前記検出された照度が前記所定の照度未満であることを条件に、前記検出した車速に関わらず、前記駆動回路に前記前照灯を消灯させないこと、を特徴とする。
【0011】
このようにすれば、ユーザが事前操作をしなくとも、車両の周囲が一定の暗さになると、まず補助灯が自動点灯するので、自車の周囲の他車や歩行者に対して自車の位置を正確に知らせることができ、安全性が高まる。
【0012】
また、請求項3に記載の車両前照灯制御システムによれば、請求項1乃至2のいずれかに記載の車両前照灯制御システムにおいて、さらに、車両に制動力を与える制動装置が作動状態を検出する制動状態検出手段を備え、前記制御手段は、前記判定手段により前記現在位置が前記場所にないと判定された場合には、前記検出された照度が前記所定の照度未満でありかつ前記検出された車速が所定の車速未満である場合に、前記駆動回路に前記前照灯を消灯させ、このとき前記車両の制動装置が作動状態から非作動状態に遷移したことを前記制動状態検出手段が検出した時には、前記制御手段は、前記駆動回路に前記前照灯を点灯させること、を特徴とする。
【0013】
このようにすれば、前記所定の車速未満であれば、前照灯が自動消灯するような場所で、ユーザが制動装置を作動状態にして(ブレーキ操作をして)車両を減速させたために前照灯が自動消灯した後、再びユーザが車両を加速するために制動装置を非作動状態にした(ブレーキ操作を解除した)場合に、すぐに前照灯が点灯し、ユーザの周囲への視界確保がなされるため、安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明が車載用ナビゲーション装置に適用された実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0015】
[構成の説明]
図1は、車載用ナビゲーション装置に適用された、車両前照灯制御システム10の構成を示すブロック図である。車両前照灯制御システム10は、車載用ナビゲーション装置20および車両前照灯装置30が車載LAN(Local Area Network)により接続されてなる。以下それぞれの構成について説明する。
【0016】
車載用ナビゲーション装置20は、自車の現在位置を検出する位置検出器21、車両周囲の明るさを検出する照度センサ22、地図データなどを格納するハードディスクと、そのハードディスクに格納されたデータを読み出すデータ入力器が一体となった記憶手段であるHDD(Hard Disk Drive)装置23、ユーザからの指示を受け付ける操作スイッチ群24、外部と通信を行うための通信機25、ユーザに対して表示による情報提供を行うための表示部26、マイクやスピーカや音声認識装置など(いずれも不図示)からなる音声入出力器27、車両の制動装置の作動状態を検出するためのブレーキセンサ28、車載LANを介して車両前照灯装置30への指示を送信するための車両インターフェース部(車両I/F部)10aに、これらを制御する制御部29が接続され、構成されている。
【0017】
位置検出器21は、車両の走行距離を算出するために、車両前後の速度や加速度を検出し、制御部29に入力する距離センサ21a、車両に加えられる回転運動の大きさを検出し、制御部29に入力するジャイロスコープ21b、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星から電波を受信して、その受信信号を制御部29に入力するGPS受信機21c、を備えている。そしてこれら各エレメントからの入力信号に基づいて、制御部29は車両の現在位置、方位などを算出する。
【0018】
照度センサ22は、車両周囲の照度を検出し、制御部29に入力する。
【0019】
HDD装置23に格納されている地図データは、地図を構成するノードデータやリンクデータ、道路データ、施設のデータなどであり、これらを制御部29に入力する。そして制御部29がこの地図データと、位置検出器21からの入力信号をもとに算出した車両現在位置とを比較することにより、車両がどこに存在するのかが特定される。この地図データには後述するように、ユーザにとって常に前照灯主灯が点灯していることが必要である場所のデータが含まれている。
【0020】
なお、HDD装置23には上記地図データのほかに、車両前照灯装置30を自動制御するための、照度の閾値データや車速の閾値データが格納されており、必要に応じてこれらのデータを制御部29に入力する。
【0021】
操作スイッチ群24は、車両のインストルメントパネルに設けられたメカニカルなキースイッチなどからなり、ユーザからの様々な操作指令を受け付け、受け付けた指令を信号として制御部29に入力するようになっている。また、操作スイッチ群24は、表示部26と一体となったタッチスイッチであってもよい。なお、これら操作スイッチ群24を、図示しないリモートコントロール端末に設け、前記端末からの電波をセンサ(不図示)により受信することで、指示を受け付けるようにすることもできる。
【0022】
通信機25は、ラジオ放送局やラジオ放送のための人工衛星から送られてくる電波を受信することで、天候情報などを取得し、制御部29に信号として入力する。
【0023】
表示部26は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどからなり、ユーザに様々な表示を提供することができるようになっている。たとえば、位置検出器21からの入力により制御部29が算出した車両の現在位置と、HDD装置23から制御部29に入力された地図データとから特定した車両の現在地を示すシンボルマーク、現在地から目的地までの誘導経路などを重ねて表示できる。
【0024】
音声入出力器27は、地図データの施設案内や各種報知のための音声をスピーカから出力し、また、ユーザがマイクから入力した音声を音声認識装置により認識して、電気信号に変換し、制御部29に入力する。これにより、ユーザは、マイクから音声を入力することによってシステムを操作することができる。
【0025】
ブレーキセンサ28は、ユーザによって操作される車両の制動装置(ブレーキ)の状態を検出し、そのことを信号として制御部29に入力する。ここでいう制動装置とはフットブレーキやパーキングブレーキ、サイドブレーキなどである。そしてこのブレーキセンサ28は、前記制動装置が作動状態(ブレーキが作動している状態)から非作動状態(ブレーキが作動していない状態)への遷移を検出し、信号として制御部29に入力する。
【0026】
車両I/F部10aは、制御部29が車両前照灯装置30に対して、点灯指示や消灯指示を送信するための窓口となるもので、制御部29からの前記指示信号を、車載LANを介して車両前照灯装置30に送信する。なお、送信された信号は車両前照灯装置30側の車両I/F部10bを窓口として車両前照灯装置30に届けられる。
【0027】
制御部29は、CPU(Central Processing Unit)に、周辺のROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリが、バスラインにより接続されてなる、マイクロコンピュータを主体として構成されている。そして、上述したさまざまな構成エレメントからの入力信号と、ROMやRAMに記憶されたプログラムとに基づいて各種処理を実行する。
【0028】
車両前照灯装置30は、車両の位置を他車や歩行者に知らせるための補助灯31、車両前方を照らし、運転者(ユーザ)の視界を確保するための前照灯主灯32、車載LANを介して送られるナビゲーション装置20の制御部29からの指示を受け付けるための車両I/F部10b、が車両のライトを点灯あるいは消灯させるための駆動回路33に接続され、構成されている。
【0029】
補助灯31は、いわゆるポジションライトであり、車両の前方部分と後方部分に、それぞれ車幅方向の中心を対称基準として複数配置され、周囲が暗い場合にも、自車の存在位置を他者や歩行者に対してアピールする役割を負う。
【0030】
前照灯主灯32は、いわゆるヘッドライトであり、補助灯31と同様に車両前方部分に車幅方向の中心を対称基準として複数配置され、ユーザの視認性を向上させる役割を負う。
【0031】
駆動回路33はマイクロコンピュータを主体として、補助灯31や前照灯主灯32を駆動する回路を通電状態または遮断状態にするためのリレー、そのリレーを作動させるリレー作動用回路などからなる(いずれも不図示)。そして、車載LANから車両I/F部10bを介して送られる制御部29からの指示により、前記リレー作動用回路を駆動することでリレーを切り換え、前照灯主灯32や補助灯31を点灯あるいは消灯させる。また、この駆動回路33は当然、図示しない車両バッテリや駆動スイッチ(ライトスイッチ)とも接続されており、ユーザによって駆動スイッチが操作されると、これらのライト(補助灯31や前照灯主灯32)を点灯あるいは消灯するように働く。
【0032】
[動作の説明]
以下、本発明にかかわる制御部29の各動作例について、図1乃至図4に示す図やフローチャートなどをもとに説明する。
【実施例1】
【0033】
本実施例の概要は、車両周囲の照度が所定照度未満であることを前提に、そのときの車速が所定車速以上であれば前照灯主灯32を自動点灯させ、逆に所定車速未満であれば自動消灯させるように制御部29を動作させるにおいて、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることを必要とする場所に車両が存在する時には、車速に関わらず前照灯主灯32を自動消灯しないように制御部29を動作させるということである。以下、本実施例における制御部29の具体的動作ついて、図2に示すフローチャートをもとに説明する。
【0034】
図2に示すフローチャートの動作開始(ステップS200)は、ユーザによって車両の駆動源(例えばエンジン)が始動された場合か、アクセサリー・オン(エンジンは起動しないが、車両電気機器(オーディオ装置、ナビゲーション装置、メータ計器など)を動作可能に給電する状態)された場合である。
【0035】
一方、図には示さないが、本フローチャートの動作終了は、ユーザによって車両の駆動源が停止された場合か、アクセサリー・オフされた場合である。ユーザが上記のような動作終了となる操作を行った場合は、フローチャートの動作はその時点で中止され、特にユーザからの手動による事前の指示(不図示のライトスイッチ、を手動で点灯させる操作)がない限りは、点灯している車両ランプ(補助灯31および前照灯主灯32)を消灯させて動作が終了する。
【0036】
さて、上記動作開始をうけて制御部29は、照度センサ22が検出した車両周囲の照度を取得する(ステップS210)。
【0037】
続くステップS220は、取得した車両周囲の照度が予め規定した照度以上であるか否かを判定するステップである。ここで、制御部29はHDD装置23に格納されている規定となる照度のデータを取得し、車両周囲の照度と比較する。そして、車両周囲の照度が規定の照度以上である(ステップS220:yes)場合には、ライトによる視認性の確保は不要なので、ステップS221に進んで、車両前照灯装置30に対して補助灯31と前照灯主灯32を消灯するように指示し、ステップS210に戻る。そして前記指示は車両I/F部10a、車載LANを介して駆動回路33に送られる。
【0038】
この指示をうけて車両前照灯装置30側では、駆動回路33がリレーを切り換え、補助灯31や前照灯主灯32が点灯していればこれらをともに消灯し、逆に消灯していれば消灯状態を維持する。
【0039】
一方ステップS220において、車両周囲の照度が規定の照度未満である(ステップS220:no)場合には、まず、自車の存在を他車や歩行者に対して知らせるために、制御部29は車両前照灯装置30に対して補助灯31を点灯するように指示し、ステップS230に移行する。なお、この指示を受けて車両前照灯装置30は、補助灯31を点灯する。ここでいう規定の照度とは、人間にとって薄暗いと感じる照度であり、数十乃至数百ルクスが考えられる。
【0040】
ステップS240では、制御部29は位置検出器21により検出された車速(実際の車速)を取得する。
【0041】
続くステップS250は、取得した車速が予め規定した車速以上であるか否かを判定するステップである。
【0042】
そして制御部29はHDD装置23に格納されている、この規定となる車速のデータを取得し、実際の車速と比較する。そして、実際の車速が規定の車速以上である(ステップS250:yes)場合には、補助灯31による他車や歩行者へのアピールのみではなく、ユーザ自身の運転における視認性の確保(前照灯主灯32の点灯)も必要であると判断し、ステップS251に進む。
【0043】
そしてステップS251にて制御部29は車両前照灯装置30に対して前照灯主灯32を点灯するように指示し、ステップS210に戻る。なお、この指示をうけて車両前照灯装置30は、すでに点灯させている補助灯31に加え、前照灯主灯32をも点灯あるいは点灯維持させる。
【0044】
一方ステップS250において、実際の車速が規定の車速未満である(ステップS250:no)場合には、制御部29の動作はステップS260に進んで、位置検出器21により検出した車両の現在位置を取得する。
【0045】
そして続くステップS270では、取得した車両の現在位置と、HDD装置23内に格納された地図データを比較し、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることを必要とする場所に自車が存在するか否かを判定する。
【0046】
なお、上記ステップS250がyesと判断されるべき基準となる規定の車速(第1の規定車速)と、ステップS250がnoと判断されるべき基準となる規定の車速(第2の規定車速)は必ずしも一致している必要はない。たとえば、第1の規定車速より第2の規定車速を低速としてもよいし、また一致していてもよいし、逆に第2の規定車速をより高度としてもよい。そして上記いずれの規定車速も、ごく低速の車速のことであり、時速零乃至数キロメートル程度がのぞましい。
【0047】
ここでいう、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることを必要とする場所とは、具体的には、駐車場内やトンネル内、山道、高速道路などに設けられたインターチェンジやサービスエリア内、などである。この理由として、駐車場内では、駐車のためにユーザは低速走行中であっても運転操作のために常に注意を必要とする。また、トンネル内では、たとえ渋滞して発進停止を繰り返したとしても、安全のためにユーザは視界を確保する必要がある。また、山道でも、同様に安全上の観点から常に視界確保が重要である。さらに、サービスエリアやインターチェンジでも駐車や自車の安全のためユーザの視界を確保する必要があるからである。
【0048】
すなわちステップS270において、上記に示すような、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることを必要とする場所に自車が存在すると判断した(ステップS270:yes)場合には、制御部29は、安全のためにステップS271に進み、車両前照灯装置30に対して前照灯主灯32を点灯するように指示したのち、ステップS210に戻る。
【0049】
この指示をうけて車両前照灯装置30側では、駆動回路33がリレーを切り換え、前照灯主灯32が消灯していればこれらを点灯し、逆に点灯していれば点灯状態を維持する。
【0050】
このようにすれば、ユーザが特別な操作をしなくとも、周囲の明るさに応じて補助灯31や前照灯主灯32を自動点灯あるいは消灯させるために、車速に閾値を設けて制御する場合において、上記のようにユーザにとって常に前照灯の点灯が必要な場所(状況下)では、車速に関わらず前照灯主灯32を点灯し、視界確保を図ることができる。
【0051】
一方で、上記の場所に該当しない場所とは交差点付近や踏み切り付近などである。
【0052】
この理由としてたとえば、信号待ちによって交差点付近や踏み切り付近で停車しようとする場合や停止する場合に、歩行者や周囲の他車両にとって、自車の前照灯主灯32が点灯していると、眩しく感じられ、自車両がどこに存在しているのかが正確に把握しにくいためである。このような状況では、ユーザが周囲に注意を配ることも重要であるが、歩行者や他車が自車を認識しやすくすることも安全上必要であるので、前照灯主灯32は消灯し、補助灯31のみ点灯しておくことが望ましい。
【0053】
すなわちステップS270にて上記に示す(交差点付近や踏み切り付近の)ような、ユーザにとって常には前照灯主灯32が点灯していることを必要とする場所に該当しない場所に、自車が存在すると判断した(ステップS270:no)場合には、制御部29は、安全のためにステップS280に進み、車両前照灯装置30に対して前照灯主灯32を消灯するように指示したのちステップS210に戻る。
【0054】
この指示をうけて車両前照灯装置30側では、駆動回路33がリレーを切り換え、前照灯主灯32が点灯していればこれらを消灯し、逆に消灯していれば消灯状態を維持する。
【0055】
このようにすれば、補助灯31によって自車の正確な位置を歩行者や他車に的確に(眩しさを感じさせることなく)アピールでき、自車にとっても安全性が向上する。それだけでなく、前照灯主灯32を点灯することによるエネルギー消費を低減できる。
【0056】
しかし、信号待ちしていた交差点の信号がかわり、また踏み切り手前で通過列車をやり過ごした場合には、ユーザは再び運転操作を行い、車両を移動させようとする。ここで、車速が前記規定の速度以上にならなければ前照灯主灯32が点灯しないとすれば、ユーザの、歩行者や他車に対しての危険予測が遅れる可能性がある。
【0057】
そこで、図2のフローチャートには示さないが、交差点や踏み切り手前で制動装置(ブレーキ)を作動状態にさせて減速し、それによって前照灯主灯32が消灯し、車両が停止した(あるいは前記規定の車速未満のままである)場合において、その後再び車両を移動(あるいは加速)させるために、ユーザが制動装置(ブレーキ)を非作動状態にさせたときは、それ(制動装置の作動状態から非作動状態への遷移)をブレーキセンサ28により検出し、制御部29が直ちに前照灯主灯32を点灯させるようにするのが好適である。
【0058】
このようにすれば、ユーザは、負担なく周囲に対して注意を向けることができるようになる。
【0059】
以上のように、本実施例によれば、車両の周囲が一定の暗さになったことを検出し、まず補助灯31が自動点灯するので、自車の周囲の他車や歩行者に対して自車の位置を正確に知らせることができ、安全性が高まる。
【0060】
それと同時に、そのときの車速が規定の車速(第1の規定車速)以上であれば前照灯主灯32が自動点灯し、逆に規定の車速(第2の規定車速)未満であれば自動消灯するので、ユーザが事前に特別な操作をする必要がなく、前記操作をし忘れることによって前照灯主灯32が無灯火のまま走行することがなくなり、安全性が高まる。
【0061】
そして、さらに、そのとき車速が前記規定の車速未満であっても、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることが必要である場所に、車両が存在しているときには、前照灯主灯32を自動消灯することなく、点灯あるいは点灯状態を維持するので、ユーザの運転操作における視界確保が的確になされ、ユーザは他車両や歩行者への注意を払うことができるので、安全性が高まる。
【0062】
逆に、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることが必要である場所でない場所に、車両が存在する場合、ユーザがブレーキ操作をして車速が前記規定の車速未満となって前照灯主灯32が自動消灯しても、加速のために、ブレーキを開放した場合には、それを検出して直ちに前照灯主灯32を点灯させるので、ユーザの周囲への視認性が確保され、安全性が高まる。
【実施例2】
【0063】
上記実施例1では、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることが必要である場所が、予めHDD装置23内の地図データ上で定められており、位置検出器21により検出した自車位置が、前記地図データ上で該当する場所に存在すると制御部29が判断したときに、車両周囲の明るさが所定以下となったことを前提に、自動的に前照灯主灯32を点灯あるいは点灯維持した。
【0064】
しかし、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることが必要である場所や、そうでない場所を、ユーザ自身が操作スイッチ群24を用いて設定できるようにしてもよい。たとえば、表示部26がタッチパネル式である場合、図3に示すような設定画面からユーザが設定することができるようにしてもよい。
【0065】
図3は、ユーザ自身が、常に前照灯主灯32が点灯していることを要する場所を設定するための表示部26(と一体となった操作スイッチ群24)の設定画面例を示すものである。
【0066】
ここでたとえば、ユーザが暗い山道では常に前照灯主灯32が点灯していた方がよいと考えて、「山道」項目300で、「消灯させない」選択ボタン310を選択し、決定ボタン320を選択すると、周囲の照度が所定未満で山道に自車位置が存在する場合には、車速に関わらず、前照灯主灯32が自動点灯あるいは点灯維持する。
【0067】
逆にたとえば、ユーザが一般道路上では常に前照灯主灯32を点灯することは他車や歩行者にとって眩しく感じられるので、ごく低速の状態(停止状態を含む)では前照灯主灯32を消灯したほうが良いと考えることもごく自然である。そこでユーザが、「一般道路上 すべて」項目330にて、「消灯させる」選択ボタン340を選択し、決定ボタン320を選択すると、周囲の照度が所定未満で、一般道路上に車両が存在する場合には、車速が規定の速度(たとえば時速3キロメートル)未満になると前照灯主灯32が自動消灯する。なお、山道であることや一般道路であることの情報は予め地図データに登録されてHDD装置23に格納されている。
【0068】
次に、上記にかかわる制御部29の動作を示すフローチャートを図4に示した上で説明する。図4に示す破線囲み部Bは、図2に示すフローチャートの破線囲み部Aに相当する部分である。すなわち、実施例2にかかわる制御部29の動作は、実施例1にかかわる動作フローの破線囲み部Aを図4に示すのフローチャートの破線囲み部Bにて置き換えたものである。よって実施例1と同一部分についての説明は省略する。
【0069】
まず、ステップS260にて現在位置を取得した制御部29はステップS400に進み、地図データと前記現在位置を比較して、自車が地図データ上のどの場所(たとえばトンネル内や山道)に存在するのかを特定する。
【0070】
次に、ステップS410にて、ユーザが前記特定した場所で、規定の速度未満であっても前照灯主灯32を消灯させないように設定したか否かを判断する。消灯させないように設定した(ステップS410:yes)場合にはステップS411に進み、前照灯主灯32を点灯する指示を車両前照灯装置30に対して送信し、ステップS210に戻る。
【0071】
逆に消灯させるように設定した(ステップS410:no)場合にはステップS411に進み、車両前照灯装置30に前照灯主灯32を消灯する指示を送信し、ステップS210に戻る。これが本実施例2にかかわる制御部29の動作である。 このように、ユーザにとって常に前照灯主灯32が点灯していることを要する場所を、ユーザ自身が設定できるようにしても、効果的にユーザの運転を支援することができる。
【0072】
[その他の実施例]
本発明は上記各実施例に限定されることなく、様々な様態を採りうる。たとえば上記各実施例では、照度センサ22により、車両周囲の照度が所定値未満であるのを検出することが、前照灯主灯32の車速による点灯制御の動作開始の前提であった。しかし、照度センサ22による照度の検出に代えて、次のようにしてもよい。すなわち、まず通信機25によりラジオ放送を受信することで、日の出、日の入り時刻の情報を取得する。また車載用ナビゲーション装置20に周知の内部時計を内蔵し、その内部時計により現在時刻を取得する。そして前記現在時刻と、前記取得した日の出、日の入り時刻が所定時間範囲内にあることをきっかけに、上述した前照灯主灯32の車速による自動点灯あるいは自動消灯の制御動作を行うようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施例1において、車両前照灯制御システム10が動作中に、ユーザが前照灯を点灯し忘れていたことを思い出し、手動にて前照灯主灯32を点灯させるためのスイッチ操作(不図示のライトスイッチ、の手動操作)を行った場合には、動作を中止し、ユーザの前記手動操作を優先させるようにするとよい。
【0074】
また、上記実施例2では、前照灯主灯32を点灯あるいは消灯する基準となる車速(たとえば時速3キロメートル)を予め規定していたが、この車速をユーザが操作スイッチ群24により変更できるようにすることも可能である。これは次のような場合に効果がある。
【0075】
たとえばユーザが、「一般道路上 すべて」項目330で「消灯させる」選択ボタン340を選択し、「決定」ボタン320を選択することで、一般道路上では車速が所定未満である場合に前照灯主灯32が自動消灯するように設定したとする。このときに、仮に渋滞に巻き込まれ、発進停止を繰り返す場合、前照灯主灯32が点灯あるいは消灯するきっかけとなる、規定の速度が予め固定されていると、前照灯主灯32がユーザの意向に関係なく点灯、消灯を繰り返し、煩わしさを感じさせる可能性も考えられる。そこで上述のように、この規定速度をユーザが操作スイッチ群24により変更可能にすれば(たとえば時速3キロメートルを境に自動点灯あるいは自動消灯するようにすれば)、上記のような煩わしさを感じさせることがなくなる。ただし、このように前照灯主灯32を自動点灯あるいは自動消灯するための基準となる規定の車速をユーザが設定できるようにした場合には、安全上の観点から、変更できる車速に上限(たとえば時速5キロメートルを上限とする)を設ける必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の動作例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態を示す略図である。
【図4】本発明の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
10・・・車両前照灯制御システム
20・・・車載用ナビゲーション装置
30・・・車両前照灯装置
21・・・位置検出器
22・・・照度センサ
23・・・HDD装置
24・・・操作スイッチ群
26・・・表示部
31・・・補助灯
32・・・前照灯主灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記車両の前方を照らし出す前照灯と、
前記前照灯を点灯あるいは消灯させるための駆動回路と、
前記車両の周囲の照度を検出する照度検出手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記照度検出手段により検出された照度が所定の照度未満で、かつこのとき前記車速検出手段により検出された車速が所定の車速以上であれば、前記駆動回路に前記前照灯を点灯させ、また、前記検出された車速が所定の車速未満であれば、前記駆動回路に対して前記前照灯を消灯させる制御手段と、
から構成される車両前照灯制御システムであって、
前記車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
ユーザにとって常に前記前照灯が点灯していることを必要とする場所、のデータを格納する記憶手段と、
前記記憶手段に格納されたデータ、前記検出した現在位置、の双方を比較することで、前記現在位置が前記場所にあるか否かを判定する判定手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記判定手段により前記現在位置が前記場所にあると判定された場合には、前記検出された照度が前記所定の照度未満であることを条件に、前記検出した車速に関わらず、前記駆動回路に前記前照灯を消灯させないこと、
を特徴とする車両前照灯制御システム。
【請求項2】
車両の位置を前記車両の周囲に存在する他車両や歩行者に知らせるための補助灯と、
前記車両の前方を照らし出す前照灯と、
前記補助灯および前照灯それぞれを点灯あるいは消灯させるための駆動回路と、
前記車両の周囲の照度を検出する照度検出手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記照度検出手段により検出された照度が所定の照度未満である場合に、前記駆動回路に前記補助灯を点灯させ、かつこのとき前記車速検出手段により検出された車速が所定の車速以上であれば、前記駆動回路に前記前照灯を点灯させ、また、前記検出された車速が所定の車速未満であれば、前記駆動回路に対して前記前照灯を消灯させる制御手段と、
から構成される車両前照灯制御システムであって、
前記車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
ユーザにとって常に前記前照灯が点灯していることを必要とする場所、のデータを格納する記憶手段と、
前記記憶手段に格納されたデータ、前記検出した現在位置、の双方を比較することで、前記現在位置が前記場所にあるか否かを判定する判定手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記判定手段により前記現在位置が前記場所にあると判定された場合には、前記検出された照度が前記所定の照度未満であることを条件に、前記検出した車速に関わらず、前記駆動回路に前記前照灯を消灯させないこと、
を特徴とする車両前照灯制御システム。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の車両前照灯制御システムにおいて、
さらに、車両に制動力を与える制動装置が作動状態を検出する制動状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記判定手段により前記現在位置が前記場所にないと判定された場合には、前記検出された照度が前記所定の照度未満でありかつ前記検出された車速が所定の車速未満である場合に、前記駆動回路に前記前照灯を消灯させ、このとき前記車両の制動装置が作動状態から非作動状態に遷移したことを前記制動状態検出手段が検出した時には、
前記制御手段は、前記駆動回路に前記前照灯を点灯させること、
を特徴とする車両前照灯制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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