説明

車両後方照明システム

【課題】 自車両と後続車両との車間距離に応じて後部ランプの減光率を変化させ、後続ドライバーの眩惑感を緩和するとともに、減光をブレーキ解除と誤認されないようにする。
【解決手段】 車両後方照明システム1は、自車両の後方を照明する後部ランプ2、後部ランプ2の光量を調節する調光回路3、調光回路3を制御するコントローラ4を備える。コントローラ4に、自車両と後続車両との車間距離を検出する後方レーダ5、自車両と先行車両との車間距離を検出する前方レーダ6、自車両周辺の明るさを検知する照度センサ9等を接続する。コントローラ4は、自車両と後続車両との車間距離が短くなるほど後部ランプ2の減光率が高くなるように調光回路3を制御する。また、コントローラ4は、自車両と先行車両との車間距離に基づいて自車両の発進を予知し、予知した時点で後部ランプ2の光量が増加するように調光回路3を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方を照明するシステム、特に、後続ドライバーの眩惑感を緩和するために、後部ランプの調光制御を行う照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用灯具の光源にLEDが広く使用されている。LEDは指向性が高いため、特に車体後部に装備された後部ランプの場合は、図7(a)に示すように、夜間にブレーキランプ52やストップランプ53が点灯すると、前方からの照射光によって後続車両FVのドライバーが眩惑感を受けることがある。また、省エネの観点からも、後部ランプ51は必要なときに必要な明るさで点灯するように調光するのが好ましい。
【0003】
そこで、従来、図7(b)に示すように、後続車両FVが接近または停止したときに、自車両SVの後部ランプ51の光量を減らす技術が提案されている。例えば、特許文献1には、後続車両から自車両に向けて照射されるヘッドランプのビーム照度を自車両に設けた光センサで検出し、検出した照度レベルに基づいて減光回路を制御し、自車両のストップランプの光量を減少させる照明システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−105623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の照明システムによると、次のような問題点があった。
(1)図7(c)に示すように、後続車両FVの接近中に後部ランプ51が減光すると、この減光を後続ドライバーがブレーキ解除と誤って判断する。
(2)夜間でも周辺環境が明るいと、後続ドライバーが減光状態のブレーキランプ52をテールランプと誤認し、ブレーキを踏むタイミングが遅れ、異常接近を招く。
(3)図7(d)に示すように、自車両SVが発進すると、ブレーキランプ52は輝度を下げてテールランプ54として機能するが、輝度の変化量が小さいため、後続ドライバーが自車両SVの発進に気付くタイミングが遅れる。
【0006】
本発明の目的は、自車両と後続車両の車間距離に応じて、後部ランプの光量をより適切に制御できる車両後方照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両後方照明システムは、自車両の後方を照明する後部ランプと、後部ランプの光量を調節する調光回路と、自車両と後続車両との車間距離を検出する検出手段と、車間距離が短くなるほど後部ランプの減光率が高くなるように調光回路を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。なお、減光率は、車間距離に応じて段階的または連続的に変化させることができる。
【0008】
また、本発明の車両後方照明システムは、自車両の発進を後続車両に確実に知らせるために、自車両の発進を停車状態で予め検知する予知手段を備え、自車両の発進を予知した時点で後部ランプの光量が増加するように、制御手段が調光回路を制御することを特徴とする。
【0009】
ここで、予知手段は、先行車両の発進に基づいて自車両の発進を予知することができる。具体的には、先行車両と自車両との車間距離の変化、先行車両のブレーキランプの光量変化などをセンサで検出することにより、自車両の発進を予知することができる。
【0010】
また、予知手段は、自車両前方の信号機の青色表示に基づいて自車両の発進を予知することもできる。同様に、踏切警報機の通行許可情報を利用することも可能である。青色表示や通行許可情報を道路インフラとの通信によって認識することもできる。
【0011】
さらに、本発明の車両後方照明システムは、後部ランプの減光率を周辺環境の明るさに適合させるために、自車両周辺の明るさを検知するセンサを備え、自車両周辺の明るさが低下するほど後部ランプの減光率が高くなるように、制御手段が調光回路を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両後方照明システムによれば、自車両と後続車両との車間距離が短くなるほど後部ランプの減光率を高くするため、自車両の間近に停車する後続車両のドライバーに与える眩惑感を緩和できる。逆に、減光率は自車両と後続車両との車間距離が長くなるほど低くなるので、減速接近中の後続車両が自車両の減光をブレーキ解除と誤判断する可能性が低下する。従って、自車両と後続車両の車間距離に応じて後部ランプの光量をより適切に制御できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両後方照明システムのブロック図である。
【図2】後部ランプの詳細を示す構成説明図である。
【図3】後部ランプの調光制御を示すフローチャートである。
【図4】調光制御に使用する減光率テーブルを示す図表である。
【図5】減光率テーブルの変更例を示す図表である。
【図6】車両後方照明システムの運用例を示す模式図である。
【図7】従来の車両後方照明システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この実施形態の車両後方照明システム1は、自車両の後方を照明する後部ランプ2と、後部ランプ2の光量を調節する調光回路3と、調光回路3を制御するコントローラ4とを備えている。コントローラ4には、自車両と後続車両との車間距離を検出する後方レーダ5と、自車両と先行車両との車間距離を検出する前方レーダ6とが接続されている。
【0015】
さらに、コントローラ4には、ヘッドランプ(図示略)の点消灯を切り替えるライトスイッチ7、フットブレーキの踏込み中にONするブレーキスイッチ8、および、自車両周辺の明るさを検知する照度センサ9が接続されている。なお、後方レーダ5および前方レーダ6としては、ミリ波レーダ、レーザーレーダ、車車間通信又はGPS等を使用できる。
【0016】
図2(a)に示すように、後部ランプ2は、車体11の後部に装備された複数種のランプからなる。例えば、テールランプとしても機能するブレーキランプ12、ターンシグナルランプとしても機能するハザードランプ13、バックアップランプ14、ストップランプ15等を例示することができる。そして、この実施形態では、調光回路3がブレーキランプ12とストップランプ15を同期して減光し、自車両の発進時にハザードランプ13を点滅させる。
【0017】
図2(b)に示すように、ブレーキランプ12は光源として多数のLED16を使用している。LED16は複数のグループに集約され、ライトスイッチ7がONしたときに、各グループの中心にあるLED16のみが点灯する(テールモード)。図2(c)に示すように、ブレーキスイッチ8がONしたときは、すべてのLED16が点灯する(全点灯モード)。図2(d)に示すように、ブレーキランプ12の光量を減らすときには、予め定められた減光率に応じた個数のLED16が点灯する(減光モード)。
【0018】
ストップランプ15は、ブレーキランプ12と同様、光源に複数のLED16を使用し、全点灯モードと減光モードで点灯する。ブレーキランプ12およびストップランプ15の光量は、LED16の点灯数ではなく、すべてのLED16の駆動電圧を一律に増減することで調節することも可能である。
【0019】
次に、車両後方照明システム1の動作を図3〜図6に従って説明する。図3に示すように、コントローラ4は、自車両の運転中に、後方レーダ5の出力に基づいて自車両と後続車両との車間距離を検出し(S31)、前方レーダ6の出力に基づいて自車両と先行車両との車間距離を検出し(S32)、照度センサ9の出力に基づいて周辺環境の明るさを検出する(S33)。
【0020】
走行中にブレーキスイッチ8がONすると(S34)、コントローラ4は、まず、ブレーキランプ12とストップランプ15を所定時間全点灯させるための指令を調光回路3に出力する(S35)。次に、後続車両との車間距離および周辺環境の明るさに応じた減光指令を調光回路3に出力する(S36)。ここで、コントローラ4はメモリ10(図1参照)に格納された減光率テーブルに従って減光指令を出力する。
【0021】
図4に示す減光率テーブル1は、ブレーキランプ12とストップランプ15の減光率が、自車両と後続車両との車間距離が短くなるほど高くなり、かつ、周辺環境の明るさが低下するほど高くなるように構成されている。例えば、図6(a)に示すように、後続車両が存在しない又は遠方に存在する場合は、周辺環境の明暗に関わりなく、ブレーキランプ12とストップランプ15の減光率が0%(全点灯)に設定されている。
【0022】
図6(b)に示すように、後続車両FVが減速し自車両SVに接近中であるときの減光率は、明るい環境下で20%、暗い環境下で30%に設定されている。図6(c)に示すように、後続車両FVが自車両SVの間近に停車している場合の減光率は、明るい環境下で40%、暗い環境下で50%に設定されている。図5に示す減光率テーブル2では、周辺環境が暗い場合の減光率が、テーブル1と比較して、さらに高くなるように設定されている。
【0023】
図6(d)に示すように、自車両SVの停車状態で先行車両PVが発進すると、コントローラ4は、自車両SVと先行車両PVとの車間距離の拡大に基づいて、自車両SVの発進を予知する(図3:S37)。そして、自車両SVの発進を予知した時点で、ハザードランプ13を1回または数回点滅させ(S38)、後部ランプ2の全体としての光量を増加させる。その後、ブレーキスイッチ8のOFFを確認し(S39)、ブレーキランプ12とストップランプ15を消灯させる(S40)。
【0024】
従って、この実施形態の照明システム1によれば、次のような作用効果が得られる。
(イ)図6(b)に示すように、自車両SVと後続車両FVとの車間距離が長くなるほど、後部ランプ2の減光率が低くなるので、後続車両FVのドライバーが自車両SVの減光をブレーキ解除と誤判断するおそれがなくなる。
(ロ)また、後続車両FVのドライバーは、減光状態のブレーキランプ12をテールランプと誤認するおそれもなく、ブレーキを適正なタイミングで操作することができる。
【0025】
(ハ)図6(c)に示すように、自車両SVと後続車両FVとの車間距離が短くなるほど、後部ランプ2の減光率が高くなるので、自車両SVの間近に停車する後続車両FVのドライバーに与える眩惑感を緩和できる。
(ニ)図6(d)に示すように、自車両SVが発進する直前に、ハザードランプ13が点滅して後部ランプ2の光量を一時的に増加させるので、図6(e)に示すように、ブレーキランプ12とテールランプ17の明暗差が小さくても、後続車両FVは自車両SVの発進を確実に気付くことができる。
【0026】
なお、後部ランプ2の増光に際しては、ハザードランプ13の点滅によらず、ブレーキランプ12とストップランプ15を全点灯状態に戻すことによって、自車両SVの発進を後続車両FVに知らせることもできる。また、自車両SVの発進は、先行車両PVとの車間距離によらず、自車両前方の信号機18(図6参照)の青色表示に基づいて予知することもできる。その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 車両後方照明システム
2 後部ランプ
3 調光回路
4 コントローラ
5 後方レーダ
6 前方レーダ
9 照度センサ
12 ブレーキランプ
13 ハザードランプ
15 ストップランプ
18 信号機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の後方を照明する後部ランプと、後部ランプの光量を調節する調光回路と、自車両と後続車両との車間距離を検出する検出手段と、車間距離が短くなるほど後部ランプの減光率が高くなるように前記調光回路を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする車両後方照明システム。
【請求項2】
自車両の発進を停車状態で予め検知する予知手段を備え、自車両の発進を予知した時点で後部ランプの光量が増加するように、前記制御手段が調光回路を制御する請求項1記載の車両後方照明システム。
【請求項3】
前記予知手段が先行車両の発進に基づいて自車両の発進を予知する請求項2記載の車両後方照明システム。
【請求項4】
前記予知手段が自車両前方の信号機の青色表示に基づいて自車両の発進を予知する請求項2記載の車両後方照明システム。
【請求項5】
自車両周辺の明るさを検知するセンサを備え、自車両周辺の明るさが低下するほど後部ランプの減光率が高くなるように、前記制御手段が調光回路を制御する請求項1〜4の何れか一項に記載の車両後方照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76714(P2012−76714A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226481(P2010−226481)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】