車両挙動制御装置
【課題】後輪の転舵により旋回させられる車両において、後輪の旋回外側への移動を制限する。
【解決手段】後輪18が内側基準線L*上を、回転軸線LRが平面視において内側基準線L*と直交する姿勢を保持しつつ、移動するように、後輪舵角δが制御される。また、後輪舵角δは、目標舵角δrefに近づくまで漸増させられる。そのため、車両がUターンする場合において、Uターンに利用できるスペースの基準線L*からの距離Wが小さくても、後輪18が基準線L*を超えないように、Uターンさせることができる。
【解決手段】後輪18が内側基準線L*上を、回転軸線LRが平面視において内側基準線L*と直交する姿勢を保持しつつ、移動するように、後輪舵角δが制御される。また、後輪舵角δは、目標舵角δrefに近づくまで漸増させられる。そのため、車両がUターンする場合において、Uターンに利用できるスペースの基準線L*からの距離Wが小さくても、後輪18が基準線L*を超えないように、Uターンさせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪舵角を制御することにより車両の挙動を制御する車両挙動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前2輪、後1輪を備えた車両に、後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を設けることが記載されている。この車両の車体の後部左側角部(運転席と対角位置にある部分)は面取り形状とされており、狭い空間においても旋回可能とされている。
特許文献2には、前2輪、後1輪を備えた車両において、前2輪が駆動輪とされ、後1輪が操舵輪とされ、旋回時に、前2輪に加えられる駆動力差が制御されることが記載されている。例えば、後輪舵角が大きい場合に、前2輪の駆動力差を大きくすることにより、小さい半径での旋回が可能となる。
特許文献3には、前後左右の4輪を備えた車両に、後輪を前輪と逆相、あるいは、同相に転舵させる後輪転舵機構を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−91790号公報
【特許文献2】特開平11−215617号公報
【特許文献3】特開平3−90482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両挙動制御装置の改良であり、例えば、後輪あるいは車体の後部の旋回外側への移動を自動で制限することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両挙動制御装置は、車両が第1状態から旋回する場合に、車両の一部である着目部が、平面視において、基準線から旋回外側へ移動しないように、後輪舵角を制御するものである。
後輪の転舵により旋回する車両においては、後輪が旋回外側に移動するが、運転者は後輪あるいは車体の後部の動きを認識し難い場合がある。そのため、自動で、後輪あるいは車体の後部縁部等が、第1状態で決まる基準線より旋回外側へ移動しないようにすることは望ましいことである。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)左右2つの前輪と少なくとも1つの後輪とを備えた車両に設けられ、その車両の旋回挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記少なくとも1つの後輪の転舵により前記車両を第1状態から旋回させるとともに、前記車両の予め定められた部分である着目部が、平面視において前記車両の第1状態で決まる基準線より旋回外側へ移動しないように、前記少なくとも1つの後輪の転舵角度である後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を含むことを特徴とする車両挙動制御装置。
平面視とは、車両の真上から見ることをいうが、車両の真上から、路面に垂直な方向に見る場合や、鉛直方向に見る場合がある。
第1状態とは、本発明が適用される旋回のスタート状態であり、車両が停止状態にある場合や走行状態にある場合がある。
旋回外側とは、第1状態から旋回する場合の、その旋回外側を表す。具体的には、第1状態において後輪が転舵されている場合には、その後輪の転舵方向で旋回方向が決まる。また、第1状態から運転者によって操舵部材が操作されて後輪が転舵される場合には、その転舵方向で旋回方向が決まる。
基準線は、路面に想定される線であっても、車両が存在する3次元空間に想定される線であってもよいが、3次元空間に想定される線は、平面視において、路面に想定される線であると考えることができる(路面に投影された線となる場合がある)。
(2)前記基準線が、前記車両の第1状態において、前記車両の最も旋回外側に位置する部分を通り、かつ、前記左右前輪の各々の、回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線と直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な線である(1)項に記載の車両挙動制御装置。
基準線は、3次元空間に想定される線とされる場合がある。第1状態において、車両が道路と平行に停止している場合には、道路と平行な線となる。
(3)前記着目部が、前記車両の前記第1状態における車体の旋回外側の後部縁部であり、前記後輪舵角制御装置が、前記後部縁部が前記基準線から前記旋回外側に移動しないように、前記後輪舵角を制御する車体対応制御部を含む(2)項に記載の車両挙動制御装置。
本項に記載の車両において、車体の後部の縁部は、後輪より幅方向の外方にある。
(4)前記基準線が、前記車両の第1状態において、前記車両が存在する路面の、前記左右前輪のうち旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する面である路面側接面の最も旋回外側に位置する点を通り、かつ、前記左右前輪の各々の、回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線と直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な線である(1)項に記載の車両挙動制御装置。
基準線は、路面に想定される線であり、第1状態において路面の旋回外側前輪と接する面である路面側接平面の最も旋回外側に位置する部分を通り、かつ、車体の前後線と平行な線である。
(5)前記着目部が、前記少なくとも1つの後輪のうちの旋回外側に位置する旋回外側後輪の前記路面と接する面である車輪側接平面内の予め定められた点であり、前記後輪舵角制御装置が、前記旋回外側後輪の前記予め定められた点が、前記基準線上、または、基準線より旋回内側に位置し、かつ、前記旋回外側後輪の回転軸線が、平面視において、前記基準線と直交する姿勢となるように、前記後輪舵角を制御する後輪対応制御部を含む(4)項に記載の車両挙動制御装置。
着目部が、旋回外側後輪の路面と接する面である車輪側接平面の予め決められた点であり、その予め定められた点が基準線上、あるいは、基準線より旋回内側に位置するように、後輪舵角が制御される。予め定められた点は、例えば、(i)車輪側接平面の最も旋回外側に位置する点としたり、(ii)車輪側接平面の幅方向の中心線上の1点としたり、(iii)車輪側接平面の中心としたり、(iv)車輪側接平面内の、旋回外側後輪がフリーな状態(力が加えられていない状態)における幅方向の中心線上の点に対応する点としたり、(v)車輪側平面内の、旋回外側後輪の回転軸線の幅方向の中心点を投影した点としたりすること等ができる。
なお、基準線より旋回内側に、基準線と平行で、かつ、路面側接平面の幅方向の中心を通る線(内側基準線)を想定し、その内側基準線上を、その着目部が通るように、後輪舵角が制御されるようにすることができる。後輪舵角がこのように制御されれば、着目部が基準線より旋回外側に移動しないようにすることができる。
また、旋回外側後輪の回転軸線が平面視において基準線と直交する姿勢とされるため、後輪は基準線と平行に移動する。
(6)前記後輪舵角制御装置が、前記後輪舵角が、運転者による操舵部材の操作状態に基づいて決まる目標舵角に近づくように制御する目標舵角対応制御部を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
(7)前記後輪舵角制御装置が、前記後輪舵角が、前記少なくとも1つの後輪を転舵する後輪転舵機構で決まる最大角度に達するまで制御する最大舵角対応制御部を含む(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
着目部が基準線から旋回外側に移動しないように、後輪舵角を目標舵角に近づくように制御すれば、旋回等に利用可能なスペースの幅が狭くても、そのスペース内で旋回等をすることが可能となる。また、最大舵角まで大きくすれば、さらに、狭いスペースにおいても旋回等をすることが可能となる。
(8)前記車両が、前記左右前輪と、それら左右前輪の各々の回転中心軸線の幅方向の中点を結ぶ左右線の中点を通り、かつ、その左右線に直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線上に位置する1つの後輪とを備えた3輪車両である(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
(9)前記車両が、前記左右前輪と、左右後輪とを備え、前記左右前輪のトレッドより左右後輪のトレッドの方が小さい4輪車両である(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
本発明は、前2輪および後1輪を含む3輪車両、トレッドが後輪側の方が小さい4輪車両に適用することができる。
3輪車両においては、1つの後輪が旋回外側後輪に対応する。4輪車両においては、旋回方向によって旋回外側後輪が決まる。
また、後輪舵角の制御は、前輪、後輪がすべらないことが前提で行われる。
なお、左右前輪は駆動輪とされる場合があり、後輪舵角の制御に加えて、左右前輪の回転速度差の制御も行うことができる。
(10)前記車両の車体が、前部の幅方向の長さより後部の幅方向の長さの方が小さい形状を成し、かつ、前記車体の後部の縁部が、前記後輪の外側回転面より幅方向の外側に位置する形状を成したものである(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
(11)前記後輪が操舵輪とされた(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
本発明に係る車両挙動制御装置は、後輪が操舵輪である車両に適用されるのであり、前輪および後輪が操舵輪である車両に適用することも、前輪は操舵輪でない車両に適用することもできる。前輪および後輪が操舵輪である車両においては、後輪が前輪と逆相に転舵されることがある。
車両に1つの後輪が含まれる場合には、その後輪の転舵角が後輪舵角とされる。左右2つの後輪が含まれる場合には、左右後輪の転舵角は同じになるように制御されるのが普通であり、その共通の転舵角が後輪舵角とされる。
【0008】
(12)左右2つの前輪と少なくとも1つの後輪とを備えた車両に設けられ、前記車両の旋回挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記少なくとも1つの後輪の転舵により前記車両を第1状態から旋回させるとともに、前記少なくとも1つの後輪のうちの旋回外側に位置する旋回外側後輪が、前記車両の第1状態で決まる軌跡に沿って移動するように、前記少なくとも1つの後輪の転舵角度である後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を含むことを特徴する車両挙動制御装置。
旋回外側後輪が軌跡に沿って移動するように後輪舵角が制御されれば、例えば、後輪の旋回外方への移動を自動で制限することができる。
本項に記載の車両挙動制御装置には、(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
(13)前記軌跡が、路面の、前記車両の左右前輪のうち前記第1状態において旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する部分の予め定められた点を通り、かつ、前記左右前輪の各々の回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線に直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な直線状の軌跡であり、前記後輪舵角制御装置が、前記旋回外側後輪が、前記直線状の軌跡に沿ってすべることなく移動するように、前記後輪舵角を制御する軌跡対応後輪舵角制御部を含む(12)項に記載の車両挙動制御装置。
軌跡は、直線状に延びたものであり、路面に想定される。軌跡は、路面の旋回外側前輪と接する部分である路面側接平面内の予め定められた点を通るが、予め定められた点は、路面側接平面の幅方向の中心線上の点としたり、中点としたり、最も旋回内側の点としたりすること等ができる。
旋回外側後輪は、旋回外側前輪で決まる直線状の軌跡に沿ってすべることなく移動するのであり、旋回外側後輪の回転軸線と直線状の軌跡とが平面視において直交する状態で、回転しつつ移動させられる。
車輪の回転面が路面の法線に対して傾斜していない場合には、回転面が軌跡と平行となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の複数の実施例である車両挙動制御装置が搭載された車両を示す図である。(a)2つの前輪と1つの後輪とを備えた3輪車両を概念的に示す平面図である。(b)2つの前輪と2つの後輪とを備えた4輪車両を概念的に示す平面図である。
【図2】上記3輪車両の後輪周辺を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る車両挙動制御装置によって車両挙動制御が行われた場合の上記3輪車両の状態を示す図である。
【図4】(a)上記車両挙動制御のうちのPART1制御が行われない場合を示す図である。(b)上記PART1制御が行われる場合を示す図である。
【図5】上記PART1制御の内容を概念的に示す図である。(a)点Pに達する直前に後輪舵角が小さくされる場合を示す図である。(b)点Pに達するまでの間、後輪舵角が漸減させられる場合を示す図である。
【図6】上記車両挙動制御のうちのPART2制御の内容を概念的に示す図である。
【図7】上記車両挙動制御装置の記憶部に記憶された後輪舵角制御プログラムを表すフローチャートである。
【図8】(a)本発明の実施例2に係る車両挙動制御装置による車両挙動制御のうちのPART1制御が行われない場合を示す図である。(b)上記PART1制御が行われる場合を示す図である。
【図9】上記PART1制御の内容を概念的に示す図である。
【図10】上記車両挙動制御のうちのPART2制御の内容を概念的に示す図である。
【図11】(a)本発明の実施例3に係る車両挙動装置を概念的に示す図である。(b)本発明の実施例4に係る車両挙動装置を概念的に示す図である。
【図12】(a)本発明の実施例5に係る車両挙動装置を概念的に示す図である。(b)本発明の実施例6に係る車両挙動装置を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に本発明の複数の実施例に係る車両挙動装置が搭載される車両について説明する。
車両10は、図1(a)に示すように、3輪車両であり、左右2つの前輪14,16と1つの後輪18とを含む。後輪18は、左右前輪14,16の回転軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線B1の中点において直交し、車両の前後方向に伸びる前後線B2上に位置する。
また、図1(a)に示すように、車体20の後部においては、車体20の方が、後輪18より幅方向の長さが大きく、後輪18の転舵角δが設定値より小さい場合には、後部縁部20RR、RLが後輪18の幅方向の外側に位置する。車体20の前部においては、車体20の幅方向の長さが左右前輪14,16の各々の外側回転面同士で決まる幅方向の長さより小さい。そのため、車輪14,16の各々の外側回転面14FA,16FAは、車体20の前部の縁部20FL、FRの幅方向の外側に位置する。
【0011】
車両10において、後輪18が操舵輪であり、図2に示すように、後輪18に後輪18を転舵する転舵機構22が設けられる。転舵機構22は、後輪18を両側から保持するキングピン23を回転させることにより転舵するものである。転舵機構22には、電動モータを含む転舵アクチュエータ24(図1参照)が含まれる。
【0012】
車両挙動ECU30は、コンピュータを主体とするものであり、実行部,記憶部,入出力部等を含み、入出力部には、操舵量センサ32、車両の走行速度を検出する車速センサ34,後輪18の実際の転舵角を検出する転舵角センサ36等が接続されるとともに、転舵アクチュエータ24等が接続される。記憶部には、後輪舵角制御プログラム等の種々のプログラム、図示しないテーブル等が記憶される。
操舵量センサ32は、運転者によって操作可能な操舵部材38の操作方向および操作量を検出するものであり、転舵アクチュエータ24は、主として操舵量センサ32によって検出される操舵部材38の操作状態(操作方向および操作量で表される)に基づいて制御される。
【0013】
本車両挙動装置は、図1(b)に示すように、左右前輪14,16、左右後輪50,52を備えた4輪車両54に適用することもできる。4輪車両54においては、後輪側のトレッドTrが前輪側のトレッドTfより小さくされている(Tf>Tr)。
また、車両10における場合と同様に、車体56の後部において、後部縁部56RL、RRが、それぞれ、後輪50,52の外側回転面50FA,52FAの幅方向の外側に位置する。車体56の前部において、車輪14,16の各々の外側回転面14FA,16FAは、車体56の前部縁部56FL、56FRの幅方向の外側に位置する。
【実施例1】
【0014】
本実施例においては、車両挙動装置が車両10に適用される場合について説明する。
車両10の挙動が図3に示すように制御されるのであり、後輪18の着目部Kが、平面視において、第1状態において決まる基準線Lより旋回外側へ移動しないように、後輪舵角δが制御される。
第1状態は、本実施例においては停止状態であり、例えば、車両10が道路に沿って駐車した状態等である。
基準線Lは、路面に想定される線であり、左右前輪14,16のうち、旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する路面側接平面の最も旋回外側に位置する点を通り、かつ、車両の前後線B2と平行な線Lとされる。
着目部Kは、後輪18の路面と接する車輪側接平面内の、後輪18の回転軸線の中心点を投影した点とされる。
本実施例においては、基準線Lに平行で、かつ、路面の旋回外側前輪と接する路面側接平面の幅方向の中心線上の点を通る内側基準線L*を想定し、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢を維持しつつ、着目部Kが内側基準線L*上を移動するように、後輪舵角δが制御される。後輪18の回転面が路面の法線に対して傾斜していない場合には、内側基準線L*と回転面とが平行となる。
このように、着目部Kが内側基準線L*上を移動するように後輪舵角δが制御されるようにすれば、平面視において、着目部Kが基準線Lを超えないようにすることができる。また、本実施例において、内側基準線L*が軌跡に対応する。
【0015】
後輪舵角δの制御は、PART1制御とPART2制御とを含む。PART1制御は、図3に示すように、車両がA状態(第1状態に対応する)からB状態(後輪18の着目部Kが内側基準線L*上に位置する状態)に到達するまでに行われる制御であり、PART2制御は、車両がB状態からC状態に到達するまでに行われる制御である。
<PART1>
PART1制御は、後輪舵角δの制御が行われないと仮定した場合に、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢になるまでの間に、後輪18の着目部Kが内側基準線L*を超える(内側基準線L*の旋回外側へ移動させられる)場合に行われる制御である。
そして、PART1制御は、後輪18の着目部Kが内側基準線L*に達するまでに、後輪舵角δを、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢となる大きさ、すなわち、後輪18の回転面が路面の法線に対して傾斜していない場合には、内側基準線L*と回転面とが平行となる大きさに変える制御である。
【0016】
車両10がすべることなく走行すると仮定した場合に、旋回中心Oは、前輪14,16の回転軸線の延長線と、後輪18の回転軸線の延長線との交点となる。
また、図4(a)に示すように、旋回半径rと、車両10のホイールベースBLと、後輪舵角δとの間には、式
sinδ=BL/r
が成立する。この式において、ホイールベースBLは既知であり、後輪舵角δは転舵角センサ36によって検出されるため、これらBL、δの値を代入すれば、旋回半径rがわかる。
さらに、車両10の走行速度V、旋回半径r、中心角θの間には、式
V=r・θ
が成立する。この式において、車両10の走行速度Vは車速センサ34によって検出されるため、旋回半径r、走行速度Vを代入すれば、中心角θがわかる。
以上のことから、第1状態からの車両10の位置、すなわち、第1状態からの後輪18の位置がわかる(移動方向、移動量がわかる)のであり、後輪18の位置等に基づいて後輪舵角δが制御される。
なお、後輪18の位置は、GPS(Global Positioning System)を利用して取得することもできる。
【0017】
[制御の要否]
車両10の第1状態から、運転者は、Uターンして、あるいは、旋回して、走行車線に出ようとして、操舵部材38を操作するのが普通である。その場合に、図4(a),(b)が示すように、車両10の旋回により、後輪18の着目部Kが点Sから点Pcに至るまでに、後輪18の着目部Kが内側基準線L*の旋回外側へ移動する場合と移動しない場合とがある。点Pcは、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する点(位置)であり、換言すれば、後輪18の回転軸線LRが第1状態における左右前輪14,16の回転軸線(左右線B1)と平行となる点である。
第1状態から車両10が旋回する際の後輪18の転舵角δが検出される。そして、上述のように、転舵角δに基づいて旋回半径rが取得され、旋回半径rに基づいて、旋回中心Oが取得され、旋回中心Oから内側基準線L*までの距離Mが取得される。そして、旋回半径rと距離Mとが比較され、旋回半径rが距離M以下である場合には、PART1制御は不要である。後輪18の着目部Kが内側基準線L*を超えないで点Pcに達し得る場合であり、その場合の一例を図4(a)に示す(r≦M)。
それに対して、旋回半径rが距離Mより大きい場合には、PART1制御は必要である。後輪18の着目部Kが点Pcに達するまでの間に内側基準線L*を超える場合(点P)であり、その場合の一例を図4(b)に示す(r>M)。
【0018】
[制御の内容]
PART1制御においては、図5(a),(b)に示すように、後輪18の着目部Kが内側基準線L*上に達した場合に、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交するように後輪舵角δが制御される。
具体的には、図5(a)に示すように、点P(後輪18の着目部Kが内側基準線L*に達した点)に達する直前に、後輪舵角δを小さくして(δ→δc)、平面視において、後輪18の回転軸線LRを内側基準線L*と直交する姿勢とすることができる。この場合には、PART1制御において、点Pに達した場合に、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢とされるため、点Pは点Pcとなる。
なお、図5(b)に示すように、点Pに達するまでの間、後輪舵角δを徐々に小さくして(δs>δq>δp)、点Pに至る時点で回転軸線LRが内側基準線L*に直交するようにすることもできる。この場合には、旋回半径rは徐々に大きくなる(rs<rq<rp)のであり、旋回中心Oは、後退方向に移動させられる(So→Qo→Po)。
【0019】
<PART2>
PART2制御は、後輪18が点Pcに達した場合(PART1制御によって後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢にされたことにより、点Pが点Pcとされた場合と、PART1制御が行われることなく点Pcに達した場合とがある)から開始され、後輪18の実際の転舵角δ(以下、後輪舵角δと称する)を目標舵角δrefに近づける。
[制御の要否]
PART2の制御は、後輪18の着目部Kが点Pcに達した場合において、後輪舵角δの絶対値が運転者による操舵部材38の操舵量φで決まる目標舵角δrefより小さい場合(|δ|<|δref|)に行われるが、後輪舵角δの絶対値が目標舵角δref以上である場合(|δ|≧|δref|)には行われない。目標舵角δrefは、操舵部材28の操作量φにゲインGを掛けた値であるが、転舵の向きが逆になるため、式
δref=−G・φ
で求められる。
[制御の内容]
PART2制御において、図6に示すように、後輪18が、後輪18の着目部Kが内側基準線L*上を、回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢を保持して回転しつつ、後輪舵角δが大きくされる。後輪舵角δは目標舵角δrefと等しくなるまで漸増させられる(δp<δx<δy=δref)。旋回半径rは徐々に小さくされ、旋回中心が車体20に徐々に近づけられる(Po→Xo→Yo)。目標舵角δrefは、最大舵角である場合もある。後輪舵角δは、予め定められた勾配で(設定角度ずつ)増加させたり、予め定められた設定時間(設定回数)内に目標舵角δrefに達するように増加させたりすることができる。また、車両の前方のスペースが狭い場合は、広い場合より、大きな勾配で増加させるようにすることもできる。
【0020】
図7のフローチャートで表される後輪舵角制御プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。
S1において、車両が第1状態としての停止状態にあるか否かが判定される。停止状態にある場合には、S2において、内側基準線L*が取得される。
それに対して、車両が発進した場合には、S3において、後輪舵角δが検出され、S4においてPART2制御中であるか否か、S5において、Pc点に到達したか否か、S6において、PART1制御中であるか否かが判定される。発進してから、最初にS4〜6が実行される場合には、いずれのステップにおける判定もNOとなる。S7,8において、PART1制御が必要であるか否かが判定される。S7において、上述のように、距離M、後輪18の旋回半径rが取得されて、点Pあるいは点Pcが取得される。そして、S8において、旋回半径rが距離Mより大きいか否かが判定される。
旋回半径rが距離M以下である場合にはPART1制御は不要である。点Pcが、内側基準線L*上あるいは内側基準線L*より旋回内側に位置する点となる。
旋回半径rが距離Mより大きい場合にはPART1制御は必要である。着目部Kが内側基準線L*上に達した場合(点P)において、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*に対して傾斜する姿勢にある。
PART1制御が必要である場合には、S9において、PART1制御が行われる。具体的には、後輪18が点Pに達したか否かが判定され、点Pに達するまでに、回転軸線LRが内側基準線L*と直交するように、後輪舵角18が小さくされるのであり、PART1制御が終了すると、点Pは点Pcとされる。
【0021】
後輪18が点Pcに達するまでの間、S1,3〜6,9が繰り返し実行される。PART1制御が終了した場合、あるいは、PART1制御が行われることなく、点Pcに到達した場合には、S5の判定がYESとなり、S10が実行される。
S10において、操舵量φに基づいて目標舵角δrefが取得され、S11において、目標舵角δrefの絶対値が後輪舵角δの絶対値より大きいか否かが判定される。目標舵角δrefの絶対値の方が後輪舵角δの絶対値より大きい場合には、S12において、PART2制御が実行されるが、目標舵角δrefの絶対値が後輪舵角δの絶対値以下である場合には、PART2制御は行われず、S13において、終了処理が行われる。用いられたパラメータ等の初期化等が行われる。
PART2制御においては、後輪舵角δの絶対値が漸増させられ、目標舵角δrefと等しくされる。
PART2制御中には、S4の判定がYESとなり、S14において、後輪舵角(実際の転舵角)δの絶対値が目標舵角δrefの絶対値に達したか否かが判定される。目標舵角δrefの絶対値に達する前においては、S1,3,4,14,12が繰り返し実行され、PART2制御が継続して行われる。後輪舵角δの絶対値が目標舵角δの絶対値に達すると、S14の判定がYESとなり、S13において終了処理が行われる。
【0022】
その後、車両10はUターンして走行車線に出ることが多いが、図6に示すように、点PcからUターンする場合(W0)より、PART2制御が行われた後の点YからUターンした場合(WS)の方が、Uターンにおいて使用されるスペースの内側基準線L*からの幅Wを小さくすることができる。
換言すれば、PART2の制御により、Uターンに利用できる道路の幅方向の距離(内側基準線L*からの幅)Wが小さくても(WS>W0)、車両10をUターンさせることが可能となる。
また、PART1制御が行われると、PART2制御が開始される点Pcが車両10の第1状態に近くなる。そのため、車両10の第1状態における位置からUターンに利用できる道路の前方の距離(第1状態の左右線B1からの距離)D(図3参照)が小さくても、Uターンできるという利点もある。
【0023】
本実施例においては、車両挙動ECU30の後輪舵角制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により後輪舵角制御装置が構成される。後輪舵角制御装置は、後輪対応制御部、軌跡対応制御部でもある。また、後輪舵角制御装置のうちの、S10〜14を記憶する部分、実行する部分等により目標舵角制御部が構成される。目標舵角が最大転舵角である場合には、目標舵角制御部は最大舵角制御部に対応する。
【実施例2】
【0024】
本実施例においては、図8(a)に示すように、基準線Lが、第1状態における車両10の最も旋回外側に位置する部分を通り、かつ、車両の前後線B2と平行な線とされる。本実施例においては、旋回外側前輪の外側回転面(本実施例においては、外側回転面16RR)の最も旋回外側に位置する部分を通る線となる。
また、着目部Kが車体20の旋回外側の後部縁部(本実施例においては、後部縁部20RR)とされる。
本実施例においても、実施例1における場合と同様に後輪舵角δが制御されるのであり、原則として、PART1制御とPART2制御とが行われる。
車体20の後部縁部20RRと後輪18との間の相対位置関係は、車両10の構造、後輪舵角δによって決まる。平面視において、後部縁部20RR(K)と後輪18の回転軸線の幅方向の中心点Tとを結ぶ線TKの長さをβとし、線TKと車両10の前後線B2との成す角度をαとすると、三角形ΔOTKが一義的に決まる。すなわち、三角形ΔOTKの辺OTが後輪18の旋回半径rであり、実施例1における場合と同様に後輪舵角δから取得することができる。また、辺TKの長さはβであり、辺OTと辺TKの成す角度は、(90°+δ+α)となる。角度α、長さβは車両10の構造で決まる。そして、これらの値がわかれば、三角形ΔOTKが決まるのであり、辺OKの長さ、すなわち、着目部K(後部縁部20RR)の旋回半径r*がわかる。
このように、後輪18の軌跡に基づけば、後部縁部20RR(K)の軌跡がわかるのであり、後輪舵角δを制御することにより、後部縁部20RRの軌跡を制御することができる。
なお、後輪18,後部縁部20RRの軌跡は、GPSを利用して取得することもできる。
【0025】
<PART1>
図8(a)に示すように、旋回中心Oから基準線Lまでの距離Mが後部縁部20RRの旋回半径r*以下である場合には、PART1制御を行う必要はないが、図8(b)に示すように、距離Mより旋回半径r*の方が大きい場合には、PART1制御を行う必要がある。
PART1制御を行う必要がある場合には、図9に示すように、後部縁部20RRが基準線L上に位置する点Pに達するまでに、後輪舵角δが、回転軸線LRが基準線Lにほぼ直交する姿勢となるように制御される(δ→δc)。PART1制御が行われた場合には、点Pが点Pcとされる。
PART1制御を行う必要がない場合には、PART1制御は行われないが、点Pcは、後部縁部20RRが基準線Lに最も近づいた点であり、この場合には、後輪18は、回転軸線LRが基準線Lとほぼ直交する姿勢にある。
<PART2>
PART2制御においては、図10に示すように、後部縁部20RRが基準線L上を通るように、後輪舵角δの絶対値が目標舵角δrefの絶対値に達するまで、後輪舵角δが漸増させられる(δp<δx<δy<δz=δref)。また、旋回半径rは、漸減させられるのであり、旋回中心は、徐々に車両10に近づけられる(Po→Xo→Yo→Zo)。
その結果、実施例2においても同様に、Uターン等に使用できるスペースが狭くても、(例えば、Uターンするのに利用できるスペースの基準線Lからの幅方向の距離Wが小さくても)Uターンすることができる。また、PART1制御が行われた場合には、第1状態における左右線B2からの前方の距離Dが小さくても、Uターンすることが可能となる。
本実施例においては、車両挙動ECU30の後輪舵角δを制御する部分等により車体対応制御部が構成される。
【実施例3】
【0026】
実施例3に係る車両10には、図11(a)に示すように、PS(Power Steering)機構60と、報知装置62とが設けられる。報知装置62は、ディスプレイを含むものとしたり、音声発生装置を含むものとしたりすること等ができる。
実施例3においては、操舵量φの絶対値が設定値より大きい場合には、PS機構60において助勢力が加えられないようにしたり、助勢力が小さくなるようにしたり、逆に、大きな反力が加えられるようにしたりすることができる。また、報知装置62により、操舵量φの絶対値が設定値より大きく、これ以上、操舵量φの絶対値を大きくする操作が行われることは望ましくないことを報知することができる。
【0027】
例えば、車両10が第1状態にある場合に、操舵部材38の操作量の絶対値が予め定められた設定値より大きくならないようにすることができる。すなわち、PART1制御の要否は、第1状態における後輪舵角δで決まる。また、PART1制御が必要となる後輪舵角δの大きさに対応する操作量φの設定値を予め取得しておくことができる。そして、PS機構60の制御により、第1状態において操作量φが設定値より大きくなる操作が行われないようにするのである。その結果、PART1制御が常に不要となる。
そして、点Pcに達した後には、PS機構60の上述の制御が解除され、PART2制御が行われる。
なお、報知装置62は不可欠ではない。
【実施例4】
【0028】
実施例4においては、図11(b)に示すように、車両10にVGRS(Variable Gear Ratio Steering)機構70が設けられる。例えば、後輪舵角δが、PART1制御が必要となる大きさ以上にならないように、操舵量φに対する後輪舵角δの比率(δ/φ)が制御されるようにすることができる。操舵量φが大きくなると、比率(δ/φ)が小さくされるのであり、結果的に、後輪舵角δがPART1制御が必要となる大きさより大きくならないようにされる。
【実施例5】
【0029】
実施例5においては、図12(a)に示すように、車両10に、運転者によって操作可能な後輪舵角制御選択スイッチ74が設けられる。後輪舵角制御選択スイッチ74がON状態である場合に、本発明に係る後輪舵角の制御の実行が許可され、OFF状態である場合には、本発明に係る後輪舵角の制御が禁止される。運転者は、車両10の周辺の状況に基づいて(車両10の周辺のスペース等に基づいて)、本発明に係る後輪舵角の制御を許可するか否かを決めることができる。それによって、車両挙動制御装置の使い勝手を向上させることができる。
【実施例6】
【0030】
実施例6においては、本発明に係る車両挙動制御装置が、図1(b)に示す4輪車両54に適用される。
図12(b)に示すように、4輪車両54において、前輪14,16に転舵機構82が設けられ、後輪50,52にARS(Active Rear Steering)機構84が設けられる。ARS機構84は、後輪50,52が前輪14,16と同相、あるいは、逆相に転舵される。
そして、後輪舵角δ(後輪50,52の転舵角は共通に制御される)の制御により、PART1制御、PART2制御を同様に行うことができる。
【0031】
以上、本発明は、前記実施例に記載の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
18:後輪 20:車体 20RR:後部縁部 22:転舵機構 24:転舵アクチュエータ 30:車両挙動ECU 32:操舵量センサ 34:車速センサ 36:転舵角センサ 38:操舵部材 50,52:後輪
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪舵角を制御することにより車両の挙動を制御する車両挙動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前2輪、後1輪を備えた車両に、後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を設けることが記載されている。この車両の車体の後部左側角部(運転席と対角位置にある部分)は面取り形状とされており、狭い空間においても旋回可能とされている。
特許文献2には、前2輪、後1輪を備えた車両において、前2輪が駆動輪とされ、後1輪が操舵輪とされ、旋回時に、前2輪に加えられる駆動力差が制御されることが記載されている。例えば、後輪舵角が大きい場合に、前2輪の駆動力差を大きくすることにより、小さい半径での旋回が可能となる。
特許文献3には、前後左右の4輪を備えた車両に、後輪を前輪と逆相、あるいは、同相に転舵させる後輪転舵機構を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−91790号公報
【特許文献2】特開平11−215617号公報
【特許文献3】特開平3−90482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両挙動制御装置の改良であり、例えば、後輪あるいは車体の後部の旋回外側への移動を自動で制限することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両挙動制御装置は、車両が第1状態から旋回する場合に、車両の一部である着目部が、平面視において、基準線から旋回外側へ移動しないように、後輪舵角を制御するものである。
後輪の転舵により旋回する車両においては、後輪が旋回外側に移動するが、運転者は後輪あるいは車体の後部の動きを認識し難い場合がある。そのため、自動で、後輪あるいは車体の後部縁部等が、第1状態で決まる基準線より旋回外側へ移動しないようにすることは望ましいことである。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)左右2つの前輪と少なくとも1つの後輪とを備えた車両に設けられ、その車両の旋回挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記少なくとも1つの後輪の転舵により前記車両を第1状態から旋回させるとともに、前記車両の予め定められた部分である着目部が、平面視において前記車両の第1状態で決まる基準線より旋回外側へ移動しないように、前記少なくとも1つの後輪の転舵角度である後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を含むことを特徴とする車両挙動制御装置。
平面視とは、車両の真上から見ることをいうが、車両の真上から、路面に垂直な方向に見る場合や、鉛直方向に見る場合がある。
第1状態とは、本発明が適用される旋回のスタート状態であり、車両が停止状態にある場合や走行状態にある場合がある。
旋回外側とは、第1状態から旋回する場合の、その旋回外側を表す。具体的には、第1状態において後輪が転舵されている場合には、その後輪の転舵方向で旋回方向が決まる。また、第1状態から運転者によって操舵部材が操作されて後輪が転舵される場合には、その転舵方向で旋回方向が決まる。
基準線は、路面に想定される線であっても、車両が存在する3次元空間に想定される線であってもよいが、3次元空間に想定される線は、平面視において、路面に想定される線であると考えることができる(路面に投影された線となる場合がある)。
(2)前記基準線が、前記車両の第1状態において、前記車両の最も旋回外側に位置する部分を通り、かつ、前記左右前輪の各々の、回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線と直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な線である(1)項に記載の車両挙動制御装置。
基準線は、3次元空間に想定される線とされる場合がある。第1状態において、車両が道路と平行に停止している場合には、道路と平行な線となる。
(3)前記着目部が、前記車両の前記第1状態における車体の旋回外側の後部縁部であり、前記後輪舵角制御装置が、前記後部縁部が前記基準線から前記旋回外側に移動しないように、前記後輪舵角を制御する車体対応制御部を含む(2)項に記載の車両挙動制御装置。
本項に記載の車両において、車体の後部の縁部は、後輪より幅方向の外方にある。
(4)前記基準線が、前記車両の第1状態において、前記車両が存在する路面の、前記左右前輪のうち旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する面である路面側接面の最も旋回外側に位置する点を通り、かつ、前記左右前輪の各々の、回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線と直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な線である(1)項に記載の車両挙動制御装置。
基準線は、路面に想定される線であり、第1状態において路面の旋回外側前輪と接する面である路面側接平面の最も旋回外側に位置する部分を通り、かつ、車体の前後線と平行な線である。
(5)前記着目部が、前記少なくとも1つの後輪のうちの旋回外側に位置する旋回外側後輪の前記路面と接する面である車輪側接平面内の予め定められた点であり、前記後輪舵角制御装置が、前記旋回外側後輪の前記予め定められた点が、前記基準線上、または、基準線より旋回内側に位置し、かつ、前記旋回外側後輪の回転軸線が、平面視において、前記基準線と直交する姿勢となるように、前記後輪舵角を制御する後輪対応制御部を含む(4)項に記載の車両挙動制御装置。
着目部が、旋回外側後輪の路面と接する面である車輪側接平面の予め決められた点であり、その予め定められた点が基準線上、あるいは、基準線より旋回内側に位置するように、後輪舵角が制御される。予め定められた点は、例えば、(i)車輪側接平面の最も旋回外側に位置する点としたり、(ii)車輪側接平面の幅方向の中心線上の1点としたり、(iii)車輪側接平面の中心としたり、(iv)車輪側接平面内の、旋回外側後輪がフリーな状態(力が加えられていない状態)における幅方向の中心線上の点に対応する点としたり、(v)車輪側平面内の、旋回外側後輪の回転軸線の幅方向の中心点を投影した点としたりすること等ができる。
なお、基準線より旋回内側に、基準線と平行で、かつ、路面側接平面の幅方向の中心を通る線(内側基準線)を想定し、その内側基準線上を、その着目部が通るように、後輪舵角が制御されるようにすることができる。後輪舵角がこのように制御されれば、着目部が基準線より旋回外側に移動しないようにすることができる。
また、旋回外側後輪の回転軸線が平面視において基準線と直交する姿勢とされるため、後輪は基準線と平行に移動する。
(6)前記後輪舵角制御装置が、前記後輪舵角が、運転者による操舵部材の操作状態に基づいて決まる目標舵角に近づくように制御する目標舵角対応制御部を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
(7)前記後輪舵角制御装置が、前記後輪舵角が、前記少なくとも1つの後輪を転舵する後輪転舵機構で決まる最大角度に達するまで制御する最大舵角対応制御部を含む(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
着目部が基準線から旋回外側に移動しないように、後輪舵角を目標舵角に近づくように制御すれば、旋回等に利用可能なスペースの幅が狭くても、そのスペース内で旋回等をすることが可能となる。また、最大舵角まで大きくすれば、さらに、狭いスペースにおいても旋回等をすることが可能となる。
(8)前記車両が、前記左右前輪と、それら左右前輪の各々の回転中心軸線の幅方向の中点を結ぶ左右線の中点を通り、かつ、その左右線に直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線上に位置する1つの後輪とを備えた3輪車両である(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
(9)前記車両が、前記左右前輪と、左右後輪とを備え、前記左右前輪のトレッドより左右後輪のトレッドの方が小さい4輪車両である(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
本発明は、前2輪および後1輪を含む3輪車両、トレッドが後輪側の方が小さい4輪車両に適用することができる。
3輪車両においては、1つの後輪が旋回外側後輪に対応する。4輪車両においては、旋回方向によって旋回外側後輪が決まる。
また、後輪舵角の制御は、前輪、後輪がすべらないことが前提で行われる。
なお、左右前輪は駆動輪とされる場合があり、後輪舵角の制御に加えて、左右前輪の回転速度差の制御も行うことができる。
(10)前記車両の車体が、前部の幅方向の長さより後部の幅方向の長さの方が小さい形状を成し、かつ、前記車体の後部の縁部が、前記後輪の外側回転面より幅方向の外側に位置する形状を成したものである(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
(11)前記後輪が操舵輪とされた(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
本発明に係る車両挙動制御装置は、後輪が操舵輪である車両に適用されるのであり、前輪および後輪が操舵輪である車両に適用することも、前輪は操舵輪でない車両に適用することもできる。前輪および後輪が操舵輪である車両においては、後輪が前輪と逆相に転舵されることがある。
車両に1つの後輪が含まれる場合には、その後輪の転舵角が後輪舵角とされる。左右2つの後輪が含まれる場合には、左右後輪の転舵角は同じになるように制御されるのが普通であり、その共通の転舵角が後輪舵角とされる。
【0008】
(12)左右2つの前輪と少なくとも1つの後輪とを備えた車両に設けられ、前記車両の旋回挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記少なくとも1つの後輪の転舵により前記車両を第1状態から旋回させるとともに、前記少なくとも1つの後輪のうちの旋回外側に位置する旋回外側後輪が、前記車両の第1状態で決まる軌跡に沿って移動するように、前記少なくとも1つの後輪の転舵角度である後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を含むことを特徴する車両挙動制御装置。
旋回外側後輪が軌跡に沿って移動するように後輪舵角が制御されれば、例えば、後輪の旋回外方への移動を自動で制限することができる。
本項に記載の車両挙動制御装置には、(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
(13)前記軌跡が、路面の、前記車両の左右前輪のうち前記第1状態において旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する部分の予め定められた点を通り、かつ、前記左右前輪の各々の回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線に直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な直線状の軌跡であり、前記後輪舵角制御装置が、前記旋回外側後輪が、前記直線状の軌跡に沿ってすべることなく移動するように、前記後輪舵角を制御する軌跡対応後輪舵角制御部を含む(12)項に記載の車両挙動制御装置。
軌跡は、直線状に延びたものであり、路面に想定される。軌跡は、路面の旋回外側前輪と接する部分である路面側接平面内の予め定められた点を通るが、予め定められた点は、路面側接平面の幅方向の中心線上の点としたり、中点としたり、最も旋回内側の点としたりすること等ができる。
旋回外側後輪は、旋回外側前輪で決まる直線状の軌跡に沿ってすべることなく移動するのであり、旋回外側後輪の回転軸線と直線状の軌跡とが平面視において直交する状態で、回転しつつ移動させられる。
車輪の回転面が路面の法線に対して傾斜していない場合には、回転面が軌跡と平行となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の複数の実施例である車両挙動制御装置が搭載された車両を示す図である。(a)2つの前輪と1つの後輪とを備えた3輪車両を概念的に示す平面図である。(b)2つの前輪と2つの後輪とを備えた4輪車両を概念的に示す平面図である。
【図2】上記3輪車両の後輪周辺を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る車両挙動制御装置によって車両挙動制御が行われた場合の上記3輪車両の状態を示す図である。
【図4】(a)上記車両挙動制御のうちのPART1制御が行われない場合を示す図である。(b)上記PART1制御が行われる場合を示す図である。
【図5】上記PART1制御の内容を概念的に示す図である。(a)点Pに達する直前に後輪舵角が小さくされる場合を示す図である。(b)点Pに達するまでの間、後輪舵角が漸減させられる場合を示す図である。
【図6】上記車両挙動制御のうちのPART2制御の内容を概念的に示す図である。
【図7】上記車両挙動制御装置の記憶部に記憶された後輪舵角制御プログラムを表すフローチャートである。
【図8】(a)本発明の実施例2に係る車両挙動制御装置による車両挙動制御のうちのPART1制御が行われない場合を示す図である。(b)上記PART1制御が行われる場合を示す図である。
【図9】上記PART1制御の内容を概念的に示す図である。
【図10】上記車両挙動制御のうちのPART2制御の内容を概念的に示す図である。
【図11】(a)本発明の実施例3に係る車両挙動装置を概念的に示す図である。(b)本発明の実施例4に係る車両挙動装置を概念的に示す図である。
【図12】(a)本発明の実施例5に係る車両挙動装置を概念的に示す図である。(b)本発明の実施例6に係る車両挙動装置を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に本発明の複数の実施例に係る車両挙動装置が搭載される車両について説明する。
車両10は、図1(a)に示すように、3輪車両であり、左右2つの前輪14,16と1つの後輪18とを含む。後輪18は、左右前輪14,16の回転軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線B1の中点において直交し、車両の前後方向に伸びる前後線B2上に位置する。
また、図1(a)に示すように、車体20の後部においては、車体20の方が、後輪18より幅方向の長さが大きく、後輪18の転舵角δが設定値より小さい場合には、後部縁部20RR、RLが後輪18の幅方向の外側に位置する。車体20の前部においては、車体20の幅方向の長さが左右前輪14,16の各々の外側回転面同士で決まる幅方向の長さより小さい。そのため、車輪14,16の各々の外側回転面14FA,16FAは、車体20の前部の縁部20FL、FRの幅方向の外側に位置する。
【0011】
車両10において、後輪18が操舵輪であり、図2に示すように、後輪18に後輪18を転舵する転舵機構22が設けられる。転舵機構22は、後輪18を両側から保持するキングピン23を回転させることにより転舵するものである。転舵機構22には、電動モータを含む転舵アクチュエータ24(図1参照)が含まれる。
【0012】
車両挙動ECU30は、コンピュータを主体とするものであり、実行部,記憶部,入出力部等を含み、入出力部には、操舵量センサ32、車両の走行速度を検出する車速センサ34,後輪18の実際の転舵角を検出する転舵角センサ36等が接続されるとともに、転舵アクチュエータ24等が接続される。記憶部には、後輪舵角制御プログラム等の種々のプログラム、図示しないテーブル等が記憶される。
操舵量センサ32は、運転者によって操作可能な操舵部材38の操作方向および操作量を検出するものであり、転舵アクチュエータ24は、主として操舵量センサ32によって検出される操舵部材38の操作状態(操作方向および操作量で表される)に基づいて制御される。
【0013】
本車両挙動装置は、図1(b)に示すように、左右前輪14,16、左右後輪50,52を備えた4輪車両54に適用することもできる。4輪車両54においては、後輪側のトレッドTrが前輪側のトレッドTfより小さくされている(Tf>Tr)。
また、車両10における場合と同様に、車体56の後部において、後部縁部56RL、RRが、それぞれ、後輪50,52の外側回転面50FA,52FAの幅方向の外側に位置する。車体56の前部において、車輪14,16の各々の外側回転面14FA,16FAは、車体56の前部縁部56FL、56FRの幅方向の外側に位置する。
【実施例1】
【0014】
本実施例においては、車両挙動装置が車両10に適用される場合について説明する。
車両10の挙動が図3に示すように制御されるのであり、後輪18の着目部Kが、平面視において、第1状態において決まる基準線Lより旋回外側へ移動しないように、後輪舵角δが制御される。
第1状態は、本実施例においては停止状態であり、例えば、車両10が道路に沿って駐車した状態等である。
基準線Lは、路面に想定される線であり、左右前輪14,16のうち、旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する路面側接平面の最も旋回外側に位置する点を通り、かつ、車両の前後線B2と平行な線Lとされる。
着目部Kは、後輪18の路面と接する車輪側接平面内の、後輪18の回転軸線の中心点を投影した点とされる。
本実施例においては、基準線Lに平行で、かつ、路面の旋回外側前輪と接する路面側接平面の幅方向の中心線上の点を通る内側基準線L*を想定し、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢を維持しつつ、着目部Kが内側基準線L*上を移動するように、後輪舵角δが制御される。後輪18の回転面が路面の法線に対して傾斜していない場合には、内側基準線L*と回転面とが平行となる。
このように、着目部Kが内側基準線L*上を移動するように後輪舵角δが制御されるようにすれば、平面視において、着目部Kが基準線Lを超えないようにすることができる。また、本実施例において、内側基準線L*が軌跡に対応する。
【0015】
後輪舵角δの制御は、PART1制御とPART2制御とを含む。PART1制御は、図3に示すように、車両がA状態(第1状態に対応する)からB状態(後輪18の着目部Kが内側基準線L*上に位置する状態)に到達するまでに行われる制御であり、PART2制御は、車両がB状態からC状態に到達するまでに行われる制御である。
<PART1>
PART1制御は、後輪舵角δの制御が行われないと仮定した場合に、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢になるまでの間に、後輪18の着目部Kが内側基準線L*を超える(内側基準線L*の旋回外側へ移動させられる)場合に行われる制御である。
そして、PART1制御は、後輪18の着目部Kが内側基準線L*に達するまでに、後輪舵角δを、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢となる大きさ、すなわち、後輪18の回転面が路面の法線に対して傾斜していない場合には、内側基準線L*と回転面とが平行となる大きさに変える制御である。
【0016】
車両10がすべることなく走行すると仮定した場合に、旋回中心Oは、前輪14,16の回転軸線の延長線と、後輪18の回転軸線の延長線との交点となる。
また、図4(a)に示すように、旋回半径rと、車両10のホイールベースBLと、後輪舵角δとの間には、式
sinδ=BL/r
が成立する。この式において、ホイールベースBLは既知であり、後輪舵角δは転舵角センサ36によって検出されるため、これらBL、δの値を代入すれば、旋回半径rがわかる。
さらに、車両10の走行速度V、旋回半径r、中心角θの間には、式
V=r・θ
が成立する。この式において、車両10の走行速度Vは車速センサ34によって検出されるため、旋回半径r、走行速度Vを代入すれば、中心角θがわかる。
以上のことから、第1状態からの車両10の位置、すなわち、第1状態からの後輪18の位置がわかる(移動方向、移動量がわかる)のであり、後輪18の位置等に基づいて後輪舵角δが制御される。
なお、後輪18の位置は、GPS(Global Positioning System)を利用して取得することもできる。
【0017】
[制御の要否]
車両10の第1状態から、運転者は、Uターンして、あるいは、旋回して、走行車線に出ようとして、操舵部材38を操作するのが普通である。その場合に、図4(a),(b)が示すように、車両10の旋回により、後輪18の着目部Kが点Sから点Pcに至るまでに、後輪18の着目部Kが内側基準線L*の旋回外側へ移動する場合と移動しない場合とがある。点Pcは、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する点(位置)であり、換言すれば、後輪18の回転軸線LRが第1状態における左右前輪14,16の回転軸線(左右線B1)と平行となる点である。
第1状態から車両10が旋回する際の後輪18の転舵角δが検出される。そして、上述のように、転舵角δに基づいて旋回半径rが取得され、旋回半径rに基づいて、旋回中心Oが取得され、旋回中心Oから内側基準線L*までの距離Mが取得される。そして、旋回半径rと距離Mとが比較され、旋回半径rが距離M以下である場合には、PART1制御は不要である。後輪18の着目部Kが内側基準線L*を超えないで点Pcに達し得る場合であり、その場合の一例を図4(a)に示す(r≦M)。
それに対して、旋回半径rが距離Mより大きい場合には、PART1制御は必要である。後輪18の着目部Kが点Pcに達するまでの間に内側基準線L*を超える場合(点P)であり、その場合の一例を図4(b)に示す(r>M)。
【0018】
[制御の内容]
PART1制御においては、図5(a),(b)に示すように、後輪18の着目部Kが内側基準線L*上に達した場合に、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交するように後輪舵角δが制御される。
具体的には、図5(a)に示すように、点P(後輪18の着目部Kが内側基準線L*に達した点)に達する直前に、後輪舵角δを小さくして(δ→δc)、平面視において、後輪18の回転軸線LRを内側基準線L*と直交する姿勢とすることができる。この場合には、PART1制御において、点Pに達した場合に、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢とされるため、点Pは点Pcとなる。
なお、図5(b)に示すように、点Pに達するまでの間、後輪舵角δを徐々に小さくして(δs>δq>δp)、点Pに至る時点で回転軸線LRが内側基準線L*に直交するようにすることもできる。この場合には、旋回半径rは徐々に大きくなる(rs<rq<rp)のであり、旋回中心Oは、後退方向に移動させられる(So→Qo→Po)。
【0019】
<PART2>
PART2制御は、後輪18が点Pcに達した場合(PART1制御によって後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢にされたことにより、点Pが点Pcとされた場合と、PART1制御が行われることなく点Pcに達した場合とがある)から開始され、後輪18の実際の転舵角δ(以下、後輪舵角δと称する)を目標舵角δrefに近づける。
[制御の要否]
PART2の制御は、後輪18の着目部Kが点Pcに達した場合において、後輪舵角δの絶対値が運転者による操舵部材38の操舵量φで決まる目標舵角δrefより小さい場合(|δ|<|δref|)に行われるが、後輪舵角δの絶対値が目標舵角δref以上である場合(|δ|≧|δref|)には行われない。目標舵角δrefは、操舵部材28の操作量φにゲインGを掛けた値であるが、転舵の向きが逆になるため、式
δref=−G・φ
で求められる。
[制御の内容]
PART2制御において、図6に示すように、後輪18が、後輪18の着目部Kが内側基準線L*上を、回転軸線LRが内側基準線L*と直交する姿勢を保持して回転しつつ、後輪舵角δが大きくされる。後輪舵角δは目標舵角δrefと等しくなるまで漸増させられる(δp<δx<δy=δref)。旋回半径rは徐々に小さくされ、旋回中心が車体20に徐々に近づけられる(Po→Xo→Yo)。目標舵角δrefは、最大舵角である場合もある。後輪舵角δは、予め定められた勾配で(設定角度ずつ)増加させたり、予め定められた設定時間(設定回数)内に目標舵角δrefに達するように増加させたりすることができる。また、車両の前方のスペースが狭い場合は、広い場合より、大きな勾配で増加させるようにすることもできる。
【0020】
図7のフローチャートで表される後輪舵角制御プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。
S1において、車両が第1状態としての停止状態にあるか否かが判定される。停止状態にある場合には、S2において、内側基準線L*が取得される。
それに対して、車両が発進した場合には、S3において、後輪舵角δが検出され、S4においてPART2制御中であるか否か、S5において、Pc点に到達したか否か、S6において、PART1制御中であるか否かが判定される。発進してから、最初にS4〜6が実行される場合には、いずれのステップにおける判定もNOとなる。S7,8において、PART1制御が必要であるか否かが判定される。S7において、上述のように、距離M、後輪18の旋回半径rが取得されて、点Pあるいは点Pcが取得される。そして、S8において、旋回半径rが距離Mより大きいか否かが判定される。
旋回半径rが距離M以下である場合にはPART1制御は不要である。点Pcが、内側基準線L*上あるいは内側基準線L*より旋回内側に位置する点となる。
旋回半径rが距離Mより大きい場合にはPART1制御は必要である。着目部Kが内側基準線L*上に達した場合(点P)において、後輪18の回転軸線LRが内側基準線L*に対して傾斜する姿勢にある。
PART1制御が必要である場合には、S9において、PART1制御が行われる。具体的には、後輪18が点Pに達したか否かが判定され、点Pに達するまでに、回転軸線LRが内側基準線L*と直交するように、後輪舵角18が小さくされるのであり、PART1制御が終了すると、点Pは点Pcとされる。
【0021】
後輪18が点Pcに達するまでの間、S1,3〜6,9が繰り返し実行される。PART1制御が終了した場合、あるいは、PART1制御が行われることなく、点Pcに到達した場合には、S5の判定がYESとなり、S10が実行される。
S10において、操舵量φに基づいて目標舵角δrefが取得され、S11において、目標舵角δrefの絶対値が後輪舵角δの絶対値より大きいか否かが判定される。目標舵角δrefの絶対値の方が後輪舵角δの絶対値より大きい場合には、S12において、PART2制御が実行されるが、目標舵角δrefの絶対値が後輪舵角δの絶対値以下である場合には、PART2制御は行われず、S13において、終了処理が行われる。用いられたパラメータ等の初期化等が行われる。
PART2制御においては、後輪舵角δの絶対値が漸増させられ、目標舵角δrefと等しくされる。
PART2制御中には、S4の判定がYESとなり、S14において、後輪舵角(実際の転舵角)δの絶対値が目標舵角δrefの絶対値に達したか否かが判定される。目標舵角δrefの絶対値に達する前においては、S1,3,4,14,12が繰り返し実行され、PART2制御が継続して行われる。後輪舵角δの絶対値が目標舵角δの絶対値に達すると、S14の判定がYESとなり、S13において終了処理が行われる。
【0022】
その後、車両10はUターンして走行車線に出ることが多いが、図6に示すように、点PcからUターンする場合(W0)より、PART2制御が行われた後の点YからUターンした場合(WS)の方が、Uターンにおいて使用されるスペースの内側基準線L*からの幅Wを小さくすることができる。
換言すれば、PART2の制御により、Uターンに利用できる道路の幅方向の距離(内側基準線L*からの幅)Wが小さくても(WS>W0)、車両10をUターンさせることが可能となる。
また、PART1制御が行われると、PART2制御が開始される点Pcが車両10の第1状態に近くなる。そのため、車両10の第1状態における位置からUターンに利用できる道路の前方の距離(第1状態の左右線B1からの距離)D(図3参照)が小さくても、Uターンできるという利点もある。
【0023】
本実施例においては、車両挙動ECU30の後輪舵角制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により後輪舵角制御装置が構成される。後輪舵角制御装置は、後輪対応制御部、軌跡対応制御部でもある。また、後輪舵角制御装置のうちの、S10〜14を記憶する部分、実行する部分等により目標舵角制御部が構成される。目標舵角が最大転舵角である場合には、目標舵角制御部は最大舵角制御部に対応する。
【実施例2】
【0024】
本実施例においては、図8(a)に示すように、基準線Lが、第1状態における車両10の最も旋回外側に位置する部分を通り、かつ、車両の前後線B2と平行な線とされる。本実施例においては、旋回外側前輪の外側回転面(本実施例においては、外側回転面16RR)の最も旋回外側に位置する部分を通る線となる。
また、着目部Kが車体20の旋回外側の後部縁部(本実施例においては、後部縁部20RR)とされる。
本実施例においても、実施例1における場合と同様に後輪舵角δが制御されるのであり、原則として、PART1制御とPART2制御とが行われる。
車体20の後部縁部20RRと後輪18との間の相対位置関係は、車両10の構造、後輪舵角δによって決まる。平面視において、後部縁部20RR(K)と後輪18の回転軸線の幅方向の中心点Tとを結ぶ線TKの長さをβとし、線TKと車両10の前後線B2との成す角度をαとすると、三角形ΔOTKが一義的に決まる。すなわち、三角形ΔOTKの辺OTが後輪18の旋回半径rであり、実施例1における場合と同様に後輪舵角δから取得することができる。また、辺TKの長さはβであり、辺OTと辺TKの成す角度は、(90°+δ+α)となる。角度α、長さβは車両10の構造で決まる。そして、これらの値がわかれば、三角形ΔOTKが決まるのであり、辺OKの長さ、すなわち、着目部K(後部縁部20RR)の旋回半径r*がわかる。
このように、後輪18の軌跡に基づけば、後部縁部20RR(K)の軌跡がわかるのであり、後輪舵角δを制御することにより、後部縁部20RRの軌跡を制御することができる。
なお、後輪18,後部縁部20RRの軌跡は、GPSを利用して取得することもできる。
【0025】
<PART1>
図8(a)に示すように、旋回中心Oから基準線Lまでの距離Mが後部縁部20RRの旋回半径r*以下である場合には、PART1制御を行う必要はないが、図8(b)に示すように、距離Mより旋回半径r*の方が大きい場合には、PART1制御を行う必要がある。
PART1制御を行う必要がある場合には、図9に示すように、後部縁部20RRが基準線L上に位置する点Pに達するまでに、後輪舵角δが、回転軸線LRが基準線Lにほぼ直交する姿勢となるように制御される(δ→δc)。PART1制御が行われた場合には、点Pが点Pcとされる。
PART1制御を行う必要がない場合には、PART1制御は行われないが、点Pcは、後部縁部20RRが基準線Lに最も近づいた点であり、この場合には、後輪18は、回転軸線LRが基準線Lとほぼ直交する姿勢にある。
<PART2>
PART2制御においては、図10に示すように、後部縁部20RRが基準線L上を通るように、後輪舵角δの絶対値が目標舵角δrefの絶対値に達するまで、後輪舵角δが漸増させられる(δp<δx<δy<δz=δref)。また、旋回半径rは、漸減させられるのであり、旋回中心は、徐々に車両10に近づけられる(Po→Xo→Yo→Zo)。
その結果、実施例2においても同様に、Uターン等に使用できるスペースが狭くても、(例えば、Uターンするのに利用できるスペースの基準線Lからの幅方向の距離Wが小さくても)Uターンすることができる。また、PART1制御が行われた場合には、第1状態における左右線B2からの前方の距離Dが小さくても、Uターンすることが可能となる。
本実施例においては、車両挙動ECU30の後輪舵角δを制御する部分等により車体対応制御部が構成される。
【実施例3】
【0026】
実施例3に係る車両10には、図11(a)に示すように、PS(Power Steering)機構60と、報知装置62とが設けられる。報知装置62は、ディスプレイを含むものとしたり、音声発生装置を含むものとしたりすること等ができる。
実施例3においては、操舵量φの絶対値が設定値より大きい場合には、PS機構60において助勢力が加えられないようにしたり、助勢力が小さくなるようにしたり、逆に、大きな反力が加えられるようにしたりすることができる。また、報知装置62により、操舵量φの絶対値が設定値より大きく、これ以上、操舵量φの絶対値を大きくする操作が行われることは望ましくないことを報知することができる。
【0027】
例えば、車両10が第1状態にある場合に、操舵部材38の操作量の絶対値が予め定められた設定値より大きくならないようにすることができる。すなわち、PART1制御の要否は、第1状態における後輪舵角δで決まる。また、PART1制御が必要となる後輪舵角δの大きさに対応する操作量φの設定値を予め取得しておくことができる。そして、PS機構60の制御により、第1状態において操作量φが設定値より大きくなる操作が行われないようにするのである。その結果、PART1制御が常に不要となる。
そして、点Pcに達した後には、PS機構60の上述の制御が解除され、PART2制御が行われる。
なお、報知装置62は不可欠ではない。
【実施例4】
【0028】
実施例4においては、図11(b)に示すように、車両10にVGRS(Variable Gear Ratio Steering)機構70が設けられる。例えば、後輪舵角δが、PART1制御が必要となる大きさ以上にならないように、操舵量φに対する後輪舵角δの比率(δ/φ)が制御されるようにすることができる。操舵量φが大きくなると、比率(δ/φ)が小さくされるのであり、結果的に、後輪舵角δがPART1制御が必要となる大きさより大きくならないようにされる。
【実施例5】
【0029】
実施例5においては、図12(a)に示すように、車両10に、運転者によって操作可能な後輪舵角制御選択スイッチ74が設けられる。後輪舵角制御選択スイッチ74がON状態である場合に、本発明に係る後輪舵角の制御の実行が許可され、OFF状態である場合には、本発明に係る後輪舵角の制御が禁止される。運転者は、車両10の周辺の状況に基づいて(車両10の周辺のスペース等に基づいて)、本発明に係る後輪舵角の制御を許可するか否かを決めることができる。それによって、車両挙動制御装置の使い勝手を向上させることができる。
【実施例6】
【0030】
実施例6においては、本発明に係る車両挙動制御装置が、図1(b)に示す4輪車両54に適用される。
図12(b)に示すように、4輪車両54において、前輪14,16に転舵機構82が設けられ、後輪50,52にARS(Active Rear Steering)機構84が設けられる。ARS機構84は、後輪50,52が前輪14,16と同相、あるいは、逆相に転舵される。
そして、後輪舵角δ(後輪50,52の転舵角は共通に制御される)の制御により、PART1制御、PART2制御を同様に行うことができる。
【0031】
以上、本発明は、前記実施例に記載の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
18:後輪 20:車体 20RR:後部縁部 22:転舵機構 24:転舵アクチュエータ 30:車両挙動ECU 32:操舵量センサ 34:車速センサ 36:転舵角センサ 38:操舵部材 50,52:後輪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右2つの前輪と少なくとも1つの後輪とを備えた車両に設けられ、その車両の旋回挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記少なくとも1つの後輪の転舵により前記車両を第1状態から旋回させるとともに、前記車両の予め定められた部分である着目部が、平面視において前記車両の第1状態で決まる基準線より旋回外側へ移動しないように、前記少なくとも1つの後輪の転舵角度である後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を含むことを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項2】
前記基準線が、前記車両の第1状態において、前記車両の最も旋回外側に位置する部分を通り、かつ、前記左右前輪の各々の、回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線と直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な線である請求項1に記載の車両挙動制御装置。
【請求項3】
前記着目部が、前記車両の前記第1状態における車体の旋回外側の後部縁部であり、前記後輪舵角制御装置が、前記後部縁部が前記基準線から前記旋回外側に移動しないように、前記後輪舵角を制御する車体対応制御部を含む請求項2に記載の車両挙動制御装置。
【請求項4】
前記基準線が、前記車両の第1状態において、前記車両が損算する路面上の、前記左右前輪のうち旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する面である路面側接平面の最も旋回外側に位置する点を通り、かつ、前記左右前輪の各々の、回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線と直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な線であり、前記着目部が、前記少なくとも1つの後輪のうちの旋回外側に位置する旋回外側後輪の前記路面と接する面である車輪側接平面内の予め定められた点であり、前記後輪舵角制御装置が、前記旋回外側後輪の予め定められた点が、前記基準線上、または、基準線より旋回内側に位置し、かつ、前記旋回外側後輪の回転軸線が平面視において前記基準線と直交する姿勢となるように、前記後輪舵角を制御する後輪対応制御部を含む請求項1に記載の車両挙動制御装置。
【請求項5】
前記後輪舵角制御装置が、(a)前記後輪舵角が、運転者による操舵部材の操作状態に基づいて決まる目標舵角に近づくように制御する目標舵角対応制御部と、(b)前記後輪舵角が、前記少なくとも1つの後輪を転舵する後輪転舵機構で決まる最大角度に達するまで制御する最大舵角対応制御部との少なくとも一方を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
【請求項6】
前記車両が、前記左右前輪と、それら左右前輪の各々の回転中心軸線の幅方向の中点を結ぶ左右線の中点を通り、かつ、その左右線に直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線上に位置する1つの後輪とを備えた3輪車両である請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
【請求項7】
左右2つの前輪と少なくとも1つの後輪とを備えた車両に設けられ、前記車両の旋回挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記少なくとも1つの後輪の転舵により前記車両を第1状態から旋回させるとともに、前記少なくとも1つの後輪のうちの旋回外側に位置する旋回外側後輪が、前記車両の第1状態で決まる軌跡に沿って移動するように、前記少なくとも1つの後輪の転舵角度である後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を含むことを特徴する車両挙動制御装置。
【請求項8】
前記軌跡が、路面の、前記車両の左右前輪のうち前記第1状態において旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する部分の予め定められた点を通り、かつ、前記左右前輪の各々の回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線に直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な直線状の軌跡であり、前記後輪舵角制御装置が、前記旋回外側後輪が、前記直線状の軌跡に沿ってすべることなく移動するように、前記後輪舵角を制御する軌跡対応制御部を含む請求項7に記載の車両挙動制御装置。
【請求項1】
左右2つの前輪と少なくとも1つの後輪とを備えた車両に設けられ、その車両の旋回挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記少なくとも1つの後輪の転舵により前記車両を第1状態から旋回させるとともに、前記車両の予め定められた部分である着目部が、平面視において前記車両の第1状態で決まる基準線より旋回外側へ移動しないように、前記少なくとも1つの後輪の転舵角度である後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を含むことを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項2】
前記基準線が、前記車両の第1状態において、前記車両の最も旋回外側に位置する部分を通り、かつ、前記左右前輪の各々の、回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線と直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な線である請求項1に記載の車両挙動制御装置。
【請求項3】
前記着目部が、前記車両の前記第1状態における車体の旋回外側の後部縁部であり、前記後輪舵角制御装置が、前記後部縁部が前記基準線から前記旋回外側に移動しないように、前記後輪舵角を制御する車体対応制御部を含む請求項2に記載の車両挙動制御装置。
【請求項4】
前記基準線が、前記車両の第1状態において、前記車両が損算する路面上の、前記左右前輪のうち旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する面である路面側接平面の最も旋回外側に位置する点を通り、かつ、前記左右前輪の各々の、回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線と直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な線であり、前記着目部が、前記少なくとも1つの後輪のうちの旋回外側に位置する旋回外側後輪の前記路面と接する面である車輪側接平面内の予め定められた点であり、前記後輪舵角制御装置が、前記旋回外側後輪の予め定められた点が、前記基準線上、または、基準線より旋回内側に位置し、かつ、前記旋回外側後輪の回転軸線が平面視において前記基準線と直交する姿勢となるように、前記後輪舵角を制御する後輪対応制御部を含む請求項1に記載の車両挙動制御装置。
【請求項5】
前記後輪舵角制御装置が、(a)前記後輪舵角が、運転者による操舵部材の操作状態に基づいて決まる目標舵角に近づくように制御する目標舵角対応制御部と、(b)前記後輪舵角が、前記少なくとも1つの後輪を転舵する後輪転舵機構で決まる最大角度に達するまで制御する最大舵角対応制御部との少なくとも一方を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
【請求項6】
前記車両が、前記左右前輪と、それら左右前輪の各々の回転中心軸線の幅方向の中点を結ぶ左右線の中点を通り、かつ、その左右線に直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線上に位置する1つの後輪とを備えた3輪車両である請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置。
【請求項7】
左右2つの前輪と少なくとも1つの後輪とを備えた車両に設けられ、前記車両の旋回挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記少なくとも1つの後輪の転舵により前記車両を第1状態から旋回させるとともに、前記少なくとも1つの後輪のうちの旋回外側に位置する旋回外側後輪が、前記車両の第1状態で決まる軌跡に沿って移動するように、前記少なくとも1つの後輪の転舵角度である後輪舵角を制御する後輪舵角制御装置を含むことを特徴する車両挙動制御装置。
【請求項8】
前記軌跡が、路面の、前記車両の左右前輪のうち前記第1状態において旋回外側に位置する旋回外側前輪と接する部分の予め定められた点を通り、かつ、前記左右前輪の各々の回転中心軸線の幅方向の中点同士を結ぶ左右線に直交し、前記車両の前後方向に延びる前後線と平行な直線状の軌跡であり、前記後輪舵角制御装置が、前記旋回外側後輪が、前記直線状の軌跡に沿ってすべることなく移動するように、前記後輪舵角を制御する軌跡対応制御部を含む請求項7に記載の車両挙動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−56361(P2012−56361A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199242(P2010−199242)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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