説明

車両接近警報装置

【課題】大掛かりな環境インフラの整備を行うことなく、設備コストが安価で、簡単な構成を採りながら、車両の接近を警報することができる車両接近警報装置を提供し、他車を目視に先立って検知して運転者に早期に警告を行う。
【解決手段】車両用前照灯の内部等に、斜方照射赤外線光源および赤外信号受信部を設け、車両前方に向かって45度ななめ方向に向かって10〜40度の照射幅角度にて赤外線信号を発信する。また、赤外信号受信部は、他の車両の斜方照射赤外線光源から発信された信号を受信判別する受信信号処理手段に接続され。受信信号を解析して他の車両の接近状態を認知する接近認識手段と運転者に警告を行う警告手段とを備えた、車両接近警報装置を自車および他車の車両に設ける。交差点に自車および他車が進入する際に、交差部の手前で両車は車−車間通信を行って、目視による他車検知より早く他車の存在を検知し、運転者に警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点や曲率の大きな道路などにおいて対向車の有無を早期に確認して車両の交差部等における衝突を予防する安価な車両接近警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車事故は、交差点、T字路や鋭角なコーナーのカーブ等の見通しの悪い場所で発生することが多い。このような場所には、信号機やコーナーミラー等が設置されることも多いが、設置のためには費用や場所の問題、スムーズな走行を阻害する等の問題から、設置の難しい場所もある。そのため、必ずしも全ての交差点やT字路等で有効な手段となっているものではない。そこで、より一層の衝突防止のための接近警報装置の開発が近年盛んに進められている。
【0003】
例えば、従来の衝突防止装置として、交差点近くに基点マーカを設置しておき、交差点に進行してくる車両と基点マーカとの間で信号授受により交差点までの自車の距離、他社の距離等を把握して出会頭衝突を防止するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、工場等においては自動走行する自走車を用いて部品や完成品の移送が行なわれている。このような自走車は例えば走路に埋め込んで設置されたガイドラインを検知しながらそのガイドラインにしたがって走行する。ガイドラインは生産ラインの各部署を結んで複数経路が設けられ、互いに交差するところも多い。ガイドラインが互いに横切ったり合流する交差部に複数の自走車がほぼ同時期に進入する場合が発生するので、衝突の防止策が必要となる。このような衝突防止策として、例えば、走路の交差部の手前において互いの車両が当該交差部に向かう他方の車両に自車に与えられた順位番号を示す赤外線信号を発信し、自車の順位番号と他社の順位番号から当該優先順位の高い他の車両の交差部通過を待って自車を再発進させる車両の衝突防止方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−163788号公報
【特許文献2】特開2000−3500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の基点マーカを設ける方法ではインフラ環境の整備が必要となり全ての交差点等に設置するには多大の費用を要するという問題等がある。
また、特許文献2に記載の方法では、特許文献1のような環境インフラの整備は不要だが、この方法では、順位番号を互いに通信する必要があるため、工場内と異なる一般道においては順位番号を判別するのが困難なため、有効に衝突防止が働きにくいという問題等がある。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたもので、環境インフラの整備を行うことなく、設備コストが安価で、簡単な構成を採りながら、車両の接近を警報することができる車両接近警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、上記目的は、車両の左前部に設けた第1の斜方照射赤外線光源および第1赤外信号受信部と、車両の右前部に設けた第2の斜方照射赤外線光源および第2赤外信号受信部と、受信した赤外信号を処理する赤外信号処理手段と、前記赤外信号処理手段の結果に基づいて警告を行う警告手段とを備えた車両接近警報装置であって、前記第1の斜方照射赤外線光源は、車両前方に向かって右側45度ななめ方向に向かって10〜40度の照射幅角度にて赤外線信号を発信し、前記第2の斜方照射赤外線光源は、車両前方方向に向かって左側45度ななめ方向に向かって10〜40度の照射幅角度に、前記第1の斜方照射不可視光源と異なる波長もしくは変調で赤外線信号を発信し、前記第1の赤外線信号受信部は、他の車両の第2の斜方照射赤外線光源から発信された信号を受信判別する第1受信信号処理手段に接続され、前記第2の赤外線信号受信部は、他の車両の第1の斜方照射赤外線光源から発信された信号を受信判別する第2受信信号処理手段に接続され、前記第1受信信号処理手段および/または第2受信信号処理手段の受信信号を解析して他の車両の接近状態を認知する接近認識手段と、前記接近認識手段からの信号に基づき運転者に警告を行う警告手段とを備えた車両接近警報装置、により解決される。
【0008】
この構成によれば、例えば走路の交差部である交差点に侵入しようとする車両および対向車両は、互いに斜め方向に向かって赤外線信号を発信して走行している。それゆえ、交差点に侵入しようとする車両は、交差点付近に家屋等の障害物がある場合でも、車両前方、特に交差点中央部側となる位置となる車両の右側(右側通行においては左側)に設けた赤外線光源および受信部により、比較的簡単で安価な構成にて、いち早く対向車の存在を認知し、早期に、対向車両の接近状態を知って警告を行うことができ得る。
【0009】
好ましくは、前記接近認識手段には、さらに第1受信信号処理手段と第2受信信号処理手段の信号量を比較して、他の車両の接近が左側、右側もしくは正面側からのいずれかであるかを判別する接近判別手段が備わっていることを特徴とする、車両接近警報装置により解決される。
この構成によれば、第1および第2の受信信号を比較することで、例えば走路の交差部において、左側と右側のどちらの方向から他車が接近するかをいち早く認知することができ、早期に車両の接近を警告することができ得る。
【0010】
好ましくは、前記接近認識手段には、前記第1受信信号処理手段および/または第2受信信号処理手段の受信信号の単位時間あたりの信号強度の増加量もしくは増加率を求める手段を備えていることを特徴とする、車両接近警報装置により解決される。
この構成によれば、接近してくる他車から発信される信号強度を解析するので、他車の接近の度合いを早期に知ることができ、より的確な警告ができ得る。
【0011】
好ましくは、前記第1の斜方照射赤外線光源および第2の斜方照射赤外線光源が、車両正面方向に対して45度ななめ方向が主光軸となるように、車両用前照灯の灯体内に設置された赤外線発光ダイオード光源であることを特徴とする、車両接近警報装置により解決される。
この構成によれば、別途車両に取り付けることなく容易に車両に取り付けることができ、また小型化を図ることができ得る。
【0012】
好ましくは、前記車両用前照灯が、車両の進行方向に応じて照射方向を移動可能な光源を備えた可変配光前照灯であって、前記第1の斜方照射赤外線光源および第2の斜方照射赤外線光源は、前記可変配光前照灯の移動する光源に連携して照射方向を移動する駆動手段に接続されている、ことを特徴とする、車両接近警報装置により解決される。
この構成によれば、別途車両に取り付けることなく容易に車両に取り付けることができ、また小型化を図ることができ得る。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の車両接近警報装置によれば、走路の交差部等の見通しの悪い場所において、他の車両に向かって赤外線信号を発信し、また、他の車両から赤外線信号を受信し、さらに、受信した赤外線信号に基づいて他車の接近を予測することができる。これにより、走路側に複雑な制御装置を設ける等のインフラ環境の整備を図ることなく、車両に設ける簡易な構成のみで車両の接近を警告することができ、これにより衝突の防止に寄与することができ得る。
【0014】
また、車両正面方向の右側前方および左側前方の各々に赤外線光源および赤外線信号受信部を設けているので、車両が接近する所定範囲内のときにのみ認知して誤作動を抑制することができ得る。正面斜め方向に向かって赤外線を照射するので、障害物等により見通しの悪い交差点等における横方向から接近する車両を速やかに認知することができ得る。第1の斜方照射赤外線光源と第2の斜方照射赤外線光源を互いに異なる波長もしくは変調で赤外線信号を発信するものとしているので、受信信号を解析することにより接近してくる車両が右側か左側かを容易に判別することができ得る。
さらに、第1の斜方照射赤外線光源および第2の斜方照射赤外線光源を各々車両の左前部および右前部に設けているので、各光源から発信される赤外線信号は車両正面にて交差して進行する。よって、走行する車両の走路の交差部においては、交差部の内角側に存在する障害物からもっとも離れた交差部の外角側、すなわち走行する車両の交差点の中央寄りの位置から赤外線を発信するので、障害物等が交差部の内角よりに存在する場合であっても他車に対して早期に接近を知らしめることができ得る。
【0015】
請求項2の車両接近警報装置によれば、接近判別手段によって、他の車両の接近が左側、右側もしくは正面側からのいずれかであるかを比較的簡易な手段により容易に判別することができ得る。
【0016】
請求項3の車両接近警報装置によれば、受信信号の変化量を利用するのみの比較的簡易な手段により他車の接近状況を知ることができる。よって、他車の接近状況をより精度良く知ることができ、より的確な警告を行うことができ得る。
【0017】
請求項4の車両接近警報装置によれば、車体に新たな取り付け構造を設けることなく車両用前照灯を取り付けることで赤外線光源の設置を図ることができる。車両用前照灯内は、車両の前端側方に取り付けられる。よって、コーナー等において最も外周側のより遠方まで車−車間通信が可能な位置近傍に、容易に赤外線光源部および受光部を設けることができ、他車をより早く認知することができ得る。また、車両用前照灯内に設けられた反射鏡構造と類似の反射鏡構造を前記赤外線光源に設けた場合であっても、外観上の統一感を損なうことなく車両に取り付けることができ得る。さらに、赤外線光源を赤外線発光ダイオード光源とすることで、赤外線発光部の配置レイアウトを複数の赤外線発光ダイオード光源を様々な配置で設ける等のレイアウト変更が比較的容易となり、車両の意匠に適合したものとすることができ得る。
【0018】
請求項5の車両接近警報装置によれば、所謂AFS(Adaptive Frontlighting System)と云われる配光可変前照灯の場合には、カーブ等のハンドル操作に応じて前照灯の照射方向を可動する場合において、同様に連携して前記赤外線光源の照射方向を移動させることで、カーブ内側等の車両進行方向に沿って照射方向を可動でき、より早期に接近車両を知らせしめることができ、早期の警告を図ることができ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態例を左側走行の右側ハンドル車に適用した例にて具体的に説明する。図1は本発明に係る車両接近警報装置を搭載した車両のレイアウトを示す。1は車両、D1は車両1の前方進行方向である。車両の前端には、左前部に左側灯具2、右前部に右側灯具3が位置し、車室内には、赤外信号処理手段等の信号処理装置4および警告手段5が設けられている。6は運転者である。なお、以後の説明においても、特記しない限り、左側および右側とは、運転者にとって正面方向(図1におけるD1方向)を基準に左右を記載する。
【0020】
灯具2および灯具3の夫々は、前方に開口したハウジング内に走行ビーム用光源、すれ違い用光源、斜方照射赤外線光源および赤外信号受信部が設けられ、前記開口は透光性カバーにて覆われている。図2に右側灯具3の上面視を示し、図3に左側灯具2および右側灯具3の正面視を示す。右側灯具3は、ハウジング31内には走行ビーム用光源32およびすれ違い用光源33と共に、すれ違い用光源33の上方に斜方照射赤外線光源34および赤外信号受信部35を備える。走行ビーム用光源32としては、回転放物面系反射鏡とハロゲンバルブ等の光源を用い、すれ違い用光源33としては、回転楕円面系反射鏡と、ハロゲンバルブ等の光源と投影レンズからなるプロジェクター灯具等を用いる。なお、図2において7は車体、7aは車両前端、7bは車体側面を示し、37は透光性カバーである。
【0021】
斜方照射赤外線光源34は、主照射方向を車両正面方向に対しておよそ右側45度ななめ方向となるように配置した多数の赤外発光ダイオードからなり、赤外信号受信部35は、主受光方向を車両正面方向に対しておよそ右側45度ななめ方向となるように配置した半導体赤外受光素子からなり、斜方照射赤外線光源34および赤外信号受信部35は一体化して構成される。
なお、左側灯具2については、車両の走行方向中心軸を基準に右側灯具3と左右対称に構成する。すなわち、斜方照射赤外線光源24は、主照射方向を車両正面方向に対しておよそ左側45度ななめ方向となるように配置した多数の赤外発光ダイオードからなり、赤外信号受信部25は、主受光方向を車両正面方向に対しておよそ左側45度ななめ方向となるように配置した半導体赤外受光素子からなり、斜方照射赤外線光源24および赤外信号受信部25は一体化して構成される。
また、斜方照射赤外線光源24(左側灯具)と斜方照射赤外線光源34(右側灯具)は、左側と右側とで異なるように発光、例えば、異なる所定の点灯周波数にて発光するようにする。左側と右側とで異なることを検知できるものであれば、波長等でも良い。異なる点灯周期により左側と右側とを区別すのが信頼性およびコスト的に最も好適である。
【0022】
図4は、本発明に係る車両接近警報装置を搭載した車両が道路交差部を走る場合の交差部まわりのレイアウトを示している。道路は左側通行である。走路Aと走路Bが交差部Kにて交差し、自走車A1は走路AをD2方向に走行し、他車B1は走路BをD3方向に走行し、各々の車両A1,B1は交差部Kに進入しようとしている。
【0023】
この際、自走車A1は右側灯具3内に設けた斜方照射赤外線光源34から車両前方に向かっておよそ左側45度ななめ方向、具体的には、車両前方に向かって左側45度ななめ方向に向かって10〜40度の照射幅角度にて赤外線信号を発信している。同様に他車B1も本発明に係る車両接近警報装置を備え、他車運転者にとって左側灯具内に設けた斜方照射赤外線光源から車両前方に向かっておよそ右側45度ななめ方向、具体的には、車両前方に向かって右側45度ななめ方向に向かって10〜40度の照射幅角度にて赤外線信号を発信している。
【0024】
図5は、赤外信号受信部35にて受信した信号に基づいて行う赤外信号処理手段および前記赤外信号処理手段の結果に基づいて警告を行う警告手段を説明する説明図である。赤外信号受信部35は、自走車A1に向かって入射する赤外光を受光する。光−電気変換により電気信号に変換された後、赤外信号処理手段4にて演算され、所定の場合に車両接近警報装置5にて運転者に警報を行う。
【0025】
自走者A1の左前部に設けた左前側赤外線信号受信部25は、他車B1の右前部に設けた右前部斜方照射赤外線光源から発信された信号を受信判別する第1受信信号処理手段に接続され、右前部に設けた右前側赤外線信号受信部35は、他車B1の左前部に設けた左前部斜方照射赤外線光源から発信された信号を受信判別する第2受信信号処理手段に接続されている。第1受信信号処理手段および第2受信信号処理手段は別個に設けても一体化しても良い。
【0026】
図5に示した赤外信号処理手段4は一体化した例を示している。赤外信号処理手段4は、周波数検知装置41と、演算装置42と出力回路43とを備える。周波数検知装置41は斜方照射赤外線光源24(左側灯具)と斜方照射赤外線光源34(右側灯具)とが異なる所定の周波数にて発光するようにされていることから、受光した赤外信号の周波数を検知する。演算装置42は、検知した周波数を予め記録しておいた周波数と比較して右側灯具からの信号か左側灯具からの信号かを判別するとともに、走行時間に対するその強度変化を演算し、他車B1の接近状態を演算する。出力回路43は演算装置にて認識した他の車両の接近状態に関する信号を警報装置5に合った信号に変換して出力する。警報はブザー等による警告音が好適である。また、警報装置はメータ内の警告灯表示を利用しても良い。車輌の接近を検知した場合に、単純にブザーや警告等表示にて警報をするのも有効であるが、ブレーキペダルを事前に少し稼働させる装置が付いている場合には、この検知と共にその動作を有効とすることにより、接近した後でほぼ必ず行われるであろうブレーキ操作の補助をすることも可能となる。この機能を使うと接近の認知から車輌の減速開始までの時間がさらに短くなり、衝突の恐れがある場合には、事前に防止できるものとなる。
【0027】
走路A,Bの交差部内側K1にビル等の家屋や街路樹等の障害物があり見通しが悪い場合には、車両A1,B1の各運転者は目視にて互いの車両を確認するのが困難である。しかしながら、本実施形態に係る車両接近警報装置1においては、車両前端の左右端部に設けた斜方照射赤外線光源および赤外信号受信部により、目視にて確認するよりも早く他社B1の存在を車−車間通信にて確認することが可能となる。図6は、目視による他社確認と本実施形態に係る車両接近警報装置による他社確認との違いを示す説明図である。自走者A1が他車B1を確認する位置は、目視の場合にはD,D’の位置の場合でなければ確認できないが、本実施形態に係る車両接近警報装置の場合には、C,C’の位置にて確認することができる。図面において点線は目視確認の光線の位置および車両接近警報装置による車−車間通信の位置をを示し、両者は一致しているが、車両の位置は距離d2分相違する。すなわち、距離d2分早く検知することができ、出会い頭の衝突等を抑止することができ得る。距離d2は、本発明者の検討では数メートルの範囲であった。
【0028】
図7は、本発明に係る車両接近警報装置を搭載した車両が見通しの悪いカーブを走る場合のレイアウトを示し、道路は左側通行である。自走車A1は走路AをD2方向に走行し、他車B1は走路BをD3方向に走行し、各々の車両A1,B1は対向して走行しようとしている。図7(A)は本発明に係る車両接近警報装置を用いた場合の車−車間通信にて確認している状態を示し、図7(B)が目視により確認している状態を示す。
この場合においても、本発明に係る車両接近警報装置を搭載した車両においては、目視の場合に比べて距離d1に相当する時間分早く検知することができ、コーナーにおける衝突等の危険を事前に抑止することができ得る。
【0029】
ここで、斜方照射赤外線光源24、34の照射方向および照射範囲の検討結果を説明する。対向車との衝突事故を回避するためには、事前にできる限り早く他車の存在を認知することが重要である。他車の認知の手段としては、従来技術にて説明した方法等の多くの手法が知られている。しかし、いずれの場合も、従来では環境インフラの整備が必要であったり、装置コストが高くなったりする問題があった。本願実施形態においては、斜方照射赤外線光源、赤外信号受信部、信号処理手段および警告手段といった安価な簡単な構成を採りながら、車両の接近を警報することができる車両接近警報装置を提供することができる。特に斜方照射赤外線光源24、34の照射方向を車両の左前端および右前端に設け、互いの照射領域が交差するように設ける。これにより、対向車との関係において、最も早く車−車間通信が可能となる。照射方向は、様々な交差点およびカーブ等により相違するが、本発明者らの実験によると、車両の左前部に設けた斜方照射赤外線光源は、車両前方に向かって右側45度ななめ方向に向かって10〜40度の照射幅角度の範囲を照射する指向性を有するようにするのが好適である。この範囲とすると、ほぼ直交する交差点および見通しの悪くなる鋭角的なカーブにおいて、目視の場合と比べて早めに検知が可能となる時間(距離)を大きくとれるからである。照射方向が30度よりも小さな角度の場合および60度よりも大きい場合には、交差点等において目視の場合に比べて短縮できる時間(距離)が小さくなり好ましくない。照射範囲を10度より狭くすると検知範囲が狭くなり、40度よりも拡げると斜方照射赤外線光源からの光を拡げるため、遠方への投射性が悪化するからである。
【0030】
次に第二実施形態について説明する。この実施形態では配光可変前照灯であるAFS(AdaptiveFrontlightingSystem)灯具に適用した場合である。図8はAFS灯具の上面視、図9はすれ違い用AFS光源の正面視である。また、図10は、第二の実施形態の車両接近警報装置の説明図である。
AFS灯具10は、前方に開口したハウジング11内に走行ビーム用光源12、すれ違い用AFS光源13、斜方照射赤外線光源14および赤外信号受信部15が設けられ、前記開口は透光性カバー16にて覆われている。
すれ違い用AFS光源13は、ハロゲンバルブ等の光源を取り付けたすれ違い用反射鏡17と、すれ違い用反射鏡17を垂直線を軸として左右方向に回動させる駆動部18と、保持フレーム19とから成る。保持フレーム19には、すれ違い用反射鏡17が回動可能に取り付けられると共に、前記駆動部18が取り付け固定されており、保持フレーム19はハウジング11に固定されている。
【0031】
すれ違い用AFS光源13の上には、斜方照射赤外線光源14および赤外信号受信部15が配設されている。斜方照射赤外線光源14および赤外信号受信部15は先の実施形態と同一であるので、ここでの詳細な説明は省略する。車両前端の左前方に設けた斜方照射赤外線光源は右方に向かって赤外線を照射し、車両前端の右前方に設けた斜方照射赤外線光源は左方に向かって赤外線を照射する。従って、先の実施形態と同様に車両前方において両者の光路は交差している。
【0032】
赤外信号処理手段50は、検知装置51と、演算装置52と出力装置53とを備える。周波数検知装置51は、異なる所定の周波数にて発光する左側AFS灯具に設けた斜方照射赤外線光源と右側AFS灯具に設けた斜方照射赤外線光源とを、受光した赤外線の周波数を基に検知する。演算装置52は、検知した信号を予め記録しておいた左側および右側の信号と比較して、右側灯具からの信号か左側灯具からの信号かを判別するとともに、走行時間に対するその強度変化を演算し、他車の接近状態を演算する。なお、演算装置52は後述するAFS灯具の駆動を制御するための演算も行う
【0033】
本実施形態においては、さらに、I/F装置54および車両情報装置55が設けられ、演算装置54にてすれ違い用AFS灯具の回動状態を制御するための演算を行っている。車両情報装置55は、車両のハンドル操舵角度、車速、加速度、前照灯の点灯情報などの車両の状態を示す装置であり、例えばハンドル操舵角は角度センサにより検知した後、各種情報の送受信を行うI/F装置54に出力する。I/F装置54は車両情報装置55からの所定の信号を演算装置52に信号を出力する。演算装置52においては、上記した他車の接近状態の演算と共に、I/F装置54からの信号を基にAFS灯具の駆動を制御する信号も作成し、出力装置53に出力する。出力装置53は、演算装置にて認識した他の車両の接近状態に関する信号を警報装置5に合った信号を、運転者にブザー等で警告を行う警報装置5に出力する。また、所定の場合には同時にAFS灯具の駆動部18に信号を出力し、車両の運行状態に応答してAFS光源13の配光を、車両進行方向に向けて角度α可変する。
【0034】
斜方照射赤外線光源14および赤外信号受信部15は、図9に示すようにすれ違い用AFS光源13の上方にて、その回動軸上に取り付け固定する。これにより、図8に点線にて示すように、すれ違い用AFS光源13が回動するときに斜方照射赤外線光源14および赤外信号受信部15も一体に回動する。よって、その照射範囲および受光範囲をすれ違い用AFS光源13による照射範囲、すなわち、車両の走行方向に向けることができる。
【0035】
以上、車両用前照灯内のすれ違い用光源の上方に斜方照射赤外線光源および赤外信号受信部を設ける例にて説明したが、図11のように車両用前照灯内の走行用光源およびすれ違い用光源よりも車両の両端となる外側の位置に並んで設けることもできる。この場合には、より車両の端部に設けることになるので、コーナー等において、他車との車−車間通信をより早い段階から行うことが可能となる。また、車両用前照灯内の外部、例えばバンパー内に別体に設けても良い。
【0036】
本発明に係る車両接近警報装置にON/OFFスイッチを設けてもよい。その場合には、運転者が必要ないと判断した場合には、OFFすることが出来る。運転者が最初に乗り込む時には、規定値としてONから開始されるのが安全性の点から望ましい。また、ナビゲーションシステムとの連携も可能である。ナビゲーションシステムからの情報を基に交差点の無い直線道路では本車両接近警報装置の動作を休止してもよく、この時は消費電力を節減できる。また、市街地では交差点が多いため、作動しなくてもよい時に作動してしまうと運転者が煩わしくなるため、例えば片側2車線の道路を走行している時にのみ制御を休止してもよい。本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更、置換、組み合わせなどが可能なことは問う業者に自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0037】
車両に取付けた車両接近警報装置を用いて容易に対向車の有無を早期に検知・警告することができ、特に、車両前端の左側及び右側に所定の方向を向いた斜方照射赤外線光源および赤外信号受信部を設けることによって、より早期に確実に車−車間通信を、安価な構成で実現することができ、工場内の所定道路内を走行する台車や、一般道路を走行する車両用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】自走車の走路における交差部まわりのレイアウト例を示す説明図である。
【図2】右側灯具の上面視である。
【図3】左側灯具および右側灯具の正面視である。
【図4】本発明に係る車両接近警報装置を搭載した車両が道路交差部を走る場合の交差部まわりのレイアウトを示す説明図である。
【図5】赤外信号受信部にて受信した信号に基づいて行う赤外信号処理手段および前記赤外信号処理手段の結果に基づいて警告を行う警告手段を説明する説明図である。
【図6】道路交差部における目視による他社確認と本実施形態に係る車両接近警報装置による他社確認との違いを示す説明図である。
【図7】コーナーにおける目視による他社確認と本実施形態に係る車両接近警報装置による他社確認との違いを示す説明図である。
【図8】AFS灯具の上面視である。
【図9】すれ違い用AFS光源の正面視である。
【図10】第二の実施形態の赤外信号受信部にて受信した信号に基づいて行う赤外信号処理手段および前記赤外信号処理手段の結果に基づいて警告を行う警告手段を説明する説明図である。
【図11】本発明に係る他の灯具の正面視である。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2 左側灯具
3 右側灯具
4 赤外信号処理手段
5 車両接近警報装置
6 運転者
7 車体
7a 車両前端
7b 車体側面
10 AFS灯具
11 ハウジング
12 走行ビーム用光源
13 すれ違い用AFS光源
14 斜方照射赤外線光源
15 右前側赤外信号受信部
16 透光性カバー
17 すれ違い用反射鏡
18 駆動部
19 保持フレーム

31 ハウジング
32 走行ビーム用光源
33 すれ違い用光源
34 斜方照射赤外線光源
35 右前側赤外信号受信部
37 透光性カバー
25 左前側赤外信号受信部
41 周波数検知装置
42 演算装置
43 出力装置
50 赤外信号処理手段
51 検知装置
52 演算装置
53 出力装置
54 I/F装置
55 車両情報装置
D1 進行方向
A、B 走路
K 交差部
A1 自走車
B1 他車
K1 交差部内側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左前部に設けた第1の斜方照射赤外線光源および第1赤外信号受信部と、車両の右前部に設けた第2の斜方照射赤外線光源および第2赤外信号受信部と、受信した赤外信号を処理する赤外信号処理手段と、前記赤外信号処理手段の結果に基づいて警告を行う警告手段とを備えた車両接近警報装置であって、
前記第1の斜方照射赤外線光源は、車両前方に向かって右側45度ななめ方向に向かって10〜40度の照射幅角度にて赤外線信号を発信し、前記第2の斜方照射赤外線光源は、車両前方方向に向かって左側45度ななめ方向に向かって10〜40度の照射幅角度に、前記第1の斜方照射不可視光源と異なる波長もしくは変調で赤外線信号を発信し、
前記第1の赤外線信号受信部は、他の車両の第2の斜方照射赤外線光源から発信された信号を受信判別する第1受信信号処理手段に接続され、前記第2の赤外線信号受信部は、他の車両の第1の斜方照射赤外線光源から発信された信号を受信判別する第2受信信号処理手段に接続され、
前記第1受信信号処理手段および/または第2受信信号処理手段の受信信号を解析して他の車両の接近状態を認知する接近認識手段と、
前記接近認識手段からの信号に基づき運転者に警告を行う警告手段とを備えた車両接近警報装置。
【請求項2】
前記接近認識手段には、さらに第1受信信号処理手段と第2受信信号処理手段の信号量を比較して、他の車両の接近が左側、右側もしくは正面側からのいずれかであるかを判別する接近判別手段が備わっていることを特徴とする請求項1に記載の車両接近警報装置。
【請求項3】
前記接近認識手段には、前記第1受信信号処理手段および/または第2受信信号処理手段の受信信号の単位時間あたりの信号強度の増加量もしくは増加率を求める手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両接近警報装置。
【請求項4】
前記第1の斜方照射赤外線光源および第2の斜方照射赤外線光源が、車両正面方向に対して45度ななめ方向が主光軸となるように、車両用前照灯の灯体内に設置された赤外線発光ダイオード光源であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の車両接近警報装置。
【請求項5】
前記車両用前照灯が、車両の進行方向に応じて照射方向を移動可能な光源を備えた可変配光前照灯であって、前記第1の斜方照射赤外線光源および第2の斜方照射赤外線光源は、前記可変配光前照灯の移動する光源に連携して照射方向を移動する駆動手段に接続されている、ことを特徴とする請求項4に記載の車両接近警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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