説明

車両搬送設備

【課題】搬送ハンガーの車両を積載している時と車両を積載していない時におけるストレージピッチを可変させ、循環軌道の機長を短くする。
【解決手段】車両1を加工処理するための循環軌道2に吊り下げられている搬送ハンガー3は、進行方向前側に設置された前部トロリ31及び前部トロリ31の進行方向前側に位置する駆動用トロリ35とを連結する前部ロードバー34と、後部トロリ32及び後部トロリ32の進行方向後側に位置する駆動停止用トロリ37とを連結する後部ロードバー36とを備え、前部ロードバー34及び後部ロードバー36は当該ロードバーを伸縮可能な伸縮機構5が組み込まれ、伸縮機構5は搬送ハンガー3を停止させた状態で、第1の駆動装置で収縮され第2の駆動装置で延伸される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両搬送設備に係り、特に車両を支持する搬送ハンガーを循環軌道に吊り下げた状態で搬送する車両搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両の組立工場において、循環軌道上を走行自在なトロリに車両を支持する搬送ハンガーを吊り下げた状態で、車両に塗装等の加工処理を施すための搬送設備が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
このような搬送設備としては、例えば図7(A)、(B)に示すように、車両100を加工処理するための循環軌道101と、循環軌道101に吊り下げられ車両100を搬送するために当該車両100を循環軌道101の異なる所定位置で着荷あるいは脱荷する搬送ハンガー102と、循環軌道101の上方に当該循環軌道101に沿って配置され搬送ハンガー102を牽引する伝動装置103とを備えているものがある。
【0004】
搬送ハンガー102は、進行方向前側に設置され循環軌道101に沿って自由走行する前部トロリ201と、進行方向後側に設置され循環軌道沿って自由走行する後部トロリ202と、前部トロリ201及び後部トロリ202の下側に固定され車両100の前部及び後部を支持できるように構成されているハンガーフレーム203と、前部トロリ201の進行方向前側に前部ロードバー204によって連結され循環軌道101に沿って自由走行する駆動用トロリ205と、後部トロリ202の進行方向後側に後部ロードバー206によって連結され循環軌道101に沿って自由走行する駆動停止用トロリ207とを備えている。
【0005】
また、駆動用トロリ205を牽引するための伝動装置103は、循環軌道101の上方に当該循環軌道101に沿って配置されている。この伝動装置103は駆動用トロリ205に係合する伝動突起103aが垂下した状態で固定され、循環軌道101に沿って移動することができる。この伝動突起103aに係合する駆動用トロリ205は、この伝動突起103aに対して係脱自在な係合部材205aが組み込まれている。
【0006】
このように構成された搬送ハンガー102は図7(A)に示すように、搬送ハンガー102を搬送させる場合には、駆動用トロリ205の係合部材205aを循環軌道101の上面から突出させ、伝動装置103の走行している伝動突起103aに係合させる。また、図7(B)に示すように、先行の搬送ハンガー102の駆動停止用トロリ207に後続の搬送ハンガー102の駆動用トロリ205が衝突した場合には、後続の搬送ハンガー102は停止するようになっている。
【0007】
なお、先行の搬送ハンガー102の駆動停止用トロリ207に後続の搬送ハンガー102の駆動用トロリ205が衝突しても、搬送ハンガー102のストレージピッチが車両の全長より長く設定されているので、搬送ハンガー102に支持されている車両同士が衝突することはない。ここで、ストレージピッチとは、先行の搬送ハンガー102の駆動用トロリ205が有する基準点から、後続の搬送ハンガー102の駆動用トロリ205が先行の搬送ハンガー102の駆動停止用トロリ207に衝突している場合における当該後続の搬送ハンガー102の駆動用トロリ205が有する基準点までの距離をいう。
【0008】
【特許文献1】特開平5−193715号公報
【特許文献2】実開昭56−124613号公報
【特許文献3】特開2004−182384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、背景技術に記載した搬送設備では、先行の搬送ハンガー102の駆動停止用トロリ207に後続の搬送ハンガー102の駆動用トロリ205が衝突しても、各搬送ハンガーに支持されている車両同士が衝突しないようなストレージピッチで設計されているので、図6(B)に示すように、車両を支持しない搬送ハンガー102を移動させる循環軌道101の空ハンガーライン部でも、車両を支持した搬送ハンガー102を移動させる循環軌道101の実搬送ライン部と同様な搬送ハンガーの循環スペースが必要であった。ここで、空ハンガーライン部とは、車両100の着荷位置APから走行方向に沿って車両100の脱荷位置DPまでの循環軌道101のことで、実搬送ライン部とは車両100の脱荷位置DPから走行方向に沿って車両100の着荷位置APまでの循環軌道101のことである。
【0010】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、搬送ハンガーの車両を積載している時と車両を積載していない時におけるストレージピッチを可変させ、循環軌道の機長(全長)を短くすることができる車両搬送設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成する本発明の車両搬送設備は、車両を加工処理するための循環軌道と、循環軌道に吊り下げられ車両を搬送するために当該車両を循環軌道の異なる所定位置で着荷あるいは脱荷する搬送ハンガーと、循環軌道の上方に当該循環軌道に沿って配置され搬送ハンガーを牽引する伝動装置とを備えている車両搬送設備において、搬送ハンガーは、進行方向前側に設置され循環軌道に沿って自由走行する前部トロリと、進行方向後側に設置され循環軌道に沿って自由走行する後部トロリと、トロリの進行方向前側にロードバーによって連結され伝動装置に対して係脱自在な係合部材が当該伝動装置に係合することで循環軌道に沿って走行する駆動用トロリと、後部トロリの進行方向後側に後部ロードバーによって連結され循環軌道に沿って自由走行する駆動停止用トロリと、前部ロードバー及び後部ロードバーそれぞれに設けられ当該ロードバーを伸縮可能な伸縮機構と、各ロードバーの伸縮機構それぞれに配置され、当該伸縮機構が延伸している場合において車両を脱荷する循環軌道の所定位置で搬送ハンガーを停止させた状態で当該伸縮機構を収縮する第1の駆動装置と、各ロードバーの伸縮機構それぞれに配置され、当該伸縮機構が収縮している場合において車両を着荷するために循環軌道の車両を脱荷する所定位置とは異なる所定位置で搬送ハンガーを停止させた状態で当該伸縮機構を延伸する第2の駆動装置とを備えているものである。なお、本明細書において「係脱」とは係り合わせたり、外したりすることを意味する。
【0012】
このような第1の態様である車両搬送設備によれば、循環軌道上における車両の着荷場所に車両が支持されていない空の搬送ハンガーが停止した場合には、予め伸縮機構が収縮している前部ロードバー及び後部ロードバーをそれぞれ第2の駆動装置で延伸させて搬送ハンガーのストレージピッチを長くすることができ、また、循環軌道上における車両の脱荷場所に車両が支持された実搬送ハンガーが停止した場合には、予め伸縮機構が延伸している前部ロードバー及び後部ロードバーをそれぞれ第1の駆動装置で収縮させて搬送ハンガーのストレージピッチを短くすることができるので、循環軌道の空ハンガーライン部における搬送ハンガーの循環スペースを実搬送ライン部における搬送ハンガーの循環スペースより狭めることができる。
【0013】
本発明の第2の態様は第1の態様である車両搬送設備において、伸縮機構は、ピストン形シリンダで筒体が前部トロリ及び後部トロリに接続され、ピストンロッドの先端部が駆動用トロリ及び駆動停止用トロリに接続されているものである。
【0014】
このような第2の態様である車両搬送設備によれば、前部ロードバー及び後部ロードバーをピストン形シリンダで伸縮させるので、出力変位を直線形になり、連結されているトロリを循環軌道上でスムーズに移動させることができる。
【0015】
本発明の第3の態様は第2の態様である車両搬送設備において、第1の駆動装置及び第2の駆動装置は往復動形アクチュエータである。
【0016】
このような第3の態様である車両搬送設備によれば、ピストン形シリンダの伸縮機構を油圧シリンダや空気圧シリンダで制御できるようになる。
【0017】
本発明の第4の態様は第1の態様である車両搬送設備において、循環軌道の車両を着荷及び脱荷する位置には、搬送ハンガーが到着したことを検出するセンサが配置され、センサは搬送ハンガーが到着したことを検出すると、当該搬送ハンガーの駆動用トロリ及び伝動装置の係合状態を解除すると共に、着荷位置に配置されたセンサは第2の駆動装置及び脱荷位置に配置されたセンサは第1の駆動装置を駆動する検出信号を送出するものである。
【0018】
このような第5の態様である車両搬送設備によれば、車両の着荷場所及び脱荷場所に搬送ハンガーを自動停止させることができると共に、車両の着荷場所では前部ロードバー及び後部ロードバーの予め収縮している伸縮機構を自動的に延伸させて搬送ハンガーのストレージピッチを長くすることができ、車両の脱荷場所では前部ロードバー及び後部ロードバーの予め延伸している伸縮機構を自動的に収縮させて搬送ハンガーのストレージピッチを短くすることができる。
【0019】
本発明の第5の態様は第1の態様又は第2の態様である車両搬送設備において、搬送ハンガーは車両の脱荷状態の時に伸縮機構の収縮状態を維持するロック機構を備え、循環軌道の車両を着荷する所定位置にはロック機構のロック状態を解除するロック解除体が配置されているものである。
【0020】
このような第6の態様である車両搬送設備によれば、搬送ハンガーが脱荷状態で循環軌道上を移動する際に前部ロードバー及び後部ロードバーが延伸することを防ぐことができ、而も搬送ハンガーに車両を着荷させる場合に前部ロードバー及び後部ロードバーを延伸させると共に搬送ハンガーから車両を脱荷後に収縮することができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両搬送設備によれば、循環軌道の空ハンガーライン部における搬送ハンガーの循環スペースを実搬送ライン部における搬送ハンガーの循環スペースより狭めることができるので、循環軌道の機長を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の車両搬送設備を実施するための最良の形態例について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明の車両搬送設備は図1(A)、(C)に示すように、車両1を加工処理するための循環軌道2と、循環軌道2に吊り下げられ車両1を搬送するために当該車両1を循環軌道2の異なる所定位置で着荷あるいは脱荷する搬送ハンガー3と、循環軌道2の上方に当該循環軌道2に沿って配置され搬送ハンガー3を牽引する伝動装置4とを備えている。
【0024】
循環軌道2は、車両1を支持する搬送ハンガー3で吊り下げるために左右一対のコの字形のレールが溝部を相対するように配置して構成されている。
【0025】
搬送ハンガー3は、進行方向前側に設置され循環軌道2に沿って自由走行する前部トロリ31と、進行方向後側に設置され循環軌道2に沿って自由走行する後部トロリ32と、前部トロリ31及び後部トロリ32の下側に固定され車両1の前部及び後部を支持できるように構成されているハンガーフレーム33と、前部トロリ31の進行方向前側に前部ロードバー34によって連結され循環軌道2に沿って自由走行する駆動用トロリ35と、後部トロリ32の進行方向後側に後部ロードバー36によって連結され循環軌道2に沿って自由走行する駆動停止用トロリ37とを備えている。
【0026】
前部トロリ31及び後部トロリ32は、本体301の上部の両側にそれぞれ走行方向において前後一対のトロリホイール302、303を有し、循環軌道2の左右一対のコの字形のレールが有する溝部を自由走行するように構成されている。
【0027】
ハンガーフレーム33は、車両1の前部及び後部を支持するために車両1の幅方向で開閉運動する一対のアーム331が、走行方向において前後に設けられている。この一対のアーム331は車両1を支持する場合には閉じて車両1の下部を支持し、車両1を離脱する場合には開いて車両1の下部から外れるように構成されている。
【0028】
駆動用トロリ35は図2に示すように、本体311の上部の両側にそれぞれ走行方向において前後一対のトロリホイール312、313を有し、循環軌道2の左右一対のコの字形のレールが有する溝部を自由走行するように構成されている。また、駆動用トロリ35は、本体311の上部に係脱自在、例えば昇降自在な係合部材314が設けられ、本体311の下部に横軸315を揺動中心にして上下揺動自在な操作部材316が設けられている。この操作部材316は係合部材314に連結され、常時は錘によって先端カム部316aが下がると共に係合部材314が上昇するように構成されている(図中、実線部)。したがって、操作部材315の先端部315aが上がると係合部材314が下降することになる(図中、2点鎖線部)。
【0029】
駆動停止用トロリ37は図2に示すように、本体321の上部の両側にそれぞれ走行方向において前後一対のトロリホイール322、323を有し、循環軌道2の左右一対のコの字形のレールが有する溝部を自由走行するように構成されている。また、駆動停止用トロリ37は、本体321の下部に、駆動用トロリ35の操作部材316が有する先端カム部316aに係合すると当該操作部材316を上方に揺動するカム部材324が走行方向に対して後方に突出するように設けられている。
【0030】
また、駆動用トロリ35の係合部材314に係合して搬送ハンガー3を牽引する伝動装置4は、循環軌道2の上方に当該循環軌道2に沿ってガイドレール41が配置されている。このガイドレール41には、伝動体である例えばローラチェーン42が支持案内されている。ローラチェーン42はガイドレール41に沿って駆動部(図示せず)によって走行することができる。また、ローラチェーン42には駆動用トロリ35の係合部材314に係合する伝動突起43が垂下した状態で固定されている。
【0031】
前部ロードバー34及び後部ロードバー36は図1(A)、(B)、(C)、(D)に示すように、それぞれロードバー34、36を伸縮可能な伸縮機構5が設けられている。なお、前部ロードバー34及び後部ロードバー36は長さが異なるが、伸縮機構5は同一構成なので同一のものとして説明する。この伸縮機構5は、ピストン形シリンダで筒体51が前部トロリ31及び後部トロリ32に接続され、ピストンロッド52の先端部52aが駆動用トロリ35及び駆動停止用トロリ37に接続されている。なお、図1(B)、(D)においては、筒体51の内部にさらに筒体が摺動自在に収納されている二重構造でピストンロッド52を含めて2段階で伸びる構造であるが、ピストン形シリンダの延伸長さを延長させるだけなので詳細な動作説明は省略する。このように前部ロードバー34及び後部ロードバー36をピストン形シリンダで伸縮させることになるので、出力変位が直線形になり、連結されているトロリを循環軌道上でスムーズに移動させることができる。
【0032】
また、搬送ハンガー3は図5(A)、(C)に示すように、車両1の脱荷状態の時に伸縮機構5の収縮状態を維持するロック機構8を備えている。このロック機構8は、駆動用トロリ35及び駆動停止用トロリ37それぞれに設けられ溝が形成されている取付ブラケット81と、取付ブラケット81の溝に橋渡しされるように固定されたピン82を揺動中心にして上下方向に揺動自在に取り付けられている係止体83とを備えている。さらに、ロック機構8は、係止体83の揺動先端部の下面側に形成された凹状の係止部83aに係合可能な凸部84が、伸縮機構5の筒体51のピストンロッド52が突出する側の端部の上面側に設けられている。したがって、伸縮機構5が収縮状態の時には、係止体83の係止部83aが伸縮機構5の筒体51に設けられた凸部84に嵌合するので、ロック機構8はロック状態となり、伸縮機構5の収縮状態を維持することができる。なお、図5(A)は駆動停止用トロリ37にロック機構8を備えた図で、図5(C)は駆動用トロリ35にロック機構8を備えた図である。
【0033】
また、搬送ハンガー3は図5(B)、(D)に示すように、循環軌道2の車両1を着荷する所定位置には、ロック機構8のロック状態を解除するロック解除体9が配置されている。このロック解除体9は、への字形に形成されている板材で傾斜カム面9aが、係止体83の揺動先端部の上面側に突出して設けられた操作部83bを上方に持ち上げて、係止体83を上方に揺動することで、当該係止体83の係止部83aを伸縮機構5の筒体51に設けられた凸部84から離脱させることができる。したがって、ロック機構8のロック状態を解除することができる。なお、図5(B)は駆動停止用トロリ37にロック機構8を備えた図で、図5(D)は駆動用トロリ35にロック機構8を備えた図である。
【0034】
このように、搬送ハンガー3にロック機構8を備え、循環軌道2の車両1を着荷する所定位置にロック解除体9を配置することで、搬送ハンガー3が脱荷状態で循環軌道上を移動する際に前部ロードバー34及び後部ロードバー36が延伸することを防ぐことができ、而も搬送ハンガー3に車両1を着荷させる場合に前部ロードバー34及び後部ロードバー36を延伸させると共に搬送ハンガー3から車両1を脱荷後に収縮することができるようになる。
【0035】
この車両搬送設備は、図3(A)、(B)、(C)に示すように、前部ロードバー34及び後部ロードバー36の伸縮機構5それぞれに配置され、当該伸縮機構5が延伸している場合において車両を脱荷する循環軌道2の所定位置で搬送ハンガー3を停止させた状態で当該伸縮機構5を収縮する第1の駆動装置6を備えている。この第1の駆動装置6は、伸縮機構5が延伸している駆動用トロリ35を押圧して伸縮機構5を収縮可能な位置(図3(C))に配置され、伸縮機構5が延伸している駆動停止用トロリ37を押圧して伸縮機構5を収縮可能な位置(図3(B))に配置されている。また、第1の駆動装置6は各トロリの走行の邪魔にはならないように配置されている。なお、この第1の駆動装置6は往復動形アクチュエータが好ましい。第1の駆動装置6を往復動形アクチュエータにすることで、ピストン形シリンダの伸縮機構5を油圧シリンダや空気圧シリンダで制御できるようになる。
【0036】
また、この車両搬送設備は図4(A)、(B)、(C)に示すように、前部ロードバー34及び後部ロードバー36の伸縮機構5それぞれに配置され、当該伸縮機構5が収縮している場合において車両を着荷するために循環軌道2の車両を脱荷する所定位置とは異なる所定位置で搬送ハンガー3を停止させた状態で当該伸縮機構5を延伸する第2の駆動装置7とを備えている。この第2の駆動装置7は、伸縮機構5が収縮している駆動用トロリ35を押圧して伸縮機構5を延伸可能な位置(図4(C))に配置され、伸縮機構5が収縮している駆動停止用トロリ37を押圧して伸縮機構5を延伸可能な位置(図4(B))に配置されている。また、第2の駆動装置7は各トロリの走行の邪魔にはならないように配置されている。なお、この第2の駆動装置7を往復動形アクチュエータにすることで、ピストン形シリンダの伸縮機構5を油圧シリンダや空気圧シリンダで制御できるようになる。
【0037】
さらに、この車両搬送設備は図6(A)に示すように、循環軌道2の車両1を着荷する位置AP及び脱荷する位置DPには、それぞれ搬送ハンガー3が到着したことを検出するセンサ10、11が配置されている。センサ10、11は、搬送ハンガー3が到着したことを検出すると、当該搬送ハンガー3の駆動用トロリ35及び伝動装置4の係合状態を解除すると共に、着荷位置APに配置されたセンサ10は第2の駆動装置7及び脱荷位置DPに配置されたセンサ11は第1の駆動装置6をそれぞれ駆動する検出信号を制御装置(図示せず)に送出する。制御装置は、第2の駆動装置7を駆動する検出信号を検出すると当該第2の駆動装置7を駆動し、第1の駆動装置6を駆動する検出信号を検出すると当該第1の駆動装置6を駆動することができる。
【0038】
このように、循環軌道2の車両1を着荷する位置AP及び脱荷する位置DPには、それぞれ搬送ハンガー3が到着したことを検出するセンサ10、11を配置することで、車両の着荷場所AP及び脱荷場所DPに搬送ハンガー3を自動停止させることができると共に、車両1の着荷場所APでは前部ロードバー34及び後部ロードバー36の予め収縮している伸縮機構5を自動的に延伸させて搬送ハンガー3のストレージピッチを長くすることができ、車両1の脱荷場所DPでは前部ロードバー34及び後部ロードバー36の予め延伸している伸縮機構5を自動的に収縮させて搬送ハンガー3のストレージピッチを短くすることができる。
【0039】
次に、このように構成された車両搬送設備の動作について説明する。
【0040】
搬送ハンガー3を搬送させる場合には、駆動用トロリ35の係合部材314を循環軌道2の上面から突出させ、伝動装置4のガイドレール41に支持案内されて走行するローラチェーン42に固定された伝動突起43に係合させる。これにより、駆動用トロリ35が搬送ハンガー3を牽引して搬送ハンガー3が搬送される。なお、先行の搬送ハンガー3の駆動停止用トロリ37に後続の搬送ハンガー3の駆動用トロリ35が衝突した場合には、後続の搬送ハンガー3の駆動用トロリ35が有する操作部材316が、先行の搬送ハンガー3の駆動停止用トロリ37が有するカム部材324に作用して、後続の搬送ハンガー3の駆動用トロリ35の係合部材314及び伝動装置4が有する伝動突起43の係合状態を解除するので、後続の搬送ハンガー3は停止することができる。
【0041】
このような車両搬送設備において、循環軌道2上における車両1の着荷場所APに車両1が支持されていない空の搬送ハンガー3が到着すると、センサ10がその空の搬送ハンガー3を検出して制御装置にその旨の検出信号を送出する。制御装置はその検出信号に基づき当該搬送ハンガー3の駆動用トロリ35及び伝動装置4の係合状態を解除するので、当該搬送ハンガー3は停止する。また、制御装置はその検出信号に基づき2つの第2の駆動装置7を駆動するので、予め伸縮機構5が収縮している前部ロードバー34は第2の駆動装置7で駆動用トロリ35を押圧することで延伸され(図4(A)、(C))、また、予め伸縮機構5が収縮している後部ロードバー36は第2の駆動装置7で駆動停止用トロリ37を押圧することで延伸されるので(図4(A)、(B))、搬送ハンガー3のストレージピッチを長くすることができる。
【0042】
また、循環軌道2上における車両1の脱荷場所DPに車両1が支持された実搬送ハンガー3が到着すると、センサ11がその実搬送ハンガー3を検出して制御装置にその旨の検出信号を送出する。制御装置はその検出信号に基づき当該搬送ハンガー3の駆動用トロリ35及び伝動装置4の係合状態を解除するので、当該搬送ハンガー3は停止する。また、制御装置はその検出信号に基づき2つの第1の駆動装置6を駆動するので、予め伸縮機構5が延伸している前部ロードバー34は第1の駆動装置6で駆動用トロリ35を押圧することで収縮され(図3(A)、(C))、また、予め伸縮機構5が延伸している後部ロードバー36は第1の駆動装置6で駆動停止用トロリ37を押圧することで収縮されるので(図3(A)、(B))、搬送ハンガー3のストレージピッチを短くすることができる。
【0043】
このように、搬送ハンガー3の車両1を積載している時と車両1を積載していない時におけるストレージピッチを可変させることができるので、循環軌道2の空ハンガーライン部における搬送ハンガー3の循環スペースを実搬送ライン部における搬送ハンガーの循環スペースより狭めることができる。したがって、図6(A)、(B)に示すように、従来の循環軌道の機長より短くすることができる。ここで、実搬送ライン部とは、車両1の着荷位置APから走行方向に沿って車両1の脱荷位置DPまでの循環軌道2のことで、空ハンガーライン部とは車両1の脱荷位置DPから走行方向に沿って車両1の着荷位置APまでの循環軌道2のことである。
【0044】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の車両搬送設備における好ましい実施の形態例を示す図で、(A)は実搬送ハンガーが循環軌道に吊り下げられた状態を示す説明図、(B)は(A)におけるロードバーの伸縮機構の状態を示す説明図、(C)は空の搬送ハンガーが循環軌道に吊り下げられた状態を示す説明図、(D)は(C)におけるロードバーの伸縮機構の状態を示す説明図である。
【図2】本発明の車両搬送設備の搬送ハンガーの構成要素である駆動用トロリと駆動停止用トロリを示す詳細図である。
【図3】本発明の車両搬送設備の動作状態を示す図で、(A)は空の搬送ハンガーが循環軌道に吊り下げられた状態を示す説明図、(B)は(A)における駆動停止用トロリ、伸縮機構及び第1の駆動装置の関係を示す詳細図、(C)は(A)における駆動用トロリ、伸縮機構及び第1の駆動装置の関係を示す詳細図である。
【図4】本発明の車両搬送設備の動作状態を示す図で、(A)は実搬送ハンガーが循環軌道に吊り下げられた状態を示す説明図、(B)は(A)における駆動停止用トロリ、伸縮機構及び第2の駆動装置の関係を示す詳細図、(C)は(A)における駆動用トロリ、伸縮機構及び第2の駆動装置の関係を示す詳細図である。
【図5】本発明の車両搬送設備の搬送ハンガーの構成要素であるロック機構及びロック解除体を示す図である。
【図6】車両搬送設備を示す図で、(A)は従来の車両搬送設備の全体説明図、(B)は本発明の車両搬送設備の全体説明図である。
【図7】従来の車両搬送設備を示す図で、(A)は実搬送ハンガーが循環軌道に吊り下げられた状態を示す説明図、(B)は空の搬送ハンガーが循環軌道に吊り下げられた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1……車両
2……循環軌道
3……搬送ハンガー
31……前部トロリ
32……後部トロリ
34……前部ロードバー
35……駆動用トロリ
314……係合部材
36……後部ロードバー
37……駆動停止用トロリ
5……伸縮機構
6……第1の駆動装置
7……第2の駆動装置
8……ロック機構
9……ロック解除体
10、11……センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を加工処理するための循環軌道と、前記循環軌道に吊り下げられ前記車両を搬送するために当該車両を前記循環軌道の異なる所定位置で着荷あるいは脱荷する搬送ハンガーと、前記循環軌道の上方に当該循環軌道に沿って配置され前記搬送ハンガーを牽引する伝動装置とを備えている車両搬送設備において、
前記搬送ハンガーは、
進行方向前側に設置され前記循環軌道に沿って自由走行する前部トロリと、
進行方向後側に設置され前記循環軌道に沿って自由走行する後部トロリと、
前部トロリの進行方向前側に前部ロードバーによって連結され前記伝動装置に対して係脱自在な係合部材が当該伝動装置に係合することで前記循環軌道に沿って走行する駆動用トロリと、
前記後部トロリの進行方向後側に後部ロードバーによって連結され前記循環軌道に沿って自由走行する駆動停止用トロリと、
前記前部ロードバー及び前記後部ロードバーそれぞれに設けられ当該ロードバーを伸縮可能な伸縮機構と、
前記各ロードバーの前記伸縮機構それぞれに配置され、当該伸縮機構が延伸している場合において前記車両を脱荷する前記循環軌道の前記所定位置で前記搬送ハンガーを停止させた状態で当該伸縮機構を収縮する第1の駆動装置と、
前記各ロードバーの前記伸縮機構それぞれに配置され、当該伸縮機構が収縮している場合において前記車両を着荷するために前記循環軌道の前記車両を脱荷する前記所定位置とは異なる前記所定位置で前記搬送ハンガーを停止させた状態で当該伸縮機構を延伸する第2の駆動装置とを備えていることを特徴とする車両搬送設備。
【請求項2】
前記伸縮機構は、ピストン形シリンダで筒体が前記前部トロリ及び前記後部トロリに接続され、ピストンロッドの先端部が前記駆動用トロリ及び前記駆動停止用トロリに接続されていることを特徴とする請求項1記載の車両搬送設備。
【請求項3】
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は往復動形アクチュエータであることを特徴とする請求項2記載の車両搬送設備。
【請求項4】
前記循環軌道の前記車両を着荷及び脱荷する位置には、前記搬送ハンガーが到着したことを検出するセンサが配置され、前記センサは前記搬送ハンガーが到着したことを検出すると、当該搬送ハンガーの駆動用トロリ及び前記伝動装置の係合状態を解除すると共に、前記着荷位置に配置された前記センサは前記第2の駆動装置及び前記脱荷位置に配置された前記センサは前記第1の駆動装置を駆動する検出信号を送出することを特徴とする請求項1記載の車両搬送設備。
【請求項5】
前記搬送ハンガーは前記車両の脱荷状態の時に前記伸縮機構の収縮状態を維持するロック機構を備え、前記循環軌道の前記車両を着荷する所定位置には前記ロック機構のロック状態を解除するロック解除体が配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−202969(P2009−202969A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44731(P2008−44731)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】