説明

車両洗浄システム

【課題】薬剤の希釈水としてRO処理水を用いることで、洗浄効果の向上を図る。
【解決手段】洗車用の原水を濾過する前処理装置1は、砂濾過装置4、除鉄濾過装置5および除マンガン濾過装置6の三つの装置からなる。シリカ除去装置2は、前処理装置1からの濾過水から逆浸透膜法によってシリカなどの不純物を除去する。処理水槽3には、シリカ除去装置2からのRO処理水12aが貯留される。そして、薬剤ノズル16aに、処理水槽3からのRO処理水にて希釈された薬剤が供給されると共に、仕上水ノズル18aに、処理水槽3からのRO処理水が供給される。清水ノズル17bおよび洗浄水ノズル17cには、原水槽3Aからの原水が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜法によってシリカなどの不純物を除去した洗車用純水を使用して鉄道車両などを洗車する車両洗浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の窓ガラスが汚損されている場合には、(1)フッ素系薬品を使用してガラス表面の付着物を溶解させて除去するか、(2)強酸性薬品を使用して付着物を溶解させて除去するか、(3)研磨コンパウンドによって付着物を研磨して削り取るか、又は、(4)汚損したガラスを新品ガラスに取り替える等の方法が採られている。そして、窓ガラスを透明な状態(白濁汚損の無い状態)に回復させた後も、継続作業として、鉄道車両の洗浄を行っている。洗車用水としては、専ら、工業用水や井戸水や水道水が用いられており、その水質として、例えば、図4のようなデータが得られている。
【0003】
図4のような水質の洗車用水が鉄道車両に与える影響について、本発明者が種々検討したところ、次のような問題点が明らかになった。
先ず、鉄成分やマンガン成分は、酸化して車体に赤錆や黒色の汚れを付着させる可能性があり、硬度(Mg,Ca)成分は、白い粉末状の残滓を付着させ、次回の洗浄まではこれが除去されないという問題点があった。
また、洗車用水にイオン状に溶解するシリカ(SiO)は、窓ガラスに雫状の白い付着物を残すのであるが、シリカがガラスと同一成分であって結合力が強いため、次回の洗浄によっても除去できず、洗浄作業の毎に蓄積されることになり、鱗状の白濁汚損が発生し、遂には、窓ガラスが「すりガラス」の様にくもってしまうという問題点があった。
【0004】
これらの問題点は、洗浄用水の水質にその原因があるのであるから、洗車後のガラス表面に残っている水滴を拭き取ったり、或いは、圧縮空気やファンによって吹き飛ばしたとしても、根本的な解決策とはならない。なお、イオン交換法によってシリカを除去する方法もあるが、イオン交換法では、樹脂再生洗浄に塩酸や苛性ソーダを使用せざるを得ないので排水による環境汚染の問題があり、排水処理に余計な設備や費用が必要となるという問題点がある。
【0005】
そこで、これらの問題を解決するために、本件出願人は、先に「洗車方法及びシリカ除去システム」として特許を取得している(特許第2951588号)。また、「仕上水塔を備えるシリカ除去システム」として特許出願している(特開2001−70953号)。これらのシステムを用いた車両洗浄の場合、薬剤の原液を水で希釈して適切な濃度に調節後、洗車車両に噴霧し、薬剤が界面反応して車体の汚れと結びついたところをブラシで剥がし取り、車両から浮き上がった汚れを水で洗い流す方法を採用している。その際、薬剤の原液を希釈する水としては、水道水や工業用水などが使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水道水や工業用水などで希釈された薬剤が車両に吹き付けられて車両の汚れと反応し、車両から汚れを浮き上がらせて引き剥がし、ブラシによって飛ばされて汚れの除去を行う場合、車両の汚れをより効果的に除去するために、薬剤の能力を高めるか、能力の高い薬剤を使用することが考えられる。しかしながら、薬剤の能力を高めるには限界があり、また、能力の高い薬剤は、高価であったり、廃水処理に問題が発生することもある。
【0007】
ところで、車両洗浄が行われる車両基地で使用されている水としては、地下水や工業用水などが挙げられる。特に、初期に建設された車両基地では、多くが地下水を使用する設備になっている。また、都市近郊の車両基地では、経済的な見地から工業用水を使用するような設備が多い。その他、基地内で使用された水を再利用できるように処理した水であるリサイクル水などが使用されている。従って、車両洗浄に際して、水道水だけでなく、地下水や工業用水やリサイクル水などを使用する場合がある。
【0008】
しかしながら、水道水を含むそれらの水には、硬度(Mg,Ca)成分、鉄成分やマンガン成分の他、浮遊物質などの不純物が含まれている。このような不純物を含む水で薬剤を希釈すると、その不純物と薬剤の有効成分とが結びついて、薬剤の洗浄効果が低下することになる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、薬剤の希釈水としてRO処理水を用いて、洗浄効果の向上を図ることにある。また、RO処理水の製造に使用される原水が地下水や工業用水やリサイクル水などの場合でも、それらの水に含まれる鉄成分やマンガン成分などの不純物を除去することで、RO膜の目詰りを防止することにある。そして、それにより、RO処理水の安定した製造と、RO膜の損傷の防止を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、薬剤による薬洗処理後、ブラシで汚れを除去して水で洗い流す車両洗浄システムであって、砂濾過装置、除鉄濾過装置および除マンガン濾過装置の内、一または複数の装置からなり、洗車用の原水を濾過する前処理装置と、この前処理装置からの濾過水から逆浸透膜法によってシリカなどの不純物を除去するシリカ除去装置と、このシリカ除去装置から得られるRO処理水を貯留する処理水槽とを備え、車両に薬剤を噴霧する薬剤噴霧部に、前記処理水槽からのRO処理水にて希釈された薬剤が供給されると共に、車両に付着した薬剤や汚れなどを水で洗い流す水洗浄部に、前記処理水槽からのRO処理水が供給されることを特徴とする車両洗浄システムである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記水洗浄部は、前記薬剤噴霧部から薬剤が噴霧された車両に水を噴射しつつブラッシングする散水ブラッシング洗浄部に後続される前洗浄部と、この前洗浄部に後続される仕上洗浄部とからなり、前記散水ブラッシング洗浄部と前記前洗浄部とに原水が供給され、前記仕上洗浄部に前記処理水槽からのRO処理水が供給されることを特徴とする請求項1に記載の車両洗浄システムである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、鉄道車両やバスなどの窓ガラスの多い営業用車両の洗浄に用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両洗浄システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薬剤の希釈水としてRO処理水を用いることで、洗浄効果を向上させることができる。すなわち、洗浄効果を低下させる成分が排除された水によって薬剤が希釈されており、薬剤をそのままで洗浄効果を向上させることができる。また、本発明によれば、RO処理水の製造に使用される原水が地下水などの場合でも、それらの水に含まれる鉄成分やマンガン成分などの不純物を除去することで、RO膜の目詰りを防止することができる。そして、それにより、RO処理水を安定して製造することができ、RO膜の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の車両洗浄システムの一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の車両洗浄システムに適用されるシリカ除去システムの一例を示すブロック図である。
【図3】逆浸透膜法の原理を図示したものである。
【図4】鉄道車両用の洗車用水の水質を例示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の車両洗浄システムの一実施例を示すブロック図である。また、図2は、図1の車両洗浄システムに適用されるシリカ除去システムの一例を示すブロック図である。なお、本実施例の車両洗浄システムは、鉄道車両の洗浄に使用される。
【0016】
まず、シリカ除去システムについて説明する。このシリカ除去システムは、洗車用の原水を濾過する前処理装置1と、この前処理装置1からの濾過水からシリカを除去するシリカ除去装置2と、このシリカ除去装置2で製造されたRO(Reverse Osmosis)処理水を貯留する処理水槽3と、洗車用の原水を蓄える原水槽3Aを備える。本実施例では、洗車用の原水として、地下水や工業用水や水道水などが使用される。
【0017】
前処理装置1は、砂濾過装置4、除鉄濾過装置5および除マンガン濾過装置6の三つの装置から構成されている。砂濾過装置4は、砂層の上にアンスラサイトからなる濾過材を積層して構成された二重層に水を通して、懸濁物質を除去する装置である。除鉄濾過装置5は、装置に供給される水に次亜塩素酸ナトリウムを注入して、水に含まれる鉄成分を水酸化鉄として析出し、その水酸化鉄を濾過材で除去する装置である。除マンガン濾過装置6は、除鉄濾過装置5と同様に、供給される水に次亜塩素酸ナトリウムを注入して、水に含まれるマンガン成分を酸化させた後、濾過材で除去する装置である。
【0018】
本実施例の前処理装置1は、以上のような構成であるから、洗車用の原水から、懸濁物質や鉄成分やマンガン成分などの不純物を確実に除去することができる。そして、前処理装置1によって処理された濾過水は、後述するシリカ除去装置2へ送られる。
【0019】
シリカ除去装置2は、図2に示すように、活性炭濾過装置7、軟水化装置8、塩水タンク9、ガードフィルター10、昇圧ポンプ11、RO膜モジュール12、及び、装置各部を制御するROシステム制御盤13等で構成されている。活性炭濾過装置7は、多孔質である活性炭の吸着能力を利用して、前処理装置1からの濾過水から遊離塩素や有機物等を吸着除去する装置である。
【0020】
軟水化装置8は、活性炭濾過装置7の処理水から、スケール成分である硬度成分(Ca,Mg)を除去する装置である。RO膜モジュール12でスケール成分の濃縮が生じると、カルシウムイオンが炭酸カルシウムとして析出する恐れがあるので、これを防止するべく、軟水化装置8で予め硬度成分を除去している。軟水化装置8の具体的構成は、特に限定されるものではないが、〔数1〕式に基づいて、硬度成分をイオン交換樹脂Rに捕捉している。なお、NaがCaやMgに置換されてしまうと再生が必要となるので、塩水タンク9を設けて、適宜に〔数2〕式に示す再生作業を行うようにしている。
【0021】
【数1】

【0022】
【数2】

【0023】
RO膜モジュール12は、図3に示す逆浸透膜法の原理に基づいて、原水からイオン分や重金属分等を除去するものであり、窓ガラスにとって有害なシリカを、鉄道車両の洗車用水から確実に除去している。図3に逆浸透膜法(Reverse Osmosis)の原理を示すように、半透膜を隔てて希薄溶液と濃厚溶液とが接すると、希薄溶液側の溶媒が濃厚溶液側に浸透し(a)、浸透圧の圧力差Pを生じて平衡するが(b)、一方、濃厚溶液側に浸透圧以上の圧力Pを加えると溶媒が希薄溶液の方に移動する(c)。そこで、ガードフィルター10の出力を昇圧ポンプ11で加圧してRO膜モジュール12に加え、RO膜モジュール12からは、RO処理水12aとRO濃縮水(RO排水)12bとを出している(図2)。なお、ガードフィルター10は、軟水化装置8から供給される水について、微細なゴミを除去してRO膜を保護するものである。
【0024】
本実施例のシリカ除去装置2は、以上のように構成されているので、前処理装置1からの濾過水から、シリカ成分だけでなく、硬度成分等不純物も確実に除去される。そして、RO処理水は、処理水槽3に蓄えられ、RO処理水利用機器へ必要量が出力される。また、RO装置停止時には、非常用バルブVが開放され原水が供給されるので、処理水槽3が空になることはない。
【0025】
一方、RO処理水用の処理水槽3とは別に、原水槽3Aが用意されており、この原水槽3Aには地下水などの原水が蓄えられ、この原水槽3Aから送水ポンプ14によって前処理装置1へ原水が供給される。また、原水槽3A内の原水は、送水ポンプ15によって、後述する車両洗浄システムへ供給される。なお、原水槽3Aには、シリカ除去装置2から出力されるRO濃縮水12bも混合して蓄えることができ、そのように構成すれば水を有効利用することができる。
【0026】
シリカ除去装置2は、逆浸透膜法によってシリカを除去するので、小型(省スペース)かつ安価に構成することができ、既設の洗浄システムに簡易に付加することができる。しかも、排水処理に特別な配慮が不要であり、RO濃縮水(RO排水)を洗浄システムで有効利用することもできる。RO処理水のシリカ含有率は、一般には低い方が好ましいが、シリカ含有率8ppm 以下なら白濁汚損が生じないことが本発明者の研究から明らかとなっており、装置価格も考慮すれば、シリカ含有率を8ppm 以下に除去するのが望ましい。
【0027】
次に、上記シリカ除去システムを設置した車両洗浄システムについて説明する。車両洗浄システムは、図1に示すように、薬洗機16、清水洗浄機17および仕上水塔18を備え、薬剤噴霧部と散水ブラッシング洗浄部と水洗浄部に区分される。本実施例の水洗浄部は、清水洗浄機17による前洗浄部と、仕上水塔18による仕上洗浄部とに分けられており、仕上洗浄部は水洗浄部の最終段階に配置されることになる。つまり、清水洗浄機17が散水ブラッシング洗浄部と前洗浄部とに区分されており、水洗浄部は、車両洗浄システムの散水ブラッシング洗浄部に後続する前洗浄部と、この前洗浄部に後続して最終仕上げ洗浄を行う仕上洗浄部とに区分されている。
【0028】
本実施例の車両洗浄システムは、以上のような構成であるから、鉄道車両の洗車は、薬洗機16、清水洗浄機17、仕上水塔18の順に通過してなされる。具体的には、まず、薬洗機16では、薬剤ノズル16aからの薬剤によって薬洗処理がなされる。薬剤は、薬剤の原液が処理水槽3からのRO処理水によって希釈されたものである。薬剤の希釈は、RO処理水が、処理水槽3から送水ポンプ19によって薬剤槽20へ供給されると共に、薬剤の原液が、薬剤槽20内へ供給されることでなされる。薬剤槽20内の希釈された薬剤は、送水ポンプ21によって薬剤槽20から薬洗機16へ供給される。
【0029】
そして、清水洗浄機17の散水ブラッシング洗浄部では、薬洗機16において洗浄用薬剤の噴射を受けた車両に対して、洗浄ブラシ17a等の回転に合わせて、清水ノズル17bから水を噴射して車両を洗浄する。散水ブラッシング洗浄部に後続する前洗浄部では、洗浄水ノズル17cから水を噴射することによって、薬剤や汚れ等を洗い流す。この際、清水ノズル17bおよび洗浄水ノズル17cには、送水ポンプ15によって、原水槽3Aから原水が供給される。
【0030】
さらに、仕上水塔18の仕上洗浄部では、仕上水ノズル18aから水を噴射して、最終洗浄が行われる。この際、仕上水ノズル18aには、送水ポンプ22によって、処理水槽3からRO処理水が供給される。
【0031】
ところで、前洗浄部と仕上洗浄部とは、距離をおいて配置されている。これは、前洗浄部でのシリカ含有の水が車体から流れ落ちない内に、RO処理水を使用しても、RO処理水の効果が薄れることを防止するためである。前工程の洗浄水が車体から流れ落ち、且つそれが乾かない内に、RO処理水による仕上げ洗浄を行うのがよい。これにより、RO処理水の消費量が軽減でき、結果としてシリカ除去装置2を製水能力の比較的小さな小規模なものとでき、イニシャルコストとランニングコストの低減を図ることができる。
【0032】
前洗浄部と仕上洗浄部との離間距離は、気温等の外部環境や、仕上洗浄部で使用する水量やノズルの数、車両の走行速度等を考慮して適宜に設定可能であるが、例えば約2m以上に設定するのがよい。本実施例では、約2m〜50mの範囲で設定する。
【0033】
なお、窓ガラスへのシリカ融着による鱗状汚損は、ガラス表面に残る水滴中の不純物が濃縮・凝縮して結晶化する際にガラス表面の結晶と堅固に固着することによるものと考えられる。よって、仕上洗浄部前の液洗浄時にシリカを含有した非処理水を使用しても、その非処理水が乾く前に、RO処理水を用いることより不都合を生じることはない。つまり、最終段のRO処理水によって、前段での洗浄水は洗い流され、ガラス表面にRO処理水のみが残るので、窓ガラスに白濁汚損を生じることはない。
【0034】
前述のシリカ除去装置2では、イオン状シリカが90%以上除去されることが確認されており、しかも、その除去率の変動も小さいので、例えば、シリカの含有率が40ppm の水を使用したとしても、シリカ含有率4ppm 以下のRO処理水が得られることになり、鉄道車両の窓ガラスに白濁汚損が生じることはない。なお、シリカの含有率が8ppm 以下であれば、洗車を繰り返しても、白濁汚損(白い曇り)が生じない。
【0035】
本実施例の車両洗浄システムによれば、薬剤の希釈水としてRO処理水を使用しているため、水道水や工業用水などを使用する場合と比較して、薬剤の洗浄効果を向上させることができる。これは、RO処理水には薬剤の洗浄能力を阻害する成分が含まれていないため、薬剤の能力を有効に引き出すことができ、薬剤の洗浄効果を十分に発揮させることができるからである。従って、車体の汚れを良く取ることができ、車体をより綺麗に仕上げることができ、さらに、車体表面が光沢のある塗装面を維持することができる。また、薬剤の希釈水としてRO処理水を使用することで、水道水や工業用水などを使用する場合と比較して、薬剤の濃度を薄くすることができる。これにより、薬剤の使用量を少なくすることができ、環境汚染を低減することができる。また、薬剤の使用量を少なくすることができるため、薬剤にかかるコストを低減することができ、経済的である。
【0036】
本実施例の車両洗浄システムによれば、原水として地下水や工業用水などを使用した場合でも、それらの水に含まれる鉄成分やマンガン成分を確実に除去することができ、飲料水基準の水質まで改善することができる。これにより、RO膜の目詰りを防止することができる。そして、それにより、RO処理水を安定して製造することができ、RO膜の損傷を防止することができる。従って、従来よりも、RO膜に供給できる水質の許容範囲を拡大でき、多種の水の使用に対応できる。従って、本発明の車両洗浄システムは、地下水などを使用している全国の車両基地で使用することができ、使用箇所の拡大に繋がる。また、多種の水に対応できるため、不純物を多く含むため利用価値の少ない工業用水などを利用することができ、環境に優しく、経済的である。
【0037】
本実施例の車両洗浄システムによれば、逆浸透膜法によって水質の改善を行っている。従って、薬品類を用いて水質改善を行う場合には、排水による環境汚染の問題があり、排水処理に余計な設備や費用が必要となるが、逆浸透膜法では、そのような問題が生じず、環境への悪影響を抑制することができる。
【0038】
また、本実施例の車両洗浄システムによれば、薬液噴霧部と仕上洗浄部でのみRO処理水を使用し、シリカ除去装置2から出力されるRO濃縮水12bは原水槽3Aに戻して前洗浄部等で有効利用することもできる構成である。しかも、前洗浄部と仕上洗浄部とに距離をおくことで、RO処理水を一層効率的に使用することを可能とした。
【0039】
よって、散水ブラッシング洗浄部にもRO処理水を供給する場合と比較して、RO処理水を飛躍的に節約することができる。よって、シリカ除去システムの規模をより小さくでき、コストの低減を図ることができる。しかも、この方法によっても、仕上洗浄の品質を落とすことがなく、窓ガラスの鱗状汚損は確実に防止される。つまり、洗浄工程の最終段でRO処理水を用いるので、シリカが窓ガラスに強力に付着することによる鱗状の白濁汚損を確実に防止できる。このことは、仕上洗浄部の複数箇所において水質調査し、シリカ含有量等を調べたことで明らかとされた。なお、鱗状汚損を除去するための研磨作業や薬品による除去作業が不要となるので、ランニングコスト等を低減することができる。
【0040】
本発明の車両洗浄システムは、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、仕上水塔18が設置されたが、省略することも可能である。この場合、前洗浄部が水洗浄部となり、この水洗浄部にRO処理水が供給されることになる。
【0041】
また、前記実施例では、前処理装置1は、砂濾過装置4、除鉄濾過装置5および除マンガン濾過装置6の三つの装置から構成されたが、これらの装置の内の一つ、または二つから構成してもよい。すなわち、前処理装置1は、供給される原水の種類に応じて適宜選択される。
【0042】
また、前記実施例では、鉄道車両の洗浄に使用されたが、バス等窓ガラスの多い営業用車両にも好適に用いることができ、従来までのように、洗浄作業を繰り返すごとに鱗状汚損がひどくなって利用者の旅の楽しさを損ねてしまうということがない。
【符号の説明】
【0043】
1 前処理装置
2 シリカ除去装置
3 処理水槽
4 砂濾過装置
5 除鉄濾過装置
6 除マンガン濾過装置
16a 薬剤ノズル(薬剤噴霧部)
17a 洗浄ブラシ(散水ブラッシング洗浄部)
17b 清水ノズル(散水ブラッシング洗浄部)
17c 洗浄水ノズル(前洗浄部、水洗浄部)
18a 仕上水ノズル(仕上洗浄部、水洗浄部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤による薬洗処理後、ブラシで汚れを除去して水で洗い流す車両洗浄システムであって、
砂濾過装置、除鉄濾過装置および除マンガン濾過装置の内、一または複数の装置からなり、洗車用の原水を濾過する前処理装置と、
この前処理装置からの濾過水から逆浸透膜法によってシリカなどの不純物を除去するシリカ除去装置と、
このシリカ除去装置から得られるRO処理水を貯留する処理水槽とを備え、
車両に薬剤を噴霧する薬剤噴霧部に、前記処理水槽からのRO処理水にて希釈された薬剤が供給されると共に、車両に付着した薬剤や汚れなどを水で洗い流す水洗浄部に、前記処理水槽からのRO処理水が供給される
ことを特徴とする車両洗浄システム。
【請求項2】
前記水洗浄部は、前記薬剤噴霧部から薬剤が噴霧された車両に水を噴射しつつブラッシングする散水ブラッシング洗浄部に後続される前洗浄部と、この前洗浄部に後続される仕上洗浄部とからなり、
前記散水ブラッシング洗浄部と前記前洗浄部とに原水が供給され、前記仕上洗浄部に前記処理水槽からのRO処理水が供給される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両洗浄システム。
【請求項3】
鉄道車両やバスなどの窓ガラスの多い営業用車両の洗浄に用いられる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−183977(P2012−183977A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50129(P2011−50129)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(391032037)株式会社ユーエス (2)
【Fターム(参考)】