説明

車両用のスロープ構造

【課題】 スロープ収納時では車両への搭載スペースを低減することが可能な車両用スロープ構造であるとともに、車椅子乗降時の安全性を確保したスロープ構造を提供すること。
【解決手段】 第2スロープ部20は第1スロープ部10にヒンジ5で折り畳み可能に連結され、第1スロープ部10の表面と第2スロープ部20の表面が対向するように折り畳んで重ねたスロープ収納状態で車室内4に搭載可能である車両用のスロープ構造において、第1スロープ部10の側部には第1フランジ11c、及び第2スロープ部20の側部には第2フランジ21cが構成されており、第2フランジ21cはスロープ収納状態で第1フランジ11cよりもスロープ幅方向内側に位置し、その第2フランジ21cのスロープ展開状態における上縁部21dがスロープ収納状態で対向する第1スロープ部10の部位に凹部11bが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスロープ部を有し、スロープ部を折り畳んで重ねた収納状態で車室内に搭載可能であるとともに、展開状態で車両から地上にスロープを下ろし車椅子等の出し入れを可能にするスロープ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用スロープ構造としては、例えば、車椅子による乗降を容易にし、車両後部に搭載できる折り畳み式のものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このようなスロープ装置の構造としては、スロープ部のフロア部材に一般的にアルミニウム合金製の圧延材が用いられており、フロア部材の両サイド部は曲げ加工され車椅子の車輪の乗り越え防止が図られている。
【特許文献1】特開平10−86739号公報
【特許文献2】特開2004−224086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来のスロープ構造においては、スロープの収納時では折り畳んで車室内の床に立たせた状態で車両後部に搭載されるが、折り畳むスロープの裏面同士を対向させる山折りにした状態で収納される場合は、脱輪防止用に設けられるスロープのフランジの高さが高いほど車両の前後方向に占有するため、車両の搭載スペースを制約するという課題があった。
【0004】
また、折り畳むスロープの表面同士を対向させる谷折り状態で収納される場合も、脱輪防止用フランジが向き合って収納されることとなり、やはり収納厚さが増して車両の搭載スペースを制約するものであった。また、この谷折り状態で収納される場合で、スロープを折り畳むためのヒンジをスロープ乗降面(表面)に設定すると、車椅子の乗降時の安全性が損なわれてしまう恐れがあった。
【0005】
それゆえ、本発明は、以上の事情を背景になされたものであり、スロープ収納時では車両への搭載スペースを低減することが可能な車両用スロープ構造であるとともに、車椅子乗降時の安全性を確保したスロープ構造を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した技術的課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載のように、第1スロープ部と第2スロープ部を有し、第2スロープ部は第1スロープ部にヒンジで折り畳み可能に連結され、第1スロープ部の表面と第2スロープ部の表面が対向するように折り畳んで重ねたスロープ収納状態で車室内に搭載可能であるとともに、第1スロープ部と第2スロープ部を広げたスロープ展開状態で車両から地上に下ろし車椅子等の出し入れを可能にするスロープ構造において、第1スロープ部の側部には第1フランジ、及び第2スロープ部の側部には第2フランジが、それぞれ車椅子脱輪防止用としてスロープ展開状態で上方に突出して構成されており、第2フランジの少なくとも1つはスロープ収納状態で第1フランジよりもスロープ幅方向内側に位置し、その第2フランジのスロープ展開状態における上縁部がスロープ収納状態で対向する第1スロープ部の部位に凹部が設けられていることを特徴とする車両用のスロープ構造とした。
【0007】
本発明に係るスロープ構造によれば、スロープ収納状態にて互いに向き合う脱輪防止用フランジ高さによる収納厚さを低減することができる。また、第1スロープ部に凹部を設けたので、スロープ収納状態では、その凹部に第2フランジの上縁部が入り込むことにより、更に収納厚さを低減することができる。このとき、凹部を設けたことで、スロープ部のフロア部の厚さは収納厚さに影響しなくなるため、中空断面を有してスロープ幅方向に延在する複数のフロア部材から構成される厚肉のスロープ部にも良好に適用され、スロープの強度確保と車両への搭載スペース低減を両立することが可能となる。
【0008】
また、第1スロープ部と第2スロープ部を折り畳み可能に連結させるヒンジを、第1フランジ及び第2フランジに設けたことにより、第1スロープ部の表面と第2スロープ部の表面が対向するように谷折りで折り畳んで重ねて収納する場合でも、スロープ乗降面にヒンジを設ける必要がなくなり、車椅子乗降面における突出部材を廃止することができ、乗降時の安全性を確保できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脱輪用のフランジ高さを大きくした場合でも、スロープ収納時の収納厚さを低減でき、車両搭載の省スペース化が図ることができる。またスロープ部材を回転させる為のヒンジをスロープ側面のフランジに配置することで、車椅子乗降面の平滑化が可能となり安全性が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1は、スロープ装置を搭載した車両の斜視図で、スロープ装置1を展開した状態を示しており、車体後部を開閉するドア2を開き車室内4に車椅子3(図示せず)を積載するようになっている。車室内4のフロア後端に車椅子3を出し入れ可能にするスロープ装置1は、図2に示すように未使用時には収納された状態で起立させることにより車室内4側に搭載され、使用時には、図1に示すようにスロープ装置1先端が地上に接しスロープ装置1全体の傾斜がゆるやかな形状になるように展開される。
【0011】
図3〜図5は、本発明に係る車両用スロープ構造の一実施形態を示した図である。図3は、スロープ装置1が展開された状態であり、展開状態で隣り合う車両側の第1スロープ部10と地上側の第2スロープ部20の2つのスロープ部を有している。図4は、スロープ装置1を折り畳んだ状態を示している。
【0012】
第1スロープ部10は、スロープ幅方向の両端部でスロープ装置1の展開方向に延在する2つの第1レール部材11と、スロープ幅方向に延在する地上側のフロア部材12、複数の中間部のフロア部材13、及び車両側のフロア部材14から構成されている。同様に、第2スロープ部20は、スロープ幅方向の両端部でスライド方向に延在する2つの第2レール部材21と、スロープ幅方向に延在する地上側のフロア部材22、複数の中間部のフロア部材23、及び車両側のフロア部材24から構成されている。
【0013】
第1スロープ部10の車両側のフロア部材14には、車室内4のフロア後端とを接続する取付部材41が設けられている。第1スロープ部10の地上側のフロア部材12には、スロープ展開時に第1スロープ部10を支持する脚部6が取り付けられている。
【0014】
第2スロープ部20は、第1スロープ部10にヒンジ5で折り畳み可能に連結され、スロープ装置1は、第1スロープ部10の表面と第2スロープ部20の表面が対向するように折り畳んで重ねたスロープ収納状態で車室内4に搭載可能である。図4は、第2スロープ部20をヒンジ5を中心として折り畳んで、第1スロープ部10の上に覆いかぶせた状態である。このとき、脚部6は接地しており、この図4の状態でも脚部6は第1スロープ部10を支持している。スロープ装置1は、第1スロープ部と第2スロープ部を広げたスロープ展開状態で車両から地上に下ろし車椅子等の出し入れが可能である。
【0015】
図5は、スロープ装置1を折り畳んで第1スロープ部10に第2スロープ部20を重ねた状態における拡大断面図であり、図4のA−A断面図を示している。図5に示すように、第1スロープ部10の側部に位置する第1レール部材11には第1フランジ11c、及び第2スロープ部20の側部に位置する第2レール部材21には第2フランジ21cが、それぞれ構成されている。第1フランジ11c及び第2フランジ21cは、車椅子の脱輪を防止しているとともに、スロープ装置1の撓みも防止しており、スロープ展開状態で上方に突出している。
【0016】
図4に示すように、第1スロープ部10に第2スロープ部20が折り畳まれた状態では、第1スロープ部10に構成されている2つの第1レール部材11の内側に、第2スロープ部20に構成されている2つの第2レール部材21が配置されている。すなわち、第2フランジ21cは、スロープ収納状態で第1フランジ11cよりもスロープ幅方向内側に位置している。
【0017】
第1スロープ部10のフロア部材12、13,14、及び第2スロープ部20のフロア部材22、23、24のスロープ幅方向の両端部は、それぞれ第1レール部材11及び第2レール部材21の長手方向に延在する溝11a、21aに嵌合されるとともに溶接又はビス止めにより固定されている。これらのフロア部材(12〜14、22〜24)の表面上を車椅子等が移動可能となっており、第1レール部材11及び第2レール部材21は、車椅子の脱輪を防止するようになっている。
【0018】
第2フランジ21cの先端部(上縁部)21dが、スロープ収納状態で第1スロープ部10と対向する部位に、凹部11bが設けられている。本実施形態では、第1レール部材11に、長手方向に延材する凹部11bが設けられており、第2レール部材21の先端部21dとの干渉を避けることができ、収納時の厚みを低減可能となる。凹部11bの溝幅は、第2フランジ21cの先端部21dにおける厚さよりも大きく設定されている。
【0019】
第1スロープ部10の第1レール部材11と第2スロープ部20の第2レール部材21には、両者を回動可能にするためのリンク部材(ヒンジ)5が固定されている。図6に示すように、リンク部材5は、ピン51を中心として第1リンクプレート52と第2リンクプレート53が回転自在に形成されている。また第1リンクプレート52及び第2リンクプレート53には、それぞれ第1スロープ部10及び第2スロープ部20に取付可能な取付孔52a、53bを有し、ビスにより固定できる。すなわち、リンク部材5は、第1フランジ11c及び第2フランジ21cに設けられている。溶接による固定でも同等の効果が得られる。
【0020】
車両側のフロア部材22には、車両側端部上方を傾斜させた傾斜部が形成されており、車椅子が通過する際の段差を低減するようになっている。第2スロープ部20の地上側のフロア部材22には、地上側端部下方を傾斜させた傾斜部が形成されるとともに、フロア部材22の裏面にはゴム材からなる緩衝部材が固定されており、第2スロープ部20を地上に下ろしたときの接地状態が良好となるようになっている。
【0021】
図7は図3のB−B拡大断面である。図7に示すように、フロア部材22の車両側の端面には凸部が、フロア部材22に隣り合うフロア部材23の地上側の短面には凹部が形成されており、互いに嵌合するようになっている。同様に、全てのフロア部材(12〜14、22〜24)の互いに対向する端面には、互いに嵌合するように凸部又は凹部が形成されている。
【0022】
図7に示すように、フロア部材(12〜14、22〜24)は、それぞれアルミニウム合金の押出加工等により、前述した形状に加えて、スロープ装置1の表面側に位置する面には、スロープ幅方向に延びる滑り止め用の突起部や中空部が一体的に成形されている。
【0023】
以上のように、本発明に係る車両用のスロープ構造によれば、第1スロープ部10に凹部11bを設けたので、スロープ収納状態では、その凹部11bに第2フランジ21cの上縁部21dが入り込むことにより、スロープ収納状態にて互いに向き合う脱輪防止用フランジ高さによる収納厚さを低減することができる。このとき、凹部11bを設けたことで、第1スロープ部10のフロア部の厚さは収納厚さに影響しなくなるため、中空断面を有してスロープ幅方向に延在する複数のフロア部材(12〜14)から構成され、スロープ装置1の強度確保と車両への搭載スペース低減を両立することが可能となる。
【0024】
また、第1スロープ部10と第2スロープ部20を折り畳み可能に連結させるヒンジ5を、第1フランジ11c及び第2フランジ21cに設けたことにより、第1スロープ部10の表面と第2スロープ部20の表面が対向するように谷折りで折り畳んで重ねて収納する場合でも、スロープ乗降面にヒンジを設ける必要がなくなり、車椅子乗降面における突出部材を廃止することができ、乗降時の安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車両用スロープを展開した車両の斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用スロープを収納した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態における車両用スロープの展開状態の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態における車両用スロープを折り畳んで重ねた状態の斜視図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図リンク部材5の拡大図である。
【図7】図3のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用スロープ装置
10 第1スロープ部
11 第1レール部材
11b 凹部
11c 第1フランジ
12、13、14 フロア部材
20 第2スロープ部
21 第2レール部材
21c 第2フランジ
21d 先端部(上縁部)
22、23、24 フロア部材
5 リンク部材(ヒンジ)
51 かしめピン
52、53 リンクプレート
6 脚部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スロープ部と第2スロープ部を有し、前記第2スロープ部は前記第1スロープ部にヒンジで折り畳み可能に連結され、前記第1スロープ部の表面と前記第2スロープ部の表面が対向するように折り畳んで重ねたスロープ収納状態で車室内に搭載可能であるとともに、前記第1スロープ部と前記第2スロープ部を広げたスロープ展開状態で車両から地上に下ろし車椅子等の出し入れを可能にするスロープ構造において、
前記第1スロープ部の側部には第1フランジ、及び前記第2スロープ部の側部には第2フランジが、それぞれ車椅子脱輪防止用としてスロープ展開状態で上方に突出して構成されており、
前記第2フランジの少なくとも1つはスロープ収納状態で前記第1フランジよりもスロープ幅方向内側に位置し、その第2フランジのスロープ展開状態における上縁部がスロープ収納状態で対向する前記第1スロープ部の部位に凹部が設けられていることを特徴とする車両用のスロープ構造。
【請求項2】
前記ヒンジは、前記第1フランジ及び前記第2フランジに設けられ、
前記第1スロープ部及び前記第2スロープ部には、それぞれ中空断面を有してスロープ幅方向に延在する複数のフロア部材が構成され、
スロープ展開状態で前記第1スロープ部を支持する脚部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用のスロープ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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