説明

車両用の電池モジュール

【課題】電池パックおよびジャンクションボックスを収容する電池モジュールが高くなるのを防止する。
【解決手段】電池パックを収容する金属製のシールドケースの内部にジャンクションボックスを収容しており、前記ジャンクションボックスは、前記シールドケースの底壁または該底壁に固定する金属板の表面に高さが大であるリレーおよび電気部品の樹脂ケースを固定し、かつ、低圧電線と高圧電線のいずれか一方を金属板上に配線して前記リレーおよび電気部品の所要の端子部と接続し、前記ジャンクションボックスの樹脂製のケースカバーを前記底壁または金属板上に固定したリレー、電気部品および低圧電線と高圧電線のいずれか一方を覆う状態で被せ、該ケースカバーに設けた開口から前記リレーおよび電気部品の所要の接点部を露出させ、該ケースカバー上に低圧電線と高圧電線のいずれか他方を配線すると共にバスバーを配置し、該バスバーまたは/および配線している低圧電線と高圧電線のいずれか他方を前記露出させた接点部と接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用の電池モジュールに関し、特に、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される電池パックを収容する金属製のシールドケース内に、該電池パック側電源と接続するリレー等を内蔵するジャンクションボックスを収容配置する電池モジュールにおいて、ジャンクションボックスの低背化を図るものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車においては、従来、特開2010−36594号公報のハイブリッド自動車で図6に示すように、高電圧の電池パック100を車室内のリヤ側等に配置し、該電池パック100を高圧電源ケーブル101を介してエンジンルーム内に搭載した機器103と接続している。該機器103内でヒューズ104、高圧・低圧のジャンクションボックスと一体または近接配置したDC−DCモジュール105と接続している。
【0003】
ジャンクションボックスにリレーを搭載する場合、通常、図7に示すように、発熱体となるリレー201はジャンクションボックス200のアッパーケース202の上面に搭載し、ジャンクションボックス200の内部で過熱を抑制している場合が多い。該ジャンクションボックス200の上面に高さが大であるリレー201を搭載すると、ジャンクションボックス200の高さH1にリレー201の高さH2が加わり、全体高さが大となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−36594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたハイブリッド自動車等では、電池パックは車室側、該電池パックに接続されるヒューズ等を含むジャンクションボックスはエンジンルーム側と別位置に配置し、高圧電源ケーブル101を介して接続している。該構成とすると高圧電源ケーブルの配線長さが大きくなり、かつ、高圧電源ケーブル101と接続する機器103も金属製のシールドケースに収容し、該機器103内の高圧電線から生じるノイズを遮蔽する必要があり、機器や設備が大型化する問題がある。
【0006】
よって、近時、電池パックを収容する金属製ケース(シールドケース)内にジャンクションボックスも収容し、該ジャンクションボックスに収容するリレーやヒューズを含む分岐接続回路の負荷側にシールド電線を接続し、該シールド電線をシールドケースより外方へ引き出す電池モジュールが開発されている。
【0007】
しかしながら、図7に示すようにリレーを搭載して高さが大となるジャンクションボックスを電池パックを収容するシールドケース内に収容すると、シールドケースも高くする必要がある。よって、電池モジュールを設置するスペースに制約を受け、所望の位置に配置できなくなる恐れもある。
また、ジャンクションボックスに搭載する電気機器に高圧電線と低圧電線とを接続すると、高圧電線から発生するノイズを低圧電線が受けることとなり、負荷側に接続される低圧電線にノイズが発生しやすい問題がある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、電池パックを収容するシールドケース内にジャンクションボックスを収容する場合に、ジャンクションボックスの高さを抑制し、かつ、ジャンクションボックスに接続する低圧電線が高圧電線からノイズの影響を受けないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、電池パックを収容する金属製のシールドケースの内部にジャンクションボックスを収容しており、
前記ジャンクションボックスは、前記シールドケースの底壁または該底壁に固定する金属板の表面に高さが大であるリレーおよび電気部品の樹脂ケースを固定し、かつ、低圧電線と高圧電線のいずれか一方を金属板上に配線して前記リレーおよび電気部品の所要の端子部と接続し、
前記ジャンクションボックスの樹脂製のケースカバーを前記底壁または金属板上に固定したリレー、電気部品および低圧電線と高圧電線のいずれか一方を覆う状態で被せ、該ケースカバーに設けた開口から前記リレーおよび電気部品の所要の接点部を露出させ、該ケースカバー上に低圧電線と高圧電線のいずれか他方を配線すると共にバスバーを配置し、該バスバーまたは/および配線している低圧電線と高圧電線のいずれか他方を前記露出させた接点部と接続していることを特徴とする車両用の電池モジュールを提供している。
【0010】
前記のように、ジャンクションボックスに取り付ける電気機器のうちで高さが大であるリレーはジャンクションボックスを設置するシールドケースの底壁上または底壁に固定する金属板の上面に直接固定し、該リレーを覆うようにジャンクションボックスの樹脂製のケースカバーを被せることで、リレーによりジャンクションボックスの全体高さが大となることが抑制できる。また、ケースカバーの下方に低圧電線と高圧電線のいずれか一方、上方にいずれか他方を配線し、ケースカバーで低圧電線と高圧電線とを遮断することで、低圧電線が高圧電線から受けるノイズを低減できる。
【0011】
前記ケースカバーの下方に低圧電線を配線する一方、上方に高圧電線を配線し、下方に配置する前記リレーおよび電気部品の低圧電線との接点部は該リレーおよび電気部品の側面に設け、前記ケースカバーの側壁に設けた挿通穴を通して配線する低圧電線と接続する一方、
前記ケースカバー上に配置する高圧電線またはバスバーと接続する接点部は該リレーおよび電気部品の上面に設け、前記ケースカバー上に配置するバスバーおよび高圧電線と接続していることが好ましい。
このように、高圧電線をケースカバーの上方に配置すると、ケース外側にあるケースカバーにて電源を分配でき、かつ、ケース内部の機器へのノイズの影響を与えないようにすることができる利点がある。また、低圧電線をケースカバーの下方に配置すると、ケース外でノイズが発生しても、ケースで一定距離が確保され、ノイズ対策を実施しなくてよい利点がある。
【0012】
また、前記ケースカバー上に配置する高圧電線およびバスバーと前記ケースカバーの下方に固定するリレーおよび電気部品の接点部とを締結して前記ケースカバーを前記シールドケース上に固定している。
該構成とすると、ジャンクションボックスのケースカバーをシールドケースに固定する手段を不要とでき、ケースカバーを簡単にできると共にケースカバーをシールドケースに固定する作業が不要になる。
【発明の効果】
【0013】
前記のように、電池パックを収容するシールドケース内にジャンクションボックスを収容する電池モジュールにおいて、高さが大であるリレーや電気部品をシールドケースの底壁または該底壁に固定する金属板上に固定し、バスバーを保持するジャンクションボックスのケースを前記リレーや電気部品を覆うケースカバーとしている。よって、ジャンクションボックスの全高さがジャンクションボックスのケース高さにリレーの高さを加えた高さにならず、ジャンクションボックスの大型化を抑制できる。
また、ジャンクションボックスのケースカバーで高圧電線と低圧電線を遮蔽しているため、低圧電線が高圧電線からノイズを受けることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の電池モジュールを示す概略図である。
【図2】前記電池モジュールに蓋を被せて閉鎖していない状態の斜視図である。
【図3】前記電池モジュールに蓋を被せて閉鎖している状態の斜視図である。
【図4】電池モジュールのシールドケース内にリレー等を搭載している状態を示す斜視図である。
【図5】前記リレー等のジョンクションボックスのケースカバーを被せた状態を示す斜視図である。
【図6】従来例を示す図面である。
【図7】従来のリレーを搭載したジョンクションボックスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5に本発明の実施形態を示す。
図1に電気自動車に搭載する電池モジュール1を示す。
【0016】
電池モジュール1はアルミニウム合金等の金属製のシールドケース2内に電池パック3を収容している。シールドケース2の前壁2aと右側壁2bに囲まれた部分にジャンクションボックスの収容領域Xを設け、該収容領域Xにジャンクションボックス5を配置している。前記電池パック3上にはECU4を搭載している。
【0017】
図4に示すように、前記ジャンクションボックス5の配置位置に長方形状の金属板6を敷設し、該金属板6をシールドケース2の底壁2rにボルト締めを固定している。該金属板6の上面に高さが大である複数のリレー10(10A、10B、10C)および、電気部品のスタート用のリレー11(11A、11B)を間隔をあけて配置し、これらリレー10、電気部品11の樹脂製のケースを金属板6にボルト固定している。
【0018】
金属板6上に固定するリレー10、電気部品11と接続する低圧電線12を金属板6の上に配線している。該低圧電線12は前記電池パック3上に搭載したECU4と接続した電線である。
【0019】
図2および図5に示すように、前記金属板6上に固定した複数のリレー10、電気部品11および低圧電線12を覆う状態で樹脂製のケースカバー20を被せている。該ケースカバー20がジャンクションボックス5のケース本体となるものである。該ケースカバー20は上壁20aの周囲より側壁20bが下向きに突出し、該側壁20bの下端が金属板6の外形線に沿った位置に接するようにしている。また、図中、左側壁20bの下端に低圧電線挿入用の開口20cを設けている。対向する右側壁20dはシールドケース2の右側壁の内面側に位置し、該シールドケース2の右側壁に穿設する貫通穴2eから挿入する高圧シールド電線をケースカバー20の上壁20a上へと配線している。
【0020】
前記ケースカバー20の上壁20aにはバスバーおよび高圧電線のガイド壁20gを突設している。かつ、該上壁20aにはリレー10および電気部品11と対応する位置にそれぞれ開口20hを設け、前記リレー10および電気部品11の高圧電線と接続端子部10t、11tは開口20hを通して上向きに突設している。一方、図4に示すように、リレー10、電気部品11の低圧電線と接続する端子部10s、11sはリレー10および電気部品11のケース側面に突設し、ケースカバー20の下方に位置させている。
【0021】
前記ガイド壁20gで区画された通路にバスバー22を嵌合固定し、該バスバー22に設けたボルト穴に前記電気部品11の高圧電線と接続する端子部11tを通してナットで固定している。また、リレー10の端子部10tはケースカバー20の上面側に配線する高圧電線30の端末に接続したボルト止め端子29を嵌合し、ナットで固定している。
【0022】
前記バスバー22を配置すると共に高圧電線30を配線するケースカバー20の上方には蓋を被せずに開口とし、シールドケース2の全体に被せる蓋32で閉鎖している。該構成として、リレー10、電気部品11、バスバー22、高圧電線30から発生する熱がジャンクションボックス5の内部にこもって過熱するのを防止している。
【0023】
前記構成の電池モジュール1の組み立ては、まず、図4に示すように、金属板6上にリレー10、電気部品11を搭載して、シールドケース2の底壁2rの上面に固定する。該金属板6の上面に電池パック3上のECU4と接続する低圧電線12を配線し、電気部品11と接続する。
その後、図2および図5に示すように、バスバー22を配置したケースカバー20をリレー10および電気部品11に被せる状態で設置する。その際、ケースカバー20の側壁に設けた開口20cを前記低圧電線12が挿通するようにセットする。
【0024】
この状態でケースカバー20の上壁20aの開口20hにリレー10、電気部品11を位置し、その端子部10t、11tをバスバー22および高圧電線30の端子部と締結する。この締結によりケースカバー20は金属板6を介してシールドケース2の底壁2rに固定される。これによりケースカバー20を金属板6またはシールドケース底壁2rに直接に固定する必要は無い。
最後にシールドケース2に蓋32を被せ、図3に示す状態とする。
【0025】
本発明は前記実施形態に限定されず、ケースカバー20の上面側に低圧電線を配線し、下方に高圧電線を配線してもよい。
さらにまた、金属板上にリレーや電気部品を搭載しているが、金属板を介さずにシールドケースの底壁上に前記リレーや電気部品を直接に搭載して固定してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 電池モジュール
2 シールドケース
3 電池パック
5 ジャンクションボックス
6 金属板
10 リレー
10t 端子部
11 電気部品
11t 端子部
12 低圧電線
20 ケースカバー
20g ガイド壁
20h 開口
22 バスバー
30 高圧電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックを収容する金属製のシールドケースの内部にジャンクションボックスを収容しており、
前記ジャンクションボックスは、前記シールドケースの底壁または該底壁に固定する金属板の表面に高さが大であるリレーおよび電気部品の樹脂ケースを固定し、かつ、低圧電線と高圧電線のいずれか一方を金属板上に配線して前記リレーおよび電気部品の所要の端子部と接続し、
前記ジャンクションボックスの樹脂製のケースカバーを前記底壁または金属板上に固定したリレー、電気部品および低圧電線と高圧電線のいずれか一方を覆う状態で被せ、該ケースカバーに設けた開口から前記リレーおよび電気部品の所要の接点部を露出させ、該ケースカバー上に低圧電線と高圧電線のいずれか他方を配線すると共にバスバーを配置し、該バスバーまたは/および配線している低圧電線と高圧電線のいずれか他方を前記露出させた接点部と接続していることを特徴とする車両用の電池モジュール。
【請求項2】
前記ケースカバーの下方に低圧電線を配線する一方、上方に高圧電線を配線し、
下方に配置する前記リレーおよび電気部品の低圧電線との接点部は該リレーおよび電気部品の側面に設け、前記ケースカバーの側壁に設けた挿通穴を通して配線する低圧電線と接続する一方、
前記ケースカバー上に配置する高圧電線またはバスバーと接続する接点部は該リレーおよび電気部品の上面に設け、前記ケースカバー上に配置するバスバーおよび高圧電線と接続している請求項1に記載の車両用の電池モジュール。
【請求項3】
前記ケースカバー上に配置する高圧電線およびバスバーと前記ケースカバーの下方に固定するリレーおよび電気部品の接点部とを締結して前記ケースカバーを前記シールドケース上に固定している請求項2に記載の車両用の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93945(P2013−93945A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233660(P2011−233660)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】