説明

車両用アウトサイドミラー装置

【課題】金属製の止め具を樹脂製のシャフトに組み付ける際に、樹脂製のシャフトが金属製の止め具により削られるのを防ぐこと。
【解決手段】この発明は、止め具11が変形部22と係合爪部23とから構成されている。変形部22は、止め具11の挿入孔21の縁からシャフト3の挿入方向Gと反対側に折り曲げかつシャフト3の挿入方向G側に折り返してなる。係合爪部23は、変形部22の先端からスプリング当接部20よりもシャフト3の挿入方向G側に延設されていてシャフト3の係合部18に弾性係合する。この結果、この発明は、金属製の止め具11を樹脂製のシャフト3に組み付ける際に、樹脂製のシャフト3が金属製の止め具11により削られるのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリが車体(たとえば、ドアやフェンダやピラーなど)に対して傾倒(回転、回動)可能であるたとえばドアミラーなどの車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来の車両用アウトサイドミラー装置について説明する。前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、樹脂製のシャフトにドアミラーを金属製のスプリングストッパおよびコイルばねを介して回動可能に組み付けてなるものである。前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、手動もしくは電動により、ドアミラーをシャフトに対して使用位置と格納位置との間を回動させたり、または、使用位置に位置するドアミラーに荷重がかかるとドアミラーがシャフトに対して回動して緩衝作用が働いたりするものである。
【0003】
また、後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、樹脂製の軸筒部にドアミラーバイザを圧縮コイルスプリングおよびロックワッシャを介して回動可能に嵌合してなるものである。後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、手動もしくは電動により、ドアミラーバイザを軸筒部に対して使用位置と格納位置との間を回動させたり、または、使用位置に位置するドアミラーバイザに荷重がかかるとドアミラーバイザが軸筒部に対して回動して緩衝作用が働いたりするものである。
【0004】
ところが、前記の前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、樹脂製のシャフトにドアミラーを金属製のスプリングストッパおよびコイルばねを介して回動可能に組み付ける際、すなわち、金属製のスプリングストッパを樹脂製のシャフトに組み付ける際に、樹脂製のシャフトが金属製のスプリングストッパにより削られると、ドアミラーの樹脂製シャフトへの組付にがたが発生したり、金属製のスプリングストッパが樹脂製のシャフトから外れたりする虞がある。このために、金属製のスプリングストッパを樹脂製のシャフトに組み付ける際に、樹脂製のシャフトが金属製のスプリングストッパにより削られるのを防ぐ必要がある。
【0005】
また、前記の後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、樹脂製の軸筒部にドアミラーバイザを金属製のロックワッシャおよび圧縮コイルスプリングを介して回動可能に組み付ける際、すなわち、金属製のロックワッシャを樹脂製の軸筒部に組み付ける際に、樹脂製の軸筒部が金属製のロックワッシャにより削られると、ドアミラーバイザの樹脂製軸筒部への嵌合にがたが発生したり、金属製のロックワッシャが樹脂製の軸筒部から外れたりする虞がある。このために、金属製のロックワッシャを樹脂製の軸筒部に組み付ける際に、樹脂製の軸筒部が金属製のロックワッシャにより削られるのを防ぐ必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−38898号公報
【特許文献2】特開2004−58944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、金属製の止め具を樹脂製のシャフトに組み付ける際に、樹脂製のシャフトが金属製の止め具により削られるのを防ぐことができる車両用アウトサイドミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)は、シャフトには係合部が設けられていて、止め具が、シャフトが挿入する挿入孔を有していてシャフトが挿入孔中に挿入してスプリングが当接するスプリング当接部と、挿入孔の縁からシャフトの挿入方向と反対側に折り曲げかつシャフトの挿入方向側に折り返してなる複数個の変形部と、その複数個の変形部の先端からスプリング当接部よりもシャフトの挿入方向側にそれぞれ延設されていてシャフトの係合部に弾性係合する複数個の係合爪部と、から構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、複数個の係合爪部の間の距離が複数個の変形部の間の距離も小さい、ことを特徴とする。
【0010】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、係合爪部と変形部とのうち少なくともいずれか一方のシャフトの周方向側の部分に係止する係止部がシャフトに設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、樹脂製のシャフトに金属製の止め具を組み付ける際、すなわち、シャフトを止め具の挿入孔中に挿入させて止め具の複数個の係合爪部をシャフトの係合部に弾性係合させる際に、複数個の係合爪部がシャフトに当接して複数個の変形部が弾性変形する。このために、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、弾性変形する複数個の変形部により、複数個の係合爪部を外側に広げる力を小さくすることができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、外側に広がっている複数個の係合爪部が内側に狭まってシャフトの係合部に弾性係合する際、この複数個の係合爪部が内側に狭まるすなわち元の状態に戻る際の力を小さくすることができるので、金属製の止め具の複数個の係合爪部により、樹脂製のシャフトが削れる力を確実に減らすことができる。
【0012】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、複数個の係合爪部の間の距離が複数個の変形部の間の距離も小さいので、シャフトを止め具の挿入孔中に挿入させた際に、複数個の係合爪部がシャフトに常時当接し、かつ、複数個の変形部がシャフトに常時当接しない。このために、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、複数個の係合爪部がシャフトに常時当接して複数個の変形部が常時小さい力で確実に弾性変形することができる。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、金属製の止め具の複数個の係合爪部により、樹脂製のシャフトが削れるのをさらに確実に減らすことができる。
【0013】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、シャフトの係止部が係合爪部と変形部とのうち少なくともいずれか一方のシャフトの周方向側の部分に係止する。このために、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、樹脂製のシャフトに金属製の止め具を組み付けた後に、ミラーアセンブリがシャフトに対して傾倒する際に、樹脂製のシャフトと金属製の止め具とが相互にシャフトの周方向に回転するのを確実に防止することができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、樹脂製のシャフトに金属製の止め具を組み付けた後に、ミラーアセンブリがシャフトに対して傾倒する際に、樹脂製のシャフトと金属製の止め具とが相互にシャフトの周方向に回転して、その金属製の止め具の複数個の係合爪部により、樹脂製のシャフトが削れるのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。図1および図2において、符号1は、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では自動車(乗用車)用のドアミラーである。この実施例のドアミラー1は、図示を省略するが、自動車の左右のドアDにそれぞれ装備されている。なお、この実施例のドアミラー1は、自動車の右側のドアDに装備されるものであって、自動車の左側のドアに装備されるドアミラーは、この実施例のドアミラー1とほぼ左右が逆となる。
【0016】
この実施例のドアミラー1は、前記ドアDに固定されるベース2と、前記ベース2に固定されている樹脂製のシャフト3と、前記シャフト3にスプリング10および金属製の止め具(いわゆるプッシュナット)11およびワッシャ6を介して傾倒(回転、回動)可能に装備されているミラーアセンブリ4と、を備えるものである。
【0017】
前記ミラーアセンブリ4は、一方が開口しかつ他方が閉塞したミラーハウジング7と、前記ミラーハウジング7の開口部5に配置されかつ反射面8を有するミラーユニット(いわゆるミラー)9と、から構成されている。前記ミラーユニット9は、前記ミラーハウジング7に、リモートコントロールユニットやパワーユニット(図示せず)を介してほぼ垂直軸回りに左右方向およびほぼ水平回りに上下方向に反射面8の角度調整可能に取り付けられている。
【0018】
前記ミラーハウジング7は、前記シャフト3に前記スプリング10および前記金属製の止め具11および前記ワッシャ6を介して前記シャフト3回りに傾倒可能に取り付けられている取付部12を有する。前記取付部12は、前記ミラーハウジング7と別体のフレームやブラケットから構成されていて、前記ミラーハウジング7に一体に固定されている。前記取付部12には、前記シャフト3が回転可能に挿通する挿通孔13が設けられている。
【0019】
前記樹脂製のシャフト3の一端(下端)には、シャフトホルダ14が一体に設けられている。前記シャフトホルダ14は、前記ベース2にスクリュー15により固定されている。この結果、前記樹脂製のシャフト3は、前記ベース2に固定されている。
【0020】
前記シャフトホルダ14の一面(上面)と前記取付部12の一面(下面)とには、位置決め手段が設けられている。前記位置決め手段は、前記ミラーアセンブリ4を使用位置A(図1中の実線にて示す位置)と格納位置B(図1中の一点鎖線にて示す位置)とに位置決めするものである。前記位置決め手段は、前記取付部12の一面に設けられているノッチタイプの凸部(図示せず。なお、図15中の符号29を参照)の外面と、前記シャフトホルダ14の一面に設けられていて前記凸部が嵌合するノッチタイプの凹部16の内面と、から構成されている。前記凹部16と前記凸部とが嵌合することにより、前記ミラーアセンブリ4は、前記使用位置Aまたは前記格納位置Bに位置決めされる。なお、前記シャフトホルダ14の一面にノッチタイプの凹部を設け、前記取付部12の一面にノッチタイプの凸部を設けても良い。
【0021】
また、前記シャフトホルダ14の一面(上面)と前記取付部12の一面(下面)とには、ストッパ手段が設けられている。前記ストッパ手段は、前記ミラーアセンブリ4が前記格納位置Bまたは前方傾倒位置C(図1中の二点鎖線にて示す位置)に位置する際に、前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避させるものである。前記ストッパ手段は、前記シャフトホルダ14の一面に設けられているストッパ凸部26の外面と、前記取付部12の一面に設けられていて前記凸部26が嵌合する凹部もしくは溝部の内面(図示せず)と、から構成されている。前記ミラーアセンブリ4が前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転して、前記ドアDに当たる直前であって、前記格納位置Bまたは前方傾倒位置Cに位置すると、前記ストッパ凸部26の端面と前記凹部もしくは溝部の端面とが当接することにより、前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避させる。なお、前記シャフトホルダ14の一面に凹部もしくは溝部を設け、前記取付部12の一面にストッパ凸部を設けても良い。しかも、前記ストッパ凸部26と前記凹部もしくは溝部との嵌合により、前記ミラーアセンブリ4が前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転する際のガイドとなる。図1において、符号Eは、車両の後方を示し、符号Fは、車両の前方を示す。
【0022】
前記樹脂製のシャフト3の外周面は、外径が上端から下端にかけて徐々に大きくなるようにテーパー形状をなす。この結果、前記樹脂製のシャフト3は、成形金型の抜けが容易になるように構成されている。前記樹脂製のシャフト3には、複数本、この例では、4本の溝17が上端からほぼ中間までの間において、等間隔に設けられている。前記溝17は、前記シャフト3の上端部を残して貫通形状をなし、一方、前記シャフト3の上端部において連結形状(もしくは橋渡し形状)をなす。前記シャフト3の上端部における前記4本の溝17の連結部24と貫通部25との境の段部には、4個の係合部18がそれぞれ設けられている。また、前記シャフト3の前記4本の溝17の貫通部の両側面には、係止部19がそれぞれ設けられている。
【0023】
前記金属製の止め具11は、弾性を有する金属部材から構成されていて、円板形状のスプリング当接部20を有する。前記スプリング当接部20の全周縁は、一方向(下方向)にL字形状に折り曲げられている。このために、前記金属製の止め具11は、底が浅い丸皿形状をなす。前記スプリング当接部20の中央には、前記シャフト3が挿入する挿入孔21が設けられている。
【0024】
前記挿入孔21の縁から前記シャフト3の挿入方向G(図3中の矢印Gを参照。前記スプリング当接部20の全周縁の折曲方向と反対側の方向)と反対側に折り曲げかつ前記シャフト3の挿入方向G側に折り返してなる複数個、この例では、4個の変形部22が等間隔にそれぞれ設けられている。前記変形部22は、U字形状のヘアピン形状をなす。
【0025】
前記4個の変形部22の先端には、複数個、この例では、4個の係合爪部23が、前記変形部22の先端から前記スプリング当接部20よりも前記シャフト3の挿入方向G側にそれぞれ等間隔に延設されている。前記係合爪部23は、前記シャフト3の前記係合部18に弾性係合する。
【0026】
前記変形部22および前記係合爪部23の幅は、前記シャフト3の前記溝17の幅と同等もしくは若干小さい。前記係合爪部23および前記変形部22の前記シャフト3の周方向側の部分は、前記シャフト3の前記係止部19に係止する。
【0027】
図5に示すように、前記4個の係合爪部23の間の距離T1(たとえば、隣り合う係合爪部23の間の距離または向かい合う(対向する)係合爪部23の間の距離)は、前記4個の変形部22の間の距離T2も小さい。この結果、図8に示すように、通常状態もしくは前記係合爪部23が前記係合部18に係合している状態の向かい合う前記係合爪部23に挟まれた角度θ1は、0°に近くかつ0°よりも大きい。
【0028】
前記スプリング10は、圧縮タイプのスプリング(圧縮コイルスプリング)を使用する。前記ワッシャ6は、通常のワッシャを使用する。
【0029】
以下、前記樹脂製のシャフト3に前記ミラーアセンブリ4を、前記スプリング10および前記金属製の止め具11および前記ワッシャ6を介して傾倒可能に組み付ける工程について説明する。
【0030】
まず、前記シャフト3を前記ミラーハウジング7の前記取付部12の前記挿通孔13中に、図3中の矢印G方向(前記ミラーハウジング7の下側から上側への方向)に、挿通させて、前記シャフトホルダ14の上面に前記取付部12の下面を載置させる。かつ、前記位置決め手段の凹部16と凸部とを嵌合させ、前記ストッパ手段の前記ストッパ凸部26と前記凹部もしくは溝部とを嵌合させる。
【0031】
つぎに、前記シャフト3に前記ワッシャ6および前記スプリング10を、図3中の矢印G方向と逆方向(前記ミラーハウジング7の上側から下側への方向)に、順次落とし込んで前記取付部12の上面に載置させる。
【0032】
それから、前記シャフト3の4本の前記溝17に前記止め具11の4個の前記変形部22および前記係合爪部23をそれぞれ合わせて、前記シャフト3に前記止め具11を図3中の矢印G方向と逆方向に落とし込む。このとき、前記シャフト3の外周面が上端から下端にかけて末広がりとなるテーパー形状をなすので、前記止め具11は、前記シャフト3の途中で止まる。すなわち、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部24に当接する。
【0033】
つづいて、冶具(図示せず)を使用して、前記止め具11の前記スプリング当接部20を前記スプリング10の上側端面に当接させた状態で、前記スプリング10のスプリング力に抗して前記止め具11を前記シャフト3に押し込む。すると、図7および図9中の点線および図10に示すように、前記止め具11の前記変形部22が弾性変形して、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部24に常時当接しながら図3中の矢印G方向と逆方向に落ちていく。このとき、図7に示すように、前記連結部24に当接している状態の向かい合う前記係合爪部23に挟まれた角度θ2は、通常状態もしくは前記係合爪部23が前記係合部18に係合している状態の向かい合う前記係合爪部23に挟まれた角度θ1よりも小さく、かつ、0°よりも大きい。
【0034】
そして、前記止め具11が押し込まれて、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部24と前記貫通部25との境の前記係合部18に達する。すると、図8および図9中の実線に示すように、弾性変形している前記止め具11の前記変形部22(図9中の点線にて示す)が元の状態(図9中の実線にて示す)に弾性復帰し、前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18にそれぞれ弾性係合する。前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18にそれぞれ弾性係合すると、前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18から外れない。すなわち、前記止め具11は、前記シャフト3から外れない。
【0035】
また、図11に示すように、前記シャフト3の4本の前記溝17の貫通部25の両側面の前記係止部19が、前記止め具11の4個の前記変形部22および前記係合爪部23の前記シャフト3の周方向側の部分にそれぞれ係止する。
【0036】
この結果、図2および図6および図8および図9および図11に示すように、前記金属製の止め具11は、前記樹脂製のシャフト3に固定される。また、前記スプリング10は、前記金属製の止め具11により前記樹脂製のシャフト3に固定される。すなわち、前記スプリング10は、前記金属製の止め具11の前記スプリング当接部20と前記取付部12上の前記ワッシャ6との間において圧縮された状態で前記樹脂製のシャフト3の周囲に配置される。
【0037】
これにより、前記ミラーアセンブリ4は、前記樹脂製のシャフト3に前記スプリング10および前記金属製の止め具11および前記ワッシャ6を介して傾倒可能に組み付けられる。そして、前記シャフト3と一体の前記シャフトホルダ14を前記ベース2に前記スクリュー15により固定することにより、この実施例のドアミラー1が構成される。
【0038】
前記ドアミラー1は、ドアDに前記ベース2を固定することにより、ドアDに装備される。そして、前記ドアミラー1は、車体のドアDに固定される前記ベース2および前記樹脂製のシャフト3および前記シャフトホルダ14側の固定部と、前記ミラーユニット9を有していて前記シャフト3に傾倒可能に取り付けられている前記ミラーアセンブリ4および前記取付部12側の傾倒部と、から構成されている。
【0039】
車体のドアDに固定される前記ベース2および前記樹脂製のシャフト3および前記シャフトホルダ14側の固定部は、車体と常に一体に固定されている。一方、前記ミラーユニット9を有していて前記シャフト3に傾倒可能に取り付けられている前記ミラーアセンブリ4および前記取付部12側の傾倒部は、人や物に当たった際には、緩衝のために、前記シャフト3の回転中心O−O回りに傾倒(回転)する。
【0040】
固定部の前記シャフトホルダ14と傾倒部の前記取付部12とは、前記位置決め手段の凹部16と凸部とにより、使用位置Aまたは格納位置Bに位置決めされている。前記位置決め手段の凹部16と凸部との嵌合状態が走行時の風圧などにより外れて前記ミラーアセンブリ4が前記シャフト3に対して傾倒しないように、また、傾倒部の前記ミラーユニット9の反射面8が走行時の路面の凹凸などによりぶれないように、前記位置決め手段の凹部16と凸部とには、テンションがかけられている。このテンションをかけるのには、前記スプリング10が使用されている。すなわち、前記スプリング10のスプリング力により、前記位置決め手段の凹部16と凸部とが相互に嵌合して、傾倒部の前記ミラーアセンブリ4が固定部の前記シャフト3にぶれないように適度な保持力で傾倒可能に保持されている。
【0041】
前記スプリング10は、前記樹脂製のシャフト3に固定されている前記金属製の止め具11により、前記金属製の止め具11の前記スプリング当接部20と前記取付部12上の前記ワッシャ6との間において圧縮された状態で前記樹脂製のシャフト3の周囲に配置されている。
【0042】
この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)は、以上のごとき構成からなり、以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)の作用について説明する。
【0043】
ドアDにベース2を固定してドアDに装備されたドアミラー1のミラーアセンブリ4を使用位置Aに位置させる。この使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4のミラーユニット9の反射面8で車両の後方を視認することができる。このとき、固定部のシャフトホルダ14と傾倒部の取付部12との間は、位置決め手段(凹部16および凸部)により、使用位置Aに位置決めされている。また、この位置決め手段にはスプリング10のスプリング力(テンション)が作用しているので、自動車の走行時の風圧などによりミラーアセンブリ4がシャフト3に対して不用意に傾倒したり、走行時の路面の凹凸などによりミラーユニット9の反射面8が不用意にぶれたりするようなことはない。
【0044】
また、リモートコントロールユニットやパワーユニット(図示せず)を駆動させると、ミラーユニット9をほぼ水平軸回りに上下方向にまたほぼ垂直軸回りに左右方向に回動させることができ、これにより、ミラーユニット9の反射面8の位置をドライバーの目線に合わせて調整することができる。
【0045】
つぎに、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、位置決め手段の凹部16と凸部との嵌合状態が解除されて、ミラーアセンブリ4は、シャフト3の回転中心O−O回りに時計方向に回転する。このとき、ストッパ手段のストッパ凸部26と凹部もしくは溝部との嵌合により、ミラーアセンブリ4の回転がガイドされる。
【0046】
ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置すると、ストッパ手段のストッパ凸部26の端面と凹部もしくは溝部の端面とが当接して、ミラーアセンブリ2の回転が規制されてミラーアセンブリ2とドアDとの当接が回避される。
【0047】
また、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに反時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、位置決め手段の凹部16と凸部との嵌合状態が解除されて、ミラーアセンブリ4がシャフト3の回転中心O−O回りに反時計方向に回転する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、嵌合状態が解除されている位置決め手段の凹部16と凸部とが再度嵌合して、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する。
【0048】
一方、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに反時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、位置決め手段の凹部16と凸部との嵌合状態が解除されて、ミラーアセンブリ4は、シャフト3の回転中心O−O回りに反時計方向に回転する。このとき、ストッパ手段のストッパ凸部26と凹部もしくは溝部との嵌合により、ミラーアセンブリ4の回転がガイドされる。
【0049】
ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cに位置すると、ストッパ手段のストッパ凸部26の端面と凹部もしくは溝部の端面とが当接して、ミラーアセンブリ2の回転が規制されて、ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cに位置し、かつ、ミラーアセンブリ2とドアDとの当接が回避される。
【0050】
また、前方傾倒位置Cに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、ミラーアセンブリ4がシャフト3の回転中心O−O回りに時計方向に回転する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、嵌合状態が解除されている位置決め手段の凹部16と凸部とが再度嵌合して、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する。
【0051】
そして、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4にスプリング10のスプリング力よりも大きい力が作用すると、ミラーアセンブリ4は、前記の手動回転と同様に、シャフト3の回転中心O−O回りに時計方向または反時計方向に緩衝のために回転する。
【0052】
この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)は、以上のごとき構成作用からなり、以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)の効果について説明する。
【0053】
実施例のドアミラー1は、樹脂製のシャフト3に金属製の止め具11を組み付ける際、すなわち、シャフト3を止め具11の挿入孔21中に挿入させて止め具11の4個の係合爪部23をシャフト3の係合部18に弾性係合させる際に、4個の係合爪部23がシャフト3に当接して4個の変形部22が弾性変形する(図7および図9中の点線および図10を参照)。このために、実施例のドアミラー1は、弾性変形する4個の変形部22により、4個の係合爪部23を外側に広げる力を小さくすることができる。この結果、実施例のドアミラー1は、外側に広がっている4個の係合爪部23が内側に狭まってシャフト3の係合部18に弾性係合する際(図8および図9中の実線を参照)、この4個の係合爪部23が内側に狭まるすなわち元の状態に戻る際の力を小さくすることができるので、金属製の止め具11の4個の係合爪部23により、樹脂製のシャフト3の連結部24と貫通部25との境の角部が削れるのを確実に防止することができる。
【0054】
また、実施例のドアミラー1は、4個の係合爪部23の間の距離T1が4個の変形部22の間の距離T2も小さいので、シャフト3を止め具11の挿入孔21中に挿入させた際に、4個の係合爪部23がシャフト3の連結部24に常時当接し、かつ、4個の変形部22がシャフト3の連結部24に常時当接しない。このために、実施例のドアミラー1は、4個の係合爪部23がシャフト3の連結部24に常時当接して4個の変形部22が常時小さい力で確実に弾性変形することができる。
【0055】
すなわち、止め具11の係合爪部23が連結部23に当接している場合の変形部22から係合爪部23と連結部23との当接点までの距離が、止め具11の変形部22がシャフト3の連結部24に当接している場合の変形部22から変形部22と連結部24との当接点までの距離よりも、長い。てこの原理により、止め具11の係合爪部23が連結部23に当接している場合の変形部22を変形させる力が、止め具11の変形部22がシャフト3の連結部24に当接している場合の変形部22を変形させる力よりも、小さい。この結果、実施例のドアミラー1は、金属製の止め具11の4個の係合爪部23により、樹脂製のシャフト3の連結部24と貫通部25との境の角部が削れるのをさらに確実に防止することができる。
【0056】
ここで、実施例のドアミラー1は、止め具11の変形部22の弾性変形により止め具11の係合爪部23を外側に広げる力を小さくするものであるから、止め具11の係合爪部23がシャフト3の係合部18に弾性係合する力は小さい。しかしながら、実施例のドアミラー1は、止め具11の係合爪部23がシャフト3の係合部18に弾性係合する力が小さくても、止め具11の係合爪部23の先端がシャフト3の係合部18に弾性係合すると、止め具11の係合爪部23の先端がシャフト3の係合部18から外れない。すなわち、止め具11は、シャフト3から外れない。
【0057】
さらに、実施例のドアミラー1は、図11に示すように、シャフト3の係止部19が止め具11の係合爪部23および変形部22のシャフトの周方向側の部分に係止する。このために、実施例のドアミラー1は、樹脂製のシャフト3に金属製の止め具11を組み付けた後に、ミラーアセンブリ4がシャフト3に対して傾倒する際に、樹脂製のシャフト3と金属製の止め具11とが相互にシャフトの周方向に回転するのを確実に防止することができる。この結果、実施例のドアミラー1は、樹脂製のシャフト3に金属製の止め具11を組み付けた後に、ミラーアセンブリ4がシャフト3に対して傾倒する際に、樹脂製のシャフト3と金属製の止め具11とが相互にシャフト3の周方向に回転して、その金属製の止め具11の4個の係合爪部23により、樹脂製のシャフト3の連結部24と貫通部25との境の係合部18が削れるのを確実に防止することができる。
【0058】
以下、前記の実施例以外の例について説明する。この実施例においては、乗用車のドアDに装備されるドアミラー1について説明するものである。ところが、この発明においては、その他の自動車用アウトサイドミラー装置、たとえば、乗用車のフェンダに装備されるフェンダミラーやトラックのフェンダやピラーなどに装備されるトラックミラーなどであっても良い。すなわち、車体に固定されるベースおよび樹脂製のシャフト側の固定部と、そのシャフトに傾倒可能に取り付けられているミラーユニット(ミラー)およびミラーアセンブリ側の傾倒部と、から構成されている自動車用アウトサイドミラー装置であっても良い。
【0059】
また、前記の実施例においては、手動により、ミラーアセンブリ4をシャフト3に対して使用位置Aと格納位置Bとの間を傾倒(回転、回動)させるものである。ところが、この発明においては、モータおよび回転力伝達機構(減速機構およびクラッチ機構)から構成されている電動格納ユニットの電動作動により、ミラーアセンブリをシャフトに対して使用位置と格納位置との間を傾倒させても良い。この場合、電動格納ユニットのケーシング(たとえば、ギアケースおよびカバーからなるケーシング)がミラーハウジングと別体の取付部となる。
【0060】
さらに、前記の実施例においては、ミラーハウジング7が一体構造のものである。ところが、この発明においては、ミラーハウジングが本体部とその本体部を覆うカバー(化粧カバー、ガーニッシュ、シェルフレーム)とから構成されている別体構造のものであっても良い。
【0061】
さらにまた、前記の実施例においては、位置決め手段がノッチタイプの凹部凸部すなわち断面台形の凹凸から構成されているものである。ところが、この発明においては、位置決め手段として、ボールとそのボールが嵌合する嵌合凹部とから構成されているもの、また、半球形の凹凸から構成されているもの、さらに、断面半円形の凹凸から構成されているもの、さらにまた、断面三角形の凹凸から構成されているものなどであっても良い。
【0062】
さらにまた、前記の実施例においては、変形部22および係合爪部23をそれぞれ4個ずつ設けてなるものである。ところが、この発明においては、製品の大きさやスプリング荷重に合わせて変形部および係合爪部を3個、5個以上設けても良い。
【0063】
さらにまた、前記の実施例においては、取付部12がミラーハウジング7と別体のフレームやブラケットから構成されていて、そのミラーハウジング7に一体に固定されているものである。ところが、この発明においては、取付部とミラーハウジングとが一体構造のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例を示す使用状態の平面図である。
【図2】同じく、ドアミラーを示す一部破断正面図であって、図1におけるII矢視図である。
【図3】同じく、シャフトおよび取付部およびワッシャおよびスプリングおよび止め具を示す分解斜視図である。
【図4】同じく、止め具を示す平面図である。
【図5】同じく、図4におけるV−V線断面図である。
【図6】同じく、シャフトおよび取付部およびワッシャおよびスプリングおよび止め具を組み付けた状態を示す斜視図である。
【図7】同じく、シャフトに止め具を組み付けている途中の状態であって止め具の変形部が変形している状態を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図8】同じく、シャフトに止め具を組み付けた状態であって止め具の係合爪部がシャフトの係合部に弾性係合している状態を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図9】同じく、止め具の変形部が変形している状態(点線の状態)と止め具の係合爪部がシャフトの係合部に弾性係合している状態(実線の状態)とを示す一部拡大縦断面図(垂直断面図)である。
【図10】同じく、止め具の変形部が変形している状態を示す一部拡大縦断面図(垂直断面図)である。
【図11】同じく、シャフトに止め具を組み付けた状態であってシャフトの係止部が止め具の係合爪部および変形部に係止している状態を示す横断面図(水平断面図)である。
【符号の説明】
【0065】
1 ドアミラー(車両用アウトサイドミラー装置)
2 ベース
3 樹脂製のシャフト
4 ミラーアセンブリ
5 開口部
6 ワッシャ
7 ミラーハウジング
8 反射面
9 ミラーユニット
10 スプリング
11 金属製の止め具
12 取付部
13 挿通孔
14 シャフトホルダ
15 スクリュー
16 凹部
17 溝
18 係合部
19 係止部
20 スプリング当接部
21 挿入孔
22 変形部
23 係合爪部
24 連結部
25 貫通部
26 ストッパ凸部
A 使用位置
B 格納位置
C 前方傾倒位置
D ドア(車体)
E 車両の後方
F 車両の前方
G 挿入方向
O−O 回転中心
T1 係合爪部の間の距離
T2 変形部の間の距離
θ1 係合爪部が係合部に係合している状態のときの係合爪部に挟まれた角度
θ2 通常状態もしくは係合爪部が連結部に当接している状態のときの係合爪部に挟まれた角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアセンブリが車体に対して傾倒可能である車両用アウトサイドミラー装置において、
前記車体に固定されるベースと、
前記ベースに固定されている樹脂製のシャフトと、
前記シャフトに固定されている金属製の止め具と、
前記止め具により前記シャフトの周囲に圧縮された状態で配置されているスプリングと、
前記スプリングおよび前記止め具を介して前記シャフトに傾倒可能に装備されている前記ミラーアセンブリと、
を備え、
前記シャフトには、係合部が設けられていて、
前記止め具は、前記シャフトが挿入する挿入孔を有していて前記シャフトが前記挿入孔中に挿入して前記スプリングが当接するスプリング当接部と、前記挿入孔の縁から前記シャフトの挿入方向と反対側に折り曲げかつ前記シャフトの挿入方向側に折り返してなる複数個の変形部と、前記複数個の変形部の先端から前記スプリング当接部よりも前記シャフトの挿入方向側にそれぞれ延設されていて前記シャフトの前記係合部に弾性係合する複数個の係合爪部と、から構成されている、
ことを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記複数個の係合爪部の間の距離は、前記複数個の変形部の間の距離も小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項3】
前記シャフトには、前記係合爪部と前記変形部とのうち少なくともいずれか一方の前記シャフトの周方向側の部分に係止する係止部が、設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用アウトサイドミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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