説明

車両用アンテナ装置

【課題】車両ドアに設けられるアンテナのヌルを補完して、これを低減することができる車両用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】車両ドアに設けられたダイポールアンテナDA1を備え、車両1は、該ダイポールアンテナDA1を通じて車両周辺に設定された通信エリアS1に向けて無線電波を放射する車両用アンテナ装置において、車両1に設けられ、通信エリアS1のヌルN1を含む態様で設定される通信エリアS2に向けて無線電波を放射するダイポールアンテナDA2を備えることを特徴とする車両用アンテナ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両ボディの周辺に設定された通信エリアに無線電波を放射するための車両用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯機(電子キー)を所持したユーザが車両ドアに接近したときに車両ドアのアンロックなどを自動的に実行する、いわゆる電子キーシステムが周知である。そして従来、このような電子キーシステムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムが知られている。図7に、この特許文献1に記載のシステムも含めて、従来一般に採用されている電子キーシステムの概要を示す。
【0003】
同図7に示すように、この電子キーシステムでは、例えば車両80のドアに設けられた送信装置81から車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアS11にリクエスト信号を放射する。また、この電子キーシステムでは、上記送信装置81から放射されたリクエスト信号を受信するとともに、受信したリクエスト信号に対して識別コード(IDコード)などを含む応答信号を送信する携帯機90をユーザが所持する。すなわち、携帯機90を所持したユーザが通信エリアS11に進入することによって、同携帯機90から応答信号が送信される。そしてこのシステムにおいて、携帯機90から送信された応答信号は車室内に設けられた受信装置82によって受信されるとともに、車両80にかかる各種制御を統括的に実行する車両制御装置83に伝達される。同車両制御装置83では、伝達された応答信号に含まれるIDコードと同車両制御装置83内のメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨を判断すると、例えば車両ドアに設けられているドアロック装置84を通じて車両ドアをアンロックする。このような電子キーシステムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両80の各種操作が自動的に行われるようになるため、車両80の操作にかかる利便性が大きく向上するようになる。
【0004】
このような電子キーシステムに用いられる携帯機90は、一般に、内蔵される電池を電源としているため、電池切れが生じると、車両80との無線通信を行うことができなくなってしまう。このためユーザは、電池切れが生じる度に携帯機90の電池を交換する必要があり、こうした作業をユーザが煩わしく感じるおそれがある。
【0005】
そこで発明者らは、無線電力伝送技術を利用することにより、携帯機90に内蔵された電池を排除するといった方法を提案している。具体的には、携帯機90の電源電圧となるUHF帯の無線電波を車両80から携帯機90に放射する。そして携帯機90は、車両80から放射された無線電波を受信すると、同無線電波を整流して電源電圧を得る。こうした方法を採用すれば、ユーザによる携帯機90の電池交換が不要となるため、上述したユーザの煩わしさを好適に解消することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−311333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような電子キーシステムでは、携帯機90が上記通信エリアS11内に進入したときに同携帯機90が好適に電力電波を得ることができるように、高利得なアンテナ装置が望まれている。そこで、ダイポールアンテナDA10を用いることが考えられる。ダイポールアンテナDA10は線状アンテナであって、単独状態では、図9に示すような環状の指向性SDを形成する。そして、このダイポールアンテナDA10は、その形状からドアハンドルに内蔵されることが考えられる。この場合、図8に示すような通信エリアS12を形成する。すなわち、携帯機90を携帯したユーザがドアハンドル(ダイポールアンテナDA10)に近づけば、携帯機90は、高利得な無線電波を容易に受信する。これにより、携帯機90は、動作して、上記通信を通じて、車両ドアのアンロックがスムーズに行われる。
【0008】
しかしながら、図9に示すように、ダイポールアンテナDA10は、その軸線方向において無線電波を放射する量が少ないエリアが存在する。一般にこのエリアをヌルNと呼ぶ。図8に示すように、ダイポールアンテナDA10をドアハンドルに内蔵した場合、同ダイポールアンテナDA10の軸線方向である車両80沿いにヌルN1が形成される。すなわち、携帯機90を携帯したユーザが車両80に沿ってドアハンドルに近づいた場合、携帯機90は動作電源である無線電波を好適に受信できないことにより円滑に動作しないおそれがある。ひいては、ダイポールアンテナDA10と携帯機90間での通信がスムーズに行われずに、車両ドアのロック及びアンロックが行なわれない可能性がある。
【0009】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両ドアに設けられるアンテナのヌルを補完して、これを低減することができる車両用アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ドアに設けられた第1アンテナを備え、車両は、該第1アンテナを通じて車両周辺に設定された第1通信エリアに向けて無線電波を放射する車両用アンテナ装置において、前記車両に設けられ、前記第1通信エリアのヌルを含む態様で設定される第2通信エリアに向けて無線電波を放射する第2アンテナを備えることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、第1通信エリアのヌルが生じる部分には、第2アンテナを通じて無線電波が放射される。すなわち、第1通信エリアのヌルが第2アンテナから放射される電波により補完されるので、ヌルを低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用アンテナ装置において、前記第2アンテナは、サイドミラーに設けられてなることを要旨とする。
同構成によれば、サイドミラーは、車両ドア近傍に備わるものであるとともに、車両ドアより外側に突出したものである。このため、これに設けられる第2アンテナは、車両ドアに設けられた第1アンテナのヌルを補完するのに適した位置にある。よって、第2アンテナは、第1アンテナのヌルをより確実に補完することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用アンテナ装置において、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの偏波面が異なることを要旨とする。
同構成によれば、第1アンテナと第2アンテナとの双方が形成する通信エリアが重なったエリアでも偏波面が異なることにより、電波干渉の発生が抑制される。このため、第1、第2通信エリアは、好適に形成される。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用アンテナ装置において、前記第2アンテナは、ダイポールアンテナであって、その軸線方向は鉛直方向と一致することを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、第2通信エリアは、水平方向においては第2アンテナを中心とした無指向性のエリアとなる。また、本発明を請求項2又は3に適用した場合には、次のような作用効果が得られる。すなわち、サイドミラーが開閉動作しても、ダイポールアンテナの軸線方向は鉛直方向に維持される。これにより、第2アンテナは、サイドミラーの開閉状態にかかわらずその指向性は変化せず垂直偏波を放射することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用アンテナ装置において、前記第1アンテナと前記車両ドアとの間には間隙が形成されるとともに、前記第1アンテナと前記間隙を置いて対向配置される前記車両ドアの外周面を反射面として利用して、前記第1通信エリアに放射される無線電波の強度を高める態様で、前記第1アンテナから前記ドアの外周面へ向けて放射される電波を第1通信エリアへ向けて反射する電波反射構造を有することを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、第1アンテナから第1通信エリアに向けて無線電波を放射する際に、同第1アンテナから車両ドアの外周面に向けて放射される無線電波を電波反射構造によって第1通信エリアに反射することができる。このため、反射された無線電波を利用して第1通信エリアに向けて放射される無線電波の強度が強まる。従って、無線電波を放射するにあたり、第1アンテナの利得を高めることができるようになる。このため、無線電波は第1エリアへ好適に放射される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアンテナ装置によれば、車両ドアに設けられるアンテナのヌルが補完されることによりヌルを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる車両用アンテナ装置の一実施形態について同装置を利用した車両の電子キーシステムのシステム構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態のダイポールアンテナの車両への搭載位置を示す平面図。
【図3】図2にて示す円A部分のダイポールアンテナの搭載態様をしめすドアハンドルの断面図。
【図4】(a)は図2にて示す円Bの拡大図、(b)は円B部分のダイポールアンテナの搭載態様をしめすサイドミラーの部分断面図。
【図5】同実施形態のサイドミラーが開いた状態における通信エリアを模式的に示す平面図。
【図6】同実施形態のサイドミラーが閉じた状態における通信エリアを模式的に示す平面図。
【図7】従来の車両の電子キーシステムの概要を模式的に示す平面図。
【図8】想定される車両の電子キーシステムの概要を模式的に示す平面図。
【図9】ダイポールアンテナの指向性を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる車両用アンテナ装置を、電子キーシステムの車両のアンテナ装置に適用した一実施形態を図面に従って説明する。なお、この電子キーシステムの基本構成は、先の図7に例示した電子キーシステムと同様である。図1は、こうした電子キーシステムのシステム構成をブロック図として示したものであり、はじめに、同図1を参照して、この電子キーシステムの構成、動作をより具体的に説明する。
【0021】
図1に示すように、この電子キーシステムでも、車両1に搭載された車載装置10とユーザが携帯所持する携帯機20(電子キー)との間で、無線通信による各種通信制御が実行される。
【0022】
車載装置10には、携帯機20の電源電圧となるUHF帯の無線電波である電力電波をアンテナ装置A1,A2を通じて放射する無線電力送信装置11とともに、携帯機20から送信されるUHF帯の応答信号をアンテナ装置A3を通じて受信する受信装置12が設けられている。これら、無線電力送信装置11による電力電波の放射制御、及び受信装置12を通じて受信される応答信号の処理は、同じく車載装置10に設けられる車両制御装置14を通じて統括的に実行される。なお、この車両制御装置14は、例えば従来形態と同様にドアロック装置などの制御対象15の制御も行う。
【0023】
一方、携帯機20には、車載装置10から放射される上記電力電波をアンテナ装置A4を通じて受信してこれを整流する整流装置21とともに、同整流装置21で整流された電気エネルギを蓄積して電源電圧を生成する電源装置24が設けられている。また、携帯機20には、車載装置10にUHF帯の応答信号をアンテナ装置A5を通じて送信する送信装置22が設けられている。送信装置22は、同じく携帯機20に設けられて電源装置24から電源電圧を受け取って作動する携帯機制御装置23によって制御される。この携帯機制御装置23は、電力電波の受信に基づき前記応答信号を生成し、その生成した信号の送信装置22を通じた送信制御等も行う。なお、携帯機20に設けられるアンテナ装置A4は、ヘリカルアンテナ(円偏波アンテナ)である。これにより、携帯機20は、2方向からの電力電波(水平偏波及び垂直偏波)を受信することができる。
【0024】
このように構成された電子キーシステムにあって、無線電力送信装置11からアンテナ装置A1,A2を介して通信エリアS1,S2に対して電力電波が放射されているとき、ユーザが所持する携帯機20がこの通信エリアS1又はS2に進入したとすると、次のような態様にて車載装置10及び携帯機20の間で信号の授受が実行される。すなわちこのシステムでは、無線電力送信装置11からアンテナ装置A1又はA2を介して放射された電力電波が整流装置21によりアンテナ装置A4を介して受信されるとともに、同整流装置21は、同電力電波を整流してその電気エネルギを電源装置24に伝達する。電源装置24は、こうして電気エネルギが伝達されると、同電気エネルギを蓄積して電源電圧を生成するとともに、生成した電源電圧を携帯機制御装置23に印加してこれを駆動させる。電源電圧を得た携帯機制御装置23は、内蔵するメモリに記憶されている識別コード(IDコード)を含む応答信号を生成してこれを送信装置22へ伝達する。そして、送信装置22は、この応答信号をアンテナ装置A5を介して車載装置10に送信する。このようにして応答信号が送信されることにより、受信装置12はアンテナ装置A3を介してこれを受信するとともに、受信した応答信号を車両制御装置14に伝達する。これにより車両制御装置14では、伝達された応答信号に含まれるIDコードと同車両制御装置14が内蔵するメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行う。そして、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨が判断されることに基づいて、制御対象であるドアロック機構を通じて車両ドアのアンロックなどを実行する。
【0025】
ところで、こうした電子キーシステムは、ユーザ(ドライバー)が車両1に乗り込むのをスムーズに行えるように設けられるものであるから、ユーザが車両1に近づいたときに携帯機20が電源電力を得やすいように電力電波の通信エリアS1,S2を設定する必要がある。本実施形態では、図2に示すように、アンテナ装置A1を車両ドアに設けられたドアハンドル31に、アンテナ装置A2を車両1の側部に設けられたサイドミラー50にそれぞれ設ける。
【0026】
図3に示すように、車両ドアの外周面としてのアウタパネル40の外周部には、ユーザの手が挿入される部分となる溝部41が凹設されており、ドアハンドル装置30では、この溝部41の内壁面との間に間隙GPを隔てて、アウタパネル40に沿うようにドアハンドル31が配設されている。略水平に設けられるドアハンドル31は、高剛性を有する樹脂材料により形成され、アウタパネル40は、高張力鋼などの金属材料により形成されている。ドアハンドル31の溝部41に対向する部分には、ユーザが把持する部分となる把持部31aが形成されている。このドアハンドル31の一方の端部には、アウタパネル40を貫通してその内部に設けられた支持部材42に回動可能に支持される回動部33が導出されている。さらに、ドアハンドル31の回動部33が導出された反対側の端部には、同じくアウタパネル40を貫通してその内部に設けられた図示しないドア開閉機構のレバーを操作するための操作部32が導出されている。すなわち、このドアハンドル装置30では、ユーザが間隙GPに手を挿入して把持部31aを把持した後、ドアハンドル31を図中の矢印aで示す方向に引張り操作したとすると、上記支持部材42を回転軸として上記操作部32が引き出される方向にドアハンドル31が回動する。そしてこのとき、車両ドアがロック状態になければ、上記操作部32によってレバーが操作されて車両ドアが開放される。
【0027】
一方、アウタパネル40の内部には、無線電力送信装置11や受信装置12(図1参照)などが設けられる。また、これら無線電力送信装置11などと給電線11aを介してアンテナ装置A1,A3が接続されている。アンテナ装置A1は、ドアハンドル31、正確には把持部31aの内部に設けられている。アンテナ装置A3は、Cピラー等に設けられる。なお、同図では、便宜上、アンテナ装置A3の図示を割愛している。そして、例えば無線電力送信装置11が給電線11aを介してアンテナ装置A1への給電を行うと、同アンテナ装置A1から通信エリアS1に対して電力電波が放射されることとなる。電力の無線電送の観点からアンテナ装置A1は高利得のものが好ましい。このため、本例では、アンテナ装置A1として利得に優れるダイポールアンテナDA1を採用している。ドアハンドル31は略水平に設けられるため、これに内蔵されるダイポールアンテナDA1も略水平に設けられる。よって、ダイポールアンテナDA1が放射する電力電波は、水平偏波であるとともに、図5に示すような車両1の外側に広がる楕円状の通信エリアS1を形成する。また、ダイポールアンテナDA1が放射する電力電波の一部が反射面としてのアウタパネル40(正確には溝部41の内面)に反射して、この反射された電力電波が、ダイポールアンテナDA1本体から通信エリアS1へ向けて放射される電力電波と合わさる。このため、この通信エリアS1に放射される電力電波の強度が高まる、すなわち高利得となる。また、アウタパネル40へ向けて放射される電力電波を同アウタパネル40(溝部41)とダイポールアンテナDA1との対向関係からなる電波反射構造を通じて通信エリアS1へ向けて放射させることにより通信エリアS1が好適に形成される。
【0028】
図4(a)に示すように、車両ドアのアウタパネル40の外周部には、サイドミラー50が連結部材49を介して接続されている。サイドミラー50は、運転席に乗車したユーザへ後方の視界を提供する。連結部材49は、サイドミラー50を略水平方向に回動自在に支持する。サイドミラー50は、通常時においては、ユーザへ好適な後方の視界を提供するために、同図実線にて示すように開いた状態で保持される。一方、駐車時等においては、サイドミラー50は、同図2点鎖線にて示すように車両1に沿って折りたたまれた閉じた状態で保持される。
【0029】
図4(b)に示すように、サイドミラー50は、ミラー本体51とバイザーカバー52とからなる。樹脂製のバイザーカバー52は、連結部材49に回動自在に支持されるとともに、ミラー本体51を、そのミラー部分を外部へ開放した状態で収容する。
【0030】
バイザーカバー52の連結部材49と反対側の端部には、アンテナ装置A2が設けられている(図4(a)参照)。このアンテナ装置A2は、車両1内部に設けられた無線電力送信装置11(図1参照)に給電線11bを介して接続されるダイポールアンテナDA2であって、当該ダイポールアンテナDA2は、その軸方向が鉛直方向となるように設けられる。すなわち、このダイポールアンテナDA2が放射する電力電波は、垂直偏波である。このダイポールアンテナDA2は、ミラー本体51の縁部に沿って設けられる、すなわち車両1の前後方向からみたときミラー本体51に重ならないため、当該ダイポールアンテナDA2が放射する垂直偏波は、ミラー面の影響を受けにくい。従って、図5に示すように、ダイポールアンテナDA2の放射する垂直偏波により形成される通信エリアS2は、略環状(図9参照)に形成される。
【0031】
図5に示すように、ダイポールアンテナDA2によって形成される通信エリアS2は、ダイポールアンテナDA1によって形成される通信エリアS1の車両1沿いに形成されるヌルN1を覆うように形成される。すなわち、ダイポールアンテナDA2を設けない場合には、携帯機20が車両1沿いに車両ドアに近づいたときに、当該携帯機20がこのヌルN1に侵入することになる。このため、ダイポールアンテナDA1では、携帯機20への電力電波の伝達が好適に行われないおそれがあった。しかし、本例においては、ダイポールアンテナDA2によって形成される通信エリアS2は、ダイポールアンテナDA1の形成するヌルN1を補完する役割を果たす。このため、ダイポールアンテナDA2によって携帯機20への電力電波の伝達が好適に行われることになる。また、ダイポールアンテナDA2は、サイドミラー50の外側に設けられる。すなわち、より、車両1から離れた位置にまで通信エリアS2を形成することになる。よって、車載装置10と携帯機20との通信可能エリアをより広く確保することができる。
【0032】
図6に示すように、サイドミラー50が車両1に沿って折りたたまれる閉じた状態となったときにも、ダイポールアンテナDA2によって形成される通信エリアS2は、ダイポールアンテナDA1の形成するヌルN1を補完する。ダイポールアンテナDA2は、その軸方向が鉛直方向となるように設けられているため、本実施形態のように、サイドミラー50が連結部材49を中心に水平方向へのみ回動する態様で取り付けられている場合、サイドミラー50の回動によって、ダイポールアンテナDA2の軸方向が鉛直方向からずれることはない。従って、サイドミラー50の回動状態(開いた状態、閉じた状態)に関わらず、ダイポールアンテナDA2によって形成される通信エリアS2は、ダイポールアンテナDA1の形成するヌルN1を補完する。
【0033】
このように形成された通信エリアS1,S2に携帯機20が侵入すると、携帯機20は、車両1(車載装置10)からダイポールアンテナDA1,DA2を介して電力電波を受信する。なお、通信エリアS1と通信エリアS2とが重複するエリアにおいては、水平偏波と垂直偏波とが放射されている。この重複するエリアにおいては、偏波面が異なるので電波干渉はない。また、アンテナ装置A4としてヘリカルアンテナを採用しているので携帯機20の角度状態によらず、水平偏波及び垂直偏波のいずれかの電力電波を受け取ることができる。
【0034】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)ダイポールアンテナDA2は、車両ドア近傍に設けられ、且つ車両1から外側に突出するサイドミラー50に設けられるため、同ダイポールアンテナDA2が放射する電力電波は、ドアハンドルに設けられたダイポールアンテナDA1のヌルN1を確実に補完することができる。
【0035】
(2)ダイポールアンテナDA1は水平偏波を、ダイポールアンテナDA2は垂直偏波をそれぞれ放射する。このため、ダイポールアンテナDA1とダイポールアンテナDA2との双方が形成する通信エリアS1,S2が重なったエリアでは、携帯機20に2種類の偏波が伝達される。従って、このエリアにおいては、携帯機20の角度状態に関わらず当該携帯機20と車両1との通信を行うことができる。携帯機20のアンテナ装置A4としては、ヘリカルアンテナ等の円偏波アンテナを採用することが好ましい。
【0036】
(3)ダイポールアンテナDA2は、その軸線方向が鉛直方向と一致するように設けられる。従って、サイドミラー50が開閉動作しても、ダイポールアンテナDA2の軸線方向は鉛直方向に維持される。すなわち、ダイポールアンテナDA2の指向性は変化しない。これにより、ダイポールアンテナDA2は、サイドミラー50の開閉状態にかかわらず垂直偏波を放射することができる。
【0037】
(4)ダイポールアンテナDA1は、車両ドアのアウタパネル40を利用して、当該アウタパネル40へ向けて放射する電力電波を車両1の外側へ反射させている。このため、車両1の外側には、ダイポールアンテナDA1本体から放射される電力電波と、アウタパネル40に反射された電力電波とが合わさって、電力電波の強度が高められた楕円状の通信エリアS1が形成される。従って、UHF帯の無線電波を放射するにあたり、ダイポールアンテナDA1の利得を高めることができる。このため、車両1は、バッテリを内蔵しないバッテリレスの携帯機20へより確実に電力を供給することができる。
【0038】
(5)ダイポールアンテナDA2は、サイドミラー50、正確にはバイザーカバー52の連結部材49と反対側の端部に設けられている。すなわち、ダイポールアンテナDA2は、より車両1の外側に設けられる。これにより、ダイポールアンテナDA2は、より車両の外側に広い通信エリアS2を形成することができる。
【0039】
(6)ダイポールアンテナDA2は、車両1の前後方向から見たとき、ミラー本体51と重ならないように設けられている。これにより、ダイポールアンテナDA2が放射する電力電波はミラー面の影響を受けにくい。すなわち、ダイポールアンテナDA2が放射する電力電波は、好適に通信エリアS2を形成する。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、ダイポールアンテナDA1,DA2は、軸方向が一直線である線状のダイポールアンテナに限らず、V型ダイポールアンテナや折り返しダイポールアンテナなど他の種類のダイポールアンテナであってもよい。また、ダイポールアンテナDA1,DA2は、車両1への搭載位置になどに合わせて、例えばモノポールアンテナなどの線状アンテナ、逆Fアンテナや逆Lアンテナなどの板状アンテナ、あるいはウインドウなどに貼り付けられるシールアンテナ等に置換してもよい。これら各種アンテナは、車両ドア周辺に通信エリアS1,S2に相当する通信エリアが形成されるように、また、相互にヌルを補完し合うように、設置位置、向き等を調整する。
【0041】
・上記実施形態において、ダイポールアンテナDA2の搭載位置は、サイドミラー50に限らず、AピラーやBピラーなどに搭載してもよい。
・上記実施形態において、ダイポールアンテナDA1,DA2の偏波面が一致していてもよい。例えば、ダイポールアンテナDA2をミラー本体51の下縁に沿って水平に設ける、あるいは、ダイポールアンテナDA1をドア内に鉛直に設けるなどしてもよい。
【0042】
・上記実施形態において、ダイポールアンテナDA2は、その軸方向が鉛直方向に一致していなくてもよい。すなわち、鉛直方向に対して角度をもって配設してもよい。
・上記実施形態において、ダイポールアンテナDA1,DA2は、無線電波としてUHF帯の電力電波を携帯機20に通信したが、これに限らず、他の領域の無線電波でもよい。すなわち、車両1からの無線電波を受けて携帯機20の動作電力が得られればよい。
【0043】
・上記実施形態において、ダイポールアンテナDA2は、サイドミラー50の回動軸側(連結部材49側)に設けてもよい。このようにしても、ダイポールアンテナDA2の放射する電力電波はミラー面の影響を受けにくい。
【0044】
・上記実施形態において、アンテナ装置A1,A2は、車両1に1つずつ設けたが、これに限らない。すなわち、アンテナ装置A1,A2は、各ドアに設けてもよいし、アンテナ装置A1とアンテナ装置A2との数が異なっていてもよい。
【0045】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項2に記載の車両用アンテナ装置において、前記第2アンテナは、車両前後方向からみたとき、ミラー面に重ならないようにもうけられてなることを特徴とする車両用アンテナ装置。
【0046】
同構成によれば、第2アンテナが放射する無線電波は、ミラー面の影響を受けにくくなる。従って、第2アンテナが放射する無線電波は、好適な通信エリアを形成する。
【符号の説明】
【0047】
A1,A2,A3,A4,A5…アンテナ装置、DA1,DA2,DA10…ダイポールアンテナ、GP…間隙、N,N1…ヌル、S1,S2,S11,S12,…通信エリア、SD…指向性、1,80…車両、10…車載装置、11…無線電力送信装置、11a,11b…給電線、12…受信装置、14…車両制御装置、15,25…制御対象、20…携帯機、21…整流装置、22…送信装置、23…携帯機制御装置、24…電源装置、30…ドアハンドル装置、31…ドアハンドル、31a…把持部、32…操作部、33…回動部、40…アウタパネル、41…溝部、42…支持部材、49…連結部材、50…サイドミラー、51…ミラー本体、52…バイザーカバー、80…車両、81…送信装置、82…受信装置、83…車両制御装置、84…ドアロック装置、90…携帯機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアに設けられた第1アンテナを備え、車両は、該第1アンテナを通じて車両周辺に設定された第1通信エリアに向けて無線電波を放射する車両用アンテナ装置において、
前記車両に設けられ、前記第1通信エリアのヌルを含む態様で設定される第2通信エリアに向けて無線電波を放射する第2アンテナを備えることを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用アンテナ装置において、
前記第2アンテナは、サイドミラーに設けられてなることを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用アンテナ装置において、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの偏波面が異なることを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用アンテナ装置において、
前記第2アンテナは、ダイポールアンテナであって、その軸線方向は鉛直方向と一致することを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用アンテナ装置において、
前記第1アンテナと前記車両ドアとの間には間隙が形成されるとともに、前記第1アンテナと前記間隙を置いて対向配置される前記車両ドアの外周面を反射面として利用して、前記第1通信エリアに放射される無線電波の強度を高める態様で、前記第1アンテナから前記ドアの外周面へ向けて放射される電波を第1通信エリアへ向けて反射する電波反射構造を有することを特徴とする車両用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−259273(P2011−259273A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132817(P2010−132817)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】