説明

車両用イオン発生装置及びそれを用いた車両

【課題】乗客の乗り降りの際に持ち込まれる浮遊菌等を効率よく除菌できるイオン発生装置、及び、それを用いる車両を提供する。
【解決手段】車両1に搭載されて、イオンにより車内の浮遊菌等を除菌するイオン発生装置である。イオン発生部31、32で発生したイオンを放出するためのファン33と、車両内の空気を吸い込む吸込口15と、少なくとも1つの吹出方向へ前記イオン発生部で発生したイオンを車両内へ吹き出す吹出口11〜14と、前記ファン33を制御するための制御手段357と、音声検知装置50とを備え、前記音声検知装置50で車内アナウンスを検知した場合、検知してから所定時間、前記ファン33の回転数が上昇するように前記ファン33を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内アナウンスを検知することで制御を行う、車両用イオン発生装置、及び、それを用いた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
健康で快適な生活を送りたいという要望が強くなっている。近年、居住空間の高気密化や健康問題への関心が高まってきたからである。そのような要望の1つに、空気中を浮遊する浮遊菌や浮遊ウイルスを取り除きたいという要望がある。これは車両等の空間においても例外ではない。
【0003】
一般に、浮遊菌等は人の行き来が多い空間においては多く存在する。車両等は乗り降りの際に不特定多数の乗客が行き交うことから、乗客によって車両内に持ち込まれた浮遊菌等が多く存在する。特に新幹線や特急列車等は機密性が高く、比較的長時間乗車することから、車両内の浮遊菌等を取り除きたいという要望は強い。
【0004】
特許文献1は上記の課題を解決する殺菌方法を開示する。特許文献1に開示された殺菌方法は、正イオンと負イオンとを居住空間に送出する。これらのイオンは、化学反応により空気中の有害微生物や有害物質を殺菌したり無害化したりする。
【0005】
特許文献1の方法によれば、正イオンであるH(HO)m(mは任意の自然数)及び負イオンであるO(HO)n(nは0または任意の自然数)を空気中に放出すると、空気中の浮遊細菌や浮遊真菌を殺菌することができる。これらのイオンは、空気中の浮遊微生物の表面で化学反応することにより、H(過酸化水素)または・OH(水酸基ラジカル)を生成する。これらが極めて強力な活性を示すためである。発生するイオン濃度が高くなると、殺菌効果はより良好になる傾向がある。
【0006】
特許文献2にはイオン発生装置を備えた車両が開示される。この車両は、座席の背面からイオンを放出するイオン発生装置を備え、乗客の着座する座席の向きを検知し、それぞれの座席ごとに合わせたイオン発生装置の制御をすることで、座席周辺に存在する浮遊菌等を殺菌することができる。
【0007】
特許文献3には座席の下にイオン発生装置を備えた車両が開示される。この車両は、菌や埃などが多く存在している床面および床面付近に、イオンを含んだ空気を供給することで、床面および床面付近の菌等を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−224211号公報
【特許文献2】特開2006−69427号公報
【特許文献3】特開2009−126349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の発明に開示されるように、車両にイオン発生装置を備えることで、車両内に存在する浮遊菌等を殺菌することができる。ところで、車両内に存在する浮遊菌等は、主として、不特定多数の乗客が車両に乗車するときに持ち込まれたものであり、効率よく浮遊菌を殺菌するためには、イオン発生装置により高濃度のイオンを車両内に発生させる必要がある。一方、高濃度のイオンを発生させるには、イオンを放出する風量を大きくする必要があり、そのためにファンの回転数を上昇させるとファンの動作音も大きくなり、静粛性の高い車両においては乗客に不快感を与えることになる。特に新幹線や特急列車等の機密性、静粛性の高い車両においては顕著である。
【0010】
しかしながら、車両が定常状態で走行している時など、車両内が静かな時にでも乗客に不快感を与えない程度のファンの回転では、車両内に発生するイオンの濃度は、ファンの回転を上昇させた場合と比較すると低くなる。従って、乗客の乗り降りに伴い浮遊菌等が多く持ち込まれた場合には、イオンによる殺菌が効率よく行えないという問題点がある。
【0011】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、乗客にファンの動作音による不快感を与えず、乗客の乗り降りの際に持ち込まれる浮遊菌等を効率よく殺菌することのできるイオン発生装置、及び、それを用いた車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、車両に搭載され、イオンを発生させるイオン発生部を備えるイオン発生装置であって、前記イオン発生部で発生したイオンを放出するためのファンと、空気を吸い込む吸込口と、少なくとも1つの吹出方向へ前記イオン発生部で発生したイオンを車両内へ吹き出す吹出口と、前記ファンを制御するための制御手段と、音声検知装置と、を備え、前記音声検知装置で音声を検知した場合、検知してから所定時間、前記ファンの回転数が上昇するように前記ファンを制御することを特徴としている。
【0013】
また本発明は、車両に搭載され、イオンを発生させるイオン発生部を備えるイオン発生装置であって、前記イオン発生部で発生したイオンを放出するためのファンと、車両内の空気を吸い込む吸込口と、少なくとも1つの吹出方向へ前記イオン発生部で発生したイオンを車両内へ吹き出す吹出口と、前記ファンを制御するための制御手段と、音声検知装置と、を備え、前記音声検知装置で音声を検知した場合、検知してから所定時間、前記ファンは通常とは逆方向に回転し、前記吹出口から車両内の空気を吸い込み、前記イオン発生部で発生したイオンを前記吸込口から車両内へ吹き出すように前記ファンを制御することを特徴としている。
【0014】
また本発明は、前記音声検知装置による前記音声の検知は、前記音声が特定の音声であるか否かを音声認識することにより判断することで行うことを特徴としている。
【0015】
また本発明は、車両が前記イオン発生装置を備えることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、車両進行方向の右側に配置される第1の座席と、通路を挟んで前記第1の座席の横に配置される第2の座席と、第1の座席の上部に配置される第1の荷物棚と、第2の座席の上部に配置される第2の荷物棚と、を備え、前記イオン発生装置は車両の天井に凹設され、前記吹出口からの全ての吹出方向は前記第1の荷物棚と、前記第2の荷物棚との間のいずれかの方向を向いていることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、車両進行方向の右側に配置される第1の座席と、通路を挟んで前記第1の座席の横に配置される第2の座席と、第1の座席の上部に配置される第1の荷物棚と、第2の座席の上部に配置される第2の荷物棚と、を備え、前記イオン発生装置は前記第1の荷物棚と前記第2の荷物棚との少なくともいずれかに配置され、前記吹出口からの全ての吹出方向は第1の荷物棚と、第2の荷物棚との間のいずれかの方向を向いていることを特徴としている。
【0018】
また本発明は、車両進行方向の右側に配置される第1の座席と、通路を挟んで前記第1の座席の横に配置される第2の座席と、第1の座席の上部に配置される第1の荷物棚と、第2の座席の上部に配置される第2の荷物棚と、を備え、
前記イオン発生装置は車両の天井に凹設され、前記ファンが通常とは逆方向に回転するときは、前記吸込口から、前記通路に向けて、イオンを吹き出すことを特徴としている。
【0019】
また本発明は、前記ファンが通常運転の状態にあって順方向に回転するときに、前記吹出口からの少なくとも1つのイオンの吹出方向は、前記第1の荷物棚の上と、前記第2の荷物棚の上との、少なくともいずれかの方向を向いていることを特徴としている。
【0020】
また本発明は、前記イオン発生部によってH(HO)m(mは任意の自然数)から成るプラスイオンと、O(HO)n(nは0または任意の自然数)から成るマイナスイオンとを主として発生することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1にかかる発明によると、音声検知装置により車内アナウンスを検知することで、車両が駅に到着し、乗客が乗り降りのために移動することを事前に予測してイオン発生装置の制御を行い、乗客の乗り降りによって車両内に持ち込まれたり、乗客が動くことで舞い上がった浮遊細菌、浮遊ウイルス等を効率よく殺菌又は不活化することができる。
【0022】
通常、新幹線や特急列車等において、車内アナウンスは主に車両が駅に停車する数分前から駅を出発するまでの間、断続的にされるものである。前記車内アナウンスを音声検知装置により検知して、イオン発生装置のファンの回転数を上昇させると、車両内に吹き出すイオンの量も増加し、乗客が乗り降りするまでの間に、車両内におけるイオン濃度が高くなる。従って、乗客が乗り降りする際に車両内に持ち込まれたりすることで増加する浮遊菌等を高濃度のイオンにより効率よく殺菌又は不活性化することができる。
【0023】
また、車内アナウンスがされている時にファンの回転数を上昇させるため、新幹線や特急列車等の静粛性の高い車両の乗車空間においても、乗客がファンの動作音の変化に気付きにくい。さらに、駅に停車する前後は、人の移動等により様々な音が発生するため、ファンの動作音が目立ちにくく、ファンの回転数を上昇させ動作音が大きくなっても、乗客に不快感を与えることが少ない。
【0024】
さらに車内アナウンスの音声を検知することによってイオン発生装置は制御されるため、車両にイオン発生装置を取り付ける際に、電源のみを接続すれば足り、制御するための信号線等を別途接続する必要がないため、設置が容易となる。
【0025】
請求項2にかかる発明によると、車両内における乗客の移動等が少ない時には、イオン発生装置の吹出口から車両内全体に向けてイオンを吹き出すことができる。また、車内アナウンスを検知した場合には、ファンを逆方向に回転させ、吹出口と吸込口を入れ替えることにより、乗客が乗り降りの際に通る通路周辺に集中してイオンを吹き出し、乗客が乗り降りする前に予め前記通路周辺のイオン濃度を高めることで、また、通路を通る乗客に向けて直接イオンを吹き出すことで、乗客の乗り降りによって車両内に持ち込まれたり、乗客が動くことで舞い上がった浮遊細菌、浮遊ウイルス等を効率よく殺菌又は不活化することができる。
【0026】
請求項3にかかる発明によると、音声検知装置により検知した車内アナウンスの内容を音声認識することで、車両が停車することを意味する音声や、車両が、発車することを意味する音声のみを検知し、それ以外の車内アナウンスの検知をしないようにすることができる。
【0027】
請求項4にかかる発明によると、前述のイオン発生装置を備えた車両を提供できる。
【0028】
請求項5にかかる発明によると、車両の天井に凹設されたイオン発生装置から吹き出されるイオンが、座席の上部に設置された荷物棚に遮られることなく、車両全体にイオンを効率よく拡散することができる。
【0029】
また、車両等においては、通常車内アナウンスを行うスピーカーは天井付近に設置さえていることが多い。このため、天井にイオン発生装置を設置することで、近くに設置されているスピーカーからの車内アナウンスは検知しやすくなる。一方、乗客からの距離は遠くなり、乗客の発する話し声や物音は検知しにくくなるため、車内アナウンスのみを確実に検知することができる。
【0030】
請求項6にかかる発明によると、天井に照明等があることにより、天井にイオン発生装置を設置することができない車両においても、イオン発生装置によりイオンを車内全体に降り注ぎ、効率よくイオンを車両全体に拡散することができる。
【0031】
請求項7にかかる発明によると、車両内における乗客の移動等が少ない時には、イオン発生装置の吹出口から車両内全体に向けてイオンを吹き出すことができる。また、車内アナウンスを検知した場合には、ファンを逆方向に回転させ、吹出口と吸込口を入れ替えることにより、乗客が乗り降りの際に通る通路周辺に集中してイオンを吹き出し、乗客が乗り降りする前に予め前記通路周辺のイオン濃度を高めることで、また、通路を通る乗客に向けて直接イオンを吹き出すことで、乗客の乗り降りによって車両内に持ち込まれたり、乗客が動くことで舞い上がった浮遊細菌、浮遊ウイルス等を効率よく殺菌又は不活化することができる。
【0032】
請求項8にかかる発明によると、車両内における乗客の移動等が少ない時には、車両内全体にイオンを拡散すると同時に、荷物棚に置かれた乗客の荷物に付着した細菌等も効率よく殺菌することができる。
【0033】
請求項9にかかる発明によると、浮遊菌等を効率よく殺菌又は不活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態のイオン発生装置を備える車両の断面を示す概略図
【図2】進行方向に座席が並んだ車両の一例としての鉄道車両を示す平面図
【図3】第1実施形態の変形例におけるイオン発生装置を備える車両の断面を示す概略図
【図4】第1実施形態のイオン発生装置の外観斜視図
【図5】第1実施形態のイオン発生装置の前面視の分解斜視図
【図6】本体ベースの分解斜視図
【図7】第1実施形態のイオン発生装置の後面視の分解斜視図
【図8】ケースの平面図
【図9】本体ベースの平面図
【図10】吸込グリルの平面図
【図11】第1実施形態の空気の通気路の概略を示す模式図
【図12】第1実施形態の空気の通気路の概略を示す模式図
【図13】全面パネルの正面図
【図14】空気吹出口の要部断面図
【図15】イオン発生装置の空気吹き出し方向の一例を示す説明図
【図16】イオン発生装置の空気吹き出し方向の他の例を示す説明図
【図17】制御部の構成を示すブロック図
【図18】第1実施形態の制御部の処理手順を示すフローチャート
【図19】第1実施形態の変形例1の制御部の処理手順を示すフローチャート
【図20】第1実施形態の変形例2の制御部の処理手順を示すフローチャート
【図21】第2実施形態のイオン発生装置を備える車両の断面を示す概略図
【図22】第2実施形態の変形例1のイオン発生装置を備える車両の断面を示す概略図
【図23】第2実施形態の空気の通気路の概略を示す模式図
【図24】第2実施形態の制御部の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。従ってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0036】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は車両の断面の概略図を示す。これは新幹線や特急列車のように、座席が車両の進行方向を向いて並んだ車両についての断面の概略図である。図2は複数の座席が配置された車両の平面図を示す。
【0037】
本実施形態における車両では、図2に示すように複数の座席2が車両の進行方向を向いて設けてあり、2人用の座席2が左右方向に2箇所配置され、それが複数列配置されている。座席2の間には通路3が設けてある。車両の天井にはイオン発生装置100が凹設されている。座席2の上部には、荷物棚4が設置されている。本実施形態では、イオン発生装置100が車両の天井の左右に1個ずつ、複数列に設置されている。 本実施例では、図1の矢印方向に、イオン発生装置100で発生したイオンが後述のイオン吹出口から吹出されている。この吹き出し方向は全て、荷物棚の間を通過するようになっている。これにより、車両内の空間に効率よく拡散することができる。
本発明ではイオン発生装置100の制御は車内アナウンスの音声を検知することにより行うため、イオン発生装置100を車両に配置する際には、イオン発生装置100を制御するための信号線等を車両側から出して接続する必要はなく、交流100Vの電源のみを接続するだけでよい。近年新幹線等の多くの列車で、乗客がパソコン等を使用するために、交流100Vの電源系は既に準備されており、車両側としては、新たに電源を準備する必要がない。
【0038】
<全体構成の変形例>
ここで、全体構成の変形例について説明する。図3は車両の断面の概略図を示す。図3に示すように、図1の実施形態とは異なり、イオン発生装置100は車両の天井と座席2の間に設置されている荷物棚4に設けられている。荷物棚4は車両の左右両側に設けられており、イオン発生装置100も左右の荷物棚4に1個ずつ、複数列に配置されている。イオン発生装置100は空気吹出口を備える面が車両の中央側を向き、やや下向きに設置されている。
【0039】
本実施例では、図3の矢印方向に、イオン発生装置100で発生したイオンが後述のイオン吹出口から吹出されている。この吹き出し方向は全て、荷物棚の間を通過するようになっている。これにより、車両内の空間に効率よく拡散することができる。
【0040】
荷物棚4にイオン発生装置100を設けることで、車両の天井に照明等が設けられていることにより、天井にイオン発生装置100を設けることができない車両においても、イオン発生装置100を設置することができる。
【0041】
<イオン発生装置>
図4は本発明に係るイオン発生装置100の外観斜視図であり、図5は本発明に係るイオン発生装置100の前面視の分解斜視図であり、図6は本体ベース30の分解斜視図であり、図7は本発明に係るイオン発生装置100の後面視の分解斜視図である。また、図8はケース40の平面図であり、図9は本体ベース30の平面図であり、図10は吸込グリル20の平面図である。
【0042】
図5に示すように、イオン発生装置100は、一面が開口した箱状のケース40、ケース40に収容される一面が開口した箱状の本体ベース30、本体ベース30の上面(前面)に取り付けられる吸込グリル20、吸込グリル20の上面(前面)に取り付けられる空気案内板としての前面パネル10などを備えている。
【0043】
イオン発生装置100の前面パネル10には、中央部に空気吸込口15を設けてあり、空気吸込口15と同一面上であって、空気吸込口15を囲むように、イオンを放出するための放出部としての空気吹出口11、12、13、14を設けてある。ここで、同一面とは、本実施の形態で例示するように、空気吸込口と空気吹出口とが同一平面にある場合のみならず、同一の屈曲面にある場合(例えば、空気吸込口の開口面の法線方向と空気吹出口の開口面の法線方向とが鋭角をなすようにお互いに傾いて設けられているような場合)、お互いに平行な平面にある場合(例えば、空気吸込口の開口面と空気吹出口の開口面とが段差を有して設けられている場合)などを含むものとする。空気吹出口11〜14は、空気吸込口15を囲んで長方形の略四隅に配置されている。なお、本実施の形態では、イオンを放出する放出部として、空気吹出口を例に挙げて説明するが、放出部はこれに限定されるものではなく、イオンを放出することができる構造であれば、空気とともに吹き出すものに限らず、どのような構成のものでもよい。
【0044】
図5に示すように、吸込グリル20の前面(上面)には、空気吸込口15に対応する位置に略同寸法の吸込孔25を設けてあり、空気吹出口11〜14それぞれに対応する位置に略同寸法の吹出孔21、22、23、24を設けてある。
【0045】
また、図6に示すように、本体ベース30には、イオン発生部としてのイオン発生素子31、32、羽根を備えたファン33、イオン発生装置100を制御する制御部35、複数のLEDを備える表示部36、音声検知装置50などを取り付けるようになっている。
【0046】
図6に示すように、本体ベース30は、中央部にファン33を取り付けるように構成してある。本体ベース30の底面であって、ファン33が取り付けられる箇所は、外側から内側に向かって円形状に絞り込んだ椀状の絞り部37を形成してある。ファン33が動作することにより、空気吸込口15から吸い込まれた空気の流れが本体ベース30の底面に当たる際に、絞り部37を形成してあることにより、吸い込まれた空気が本体ベース30の底面に沿ってスムーズに流れ易くすることができ、空気流の乱れを生じさせることなく空気吹出口11〜14へ導くことができる。
【0047】
本体ベース30の対向する1組の側壁同士は、前面(上面)に向かって拡がるように傾斜してあり、それぞれの側壁にイオン発生素子31、32を取り付けている。イオン発生素子31、32は、先端に係止部が形成された固定板34により側壁に押圧されて取り付けられる。なお、イオン発生素子31、32は、固定板34により着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0048】
イオン発生素子31は、矩形状の板状体であり、一方の端部近傍にマイナスイオンを発生させる電極部としての電極針31a、31bを適長離隔して設けてあり、他方の端部近傍にプラスイオンを発生させる電極部としての電極針31c、31dを適長離隔して設けてある。イオン発生素子31を取り付けた状態で、吹出孔21及び空気吹出口11の近傍には、マイナスイオンを発生するイオン発生電極部が配置され、吹出孔21及び空気吹出口11からはマイナスイオンを含む空気が吹き出される。また、吹出孔24及び空気吹出口14の近傍には、プラスイオンを発生するイオン発生電極部が配置され、吹出孔24及び空気吹出口14からはプラスイオンを含む空気が吹き出される。
【0049】
イオン発生素子32は、イオン発生素子31と同様の構成をなす。イオン発生素子32を取り付けた状態で、吹出孔22及び空気吹出口12の近傍には、プラスイオンを発生するイオン発生電極部が配置され、吹出孔22及び空気吹出口12からはプラスイオンを含む空気が吹き出される。また、吹出孔23及び空気吹出口13の近傍には、マイナスイオンを発生するイオン発生電極部が配置され、吹出孔23及び空気吹出口13からはマイナスイオンを含む空気が吹き出される。
【0050】
イオン発生素子31、32は、空気中の水蒸気をプラズマ放電によりイオン化することにより、プラスイオンとしてのH(HO)m(mは任意の自然数)と、マイナスイオンとしてのO(HO)n(nは0または任意の自然数)とを発生する。そして、これらが化学反応することにより、活性種である過酸化水素(H22 )及び/又は水酸基ラジカル・(OH)が生成され、空気中の浮遊細菌や浮遊ウイルス等が除去される。
【0051】
これにより、それぞれの空気吹出口11〜14は、独立にプラスイオンを含む空気、あるいはマイナスイオンを含む空気を吹き出すことができ、イオン発生装置100から吹き出した空気中のプラスイオンとマイナスイオンとが直ちに中和することを防止できる。そして、イオンの中和を防止することにより、イオンの拡散性を向上させることができる。
【0052】
また、表示部36は、イオン発生装置100の動作状態を表示するための複数のLEDを備えている。例えば、表示部36は、イオン発生素子31、32が動作中であることを示す青色LED、空気吸込口15に取り付けられたフィルタの交換時期を通知するための赤色LED、ファン33の動作条件を示す青色・緑色・赤色の三色LEDなどを備えている。この場合、ファン33の回転数に対応して、高速(風量、風速が大に相当)のとき、三色LEDの青色が点灯する。また、回転数が中速(風量、風速が中に相当)のとき、三色LEDの緑色が点灯する。回転数が低速(風量、風速が小に相当)のとき、三色LEDは点灯しない。また、イオン発生素子31、32の交換時期を通知する場合には、三色LEDの青色及び緑色が点滅する。また、前面パネル10が外れている場合、あるいは、完全に装着されていない場合、表示部36のすべてのLEDが消灯する。
【0053】
また、制御部35は、イオン発生装置100の全体の動作を制御するマイクロコンピュータ、イオン発生素子31、32、及びファン33の動作を制御する制御回路、前面パネル10の着脱を検出するためのマイクロスイッチ351などを備えている。制御部35の詳細は後述する。図7に示すように、前面パネル10の裏面側に立設した突起棒16がマイクロスイッチ351を押すことにより、マイクロスイッチ351はオンとなり、前面パネル10が装着されていることを検出する。一方、前面パネル10が外れた場合、突起棒16がマイクロスイッチ351から離れ、マイクロスイッチ351がオフして前面パネル10が離脱したことを検出する。前面パネル10が離脱した場合、マイクロスイッチ351がオフしてイオン発生装置100の動作は停止又は運転できない状態となる。
【0054】
図7に示すように、吸込グリル20の裏面側(後面側)には、吸込孔25を挟むようにして本体ベース30の深さ寸法より短い寸法の深さ(高さ)を有する吹出方向設定部材としての吹出方向設定部材としての通気壁201、201を対設してある。すなわち、本体ベース30に吸込グリル20を取り付けた状態で、本体ベース30の底面内側と通気壁201との間は、ファン33で吸い込まれた空気が流れるのに必要な十分な隙間を設けてある。
【0055】
通気壁201の吹出孔21〜24側の側壁は、深さ(高さ)方向に沿ってテーパー状になった吹出方向設定部材としての傾斜面(内壁)201aを有する。また、通気壁201の中央部には、通気壁201と略同寸法の深さ(高さ)を有し、吹出孔22、23に挟まれるように吹出方向設定部材としての通気板202を設けている。通気板202の吹出孔22、23側の側面は、深さ(高さ)方向に沿ってテーパー状になった吹出方向設定部材としての傾斜面(内壁)202a、202bを有する。なお、吹出孔21、24側の通気板202についても同様の構成である。
【0056】
本体ベース30に吸込グリル20を取り付けた状態で、通気壁201、通気板202は、本体ベース30の内壁(底面内側、側面内側等)とともに、空気吸込口15と空気吹出口11〜14とを連通する通気路Rを形成する。そして、通気路Rには、ファン33の羽根の回転軸が空気吸込口15及び空気吹出口11〜14の面と直交するようにファン33を取り付けてある。
【0057】
また、図7及び図10に示すように、吹出孔22の裏側には、空気の吹き出し方向を設定するための吹出方向設定部材としての整流板204、204を傾斜面202aと略平行に適長離隔して設けている。吹出孔24の裏側にも、同様に空気の吹き出し方向を設定するための整流板204、204を傾斜面202aと略平行に適長離隔して設けている。
【0058】
図11及び図12は空気の通気路Rの概略を示す模式図である。図11はイオン発生装置100の長手方向から見た状態を示し、図12はイオン発生装置100の短手方向から見た状態を示す。図11に示すように、ファン33を動作させることにより、空気吸込口15から空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ファン33を介して通気路Rを通り、空気吹出口11〜14(空気吹出口11、12は図11では不図示)から吹出される。なお、図11において矢印は空気の流れを示す。空気吹出口13から吹き出される際に、イオン発生素子32のマイナスイオン発生電極部で発生したマイナスイオンが空気に含まれ、マイナスイオンを含む空気が吹き出される。また、空気吹出口14から吹き出される際に、イオン発生素子31のプラスイオン発生電極部で発生したプラスイオンが空気に含まれ、プラスイオンを含む空気が吹き出される。
【0059】
また、通気路Rの内壁である傾斜面201aにより、空気吹出口13、14から吹き出される空気は、傾斜面201aに沿った方向(傾斜面201aと平行な方向)へ拡散する。なお、傾斜面201aと空気吹出口13、14の面とのなす角度は、例えば、45度程度が好ましいが、これに限定されるものではなく、30度〜60度程度でもよい。
【0060】
また、図12に示すように、ファン33を動作させることにより、空気吸込口15から空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ファン33を介して通気路Rを通り、空気吹出口12、13(空気吹出口11、14は図12では不図示)から吹出される。なお、図12において矢印は空気の流れを示す。空気吹出口12から吹き出される際に、イオン発生素子32のプラスイオン発生電極部で発生したプラスイオンが空気に含まれ、プラスイオンを含む空気が吹き出される。
【0061】
また、通気路Rの内壁である傾斜面202a、202bにより、空気吹出口12、13から吹き出される空気は、それぞれ傾斜面202a、202bに沿った方向(傾斜面202a、202bと平行な方向)へ拡散する。なお、傾斜面202a、202bと空気吹出口12、13の面とのなす角度は、例えば、45度程度が好ましいが、これに限定されるものではなく、30度〜60度程度でもよい。なお、図11及び図12では、整流板204を省略している。
【0062】
図13は前面パネル10の正面図であり、図14は空気吹出口11の要部断面図である。図13に示すように、前面パネル10の空気吹出口11は、開口部112に複数の吹出方向設定部材としての仕切板111を並置したスリット状をなしている。これにより、空気吹出口11は、空気案内板としての機能を有する。また、図14に示すように、仕切板111は、空気吹出口11の吹出方向に沿って傾斜してあり、傾斜した仕切板111により、図14の矢印に示すように、空気の吹出方向を設定することができる。例えば、仕切板111を空気吹出口11が設けられた面に対して直角に設けるのではなく、当該面に対して所要の傾斜角(例えば、45度等)で傾斜させることでイオンを含む空気の吹出方向を仕切板111の傾きに応じて空気吹出口11から斜めにすることができる。これにより、イオンの拡散性をさらに高めることができる。他の空気吹出口12〜14についても同様の構成を有する。
【0063】
図15は本発明に係るイオン発生装置100の空気吹き出し方向の一例を示す説明図である。図15において、矢印は、空気吹出口11〜14からの空気の吹き出し方向を示す。空気吹出口11については、通気壁201の内壁としての傾斜面201a、通気板202の傾斜面202b、及び空気吹出口11に設けられた仕切板の傾きにより、イオン発生装置100の長手方向外側(図15で左方向)に向かってマイナスイオンを含む空気が拡散される。
【0064】
また、空気吹出口12については、通気壁201の内壁としての傾斜面201a、通気板202の傾斜面202a、整流板204、204及び空気吹出口12に設けられた仕切板の傾きにより、イオン発生装置100の短手方向外側(図15で上方向)に向かってプラスイオンを含む空気が拡散される。
【0065】
また、空気吹出口13については、通気壁201の内壁としての傾斜面201a、通気板202の傾斜面202b、及び空気吹出口13に設けられた仕切板の傾きにより、イオン発生装置100の長手方向外側(図15で右方向)に向かってマイナスイオンを含む空気が拡散される。
【0066】
また、空気吹出口14については、通気壁201の内壁としての傾斜面201a、通気板202の傾斜面202a、整流板204、204及び空気吹出口14に設けられた仕切板の傾きにより、イオン発生装置100の短手方向外側(図15で下方向)に向かってプラスイオンを含む空気が拡散される。
【0067】
このように、イオン発生装置100は、空気吹出口11〜14を空気吸込口15と同一平面であって空気吸込口15の回りに複数設けてある。これにより、中央部に配置された空気吸込口15から吸い込まれた空気は、イオン発生装置100の内部でイオンを含む空気となって、空気吸込口15の回りに設けられた複数の空気吹出口11〜14より吹き出されるので、イオンの拡散性を向上させることができる。特に、イオン発生装置100を室内の天井や壁に取り付けた場合であっても、複数の空気吹出口11〜14を設けてあるので、イオンを室内に効率的に拡散することができる。
【0068】
また、マイナスイオンを含む空気の吹出口11(又は13)とプラスイオンを含む空気の吹出口14(又は12)とを独立させる(別個に離隔させる)ことにより、プラスイオンとマイナスイオンとが中和することを避けて、イオンの拡散性を高めることができる。
【0069】
また、各空気吹出口11〜14の近傍にイオン発生電極部を備えている。例えば、マイナスイオンを含む空気を吹き出す空気吹出口11、13の近傍には、マイナスイオンを発生させるための電極部(例えば、電極針)を設けるとともに、プラスイオンを含む空気を吹き出す空気吹出口12、14の近傍には、プラスイオンを発生させるための電極部(例えば、電極針)を設ける。これにより、例えば、空気吹出口11〜14に至るまでの通気路R内でイオンが消滅することを防止し、発生させたプラスイオン及びマイナスイオンを空気吹出口11〜14から吹き出すことができ、イオンを一層効率的に拡散させることができる。
【0070】
また、図15に示すように、プラスイオンを含む空気を吹き出す空気吹出口とマイナスイオンを含む空気を吹き出す空気吹出口それぞれを交互に周状に配置してある。例えば、空気吹出口を長方形の各四隅の位置に配置した場合、プラスイオン用の空気吹出口とマイナスイオン用の空気吹出口とが順番に並ぶように配置する。この場合、対角線上の空気吹出口のイオンの極性は同じ極性となる。これにより、プラスイオンとマイナスイオンとを均等に拡散させることができるとともに、空間へのイオン分布が良くなりイオンの中和を避けることができる。
【0071】
また、空気吹出口11〜14を空気吸込口15と同一平面に設けてあるので、例えば、イオン発生装置100を天井や壁に設置する場合に、空気吹出口11〜14及び空気吸込口15を天井面や壁面と同一面にすることができ、イオン発生装置が天井面や壁面から飛び出した状態で設置しなければならないという制約を排除することができ、見た目も良くなる。
【0072】
また、図15に示すように、各空気吹出口11〜14から吹き出された空気の前記同一平面に沿った吹出方向をそれぞれ均等に異なる方向へ設定することができる。図15の例では、一例として、空気吹出口11〜14を長方形の各四隅の位置に配置し、各空気吹出口11〜14から吹き出す空気の方向を隣接する空気吹出口からの吹出方向と略直角をなすようにする。これにより、イオン発生装置100の空気吹出口11〜14の取り付け面から四方に均等にイオンを拡散することができる。
【0073】
また、イオン発生装置100は、空気吹出口11〜14及び空気吸込口15の面と直交する軸回りに回転する羽根を有するファン33を通気路に内設している。ファン33を作動させることにより、空気吸込口15から吸い込まれた空気は通気路Rを通って空気吹出口11〜14から吹き出される。そして、羽根の回転方向(図15の矢印方向)と一致する向きに各空気吹出口11〜14からの吹出方向を設定してある。例えば、図15に示すように、ファン33の回転方向が反時計回りである場合、各空気吹出口11〜14からの吹出方向が反時計回りになるように吹出方向を設定する。これにより、ファン33の回転により生じる渦状の空気の流れに逆らうことなく、イオンを含む空気を吹き出すことができ、イオンの拡散性を向上させることができる。
【0074】
なお、空気吹出口11〜14からの空気の吹出方向は、図15の例に限定されるものではなく、他の方向であってもよい。図16は本発明に係るイオン発生装置100の空気吹き出し方向の他の例を示す説明図である。図16において、矢印は、空気吹出口11〜14からの空気の吹き出し方向を示す。図16に示すように、空気吹出口11〜14からの空気の吹き出し方向は、ファン33の中心から半径方向に沿って4方向となる。なお、この場合、例えば、空気吹出口11〜14の仕切板の平面視の向きを変更することにより、空気の吹き出し方向を図16の例のように設定することができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、プラスイオンとしてのH(HO)m(mは任意の自然数)と、マイナスイオンとしてのO(HO)n(nは0または任意の自然数)とを発生することにより、空気中の浮遊細菌や浮遊ウイルス等を除去しているが、マイナスイオンとしてのO(HO)n(nは0または任意の自然数)のみを発生させることでも、空気中の浮遊細菌等を除去することができる。この場合、イオン発生素子により発生したマイナスイオンは、空気中に元々存在しているプラスイオンとしてのH(HO)m(mは任意の自然数)と化学反応し、活性種である過酸化水素(H22 )及び/又は水酸基ラジカル・(OH)が生成され、空気中の浮遊細菌や浮遊ウイルス等が除去される。但し、空気中に元々存在しているプラスイオンは、イオン発生素子のプラズマ放電によって発生するプラスイオンと比べると少ないため、空気中の浮遊菌等の殺菌効率は、プラスイオンとマイナスイオンを両方発生させた場合と比べると劣ってしまう。
【0076】
<制御構成>
制御用供給回路(5V)352は、直流5Vを生成し、マイクロコンピュータ350、メモリ354等に直流5Vを供給する。また、制御用供給回路(12V)353は、直流12Vを生成し、PCI制御回路356、357、ファン制御回路358などに直流12Vを供給する。
【0077】
PCI制御回路356、357それぞれは、マイクロコンピュータ350からの指令を受けて、イオン発生素子31、32の駆動、停止などの駆動条件を制御する。例えば、イオン発生素子31、32を連続駆動(連続にイオンを発生させる)し、あるいは、イオン発生素子31、32を間欠駆動(所定の間隔でオン/オフを繰り返すことで、間欠的にイオンを発生させる)する。間欠駆動は、例えば、イオン発生素子31、32を所要の可変デューティ比(例えば、オン時間とオフ時間との合計時間に対するオン時間の割合)又は可変周期(例えば、デューティ比を保ったまま、オン時間及びオフ時間の各時間、オン時間とオフ時間の合計時間など)でオン/オフさせる駆動条件である。なお、イオン発生素子31、32を間欠駆動する場合には、一方のイオン発生素子が駆動し、他方のイオン発生素子が停止するように交互に駆動(交番)する。
【0078】
ファン制御回路358は、PWM(パルス幅変調)回路を備え、マイクロコンピュータ350からの指令を受けて、ファン33の回転数を調整するとともに、ファン33の回転数を検出してマイクロコンピュータ350へ出力する。ファン制御回路358は、ファン33の回転数が高速(例えば、3000回/分で風量又は風速が大の状態)、中速(例えば、2700回/分で風量又は風速が中の状態)、低速(例えば、2400回/分で風量又は風速が小の状態)の3つの動作条件でファン33を動作させる。なお、動作条件は、あくまで一例であって、回転数を3段階に分ける構成のみならず、さらに多くの他段階に分けてよく、あるいは、ファン33の回転数を連続的に可変するように構成することもできる。また、ファン33は逆方向に回転させることもできる。
【0079】
イオンの発生量とファン33の回転数には相関があり、ファン33の回転によって発生する風量が大きいほど、イオンの発生量は多くなり、イオンが吹き出された空間のイオン濃度は高くなる。従って、ファン33を高速で動作させることで、空気吹出口11〜14から吹き出す空気に含まれるイオンの濃度は高くなる。
【0080】
リモコン受光部355は、リモコン(不図示)からの赤外光を受光し、受光した光から信号を抽出する。リモコン受光部355では、例えば、イオン発生装置100の運転開始、運転停止、動作条件の設定などの信号を受け付ける。
【0081】
なお、本実施の形態のイオン発生装置100は、2個のイオン発生素子31、32を備える構成を示すが、イオン発生素子の個数は2個に限定されるものではない。
【0082】
次に本実施形態でのイオン発生装置の作動について説明する。図18は制御部35の処理手順を示すフローチャートである。制御部35は、電源オンされたか否かを判定し(S11)、電源オンされていない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続ける。電源オンされた場合(S11でYES)、制御部35は、全面パネル10が閉じているか否かを判定し(S12)、閉じていない場合(S12でNO)、すなわち、全面パネル10が外れている場合、あるいは、完全に装着されていない場合、全面パネル10が「開」の情報(例えば、LEDの消灯)を出力し(S13)、ステップS12以降の処理を続ける。
【0083】
全面パネル10が閉じている場合(S12でYES)、制御部35は、イオン発生素子31、32を連続駆動させ、ファン33を中速(例えば、2700回/分で風量又は風速が中の状態)で動作させる(S14)。
【0084】
次に、制御部35は音声検知装置50で検知した音声の音量を判定する(S15)。検知した音量が所定値未満であると判定した場合(S15でNO)、ファン33は中速のままで動作させ続け、ステップS15の処理を続ける。
【0085】
検知した音量が所定値以上であると判定した場合(S15でYES)、ファン33を中速での動作から、高速(例えば、3000回/分で風量又は風速が大の状態)での動作に切り替える(S16)。さらにタイマをオンし(S17)、所定時間経過したか否かを判定する(S18)。そして、所定時間経過していない場合(S18でNO)制御部35は、ステップS18の処理を続け、所定時間経過した場合(S18でYES)、ファンを中速での動作に切り替え(S19)、制御部35は再び音声検知装置50で検知した音声の音量を判定する(S15)。
【0086】
なお、静粛性の極めて高い車両における場合など、ファン33を中速で動作させていても、動作音が気になる場合には、ステップS14、S19でのファンの動作を中速ではなく、低速(例えば、2400回/分で風量又は風速が小の状態)で動作させることもできる。
【0087】
<制御構成の変形例1>
イオン発生装置の作動については、図19のフローチャートに示すような処理手順で行うこともできる。
【0088】
図19のフローチャートにおいて、ステップS16までは図18のフローチャートと同一である。以下、ステップS16以降についてのみ説明する。ファン33を高速での動作に切り替え(S16)、さらにタイマをオンする(S21)。次に音声検知装置50で検知した音声の音量を判定する(S22)。検知した音量が所定値以上であると判断した場合(S22でYES)、タイマをリセットした後に(S23)、再びタイマをオン(S21)し、ステップS22の処理を行う。
【0089】
検知した音量が所定値未満であると判定した場合(S22でNO)、ステップS24で所定時間経過したか否かを判断する。そして、所定時間経過していない場合(S24でNO)制御部35は、ステップS22以降の処理を続け、所定時間経過した場合(S24でYES)、ファンを中速での動作に切り替え(S25)、制御部35は再び音声検知装置50で検知した音声の音量を判定する(S15)。
【0090】
この変形例は、第1の車内アナウンスを検知しファン33が高速で動作している最中に、別の第2の車内アナウンスを検知した場合、タイマがリセットされ、前記第2の車内アナウンスを検知してから所定時間経過するまで、ファン33が高速で動作させるものである。
【0091】
通常、新幹線や特急列車においては、車内アナウンスは主に車両が駅に停車する数分前から、駅を出発するまで断続的にされるものである。この変形例1の処理手順によると、ステップS24の所定時間を各車内アナウンスの間隔よりも長く設定しておくことで、車両が駅に停車する前の車内アナウンスから駅を出発して所定時間経過後まで連続してファン33を高速で動作させることができる。
【0092】
<制御構成の変形例2>
本変形例2においては、音声検知装置50で検知した車内アナウンスをマイクロコンピュータ350で音声認識し、特定の音声のみを検出してイオン発生装置100の作動制御を行う。具体的には図20のフローチャートに示すような処理手順で行う。
【0093】
図20のフローチャートにおいて、ステップS14までは図18のフローチャートと同一である。以下、ステップS14以降についてのみ説明する。ファン33は中速で動作している(S14)。次に、制御部35は音声検知装置50で検知した音声を音声認識し、予めメモリ354に記憶されている「駅への到着」を意味する音声であるか否かを判定する(S31)。検知した音声が「駅への到着」を意味する音声でないと判定した場合(S31でNO)、ファン33は中速のままで動作させ続け、ステップS31の処理を続ける。検知した音声が「駅への到着」を意味する音声であると判定した場合(S31でYES)、ファン33を中速での動作から、高速での動作に切り替える(S32)。ここで、「駅への到着」を意味する音声とは、例えば「まもなく」と「到着」の2つの単語を所定時間内に両方検知した場合に、検知した音声であるとする。
【0094】
次に制御部35は音声検知装置50で検知した音声を音声認識し、予めメモリ354に記憶されている「駅からの出発」を意味する音声であるか否かを判定する(S33)。検知した音声が「駅からの出発」を意味する音声でないと判定した場合(S33でNO)、ファン33は高速のままで動作させ続け、ステップS33の処理を続ける。検知した音声が「駅からの出発」を意味する音声であると判定した場合(S33でYES)、さらにタイマをオンし(S34)、所定時間経過したか否かを判定する(S35)。そして、所定時間経過していない場合(S35でNO)制御部35は、ステップS35の処理を続け、所定時間経過した場合(S35でYES)、ファンを中速での動作に切り替え(S36)、制御部35は再び音声検知装置50で検知した音声の判定する(S31)。ここで、「駅からの出発」を意味する音声とは、例えば「まもなく」と「出発」の2つの単語を所定時間内に両方検知した場合に、検知した音声であるとする。
【0095】
なお、「駅への到着」を意味する音声と、「駅からの出発」を意味する音声とは、メモリ354に記憶させることで、イオン発生装置を設置する車両の車内アナウンスに合わせて任意の音声とすることができる。
【0096】
この変形例2の処理手順によると、車両が駅に停車する際以外の車内アナウンスを検知することなく、車両が駅に停車する時のみ車内アナウンスを検知して、ファン33を高速で動作させることができる。
【0097】
[第2実施形態]
<全体構成>
図21は車両の断面の概略図を示す。これは新幹線や特急列車のように、座席が車両の進行方向を向いて並んだ車両についての概略図である。
【0098】
本実施形態における車両では、図21に示すように複数の座席2が車両の進行方向を向いて設けてあり、2人用の座席2が左右方向に2箇所配置され、それが複数列配置されている。座席2の間には通路3が設けてある。車両の天井にはイオン発生装置100が凹設されている。本実施形態では、イオン発生装置100が車両の天井の左右に1個ずつ、複数列に設置されている。それぞれのイオン発生装置100は空気吸込口15が車両の通路3付近を向くように設置されている。
【0099】
図21中の矢印は、通常運転時(ファンが順方向に回転)に空気吹出口11〜14から吹き出すイオン、空気の流れを示す。また、白抜きの矢印はファンが逆回転した時に、空気吸込口15から吹き出したイオン、空気の流れを示している。
【0100】
このように設置することで、後述するように、イオン発生装置100のファン33を逆方向に回転させることで、プラスイオンとマイナスイオンの両方を含む空気を空気吸込口15から、通路3周辺に向けて集中的に吹き出すことができ、通路3周辺のイオン濃度を高くすることができる。また、通路3を通る乗客に向けて直接イオンを吹き出すことができる。これにより、乗客の乗り降りによって車両内に持ち込まれたり、乗客が動くことで舞い上がった浮遊細菌、浮遊ウイルス等を効率よく殺菌又は不活化することができる。
【0101】
<全体構成の変形例>
ここで、全体構成の変形例について説明する。図22は車両の断面の概略図を示す。図22に示すように、図21の実施形態とは異なり、図22中の矢印で示す空気吹出口11〜14から吹き出すイオン、空気の流れの一部が、荷物棚4の上に向かっている。これにより、乗客が乗り降りのための移動をしない時には、車両内の乗客付近の場所にイオンを拡散させるだけではなく、荷物棚4に置かれた乗客の荷物に付着した細菌等も同時に殺菌することができる。
【0102】
<イオン発生装置>
イオン発生装置100は第1実施形態と同じユニットである。ファン33は逆方向に回転動作させることができる。図23はイオン発生装置100の長手方向から見た状態を示す。逆方向に回転動作させた場合は、空気吹出口11〜14と空気吸込口15の関係が逆になる。すなわち、図23に示すように、ファン33を動作させることにより、空気吹出口11〜14(空気吹出口11、12は図23では不図示)から空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ファン33を介して通気路Rを通り、空気吸込口15から吹出される。なお、図23において矢印は空気の流れを示す。空気吹出口13から空気が吸い込まれる際に、イオン発生素子32のマイナスイオン発生電極部で発生したマイナスイオンが空気に含まれ、マイナスイオンを含む空気が吸い込まれる。また、空気吹出口14から吸い込まれる際に、イオン発生素子31のプラスイオン発生電極部で発生したプラスイオンが空気に含まれ、プラスイオンを含む空気が吸い込まれ、空気吹出口13から吸い込まれたマイナスイオンを含む空気と合流し、プラスイオンとマイナスイオンの両方を含む空気が空気吸込口15から吹き出される。
【0103】
<制御構成>
第1実施形態との違いであるイオン発生装置の作動についてのみ説明する。
【0104】
図24は制御部35の処理手順を示すフローチャートである。制御部35は、電源オンされたか否かを判定し(S11)、電源オンされていない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続ける。電源オンされた場合(S11でYES)、制御部35は、全面パネル10が閉じているか否かを判定し(S12)、閉じていない場合(S12でNO)、すなわち、全面パネル10が外れている場合、あるいは、完全に装着されていない場合、全面パネルが「開」の情報(例えば、LEDの消灯)を出力し(S13)、ステップS12以降の処理を続ける。
【0105】
全面パネル10が閉じている場合(S12でYES)、制御部35は、イオン発生素子31、32を連続駆動させ(S13)、ファン33を中速(例えば、2700回/分で風量又は風速が中の状態)で動作させる(S141)。ファンの回転方向は第1実施形態と同じ方向(以下、順方向)とする。
【0106】
次に、制御部35は音声検知装置50で検知した音声の音量を判定する(S15)。検知した音量が所定値未満であると判定した場合(S15でNO)、ファン33は中速のままで動作させ続け、ステップS15の処理を続ける。
【0107】
検知した音量が所定値以上であると判定した場合(S15でYES)、ファン33を中速での動作から、高速(例えば、3000回/分で風量又は風速が大の状態)での動作に切り替え、同時にファン33の回転方向を逆方向にする(S161)。さらにタイマをオンし(S17)、所定時間経過したか否かを判定する(S18)。そして、所定時間経過していない場合(S18でNO)制御部35は、ステップS18の処理を続け、所定時間経過した場合(S18でYES)、ファンを中速での動作に切り替え、同時にファン33の回転方向を順方向に戻す(S191)。制御部35は再び音声検知装置50で検知した音声の音量を判定する(S15)。
【0108】
なお、静粛性の極めて高い車両における場合など、ファン33を中速で動作させていても、動作音が気になる場合には、ステップS141、S191でのファンの動作を中速ではなく、低速(例えば、2400回/分で風量又は風速が小の状態)で動作させることもできる。
【0109】
なお、ステップS161において、ファン33は中速で動作させたまま、ファン33の回転方向のみを逆向きにすることもできる。イオンを含んだ空気が一つの空気吸込口15から吹き出すため、ファン33が中速のままであっても、イオン発生装置から通路3周辺に向けて集中的に吹き出すため、車両によっては、通路3周辺において十分なイオン濃度が得られる。
【符号の説明】
【0110】
1 車両
2 座席
3 通路
4 荷物棚
31、32 イオン発生素子(イオン発生部)
31a、31b、31c、31d 電極針
33 ファン
35 制御部
350 マイクロコンピュータ
351 マイクロスイッチ
354 メモリ
355 リモコン受光部
356、357 PCI制御回路
358 ファン制御回路(回転数検出部)
359 表示部制御回路
36 表示部
50 音声検知装置
100 イオン発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、イオンを発生させるイオン発生部を備えるイオン発生装置であって、前記イオン発生部で発生したイオンを放出するためのファンと、空気を吸い込む吸込口と、少なくとも1つの吹出方向へ前記イオン発生部で発生したイオンを車両内へ吹き出す吹出口と、前記ファンを制御するための制御手段と、音声検知装置と、を備え、前記音声検知装置で音声を検知した場合、検知してから所定時間、前記ファンの回転数が上昇するように前記ファンを制御することを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
車両に搭載され、イオンを発生させるイオン発生部を備えるイオン発生装置であって、前記イオン発生部で発生したイオンを放出するためのファンと、車両内の空気を吸い込む吸込口と、少なくとも1つの吹出方向へ前記イオン発生部で発生したイオンを車両内へ吹き出す吹出口と、前記ファンを制御するための制御手段と、音声検知装置と、を備え、前記音声検知装置で音声を検知した場合、検知してから所定時間、前記ファンは通常とは逆方向に回転し、前記吹出口から車両内の空気を吸い込み、前記イオン発生部で発生したイオンを前記吸込口から車両内へ吹き出すように前記ファンを制御することを特徴とするイオン発生装置。
【請求項3】
前記音声検知装置による前記音声の検知は、前記音声が特定の音声であるか否かを音声認識することにより判断することで行うことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のイオン発生装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項5】
車両進行方向の右側に配置される第1の座席と、通路を挟んで前記第1の座席の横に配置される第2の座席と、第1の座席の上部に配置される第1の荷物棚と、第2の座席の上部に配置される第2の荷物棚と、を備え、前記イオン発生装置は車両の天井に凹設され、前記吹出口からの全ての吹出方向は前記第1の荷物棚と、前記第2の荷物棚との間のいずれかの方向を向いていることを特徴とする請求項4に記載の車両。
【請求項6】
車両進行方向の右側に配置される第1の座席と、通路を挟んで前記第1の座席の横に配置される第2の座席と、第1の座席の上部に配置される第1の荷物棚と、第2の座席の上部に配置される第2の荷物棚と、を備え、前記イオン発生装置は前記第1の荷物棚と前記第2の荷物棚との少なくともいずれかに配置され、前記吹出口からの全ての吹出方向は第1の荷物棚と、第2の荷物棚との間のいずれかの方向を向いていることを特徴とする請求項4に記載の車両。
【請求項7】
請求項2に記載のイオン発生装置と、車両進行方向の右側に配置される第1の座席と、通路を挟んで前記第1の座席の横に配置される第2の座席と、第1の座席の上部に配置される第1の荷物棚と、第2の座席の上部に配置される第2の荷物棚と、を備え、前記イオン発生装置は車両の天井に凹設され、前記ファンが通常とは逆方向に回転するときは、前記吸込口から、前記通路に向けて、イオンを吹き出すことを特徴とする車両。
【請求項8】
前記ファンが通常運転の状態にあって順方向に回転するときに、前記吹出口からの少なくとも1つのイオンの吹出方向は、前記第1の荷物棚の上と、前記第2の荷物棚の上との、少なくともいずれかの方向を向いていることを特徴とする請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記イオン発生部によってH(HO)m(mは任意の自然数)から成るプラスイオンと、O(HO)n(nは0または任意の自然数)から成るマイナスイオンとを主として発生することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載のイオン発生装置、又は、請求項5乃至8に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−168159(P2011−168159A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33414(P2010−33414)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】