説明

車両用ウインドレギュレータ装置

【課題】ガイドレールの表面にグリースを塗ることなくスライダを円滑にスライドさせることが可能で、しかもガイドレールとスライダの摺接部の摩耗を効果的に抑制可能な車両用ウインドレギュレータ装置を得る。
【解決手段】車両ドアのドアパネル11、12に対して昇降するスライドウインド16に固定したスライダ40と、ドアパネルに固定した、上記昇降方向に沿って延び、かつスライダを摺動可能に支持するガイドレール22と、ガイドレールに設けたワイヤ変向部材53、57と、ワイヤ変向部材に掛け回した、スライダと一緒に上下動する駆動ワイヤ46、50と、駆動ワイヤを上下動させる駆動ドラム57と、を備える車両用ウインドレギュレータ装置において、ガイドレールが、上記延長方向に延び、かつ該延長方向寸法がスライダより長い、スライダが摺接する樹脂製の摺接部23、24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアのスライドウインドを昇降させるための車両用ウインドレギュレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ドアのドアパネルに対してスライドウインドを昇降させるウインドレギュレータ装置の一例として、上下方向に延びる一本のガイドレールに沿ってスライドウインドを移動案内するタイプのものが知られている。
特許文献1はこのタイプのウインドレギュレータ装置であり、スライドウインドの下端部に固定したスライダと、ドアパネルに固定した、スライダを移動案内する上下方向に延びるガイドレールと、ドアパネルにガイドレールの下方に位置させて固定した、ガイドレールの下端部に接続するドラムハウジングと、ドラムハウジングに回転可能に支持した、モータの動力によって回転する駆動ドラムと、ガイドレールの上端部に回転可能に設けたプーリと、プーリに掛け回した状態で駆動ドラムに連係させた、その中間部をスライダに固定した駆動ワイヤと、を備えている。
モータの動力を利用して駆動ドラムを回転させると、駆動ドラムの回転動作に連動してワイヤがプーリを回転させながら上下方向に移動するため、スライダと一体化しているスライドウインドが昇降し車両ドアの窓孔を開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−28973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガイドレールは金属製であるため、ガイドレールの表面(スライダとの摺接部全体)にグリースを塗る必要がある。仮にグリースを塗らない場合は、合成樹脂製であるスライダのガイドレールに対する摺動抵抗が大きくなるので、スライダのスライド動作が不円滑になる。さらにガイドレールとスライダの摺接部の摩耗が促進されてしまう。
しかしグリースを塗ると、ガイドレールの車両ドアへの組付作業時に、グリースによって手が汚れるおそれがある。さらにガイドレールにグリースを塗る必要があるので、その分だけガイドレールの製造コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明は、ガイドレールの表面にグリースを塗ることなくスライダを円滑にスライドさせることが可能で、しかもガイドレールとスライダの摺接部の摩耗を効果的に抑制可能な車両用ウインドレギュレータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用ウインドレギュレータ装置は、車両ドアのドアパネルに対して昇降するスライドウインドに固定したスライダと、上記ドアパネルに固定した、上記昇降方向に沿って延び、かつ上記スライダを摺動可能に支持するガイドレールと、上記ガイドレールに設けた少なくとも一つのワイヤ変向部材と、該ワイヤ変向部材に掛け回した、上記スライダと一緒に上下動する駆動ワイヤと、該駆動ワイヤを上下動させる駆動ドラムと、を備える車両用ウインドレギュレータ装置において、上記ガイドレールが、上記延長方向に延び、かつ該延長方向寸法が上記スライダより長い、上記スライダが摺接する樹脂製の摺接部を備えることを特徴としている。
【0007】
上記摺接部が上記スライダ側に向かって突出する突条であってもよい。
【0008】
上記突条の内部に、該突条の延長方向に沿って延びる中空部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ガイドレールの摺接部が樹脂製なので、摺接部にグリースを塗布しなくても、スライダはガイドレールに対して円滑に摺動する。
さらにグリースを塗る必要がないので、ガイドレールの車両ドアへの組付作業時に、グリースによって手が汚れるおそれがなく、さらにガイドレールの製造コストを低くすることが可能になる。
しかも、ガイドレールに形成した摺接部はスライダより長いため、当該摺接部全体がスライダに対して同時に接触することはなく、当該摺接部の各部(一部)がスライダに対して順次接触することになるので、当該摺接部は摩耗し難い。
【0010】
請求項2記載の発明のように摺接部を突条とすれば、スライダのガイドレールに対するスライド動作がより円滑になる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、中空部を形成した突条は弾性変形可能なので、スライダ(スライドウインド)が車幅方向や前後方向にがたついたときに、このがたつきを中空部を形成した突条によって吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の車両ドアのドアトリムを省略し、かつアウタパネルの一部を破断して示す車外側から見た側面図である。
【図2】ウインドレギュレータ装置の車外側から見た分解斜視図である。
【図3】ウインドレギュレータ装置の車外側から見た斜視図である。
【図4】図3のIV−IV矢線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の各方向は図中の矢印方向を基準としている。
図1は、自動車の車両ボディ(図示略)の側面開口を開閉する上下方向の軸回りに回転可能な車両ドア10の車外側から見た側面図である。
車両ドア10は、その下半部の車外側面を構成する金属製のアウタパネル(ドアパネル)11と、アウタパネル11の車内側面の上縁部を除く周縁部にその周縁部を固定した金属製のインナパネル(ドアパネル)12と、車両ドア10の上半部を構成する、アウタパネル11の車内側面に固定した逆U字形のドアサッシュ14と、アウタパネル11の車内側面に固定した前後一対のガラスガイド15と、を備えている。アウタパネル11とインナパネル12の間には、上面が開放したレギュレータ収納空間13が形成してある。前方のガラスガイド15の後面及び後方のガラスガイド15の前面にはガイド溝(図示略)が形成してあり、前後のガラスガイド15のガイド溝には、前後のガラスガイド15の間に設けたガラス製のスライドウインド16の前後両縁部がそれぞれ上下方向に摺動自在に支持してある。スライドウインド16は前後のガラスガイド15に沿って、アウタパネル11とドアサッシュ14の間に形成された窓孔全体を閉塞する全閉位置(上限位置。図1参照)と、該窓孔全体をほぼ開放する全開位置(下限位置。図示略)と、の間を昇降可能である。また後方のガラスガイド15とドアサッシュ14の後部の間に形成された開口部には、該開口部と同じ形状の固定ガラス17が嵌合固定してある。
【0014】
レギュレータ収納空間13にはスライドウインド16を昇降させるためのウインドレギュレータ装置20が設けてある。
ウインドレギュレータ装置20は、樹脂製のガイドレールユニット21を具備している。ガイドレールユニット21は、その上下両端部を除く大部分を構成するガイドレール22と、上端部を構成するプーリ支持部材25と、下端部を構成するドラムハウジング28と、を備えている。
【0015】
断面コ字形をなす樹脂製のガイドレール22は、上下方向(スライドウインド16の昇降方向と平行な方向)に延びるベース板22aと、ベース板22aの前後両縁部に突設した車外側に向かって延びるガイド壁22bと、からなるガイドレール本体22cを有している。
さらにガイドレール本体22cの内外両面には、ガイドレール本体22cの全長に渡って延びる第1突条(摺接部)23と第2突条(摺接部)24が2本ずつ設けてある。図示するように第1突条23のガイドレール22に対する固定面には、第1突条23の全長に渡って延びる変形許容溝(中空部)23aが凹設してある。
ガイドレール22は、ガイドレール本体22cを構成する樹脂原料であるPP−LGF(ガラス繊維入りのPP)と、第1突条23及び第2突条24を構成する樹脂原料であるPOM(ポリアセタール)の二種類の樹脂原料を用いた押出成形(二色成形)による一体成形品である。第1突条23及び第2突条24を構成する樹脂原料(POM)は、ベース板22a及びガイド壁22bを構成する樹脂原料よりもスライダ40(後述)との摺動抵抗が小さい。
【0016】
樹脂製のプーリ支持部材25は、その車外側面に形成した貫通取付孔26と、貫通取付孔26の直上に形成した前後一対の貫通孔27と、を具備している。プーリ支持部材25の下端面には、断面コ字形(ガイドレール本体22cと同じ断面形状)をなす接続孔(図示略)が凹設してある。
樹脂製のドラムハウジング28の車外側面には側面視円形をなすドラム取付用凹部29が凹設してあり、ドラム取付用凹部29の中心部には回転支持凸部30が形成してある。ドラムハウジング28の車外側面にはドラム取付用凹部29の周辺部を囲む略U字形のドラムカバー壁31が一体的に突設してある。ドラムハウジング28の上端面には、断面コ字形(ガイドレール本体22cと同じ断面形状)をなす接続孔32が凹設してある。ドラムカバー壁31の外周面には3つの突部が一体的に設けてあり、2つの突部には雌ねじ孔33が形成してあり、残りの一つの突部には該突部を貫通するねじ挿通孔34が形成してある。
【0017】
ガイドレールユニット21には、樹脂製の一体成形物であるスライダ40がスライド自在に取り付けてある。スライダ40を構成する樹脂原料としては、例えばPA66−GFを利用可能である。
スライダ40は図示断面形状の部材であり、上下方向に延びかつ上下両端面及び後端面が開口する断面L字形の嵌合溝41を備えている。さらにスライダ40は、上下方向に延びる補助嵌合溝42と、スライダ40を上下方向に貫通するワイヤ固定孔43と、を備えている。またスライダ40の前端部に形成した突部には、該突部を車幅方向に貫通するボルト挿通孔44が形成してある。
【0018】
このスライダ40には第1ワイヤ(駆動ワイヤ)46と第2ワイヤ(駆動ワイヤ)50の一端をそれぞれ取り付けてある。
金属製の第1ワイヤ46の一端には第1ワイヤ46より大径であるストッパ47が固着してあり、他端には別のストッパ(図示略)が取り付けてある。一方、金属製の第2ワイヤ50の一端には第2ワイヤ50より大径であるストッパ51が固着してあり、他端には別のストッパ(図示略)が取り付けてある。
第1ワイヤ46と第2ワイヤ50は共に、ガイドレールユニット21から分離した状態のスライダ40に対して取り付けられる。具体的には、第1ワイヤ46のストッパ47と反対側の端部を上方からワイヤ固定孔43に抜止した状態で挿入し、かつ、第2ワイヤ50のストッパ51と反対側の端部を下方からワイヤ固定孔43に抜止した状態で挿入してある。
【0019】
そしてスライダ40、第1ワイヤ46、及び、第2ワイヤ50からなる一体物をガイドレール22に取り付ける。具体的には、この一体物を上方からガイドレール22の上端部に接近させて、ガイドレール22の前半部の上端部を嵌合溝41に下方から嵌合し、後側のガイド壁22bの上端部を補助嵌合溝42に下方から嵌合する。すると嵌合溝41の内面が第1突条23と第2突条24の上端部にそれぞれ接触するので、スライダ40のガイドレール22に対する前後方向の相対移動及び車幅方向の相対移動が規制される。
このようにしてスライダ40と一体化させたガイドレール22の上下両端部に、プーリ支持部材25の下端面に形成した上記接続孔と、ドラムハウジング28の上端面に形成した接続孔32と、をそれぞれ嵌合固定することにより、ガイドレール22、プーリ支持部材25、及び、ハウジング28からなるガイドレールユニット21を組み立てる。
なおスライダ40をガイドレール22に対して取り付ける際に、スライダ40、第1ワイヤ46、及び、第2ワイヤ50からなる一体物を下方からガイドレール22の下端部に接近させて、ガイドレール22の前半部の下端部を嵌合溝41に上方から嵌合し、後側のガイド壁22bの下端部を補助嵌合溝42に上方から嵌合してもよい。さらにプーリ支持部材25とハウジング28の一方をガイドレール22に固定した後に、スライダ40をガイドレール22に取り付けても良い。
【0020】
第1ワイヤ46の中間部はプーリ(ワイヤ変向部材)53の周面全体に凹設したワイヤ支持溝に掛け回してある。このプーリ53は、金属製のブラケット54に車幅方向に延びる回転支持軸55を介して回転可能に支持してある。ブラケット54は、その背面に突設したボルト(図示略)を車外側から貫通取付孔26に挿通し、プーリ支持部材25の車内側に突出した該ボルトの先端部にナット(図示略)螺合することにより、プーリ支持部材25に対して取り付けてある。
第1ワイヤ46のストッパ47側の端部と第2ワイヤ50のストッパ51側の端部は駆動ドラム57に固定してある。駆動ドラム57の周面全体にはワイヤ支持溝が凹設してあり、駆動ドラム57の側面には該ワイヤ支持溝と連通する2つの係止凹部58が凹設してある(図2に一つのみ図示)。ストッパ47とストッパ51は2つの係止凹部58にそれぞれ抜止された状態で嵌合させてあり、第1ワイヤ46のストッパ47側の端部近傍部と第2ワイヤ50のストッパ51側の端部近傍部が駆動ドラム57の上記ワイヤ支持溝に巻き付けてある(第1ワイヤ46と第2ワイヤ50の巻き付け方向は互いに逆向き)。駆動ドラム57は、その中心貫通孔の車内側端部を回転支持凸部30に回転可能に嵌合した状態でハウジング28のドラム取付用凹部29に収納させてある。
駆動ドラム57は、金属製の円板であるモータブラケット61に固定したモータ60の動力によって回転する。モータブラケット61は、車内側に向かって突出する回転支持軸62と、径方向外向きに突出する2つの突部にそれぞれ形成した2つの貫通孔63と、を備えている。モータブラケット61は、回転支持軸62を駆動ドラム57の中心貫通孔の車外側端部に相対回転可能に嵌合させ、かつ2つの貫通孔63に車外側から挿入したボルト64を雌ねじ孔33に螺合させることにより、ドラムカバー壁31の車外側面に接触した状態でドラムハウジング28に固定してある。モータブラケット61をドラムハウジング28に固定すると、回転支持軸62に支持された駆動ドラム57がドラム取付用凹部29内で回転可能となり、さらにモータ60の出力回転軸が減速機構(図示略)を介して駆動ドラム57と連係する。
【0021】
以上説明したガイドレールユニット21、スライダ40、第1ワイヤ46(ストッパ47)、第2ワイヤ50(ストッパ51)、プーリ53(ブラケット54、回転支持軸55)、駆動ドラム57、モータ60、モータブラケット61、及び、ボルト64がウインドレギュレータ装置20の構成要素である。そして上記のようにしてユニット化したウインドレギュレータ装置20は、インナパネル12に形成した作業用開口12aを通してレギュレータ収納空間13内に配置され、プーリ支持部材25の上端に穿設した一対の貫通孔27に車内側から挿入したボルト65をアウタパネル11の車内側面に固定した固定部材の雌ねじ孔に螺合し、かつ、ねじ挿通孔34に車外側から挿入したボルト66をインナパネル12の車外側面に固定した固定部材の雌ねじ孔に螺合することにより、アウタパネル11とインナパネル12に固定する。
さらにスライドウインド16の下縁部にウインドホルダ71を固定し、スライドウインド16を下降させてウインドホルダ71をスライダ40と対向させたら、車内側からボルト挿通孔44に貫通させたボルト70の先端部を、ウインドホルダ71の雌ねじ孔(図示略)に螺合して、スライダ40とウインドホルダ71を互いに固定する。そしてインナパネル12の車内側面にドアトリム(図示略)を取り付ければ車両ドア10が完成する。
【0022】
車両ドア10の該ドアトリムに設けたウインドスイッチを初期位置(中立位置)から開操作方向に操作すると、電源(図示略)から電流を受けたモータ60が正転し駆動ドラム57が図1〜図3の反時計方向に回転する。すると第1ワイヤ46が駆動ドラム57から排出される一方で第2ワイヤ50が駆動ドラム57によって巻き取られ、第1ワイヤ46及び第2ワイヤ50のプーリ53より前側に位置する部分がプーリ53を回転させながら下降し、第1ワイヤ46及び第2ワイヤ50のプーリ53より後側に位置する部分が上昇するので、スライダ40及びスライドウインド16がガイドレール22に沿って下降する。一方、ウインドスイッチを閉操作方向に操作すると電源から電流を受けたモータ60が逆転し駆動ドラム57が図1〜図3の時計方向に回転する。そのため第2ワイヤ50が駆動ドラム57から排出される一方で第1ワイヤ46が駆動ドラム57によって巻き取られ、第1ワイヤ46及び第2ワイヤ50のプーリ53より前側に位置する部分がプーリ53を回転させながら上昇し、第1ワイヤ46及び第2ワイヤ50のプーリ53より後側に位置する部分が下降するので、スライダ40及びスライドウインド16がガイドレール22に沿って上昇する。ウインドスイッチを初期位置に復帰させれば、電源からモータ60への電流の供給が遮断されるので、モータ60は回転を停止する。
【0023】
以上説明した本実施形態では、ガイドレール22を樹脂製の押出成形品としているので、ガイドレール本体22cを金属製(例えば鉄製)とした場合に比べて軽量化でき、しかも(樹脂製のインジェクション成形品とした場合に比べて)製造コストを低くすることが可能である。
しかもガイドレール22は押出成形品なので、二種類の樹脂原料を用いた二色成形品であるにも拘わらず製造コストは小さい。
【0024】
またガイドレール22の第1突条23及び第2突条24を、ガイドレール本体22cを構成する樹脂原料よりもスライダ40との摺動抵抗が小さい樹脂原料(POM)によって構成している。そのため、第1突条23及び第2突条24をガイドレール本体22cと同じ材質により構成したものと同条件(気温、湿度等が同じ条件)下において比較(試験)を行った場合に、スライダ40の第1突条23及び第2突条24に対する摺動抵抗が小さくなるので、スライダ40をガイドレール22に対して円滑にスライドさせることが可能である。
さらにガイドレール本体22cをPP−LGF(ガラス繊維入りのPP)により構成しているので、ガイドレール本体22cは高い剛性を発揮する。そのためガイドレール22はスライダ40を安定した状態で支持できる。
しかも第1突条23、第2突条24、及び、スライダ40が共に樹脂製なので、スライダ40の摺動を円滑にするためにガイドレール22にグリースを塗布する必要がない。そのためガイドレール22の車両ドア10への組付作業時に、グリースによって手が汚れるおそれがない。さらにグリースが不要になるので、その分だけガイドレール22の製造コストを低くすることが可能になる。
【0025】
しかも、ガイドレール22に形成した第1突条23及び第2突条24はスライダ40より上下長が長いため、スライダ40がスライドするときに第1突条23及び第2突条24全体がスライダ40に対して同時に接触することはなく、第1突条23及び第2突条24の各部(一部)がスライダ40に順次接触することになる。そのため第1突条23及び第2突条24は摩耗し難い(仮にスライダ40側に第1突条23及び第2突条24に相当する摺接部を形成した場合は、スライダ40がスライドするときに当該摺接部全体がガイドレール22に対して常に接触することになるので、当該摺接部は摩耗し易くなる)。
さらに2本の第1突条23に変形許容溝23aを形成しているので、前側の第1突条23は前後方向に弾性変形可能であり、後側の第1突条23は車幅方向に弾性変形可能である。そのためスライダ40(スライドウインド16)が車幅方向や前後方向にがたついたときに、このがたつきを2本の第1突条23によって吸収できる。
【0026】
以上、上記実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明は様々な変更を施しながら実施可能である。
例えばガイドレール本体22c及びスライダ40を金属製(例えば、鉄製)としてもよい。
さらに、第1突条23及び第2突条24と、ガイドレール本体22cと、を別々に成形した後に一体化してもよい。例えば、樹脂製のガイドレール本体22cを一次インジェクション成形によって成形し、このガイドレール本体22cの表面に二次インジェクション成形(インサート成形)によって第1突条23や第2突条24を成形してもよい。またプレス成形等によって金属製のガイドレール本体22cを成形し、このガイドレール本体22cの表面にインジェクション成形(インサート成形)によって第1突条23や第2突条24を成形してもよい。
また第1突条23側だけでなく第2突条24側にも変形許容溝(中空部)を形成してもよい。
さらに第1突条23(第2突条24)に、変形許容溝の代わりの中空部として、第1突条23(第2突条24)の内部を上下方向に貫通する(側部が露出しない)貫通孔を設けてもよい。
また第1突条23や第2突条24の断面形状を上記のものとは別の形状にしてもよい。
【0027】
ガイドレール本体22c、第1突条23、第2突条24、及び、スライダ40を上記とは別の樹脂原料を利用して成形してもよい。但しこの場合も、第1突条23及び第2突条24を構成する樹脂原料の方が、ガイドレール本体22cを構成する樹脂原料よりも、スライダ40との摺動抵抗が小さくなるように樹脂原料を選択する。例えば、以下の表の組み合わせが可能である。なおスライダ40の樹脂原料には必要に応じてガラス繊維を入れてもよい。

さらにガイドレール22を三種類以上の樹脂原料によって成形してもよい。この場合も、第1突条23及び第2突条24を構成する樹脂原料の方が、ガイドレール本体22cを構成する樹脂原料よりも、スライダ40との摺動抵抗が小さくなるように樹脂原料を選択する。
またプーリ53の代わりに、プーリ支持部材25に対して回転不能で周面にワイヤ支持溝を有する固定式ワイヤガイドを固定してもよい。
さらにワイヤ変向部材を複数設けても良い。例えば、ガイドレールユニット21の上下両端部に一対のワイヤ変向部材を設け、駆動ドラム57をワイヤ変向部材とは異なる場所に設けてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 車両ドア
11 アウタパネル(ドアパネル)
12 インナパネル(ドアパネル)
12a 作業用開口
13 レギュレータ収納空間
14 ドアサッシュ
15 ガラスガイド
16 スライドウインド
17 固定ガラス
20 ウインドレギュレータ装置
21 ガイドレールユニット
22 ガイドレール
22a ベース板
22b ガイド壁
22c ガイドレール本体
23 第1突条(摺接部)
23a 変形許容溝(中空部)
24 第2突条(摺接部)
25 プーリ支持部材
26 貫通取付孔
27 貫通孔
28 ドラムハウジング
29 ドラム取付用凹部
30 回転支持凸部
31 ドラムカバー壁
32 接続孔
33 雌ねじ孔
34 ねじ挿通孔
40 スライダ
41 嵌合溝
42 補助嵌合溝
43 ワイヤ固定孔
44 ボルト挿通孔
46 第1ワイヤ(駆動ワイヤ)
47 ストッパ
50 第2ワイヤ(駆動ワイヤ)
51 ストッパ
53 プーリ(ワイヤ変向部材)
54 ブラケット
55 回転支持軸
57 駆動ドラム
58 係止凹部
60 モータ
61 モータブラケット
62 回転支持軸
63 貫通孔
64 65 66 ボルト
70 ボルト
71 ウインドホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアのドアパネルに対して昇降するスライドウインドに固定したスライダと、
上記ドアパネルに固定した、上記昇降方向に沿って延び、かつ上記スライダを摺動可能に支持するガイドレールと、
上記ガイドレールに設けた少なくとも一つのワイヤ変向部材と、
該ワイヤ変向部材に掛け回した、上記スライダと一緒に上下動する駆動ワイヤと、
該駆動ワイヤを上下動させる駆動ドラムと、
を備える車両用ウインドレギュレータ装置において、
上記ガイドレールが、上記延長方向に延び、かつ該延長方向寸法が上記スライダより長い、上記スライダが摺接する樹脂製の摺接部を備えることを特徴とする車両用ウインドレギュレータ装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ウインドレギュレータ装置において、
上記摺接部が上記スライダ側に向かって突出する突条である車両用ウインドレギュレータ装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用ウインドレギュレータ装置において、
上記突条の内部に、該突条の延長方向に沿って延びる中空部を形成した車両用ウインドレギュレータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96209(P2013−96209A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243057(P2011−243057)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】