説明

車両用ウォッシャノズル

【課題】従来のフルイディスク式ノズルと同様に洗浄液を自励発振させて扇状の拡散流として噴射させることができ、構造が簡単で、圧力損失が少なく、拡散範囲を広げた車両用ウォッシャノズルを提供する。
【解決手段】洗浄液を入れたタンク(図示しない)から洗浄液がポンプにより供給される供給口12と、該供給口12より離間し、開口を広げた略U形断面の発振室13と、前記供給口12から左右に分岐して発振室13の両側に延び、発振室13の開口に接続されて、供給口12から洗浄液を発振室13に流入させる流路14、14と、前記発振室13に連続して形成され、出口に向って拡開する拡散噴出口15と、拡散噴射出口15の中央部に配置され、下流に向って断面先細り状をなすスプリッタ16とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールド・ウォッシャー装置に設けられるウォッシャノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラス等のウインドガラスに洗浄液を噴射するウォッシャー装置のウォッシャノズルに関しては、下記特許文献1に開示されるフルイディスク式ノズルがよく知られている。このノズルは、図1に示されるように、流路1に連続して形成される発振室2と、該発振室2から左右に分岐して形成されるフィードバック流路3、3と、発振室2に連続して形成される拡散噴射口4とからなり、流路1から発振室2に供給された洗浄液の一部をフィードバック流路3、3を経て発振室2に戻し、これにより発振室2を流れる洗浄液を自励発振させて拡散噴射口4より扇状の拡散流として噴射させることができるようにしている。
【特許文献1】特公昭63−57641号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、図1に示す従来のフルイディスク式ノズルと同様に洗浄液を自励発振させて扇状の拡散流として噴射させることができ、構造が簡単で、圧力損失の少ない車両用ウォッシャノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、実験により図1に示すフルイディスク式ノズルにおいて、発振室2を流路1に連続して形成しなくても発振室内の洗浄液が自励発振して拡散噴射口4より扇状の拡散流として噴射すること、更に拡散噴射口にスプリッタを配置すると、拡散流が分離されて拡散範囲が拡がること等を見出した。
【0005】
本発明は、この知見に基づいてなされたもので、請求項1に係わる発明は、タンクから洗浄液が供給される供給口と、発振室と、前記供給口から左右に分岐して発振室の両側に延び、発振室に接続されて、洗浄液を供給口から発振室に流入させる流路と、前記発振室に連続して形成され、出口に向って拡開する拡散噴射口とを有し、前記各流路からそれぞれ発振室に個別に流入した洗浄液を発振室内で自励発振させて拡散噴射口より拡散流として噴射することを特徴とする。
【0006】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、拡散噴射口に拡散流を分離させるスプリッタを配置したことを特徴とし、
請求項3に係わる発明は、請求項2に係わる発明において、スプリッタが下流に向って断面先細り状をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係わる発明によると、供給口と発振室を直接接続しなくても、両流路から個別に発振室に流入する洗浄液がそれぞれ発振室内で渦流を発生して自励発振するようになり、拡散噴射口から扇状の拡散流として噴射されるが、洗浄液を自励発振させるのに、供給口と発振室を接続する流路を有しない分、図1に示す従来のフルイディスク式ノズルに比べ構成が簡単となり、また構成が簡単となることにより圧力損失が少なくなり、噴出流が増大する。
【0008】
請求項2に係わる発明によると、拡散噴射口より噴射する洗浄液の拡散範囲を更に広げることができる。
【0009】
図2に示すような断面形状のスプリッタ6を拡散噴射口7に配置した場合、拡散流が分離してそれぞれの拡散範囲はθ及びθとなり、その和θは、スプリッタ6を設けない場合の図1に示す拡散範囲γに比べ大きくなるが、中央部の拡散範囲θとθの間に洗浄液が噴射されない範囲θが生ずる。これに対し請求項3に係わる発明のように、スプリッタが下流に向って断面先細り状をなしていると、図3に示すように分離した拡散範囲が接するか、或いは部分的に重なるようになり、中央部に洗浄液が噴射されない範囲が生じなくなる。なお、この場合でも、洗浄液の拡散範囲θは、スプリッタ16を設けない場合の拡散範囲γに比べ、θ>γとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態のウォッシャノズルについて図面により説明する。
図面に示すウォッシャノズル11は、洗浄液を入れたタンク(図示しない)から洗浄液がポンプにより供給される供給口12と、該供給口12より離間し、開口を広げた略U形断面の発振室13と、前記供給口12から左右に分岐して発振室13の両側に延び、発振室13の開口に接続されて、供給口12から洗浄液を発振室13に流入させる流路14、14と、前記発振室13に連続して形成され、出口に向って拡開する拡散噴出口15と、拡散噴射出口15の中央部に配置され、下流に向って断面先細り状をなすスプリッタ16とからなっている。
【0011】
本実施形態のウォッシャノズル11によると、拡散噴出口15から洗浄液の拡散流がスプリッタ16で分離されてそれぞれ扇状に噴出し、ウインドガラスに部分的に重なって吹き付けられるようになる。
【0012】
実験例1
東レ株式会社製のポリブチレンテレフタレートPBT、5201×10Bにより成形し、噴射口15の角度αが60°、幅D=2.98mm、スプリッタ16の厚みdが0.4mm、角度βが5°、a=2.5mm、b=0.8mm、c=0.6mmの図4に示すウォッシャブルノズル11を用い、マツダ株式会社製のウォッシャー用洗浄液をポンプで118kpaに加圧して185cc/10secで噴射した。その結果、図3に示すように拡散噴射口15から洗浄液が自励発振して蛇行しながら拡散し、スプリッタ16により分離して拡散される拡散流の拡散角度の和は65°となった。
【0013】
実験例2
実験例1のスプリッタ16の角度βを10°とする以外は実験例1と同じウォッシャノズル11を用い、実験例1と同じ条件で洗浄液を噴射した。その結果、拡散角度の和θ+θ=55°となったが、実験例1では噴射口から400mm離れた着水面で拡散流が重ならなかったのに対し、実験例2では重合した。
【0014】
実験例3
実験例1のスプリッタ16を省く以外は実験例1と同じウォッシャノズル11を用い、実験例1と同じ条件で洗浄液を噴射した。その結果、蛇行しながら拡散することに変わりはなかったが、拡散角度は30°となった。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のウォッシャノズルは、車両、とくに自動車のウィンドシールド装置に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のウォッシャー装置のウォッシャノズルの平面図。
【図2】スプリッタを備えた噴出口の拡大平面図。
【図3】本発明に係わるスプリッタ噴出口の拡大平面図。
【図4】本発明に係わるウォッシャノズルの平面図。
【符号の説明】
【0017】
11・・ウォッシャノズル
12・・供給口
13・・発振室
14・・流路
15・・拡散噴出口
16・・スプリッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクから洗浄液が供給される供給口と、発振室と、前記供給口から左右に分岐して発振室の両側に延び、発振室に接続されて、洗浄液を供給口から発振室に流入させる流路と、前記発振室に連続して形成され、出口に向って拡開する拡散噴射口とを有し、前記各流路からそれぞれ発振室に個別に流入した洗浄液を発振室内で自励発振させて拡散噴射口より拡散流として噴射することを特徴とする車両用ウォッシャノズル。
【請求項2】
拡散噴射口に拡散流を分離させるスプリッタを配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用ウォッシャノズル。
【請求項3】
前記スプリッタが下流に向って断面先細り状をなすことを特徴とする請求項2記載の車両用ウォッシャノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−18847(P2008−18847A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192589(P2006−192589)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506241514)株式会社多田製作所 (3)
【Fターム(参考)】