説明

車両用ウォッシャホースの配索構造

【課題】コストアップを招くことなく、かつウォッシャホースの折れ曲がりや捩じれ等による閉塞を生じることなく、車外側に容易に引き出すことができる車両用ウォッシャホースの配索構造を提供する。
【解決手段】ウォッシャホース16を、車内側空間Bに配置される車内側ホース23と、車内側空間Bからグロメット21を通って車外側Cに引き出される車外側ホース22とに分割し、該車外側ホース22と車内側ホース23とを鋭角をなす屈曲ジョイント25により接続し、車内側ホース23の屈曲ジョイント接続部23aから所定距離離れた部位を固定部材20′により成形天井部材7に固定した。これにより車外側ホース22をウォッシャノズル接続方向aに引き出したときに、固定部材20′を支点に車内側ホース23が屈曲ジョイント25とともに引き出し方向aに移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンクと、バックドアに配設されたウォッシャノズルとを接続する車両用ウォッシャホースの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のリヤウインドウォッシャ装置は、例えばエンジンルーム内に配置されたウォッシャタンクと、バックドアに配設されたウォッシャノズルとをウォッシャホースで接続した構造となっている。
【0003】
このようなウォッシャホースを組み付ける場合、例えば、特許文献1の図1に開示されているように、ルーフパネル(7)の車内側に配設されたウォッシャホースを、該ルーフパネル(7)の樋部に形成された貫通孔を通して車外側に引き出し、この引き出したウォッシャホースを、グロメット(9)に通すとともに、予めバックドア(1)に取り付けられたウォッシャノズル(3)のホース(5a)に接続し、この後、グロメット(9)を貫通孔に装着することによりウォッシャホースを固定するのが一般的である。
【0004】
このようなウォッシャホースをルーフパネルから車外側に引き出す場合、ウォッシャホースをルーフパネル内で略大U字状に大きく湾曲させることにより、引き出し量に対応した余長区間を設けるようにしている。即ち、ルーフパネルの車内側は成形天井部材により覆われていることから、ウォッシャホースを視認しながら引き出すことができず、このため余長区間をできるだけ大きく設定するようにしている。
【0005】
一方、前記ウォッシャホースをグロメットに通す作業を不要とするために、例えば、特許文献2では、ウォッシャホースとグロメットとを一体に形成した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−99816号公報
【特許文献2】特開平8−282448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記従来のように、ウォッシャホースの車内側での余長区間を大きく設定する場合には、ウォッシャホースの引き出し作業の如何によっては該ウォッシャホースが折れ曲がったり,捩じれたりして閉塞するおそれがある。また余長区間を大きくすると、成形天井部材をルーフパネルに取り付ける際にウォッシャホースを挟み込んでしまうおそれがある。即ち、成形天井部材を配置する場合、乗員のヘッドクリアランスを確保するために、ルーフパネルにできるだけ近接させて取り付けている。特に、成形天井部材とルーフパネルの樋部との隙間は非常に狭くなることからウォッシャホースが絡み易く、折れや捩じれが生じ易くなっている。
【0008】
また前記特許文献2のように、ウォッシャホースとグロメットとを一体形成する場合には、前記狭い隙間に対応した形状に成形することにより、組み付けは容易となるものの、新たな型を要することからコストが嵩むという問題がある。
【0009】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、コストアップを招くことなく、かつウォッシャホースの折れ曲がりや捩じれ等による閉塞を生じることなく、車外側に容易に引き出すことができる車両用ウォッシャホースの配索構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンクと、バックドアに配設されたウォッシャノズルとを接続するウォッシャホースを、ルーフパネルと該ルーフパネルを車内側から覆うように配設された成形天井部材との間の車内側空間に配設し、前記ルーフパネルの後縁部に貫通孔を設けるとともに、該貫通孔にグロメットを装着し、前記ウォッシャホースを、前記車内側空間から前記グロメットに形成された挿通孔を通して車外側に引き出し、前記ウォッシャノズルに接続するようにした車両用ウォッシャホースの配索構造であって、前記ウォッシャホースを、前記車内側空間に配置される車内側ホースと、前記車内側空間から前記グロメットを通って車外側に引き出される車外側ホースとに分割し、該車外側ホースと前記車内側ホースとを折り返し形状の屈曲ジョイントにより接続し、前記車内側ホースの前記接続部から所定距離離れた部位を固定部材により前記成形天井部材に固定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るウォッシャホースの配索構造によれば、車内側空間に配設された車内側ホースと、該車内側空間からグロメットを通って車外側に引き出される車外側ホースとを屈曲ジョイントにより折り返すように接続し、車内側ホースの屈曲ジョイント接続部から所定距離離れた部位を成形天井部材に固定した。
【0012】
このように構成したので、車内側ホースの固定部位から車外側ホースの先端までの余長区間を引き出し量に対応した必要最小限の長さにすることができ、しかも車外側ホースを引き出したときに、固定部材を支点に車内側ホースが屈曲ジョイントとともに引き出し方向に移動する。これによりウォッシャホースを成形天井部材とルーフパネルとの狭い空間から車外側に引き出しても折れ曲がったり,捩じれたりすることはなく、ウォッシャホースの組み付け作業を容易に行うことができる。
【0013】
また本発明では、車内側ホースと車外側ホースとを屈曲ジョイントにより折り返すように接続したので、前述のようにウォッシャホースの余長区間を従来のU字状に大きく湾曲させる場合に比べて短くすることができ、成形天井部材をルーフパネルに取り付ける際の挟み込みを防止できる。
【0014】
このように本発明では、屈曲ジョイントを設けるだけの簡単な構造で、前記作用効果を得ることができ、従来の新たな型によりウォッシャホースとグロメットとを一体形成する場合に比べてコストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1による車両用ウォッシャホースが配設された自動車の後部車体の斜視図である。
【図2】前記ウォッシャホースが配設された後部車体の平面図である。
【図3】前記後部車体のルーフパネルの断面図(図2のIII-III線断面図)である。
【図4】前記ルーフパネルの断面図(図2のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記ウォッシャホースが配設された成形天井部材の平面図である。
【図6】前記ウォッシャホースの配索図である。
【図7】前記ウォッシャホースの配索図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1ないし図7は、本発明の実施例1による車両用ウォッシャホースの配索構造を説明するための図である。
【0018】
図において、1は自動車の後部車体を示しており、これはルーフパネル2と、左,右のサイドパネル3,3と、フロアパネル(不図示)とで車室Aを形成するとともに、該車室Aの後端にバックドア開口1aを形成し、該バックドア開口1aにこれを開閉するバックドア4を配設した概略構造を有する。
【0019】
前記ルーフパネル2の左,右側縁部には、車両前後方向に延びるルーフレール5,5が結合されている。また前記ルーフレール2の後端部には、車幅方向に延びるリヤヘッダパネル6が結合されており、該リヤヘッダパネル6の左,右端部は前記ルーフレール5の後端部に結合されている。
【0020】
前記ルーフパネル2には、該ルーフパネル2の車内側を覆うように成形天井部材7が配設されている。この成形天井部材7は、ルーフパネル2にできるだけ近接するよう取り付けられており、これにより乗員のヘッドクリアランスを確保している。
【0021】
前記ルーフパネル2の後端部には、樋部2aが段落ち状に形成されている。該樋部2aの下側に前記リヤヘッダパネル6が配設され、スポット溶接により結合されている。
【0022】
前記樋部2aは、ルーフパネル2の後縁に続いて下方に屈曲して延びる縦壁部2bと、該縦壁部2bの下端に続いて後方に略水平に延びる横壁部2cと、該横壁部2cの後縁から上向きに屈曲するフランジ部2dとを有する。これによりルーフパネル2とバックドア4との間から進入した雨水,洗浄水等は、前記樋部2aを流れて車外に排出される。
【0023】
前記フランジ部2dによりバックドア開口1aの上縁部が形成され、該フランジ部2dには、全閉時のバックドア4との間をシールするシール部材8が装着されている。
【0024】
また前記樋部2aには、バックドア4を支持するヒンジ部材(不図示)が取り付けられている。このヒンジ部材のヒンジピン9を中心に、バックドア4は全閉時位置と全開時位置との間で上下に回動可能となっている(図4参照)。
【0025】
前記バックドア4は、アウタパネル4aとインナパネル4bとを中空状をなすよう結合した構造を有する。該バックドア4の上部にはウインド開口4cが形成されており、該ウインド開口4cにはウインドガラス4dが配設されている。
【0026】
前記バックドア4には、前記ウインドガラス4dに付着した水滴を払拭するワイパ装置10が配設されている。
【0027】
前記バックドア4には、前記ウインドガラス4dにウォッシャ液を噴射しつつ前記ワイパ装置10を作動させることによりウインドガラス4dの洗浄を行うリヤウインドウォッシャ装置12が配設されている。
【0028】
このリヤウインドウォッシャ装置12は、ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンク(不図示)と、前記バックドア4に配設されたウォッシャノズル15と、該ウォッシャノズル15と前記ウォッシャタンクとを接続する第1,第2ウォッシャホース16,17とを備えている。
【0029】
前記ウォッシャタンクは、エンジンルーム内に配設され、ウォッシャ液を加圧して吐き出すポンプ(不図示)を備えている。運転者が操作部材を操作することにより、ポンプが作動し、ウォッシャ液がウォッシャホース16,17を介してウォッシャノズル15からウインドガラス4dに向けて噴射される。
【0030】
前記ウォッシャノズル15は、車体中心部より車幅方向一側に偏位した位置に配置され、前記バックドア4のアウタパネル4aの上辺部に取り付けられている。
【0031】
前記第1ウォッシャホース16は、主としてルーフパネル2に配索され、前記第2ウォッシャホース17は、バックドア4に配索されている。
【0032】
この第2ウォッシャホース17は、これの下流端部17bが前記ウォッシャノズル15に接続され、該ウォッシャノズル15からバックドア4内を通ってインナパネル4bの上辺部に形成された挿通孔4eから車外側Cに配索されている。
【0033】
前記挿通孔4eには、該挿通孔4eと第2ウォッシャホース17との間をシールするゴム製のドア側グロメット19が装着されている。このドア側グロメット19は、前記第2ウォッシャホース17をバックドア4内から車外側Cに通す挿通孔19aと、前記挿通孔4eの周縁部に係合する係合溝19bとを有する(図6参照)。
【0034】
前記第1ウォッシャホース16は、前述のウォッシャタンクからフロントピラー(不図示)内を通って前記ルーフパネル2と成形天井部材7との間の車内側空間Bに配索されている。
【0035】
前記ルーフパネル2の樋部2aの車幅方向中心部には、貫通孔2eが形成されている。また前記リヤヘッダパネル6の前記貫通孔2eに対応する部分には、作業孔6aが形成されている。
【0036】
前記樋部2aの貫通孔2eには、該貫通孔2eと第1ウォッシャホース16との間をシールするゴム製のルーフ側グロメット21が装着されている。このグロメット21は、車内側空間Bと車外側Cとを連通する挿通孔21aと、前記貫通孔2eの周縁部に係合する係合溝21bとを有する。
【0037】
そして前記第1ウォッシャホース16は、前記車内側空間Bから前記作業孔6a,貫通孔2eを通って車外側Cに引き出され、この車外側Cにて樹脂製の直通ジョイント18を介して前記第2ウォッシャホース17の上流端部17aに接続されており、詳細には以下の構造を有する。
【0038】
前記第1ウォッシャホース16は、前記車内側空間Bに配置された車内側ホース23と、該車内側空間Bから前記グロメット21を通って車外側Cに引き出される車外側ホース22とに分割されている。
【0039】
この車外側ホース22は、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等からなるゴム質弾性材により形成されている。また前記車内側ホース23は、PVC(ポリ塩化ビニル)等からなる可撓性を有するビニール材により形成されている。
【0040】
前記車内側ホース23は、前記成形天井部材7に設定された各マーキング7aに沿って配置され、所定間隔ごとに配置された接着テープ20により成形天井部材7に固定されている(図5参照)。
【0041】
前記車内側ホース23と車外側ホース22とは、車内側空間Bに配置された鋭角をなす屈曲ジョイント25により折り返すように接続されている。詳細には、車内側ホース23は、成形天井部材7の側縁部に沿って配索され、後コーナー部から中心部に向かってグロメット21を超える位置まで配索されている。車外側ホース22は、車内側ホース23の下流端部23aから折り返してウォッシャノズル15に向かうように配索されている。
【0042】
前記屈曲ジョイント25は、流入口25aと流出口25bとの角度が概ね35度をなすようV字形状に形成されている。この屈曲ジョイント25の流入口25aに車内側ホース23の下流端部23aが接続され、流出口25bに車外側ホース22の上流端部22aが接続されている。
【0043】
前記車内側ホース23の屈曲ジョイント25の接続部である下流端部23aから所定量離れた部位は、前述の接着テープ(固定部材)20′により成形天井部材7に固定されている。これにより車内側ホース23の接着テープ20′から車外側ホース22の下流端に接続された直通ジョイント18まで間が余長区間bとなっている(図5参照)。ちなみに、車内側ホース23の固定部位は、屈曲ジョイント25の接続部から大略30mm程度離れた位置に設定されている。なお、車内側ホース23の固定部位は、車外側ホース22の引き出し量に応じて適宜設定することとなる。
【0044】
これにより前記車外側ホース22をウォッシャノズル接続方向aに引き出すことにより、接着テープ20′を支点に車内側ホース23及び屈曲ジョイント25は成形天井部材7上を引き出し方向aに揺動する(図7参照)。
【0045】
第1ウォッシャホース16を組み付けるには、バックドア4を全開位置に開いた状態で、車外側ホース22を樋部2aの貫通孔2e,リヤヘッダパネル6の作業孔6aから車外側Cに引き出し、引き出した車外側ホース22をグロメット21の挿通孔21aに挿通させる。この車外側ホース22を通した状態でグロメット21を貫通孔2eに装着して固定するとともに、車外側ホース22をウォッシャホース17に接続する。この場合、車外側ホース22を車外側Cに引き出す際に、車内側ホース23が接着テープ20′を起点にして引き出し方向aに揺動することとなる。
【0046】
本実施例によれば、車内側空間Bに配設された車内側ホース23と、該車内側空間Bからグロメット21を通って車外側Cに引き出される車外側ホース22とを屈曲ジョイント25により折り返すように接続し、車内側ホース23の屈曲ジョイント接続部23aから所定量離れた部位を接着テープ20′により成形天井部材7に固定し、車外側ホース22を引き出したときに、固定部位20′を支点に車内側ホース23が屈曲ジョイント25とともに引き出し方向aに揺動する構成とした。
【0047】
このように構成したので、車内側ホース23の固定部位20′から車外側ホース22の先端である直通ジョイント18までの余長区間bを引き出し量に対応した必要最小限の長さにすることができ、しかも車内側ホース23及び屈曲ジョイント25は成形天井部材7と平行な面に沿って揺動することとなる。
【0048】
これにより車外側ホース22を、成形天井部材7とリヤヘッダパネル6との最も狭い空間B′(図3参照)から車外側Cに引き出しても折れ曲がったり,捩じれたりすることはなく、ウォッシャホース16の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0049】
また本実施例では、車内側ホース23と車外側ホース22とをV字形状の屈曲ジョイント25により折り返すように接続したので、第1ウォッシャホース16の余長区間bを従来のU字状に大きく湾曲させる場合に比べて短くすることができ、成形天井部材7をルーフパネル2に取り付ける際の挟み込みを確実に防止できる。
【0050】
このように本実施例では、屈曲ジョイント25を設けるだけの簡単な構造で前述の作用効果を得ることができ、従来の新たな型によりウォッシャホースとグロメットとを一体形成する場合に比べてコストを抑制できる。
【符号の説明】
【0051】
2 ルーフパネル
2a 樋部
4 バックドア
15 ウォッシャノズル
16 第1ウォッシャホース
17 第2ウォッシャホース
20′ 接着テープ(固定部材)
21 グロメット
21a 挿通孔
22 車外側ホース
23 車内側ホース
23a 下流端部(屈曲ジョイント接続部)
25 屈曲ジョイント
a 引き出し方向
B 車内側空間
C 車外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンクと、バックドアに配設されたウォッシャノズルとを接続するウォッシャホースを、ルーフパネルと該ルーフパネルを車内側から覆うように配設された成形天井部材との間の車内側空間に配設し、
前記ルーフパネルの後縁部に貫通孔を設けるとともに、該貫通孔にグロメットを装着し、
前記ウォッシャホースを、前記車内側空間から前記グロメットに形成された挿通孔を通して車外側に引き出し、前記ウォッシャノズルに接続するようにした車両用ウォッシャホースの配索構造であって、
前記ウォッシャホースを、前記車内側空間に配置される車内側ホースと、前記車内側空間から前記グロメットを通って車外側に引き出される車外側ホースとに分割し、
該車外側ホースと前記車内側ホースとを折り返し形状の屈曲ジョイントにより接続し、
前記車内側ホースの前記接続部から所定距離離れた部位を固定部材により前記成形天井部材に固定した
ことを特徴とする車両用ウォッシャホースの配索構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate