説明

車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置

【課題】車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置において、エンジンの出力を向上するとともに、車両に外力が作用した際に、EGRクーラユニットを保護することにある。
【解決手段】インタクーラインレット配管(15)に接続部(21)からEGRクーラユニット(17)の車両前側まで延びる金属製のパイプ部(25)を形成するとともに、このパイプ部(25)とEGRクーラユニット(17)とを車両前後方向に重ねて配置し、パイプ部(25)にはEGRクーラユニット(17)の車両前側を覆うプロテクタ(30)を取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置に係り、特に排気ガスを冷却するEGRクーラとこのEGRクーラに接続したEGRクーラ配管とからなるEGRクーラユニットを保護する車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エンジンとしてのディーゼルエンジンでは、近年、排気ガス規制に対応するために、排気ガスを冷却してターボ過給機の手前に戻す構造が用いられているため、EGRクーラとこのEGRクーラに接続したEGRクーラ配管とからなるEGRクーラユニットがターボ過給機付近に配置されることがある。この場合、ターボ過給機後のインタクーラインレット配管は、過給された空気の圧力を落とさずにインタクーラに導くことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−150961号
【0004】
特許文献1に係る排ガス還流装置は、エンジンの前側で、ターボ過給機とこのターボ過給機に近接してEGRクーラユニットとを配置した構造である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の特許文献1では、車両前方から外力が作用した場合、エンジンルームの前部に配置される車載部品(例えば、放熱器(ラジエータ等))がEGRクーラユニットに直接強く干渉するおそれがある。
また、エンジンルームの前部にインタクーラが配置されている車両に、上記の特許文献1の構造を適用した場合に、ターボ過給機とインタクーラとを連絡するインタクーラインレット配管がEGRクーラユニットと車両前後で重ならないように、インタクーラインレット配管をEGRクーラユニットの周囲を迂回させる必要があった。また、EGRクーラユニットがターボ過給機付近に配置される場合に、ターボ過給機後のインタクーラインレット配管がEGRクーラユニット周りを迂回するように配置されている。
このため、インタクーラインレット配管の上流側を急激に屈曲させる必要があるとともに、それに伴って、インタクーラインレット配管の全長が長くなり、インタクーラインレット配管内を流れる空気がスムーズに流れ難くなり、空気の吸気圧損が増加し、また、過給された空気をインタクーラに円滑に導くことが困難となり、エンジンの出力が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明は、エンジンの出力を向上するとともに、車両に外力が作用した際に、EGRクーラユニットを保護することができる車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両のエンジンルーム内にエンジンとエアクリーナとを搭載し、このエアクリーナから吸入された空気を前記エンジンの前側に配置されたターボ過給機に導くエアクリーナアウトレット配管を設け、前記ターボ過給機によって加圧された空気を前記エンジンルームの前部に配置されたインタクーラに導くインタクーラインレット配管を設け、前記エンジンから排気浄化装置を通過した排気ガスの一部を流入するEGR流入側クーラ配管とこのEGR流入側クーラ配管から流入した排気ガスを冷却するEGRクーラとこのEGRクーラで冷却された排気ガスを前記エアクリーナアウトレット配管へ還流するEGR還流側クーラ配管とからなるEGRクーラユニットを設け、このEGRクーラユニットを前記ターボ過給機の前記インタクーラインレット配管が接続する接続部に近接して配置した車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置において、前記インタクーラインレット配管に前記接続部から前記EGRクーラユニットの車両前側まで延びる金属製のパイプ部を形成するとともに、このパイプ部と前記EGRクーラユニットとを車両前後方向に重ねて配置し、前記パイプ部には前記EGRクーラユニットの車両前側を覆うプロテクタを取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置は、エンジンの出力を向上するとともに、車両に外力が作用した際に、EGRクーラユニットを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両前部の平面図である。(実施例)
【図2】図2は車両前部の側面図である。(実施例)
【図3】図3はプロテクタを備えたエンジンの正面図である。(実施例)
【図4】図4はプロテクタを取り外したエンジンの正面図である。(実施例)
【図5】図5はエンジンの斜視図である。(実施例)
【図6】図6はインタクーラインレット配管のパイプ部とプロテクタとの斜視図である。(実施例)
【図7】図7はエンジンの斜視図である。(変形例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、エンジンの出力を向上するとともに、車両に外力が作用した際に、EGRクーラユニットを保護する目的を、インタクーラインレット配管を特異に曲げて実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図7は、この発明の実施例を示すものである。
図1、図2において、1は車両、2はフード、3はフロントグリル、4はダッシュパネル、5は車両前部のエンジンルームである。
このエンジンルーム5内には、前部でターボ過給機6を備えた横置きのディーゼルエンジン(以下「エンジン」という)7と、このエンジン7の左部に連結した変速機8と、この変速機8の上方でエアクリーナ9が搭載されている。
また、エンジンルーム5内には、エンジン7の前方で、ラジエータ10が配置されているとともに、このラジエータ10の前方でインタクーラ11が配置されている。
エンジン7には、前部で排気管12が接続している。この排気管12には、排気浄化装置(触媒コンバータ)13が連結している。
【0012】
エアクリーナ9には、該エアクリーナ9から吸入された空気をエンジン7の前側に配置されたターボ過給機6に導くように、エンジン7の上方に配置されたエアクリーナアウトレット配管14が接続している。
このエアクリーナアウトレット配管14は、一端部が車両後方の左側に配置されてエアクリーナ9に接続し、そして、エンジン7の後部且つ上方で車両左右方向に延び、さらに、エンジン7の右端且つ上方で車両前後方向に延び、その後、車両下方に延び、他端部が車両右方からターボ過給機6に接続している。
ターボ過給機6とインタクーラ11とには、ターボ過給機6によって加圧された空気をエンジンルーム5の前部に配置されたインタクーラ11に導くためのインタクーラインレット配管15で接続している。また、インタクーラ11には、インタクーラアウトレット配管16が接続している。
【0013】
エンジン7には、図4に示すように、EGRクーラユニット17が設けられる。
このEGRクーラユニット17は、エンジン7から排気浄化装置13を通過した排気ガスの一部を流入するEGR流入側クーラ配管18と、このEGR流入側クーラ配管18から流入した排気ガスを冷却するEGRクーラ19と、このEGRクーラ19で冷却された排気ガスを前記エアクリーナアウトレット配管14へ還流するEGR還流側クーラ配管20とからなる。
このEGRクーラユニット17は、ターボ過給機6のインタクーラインレット配管15が接続する接続部21に近接して配置されている。この接続部21は、ターボ過給機側接続フランジ22と、インタクーラインレット配管15の配管側接続フランジ23とからなる。
【0014】
このエンジン7には、EGRクーラユニット保護装置24が設けられる。
このEGRクーラユニット保護装置24において、図2に示すように、インタクーラインレット配管15には、接続部21からEGRクーラユニット17の車両前側まで延びる金属製のパイプ部25を形成するとともに、このパイプ部25に連設する配管本体部26を形成している。パイプ部25とEGRクーラユニット17とは、車両前後方向に重ねて配置されている。これにより、インタクーラインレット配管15は、EGRクーラユニット17周りを迂回する必要がない形状に形成される。
パイプ部25は、図6に示すように、前記配管側接続フランジ23を備え、この配管側接続フランジ23を含んだ所定の長さのターボ側接続管部27と、急激に屈曲(略直角)された折曲管部28と、配管本体部26が連設するクーラ側接続管部29とからなる。
このように、EGRクーラユニット17を避けるために、インタクーラインレット配管15のうちターボ過給機6の直後に形成されるパイプ部25を急激に屈曲させて、インタクーラインレット配管15をEGRクーラユニット17周りで迂回させる必要がなくなる。
これにより、インタクーラインレット配管15の全長を短縮できるとともに、インタクーラインレット配管15を滑らかな湾曲形状とすることができる。そのため、ターボ過給機6後の配管のレイアウトの自由度を確保し、ターボ過給機6からインククーラ11に向かう空気(外気)をスムーズに流すことができて、空気の吸気圧損の増加を抑制して、エンジン7の出力を向上できる。
【0015】
また、上記のように、インタクーラインレット配管15に接続部21からEGRクーラユニット17の車両前側まで延びる金属製のパイプ部25を形成するとともに、このパイプ部25とEGRクーラユニット17とを車両前後方向に重ねて配置し、さらに加えて、パイプ部25にはEGRクーラユニット17の車両前側を覆うプロテクタ30を取り付ける。
このプロテクタ30は、図6に示すように、例えば、薄板の長方体からなって、ラジエータ10の背部に配置される。
パイプ部25には、折曲管部28とクーラ側接続管部29との車両前方側で、プロテクタ30を取り付けるための一側取付部31Aと他側取付部31Bとを設けている。
このような構造により、車両前方から外力が作用した際に、プロテクタ30によって車両前部に配置される車載部品がEGRクーラユニット17に直接強く干渉するのを防止することができ、この結果、EGRクーラユニット17を保護できる。
【0016】
図7は、この発明の変形例を示すものである。
この変形例では、プロテクタ30には、表面から車両前方に突出する複数の放熱フィン32を設ける。
このような構造により、プロテクタ30に複数の放熱フィン32を形成したことで、この放熱フィン32によってプロテクタ30の剛性を高めることができる。
これによって、車両前方から外力が作用したとしても、放熱フィン32によってプロテクク30の変形を抑制でき、車載部品がEGRクーラユニット17に直接強く干渉するのを確実に防止できる。
さらに、プロテクタ30に放熱フィン32を形成したことで、プロテクタ30の表面積を増加させることができ、走行風によってプロテクタ30の冷却効率を高めて、インタクーラインレット配管15を流れるターボ過給機6後の高温な空気を冷却することができる。
そのため、インタクーラ11によってエンジン7が吸入する空気の温度を低下でき、エンジン7の出力をさらに向上させることができる。
【0017】
なお、この発明においては、インタクーラインレット配管の表面を羽状に形成する等により、過給後の高温の空気の冷却効果を高くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明に係る保護装置を、ディーゼルエンジンのみならず、ガソリンエンジンにも適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 車両
5 エンジンルーム
6 ターボ過給機
7 エンジン
9 エアクリーナ
11 インタクーラ
13 排気浄化装置
14 エアクリーナアウトレット配管
15 インタクーラインレット配管
16 インタクーラアウトレット配管
17 EGRクーラユニット
18 EGR流入側クーラ配管
19 EGRクーラ
20 EGR還流側クーラ配管
21 接続部
24 EGRクーラユニット保護装置
25 インタクーラインレット配管のパイプ部
26 インタクーラインレット配管の配管本体部
30 プロテクタ
32 プロテクタの放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム内にエンジンとエアクリーナとを搭載し、このエアクリーナから吸入された空気を前記エンジンの前側に配置されたターボ過給機に導くエアクリーナアウトレット配管を設け、前記ターボ過給機によって加圧された空気を前記エンジンルームの前部に配置されたインタクーラに導くインタクーラインレット配管を設け、前記エンジンから排気浄化装置を通過した排気ガスの一部を流入するEGR流入側クーラ配管とこのEGR流入側クーラ配管から流入した排気ガスを冷却するEGRクーラとこのEGRクーラで冷却された排気ガスを前記エアクリーナアウトレット配管へ還流するEGR還流側クーラ配管とからなるEGRクーラユニットを設け、このEGRクーラユニットを前記ターボ過給機の前記インタクーラインレット配管が接続する接続部に近接して配置した車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置において、前記インタクーラインレット配管に前記接続部から前記EGRクーラユニットの車両前側まで延びる金属製のパイプ部を形成するとともに、このパイプ部と前記EGRクーラユニットとを車両前後方向に重ねて配置し、前記パイプ部には前記EGRクーラユニットの車両前側を覆うプロテクタを取り付けたことを特徴とする車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置。
【請求項2】
前記プロテクタには、表面から車両前方に突出する複数の放熱フィンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用エンジンのEGRクーラユニット保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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