説明

車両用カウルルーバ

【課題】車両用カウルルーバにおいて、取付けが容易で低コスト化することができ、フロントガラスとの間のシール性を向上させることができ、意匠性に優れるとともにシール性にも優れること。
【解決手段】車両用カウルルーバ1は、機能部分5及び意匠部分4からなり、機能部分5の後端が弾性材料からなる封隙部6として、フロントガラス3の下端面3a及び下端裏面3bに密着してシールするとともに、意匠部分4の後端部にも密着してシールし、更にカウルトップ9にも密着してシールしているため、シール性に対する信頼性が高くなる。底部12Cの後端部には、フロントガラス3の下端に密着する封隙部6を固定して一体化するための凹凸状に形成された係止部5bが予め形成されている。また、封隙部6には係止部5bに対応して係止できる係止部10aを備えている。これによって、封隙部6は、底部12Cの後端部に容易に組み付けられて固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のフロントガラスの下端に嵌合してフードパネルの後端裏側まで延出する車両用カウルルーバに関するものであり、特に、意匠性に優れるとともにシール性にも優れる車両用カウルルーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車の構造においては、エンジンルームを覆うフードパネルの後端とフロントガラスの下端部分との間には空間が形成されており、この空間は、フロントガラスの下端に嵌合してフードパネルの後端裏側まで延出する樹脂製のカウルルーバによって遮蔽されている。これによって、エンジンルーム内の熱気や臭いがカウルルーバに設けられた空気導入口を介して車室内へ侵入することが防止されるとともに、前記空間に溜まった枯葉や雪等の異物がエンジンルーム内に侵入することが防止され、またエンジンルームが被水する事態も防止される。
【0003】
このように、カウルルーバには気体と固体と液体の全てを遮断する機能が要求されるため、全体的にある程度の剛性が必要で、かつ先端部分には相手方に密着する弾力性が必要であることから、合成樹脂製のカウルルーバが用いられてきた。
【0004】
そこで、特許文献1には、フードの後端とカウルトップとの間の空間を遮蔽する自動車フードのシール構造の発明が開示されている。この自動車フードのシール構造においては、フードの後端から空間に向けて、形状保持可能な剛性を有し、かつ先端がカウルトップと上下方向で干渉しない位置関係にあるシール本体を形成し、シール本体の先端またはカウルトップのいずれか一方に、先端が他方側へ接触する弾性変形可能なリップを設けている。これによって、車両衝突時にフードに下向きの荷重が加わると、フードはシール本体ごと反力を発生させることなく下方へ移動し、衝突エネルギーを十分に吸収することができるとしている。
【0005】
しかし、この特許文献1に記載の技術においては、フロントガラスの下端部分のシール方法として、フロントガラスの左右全幅に亘るシール部をフロントガラスの下端表面に乗せるとともに、車両の左右方向に亘って一定間隔を置いてシール部と一体に設けた爪部で、フロントガラスの下端裏面から挟み込む構造となっている。このため、シール部とフロントガラス表面との間に段差が生じて、表面一体感が得られない。また、シール性能に関しても、爪部と爪部との間の部分においてはシール部の密着性が不足して、十分なシール性能が確保できないという問題点があった。
【0006】
これに対して、特許文献2に記載の車両ガラス用の封隙装置の発明においては、フロントガラスの下端部分に固定可能で、フロントガラスの表面と冷却水ボックスカバーの表面との間を滑らかに同一平面状にシールする成形体を用いる封隙装置の技術が開示されている。これによって、表面一体感を損なうことなく、フロントガラスの下端において十分なシール性能が確保できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−247186号公報
【特許文献2】特表2003−532574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術においては、封隙部(成形体)を予め両面テープを使用してフロントガラスの下端に接着しておく必要があり、また取付け剛性を確保するために封隙部の中には金属インサート・芯金が入れられていることから、フロントガラスの下端のラウンド形状に沿わせて取付けるには、予め下端のラウンド形状に合わせてペンディングする必要があるため、コスト高になってしまう。更に、上記特許文献2に記載の技術のように意匠面のみを考慮したものにおいては、車両衝突時にフードパネルに加わった衝撃や、フードパネルとフロントガラスの間のカウルルーバ自体に加わった衝撃を緩和することができないという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、取付けが容易で低コスト化することができ、フロントガラスとの間のシール性を向上させることができ、意匠性に優れるとともにシール性にも優れる車両用カウルルーバを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る車両用カウルルーバは、車体のフードパネル後端下部からフロントガラスの下端に延在する機能部分と、前記フードパネルと前記フロントガラス間に位置して前記機能部分の上に配置される意匠部分と、前記機能部分の後端に設けられた封隙部とを具備し、前記封隙部が、前記フロントガラスの下端面及び下端下面に密着し、かつ前記意匠部分の後端面に密着する、弾性を有するシール面を備えているものである。
【0011】
ここで、機能部分と意匠部分とは、単に機能部分の上に意匠部分が載置された状態で組み立てられても良いし、予め設けられた嵌合部材によって互いに嵌合して固定されても良い。
【0012】
また、弾性を有するシール面を形成する「弾性材料」としては、天然ゴム、合成ゴム、及びこれらを含んだエラストマーがある。「合成ゴム」としては、ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系等があり、より具体的にはアクリルゴム、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリイソブチレン(ブチルゴム)等がある。
【0013】
請求項2の発明に係る車両用カウルルーバは、請求項1の構成において、前記封隙部は、前記フロントガラスの下側に配されたカウルの上面と密着する弾性を有するシール面を備えているものである。
【0014】
請求項3の発明に係る車両用カウルルーバは、請求項1または請求項2の構成において、前記封隙部は、前記機能部分後端の上下面を挟み込んで固定されているものである。
【0015】
請求項4の発明に係る車両用カウルルーバは、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記封隙部には、前記機能部分後端と係止して一体となる係止部が設けられたものである。
【0016】
請求項5の発明に係る車両用カウルルーバは、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記意匠部分の後端部には、前記封隙部に挿入される突起を備えているものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に係る車両用カウルルーバは、車体のフードパネル後端下部からフロントガラスの下端に延在する機能部分と、フードパネルとフロントガラス間に位置して機能部分の上に配置される意匠部分と、機能部分の後端に設けられた封隙部とを具備し、封隙部が、フロントガラスの下端面及び下端下面に密着し、かつ意匠部分の後端面に密着する、弾性を有するシール面を備えている。
【0018】
このように、機能部分の後端には封隙部が設けられており、封隙部は弾性を有するシール面を備えていて、この弾性を有するシール面がフロントガラスの下端端面と下端裏面(下面)、及び意匠部分の後端面と密着していることで、カウルルーバとフロントガラス間のシール性及び意匠部分と封隙部間のシール性が確保される。特にフロントガラスと下端端面と、それに続く下端裏面(下面)をシールするシール面を封隙部が備えているため、カウルルーバとフロントガラス間のシール性は更に向上する。
【0019】
更に、機能部分の上に意匠部分が設けられたことから、車両用カウルルーバとしての外観は意匠部分によって決定されるため、機能部分の設計の自由度が増大する。
【0020】
このようにして、取付けが容易で低コスト化することができ、フロントガラスとの間のシール性を向上させることができ、意匠性に優れるとともにシール性にも優れる車両用カウルルーバとなる。
【0021】
請求項2の発明に係る車両用カウルルーバにおいては、封隙部が、フロントガラスの下側に配されたカウルの上面と密着する弾性を有するシール面を備えていることから、請求項1に係る発明の効果に加えて、フロントガラスの下側に配されたカウルの上面と封隙部との間のシール性が確保されて、カウルルーバとフロントガラスとの間のシール性が更に向上するという作用効果が得られる。
【0022】
請求項3の発明に係る車両用カウルルーバにおいては、封隙部が、機能部分後端の上下面を挟み込んで固定されていることから、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加えて、機能部分と封隙部との間のシール性が確保されて、カウルルーバとフロントガラスとの間のシール性が更に向上するという作用効果が得られる。
【0023】
請求項4の発明に係る車両用カウルルーバにおいては、封隙部には、機能部分後端と係止して一体となる係止部が設けられたことから、請求項1乃至請求項3に係る発明の効果に加えて、封隙部が容易に機能部分の後端に固定されて一体化が可能となるという作用効果が得られる。
【0024】
請求項5の発明に係る車両用カウルルーバにおいては、意匠部分の後端部には、封隙部に挿入される突起を備えていることから、請求項1乃至請求項4に係る発明の効果に加えて、この突起によって意匠部分に対する封隙部の位置が固定され、その位置を意匠部分の後端部の端面を封隙部の弾性を有するシール面が弾性力によってしっかりと密着する位置にすることで、意匠部分と封隙部間のシール性をより確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(a)は本発明の実施例1に係る車両用カウルルーバの全体構成を、車両の前後方向に沿って切断した断面の一部として示す断面図、(b)は実施例1に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【図2】図2(a)は従来の車両用カウルルーバの車体への取付け方法を説明するための説明図、(b)は本発明の実施例1に係る車両用カウルルーバの車体への取付け方法を説明するための説明図である。
【図3】図3は実施例1の変形例に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【図4】図4(a)は本発明の実施例2に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図、(b)は実施例2の変形例に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例3に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【図6】図6は本発明の実施例4に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る車両用カウルルーバを実施するための形態においては、フロントガラスの下端裏面(下面)からフードパネルの後端裏側(下面)に配される機能部分と、機能部分の上方に機能部分を覆うように設けられた意匠部分とを具備する必要がある。車両用カウルルーバの特に機能部分は、合成樹脂、中でも熱可塑性樹脂からなることが、射出成型法等による大量生産性及び軽量性の観点から好ましい。
【0027】
ここで、「合成樹脂」とは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を意味するものであり、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、等)・ポリスチレン・アクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む)・ABS樹脂・塩化ビニル樹脂・ポリ酢酸ビニル・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)・ポリアミド・ポリアセタール・ポリカーボネート・ポリエステル樹脂等があり、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂・エポキシ樹脂・メラミン樹脂・尿素樹脂・不飽和ポリエステル樹脂・アルキド樹脂・ポリウレタン・熱硬化性ポリイミド等がある。
【0028】
また、車両用カウルルーバの意匠部分も、射出成型法等による大量生産性、軽量性及び機能部分との一体化の容易さ等の観点から、合成樹脂、中でも熱可塑性樹脂からなることが望ましい。逆に、車両用カウルルーバの意匠性をより高くするために、意匠部分(特に外側)のみを合成樹脂以外の、より見栄えの良い高級な材料で構成することも可能である。ここで、本発明に係る車両用カウルルーバは、意匠部分と機能部分とが別体として形成された後一体化している。このように機能部分と意匠部分とを別々に製作した後組み付けることで、意匠部分はシール性等の機能上の制約を受ける必要がなくなり、設計しやすくなる。つまり、自由なデザイン設計が可能となり、意匠性を向上させることができる。
【0029】
また、機能部分には、雨樋等の、従来は車両用カウルルーバと別体で製作され、別途取付けられていた別体部品を一体化させることが好ましい。別体部品を機能部分と一体に製作し、一度に取付けることによって、製作コストを低減し製作工程を短縮することができる。
【0030】
更に、車両用カウルルーバの(機能部分の)前端部分には、弾性素材からなるシール部材を固定することによって、フードパネル後端下部と車両用カウルルーバとが密着して、シール性を確保することができるので、より好ましい。この場合、シール部材は専用のクリップ、または接着剤を用いて機能部分の前端部分に固定される。また、シール部材として、永久磁石及びそれと一体に成形された軟質樹脂またはエラストマーからなるものを用いるか、ゴム磁石(ボンド磁石)からなるものを用いることによって、鋼板製のフードパネルの後端下部に確実に密着してシール性を確保することができ、またシール部材が着脱可能となり、更に製造コストを低減することができるとともに部品点数がより少なくなって、組み立て効率をより向上させることができる。
【0031】
また、車両用カウルルーバの機能部分には、貫通させるワイパー軸よりも大きめの貫通孔を設け、意匠部分のみに貫通させるワイパー軸とほぼ同じ大きさの貫通孔を設けることが好ましい。これによって、組付けの際に、機能部分は下方向に移動させてワイパー軸を大きめの貫通孔に貫通させてから後端方向にスライドさせて取付け、意匠部分は下方向に移動させるのみで取付けることができるため、平行移動操作だけで組付けができることから、従来の回転移動操作で取付けていたカウルルーバに比べて、狭い空間でも取付けが可能になる。
【0032】
更に、機能部分の後端には、弾性を有する封隙部が設けられている。この封隙部は機能部分にしっかりと固定されて、機能部分とともに所定の位置に配置される。ここで、封隙部は弾性シール面を有しており、この弾性シール面がフロントガラスの下端端面と下端裏面(下面)、及び意匠部分の後端端面と密接するように組み付けられることで、カウルルーバとフロントガラス間のシール性及び意匠部分と封隙部間のシール性が確保される。特にフロントガラスの下端端面と、それに続く下端裏面(下面)をシールするシール面を封隙部が備えているため、カウルルーバとフロントガラス間のシール性は更に向上する。ここで、封隙部に機能部分の後端に係止する係止部が設けられていることが好ましい。これによって、封隙部は容易に機能部分の後端に固定されて一体化が可能となる。
【0033】
また、意匠部分の後端には、封隙部に挿入される突起を設けることができる。この突起によって意匠部分に対する封隙部の位置が固定される。そして、その位置は、意匠部分後端の端面を封隙部の弾性シール面が弾性力によってしっかりと密着するようになる位置にすることで、意匠部分と封隙部間のシール性をより確実にできる。この際、突起に封隙部に係止する係止部を形成すると、意匠部分と封隙部がこの係止部によってより強固に連結し、更に安定した一体化が可能となる。
また、意匠部分の後端には、機能部分の後端に一体的に留めるための留め具が設けられることが好ましい。これによって、意匠部分を容易に機能部分に固定することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例に係る車両用カウルルーバについて、図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらの実施例によって何らの限定をも受けるものではない。なお、各実施例及び各変形例において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する部分を意味し、実施例相互の同一の記号及び同一の符号は、それら実施例に共通する部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0035】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係る車両用カウルルーバについて、図1乃至図3を参照して説明する。
【0036】
図1(a)は本発明の実施例1に係る車両用カウルルーバの全体構成を、車両の前後方向に沿って切断した断面の一部として示す断面図、(b)は実施例1に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。図2(a)は従来の車両用カウルルーバの車体への取付け方法を説明するための説明図、(b)は本発明の実施例1に係る車両用カウルルーバの車体への取付け方法を説明するための説明図である。図3は実施例1の変形例に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【0037】
図1(a)に示されるように、本実施例1に係る車両用カウルルーバ1は、車体のフードパネル2の後端下部と、フロントガラス3の下端との間に設けられるものであり、意匠部分4、機能部分5及び封隙部6の三つの部分から構成されている。意匠部分4及び機能部分5のいずれも、熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン(PP)によって射出成形にて形成されている。
【0038】
機能部分5の前端は、車体のフードパネル2の後端下方まで延びており、機能部分5の前端上部には、合成ゴムとしてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)からなるシール部材7が、クリップ等によって機械的な固定や、接着剤によって固着されている。このシール部材7は、図1(a)の紙面垂直方向に棒状に延びている。
【0039】
また、図1(a)に示されるように、機能部分5は、フードパネル2の下部に位置してシール部材7と接するフードパネル2と略平行な平面を備えたシール取付け部12Aと、シール取付け部12Aからカウル8に向かって略U字形状の雨水を流す通路部12Bと、通路部12Bからフロントガラス3に向かって延びる底部12Cとを備えている。底部12Cの後端部には、フロントガラス3の下端下側(下面)に密着する封隙部6を固定して一体化するための凹凸状に形成された係止部5bが予め形成されている。また、封隙部6には係止部5bに対応して係止できる係止部10aを備えている。これによって、封隙部6は、底部12Cの後端部に容易に組み付けられて固定される。
【0040】
通路部12Bは、略U字形状の二つの直線部に相当する直立部分(縦壁)5aによってシール取付け部12Aの後端と底部12Cの前端に繋がっている。また、通路部12Bからフロントガラス3に向かって延びる底部12Cは下に湾曲した形状をしているため、通路部12Bと底部12Cの連結部分は凸形状をしている。
【0041】
意匠部分4は、通路部12Bの底部12Baに繋がる直立部分5aを延長した線上に延びた壁部13Aと、壁部13Aからフロントガラス3に向かって所望の形状に設計された意匠部13Bと、フロントガラス3の下側に密着する封隙部6に当接する当接部13Cとを備えている。そして、意匠部分4は、意匠部分4の裏面に固定されたクリップ等の留め具によって機能部分5の底部12Cに固定されている。このようにカウルルーバを機能部分とは別に意匠部分を製作することによって、自由なデザイン意匠を確保できる。
【0042】
そして、図1(b)に示されるように、封隙部6はカウルルーバ1の機能部分5の後端部に取り付けられて、意匠部分4の後端面(更に詳細には当接部13Cの後端面)とフロントガラス3の下端面3aの間、及びフロントガラス3の下端下面3bとカウルアッパー9の間を塞ぐように配置されている。このとき封隙部6は、当接部13Cの後端面、フロントガラス3の下端面3a、フロントガラス3の下端下面3b、カウルアッパー9の上面のそれぞれに密着するように配されているため、カウルルーバ1とフロントガラス3のシール性が確保される。
【0043】
特に、実施例1ではフロントガラス3の下端面3aとこれに続くフロントガラス3の下端下面3bを密着してシール性を確保しているが、更にカウルアッパー9の上面をも密着してシールしているため、よりシール性に対する信頼性が増している。以上のように、封隙部6には、意匠部分の当接部13Cの後端面、フロントガラス3の下端面3a、フロントガラス3の下端下面3b、カウルアッパー9の上面と密着する面を備えていて、これらの密着面がシール面となる。そして、このシール面を有するシール部は優れた密着性を持つ弾性を有しており、そのため熱可塑性エラストマー(TPE)等の合成樹脂やスチレン−ブタジエンゴム(SBR)等のゴム材料等の弾性材料を用いて作製されている。
【0044】
また、封隙部6はカウルルーバ1の後部にしっかりと固定するために、機能部分5の後端部を挟み込むような略U字形状をした基部10を有し、更に、この略U字形状の一部には凹凸状の係止部10aが設けられている(もちろん機能部分5の後端部には係止部10aに対応する凹凸状の係止部が設けられている)。この係止部10aを含んだ略U字形状の基部10は剛性を有するポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂を用いて作製されているため、機能部分5の後端部にしっかりと固定される。つまり封隙部6は機能部分5に固定される略U字形状の基部10が剛性を有する硬質材料で作製され、その外側部(シール部)が弾性を有する軟質材料で作製された2層構造になっている。
【0045】
なお、実施例1の封隙部6は軟・硬質材料の2層構造に限定するものではなく、軟質材料のみで作製することもあり得る。この場合の機能部分5への固定は、実施例1のような機能部分5に設けられた係止部との機械的な結合以外に接着剤等による固着が利用できる。更に、封隙部6は、フロントガラス3の下端面3a及び意匠部分4の当接部13Cの端面に挟まれた部分には、弾性変形をし易くして密着性を高めるために中空部6aが設けられている。また、封隙部6は、意匠部分4の当接部13Cに設けられた突起4aの挿入によって封隙部6のシール面が意匠部分4の当接部13Cの端面に弾性的に密着し、所望のシール性を発現させている。
【0046】
以上述べたように、封隙部6はカウルルーバ1の後部にしっかりと一体的に固定され、またフロントガラス3とカウルアッパー(ボディーの一部)9との間に嵌挿されて抜けにくくなっている。また、意匠部分4、機能部分5、封隙部6は、いずれも図1(a),(b)の紙面垂直方向に沿って、車体の全幅に亘って延びている。したがって、フロントガラス3の下端部分は、フロントガラス3の下端面及び下端裏面並びにカウルアッパー9に密着した封隙部6によって、高度なシール性が保持されている。
【0047】
更に、かかる構造を有することによって、本実施例1に係る車両用カウルルーバ1は、図2に示されるように、従来の車両用カウルルーバと比較して取付けが容易になる。すなわち、図2(a)に示されるように、従来の車両用カウルルーバ20は、貫通させるワイパー軸15とほぼ同じ大きさの貫通孔20aを設ける必要があったため、車両用カウルルーバ20の端に設けられたシール部21及び爪部22によってフロントガラス3の下端を挟み込みながら、貫通孔20aにワイパー軸15を貫通させつつ、矢印Rで示されるように車両用カウルルーバ20を回転させて組付ける必要があり、組付け工程において大きなスペースを必要としていた。
【0048】
これに対して、本実施例1に係る車両用カウルルーバ1は意匠部分4と機能部分5との二重構造であることから、図2(b)に示されるように、車両用カウルルーバ1の機能部分5には貫通させるワイパー軸15よりも大きめの貫通孔12aを設け、意匠部分4のみにワイパー軸15とほぼ同じ大きさの貫通孔13aを設けることによって、機能部分5は矢印Aで示されるように、下方向に移動させてワイパー軸15を大きめの貫通孔13aに貫通させてから後端方向にスライドさせて取付け、意匠部分4は矢印Bで示されるように、下方向に移動させて取付けることができるため、平行移動操作だけで組付けができることから、狭いスペースでも取付けが可能になる。
【0049】
次に、本実施例1の第1変形例に係る車両用カウルルーバについて、図3を参照して説明する。本実施例1の第1変形例に係る車両用カウルルーバ1Aの全体構造は、上記実施例1に係る車両用カウルルーバ1とほぼ同様である。異なるのは、図3に示されるように、封隙部6のフロントガラス3の下端面に対応する部分に、中空部6aが設けられておらず、中実となっている点である。その代わりに、より弾性変形をし易い弾性材料としてオレフィン系エラストマー(TPO)等の軟質系熱可塑性エラストマーやニトリルゴム(NBR)を使用することによって、密着性を高めている。中空部6aを設けないことによって、封隙部6の押し出し成形がより容易になるという作用効果がある。
【0050】
このようにして、本実施例1及びその変形例に係る車両用カウルルーバ1,1Aは、取付けが容易で低コスト化することができ、フロントガラスとの間のシール性を向上させることができるとともに、フロントガラスとの表面一体性にも優れる。
【0051】
また、本実施例1及びその変形例に係る車両用カウルルーバ1,1Aは、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンを用いて射出成形にて形成していることから、車両用カウルルーバに要求される剛性・耐候性・低コスト性・リサイクル性を容易に満たすことができる。
【0052】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係る車両用カウルルーバについて、図4を参照して説明する。図4(a)は本発明の実施例2に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図、(b)は実施例2の変形例に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【0053】
図4(a)に示されるように、本実施例2に係る車両用カウルルーバ1Bは、上記実施例1及びその変形例に係る車両用カウルルーバ1,1Aと同様に、車体のフードパネル2の後端下部とフロントガラス3の下端との間に設けられるものであり、意匠部分4A、機能部分5及び封隙部6Bの三つの部分から構成されている。意匠部分4A及び機能部分5のいずれも、熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン(PP)を一体に射出成形してなり、封隙部6Bは基部10Aをポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、シール部をTPO等の弾性材料にて押出し成形してなり、図示されない全体の構成は、車両用カウルルーバ1,1Aと同様である。
【0054】
異なるのは、意匠部分4Aを機能部分5に係止する方法として、上記実施例1のような別体クリップ11を用いず、図4(a)に示されるように、意匠部分4Aの後端部に位置する当接部13Cの下面に設けられて封隙部6Bに挿入される突起に、機能部分5の後端部に固定されて一体化する封隙部6Bの基部10Aに係止される係止部4Aaを設けた点である。これによって、別体クリップ11を用いる必要がなくなるため、部品点数が減少し、車両用カウルルーバ1Bをより低コスト化することができる。
【0055】
更に、本実施例2の変形例に係る車両用カウルルーバ1Cにおいては、図4(b)に示されるように、別体クリップ11を用いないだけでなく、意匠部分4Bの成形用金型において、金型のスライド機構を用いなくて済む形状の係止部4Baを設けている。すなわち、図4(a)に示される意匠部分4Aの後端部の形状においては、意匠部分4Aの上下方向にも前後方向にもアンダーカットが生ずるため、成形用金型にスライド機構を用いる必要がある。
【0056】
これに対して、図4(b)に示される意匠部分4Bの後端部の形状においては、意匠部分4Bの前後方向にのみアンダーカットが生ずることから、係止部4Baに沿った上下の線で金型を分割することによって、成形用金型にスライド機構を用いる必要がない。これによって、成形用金型の製造コスト及びランニングコストが更に低減され、車両用カウルルーバ1Cをより一層低コスト化することができる。
【0057】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係る車両用カウルルーバについて、図5を参照して説明する。図5は本発明の実施例3に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【0058】
図5に示されるように、本実施例3に係る車両用カウルルーバ1Dは、上記実施例1及びその変形例に係る車両用カウルルーバ1,1Aと同様に、車体のフードパネル2の後端下部とフロントガラス3の下端との間に設けられるものであり、意匠部分4B、機能部分5及び封隙部6Dの三つの部分から構成されている。意匠部分4B及び機能部分5のいずれも、熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンを一体に射出成形してなり、封隙部6Dは基部10Bをポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、シール部をTPO等の弾性材料にて押出し成形してなり、図示されない全体の構成は車両用カウルルーバ1,1Aと同様である。
【0059】
図5に示されるように、本実施例3に係る車両用カウルルーバ1Dが、上記実施例2の変形例に係る車両用カウルルーバ1Cと比較して異なるのは、封隙部6Dの断面形状のみである。すなわち、封隙部6Dの表面側の一部がフロントガラス3の下端表面(上面)の上にせり出す形状となっている。これによって、封隙部6Dがフロントガラス3の下端表面をもシールすることになるため、よりシール性に優れた車両用カウルルーバ1Dとなる。
【0060】
[実施例4]
次に、本発明の実施例4に係る車両用カウルルーバについて、図6を参照して説明する。図6は本発明の実施例4に係る車両用カウルルーバの後端部を拡大して示す断面図である。
【0061】
図6に示されるように、本実施例4に係る車両用カウルルーバ1Eは、上記実施例1及びその変形例に係る車両用カウルルーバ1,1Aと同様に、車体のフードパネル2の後端下部とフロントガラス3の下端との間に設けられるものであり、意匠部分4、機能部分5及び封隙部6Eの三つの部分から構成されている。意匠部分4及び機能部分5のいずれも、熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンを一体に射出成形してなり、封隙部6EはTPO等の弾性材料にて押出し成形してなり、図示されない全体の構成は車両用カウルルーバ1,1Aと同様である。
【0062】
図6に示されるように、本実施例4に係る車両用カウルルーバ1Eが、上記実施例1の変形例に係る車両用カウルルーバ1Aと異なるのは、封隙部6Eの断面形状、及び基部10がない点である。すなわち、車両用カウルルーバ1Eにおいては、機能部分5の後端部に設けられた係止部分5bが、そのまま結合部として機能している。したがって、材料点数が少なくなって、車両用カウルルーバ1Eをより低コスト化することができる。
【0063】
また、図6に示されるように、封隙部6Eの後端の上下にヒレ状の突出部6Eaが突出しており、これによってヒレ状の突出部6Eaが変形容易であるため、封隙部6Eの後端をフロントガラス3とカウルトップ9の間に挿入する際の挿入性に優れるとともに、一旦挿入した後は抜け難くなるという作用効果が得られる。
【0064】
上記各実施例においては、車両用カウルルーバ1,1A,1B,1C,1D,1Eの大部分を構成する材料として、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン(PP)を使用した場合についてのみ説明したが、熱可塑性樹脂としては他にも、ポリエチレン・ポリスチレン・アクリル樹脂・ABS樹脂・塩化ビニル樹脂・ポリ酢酸ビニル・ポリアミド・ポリアセタール・ポリカーボネート・ポリエステル樹脂等を用いることができる。また、成形方法は射出成形法に限られるものではなく、更に材質も熱可塑性樹脂に限られるものではない。
【0065】
本発明を実施するに際しては、車両用カウルルーバのその他の部分の構成、材質、形状、数量、大きさ、製造方法等についても、上記各実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施例で挙げている数値は臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B,1C,1D,1E 車両用カウルルーバ
2 フードパネル
3 フロントガラス
4 意匠部分
5 機能部分
6,6A,6B,6C,6D,6E 封隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフードパネル後端下部からフロントガラスの下端に延在する機能部分と、前記フードパネルと前記フロントガラス間に位置して前記機能部分の上に配置される意匠部分と、前記機能部分の後端に設けられた封隙部とを具備し、
前記封隙部が、前記フロントガラスの下端面及び下端下面に密着し、かつ前記意匠部分の後端面に密着する、弾性を有するシール面を備えていることを特徴とする車両用カウルルーバ。
【請求項2】
前記封隙部は、前記フロントガラスの下側に配されたカウルの上面と密着する弾性を有するシール面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用カウルルーバ。
【請求項3】
前記封隙部は、前記機能部分後端の上下面を挟み込んで固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用カウルルーバ。
【請求項4】
前記封隙部には、前記機能部分後端と係止して一体となる係止部が設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の車両用カウルルーバ。
【請求項5】
前記意匠部分の後端部には、前記封隙部に挿入される突起を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の車両用カウルルーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−140279(P2011−140279A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2713(P2010−2713)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】