説明

車両用カップホルダー構造

【課題】カップホルダーの構成部品である容器保持部材をコンソールトレイに着脱可能に構成し、取り外した容器保持部材の保管部位を新たに設ける必要のない車両用カップホルダー構造を提供する。
【解決手段】コンソールトレイの収納部25に容器保持部材49を着脱可能に設け、容器保持部材49を、容器を保持する容器保持状態と格納状態とで保持位置を変えるようにした車両用カップホルダー構造である。前記容器保持部材49に係合部を設け、コンソールトレイの後側トレイ5に前記係合部に係合可能な容器保持用被係合部と格納用被係合部を設け、前記係合部は、弾性を有する長尺状の板状部材からなる複数の片持ち梁部を互いに直交配置させて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用カップホルダー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンソールトレイに形成された凹部をカップホルダーとして用いる構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載されたカップホルダーは、コンソールトレイの後端部の上面に凹部を形成すると共に、該凹部の内面に缶押えを取り付けて凹部の内部空間を2分割し、径が大きい缶と小さい缶とを同時に収納可能に保持している。
【特許文献1】特開平10−203225号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の車両用カップホルダー構造では、缶押えを取り外した場合に、その缶押えを保管する場所がないという問題がある。また、コンソールトレイに、缶押えの保管のみを行う保管部位を新たに形成するとコストアップの要因となる。
【0005】
そこで、本発明は、カップホルダーの構成部品である容器保持部材を簡単な構造でコンソールトレイに着脱可能に構成し、取り外した容器保持部材の保管部位を新たに設ける必要のない車両用カップホルダー構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用カップホルダー構造は、コンソールトレイの収納部と、該収納部に着脱可能に設けた容器保持部材とを備え、該容器保持部材を、容器を保持する容器保持状態と格納状態とで保持位置を変えるようにした車両用カップホルダー構造であって、前記容器保持部材およびコンソールトレイのうちの一方側に係合部を設け、他方側に前記係合部に係合可能な容器保持用被係合部と格納用被係合部を設け、前記係合部は、弾性を有する長尺状の板状部材からなる複数の片持ち梁部を互いに交差する向きに配設して構成され、この片持ち梁部が、容器保持用被係合部または格納用被係合部に押圧されて係合されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用カップホルダー構造によれば、前記係合部が弾性を有する長尺状の板状部材からなる複数の片持ち梁部を互いに交差する向きに配設して構成され、前記容器保持部材およびコンソールトレイのうちの一方側に係合部を設け、他方側に前記係合部に係合可能な容器保持用被係合部と格納用被係合部を設けている。
【0008】
従って、簡単な構造で、容器を保持する容器保持状態を構成することができ、また、容器保持部材を使用しないときは、収納部に格納させることができる。また、前記係合部は、弾性を有する長尺状の板状部材からなる複数の片持ち梁部を互いに交差する向きに配設して構成されているため、前記容器保持部材を使用するときには、前記複数の片持ち梁部の一方の長手方向に沿って容器保持部材をコンソールトレイの収納部にスライドさせ、前記容器保持部材を格納するときには、前記複数の片持ち梁部の他方の長手方向に沿って容器保持部材をコンソールトレイの収納部にスライドさせれば良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
図1は本発明の実施形態によるコンソールトレイを示す斜視図、および、図2は図1の後側トレイを示す斜視図である。
【0011】
このコンソールトレイ1は、車両前方側に配設された前側トレイ3と、該前側トレイ3の車両後方に配置された後側トレイ5と、から構成されている。また、コンソールトレイ1は、車室内の前部に配設されたインストルメントパネル7を構成するセンタークラスター9に一体に接続されている。
【0012】
具体的には、前記センタークラスター9の室内側(車両後方側)の側面には、引き出し式の灰皿11が配設され、該灰皿11の下部には収納扉13が開閉可能に配設されており、センタークラスター9の下端部に前側トレイ3が一体形成されている。
【0013】
この前側トレイ3は下方に凹む凹部によって構成され、該凹部は、平坦な底面15と、該底面15の周縁部から上方に延設される縦壁面17とから構成される。
【0014】
後側トレイ5は前側トレイ3の後端部に接続されている。後側トレイ5においては、図2にも示すように、平面視略矩形状に形成された平坦な底面19と、該底面19の左右両端から上方に延びる側壁面21と、車両後方側の端部から上方に延びる後壁面23とから収納部25が構成されている。さらに、収納部25は、車両前方側に配置された前部27と車両後方側に配置された後部29とからなり、前部27の底面19には、前後に所定間隔をおいて配置された一対の突出部31,31が車幅方向に延びて形成されている。また、前部27の側壁面21は、後部29の側壁面21の高さよりも低く設定してあり、後壁面23の高さは、前部27の側壁面21と後部29の側壁面21の間の高さに設定している。
【0015】
また、後部29の側壁面21の内面には、前端と後端に、上下方向に延びる格納用溝部33,35が形成されている。それぞれの格納用溝部33,35には、上端に格納用被係合部である支持穴37が形成され、下端に、容器保持部材を格納する際に位置決めを行う格納用係合凸部39,41が形成されている。
【0016】
そして、前後の格納用溝部33,35の間には、内方に突出する突出壁43が設けられ、該突出壁43の上面に別の係合凸部45が形成されており、この係合凸部45は、容器保持部材を使用する際に位置決めを行う容器保持用係合凸部45である。また、容器保持用係合凸部45と後側の格納用溝部35との間には、容器保持用被係合部である係止穴47が形成されている。
【0017】
図3は本発明の実施形態による容器保持部材を示す斜視図、図4は図3の係合部を拡大した正面図、図5は図4のA−A線による断面図、および、図6は図4のB−B線による断面図である。
【0018】
図3に示すように、この容器保持部材49は、平面視略矩形の環状に形成されており、内周面に、収納孔77を左右に分けて保持する分離突起51が平面視略三角状に形成されている。また、容器保持部材49を構成する本体部53の左右両側に配置された側面には、弾性を有する板状部材55が配置されており、該板状部材55の下端は切欠きが形成されて該切欠きによって容器保持用係合凹部59が構成されている。この容器保持用係合凹部59は、図2に示す容器保持用係合凸部45に係合可能に構成されている。
【0019】
また、図3,4に示すように、係合部101を容器保持部材49に設けると共に、この係合部101を互いに直交する向きに延在する2つの片持ち梁部161,163から構成している。
【0020】
具体的には、図4に示すように容器保持部材49を側方から見た場合に、本実施形態による係合部101は、容器保持部材49の側面の長手方向に沿って延びる第1片持ち梁部161と、該第1片持ち梁部161の長手方向中央部から下方に延びる第2片持ち梁部163とで一体に形成されている。これらの第1片持ち梁部161と第2片持ち梁部163とは、正面視略矩形状の板状部材55の中央部を切り欠いて形成されている。前記第1片持ち梁部161においては、図4における右端部が基部161aとなって左端部161bが揺動可能に構成されている。第2片持ち梁部163においては、図4における下端部が基部163aとなって上端部163bが揺動可能に構成されている。また、ロック用突起63は、第1片持ち梁部161の長手方向中央部に突設されている。
【0021】
図5に示すように、板状部材55の背面側には、本体部53に形成された凹部65が配置されており、該凹部65の底面67に板ばね69が設けられている。この板ばね69は、側面視略半円状に形成されており、図5の左端部に形成されたフランジ79がボルト71によって凹部65の底面67に固定され、右端部のフランジ81が凹部65の底面67にスライド可能に当接している。また、図5,6に示すように、板ばね69の頂部73は第1片持ち梁部161と第2片持ち梁部163との交差部分の裏面に当接しているため、第1片持ち梁部161は板ばね69によって外方に向けて付勢されている。即ち、第1片持ち梁部161に内方(図5の下方向)に向けて荷重が加わると、板ばね69が撓むために反力が作用し、第1片持ち梁部161を外方(図5の上方向)に押圧する。なお、ロック用突起63は、図2に示す支持穴37,38および係止穴47に嵌合可能に構成されており、格納用係合凹部75は、図2に示す格納用係合凸部39,41に係合可能に構成されている。
【0022】
次いで、本実施形態による容器保持部材49の保持形態について説明する。
【0023】
図7は容器保持部材をコンソールトレイの収納部における容器保持状態の位置に保持した状態を示す斜視図、図8は容器保持部材をコンソールトレイの収納部における格納状態の位置に保持した状態を示す斜視図、および、図9は容器保持部材をコンソールトレイの収納部における格納状態の別の位置に保持した状態を示す斜視図である。
【0024】
まず、容器保持部材49を使用する際には、図2,3に示す容器保持部材49の容器保持用係合凹部59をコンソールトレイ1の容器保持用係合凸部45に係合させると共に、容器保持部材49のロック用突起63をコンソールトレイ1の係止穴47に係合させる。これによって、図7に示す容器保持部材49の使用状態となり、容器保持部材49に設けられた収納孔77に図外の容器を挿入して保持することができる。
【0025】
この場合は、図3,4に示す第2片持ち梁部163の長手方向に沿ってスライド移動して板ばね69の反力によってロック用突起63が外方に押圧され、該ロック用突起63が係止穴47に係合される。
【0026】
次に、容器保持部材49をコンソールトレイ1に格納する場合は、図8,9に示す保持状態とする。図8の場合は、後側トレイ5の後部の前端に容器保持部材49を縦方向に保持する形態であり、図9の場合は、後側トレイ5の後部の後端に容器保持部材49を縦方向に保持する形態である。
【0027】
即ち、図8の場合は、図2,3に示すように容器保持部材49を縦方向に配置し、そのままの状態で図2の前側の格納用溝部33に嵌合した下方にスライド移動させることによって、格納用係合凹部75をコンソールトレイ1の格納用係合凸部39に係合させると共に、容器保持部材49のロック用突起63をコンソールトレイ1の支持穴37に係合させる。これによって、図8に示す容器保持部材49の格納状態となる。これは、容器保持部材49を後側トレイ5を前後に仕切る仕切板として機能させることができる。なお、この場合は、図3,4に示す第1片持ち梁部161の長手方向に沿ってスライド移動して板ばね69の反力によってロック用突起63が外方に押圧され、該ロック用突起63が支持穴37に係合される。
【0028】
また、図9の場合は、図2,3に示すように容器保持部材49を縦方向に配置し、そのままの状態で図2の後側の格納用溝部35に嵌合して下方にスライド移動させることによって、格納用係合凹部75をコンソールトレイ1の格納用係合凸部41に係合させると共に、容器保持部材49のロック用突起63をコンソールトレイ1の支持穴38に係合させる。これによって、図9に示す容器保持部材49の格納状態となる。この場合は、容器保持部材49をコンソールトレイ1の後端部に配置することによって、トレイの収納容量を拡大することができる。ここでも、図3,4に示す第1片持ち梁部161の長手方向に沿ってスライド移動して板ばね69の反力によってロック用突起63が外方に押圧され、該ロック用突起63が支持穴38に係合される。
【0029】
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
【0030】
(1)容器保持部材49に設けられた係合部101は、弾性を有する長尺状の板状部材からなる第1片持ち梁部161と該第1片持ち梁部161に直交する第2片持ち梁部163とから構成されている。従って、前記容器保持部材49の使用時には、前記第2片持ち梁部163の長手方向に沿って容器保持部材49をコンソールトレイ1の収納部25にスライドさせて保持し(図7参照)、前記容器保持部材49の格納時には、前記第1片持ち梁部161の長手方向に沿って容器保持部材49をコンソールトレイ1の収納部25にスライドさせて保持すれば良いため(図8,9参照)、使い勝手が非常に良好となる。
【0031】
特に本実施形態では、係合部101を、互いに直交する第1片持ち梁部161と第2片持ち梁部163とから構成したため、容器保持部材149の厚さ方向と該厚さ方向に直交する方向とのいずれにもスライドさせることによって、容器保持部材49をコンソールトレイ1に保持することができる。このように、容器保持部材49を、その使用状態と格納状態とに適宜使い分けることができ、また、係合部として長尺状の第1片持ち梁部161および第2片持ち梁部163を使用するため、簡素な構造となって部品点数の削減および製造工数の低減を図ることができる。なお、図8に示す格納状態では、容器保持部材49を、後側トレイ5内の収納部25を前後に2分割する仕切板として活用できる。また、図9に示す格納状態では、容器保持部材49を後側トレイ5内の収納部25の後端部に配置することにより、収納部の容積を最大限に拡大することができる。
【0032】
(2)コンソールトレイ1の収納部25に容器保持用係合凸部45を設け、容器保持部材49に前記容器保持用係合凸部45に係合可能な容器保持用係合凹部59を設け、前記容器保持部材49をコンソールトレイ1の収納部25に保持させる際に、前記容器保持用係合凸部45を容器保持用係合凹部59に係合させるようにしている。
【0033】
このため、容器保持部材49をコンソールトレイ1の収納部25に保持する際に、位置決めを簡単でかつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態によるコンソールトレイを示す斜視図である。
【図2】図1の後側トレイを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による容器保持部材を示す斜視図である。
【図4】図3の係合部を拡大した正面図である。
【図5】図4のA−A線による断面図である。
【図6】図4のB−B線による断面図である。
【図7】容器保持部材をコンソールトレイの収納部における容器保持状態の位置に保持した状態を示す斜視図である。
【図8】容器保持部材をコンソールトレイの収納部における格納状態の位置に保持した状態を示す斜視図である。
【図9】容器保持部材をコンソールトレイの収納部における格納状態の別の位置に保持した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…コンソールトレイ
25…収納部
37,38…支持穴(格納用被係合部)
39,41…格納用係合凸部(係合凸部)
45…容器保持用係合凸部(係合凸部)
47…係止穴 (容器保持用被係合部)
49…容器保持部材
59…容器保持用係合凹部(係合凹部)
75…格納用係合凹部(係合凹部)
161…第1片持ち梁部(係合部)
163…第2片持ち梁部(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンソールトレイの収納部に容器保持部材を着脱可能に設け、容器保持部材を、容器を保持する容器保持状態と格納状態とで保持位置を変えるようにした車両用カップホルダー構造であって、
前記容器保持部材およびコンソールトレイのうちの一方側に係合部を設け、他方側に前記係合部に係合可能な容器保持用被係合部と格納用被係合部を設け、
前記係合部は、弾性を有する長尺状の板状部材からなる複数の片持ち梁部を互いに交差する向きに配設して構成され、この片持ち梁部が、容器保持用被係合部または格納用被係合部に押圧されて係合され、
前記容器保持部材を使用するときには、前記複数の片持ち梁部の一方の長手方向に沿って容器保持部材をコンソールトレイの収納部にスライドさせて前記係合部を容器保持用被係合部に係合させることにより、容器保持部材をコンソールトレイの収納部における容器保持状態の位置に保持し、
前記容器保持部材を格納するときには、前記複数の片持ち梁部の他方の長手方向に沿って容器保持部材をコンソールトレイの収納部にスライドさせて前記係合部を格納用被係合部に係合させることにより、容器保持部材をコンソールトレイの収納部における格納状態の位置に保持するように構成したことを特徴とする車両用カップホルダー構造。
【請求項2】
前記容器保持部材およびコンソールトレイの収納部の一方側に係合凸部を設け、他方側に前記係合凸部に係合可能な係合凹部を設け、前記容器保持部材をコンソールトレイの収納部に保持させる際に、前記係合凸部を係合凹部に係合させてそれぞれの位置決めを行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車両用カップホルダー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−132081(P2010−132081A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308814(P2008−308814)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】