説明

車両用ガラス温度センサーの設置構造

【課題】車室内の美観を損なうことなくフロントガラスの温度を正確に測定することができる車両用ガラス温度センサーの設置構造を提供すること。
【解決手段】車室内のフロントガラスに金属台座を介して取り付けられたルームミラー2を備えた車両の前記フロントガラスの温度を測定するための車両用ガラス温度センサー9の設置構造として、前記フロントガラスに取り付けられた前記金属台座に係合する前記ルームミラー2のステー7(又はこれを覆う台座カバー)に前記ガラス温度センサー9を組み込む。例えば、前記ガラス温度センサー9を前記ルームミラー2のステー7内に前記金属台座に近接させて配置する。又は、前記ガラス温度センサー9を前記ルームミラー2の台座カバー内に前記フロントガラスに近接させて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内のフロントガラスに金属台座を介して取り付けられたルームミラーを備えた車両の前記フロントガラスの温度を測定するための車両用ガラス温度センサーの設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラスの結露を防止するために、車室内の湿度とフロントガラスの温度を測定し、測定されたフロントガラス温度から露点を推定し、その露点に応じてエアコンディショナー(以下、「エアコン」と略称する)のコンプレッサーの駆動をON/OFF制御するシステムが提案されている。斯かるシステムにおいてフロントガラス温度を直接測定することは困難であるため、従来はエアコン制御上必要である外気温度や日射量等のセンサーによる測定結果からフロントガラス温度を推定することが行われている(特許文献1,2参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1には、推定されるフロントガラス温度に対して、想定される吹き出し温度がフロントガラスに与える影響を加味してフロントガラス温度を推定する方法が提案されており、特許文献2には、外気温度からフロントガラス温度を推定する方法が提案されている。
【0004】
又、特許文献3には、フロントガラス温度を高精度に測定するために、フロントガラス周縁のセラミックプリントの箇所に設けられたセンサーによって車室内の湿度とフロントガラスの温度を直接測定する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−312228号公報
【特許文献2】特開平10−044763号公報
【特許文献3】特開2007−276693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1,2において提案されている外気温度や日射量等のセンサーによる測定結果からフロントガラス温度を推定する方法では、例えば車速やエンジン温度等の他のファクターから受ける影響によってフロントガラス温度の推定値の誤差が大きくなるという問題がある。
【0006】
又、特許文献3において提案されているフロントガラス温度を直接測定する方法では、セラミックプリント部に設置されたセンサーがドライバから見えるために見栄えが悪く、商品性が低下する他、セラミックプリントが設けられた位置はフロントガラスの周縁であるために金属製の車体からの熱引きが考えられ、フロントガラスの温度を正確に測定することが不可能であるという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、車室内の美観を損なうことなくフロントガラスの温度を正確に測定することができる車両用ガラス温度センサーの設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車室内のフロントガラスに金属台座を介して取り付けられたルームミラーを備えた車両の前記フロントガラスの温度を測定するための車両用ガラス温度センサーの設置構造として、前記フロントガラスに取り付けられた前記金属台座に係合する前記ルームミラーのステー又はこれを覆う台座カバーに前記ガラス温度センサーを組み込んだことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ガラス温度センサーを前記ルームミラーのステー内に前記金属台座に近接させて配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ガラス温度センサーを前記ルームミラーの台座カバー内に前記フロントガラスに近接させて配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ガラス温度センサーはルームミラーの台座カバーによって覆われ、車室内に露出して乗員や車体外部の第三者の目に触れることがないため、該ガラス温度センサーによって車室内の見栄えが悪くなって車両の商品性が低下することがない。そして、ガラス温度センサーをフロントガラスに取り付けられた金属台座に係合するルームミラーのステー又はこれを覆う台座カバーに組み込んだため、フロントガラスの温度をガラス温度センサーによって正確に測定して露点を求めることができ、その露点に応じてエアコンのコンプレッサーの駆動を適正にON/OFF制御してフロントガラスの結露を確実に防ぐことができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、フロントガラスの熱は金属台座を経てガラス温度センサーに伝わるため、ガラス温度センサーによってフロントガラスの温度を正確に測定することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、フロントガラスの熱はガラス温度センサーに直接伝わるため、ガラス温度センサーによってフロントガラスの温度を一層正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係るガラス温度センサーの設置構造を備えた車両のルームミラー部分の側面図、図2はルームミラーの取付部構造を示す分解側面図、図3はルームミラーの取付要領を示す部分側面図、図4は本発明の実施の形態1に係るガラス温度センサーの設置構造を示すルームミラーの斜視図、図5は同ガラス温度センサーの設置構造とフロントガラス温度の測定原理を示すルームミラー取付部の分解側面図である。
【0016】
図1に示すように、車室S内のフロントガラス1の上部内面の車幅方向(図1の紙面垂直方向)中央にはルームミラー(バックミラー)2が取り付けられており、このルームミラー2は、フロントガラス1の内面に取り付けられる取付部3と、該取付部3から車両後方(図1の左方)に延びるアーム4及び該アーム4の先端に回動可能に取り付けられたミラー本体5で構成されている。
【0017】
ここで、上記ルームミラー2の取付部3は、図2に示すように、フロントガラス1の内面上部の車幅方向中央に貼り付けられる矩形プレート状の金属台座6と、該金属台座6に係合によって取り付けられる樹脂製のステー7及び該ステー7を覆う樹脂製の台座カバー8によって構成されており、図4に示すように、ステー7の取付面には左右一対の係合部7aとバネ性を有する係合爪7bが設けられている。
【0018】
而して、ルームミラー2は、図3に示すように、フロントガラス1の内面上部に貼り付けられた金属台座6に対してステー7を図示矢印方向に係合させることによってフロントガラス1の内面上部の車幅方向中央にスナップイン方式によって取り付けられる。具体的には、ステー7に形成された左右一対の前記係合部7a(図4参照)を金属台座6の両側部に形成された不図示の係合溝に係合させた状態で、ルームミラー2の全体を図3の矢印方向にスライドさせる。そして、ステー7の係合部の終端が金属台座6の係合溝に係合すると、ステー7の係合爪7bが金属台座6の端面に係合してステー7が確実に金属台座6に固定されて金属台座6からの脱落が防がれ、このようにしてルームミラー2がスナップイン方式によって金属台座6を介してフロントガラス1の内面上部の車幅方向中央に取り付けられる。
【0019】
以上の取付構造によってフロントガラス1の内面上部に取り付けられたルームミラー2のステー7の凹部には、図4に示すように、フロントガラス1の温度を測定するためのガラス温度センサー9が金属台座6に近接して組み込まれている。尚、本実施の形態では、ガラス温度センサー9は金属台座6に接触した状態でステー7内に組み込まれている。又、図1に示すように、ガラス温度センサー9から延びる電気信号ケーブル(ハーネス)10は、ルーフ11内を通って不図示の制御回路部に接続されている。
【0020】
而して、本実施の形態によれば、フロントガラス1の温度を測定するためのガラス温度センサー9はステー7内に組み込まれ、ステー7は台座カバー8によって覆われているため、該ガラス温度センサー9が車室S内に露出して乗員や車体外部の第三者の目に触れることがなく、従って、ガラス温度センサー9によって車室S内の見栄えが悪くなって車両の商品性が低下することがない。又、図1に示すように、ガラス温度センサー9から延びる電気信号ケーブル10はルーフ11を通って不図示の制御回路部へと接続されているため、この電気信号ケーブル10が車室S内の見栄えやドライバの視認性を阻害することがない。
【0021】
又、ガラス温度センサー9をフロントガラス1に取り付けられた金属台座6に係合するルームミラー2のステー7内に金属台座6に近接(接触)させて組み込んだため、図5に矢印にて示すように、フロントガラス1の熱が金属台座6を経てガラス温度センサー9に伝わるため、ガラス温度センサー9によってフロントガラス1の温度を正確に測定することができる。尚、ルームミラー2はフロントガラス1の周縁から離れた車幅方向中央に配置されているため、このルームミラー2のステー7に組み込まれたガラス温度センサー9が車体から熱的影響を受けることがない。
【0022】
そして、ガラス温度センサー9によって測定されたフロントガラス1の温度は電気信号として図1に示す電気信号ケーブル10を経て不図示の制御回路部へと送られ、制御回路部ではフロントガラス1の温度に基づいて露点を正確に求め、この露点に応じて不図示のエアコンのコンプレッサーの駆動を適正にON/OFF制御するため、フロントガラス1の結露が確実に防がれる。
【0023】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図6に基づいて説明する。
【0024】
図6は本発明の実施の形態2に係るガラス温度センサーの設置構造を備えた車両のルームミラー部分の破断側面図であり、本図においては図1〜図5において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0025】
本実施の形態は、図6に示すように、ガラス温度センサー9をルームミラー2の台座カバー8内のステー7の外にフロントガラス1に近接若しくは接触させて配置したことを特徴とし、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0026】
而して、本実施の形態では、フロントガラス1の熱はガラス温度センサー9に直接伝わるため、ガラス温度センサー9によってフロントガラス1の温度を一層正確に測定することができる。
【0027】
又、ガラス温度センサー9は台座カバー8によって覆われているため、該ガラス温度センサー9が車室S内に露出して乗員や車体外部の第三者の目に触れることがなく、従って、ガラス温度センサー9によって車室S内の見栄えが悪くなって車両の商品性が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係るガラス温度センサーの設置構造を備えた車両のルームミラー部分の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るルームミラーの取付部構造を示す分解側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるルームミラーの取付要領を示す部分側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るガラス温度センサーの設置構造を示すルームミラーの斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るガラス温度センサーの設置構造とフロントガラス温度の測定原理を示すルームミラー取付部の分解側面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るガラス温度センサーの設置構造を備えた車両のルームミラー部分の破断側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 フロントガラス
2 ルームミラー
3 ルームミラーの取付部
4 ルームミラーのアーム
5 ルームミラーのミラー本体
6 金属台座
7 ステー
7a ステーの係合部
7b ステーの係合爪
8 台座カバー
9 ガラス温度センサー
10 電気信号ケーブル
11 ルーフ
S 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のフロントガラスに金属台座を介して取り付けられたルームミラーを備えた車両の前記フロントガラスの温度を測定するための車両用ガラス温度センサーの設置構造であって、
前記フロントガラスに取り付けられた前記金属台座に係合する前記ルームミラーのステー又はこれを覆う台座カバーに前記ガラス温度センサーを組み込んだことを特徴とする車両用ガラス温度センサーの設置構造。
【請求項2】
前記ガラス温度センサーを前記ルームミラーのステー内に前記金属台座に近接させて配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用ガラス温度センサーの設置構造。
【請求項3】
前記ガラス温度センサーを前記ルームミラーの台座カバー内に前記フロントガラスに近接させて配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用ガラス温度センサーの設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−132114(P2010−132114A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309430(P2008−309430)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】