説明

車両用シートのシートクッション

【課題】着座しているか否かに関わらず収納物を収納しておくことのできる収納部を備えるとともにクッション長が変更可能なシートクッションを提供する。
【解決手段】収納部31は、上部に開口34を有する物入れ部36と、シートクッションへの着座姿勢状態で見てシートクッション20の前後方向にスライドして物入れ部36の開口34を開閉するスライド式の蓋部材とを備えている。蓋部材は当該シートクッション20の座面22の前側の一部分を構成する前側クッション部42を備えており、前側クッション部42が前後方向にスライドして座面22の他の部分のシートクッション本体部50に対して相対移動することにより座面22の前後方向の長さが変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納物を収納可能な収納部を備える車両用シートのシートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内スペースを有効活用するために、着座者の臀部を支持する着座面を構成するシートクッションに収納部を設けた車両用シートがあった。例えば、下記特許文献1には、シートクッションのパッドが前後に分割形成されており、前側分割体を前方に回動させて反転させると、前方分割体の後面と後側分割体の前面との間に収納凹部が画成される車両用シートが開示されている。この車両用シートは、該シートに着座していないときにのみ収納凹部を設けて収納物を収納することができる。また、下記特許文献2には、シートクッションの下方に前後に引き出し自在の収納トレイが組み付けられた車両用シートが開示されている。この車両用シートは、着座しているか否かに関わらず収納トレイに収納物を収納しておくことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−106738号公報
【特許文献2】特開2002−114070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、着座しているか否かに関わらず収納物を収納可能でありながらも、着座者が着座している際の快適性を一層向上させることを鋭意検討した。その結果、着座しているか否かに関わらず収納物を収納可能な収納部を備え、且つクッション長が変更可能であることにより着座者の快適性を向上させることの可能な未だ提案されていない構成のシートを着想し本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、着座しているか否かに関わらず収納物を収納しておくことのできる収納部を備えるとともにクッション長が変更可能なシートクッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段をとる。
本発明は、収納物を収納可能な収納部を備える車両用シートのシートクッションであって、前記収納部は、上部に開口を有する物入れ部と、シートクッションへの着座姿勢状態で見てシートクッションの前後方向にスライドして前記物入れ部の開口を開閉するスライド式の蓋部材とを備えており、該蓋部材は当該シートクッションの座面の前側の一部分を構成する前側クッション部を備えており、該前側クッション部が前記前後方向にスライドして座面の他の部分のシートクッション本体部に対して相対移動することにより座面の前記前後方向の長さを変更可能であることを特徴とする車両用シートのシートクッションである。
【0007】
かかるシートクッションによれば、収納部のスライド式の蓋部材が単に物入れ部の開口を覆うだけでなく座面の前側の一部分をも構成しており、前後方向にスライドさせることにより座面の前後方向の長さ(クッション長)を変更することが可能となっている。したがって、着座しているか否かに関わらず収納部に収納物を収納しておくことができるとともにクッション長を変更させることが可能である。
【0008】
本発明のシートクッションにおいて、前記蓋部材は、座面の前記前後方向の長さを変更する際の前記前部クッション部のスライドには追随しないカバー部を備え、座面の前記前後方向の長さを変更する際には前記前部クッション部が該カバー部に対しても相対移動することにより前記前後方向の長さが伸縮可能となっており、該蓋部材により前記物入れ部の開口を閉じた状態を保持しながら座面の前記前後方向の長さを変更可能であることが好ましい。
かかるシートクッションによれば、座面の前後方向の長さを変更に際して蓋部材が伸縮することによりクッション長の変更状態に関わらず、着座可能な状態にあっては蓋部材により物入れ部の開口を閉じておくことができる。
【0009】
また、本発明のシートクッションは、前記収納部が前記シートクッション本体部に対し、着脱可能に装着されていることも好ましい。
かかるシートクッションによれば、取り外した収納部を、例えば、オットマンとして使用するなど用途の拡大が可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシートクッションによれば、着座しているか否かに関わらず収納部に収納物を収納しておくことができ、且つクッション長を変更することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る車両用シート10は、例えば自動車の室内にリアシートとして装備されるものである。図1に示されるように、本実施形態のシート10は、一対の側方座席部11,12が中央座席部13を介して連続的に設けられた3人掛けのシートである。シート10は、背凭れとなるシートバック16,座面となるシートクッション20及びヘッドレスト18を備えている。シート10の両側方座席部11,12には、座面22を構成するシートクッション20に収納部31,32が設けられている。両側方座席部11,12における収納部31,32に係る構成は同じであるから、ここでは、シート10に着座した乗員(着座者)から見て右側の側方座席部11を取り上げて詳細に説明する。なお、本明細書においては、シート10及び該シート10を構成するシートクッション20等の各部材における方向を着座者がシート10に通常姿勢で腰掛けた着座姿勢状態で見た方向を基準として示す。各図において矢印で示されるFr,Upはシート10の前方,上方を示している。
【0012】
側方座席部11を構成するシートクッション20の座面22は、表皮材Cで覆われたウレタン等のパッドPで形作られており(図11等参照)、図2に示されるように、中央部24は略平らで両側部26,26が盛り上がった形状とされている。座面22が略平らなシートクッション20の中央部24には、前部に収納部31が設けられている。図5に示されるように、収納部31は、箱型で上部に開口34を有する物入れ部36と、物入れ部36の開口34を開閉するスライド式の蓋部材40とを備えている。図11に示されるように、蓋部材40は上面40aが表皮材Cで覆われたパッドPで構成とされており、図2に示されるような物入れ部36の開口34を閉じた状態ではシートクッション20の座面22の前側の一部分を構成している。本明細書では、蓋部材40の上面40aを構成するパッドPが表皮材Cで覆われてなる部分を前側クッション部42と称する。
【0013】
収納部31は座面22の他の部分を構成するシートクッション本体部50に対して着脱可能に設けられており、図6に示されるように、シートクッション本体部50から取り外すことも可能となっている。シートクッション本体部50は、シートクッション20の両側部26,26が、該両側部26,26の前後方向の長さより短い中央部24の後側の部分を介して連続的に形成された構成であって、前部に収納部31が嵌合可能な凹部52が設けられている。収納部31は、シートクッション本体部50の凹部52に嵌め込まれた状態で該シートクッション本体部50に対して着脱可能に装着されている。なお、本明細書においては、シートクッション20の中央部24の後ろ側において座面22を構成するパッドPが表皮材Cで覆われてなる部分を後側クッション部28と称することがある。
【0014】
このシートクッション20では、図2等に示されるような収納部31がシートクッション本体部50に装着された状態において、物入れ部36はシートクッション本体部50に対して固定されているが、蓋部材40は前後方向にスライド可能となっている。この蓋部材40は、図5に示されるように前後方向へのスライド操作により物入れ部36の開口34を開閉するのみならず、図3に示されるようにシートクッション20の前後方向の長さ(クッション長)を変更することも可能となっている。すなわち、このシートクッション20は、蓋部材40をスライド操作することにより大別して以下の3つの状態をとることが可能となっている。
【0015】
先ず、1つ目の状態は、図2に示されるように、蓋部材40が物入れ部36の開口34を閉鎖し、シートクッション本体部50とともに一連の座面22を形成している通常状態である。この通常状態では、座面22に着座することができる。
【0016】
次に、2つ目の状態は、図3に示されるように、前側クッション部42をシートクッション本体部50に対して前後方向の一定範囲内において相対移動させることによりシートクッション20の前後方向の長さ(クッション長)を変更したクッション長変更状態である。このクッション長変更状態では、前側クッション部42が前方へ移動して後側クッション部28とは離間して配置されることにより、座面22が前後方向に伸張する。図4に示されるように、後側クッション部28は、その前後方向の長さが着座者の臀部を支持可能な程度確保されている。そのため、着座者に前側クッション部42が後側クッション部28から離間して生じる間隙29による違和感を生じさせにくい。例えば、後側クッション部28と前側クッション部42の前後方向の長さ寸法の概ねの比率は、後側クッション部28の長さが2に対して前側クッション部42の長さを1とするのが好ましい。このクッション長変更状態では、着座者の体型に対応させてシートクッション20の前後方向の長さを調整した状態で着座することが可能である。
【0017】
次に、3つ目の状態は、図5に示されるように、蓋部材40が物入れ部36の開口34の位置からずれて開口34が開放された物入れ部開放状態である。この物入れ部開放状態では、開放された開口34から物入れ部36の内部空間Sに収納物を出し入れすることが可能である。
【0018】
以下、収納部31について各部材の構造を説明しながら作動機構を説明する。
図7に示されるように、物入れ部36は上部に開口34を有する箱本体60を主体として構成されており、この箱本体60の内部空間Sに収納物を収納することが可能となっている。この箱本体60の両側部の上端面には、後述する蓋部材40のピニオン74と噛み合う上端面ラック61が前後方向に凹凸形成されている。
【0019】
箱本体60は、前部にシートクッション本体部50に対する着脱機構65を備えている。この箱本体60に備えられた着脱機構65により収納部31はシートクッション本体部50に対して着脱可能に装着されている。図12に示されるように、着脱機構65は、箱本体60の両側面60bから突出する係合部材66がシートクッション本体部50の凹部52の両側面52bに形成された係合凹部56に係合することにより箱本体60をシートクッション本体部50に装着可能な構成とされている。
【0020】
係合部材66は、柱状でその先端が係合凹部56に係合可能な係合部66aと、該係合部66aの基端に形成されたフランジ部66bとを備えている。箱本体60の側部には、中空部67が形成されているとともに、該中空部67から側面60bに貫通する貫通孔67aが設けられている。この貫通孔67aは、係合部材66の柱状の係合部66aは挿通できるがフランジ部66bは挿通できない大きさである。係合部材66は、柱状の係合部66aが貫通孔67aを挿通して先端が側面60bから突起し、フランジ部66bが中空部67内に抜け止めされた状態で配置されている。中空部67には、係合部材66を柱状の係合部66aの軸方向に沿って外方へ付勢するコイルばね68が配設されている。該コイルばね68の付勢力により係合部材66の係合部66aの先端が箱本体60の側面60bから突起して係合凹部56に係合した状態が保持されている。つまり、箱本体60がシートクッション本体部50に装着された状態が保持されている。なお、図11に示されるように、箱本体60の後面60cには左右方向に沿って溝60mが形成されている。この溝60mがシートクッション本体部50に設けられた突条54と嵌合することによっても箱本体60はシートクッション本体部50に対して位置決めされている。
【0021】
図12に示されるように、箱本体60の前面60aには、係合部材66の係合凹部56に対する係合を解除して箱本体60をシートクッション本体部50から脱離させるにあたり操作する脱離レバー69が設けられている。脱離レバー69は、左右方向に沿って長い棒状の把持部69aを有し、その両端部69bが後方へ屈曲形成さている。脱離レバー69の端部69bは紐状部材69hを介して係合部材66と連結されている。図12に二点鎖線で示されるように、脱離レバー69の把持部69aを前方へ引くと、コイルばね68の付勢力に抗して係合部材66を中空部67に引き込むことができる。それにより係合部材66の係合凹部56に対する係合を解除し、箱本体60をシートクッション本体部50から取り外すことができる。
【0022】
図7に示されるように、箱本体60は、両側面60bに前後方向に沿って形成された溝62が設けられている。溝62の上面には前後方向に凹凸形成された歯63が刻まれており、前端部は上方へ開放されている。溝62内の歯63に後述する蓋部材40の位置決め歯44が咬合することにより箱本体60に対して蓋部材40が係合している。図8には、蓋部材40の一部を透過して位置決め歯44が溝62内の歯63に咬合している様子が示されている。
【0023】
図10に示されるように、蓋部材40は、大別すると、前側クッション部42を含む第1部材70と、該第1部材70とは別体で形成されたカバー部としての第2部材80とで構成されている。第1部材70の上面は前側クッション部42として表皮材Cで覆われたパッドPで形成されている。第1部材70の下面は硬質樹脂製のベース部材71で形成されている。第1部材70は、ベース部材71の上面に前側クッション部42が接合されて形成されている。
【0024】
第1部材70には、箱本体60との係合に係る構造として、位置決め歯44が設けられている。位置決め歯44は、図8に示されるように、前後方向に長く形成され後端部が下方に屈曲して形成されたアーム45の垂下した後端部に設けられている。位置決め歯44を備えたアーム45は蓋部材40(第1部材70)の左右両側部に離間して2本設けられており、前端部は左右方向に長尺なレバー部46を介して接続形成されている。該レバー部46は蓋部材40をスライドさせるときに操作するため、以下、スライドレバー部と称する。スライドレバー部46は、蓋部材40の前側から操作可能なように露出して設けられており、図11に示されるように、アーム45はベース部材71の両側部に設けられた中空部72内に通されて、位置決め歯44の設けられた後端部が中空部72の底面72bを貫通して下方に垂下している。中空部72内にはコイルばね47が設けられており、該コイルばね47によりアーム45は上方へ付勢されている。このコイルばね47によってアーム45に付与される上方への付勢力によりアーム45が中空部72の天井部72aに押し当てられるとともにアーム45の後端部に設けられた位置決め歯44が箱本体60の溝62の上面に設けられた歯63に咬合した状態で保持されている。アーム45の前端部に設けられたスライドレバー部46は、その上部が左右方向に沿って設けられた回動軸45aを介してベース部材71に軸支されている。図11中に二点鎖線で示されるように、コイルばね47の付勢力に抗してスライドレバー部46を前方へ回動させると、アーム45の後端部に設けられた位置決め歯44は箱本体60の歯63から外れ、第1部材70を前後にスライドさせることが可能となる。
【0025】
図10に示されるように、第1部材70を構成するベース部材71の下面の後部は中央が側部よりも凹んだ形状とされており、第2部材80の組み付け部位73が設定されている。第2部材80は屈曲形成された板状の部材であり、前側板状部81と後側板状部82とが段差部83を介して段違いに接続形成されており、前側板状部81に対して後側板状部82は下方にずれて設けられている。前側板状部81には、長孔81aが左右方向に離間して設けられている。該長孔81aは前後方向に長く、板厚を貫通して形成されている。前側板状部81の両側端部には下面側に前後方向に凹凸形成された下面ラック84が設けられている。後側板状部82の後端部は上方へ屈曲形成され、後端立ち上がり部85が設けられている。第1部材70における第2部材80の組み付け部位73には、第2部材80の長孔81aに挿通可能な軸部73aが垂下して設けられているとともに、第2部材80の下面ラック84と噛み合うピニオン74が両側部から内方に突出して軸支されている。また、後部には下方に突出する突条75が左右方向に沿って設けられている。第2部材80は、第1部材70の下面に沿った状態で軸部73aが長孔81aに挿通されるとともにピニオン74が下面ラック84に噛み合わされて第1部材70に組み付けられている。
【0026】
図13に示されるように、シートクッション20の通常状態では、蓋部材40は、第1部材70と第2部材80の後端部が一致して第1部材70と第2部材80とが重複した状態で箱本体60の開口34を閉じている。第1部材70の下面に設けられた突条75は第2部材80の後側板状部82の上面側に形成された前方が段差部83、後方が後端立ち上がり部85で区画された凹部86内に垂下しており、通常状態では凹部86の後端に位置している。この通常状態において、前側クッション部42を含む第1部材70の後端部はシートクッション本体部50に隣接しており、後側クッション部28と一連の座面22を構成している。第2部材80の後端面及び該後端面と対向するシートクッション本体部50の前面52aとにはそれぞれ磁性体85m,28mが設けられており、その磁力により第2部材80はシートクッション本体部50に引き付けられている。
【0027】
シートクッション20を通常状態からクッション長変更状態に切替えるときは、スライドレバー部46を前方へ回動させて位置決め歯44の箱本体60の歯63に対する係合を解除して前方へ移動させる。このとき、スライドレバー部46の設けられた第1部材70は前方へ移動するが、磁力によりシートクッション本体部50に引き付けられている第2部材80は第1部材70に追従しない。第1部材70の第2部材80に対する相対移動は、第1部材70の突条75が第2部材80の段差部83に当るまで許容される。なお、第1部材70の第2部材80に対する相対移動の際には、第1部材70のピニオン74が第2部材80の下面ラック84に回転させられるとともに、第1部材70の軸部73aが第2部材80の長孔81a(図9参照)に沿って相対移動するのを伴う。突条75が第2部材80の段差部83と後端立ち上がり部85とで区画された凹部86内の任意の位置にあるときにスライドレバー部46に対する操作力を解除することで位置決め歯44を箱本体60の歯63に係合させる。これにより、第1部材70が箱本体60に対して所望の位置で位置決めされ、シートクッション本体部50に対して位置決めされることとなる。すなわち、座面22の前後方向の長さを所望の長さに変更し、該クッション長変更状態を保持することができる。なお、図14には、第1部材70の突条75が第2部材80の段差部83に接するまで第1部材70が前方へスライドされ、座面22の前後方向の長さが最大となったときの様子が示されている。クッション長変更状態では、第2部材80に対して第1部材70が相対移動することにより蓋部材40が前後方向に伸縮し、箱本体60の開口34を閉じた状態が保持されつつも座面22の前後方向の長さを変更することが可能である。
【0028】
シートクッション20を物入れ部開放状態に切替えるときは、スライドレバー部46を前方へ回動させ、位置決め歯44の箱本体60の歯63に対する係合を解除して更に前方へ移動させる。第1部材70の突条75が第2部材80の段差部83に当ることで該前方へ移動させる操作力が第2部材80にも付与される。第2部材80をシートクッション本体部50に引き付ける磁性体85m,28mの磁力に抗してスライドレバー部46を前方へ移動させることにより、第1部材70と第2部材80とが一体で前方へ移動し始める。そして、第2部材80の下面ラック84と噛み合っている第1部材70のピニオン74が箱本体60の上端面ラック61とも噛み合って回転させられる。第1部材70のピニオン74が前方へ移動しながら回転することにより、該ピニオンに上端面ラック61で係合する第2部材80が第1部材70よりも速く前方へ移動させられ、第1部材70の下に引き込まれて蓋部材40の前後方向の長さが縮まり、元の長さに戻る(図15参照)。図16に示されるように、更に蓋部材40を前方へ移動させ、開口34を全開にし、スライドレバー部46の操作力を解除すると位置決め歯44が箱本体60の歯63の前端位置63fに係合して開口34の全開状態が保持される。なお、箱本体60に形成する歯63は、前後方向に沿って前端位置63fまで連続的に設けてもよい。
【0029】
スライドレバー部46を前方へ回動させて位置決め歯44の箱本体60に対する係合を解除して更に後方へ移動すれば、蓋部材40が上記とは逆に作動してシートクッション20を通常状態に戻すことができる。
【0030】
以上の構成のシートクッション20によれば以下の作用効果を奏する。
まず、収納部31のスライド式の蓋部材40が単に物入れ部36の開口34を覆うだけでなく座面22の一部分をも構成しており、前後方向へのスライドによりクッション長を変更することが可能となっている。次に、クッション長変更状態においては、第1部材70と第2部材80とが前後にずれて位置することによって蓋部材40が伸張し、物入れ部36の開口34を閉じたままクッション長を伸張させることが可能となっている。次に、クッション長変更状態から物入れ部開放状態に切替える際には、第1部材70を前方へスライドさせる操作をすれば、該第1部材70のスライドに連動して第2部材80を第1部材70の下に潜り込ませて蓋部材40を元の長さに戻すことができる。そのため、容易な操作で開口34を大きく開放することができる。
【0031】
また、収納部31は、シートクッション本体部50から着脱可能であり、単独で種々の用途に展開することが可能である。例えば、図17に示されるように、シートクッション本体部50から取り外して他の側部座席部12の前に配置すれば、オットマンとすることができる。また、スツールとしてアウトドアで使用してもよいし、脱離レバー69を持ち手としてかばんとして持ち歩くことも可能である。
【0032】
なお、なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の変形例が考えられるものである。
例えば、上記実施形態では、3人掛けのリアシートを例示したが、本発明は、1人掛けのシートに適用することもできるし、リアシートに限らず助手席や運転席に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るシートの斜視図である。
【図2】図1に示されるシートのシートクッションを拡大して示す斜視図であり、シートクッションの通常状態を示す図である。
【図3】図1に示されるシートのシートクッションを拡大して示す斜視図であり、シートクッションのクッション長変更状態を示す図である。
【図4】図3に示されるクッション長変更状態のシートの模式的な側面図である。
【図5】図1に示されるシートのシートクッションを拡大して示す斜視図であり、シートクッションの物入れ部開放状態を示す図である。
【図6】図1に示されるシートのシートクッションを拡大して示す斜視図であり、収納部をシートクッション本体部から取り外した様子を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る物入れ部(箱本体)の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る収納部を一部透過して示した斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る蓋部材の斜視図である。
【図10】本発明の実施形態に係る蓋部材の分解斜視図である。
【図11】本発明の実施形態に係る物入れ部(箱本体)を一部断面で示した側面図である。
【図12】図2に示されるシートクッションのXII−XII線断面図である。
【図13】図2に示されるシートクッションのXIII−XIII線断面図であり、シートクッションの通常状態を示す図である。
【図14】図3に示されるシートクッションのXIV−XIV線断面図であり、シートクッションのクッション長変更状態を示す図である。
【図15】図3に示されるシートクッションをクッション長変更状態から物入れ部開放状態に切替える過程を図14に対応する断面で示す図である。
【図16】図5に示されるシートクッションのXVI−XVI線断面図であり、シートクッションのもの入れ部開放状態を示す図である。
【図17】本発明の実施形態に係る収納部の使用例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
10 (車両用)シート
11 側方座席部
20 シートクッション
22 座面
31 収納部
34 開口
36 物入れ部
40 蓋部材
42 前側クッション部
46 スライドレバー部
50 シートクッション本体部
60 箱本体
65 着脱機構
70 第1部材
74 ピニオン
80 第2部材(カバー部)
C 表皮材
P パッド
S 内部空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納物を収納可能な収納部を備える車両用シートのシートクッションであって、
前記収納部は、上部に開口を有する物入れ部と、シートクッションへの着座姿勢状態で見てシートクッションの前後方向にスライドして前記物入れ部の開口を開閉するスライド式の蓋部材とを備えており、該蓋部材は当該シートクッションの座面の前側の一部分を構成する前側クッション部を備えており、該前側クッション部が前記前後方向にスライドして座面の他の部分のシートクッション本体部に対して相対移動することにより座面の前記前後方向の長さを変更可能であることを特徴とする車両用シートのシートクッション。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのシートクッションであって、
前記蓋部材は、座面の前記前後方向の長さを変更する際の前記前部クッション部のスライドには追随しないカバー部を備え、座面の前記前後方向の長さを変更する際には前記前部クッション部が該カバー部に対しても相対移動することにより前記前後方向の長さが伸縮可能となっており、該蓋部材により前記物入れ部の開口を閉じた状態を保持しながら座面の前記前後方向の長さを変更可能であることを特徴とする車両用シートのシートクッション。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用シートのシートクッションであって、
前記収納部が前記シートクッション本体部に対し、着脱可能に装着されていることを特徴とする車両用シートのシートクッション。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate