説明

車両用シートのスライド装置。

【課題】 操作レバーを容易に回動操作することができる車両用シートのスライド装置を提供する。
【解決手段】操作レバー4の左右に延びる横バー部41と前後に延びる前後バー部42との交差部に取手5を設ける。操作レバー4より上方に位置する取手5の上端部には、握り部51を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートを前後方向へ位置調節するための車両用シートのスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用シートのスライド装置は、下記特許文献1に記載されているように、支持部材と操作レバーとを有している。支持部材は、車両の床面上に設けられており、シートを前後方向へスライド可能に支持する。一方、操作レバーは、シートの前側下方に配置されており、ロック位置と解除位置との間を上下方向へ回動可能になっている。操作レバーをロック位置に位置させると、シートが支持部材に前後方向へスライド不能に係止される。操作レバーを解除位置に回動させると、シートと支持部材との間の係止状態が解除され、シートが前後方向へスライド可能になる。
【0003】
【特許文献1】特開平8−20266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両用シートのスライド装置においては、操作レバーがシートの下方に配置されているため、操作レバーを操作する際には、上半身を下方に大きく屈めなければならず、非常に窮屈な姿勢での操作が強いられる。このため、身体の不自由な人、老人、妊婦等にとっては、操作がしにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するために、後端部を中心としてロック位置とこのロック位置から所定角度だけ上方に離間した解除位置との間を上下方向へ回動可能に配置された操作レバーを備え、上記操作レバーをロック位置に位置させると、シートを前後方向へ移動不能に係止し、上記操作レバーを解除位置に位置させると、上記シートの前後方向への移動を許容する車両用シートのスライド装置において、上記操作レバーに取手が設けられ、この取手の上記操作レバーより上方に位置する上端部に握り部が設けられていることを特徴としている。
この場合、上記取手が上記操作レバーに着脱可能に取り付けられていることが望ましい。
上記取手が第1、第2半体からなる二つ割り構造をなし、上記第1、第2半体が上記操作バーを挟持することによって上記取手が上記操作バーに取り付けられていることが望ましい。
上記操作レバーが、左右に延びる横バー部と、この横バー部の両端部からそれぞれ後方に延びる一対の前後バー部とを有している場合には、上記第1、第2半体が上記横バー部上記前後バー部との両者を同時に挟持するよう、上記取手が上記横バー部と前後バー部との交差部に配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、取手の握り部を持って上方へ引き上げることにより、操作バーを解除操作することができる。この場合、握り部が操作レバーより上方に位置しているので、その分だけ身体を下方に屈める量を小さくすることができる。したがって、操作レバーの操作を容易に行うことができ、ひいてはシートの前後方向の位置調節を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る車両用シートのスライド装置が用いられた車両用シートの側面図である。車両の床(図示せず)には、基板1が設けられている。この基板1には、化粧ボックス2が設けられている。この化粧ボックス2内には、この発明に係るスライド装置(後述する操作レバーを除いて図示せず)が設けられている。そして、このスライド装置により、シート3が前後方向へ位置調節可能に支持されている。
【0008】
スライド装置は、基板1に設けられた一対の下レールを有している。一対の下レールは、その長手方向を前後方向に向けて互いに平行に配置されている。各下レールには、上レールが前後方向へ移動可能に支持されている。一対の上レールにシート3が固定されている。これにより、シート3が前後方向へ移動可能になっている。
【0009】
下レールと上レールとの間には、係止機構が設けられている。係止機構は、操作レバー4によって操作される。すなわち、操作レバー4は、基板1、下レールその他の車内の固定部材に左右に延びる水平な軸線を中心として回動可能に設けられている。操作レバー4は、図1に示す係止位置と、この係止位置から上方へ向かって所定角度だけ離れた解除位置との間を回動可能であり、付勢手段によって解除位置から係止位置に向かって付勢されている。したがって、操作レバー4は、自由に回動することができる状態にすると、ロック位置に回動させられる。操作レバー4がロック位置に回動すると、上レールが下レールに係止機構によって前後方向へ移動不能に係止される。これにより、シート3が位置固定される。操作レバー4を解除位置に回動させると、上レールが下レールに対して前後方向へ移動可能になる。したがって、シート3を前後方向へ適宜移動させることができる。
【0010】
操作レバー4は、左右方向に向かってほぼ水平に延びる横バー部41と、この横バー部41の左右両端部から後方へ向かって延びる前後バー部42,42とを有し、平面視略「コ」字状に形成されている。横バー部41は、シート3の座部31の左右方向の長さとほぼ同一か若干短くなっており、その左右方向の中央が座部31の左右方向の中央とほぼ一致するように配置されている。しかも、横バー部41は、前後方向においては座部31の前端とほぼ同一位置か若干前方に位置し、上下方向には座部3より下側に位置するように配置されている。前後バー部42,42の後端部は、上記固定部材に水平な軸線を中心として回動可能に支持されている。
【0011】
なお、スライド装置の上記構成は、周知のものである。スライド装置として、他の構成を有する周知のスライド装置を用いてもよい。
【0012】
操作レバー4には、取手5が設けられている。取手5は、二つ割り構造をなし、第1、第2半体5A,5Bを有している。二つの半体5A,5Bは、組立、分解可能であり、組立状態ではそれらの下端部が操作レバー4を挟持している。これにより、取手5が操作レバー4に取り付けられている。特に、この実施の形態では、取手5が横バー部41と前後バー部42との交差部に配置されており、第1、第2半体5A,5Bが横バー部41と前後バー部42との両者を同時に挟持している。この結果、取手5は、単に操作レバー4に取り付けるだけで操作レバー4に回動不能に、かつ移動不能に取り付けることができるようになっている。勿論、取手5は、横バー部41にその長手方向へ位置調節可能に取り付けてもよい。取手5は、第1、第2半体5A,5Bを分解することにより、操作レバー4から取り外すことが可能である。
【0013】
取手5の上端部は、操作レバー4より上方に位置しており、そこには握り部51が設けられている。握り部51は、貫通孔52を有している。この貫通孔52に指を通して、貫通孔52より上側の握り部51の実質部を握ることにより、取手5を上方へ持ち上げることができ、それによって操作レバー4を上方へ回動操作することができるようになっている。
【0014】
上記構成を有する車両用シートのスライド装置において、操作レバー4を上方へ回動させる際には、取手5の握り部51を把持することによって回動操作することができる。この場合、握り部51が操作レバー4より上方に位置しているので、シート3に腰掛けた操作者は、下方への屈み量を握り部51が操作レバー4より上方に位置している分だけ少なくすることができる。実際には、ほとんど屈むことなく操作レバー4を上方に回動させることができる。したがって、シート3の位置調節を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】この発明の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 シート
4 操作レバー
5 取手
5A 第1半体
5B 第2半体
41 横バー部
42 前後バー部
51 握り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部を中心としてロック位置とこのロック位置から所定角度だけ上方に離間した解除位置との間を上下方向へ回動可能に配置された操作レバーを備え、上記操作レバーをロック位置に位置させると、シートを前後方向へ移動不能に係止し、上記操作レバーを解除位置に位置させると、上記シートの前後方向への移動を許容する車両用シートのスライド装置において、
上記操作レバーに取手が設けられ、この取手の上記操作レバーより上方に位置する上端部に握り部が設けられていることを特徴とする車両用シートのスライド装置。
【請求項2】
上記取手が上記操作レバーに着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートのスライド装置。
【請求項3】
上記取手が第1、第2半体からなる二つ割り構造をなし、上記第1、第2半体が上記操作バーを挟持することによって上記取手が上記操作バーに取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シートのスライド装置。
【請求項4】
上記操作レバーが、左右に延びる横バー部と、この横バー部の両端部からそれぞれ後方に延びる一対の前後バー部とを有し、上記第1、第2半体が上記横バー部上記前後バー部との両者を同時に挟持するよう、上記取手が上記横バー部と前後バー部との交差部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車両シートのスライド装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate