車両用シートのスライド装置
【課題】両ロック領域を跨ぐように車両用シートをスライドさせているとき、両ロック領域の境界に到達した車両用シートのさらなるスライドを一旦規制する補助ロック機構を備えた車両用シートのスライド装置であっても、補助ロック機構の使用性を向上させたものを提供すること。
【解決手段】車両用シートのスライド装置2の補助ロック機構5は、ハンドルを操作してロック機構4のロック解除を行ってスライドさせた第1の車両用シート1のアッパレール20が両ロック領域の境界に到達すると、リンク30、40棒がスライドロック爪22の当接部22aに接触することで、ストッパリンク50の一端部がストッパ板16に接触する高さ位置に保持される。この保持状態は、ハンドル操作を戻すことで、スライドロック爪22の当接部22aとリンク棒30、40との接触が解除されることで、解消する。
【解決手段】車両用シートのスライド装置2の補助ロック機構5は、ハンドルを操作してロック機構4のロック解除を行ってスライドさせた第1の車両用シート1のアッパレール20が両ロック領域の境界に到達すると、リンク30、40棒がスライドロック爪22の当接部22aに接触することで、ストッパリンク50の一端部がストッパ板16に接触する高さ位置に保持される。この保持状態は、ハンドル操作を戻すことで、スライドロック爪22の当接部22aとリンク棒30、40との接触が解除されることで、解消する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の車両用シートである助手席のロアレールと第2の車両用シートである2列目シートのロアレールとが兼用になっているとき、2列目シートを後方に大きくスライドさせると、助手席もフロントのスライドのロック領域から2列目のスライドのロック領域まで大きくスライドさせることができる車両用シートのスライド装置が既に知られている。このようなスライド装置には、スライドさせた助手席が両ロック領域(フロントのスライドのロック領域と2列目のスライドのロック領域)の境界に到達すると、一旦、このスライドを規制する補助ロック機構が備えられている。これにより、スライドさせた助手席が2列目シートの乗員に干渉することがないように、2列目シートの乗員に対して注意喚起を促すことができる。ここで、下記特許文献1には、補助ロック機構が、ロアレールに対して着脱可能なストッパから構成されている技術が開示されている。これにより、簡便な構造で補助ロック機構を動作させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3400066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、ロアレールに対してストッパが着脱可能になっているため、補助ロック機構の使用性が悪かった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、両ロック領域を跨ぐように車両用シートをスライドさせているとき、両ロック領域の境界に到達した車両用シートのさらなるスライドを一旦規制する補助ロック機構を備えた車両用シートのスライド装置であっても、補助ロック機構の使用性を向上させたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、車両フロア側に組み付けられるロアレールと、ロアレールに対してスライド可能に組み付けられる第1の車両用シートと第2の車両用シートの各アッパレールと、ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドをスライドロック爪によりロック可能なロック機構と、ロック機構に設けられたハンドルを操作するとロック機構のロック解除が行われロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック位置を調節可能となっており、第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域と第2の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域とを跨ぐように第1の車両用シートのアッパレールをスライドさせるとき、スライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドを規制可能な補助ロック機構を備えている車両用シートのスライド装置であって、補助ロック機構は、両ロック領域の境界に設定され、ロアレール上に設けられるストッパ板と、アッパレール側に回転可能に枢着される第1の枢着部を有し、スライドロック爪の当接部と当接可能なリンク棒と、リンク棒の第1の枢着部とは異なる第2の枢着部に枢着され、一端部がストッパ板と当接可能なストッパリンクとを有し、ハンドルを操作してロック機構のロック解除を行ってスライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、リンク棒がスライドロック爪の当接部に接触することで、ストッパリンクの一端部がストッパ板に接触する高さ位置に保持され、この保持状態が、ハンドル操作を戻すことで、スライドロック爪の当接部とリンク棒との接触が解除されることで、解消することを特徴とする構成である。
この構成によれば、ハンドルを引き起こして第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域から第2の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域へ向けて第1の車両用シートを大きくスライドさせているとき、第1の車両用シートがこれら両領域の境界に到達すると、ロック機構がロック解除状態であっても、補助ロック機構がロック状態に切り替わっているため、第1の車両用シートのスライドを規制できる。そのため、従来技術と同様に、第2の車両用シートの乗員に対して注意喚起を促すことができる。なお、この補助ロック機構をロック状態からロック解除状態へ戻すには、引き起こしているハンドルを戻した後に、再度、ハンドルを引き起こすだけでよい。したがって、従来技術と比較すると、着脱する部材等を必要としないため、補助ロック機構の使用性を高めることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートのスライド装置であって、リンク棒が第1のリンクと第2のリンクとに成り、第2のリンクが第1のリンクに対して回転可能であり、所定位置に位置するように付勢されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、両ロック領域の境界の終点において、再度、ストッパリンクが下方に移動してくるが、第2のリンクが第1のリンクに対して回動することで、補助ロック機構との干渉を回避し、コンパクトな設計にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る助手席のスライド装置を適用した車両の内部構成を示す図である。
【図2】図2は、図1のスライド装置の分解斜視図である。
【図3】図3は、図1の助手席の補助ロック機構の模式図であり、助手席がフロントのスライドのロック領域でロックされている状態を示す図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図3に示す状態から、ハンドルを操作してロック機構をロック解除状態に切り替え、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせている図である。
【図6】図6は、図5に示す状態から、さらに、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせている図である。
【図7】図7は、図6に示す状態から、さらに、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせている図である。
【図8】図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図9は、図8に示す状態から、さらに、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせ、助手席のスライドを中間領域で規制した状態を示す図である。
【図10】図10は、図9に示す状態から、ハンドルの操作を戻してロック機構をロック状態に戻した状態を示す図である。
【図11】図11は、図10に示す状態から、再度、ハンドルを操作してロック機構をロック解除状態に切り替え、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせている図であり、第2のリンクがスライドロック爪のフランジを乗り越える前の状態を示す図である。
【図12】図12は、図11に示す状態から、第2のリンクがスライドロック爪のフランジを乗り越えている途中の状態を示す図である。
【図13】図13は、図12に示す状態から、第2のリンクがスライドロック爪のフランジを乗り越えた状態を示す図であり、助手席が2列目のスライドのロック領域でロックされている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜13を参照して説明する。なお、以下の説明にあたって、「第1の車両用シート」として、「助手席1」を例に説明することとする。これと同様に、「第2の車両用シート」として、「2列目シート101」を例に説明することとする。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した各図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、助手席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0010】
はじめに、図1〜4を参照して、本発明の実施例に係る助手席1のスライド装置2を説明していく。このスライド装置2は、一対のスライドレール3と、ロック機構4と、補助ロック機構5とから構成されている。以下に、これら一対のスライドレール3と、ロック機構4と、補助ロック機構5とを個別に説明していく。
【0011】
まず、一対のスライドレール3から説明していく。この一対のスライドレール3は、一対のロアレール10と、この一対のロアレール10に対してそれぞれスライド可能に組み付けられている一対のアッパレール20とから構成されている。なお、これら一対のロアレール10、一対のアッパレール20は、各図において、そのアウタ側のもののみ示している。この一対のロアレール10は、車両フロアFにそれぞれ固着されている。一方、この一対のアッパレール20も、助手席1のシートクッション1aのクッションフレーム(図示しない)に固着されている。
【0012】
このスライドレール3により、助手席1を車両フロアFに対して前後にスライドさせることができる。なお、この一対のロアレール10は、図1からも明らかなように、2列目シート101のそれ(ロアレール)をも兼ねている。すなわち、一対のロアレール10は、助手席1と2列目シート101とにおいて兼用となっている。これにより、2列目シート101を後方に大きくスライドさせておくと、助手席1も後方に大きくスライドさせることができる(図1において、助手席1を実線で示す(A)の状態から、想像線で示す(C)に示す状態へとスライドさせることができる)。一対のスライドレール3は、このように構成されている。
【0013】
次に、ロック機構4を説明する。このロック機構4は、ループ状のハンドル(図示しない)と、このハンドルに連結されたスライドロック爪22とから構成されている。ハンドルは、乗員が直に引き起こし可能なレバー部材から構成されている。一方、スライドロック爪22は、その先端がロアレール10の係合孔12とアッパレール20の係合孔24とに差し込み可能な爪部材から構成されている。
【0014】
このスライドロック爪22は、その差し込み方向に付勢された状態でアッパレール20に枢着されている。そして、このスライドロック爪22の先端がロアレール10の係合孔12とアッパレール20の係合孔24とに差し込まれると(図3〜4に示される状態になると)、助手席1のスライドがロック状態(ロック機構4のロック状態)となる。
【0015】
そして、このロック状態から、スライドロック爪22に作用する付勢力に抗してハンドルを引き起こすと、先端の差し込みが解消するようにスライドロック爪22が回動していく(図4において、反時計回り方向にスライドロック爪22が回動していく)。これにより、助手席1のスライドがロック解除状態(ロック機構4のロック解除状態)に切り替わる。そして、引き起こしたハンドルを戻すと、スライドロック爪22の回動も戻されるため、助手席1のスライドもロック状態へと戻される。
【0016】
なお、ロアレール10の係合孔12は、助手席1のスライド方向に沿って複数形成されている。これにより、助手席1を所望するスライド位置にロックできる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「スライドのロック位置を調節」に相当する。この複数形成されている係合孔12のうち、フロントのスライドのロック領域(通常、助手席1が使用するスライドのロック領域)に対応するものを係合孔12aと付し、2列目のスライドのロック領域(通常、2列目シート101が使用するスライドのロック領域)に対応するものを係合孔12bと付すこととする(図1〜2参照)。
【0017】
なお、フロントのスライドのロック領域と、2列目のスライドのロック領域との間の領域(車両ボデーのピラーと向かい合う箇所)を、説明の便宜上、アンロック領域と記すこととする。また、ロアレール10におけるフランジ(折り曲げて形成される折れ曲がり部)14のうち、アンロック領域のフランジ14には、切欠14aが形成されている。
【0018】
また、ロアレール10における底面のうち、アンロック領域の底面には、ストッパ板16が形成されている。ロック機構4は、これらハンドルとスライドロック爪22とから構成されている。なお、2列目シート101も、上述した助手席1と同様に、所望するスライド位置にロックできるように構成されている。
【0019】
最後に、図2〜3を参照して、補助ロック機構5を説明する。ストッパ板16と、第1のリンク30と、第2のリンク40と、ストッパリンク50とから構成されている。なお、これら第1のリンク30と第2のリンク40とが、特許請求の範囲に記載の「リンク棒」に相当する。ストッパ板16は、後述するストッパリンク50が接触可能な規制部材であり、ロアレール10における底面のうちのアンロック領域に設けられている。
【0020】
第1のリンク30は、一端側に長孔32を有する略L字状に形成されたリンク部材であり、その略L字の屈曲部が回転中心を成すようにピンP1(第1の枢着部)を介してアッパレール20に締結されているベースプレート6に枢着されている。このとき、第1のリンク30は、付勢部材(例えば、図示しない、トーションばね)を介して、図3において、矢印A方向に付勢された状態で、ベースプレート6に枢着されている。このように枢着されている第1のリンク30の回動は、常時、後述するストッパリンク50に形成されている52がロアレール10のフランジ14に接触することによって規制されている。
【0021】
第2のリンク40は、略I字状に形成されたリンク部材であり、その一端側が回転中心を成すようにピンP2を介して第1のリンク30の他端側に枢着されている。このとき、第2のリンク40は、付勢部材(例えば、図示しない、トーションばね)を介して、図3において、矢印B方向に付勢された状態で、第1のリンク30の他端側に枢着されている。このように枢着されている第2のリンク40の回動は、常時、第1のリンク30に形成されているストッパ34によって規制されている。
【0022】
ストッパリンク50は、一端側にピン52を有する略クランク状に形成されたリンク部材であり、その他端側が回転中心を成すようにピンP3(第2の枢着部)を介して第1のリンク30の長孔32に枢着されている。このとき、ストッパリンク50は、アッパレール20に形成されているガイド孔26に差し込まれた状態で、第1のリンク30の長孔32に枢着されている。補助ロック機構5は、これらストッパ板16と、第1のリンク30と、第2のリンク40と、ストッパリンク50とから構成されている。
【0023】
続いて、図1、3〜12を参照して、これら一対のスライドレール3と、ロック機構4と、補助ロック機構5とから構成されているスライド装置2の動作を説明する。なお、以下の説明にあたって、助手席1がフロントのスライドのロック領域にロックされている状態(図1において、助手席1が実線(A)で示される状態および図3に示される状態)から説明していく。
【0024】
まず、乗員は、助手席1がフロントのスライドのロック領域にロックされている状態からハンドルを引き起こす作業を行う。すると、既に説明したように、ロック機構4がロック状態からロック解除状態へと切り替わる。これにより、乗員は、助手席1を後方へスライドさせることができる。次に、乗員は、ハンドルを引き起こしたまま助手席1を後方へスライドさせる作業を行う(図5参照)。
【0025】
このスライドによりストッパリンク50のピン52がロアレール10の切欠14aの傾斜辺14a1に到達すると、第1のリンク30自身に作用する付勢力により、第1のリンク30はストッパリンク50を上昇させながら回動していく(図6参照、図6において、反時計回り方向に第1のリンク30は回動していく)。さらに、助手席1を後方へスライドさせる作業を行うと、さらに、第1のリンク30と共に第2のリンク40も回動していくため(図7参照)、回動した第2のリンク40がスライドロック爪22のフランジ22a(当接部)に接触する(図8参照)。この接触により、さらに、助手席1を後方へスライドさせても、ストッパリンク50は、その一端側がロアレール10のストッパ板16に接触する高さ位置に保持される。
【0026】
さらに、助手席1を後方へスライドさせる作業を行うと、ストッパリンク50の一端側がロアレール10のストッパ板16に接触するため、さらなる、助手席1の後方へのスライドが規制されることとなる(図1において、助手席1が想像線(B)で示される状態および図9に示される状態)。この規制された状態を補助ロック機構5のロック状態と記すこととする。このようにして、助手席1の後方へのスライドは、一旦、フロントのスライドのロック領域の後端において、規制された状態となる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「スライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドを規制可能な補助ロック機構」に相当する。
【0027】
この補助ロック機構5のロック状態から、さらに、助手席1を後方へスライドさせるためには、乗員は、引き起こしたハンドルを戻した後に、再度、ハンドルを引き起こす作業を行えばよい。すると、ハンドルの戻しに伴ってスライドロック爪22もロック状態に戻されるため、第2のリンク40とスライドロック爪22のフランジ22aとの接触も解消されることとなる(図4参照)。このように解消されると、第1のリンク30自身に作用する付勢力により、第1のリンク30はスライドロック爪22の上を通って反時計回りに回動していく。すると、第1のリンク30はピンP3の位置が上方に移動したことにより、ストッパリンク50のピン52が切欠14aの頂辺14a2に到達するまで上昇する(図10参照)。
【0028】
これにより、ストッパリンク50は、その一端側がロアレール10のストッパ板16に接触が回避される高さ位置に保持される。したがって、補助ロック機構5をロック状態からロック解除状態に切り替えることができる。そのため、再度、ハンドルを引き起こす作業を行えば、助手席1を2列目のスライドのロック領域へスライドさせることができる。このとき、再度、ストッパリンク50のピン52がロアレール10の切欠14aの傾斜辺14a1に到達すると、第1のリンク30自身に作用する付勢力に抗して、第1のリンク30はストッパリンク50を下降させながら回動していく(図11参照、図11において、時計回り方向に第1のリンク30は回動していく)。
【0029】
このとき、第1のリンク30と共に第2のリンク40も回動していく。そのため、第2のリンク40はスライドロック爪22のフランジ22aに接触していく。この接触により、第2のリンク40は、第2のリンク40自身に作用する付勢力に抗してスライドロック爪22のフランジ22aを乗り越えるように回動していくため(図12参照、図12において、反時計回り方向に第2のリンク40は回動していく)、助手席1を2列目のスライドのロック領域へスライドさせることができる。ここで言う、乗り越えるとは、スライドロック爪22のフランジ22aが第2のリンク40の回動に干渉する位置にあっても(図8参照)、ピンP2を介して第1のリンク30に対して第2のリンク40が回動することで、第2のリンク30がスライドロック爪22のフランジ22aを越えることである。
【0030】
そして、所望する位置まで助手席1をスライドさせると(図1において、助手席1が想像線(C)で示される状態までスライドさせると)、乗員は、引き起こしたハンドルを戻して、ロック機構4をロック状態へと戻す作業を行えばよい。このようにして、フロントのスライドのロック領域から2列目のスライドのロック領域へと助手席1を後方へ大きくスライドさせることができる(図13参照)。
【0031】
なお、このようにしてスライドさせた助手席1をフロントのスライドのロック領域へ戻す場合、再度、上述した一連の作業を行えばよい。その場合でも、上述した説明と同様に、2列目のスライドのロック領域の前端において、一旦、助手席1の前方へのスライドを規制できる。
【0032】
本発明の実施例に係る助手席1のスライド装置2は、上述したように構成されている。この構成によれば、ハンドルを引き起こしてフロントのスライドのロック領域から2列目のスライドのロック領域へ向けて助手席1を後方へ大きくスライドさせているとき、助手席1がこれら両領域の境界に到達すると、ロック機構4がロック解除状態であっても、補助ロック機構5がロック状態に切り替わっているため、助手席1のスライドを規制できる。そのため、従来技術と同様に、2列目シート101の乗員に対して注意喚起を促すことができる。なお、この補助ロック機構5をロック状態からロック解除状態へ戻すには、引き起こしているハンドルを戻した後に、再度、ハンドルを引き起こすだけでよい。したがって、従来技術と比較すると、着脱する部材等を必要としないため、補助ロック機構5の使用性を高めることができる。また、この構成によれば、上述したように両領域の境界において助手席1のスライドを規制したとき、一旦、この助手席1のスライドを戻した場合でも、再度、両領域の境界において助手席1のスライドを規制できる。したがって、補助ロック機構5の使用性をさらに向上させることができる。
【0033】
また、この構成によれば、リンク棒は、第1のリンク30と第2のリンク40とから構成されている。この第2のリンク40は、付勢部材(例えば、図示しない、トーションばね)を介して、図3において、矢印B方向に付勢された状態で、第1のリンク30の他端側に枢着されている。このように枢着されている第2のリンク40の回動は、常時、第1のリンク30に形成されているストッパ34によって規制されている。そのため、両ロック領域の境界の終点において、再度、ストッパリンク50が下方に移動してくるが、第2のリンク40が第1のリンク30に対して回動することで、補助ロック機構5との干渉を回避し、コンパクトな設計にできる。
【0034】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、「第1の車両用シート」として、「助手席1」を例に説明し、「第2の車両用シート」として、「2列目シート101」を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「第1の車両用シート」が、「2列目シート」であり、「第2の車両用シート」が、「3列目シート」であっても構わない。これと同様に、「第1の車両用シート」が、「2列目シート」であり、「第2の車両用シート」が、「助手席」であっても構わない。
【符号の説明】
【0035】
1 助手席(第1の車両用シート)
2 スライド装置
4 ロック機構
5 補助ロック機構
10 ロアレール
16 ストッパ板
20 アッパレール
22 スライドロック爪
22a フランジ
30 第1のリンク
40 第2のリンク
50 ストッパリンク
52 長孔
101 2列目シート(第2の車両用シート)
F 車両フロア
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の車両用シートである助手席のロアレールと第2の車両用シートである2列目シートのロアレールとが兼用になっているとき、2列目シートを後方に大きくスライドさせると、助手席もフロントのスライドのロック領域から2列目のスライドのロック領域まで大きくスライドさせることができる車両用シートのスライド装置が既に知られている。このようなスライド装置には、スライドさせた助手席が両ロック領域(フロントのスライドのロック領域と2列目のスライドのロック領域)の境界に到達すると、一旦、このスライドを規制する補助ロック機構が備えられている。これにより、スライドさせた助手席が2列目シートの乗員に干渉することがないように、2列目シートの乗員に対して注意喚起を促すことができる。ここで、下記特許文献1には、補助ロック機構が、ロアレールに対して着脱可能なストッパから構成されている技術が開示されている。これにより、簡便な構造で補助ロック機構を動作させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3400066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、ロアレールに対してストッパが着脱可能になっているため、補助ロック機構の使用性が悪かった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、両ロック領域を跨ぐように車両用シートをスライドさせているとき、両ロック領域の境界に到達した車両用シートのさらなるスライドを一旦規制する補助ロック機構を備えた車両用シートのスライド装置であっても、補助ロック機構の使用性を向上させたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、車両フロア側に組み付けられるロアレールと、ロアレールに対してスライド可能に組み付けられる第1の車両用シートと第2の車両用シートの各アッパレールと、ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドをスライドロック爪によりロック可能なロック機構と、ロック機構に設けられたハンドルを操作するとロック機構のロック解除が行われロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック位置を調節可能となっており、第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域と第2の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域とを跨ぐように第1の車両用シートのアッパレールをスライドさせるとき、スライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドを規制可能な補助ロック機構を備えている車両用シートのスライド装置であって、補助ロック機構は、両ロック領域の境界に設定され、ロアレール上に設けられるストッパ板と、アッパレール側に回転可能に枢着される第1の枢着部を有し、スライドロック爪の当接部と当接可能なリンク棒と、リンク棒の第1の枢着部とは異なる第2の枢着部に枢着され、一端部がストッパ板と当接可能なストッパリンクとを有し、ハンドルを操作してロック機構のロック解除を行ってスライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、リンク棒がスライドロック爪の当接部に接触することで、ストッパリンクの一端部がストッパ板に接触する高さ位置に保持され、この保持状態が、ハンドル操作を戻すことで、スライドロック爪の当接部とリンク棒との接触が解除されることで、解消することを特徴とする構成である。
この構成によれば、ハンドルを引き起こして第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域から第2の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域へ向けて第1の車両用シートを大きくスライドさせているとき、第1の車両用シートがこれら両領域の境界に到達すると、ロック機構がロック解除状態であっても、補助ロック機構がロック状態に切り替わっているため、第1の車両用シートのスライドを規制できる。そのため、従来技術と同様に、第2の車両用シートの乗員に対して注意喚起を促すことができる。なお、この補助ロック機構をロック状態からロック解除状態へ戻すには、引き起こしているハンドルを戻した後に、再度、ハンドルを引き起こすだけでよい。したがって、従来技術と比較すると、着脱する部材等を必要としないため、補助ロック機構の使用性を高めることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートのスライド装置であって、リンク棒が第1のリンクと第2のリンクとに成り、第2のリンクが第1のリンクに対して回転可能であり、所定位置に位置するように付勢されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、両ロック領域の境界の終点において、再度、ストッパリンクが下方に移動してくるが、第2のリンクが第1のリンクに対して回動することで、補助ロック機構との干渉を回避し、コンパクトな設計にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る助手席のスライド装置を適用した車両の内部構成を示す図である。
【図2】図2は、図1のスライド装置の分解斜視図である。
【図3】図3は、図1の助手席の補助ロック機構の模式図であり、助手席がフロントのスライドのロック領域でロックされている状態を示す図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図3に示す状態から、ハンドルを操作してロック機構をロック解除状態に切り替え、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせている図である。
【図6】図6は、図5に示す状態から、さらに、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせている図である。
【図7】図7は、図6に示す状態から、さらに、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせている図である。
【図8】図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図9は、図8に示す状態から、さらに、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせ、助手席のスライドを中間領域で規制した状態を示す図である。
【図10】図10は、図9に示す状態から、ハンドルの操作を戻してロック機構をロック状態に戻した状態を示す図である。
【図11】図11は、図10に示す状態から、再度、ハンドルを操作してロック機構をロック解除状態に切り替え、助手席を2列目シートのスライドのロック領域に向けてスライドさせている図であり、第2のリンクがスライドロック爪のフランジを乗り越える前の状態を示す図である。
【図12】図12は、図11に示す状態から、第2のリンクがスライドロック爪のフランジを乗り越えている途中の状態を示す図である。
【図13】図13は、図12に示す状態から、第2のリンクがスライドロック爪のフランジを乗り越えた状態を示す図であり、助手席が2列目のスライドのロック領域でロックされている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜13を参照して説明する。なお、以下の説明にあたって、「第1の車両用シート」として、「助手席1」を例に説明することとする。これと同様に、「第2の車両用シート」として、「2列目シート101」を例に説明することとする。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した各図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、助手席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0010】
はじめに、図1〜4を参照して、本発明の実施例に係る助手席1のスライド装置2を説明していく。このスライド装置2は、一対のスライドレール3と、ロック機構4と、補助ロック機構5とから構成されている。以下に、これら一対のスライドレール3と、ロック機構4と、補助ロック機構5とを個別に説明していく。
【0011】
まず、一対のスライドレール3から説明していく。この一対のスライドレール3は、一対のロアレール10と、この一対のロアレール10に対してそれぞれスライド可能に組み付けられている一対のアッパレール20とから構成されている。なお、これら一対のロアレール10、一対のアッパレール20は、各図において、そのアウタ側のもののみ示している。この一対のロアレール10は、車両フロアFにそれぞれ固着されている。一方、この一対のアッパレール20も、助手席1のシートクッション1aのクッションフレーム(図示しない)に固着されている。
【0012】
このスライドレール3により、助手席1を車両フロアFに対して前後にスライドさせることができる。なお、この一対のロアレール10は、図1からも明らかなように、2列目シート101のそれ(ロアレール)をも兼ねている。すなわち、一対のロアレール10は、助手席1と2列目シート101とにおいて兼用となっている。これにより、2列目シート101を後方に大きくスライドさせておくと、助手席1も後方に大きくスライドさせることができる(図1において、助手席1を実線で示す(A)の状態から、想像線で示す(C)に示す状態へとスライドさせることができる)。一対のスライドレール3は、このように構成されている。
【0013】
次に、ロック機構4を説明する。このロック機構4は、ループ状のハンドル(図示しない)と、このハンドルに連結されたスライドロック爪22とから構成されている。ハンドルは、乗員が直に引き起こし可能なレバー部材から構成されている。一方、スライドロック爪22は、その先端がロアレール10の係合孔12とアッパレール20の係合孔24とに差し込み可能な爪部材から構成されている。
【0014】
このスライドロック爪22は、その差し込み方向に付勢された状態でアッパレール20に枢着されている。そして、このスライドロック爪22の先端がロアレール10の係合孔12とアッパレール20の係合孔24とに差し込まれると(図3〜4に示される状態になると)、助手席1のスライドがロック状態(ロック機構4のロック状態)となる。
【0015】
そして、このロック状態から、スライドロック爪22に作用する付勢力に抗してハンドルを引き起こすと、先端の差し込みが解消するようにスライドロック爪22が回動していく(図4において、反時計回り方向にスライドロック爪22が回動していく)。これにより、助手席1のスライドがロック解除状態(ロック機構4のロック解除状態)に切り替わる。そして、引き起こしたハンドルを戻すと、スライドロック爪22の回動も戻されるため、助手席1のスライドもロック状態へと戻される。
【0016】
なお、ロアレール10の係合孔12は、助手席1のスライド方向に沿って複数形成されている。これにより、助手席1を所望するスライド位置にロックできる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「スライドのロック位置を調節」に相当する。この複数形成されている係合孔12のうち、フロントのスライドのロック領域(通常、助手席1が使用するスライドのロック領域)に対応するものを係合孔12aと付し、2列目のスライドのロック領域(通常、2列目シート101が使用するスライドのロック領域)に対応するものを係合孔12bと付すこととする(図1〜2参照)。
【0017】
なお、フロントのスライドのロック領域と、2列目のスライドのロック領域との間の領域(車両ボデーのピラーと向かい合う箇所)を、説明の便宜上、アンロック領域と記すこととする。また、ロアレール10におけるフランジ(折り曲げて形成される折れ曲がり部)14のうち、アンロック領域のフランジ14には、切欠14aが形成されている。
【0018】
また、ロアレール10における底面のうち、アンロック領域の底面には、ストッパ板16が形成されている。ロック機構4は、これらハンドルとスライドロック爪22とから構成されている。なお、2列目シート101も、上述した助手席1と同様に、所望するスライド位置にロックできるように構成されている。
【0019】
最後に、図2〜3を参照して、補助ロック機構5を説明する。ストッパ板16と、第1のリンク30と、第2のリンク40と、ストッパリンク50とから構成されている。なお、これら第1のリンク30と第2のリンク40とが、特許請求の範囲に記載の「リンク棒」に相当する。ストッパ板16は、後述するストッパリンク50が接触可能な規制部材であり、ロアレール10における底面のうちのアンロック領域に設けられている。
【0020】
第1のリンク30は、一端側に長孔32を有する略L字状に形成されたリンク部材であり、その略L字の屈曲部が回転中心を成すようにピンP1(第1の枢着部)を介してアッパレール20に締結されているベースプレート6に枢着されている。このとき、第1のリンク30は、付勢部材(例えば、図示しない、トーションばね)を介して、図3において、矢印A方向に付勢された状態で、ベースプレート6に枢着されている。このように枢着されている第1のリンク30の回動は、常時、後述するストッパリンク50に形成されている52がロアレール10のフランジ14に接触することによって規制されている。
【0021】
第2のリンク40は、略I字状に形成されたリンク部材であり、その一端側が回転中心を成すようにピンP2を介して第1のリンク30の他端側に枢着されている。このとき、第2のリンク40は、付勢部材(例えば、図示しない、トーションばね)を介して、図3において、矢印B方向に付勢された状態で、第1のリンク30の他端側に枢着されている。このように枢着されている第2のリンク40の回動は、常時、第1のリンク30に形成されているストッパ34によって規制されている。
【0022】
ストッパリンク50は、一端側にピン52を有する略クランク状に形成されたリンク部材であり、その他端側が回転中心を成すようにピンP3(第2の枢着部)を介して第1のリンク30の長孔32に枢着されている。このとき、ストッパリンク50は、アッパレール20に形成されているガイド孔26に差し込まれた状態で、第1のリンク30の長孔32に枢着されている。補助ロック機構5は、これらストッパ板16と、第1のリンク30と、第2のリンク40と、ストッパリンク50とから構成されている。
【0023】
続いて、図1、3〜12を参照して、これら一対のスライドレール3と、ロック機構4と、補助ロック機構5とから構成されているスライド装置2の動作を説明する。なお、以下の説明にあたって、助手席1がフロントのスライドのロック領域にロックされている状態(図1において、助手席1が実線(A)で示される状態および図3に示される状態)から説明していく。
【0024】
まず、乗員は、助手席1がフロントのスライドのロック領域にロックされている状態からハンドルを引き起こす作業を行う。すると、既に説明したように、ロック機構4がロック状態からロック解除状態へと切り替わる。これにより、乗員は、助手席1を後方へスライドさせることができる。次に、乗員は、ハンドルを引き起こしたまま助手席1を後方へスライドさせる作業を行う(図5参照)。
【0025】
このスライドによりストッパリンク50のピン52がロアレール10の切欠14aの傾斜辺14a1に到達すると、第1のリンク30自身に作用する付勢力により、第1のリンク30はストッパリンク50を上昇させながら回動していく(図6参照、図6において、反時計回り方向に第1のリンク30は回動していく)。さらに、助手席1を後方へスライドさせる作業を行うと、さらに、第1のリンク30と共に第2のリンク40も回動していくため(図7参照)、回動した第2のリンク40がスライドロック爪22のフランジ22a(当接部)に接触する(図8参照)。この接触により、さらに、助手席1を後方へスライドさせても、ストッパリンク50は、その一端側がロアレール10のストッパ板16に接触する高さ位置に保持される。
【0026】
さらに、助手席1を後方へスライドさせる作業を行うと、ストッパリンク50の一端側がロアレール10のストッパ板16に接触するため、さらなる、助手席1の後方へのスライドが規制されることとなる(図1において、助手席1が想像線(B)で示される状態および図9に示される状態)。この規制された状態を補助ロック機構5のロック状態と記すこととする。このようにして、助手席1の後方へのスライドは、一旦、フロントのスライドのロック領域の後端において、規制された状態となる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「スライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドを規制可能な補助ロック機構」に相当する。
【0027】
この補助ロック機構5のロック状態から、さらに、助手席1を後方へスライドさせるためには、乗員は、引き起こしたハンドルを戻した後に、再度、ハンドルを引き起こす作業を行えばよい。すると、ハンドルの戻しに伴ってスライドロック爪22もロック状態に戻されるため、第2のリンク40とスライドロック爪22のフランジ22aとの接触も解消されることとなる(図4参照)。このように解消されると、第1のリンク30自身に作用する付勢力により、第1のリンク30はスライドロック爪22の上を通って反時計回りに回動していく。すると、第1のリンク30はピンP3の位置が上方に移動したことにより、ストッパリンク50のピン52が切欠14aの頂辺14a2に到達するまで上昇する(図10参照)。
【0028】
これにより、ストッパリンク50は、その一端側がロアレール10のストッパ板16に接触が回避される高さ位置に保持される。したがって、補助ロック機構5をロック状態からロック解除状態に切り替えることができる。そのため、再度、ハンドルを引き起こす作業を行えば、助手席1を2列目のスライドのロック領域へスライドさせることができる。このとき、再度、ストッパリンク50のピン52がロアレール10の切欠14aの傾斜辺14a1に到達すると、第1のリンク30自身に作用する付勢力に抗して、第1のリンク30はストッパリンク50を下降させながら回動していく(図11参照、図11において、時計回り方向に第1のリンク30は回動していく)。
【0029】
このとき、第1のリンク30と共に第2のリンク40も回動していく。そのため、第2のリンク40はスライドロック爪22のフランジ22aに接触していく。この接触により、第2のリンク40は、第2のリンク40自身に作用する付勢力に抗してスライドロック爪22のフランジ22aを乗り越えるように回動していくため(図12参照、図12において、反時計回り方向に第2のリンク40は回動していく)、助手席1を2列目のスライドのロック領域へスライドさせることができる。ここで言う、乗り越えるとは、スライドロック爪22のフランジ22aが第2のリンク40の回動に干渉する位置にあっても(図8参照)、ピンP2を介して第1のリンク30に対して第2のリンク40が回動することで、第2のリンク30がスライドロック爪22のフランジ22aを越えることである。
【0030】
そして、所望する位置まで助手席1をスライドさせると(図1において、助手席1が想像線(C)で示される状態までスライドさせると)、乗員は、引き起こしたハンドルを戻して、ロック機構4をロック状態へと戻す作業を行えばよい。このようにして、フロントのスライドのロック領域から2列目のスライドのロック領域へと助手席1を後方へ大きくスライドさせることができる(図13参照)。
【0031】
なお、このようにしてスライドさせた助手席1をフロントのスライドのロック領域へ戻す場合、再度、上述した一連の作業を行えばよい。その場合でも、上述した説明と同様に、2列目のスライドのロック領域の前端において、一旦、助手席1の前方へのスライドを規制できる。
【0032】
本発明の実施例に係る助手席1のスライド装置2は、上述したように構成されている。この構成によれば、ハンドルを引き起こしてフロントのスライドのロック領域から2列目のスライドのロック領域へ向けて助手席1を後方へ大きくスライドさせているとき、助手席1がこれら両領域の境界に到達すると、ロック機構4がロック解除状態であっても、補助ロック機構5がロック状態に切り替わっているため、助手席1のスライドを規制できる。そのため、従来技術と同様に、2列目シート101の乗員に対して注意喚起を促すことができる。なお、この補助ロック機構5をロック状態からロック解除状態へ戻すには、引き起こしているハンドルを戻した後に、再度、ハンドルを引き起こすだけでよい。したがって、従来技術と比較すると、着脱する部材等を必要としないため、補助ロック機構5の使用性を高めることができる。また、この構成によれば、上述したように両領域の境界において助手席1のスライドを規制したとき、一旦、この助手席1のスライドを戻した場合でも、再度、両領域の境界において助手席1のスライドを規制できる。したがって、補助ロック機構5の使用性をさらに向上させることができる。
【0033】
また、この構成によれば、リンク棒は、第1のリンク30と第2のリンク40とから構成されている。この第2のリンク40は、付勢部材(例えば、図示しない、トーションばね)を介して、図3において、矢印B方向に付勢された状態で、第1のリンク30の他端側に枢着されている。このように枢着されている第2のリンク40の回動は、常時、第1のリンク30に形成されているストッパ34によって規制されている。そのため、両ロック領域の境界の終点において、再度、ストッパリンク50が下方に移動してくるが、第2のリンク40が第1のリンク30に対して回動することで、補助ロック機構5との干渉を回避し、コンパクトな設計にできる。
【0034】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、「第1の車両用シート」として、「助手席1」を例に説明し、「第2の車両用シート」として、「2列目シート101」を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「第1の車両用シート」が、「2列目シート」であり、「第2の車両用シート」が、「3列目シート」であっても構わない。これと同様に、「第1の車両用シート」が、「2列目シート」であり、「第2の車両用シート」が、「助手席」であっても構わない。
【符号の説明】
【0035】
1 助手席(第1の車両用シート)
2 スライド装置
4 ロック機構
5 補助ロック機構
10 ロアレール
16 ストッパ板
20 アッパレール
22 スライドロック爪
22a フランジ
30 第1のリンク
40 第2のリンク
50 ストッパリンク
52 長孔
101 2列目シート(第2の車両用シート)
F 車両フロア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロア側に組み付けられるロアレールと、
ロアレールに対してスライド可能に組み付けられる第1の車両用シートと第2の車両用シートの各アッパレールと、
ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドをスライドロック爪によりロック可能なロック機構と、
ロック機構に設けられたハンドルを操作するとロック機構のロック解除が行われロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック位置を調節可能となっており、
第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域と第2の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域とを跨ぐように第1の車両用シートのアッパレールをスライドさせるとき、スライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドを規制可能な補助ロック機構を備えている車両用シートのスライド装置であって、
補助ロック機構は、
両ロック領域の境界に設定され、ロアレール上に設けられるストッパ板と、
アッパレール側に回転可能に枢着される第1の枢着部を有し、スライドロック爪の当接部と当接可能なリンク棒と、
リンク棒の第1の枢着部とは異なる第2の枢着部に枢着され、一端部がストッパ板と当接可能なストッパリンクとを有し、
ハンドルを操作してロック機構のロック解除を行ってスライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、リンク棒がスライドロック爪の当接部に接触することで、ストッパリンクの一端部がストッパ板に接触する高さ位置に保持され、
この保持状態が、ハンドル操作を戻すことで、スライドロック爪の当接部とリンク棒との接触が解除されることで、解消することを特徴とする車両用シートのスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのスライド装置であって、
リンク棒が第1のリンクと第2のリンクとに成り、第2のリンクが第1のリンクに対して回転可能であり、所定位置に位置するように付勢されていることを特徴とする車両用シートのスライド装置。
【請求項1】
車両フロア側に組み付けられるロアレールと、
ロアレールに対してスライド可能に組み付けられる第1の車両用シートと第2の車両用シートの各アッパレールと、
ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドをスライドロック爪によりロック可能なロック機構と、
ロック機構に設けられたハンドルを操作するとロック機構のロック解除が行われロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック位置を調節可能となっており、
第1の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域と第2の車両用シートのアッパレールのスライドのロック領域とを跨ぐように第1の車両用シートのアッパレールをスライドさせるとき、スライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、ロアレールに対する第1の車両用シートのアッパレールのスライドを規制可能な補助ロック機構を備えている車両用シートのスライド装置であって、
補助ロック機構は、
両ロック領域の境界に設定され、ロアレール上に設けられるストッパ板と、
アッパレール側に回転可能に枢着される第1の枢着部を有し、スライドロック爪の当接部と当接可能なリンク棒と、
リンク棒の第1の枢着部とは異なる第2の枢着部に枢着され、一端部がストッパ板と当接可能なストッパリンクとを有し、
ハンドルを操作してロック機構のロック解除を行ってスライドさせた第1の車両用シートのアッパレールが両ロック領域の境界に到達すると、リンク棒がスライドロック爪の当接部に接触することで、ストッパリンクの一端部がストッパ板に接触する高さ位置に保持され、
この保持状態が、ハンドル操作を戻すことで、スライドロック爪の当接部とリンク棒との接触が解除されることで、解消することを特徴とする車両用シートのスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのスライド装置であって、
リンク棒が第1のリンクと第2のリンクとに成り、第2のリンクが第1のリンクに対して回転可能であり、所定位置に位置するように付勢されていることを特徴とする車両用シートのスライド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−112321(P2013−112321A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263306(P2011−263306)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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