説明

車両用シート装置

【課題】 ヘッドレストを使用位置にて固定するためのロック機構と、そのロック機構によるロック状態を解除するためのロック解除機構とを備える車両用シート装置において、シートバックに対するヘッドレストの組み付け作業や取り外し作業が極めて容易になる車両用シート装置を提供する。
【解決手段】 車両用シート装置10は、シートバック50の上部に装着されるヘッドレスト30を使用位置にて固定するためのロック機構40と、前記ロック機構40によるロック状態を解除するためのロック解除機構60を備えている。ロック機構40は、ヘッドレスト30の回動軸20に装着されるロックプレート42と、前記ロックプレート42に係合する係合フック43を備えている。ロック解除機構60は、シートバック50の上部からヘッドレスト30に向けて突出する作動用ロッド62を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストを使用位置にて固定するためのロック機構と、そのロック機構によるロック状態を解除するためのロック解除機構とを備えた車両用シート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッション、シートバックを折り畳み格納可能とした車両が多く開発されている。例えば、車体の床部にヒンジ部によって連結されたシートクッションの前部を中心としてシートクッションの後部が跳ね上げ可能に支持されるとともに、車体の床部に固定されたリクライニング機構によってシートバックが前倒れ可能に支持されている車両用シート装置が知られている。この車両用シート装置では、シートクッションを前方に跳ね上げた後、シートバックを前倒れさせることにより、前方に倒されたシートバックの背面を実質的に荷室床面の一部として機能させることができる。これにより、車体後部の荷室の床面を拡張することができる。このような車両用シート装置において、シートバックの上部にヘッドレストが装着されている場合には、上述したような折りたたみ構造を採用すると、シートバックの前倒れ操作時にヘッドレストが前方のシートと干渉することがある。そこで、従来、ヘッドレストを固定するためのロック部材に操作ケーブルの一端を接続し、かつ、前記操作ケーブルの他端を前記リクライニング機構に接続し、前記シートバックの前倒れ時に前記操作ケーブルの他端が引かれることによって、前記ロック部材がロック解除方向に駆動されるようにした車両用シート装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−297332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の車両用シート装置では、操作ケーブルの一端がリクライニング機構に接続されており、かつ、操作ケーブルの他端がヘッドレスト内のロック部材に接続されている。したがって、シートバックの上部に対してヘッドレストを装着する際には、操作ケーブルを取り回しする作業や、操作ケーブルの両端部をリクライニング機構及びロック部材にそれぞれ接続する作業が大変煩雑である。また、ロック部材とリクライニング機構とが操作ケーブルによって連結されているので、シートバックにヘッドレストを一旦装着した後は、ヘッドレストをシートバックの上部から取り外すことができないという不便さがある。
【0005】
そこで本発明は、ヘッドレストを使用位置にて固定するためのロック機構と、そのロック機構によるロック状態を解除するためのロック解除機構とを備える車両用シート装置において、シートバックに対するヘッドレストの組み付け作業や取り外し作業が極めて容易になる車両用シート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための第1の発明は、シートバックの上部に装着されるヘッドレストを使用位置にて固定するためのロック機構と、前記ロック機構によるロック状態を解除するためのロック解除機構とを備え、前記ロック機構によるロック状態が解除されることで前記ヘッドレストが前方及び後方のうち少なくとも一方向に回動可能となるように構成されている車両用シート装置であって、前記ロック機構は、前記ヘッドレストの回動軸に装着されるロック部材と、前記ロック部材に係合する係合部材とを備えており、前記ロック解除機構は、前記シートバックの上部から前記ヘッドレストに向けて突出することによって、前記係合部材を前記ロック部材に係合した状態から外れる方向に作動させる作動部材を備えていることを特徴とする車両用シート装置である。
この第1の発明によれば、シートバックの上部から作動部材が突出することによって、ロック機構によるヘッドレストのロック状態を解除することができる。したがって、ロック機構とロック解除機構とを操作用ケーブル等によって連結する必要がなく、ロック機構とロック解除機構とを切り離して構成することが可能になる。これにより、ロック機構がヘッドレスト内に設けられており、ロック解除機構がシートバック内に設けられているような場合において、これらの各機構が操作用ケーブル等によって連結されていないために、シートバックの上部に対するヘッドレストの組み付け作業や取り外し作業が極めて容易になる。
【0007】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記ロック解除機構は、前記シートバックの前傾動作に連動してその一端が引かれる操作用ケーブルを備えており、前記作動部材は、前記操作用ケーブルの他端にリンク部材を介して連結されるとともに、前記操作用ケーブルの一端が引かれることによって前記シートバックの上部から突出することを特徴とする車両用シート装置である。
この第2の発明によれば、作動部材、リンク部材、及び操作用ケーブルによってロック解除機構を構成することができる。したがって、ロック解除機構を簡素に構成することが可能である。また、この第2の発明によれば、シートバックの前倒し操作という一段階の操作によって、ロック機構によるロック状態の解除をも同時に行わせることが可能になる。
【0008】
第3の発明は、前記第1の発明または第2の発明において、前記ヘッドレストには、該ヘッドレストを前方に回動する方向に付勢する付勢バネを備えていることを特徴とする車両用シート装置である。
この第3の発明によれば、ロック機構によるロック状態が解除された際に、ヘッドレストが前記付勢バネによって前方に回動する方向に付勢される。したがって、シートバックの前倒し操作という一段階の操作によって、ロック機構によるロック状態の解除をも同時に行わせることが可能になるだけではなく、ヘッドレストを前方に向けて自動的に回動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヘッドレストを使用位置にて固定するためのロック機構と、そのロック機構によるロック状態を解除するためのロック解除機構とを備える車両用シート装置において、シートバックに対するヘッドレストの組み付け作業や取り外し作業が極めて容易になる車両用シート装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態にかかる車両用シート装置10の外観を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る車両用シート装置10は、乗員が着座するために車両の床部に配設されるシートクッション70を備えている。このシートクッション70の後部には、乗員が背を持たせ掛けるためのシートバック50が装着されている。このシートバック50はリクライニング機構71によって前方及び後方に傾斜させることが可能である。このシートバック50の上部には、乗員が頭部を持たせ掛けるためのヘッドレスト30が装着されている。
【0011】
まず、ヘッドレスト30の構造について説明する。図2は、ヘッドレスト30の分解斜視図である。図3は、ヘッドレスト30の側面図であり、ヘッドレスト30の内部の状態を示している。
図2、図3に示すように、ヘッドレスト30は、該ヘッドレスト30をシートバック50の上部に装着するためのステー32と、そのステー32に対して回動軸20を介して回動可能に取付けられるインサートステー33を備えている。
ステー32は、左右一対の縦軸部32bと、その一対の縦軸部32bの上端部を連結する横軸部32aを一体に備えて略逆U字型の形状に形成されている。このステー32としては、金属製のパイプ材等を使用することができる。このステー32の横軸部32aには、一対の軸受ブラケット34a,34bが所定の間隔を空けて設けられている。この一対の軸受ブラケット34a,34bには、軸受孔35a,35bがそれぞれ形成されている。この軸受孔35a,35bに対して回動軸20の両端部が挿通された後に、その回動軸20に対して固定用リング36a,36bがそれぞれ取付けられる。この固定用リング36a,36bは、薄板のリング状の金具であって、軸受孔35a,35bに挿通された回動軸20の軸方向への抜けを防止する。軸受孔35a,35bの孔径は、回動軸20の軸径よりも若干大きく形成されており、回動軸20は軸受孔35a,35bに挿通された状態において自在に回動可能である。回動軸20の軸周りには、コイル状に巻かれた第1の付勢バネ37が同一軸線上に位置するように装着される。この第1の付勢バネ37の一端はステー32の横軸部32aに掛けられており、この第1の付勢バネ37の他端はインサートステー33の下端部33aに掛けられている。この付勢バネの弾性力によって、インサートステー33が回動軸20を中心として前方に回動する方向に付勢されている。
【0012】
インサートステー33は、例えば金属製のパイプ材等により略長方形でかつ環状に形成されており、ヘッドレスト30の内部に芯体として配設される部材である。このインサートステー33の周囲には、例えばウレタンフォームなどのパッド体及び表皮材からなるクッション体31が被覆されており、このクッション体31によって乗員の頭部に対する衝撃吸収性能やフィット感が高められている。インサートステー33の下端部33aには、ヒンジ部材38a,38bが左右一対に取付けられている。この一対のヒンジ部材38a,38bには、ヒンジ孔39a,39bがそれぞれ形成されている。このヒンジ孔39a,39bに対して回動軸20の両端部が挿通された後に、その回動軸20に対して固定用リング41a,41bがそれぞれ取付けられる。この固定用リング41a,41bによって、ヒンジ孔39a,39bに挿通された回動軸20の軸方向への抜けが防止されている。ヒンジ孔39a,39bの孔径は、回動軸20の軸径とほぼ等しい大きさに形成されており、回動軸20はヒンジ部材38a,38bに対して回動不能な状態となるように固定されている。
【0013】
図2、図3に示すように、ヘッドレスト30の内部には、該ヘッドレスト30を起立した使用位置にて固定するためのロック機構40が設けられている。このロック機構40は、回動軸20の軸周りに装着された略円板状のロックプレート42と、軸受ブラケット34bの下部に対してピン44によって回動可能に取付けられた略L字型の係合フック43によって構成されている。ピン44の軸周りには、コイル状に巻かれた第2の付勢バネ45が装着される。この第2の付勢バネ45の一端は軸受ブラケット34bに掛けられており、この第2の付勢バネ45の他端は係合フック43に掛けられている。この第2の付勢バネ45の弾性力によって、係合フック43がロックプレート42に係合する方向に付勢されている。ロックプレート42の外周には係合溝42aが凹状に形成されており、この係合溝42aに対して、係合フック43の先端に凸状に形成された係合爪43aが嵌り込むようにして係合する。係合フック43における係合爪43aと反対側の端部には、後述するロック解除機構60によって上方に突出する作動用ロッド62を受けるための受動用ロッド46がピン47を介して回動可能に連結されている。この受動用ロッド46は、合成樹脂により略円筒状に形成されるとともにヘッドレスト30の下部に向けて開口するように配置された第1のスリーブ48の内部に上下動可能な状態で挿通されている。この第1のスリーブ48は、ステー32の縦軸部32bに取付けられた位置決め用ブラケット49に設けられている挿通孔49aの内部に挿通されてその軸心が振れないように位置決めがなされている。本実施の形態において、前記ロックプレート42が、本発明における「ロック部材」に対応している。前記係合フック43が、本発明における「係合部材」に対応している。
【0014】
次に、シートバック50の構造について説明する。図4は、シートバック50の分解斜視図である。図5は、シートバック50の正面図であり、シートバック50の内部の状態を示している。
図4、図5に示すように、シートバック50の内部には、右の縦フレーム52aと、左の縦フレーム52bと、左右の縦フレーム52a,52bの上端部間に位置する上フレーム53と、これら3つのフレームの背面側に位置する背面ベース板54とが配設されている。前記上フレーム53には、金属製の中空材等によって角筒状に形成された一対のステー挿入部材51a,51bが所定の間隔を空けて取付けられている。この一対のステー挿入部材51a,51bに対して、図示しないヘッドレストサポートを介してステー32の縦軸部32bがそれぞれ上方から挿入される。これにより、シートバック50の上部に対してヘッドレスト30が装着される。上フレーム53の略中央部には、合成樹脂により略円筒状に形成された第2のスリーブ57がブラケット57aを介して取付けられている。この第2のスリーブ57の内部には、後述するロック解除機構60によってシートバック50の上部に突出する作動用ロッド62が上下動可能な状態で挿通される。
【0015】
図4に示すように、背面ベース板54はその一部がさらに背面側に向けて段差状に凹んでおり、ロック解除機構60を収容するための収容室61を形成している。この収容室61には、ロック解除機構60を構成するための各種の部品、すなわち、作動用ロッド62、操作用ケーブル63、及びリンクアーム64が収容される。
【0016】
作動用ロッド62は、略円柱状に形成された鋼製部材であり、スリーブ57の内部に上下動可能な状態で挿通されている。作動用ロッド62の下端部には連結孔62aが設けられており、この連結孔62aに対してリンクアーム64に設けられた連結ピン64aが挿入されるとともに、この連結ピン64aに対して固定用リング64bが装着されている。これにより、作動用ロッド62とリンクアーム64とが連結ピン64aを介して回動可能な状態で連結されている。この作動用ロッド62は、係合フック43をロックプレート42に係合した状態から外れる方向に作動させるための部材であり、本発明における「作動部材」に対応している。なお、本実施の形態では、作動用ロッド62が略円柱状に形成されている例を示しているが、このような態様に限定するものではなく、例えば、「作動部材」を角柱状の部材により構成してもよい。
【0017】
リンクアーム64は、長尺状に形成された鋼製部材である。背面ベース板54には、このリンクアーム64を装着するためのリンク軸64fがブラケット64eを介して取付けられている。リンクアーム64の略中央部に形成された中心孔64cにリンク軸64fが挿入された後に、このリンク軸64fに対して固定用リング64gが取付けられる。これにより、リンクアーム64は背面ベース板54に対して回動可能な状態で軸着されている。このリンク軸64fの軸周りには、コイル状に巻かれた第3の付勢バネ65が同一軸線上に位置するように装着されており、この第3の付勢バネ65の一端はリンクアーム64に掛けられるとともに、この第3の付勢バネ65の他端はブラケット64eに掛けられている。この第3の付勢バネ65の弾性力によって、リンクアーム64は作動用ロッド62をロック解除側に作動する方向、すなわち、作動用ロッド62を下方に引き下げる方向に付勢されている。このリンクアーム64が、本発明における「リンク部材」に対応している。
【0018】
操作用ケーブル63は、鋼製のワイヤケーブル63aと、そのワイヤケーブル63aの外面を被覆する合成樹脂製の外皮チューブ63bとを備えている。この操作用ケーブル63は、背面ベース板54に対して2つのブラケット63c,63dを介して取付けられている。
操作用ケーブル63の上端部には、合成樹脂により短棒状に形成された第1の連結部材63eが取付けられており、この第1の連結部材63eがリンクアーム64に形成されている長孔64dに挿入された後に、この第1の連結部材63eに対して固定用リング63gが取付けられている。これにより、操作用ケーブル63の上端部が、リンクアーム64に形成された長孔64dに連結されている。また、第1の連結部材63eは長孔64dの内部において移動可能であるとともに、この長孔64dの内部において引張りバネ66の弾性力によってリンクアーム64の中心孔64cに向かう方向に引っ張られた状態となっている。また、操作用ケーブル63の下端部には、合成樹脂により短棒状に形成された第2の連結部材63fが取付けられている。この第2の連結部材63fは、シートクッション70内部に配設されている左側フレーム73に取付けられている連結用ブラケット74の連結部74aに連結されている。
【0019】
以上説明したように、ヘッドレスト30の内部に配設されたロックプレート42及び係合フック43によって、該ヘッドレスト30を起立した使用位置にて固定するためのロック機構40が構成される。また、シートバック50の内部に配設された作動用ロッド62、リンクアーム64、及び、操作用ケーブル63によって、前記ロック機構40によるロック状態を解除するためのロック解除機構60が構成される。以下、これらロック機構40及びロック解除機構60の具体的な動作について説明する。
【0020】
図6及び図7は、車両用シート装置10の側面図であり、図6はシートバック50が起立した状態を示しており、図7はシートバック50がリクライニング軸72を回動中心として前方に倒されている状態を示している。図6及び図7に示すように、シートバック50を前倒し操作することによって、外皮チューブ63bの下端部を固定しているブラケット63dと、ワイヤケーブル63aの下端部と連結している連結用ブラケット74との相対的な距離が長くなり、これにともなって、外皮チューブ63bの下端部からワイヤケーブル63aが下方に向けて引き出される。
【0021】
図8及び図9は、ワイヤケーブル63a(操作用ケーブル63)が下方に引っ張られた際における、ロック解除機構60及びロック機構40の状態をそれぞれ示している。
図8に示すように、ワイヤケーブル63aが下方に引っ張られることにより、そのワイヤケーブル63aの上端部に連結されているリンクアーム64がリンク軸64fを中心として正面視で時計回り方向(図8において時計回り方向)に回動するとともに、このリンクアーム64に対して連結ピン64aを介して連結されている作動用ロッド62がシートバック50の上部において突出される。シートバック50の上部にはヘッドレスト30が装着されており、このヘッドレスト30を使用位置にて固定するためのロック機構40には、作動用ロッド62の上端面にその下端面が突き合わされるようにして受動用ロッド46が備えられている。
【0022】
図9に示すように、作動用ロッド62が上方に突出されると、その作動用ロッド62に突き上げられるようにして、受動用ロッド46が上方に向けて移動する。受動用ロッド46が上方に移動すると、その受動用ロッド46の上端部にピン47を介して連結された係合フック43が、ピン44を中心として側面視で反時計回り方向(図9において反時計回り方向)に回動する。係合フック43が反時計回り方向に回動すると、この係合フック43の係合爪43aがロックプレート42の係合溝42aに嵌り込んだ状態から外れることとなる(ロック解除)。これにより、ロックプレート42が回動不能な状態から解除されることとなり、ヘッドレスト30の内部に配設されているインサートステー33が回動軸20を回動中心として前方に回動可能な状態となる。インサートステー33は第1の付勢バネ37によって前方に回動する方向に常時付勢されているので、このようにロック機構40によるロック状態が解除されることにより、インサートステー33がクッション体31と一体となって前方に向けて自動的に回動する。
【0023】
図8に示すように、ワイヤケーブル63aの上端部には第1の連結部材63eが取付けられており、この第1の連結部材63eはリンクアーム64に形成された長孔64dに挿通されるとともに、引張りバネ66によってリンクアーム64の中心孔64cに向かう方向に引っ張られた状態である。シートバック50を図7に示す状態からさらに前方に向けて傾倒させた場合には、ワイヤケーブル63aが図8に示す状態から下方に向けてさらに引っ張られることとなるのであるが、第1の連結部材63eが長孔64dの内部で下方に移動することによって、ワイヤケーブル63aがさらに下方に引っ張られることを許容するための遊びしろが確保されている。
【0024】
上述のように構成される車両用シート装置10によれば、シートバック50の上方に突出する作動用ロッド62によって、係合フック43がロックプレート42に係合した状態から外れる方向に作動される(ロック解除動作)。したがって、係合フック43に対して操作用ケーブル63を直接的に連結する必要がなく、換言すれば、ロック機構40とロック解除機構60とを操作用ケーブル63によって連結する必要がない。したがって、車両用シート装置10が完成した後においても、ロック機構40及びロック解除機構60とをそれぞれ分離することが可能になるとともに、ヘッドレスト30とシートバック50とをそれぞれ分離することが可能になる。この場合、シートバック50に対してヘッドレスト30を装着する際における操作用ケーブル63の取り回し作業が不要となる。また、シートバック50からヘッドレスト30を取り外す際における操作用ケーブル63の取り外し作業が不要となる。
【0025】
本実施の形態に係る車両用シート装置10によれば、シートバック50の前傾動作に連動して、作動用ロッド62が上方に向けて突出されるとともに、この作動用ロッド62によって、係合フック43がロックプレート42に係合した状態(ロック状態)から解除される。また、ヘッドレスト30が第1の付勢バネ37によって前方に向けて自動的に回動する。したがって、シートバック50の前倒し操作という一段階の操作によって、ロック機構40によるロック状態を解除させることができるだけでなく、ヘッドレスト30を前方に自動的に回動させることができるので便利である。
【0026】
本発明に係る車両用シートは、種々のタイプの車両用シート装置に適用することが可能である。例えば、車体の床部にヒンジ部によって連結されたシートクッションの前部を中心としてシートクッションの後部が跳ね上げ可能に支持されるとともに、車体の床部に固定されたリクライニング機構によってシートバックが前倒れ可能に支持されている車両用シート装置に対して本発明を適用することができる。この場合、シートクッションを前方に跳ね上げた後、シートバックの前倒れ操作時にヘッドレストがシートクッションと干渉することが防止される。
また、本発明は、シートクッションが前方に跳ね上げ可能に支持されていない車両用シート装置に対しても適用可能である。この場合、シートバックの前倒れ操作時にヘッドレストが前部座席のシートバックの背面と干渉することが防止される。
【0027】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
上記実施の形態では、ヘッドレスト30が回動軸20を中心として前方に回動するタイプの車両用シート装置10に対して本発明を適用した例を示したが、このような態様に限定されるものではない。例えば、ヘッドレスト30が回動軸20を中心として後方に回動するタイプの車両用シート装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【0028】
上記実施の形態では、リンクアーム64とシートクッション70の左側フレーム73とが操作用ケーブル63によって連結されているタイプの車両用シート装置10に対して本発明を適用した例を示したが、このような態様に限定されるものではない。例えば、操作用ケーブル63を用いるのではなく、リンクアーム64とシートクッション70の左側フレーム73とが、金属等の細長い棒材によって連結されているタイプの車両用シート装置に対しても本発明を適用することができる。
【0029】
本発明は、シートバックを所定の使用位置にて固定するためのロック機構と、そのロック機構によるロック状態を解除するためのロック解除機構とが連結されていない車両用シート装置であれば、いかなる車両用シート装置でも含み得るものである。
例えば、シートバックの前傾動作を検知することによって無線信号を出力することのできるセンサ類(あるいはスイッチ類)をリクライニング機構に内蔵しておく。そして、このセンサ類からの無線信号を受信したタイミングで作動用ロッドを上方に突出させることのできる電磁ソレノイド等の駆動機器をシートバックの内部に配設しておく。あるいは、前記センサ類からの無線信号を受信したタイミングで係合フックをロック解除方向に作動させることのできる電磁ソレノイド等の駆動機器をヘッドレストの内部に配設しておく。このようにすれば、シートバックの前傾動作に連動してロック機構によるロック状態を解除させることができる。この場合であっても、ロック機構とロック解除機構とを操作用ケーブル等によって連結する必要がないので、ヘッドレストとシートバックとを切り離すことが可能であり、シートバックに対してヘッドレストを装着する際の作業や取り外す際の作業が極めて容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】車両用シート装置の外観を示す斜視図である。
【図2】ヘッドレストの分解斜視図である。
【図3】ヘッドレストの側面図であり、ヘッドレストの内部の状態を示している。
【図4】シートバックの分解斜視図である。
【図5】シートバックの正面図であり、シートバックの内部の状態を示している。
【図6】車両用シート装置の側面図であり、シートバックが起立した状態を示している。
【図7】車両用シート装置の側面図であり、シートバックがリクライニング軸を回動中心として前方に倒されている状態を示している。
【図8】ワイヤケーブルが下方に引っ張られた際におけるロック解除機構の状態を示す図である。
【図9】ワイヤケーブルが下方に引っ張られた際におけるロック機構の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 車両用シート装置
20 回動軸
30 ヘッドレスト
32 ステー
37 第1の付勢バネ
40 ロック機構
42 ロックプレート(ロック部材)
43 係合フック(係合部材)
46 受動用ロッド
50 シートバック
54 背面ベース板
60 ロック解除機構
62 作動用ロッド(作動部材)
63 操作用ケーブル
64 リンクアーム
70 シートクッション


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの上部に装着されるヘッドレストを使用位置にて固定するためのロック機構と、前記ロック機構によるロック状態を解除するためのロック解除機構とを備え、前記ロック機構によるロック状態が解除されることで前記ヘッドレストが前方及び後方のうち少なくとも一方向に回動可能となるように構成されている車両用シート装置であって、
前記ロック機構は、前記ヘッドレストの回動軸に装着されるロック部材と、前記ロック部材に係合する係合部材とを備えており、
前記ロック解除機構は、前記シートバックの上部から前記ヘッドレストに向けて突出することによって、前記係合部材を前記ロック部材に係合した状態から外れる方向に作動させる作動部材を備えていることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シート装置であって、
前記ロック解除機構は、前記シートバックの前傾動作に連動してその一端が引かれる操作用ケーブルを備えており、前記作動部材は、前記操作用ケーブルの他端にリンク部材を介して連結されるとともに、前記操作用ケーブルの一端が引かれることによって前記シートバックの上部から突出することを特徴とする車両用シート装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用シート装置であって、
前記ヘッドレストには、該ヘッドレストを前方に回動する方向に付勢する付勢バネを備えていることを特徴とする車両用シート装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−87702(P2006−87702A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277289(P2004−277289)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000101639)アラコ株式会社 (11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】