説明

車両用シート装置

【課題】車両状態が変化しても最適な姿勢を確保できるとともに、小型、軽量かつ安価な車両用シート装置を提供する。
【解決手段】車両状態を検出する車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55、着座センサ60、顔向センサ61と、車両用シート1の姿勢を変更する右側リクライニング装置5、左側リクライニング装置6と、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55、着座センサ60、顔向センサ61により検出された車両状態に基づいて右側リクライニング装置5、左側リクライニング装置6を制御する制御装置50とを備えた車両用シート装置である。車両用シート1の左側サイドフレーム13、左側サイドフレーム14に、別々に駆動可能なリクライニング装置17、18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適な姿勢を確保する車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された車両用シート装置が知られている。この車両用シート装置は、車両状態を検出する車両状態検出手段と、車両用シートの姿勢を変更する姿勢変更手段と、車両状態検出手段により検出された車両状態に基づいて姿勢変更手段を制御する制御手段とを備えている。
【0003】
この車両用シート装置によれば、車両状態検出手段が車両の走行状態や姿勢状態を検出し、これらの検出値に基づいて制御手段が姿勢変更手段を制御して運転者の姿勢を変更しているため、最適な運転姿勢を確保できるものと考えられる。
【特許文献1】特表2870253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の車両用シート装置では、姿勢変更手段は車両用シートの座面下に設けられたモータであり、このモータにより車両用シート全体を左右に傾けているため以下のような問題が発生する。すなわち、車両用シート全体を左右に傾けても、通常の車両用シートでは運転者の上半身が左右に滑ってしまい、上半身と下半身とが「く」の字に曲がってしまうため、必ずしも最適な運転姿勢を確保できるとは限らない。また、車両用シート全体を左右に傾けると、車体に対する車両用シートの位置が変化するため、ウインドーに体が接触したり、車両用シートと車体との間に体が挟まれる可能性がある。さらには、車両用シート全体を左右に傾けるためには、大きなモータが必要になり、車両全体の重量が増加するとともに製造コストの高騰化を招いてしまう。
【0005】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、車両状態が変化しても最適な姿勢を確保できるとともに、小型、軽量かつ安価な車両用シート装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る車両用シート装置の特徴は、車両状態を検出する車両状態検出手段と、車両用シートの姿勢を変更する姿勢変更手段と、前記車両状態検出手段により検出された車両状態に基づいて前記姿勢変更手段を制御する制御手段と、を備えた車両用シート装置において、前記姿勢変更手段は、車両用シートの左側及び右側の全部または一部を前傾可能であることである。
【0007】
請求項2に係る車両用シート装置の特徴は、請求項1において、前記姿勢変更手段は、前記車両用シートの左右のサイドフレームにそれぞれ設けられ、別々に駆動可能なリクライニング装置であることである。
【0008】
請求項3に係る車両用シート装置の特徴は、請求項1において、前記姿勢変更手段は、前記車両用シートのシートバックフレームの左右の肩部にそれぞれ設けられ、別々に駆動可能なショルダーサポートであることである。
【0009】
請求項4に係る車両用シート装置の特徴は、乗員が着座するシートクッションと、乗員の背中を支持するシートバックと、前記シートバックの左右何れか一方部分の全部或いは一部を他方部分に対して車両前方に突出させる姿勢変更手段と、を備えたことである。
【0010】
請求項5に係る車両用シート装置の特徴は、車両の状態、乗員の状態、車両の操舵情報、及び車両の進路情報のうちの少なくとも一つに応じて、シートの形状を変形させる姿勢変更手段を有することである。
【0011】
請求項6に係る車両用シート装置の特徴は、請求項5において、前記シートは乗員の背中を支持するシートバックを有し、前記姿勢変更手段は、前記シートバックの左右何れか一方部分の全部或いは一部を他方部分に対して車両前方に突出させることである。
【0012】
請求項7に係る車両用シート装置の特徴は、請求項6において、前記姿勢変更手段は、前記シートバックの左右骨格をそれぞれ形成し、車両の前後方向に独立して傾斜可能な左側シートバックフレーム及び右側シートバックフレームを備え、駆動装置により前記両シートバックフレームの少なくともいずれか一方が傾斜されることである。
【0013】
請求項8に係る車両用シート装置の特徴は、請求項7において、前記駆動装置は、前記左側シートバックフレームを傾斜させる第1駆動装置と、前記右側シートバックフレームを傾斜させる第2駆動装置とを有することである。
【0014】
請求項9に係る車両用シート装置の特徴は、請求項7において、前記姿勢変更手段は、前記両シートバックフレームを両方とも傾斜させることによりシートリクライニング機能を備えることである。
【0015】
請求項10に係る車両用シート装置の特徴は、請求項6において、前記姿勢変更手段は、前記シートバックの上方部分に左右それぞれに配設された左側ショルダーサポート及び右側ショルダーサポートを有し、駆動装置により前記両ショルダーサポートの少なくともいずれか一方が車両前方に突出されることである。
【0016】
請求項11に係る車両用シート装置の特徴は、請求項10において、前記駆動装置は、前記左側ショルダーサポートを突出させる第3駆動装置と、前記右側ショルダーサポートを突出させる第4駆動装置とを有することである。
【0017】
請求項12に係る車両用シート装置の特徴は、請求項4乃至11のいずれか1項において、前記姿勢変更手段は、乗員の目線を車両進行方向に向かせるために作動されることである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る車両用シート装置においては、車両状態検出手段により検出された車両状態に基づいて、制御手段が車両用シートの左側及び右側の全部または一部を前傾可能な姿勢変更手段を制御するため、乗員の上半身の移動を防止することができる上、目線が内側へ向けられる。この結果、乗員は車両の進行方向を向くことができる。また、姿勢変更手段は車両用シートの左側及び右側の全部または一部を前傾させるだけであるため、車体に対する車両用シートの位置が変化することはなく、ウインドーに体が接触したり、車両用シートと車体との間に体が挟まれることがない。さらには、車両用シート全体を左右に傾ける必要がないため、姿勢変更手段を小型、軽量にできるとともに製造コストの低廉化を実現することができる。したがって、この車両用シート装置によれば、車両状態が変化しても最適な姿勢を確保できるとともに、小型、軽量かつ安価である。
【0019】
請求項2に係る車両用シート装置においては、車両用シートの左右のサイドフレームにそれぞれ設けられたリクライニング装置により、車両用シートの左側及び右側の全部を前傾させることができる。
【0020】
請求項3に係る車両用シート装置においては、車両用シートのシートバックフレームの肩部にそれぞれ設けられたショルダーサポートにより、車両用シートの左側及び右側の一部である肩部を前傾させることができる。
【0021】
請求項4に係る車両用シート装置においては、姿勢変更手段の作動により、乗員の姿勢を車両の進行方向に対して最適なものとすることができる。また、車両用シート全体を左右に傾ける必要がないため、姿勢変更手段を小型、軽量にできるとともに製造コストの低廉化を実現することができる。したがって、この車両用シート装置によれば、車両状態が変化しても最適な姿勢を確保できるとともに、小型、軽量かつ安価である。
【0022】
請求項5に係る車両用シート装置においては、姿勢変更手段の作動により、乗員の姿勢を車両の進行方向に対して最適なものとすることができる。また、車両用シート全体を左右に傾ける必要がないため、姿勢変更手段を小型、軽量にできるとともに製造コストの低廉化を実現することができる。したがって、この車両用シート装置によれば、車両状態が変化しても最適な姿勢を確保できるとともに、小型、軽量かつ安価である。
【0023】
請求項6に係る車両用シート装置においては、姿勢変更手段の作動により、シートバックの左右何れか一方部分の全部或いは一部を他方部分に対して車両方向に突出させることによって、シートの形状を変形させることができる。
【0024】
請求項7に係る車両用シート装置においては、左右両シートバックフレームの少なくともいずれか一方が傾斜されることにより、シートの形状を変形させることができる。
【0025】
請求項8に係る車両用シート装置においては、左側シートバックフレームを傾斜させる第1駆動装置と、右側シートバックフレームを傾斜させる第2駆動装置とにより、両シートバックフレームの作動応答性をさらに向上させることができる。
【0026】
請求項9に係る車両用シート装置においては、シートのリクライニング機能としても作動することができる。
【0027】
請求項10に係る車両用シート装置においては、両ショルダーサポートの少なくともいずれか一方が突出することにより、シートの形状を変形させることができる。
【0028】
請求項11に係る車両用シート装置においては、左側ショルダーサポートを突出させる第3駆動装置と、右側ショルダーサポートを突出させる第4駆動装置とを備えることにより、両ショルダーサポートの作動応答性を更に向上させることができる。
【0029】
請求項12に係る車両用シート装置においては、姿勢変更手段の作動により、乗員の目線を車両の進行方向に向かせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明に係る車両用シート装置を具体化した実施形態1、2を図面に基づいて以下に説明する。実施形態1の車両用シート装置では、図1に示すように、車両用シート1は、運転者(乗員)が着座するシートクッション2と、運転者(乗員)の背中を支持するシートバック3と、シートクッション2に対するシートバック3の傾きを調整する右側リクライニング装置5及び左側リクライニング装置6とを備えている。この右側リクライニング装置5及び左側リクライニング装置6が姿勢変更手段である。
【0031】
図2は、車両用シート1のシートフレーム10の斜視図である。シートフレーム10はシートバックフレーム11とシートクッションフレーム12とからなり、シートバックフレーム11は右側サイドフレーム13、左側サイドフレーム14及びメンバ15、16を有している。また、右側サイドフレーム13及び左側サイドフレーム14には、右側リクライニング装置5の右側モータ17(第2駆動装置)及び左側リクライニング装置6の左側モータ18(第1駆動装置)が固定されている。
【0032】
図3は、右側リクライニング装置5及び左側リクライニング装置6の一部断面図である。右側リクライニング装置5は、右側モータ17、減速機構23及びリクライニング機構30を有している。また、左側リクライニング装置6は、左側モータ18、減速機構23及びリクライニング機構30を有している。両側モータ17、18はケース21、21に固定され、ケース21、21は両サイドフレーム13、14に固定されている。ケース21内には、モータの回転を減速して駆動軸25に伝達する減速機構23が収納されている。
【0033】
また、両サイドフレーム13、14とシートクッションフレーム12との間には、リクライニング機構30、30が設けられている。リクライニング機構30、30は、円盤状の外歯部材31、円盤状の内歯部材33及びリング部材35を有している。外歯部材31は外歯を有し、シートクッションフレーム12に固定されている。また、外歯部材31は、図4にも示すように、ウェッジ37及びスプリング38により、駆動軸25と偏心した状態で、駆動軸25のボス部25aに支持されている。図3に示すように、内歯部材33は、外歯部材31の外歯の歯数と異なる歯数を持つ内歯を有し、両サイドフレーム13、14に固定されている。この外歯部材31及び内歯部材33はリング部材35により覆われている。これにより、両モータ17、18を正転及び逆転させることにより駆動軸25が回転されると、駆動軸25と同心の内歯部材33が外歯部材31の軸心回りに揺動し、外歯部材31と内歯部材33との歯数の差に応じて減速し、メンバ15、16の弾性変形範囲内で、両サイドフレーム13、14を前傾又は後傾させることができる。また、両側モータ17、18を同時に同方向に回転させることにより、通常のシートリクライニング装置として使用することができる。
【0034】
次に、この車両用シート装置の電気的接続を図5に示すブロック図を用いて説明する。制御手段としての制御装置50には、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、着座センサ60、顔向センサ61が接続され、各センサ51、52、53、60、61が検出した検出信号が入力される。車速センサ51は車速を検出し、舵角センサ52はハンドルの操舵角を検出し、加速度センサ53は車両の左右方向の横方向加速度を検出する。着座センサ60は運転者(乗員)の姿勢を検知し、顔向センサ61は運転者(乗員)の顔の向き、ひいては運転者(乗員)の目線の方向を検知する。また、制御装置50には、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55、リクライニング位置調整スイッチ56が接続されている。制御装置50は、カーナビゲーションシステム54から車両の位置、進行方向、進路状況及び日時等のデータを入力し、道路情報提供システム55から道路の混雑状況等の道路状況に関するデータを入力する。この道路情報提供システム55としては、例えば、道路交通情報通信システムVICS(登録商標)がある。ここで、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55、着座センサ60、顔向センサ61が車両状態検出手段である。リクライニング位置調整スイッチ56は、この車両用シート装置を通常のシートリクライニング装置として使用するためのものであり、運転者(乗員)がリクライニング位置調整スイッチ56を操作することにより、制御装置50はリクライニング位置調整スイッチ56から操作信号を入力する。また、制御装置50には、右側リクライニング装置5の右側モータ17及び左側リクライニング装置6の左側モータ18が接続されている。制御装置50は右側モータ17、左側モータ18に制御信号を出力するとともに、右側モータ17、左側モータ18に設けられたエンコーダ等からフィードバック用の位置信号を入力する。
【0035】
以上の構成をした車両用シート装置における姿勢変更手順を図6に示す姿勢変更プログラムのフローチャートにより説明する。姿勢変更プログラムが実行されると、まず、ステップS1において車両状態を検出する。すなわち、制御装置50は車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、着座センサ60、顔向センサ61から各検出信号を入力するとともに、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55から必要な情報を入力する。
【0036】
ステップS2においては、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、着座センサ60、顔向センサ61から入力した各検出信号が所定の閾値を超えているか否かを判断する。この際、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55からの情報を含め、総合的に判断する。各検出信号が所定の閾値を超えている場合(YES)、姿勢変更の必要があると判断して、ステップS3に進む。また、各検出信号が所定の閾値を超えていない場合(NO)、姿勢変更の必要がないと判断して、姿勢変更プログラムの実行を修了する。なお、この姿勢変更プログラムは所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0037】
ステップS3においては、車両用シート1の姿勢を変更する。図7(A)に示すように、例えば左カーブの道路に対応し車両が左に旋回することにより矢印方向(右方向)に加速度が加わった場合、右側モータ17を正転させる制御信号を出力する。これにより、右側サイドフレーム13が前傾し、シートバック3の右側を全体に前傾させることができる。すなわち、シートバック3の右側部分の略全部をシートバック3の左側部分に対して車両前方に突出、或いは、変形させることができる。また、図7(B)に示すように、例えば右カーブの道路に対応し車両が右に旋回することにより矢印方向(左方向)に加速度が加わった場合、左側モータ18を正転させる制御信号を出力する。これにより、左側サイドフレーム14が前傾し、シートバック3の左側を全体に前傾させることができる。すなわち、シートバック3の右側部分の略全部をシートバック3の左側部分に対して車両前方に突出、或いは、変形させることができる。なお、図7(A)、(B)において、点線で示した位置がシートバック3の通常の位置である。
【0038】
ステップS4においては、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、着座センサ60、顔向センサ61から各検出信号を入力する。ステップS5においては、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、着座センサ60、顔向センサ61から入力した各検出信号が所定の閾値以下であるか否かを判断する。各検出信号が所定の閾値以下である場合(YES)、加速度は加わっていないと判断して、ステップS6に進む。また、各検出信号が所定の閾値より大きい場合(NO)、加速度はまだ加わっている判断して、ステップS4に戻る。
【0039】
ステップS6においては、右側モータ17又は左側モータ18を逆転させる制御信号を出力する。これにより、右側サイドフレーム13又は左側サイドフレーム14が後傾し、シートバック3は通常の位置に戻る。ステップS6の実行後、姿勢変更プログラムの実行を修了する。なお、図示しないプログラムにより、リクライニング位置調整スイッチ56から操作信号を入力した場合、両側モータ17、18を同時に同方向に回転させ、通常のシートリクライニング装置として使用することができるようにしている。
【0040】
実施形態1の車両用シート装置では、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、着座センサ60、顔向センサ61、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55により検出された車両状態、車両の操舵情報、運転者(乗員)の状態、車両の進路情報等に基づいて、制御装置50が右側モータ17又は左側モータ18を制御して右側リクライニング装置5及び左側リクライニング装置6を駆動することにより、シートバック3の横方向加速度の加わる右側又は左側を前傾させる。これにより、運転者(乗員)の上半身の移動を防止することができる上、目線が車両の内側又は外側(車両進行方向)へ向けられるため、運転者(乗員)は車両の進行方向を向くことができる。また、右側モータ17及び左側モータ18はシートバック3の右側及び左側を前傾させるだけであるため、車体に対する車両用シート1の位置が変化することはなく、ウインドーに体が接触したり、車両用シート1と車体との間に体が挟まれることがない。さらには、車両用シート1全体を左右に傾ける必要がないため、右側モータ17及び左側モータ18を小型、軽量にできるとともに製造コストの低廉化を実現することができる。したがって、この車両用シート装置によれば、車両状態が変化しても最適な運転姿勢を確保できるとともに、小型、軽量かつ安価である。
【0041】
また、この車両用シート装置においては、右側リクライニング装置5及び左側リクライニング装置6を同時に同方向に駆動することにより、通常のシートリクライニング装置として使用することができる。
【0042】
なお、この車両用シート装置においては、車両用シート1の横方向加速度の加わる側と反対側を後ろに傾けることもできる。また、横方向加速度の加わる側を前傾させ、横方向加速度の加わる側と反対側を後に傾けることもできる。これにより、加速度の加わる側のシートフレーム10を反対側のシートフレーム10に対して車両前方に突出させることができる。さらに、この車両用シート装置においては、左右のカーブが連続する道路を走行している場合等において、例え制御装置50による制御が遅れて車両用シート1の横方向加速度の加わる側と反対側を前傾したとしても、運転者(乗員)の下半身は移動しないため車両の運転を阻害することがない。
【0043】
実施形態2の車両用シート装置では、図8に示すように、シートバックフレーム11の左右の肩部11aにショルダーサポート40が設けられている。ショルダーサポート40は、モータ41、減速機構42、ロッド43及び支持部47を有している。モータ41は、図5に示すように、右側モータ41a(第4駆動装置)と左側モータ41b(第3駆動装置)とからなる。図8に示す減速機構42は、モータ41の回転運動を減速してロッド43の直線運動に変換する。ロッド43と支持部47とはジョイント44により連結され、支持部47はジョイント44回りに回動可能にされている。また、支持部47はジョイント45、46によりシートバックフレーム11の左右の肩部11aに連結され、支持部47はジョイント45、46回りに回動可能にされている。これにより、モータ41を正転又は逆転させてロッド43を前進又は後退させることにより、支持部47をシートバックフレーム11に対して揺動させることができる。その他、この車両用シート装置では、実施形態1の車両用シート装置と同一の構成については同一の記号を用いることとし、その説明を省略する。
【0044】
この車両用シート装置では、実施形態1の車両用シート装置と同様、図6に示す姿勢変更プログラムにより車両用シート1の姿勢を変更する。ただし、ステップS3においては、図9(A)に示すように、矢印方向(右方向)に加速度が加わった場合、右側モータ41aを正転させる制御信号を出力する。これにより、右側の支持部47が前方に突出し、シートバック3の右側の肩部3aを前傾させることができる。すなわち、シートバック3の右側部分の肩部3a(一部)を左側部分に対して車両前方に突出、或いは、変形させることができる。また、図9(B)に示すように、矢印方向(左方向)に加速度が加わった場合、左側モータ41bを正転させる制御信号を出力する。これにより、左側の支持部47が前方に突出し、シートバック3の左側の肩部3aを前傾させることができる。すなわち、シートバック3の左側部分の肩部3a(一部)を右側部分に対して車両前方に突出、或いは、変形させることができる。なお、図9(A)、(B)において、点線で示した位置がシートバック3の通常の位置である。また、ステップS6においては、右側モータ41a又は左側モータ41bを逆転させる制御信号を出力する。これにより、右側又は左側の支持部47が後傾し、シートバック3は通常の位置に戻る。
【0045】
実施形態2の車両用シート装置では、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53、着座センサ60、顔向センサ61、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55により検出された車両状態、車両の操舵情報、運転者(乗員)の状態、車両の進路情報等に基づいて、制御装置50が右側モータ41a又は左側モータ41bを制御して右側及び左側の支持部47を前方に突出することにより、シートバック3の横方向加速度の加わる右側又は左側の肩部3aを前傾させることができる。これにより、運転者(乗員)の上半身の移動を防止することができる上、目線が車両の内側又は外側(車両進行方向)へ向けられるため、運転者(乗員)は車両の進行方向を向くことができる。また、右側モータ41a及び左側モータ41bはシートバック3の右側及び左側の肩部3aを前傾させるだけであるため、車体に対する車両用シート1の位置が変化することはなく、ウインドーに体が接触したり、車両用シート1と車体との間に体が挟まれることがない。さらには、車両用シート1全体を左右に傾ける必要がないため、右側モータ41a及び左側モータ41bを小型、軽量にできるとともに製造コストの低廉化を実現することができる。したがって、実施形態2の車両用シート装置によれば、実施形態1の車両用シート装置と同様、車両状態が変化しても最適な運転姿勢を確保できるとともに、小型、軽量かつ安価である。その他の作用、効果は実施形態1の車両用シート装置と同様である。
【0046】
なお、本発明の車両用シート装置を実施形態1、2に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。また、本実施形態においては、車速センサ51、舵角センサ52、加速度センサ53に基づいて車両の状態を検出し、着座センサ60、顔向センサ61により乗員の状態を検出し、舵角センサ52により車両の操舵情報を検出し、カーナビゲーションシステム54、道路情報提供システム55により車両の進路情報を確保しているが、本発明はこれらに制限されるものではなく、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態1の車両用シート装置の概略図。
【図2】実施形態1の車両用シート装置に係り、シートフレームの斜視図。
【図3】実施形態1の車両用シート装置に係り、リクライニング装置の一部断面図。
【図4】実施形態1の車両用シート装置に係り、リクライニング装置の拡大図。
【図5】実施形態1、2の車両用シート装置に係り、電気的接続図。
【図6】実施形態1、2の車両用シート装置に係り、姿勢変更プログラムのフローチャート。
【図7】実施形態1の車両用シート装置に係り、車両用シート1の姿勢を示す模式図。
【図8】実施形態2の車両用シート装置に係り、シートフレームの一部拡大斜視図。
【図9】実施形態2の車両用シート装置に係り、車両用シート1の姿勢を示す模式図。
【符号の説明】
【0048】
1…車両用シート、11…シートバックフレーム、11a…肩部、13、14…サイドフレーム(13…右側サイドフレーム、14…左側サイドフレーム)、5、6、40…姿勢変更手段(5…右側リクライニング装置、6…左側リクライニング装置、40…ショルダーサポート)、18…第1駆動装置(左側モータ)、17…第2駆動装置(右側モータ)、41b…第3駆動装置(左側モータ)、41a…第4駆動装置(右側モータ)、51、52、53、54、55、60、61…車両状態検出手段(51…車速センサ、52…舵角センサ、53…加速度センサ、54…カーナビゲーションシステム、55…道路情報提供システム、60…着座センサ、61…顔向センサ)、50…制御手段(制御装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両状態を検出する車両状態検出手段と、車両用シートの姿勢を変更する姿勢変更手段と、前記車両状態検出手段により検出された車両状態に基づいて前記姿勢変更手段を制御する制御手段と、を備えた車両用シート装置において、
前記姿勢変更手段は、車両用シートの左側及び右側の全部または一部を前傾可能であることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1において、前記姿勢変更手段は、前記車両用シートの左右のサイドフレームにそれぞれ設けられ、別々に駆動可能なリクライニング装置であることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項3】
請求項1において、前記姿勢変更手段は、前記車両用シートのシートバックフレームの左右の肩部にそれぞれ設けられ、別々に駆動可能なショルダーサポートであることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項4】
乗員が着座するシートクッションと、
乗員の背中を支持するシートバックと、
前記シートバックの左右何れか一方部分の全部或いは一部を他方部分に対して車両前方に突出させる姿勢変更手段と、を備えた車両用シート。
【請求項5】
車両の状態、乗員の状態、車両の操舵情報、及び車両の進路情報のうちの少なくとも一つに応じて、シートの形状を変形させる姿勢変更手段を有する車両用シート。
【請求項6】
請求項5において、前記シートは乗員の背中を支持するシートバックを有し、前記姿勢変更手段は、前記シートバックの左右何れか一方部分の全部或いは一部を他方部分に対して車両前方に突出させることを特徴とする車両用シート。
【請求項7】
請求項6において、前記姿勢変更手段は、前記シートバックの左右骨格をそれぞれ形成し、車両の前後方向に独立して傾斜可能な左側シートバックフレーム及び右側シートバックフレームを備え、駆動装置により前記両シートバックフレームの少なくともいずれか一方が傾斜されることを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
請求項7において、前記駆動装置は、前記左側シートバックフレームを傾斜させる第1駆動装置と、前記右側シートバックフレームを傾斜させる第2駆動装置とを有することを特徴とする車両用シート。
【請求項9】
請求項7において、前記姿勢変更手段は、前記両シートバックフレームを両方とも傾斜させることによりシートリクライニング機能を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項10】
請求項6において、前記姿勢変更手段は、前記シートバックの上方部分に左右それぞれに配設された左側ショルダーサポート及び右側ショルダーサポートを有し、
駆動装置により前記両ショルダーサポートの少なくともいずれか一方が車両前方に突出されることを特徴とする車両用シート。
【請求項11】
請求項10において、前記駆動装置は、前記左側ショルダーサポートを突出させる第3駆動装置と、前記右側ショルダーサポートを突出させる第4駆動装置とを有することを特徴とする車両用シート。
【請求項12】
請求項4乃至11のいずれか1項において、前記姿勢変更手段は、乗員の目線を車両進行方向に向かせるために作動されることを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−223490(P2007−223490A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47837(P2006−47837)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】