説明

車両用シート

【課題】車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体の振幅が増加することを抑制できる。
【解決手段】本車両用シート10では、座席本体12は、不等長リンク機構22によってフロアパネル28に対して前後に傾動不能でかつ左右に傾動可能に連結されている。また、座席本体12は、不等長リンク機構22の長尺リンク部材36と車体側部材26とに連結されたゼンマイバネ46によってフロアパネル28に対する左右の傾動を抑制されており、ゼンマイバネ46が弾性変形することでフロアパネル28に対する左右の傾動を許容される。しかも、このゼンマイバネ46は、車両走行時に車体が捩り変形するときの車体の振動数帯域よりも低い振動数帯域で座席本体12が共振するようにその弾性力が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械用の座席では、サスペンションや弾性部材を介して機体に連結されたものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このような座席では、機体の振動が着座乗員に伝わることを抑制できる。
【特許文献1】特開平9−209406号公報
【特許文献2】実開平7−4152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、所謂ミニバン等の全高が高くかつバックドア用の開口部が大きい車両は、その構造上、所謂セダンタイプの車両に比べて車体の捩り剛性が低い。このため、このような車両が荒れた路面を高速で走行しているときなどには、車体が捩り変形を伴って振動することがある。このような場合、車体の床部は、座席が左右に傾くような傾斜を伴って左右に振動(変位)する。このため、座席の上部(ヘッドレスト)の左右の振幅は、車体床部からヘッドレストまでの高さと座席の傾斜角度との積の分が加算されて増加することになる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体の振幅が増加することを抑制できる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、乗員着座用の座席本体と、前記座席本体と車体床部との間に設けられ、前記座席本体を車体床部に対して前後に傾動不能でかつ左右に傾動可能に連結した連結機構と、前記座席本体と車体との間に設けられて前記座席本体の前記左右の傾動を抑制すると共に、弾性変形することで前記左右の傾動を許容する弾性部材と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両用シートでは、座席本体は、連結機構によって車体床部に対し前後に傾動不能でかつ左右に傾動可能に連結されている。また、座席本体は、車体との間に設けられた弾性部材によって車体床部に対する左右の傾動を抑制されており、弾性部材が弾性変形することで車体床部に対する左右の傾動を許容される。このため、例えば、車両走行時に車体が捩り変形するときの車体の振動数帯域よりも低い振動数帯域で座席本体が共振するように弾性部材の弾性力を設定しておけば、車体が捩り変形する車体の振動数帯域においては、座席本体が自身や着座乗員などに作用する慣性力によって弾性部材を弾性変形させ、車体床部に対してその傾斜方向と反対方向(車体床部の傾斜を相殺する方向)へ傾動する。したがって、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体の振幅が増加することを抑制できる。
【0007】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記連結機構は、前記座席本体を車体床部に対して左右に変位可能に連結すると共に、当該変位に伴って少なくとも前記座席本体の幅方向一端側を車体床部に対して接離移動させることで前記座席本体を車体床部に対して前記変位する側へ傾斜させることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車両用シートでは、車両走行時に車体が捩り変形し、車体床部が座席本体を左右に傾かせるような傾斜を伴って左右に振動(変位)した場合でも、弾性部材の弾性力が請求項1で説明したように設定されていれば、座席本体は自身や着座乗員などに作用する慣性力によって、車体床部に対しその変位方向と反対方向(車体床部の左右の変位を相殺する方向)へ変位する。またこのとき、座席本体の変位に伴って、連結機構が少なくとも座席本体の幅方向一端側を車体床部に対して接離移動させ、座席本体が上記変位側(車体床部の傾斜を相殺する方向)へ傾斜する。したがって、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体の振幅が増加することを一層効果的に抑制できる。
【0009】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記連結機構は、前記座席本体の幅方向他端側に設けられ、長手方向一端部が前記座席本体に回動可能に連結されると共に長手方向他端部が車体床部に回動可能に連結された短尺リンク部材と、前記短尺リンク部材よりも長尺に形成されて前記座席本体の幅方向一端側に設けられ、長手方向一端部が前記座席本体に回動可能に連結されると共に長手方向他端部が車体床部に回動可能に連結された長尺リンク部材とを有することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車両用シートでは、座席本体の幅方向他端側が短尺リンク部材を介して車体床部に連結されており、座席本体の幅方向一端側が短尺リンク部材よりも長尺な長尺リンク部材を介して車体床部に連結されている。このため、長尺リンク部材が起立する方向へ回動すると、座席本体の幅方向一端側が長尺リンク部材によって車体床部から離間されると共に、座席本体が短尺リンク部材及び長尺リンク部材に案内されて左右何れか一方へ変位する。また、長尺リンク部材が倒れる方向へ回動すると、座席本体の幅方向一端側が長尺リンク部材によって車体床部に接近されると共に、座席本体が短尺リンク部材及び長尺リンク部材に案内されて左右何れか他方へ変位する。したがって、連結機構を簡単な構成にすることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記弾性部材は、渦巻状又はコイル状に形成され、巻き方向一端部が前記座席本体又は車体床部に連結されると共に巻き方向他端部が前記短尺リンク部材又は前記長尺リンク部材に連結され、前記座席本体が車体床部に対して左右に傾動する際に巻き方向一端部と巻き方向他端部とが相対的に回転される回転ばねとされていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車両用シートでは、渦巻状又はコイル状に形成された回転ばねが短尺リンク部材又は長尺リンク部材の回動を抑制することで、座席本体の車体床部に対する左右の傾動が抑制される。また、回転ばねの巻き方向一端部と巻き方向他端部とが相対的に回転されることで(回転ばねが弾性変形することで)、座席本体の車体床部に対する左右の傾動が許容される。このように、弾性部材として回転ばねを用いた構成であるため、弾性部材の設置スペースの省スペース化を図ることができる。なお、回転ばねとしては、バネ性と減衰性を併せ持つゼンマイバネ等を用いることが好ましい。この場合、座席本体の振動を早期に収束させることが可能になる。
【0013】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、乗員着座用の座席本体と、前記座席本体を車体床部に対して水平方向に変位可能に連結すると共に、当該変位に伴って少なくとも前記座席本体の一端側を車体床部に対して接離移動させることで前記座席本体を車体床部に対して前記変位する側へ傾斜させる連結機構と、前記座席本体と車体との間に設けられて前記座席本体の前記変位を抑制すると共に、弾性変形することで前記変位を許容する弾性部材と、を有することを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の車両用シートでは、例えば、車両走行時に車体が捩り変形するときの車体の振動数帯域よりも低い振動数帯域で座席本体が共振するように弾性部材の弾性力を設定しておけば、車体が捩り変形する車体の振動数帯域においては、座席本体が自身や着座乗員などに作用する慣性力によって、車体床部に対しその振動方向(変位方向)と反対方向(車体床部の変位を相殺する方向)へ変位する。またこのとき、座席本体の変位に伴って、連結機構が少なくとも座席本体の一端側を車体床部に対して接離移動させ、座席本体が上記変位側(車体床部の傾斜を相殺する方向)へ傾斜する。したがって、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体の振幅が増加することを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、請求項1に記載の発明に係る車両用シートでは、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体の振幅が増加することを抑制できる。
【0016】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートでは、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体の振幅が増加することを一層効果的に抑制できる。
【0017】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートでは、連結機構を簡単な構成にすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートでは、弾性部材の設置スペースの省スペース化を図ることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートでは、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体の振幅が増加することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1の実施形態>
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両用シート10の構成が概略的な正面図にて示されている。なお、図中矢印UPは車両上方向を示し、矢印Wは車幅方向を示している。
【0021】
本第1の実施形態に係る車両用シート10は、全高(車高)が高く且つ車体後部にバックドア用の開口部が形成された車両(例えば、所謂ミニバンタイプの車両)の座席であり、図1に示されるように、車体の車幅方向中心線Sを介して左右両側にそれぞれ設置されている。
【0022】
これらの車両用シート10は、乗員着座用の座席本体12を備えている。座席本体12は、乗員の尻部を支持するシートクッション14と、このシートクッション14の後端部に連結され、乗員の背部を支持するシートバック16と、シートバック16の上端部に取り付けられたヘッドレスト18とを有している。
【0023】
シートクッション14の前端部の下側には、シートクッション14の前端部を車体床部20に連結するための連結機構としての不等長リンク機構22が設けられている。不等長リンク機構22は、シートクッション14の前端部の下面に固定され、座席本体12の一部を構成するシート側部材24を有している。シート側部材24は、棒状に形成されたものであり、長手方向が座席本体12の幅方向(本第1の実施形態では車幅方向と同じ)に沿う状態で配置されている。
【0024】
また、不等長リンク機構22は、シート側部材24の下方に配置された車体側部材26を有している。車体側部材26は、シート側部材24と同じ長さ寸法の棒状に形成されたものであり、長手方向が車幅方向に沿う状態で配置されている。シート側部材24の長手方向両端部(車幅方向両端部)は、車体床部20を構成するフロアパネル28から上方へ向けて立設された左右一対の脚部30、32の上端部に固定されている。なお、本第1の実施形態では、これらの脚部30、32及び車体側部材26は、車体床部20を構成している。
【0025】
さらに、不等長リンク機構22は、シート側部材24の車幅方向内側端部と車体側部材26の車幅方向内側端部とを連結する棒状の短尺リンク部材34、及び、シート側部材24の車幅方向外側端部と車体側部材26の車幅方向中間部とを連結する棒状の長尺リンク部材36を有している。
【0026】
短尺リンク部材34は、長手方向一端部(上端部)が連結軸38を介してシート側部材24の車幅方向内側端部に回動可能に連結されると共に、長手方向他端部(下端部)が連結軸40を介して車体側部材26の車幅方向内側端部に回動可能に連結されている。これらの連結軸38、40は、軸線方向が車体前後方向に沿って配置されており、短尺リンク部材34は、シート側部材24及び車体側部材26に対して車体前後方向に沿った軸線周りに回動可能とされている。
【0027】
また、長尺リンク部材36は、短尺リンク部材34よりも長尺に形成されており、長手方向一端部(上端部)が連結軸42を介してシート側部材24の車幅方向外側端部に回動可能に連結されると共に、長手方向他端部(下端部)が連結軸44を介して車体側部材26の車幅方向中間部に回動可能に連結されている。これらの連結軸42、44は、軸線方向が車体前後方向に沿って配置されており、長尺リンク部材36は、シート側部材24及び車体側部材26に対して車体前後方向に沿った軸線周りに回動可能とされている。
【0028】
この長尺リンク部材36は、シート側部材24が車体側部材26に対して平行に配置された状態(図1図示状態)では、上端部が下端部に対して車幅方向外側に配置されるように車体上下方向に対して所定角度(例えば、45度程度)傾斜するようになっている。また、この状態では、短尺リンク部材34は、車体上下方向に沿って配置されるようになっている。すなわち、本第1の実施形態に係る不等長リンク機構22は、左右非対称構造になっている。
【0029】
なお、図示はしないが、シートクッション14の後端部の下側には、上述した不等長リンク機構22と同様構成の不等長リンク機構22、及び、前述した脚部30、32と同様構成の脚部30、32が設けられており、シートクッション14の後端部は、これらの不等長リンク機構22及び脚部30、32を介してフロアパネル28に連結されている。
【0030】
ここで、図1に示される状態から、不等長リンク機構22の長尺リンク部材36が起立する方向へ回動すると、図2において車幅方向中心線Sの右側に配置された車両用シート10のように、座席本体12の車幅方向外側端部がフロアパネル28から離間される。これにより、座席本体12がフロアパネル28に対して車幅方向内側へ傾動し(座席本体12が車体上下方向に対して車幅方向内側へ傾斜し)、座席本体12の上部(ヘッドレスト18)が車幅方向内側へ変位する。しかもこのとき、座席本体12は、短尺リンク部材34及び長尺リンク部材36に案内されて車幅方向内側へ変位するため、この変位によって更にヘッドレスト18が車幅方向内側へ変位する。
【0031】
一方、図1に示される状態から、不等長リンク機構22の長尺リンク部材36が倒れる方向へ回動すると、図2において車幅方向中心線Sの左側に配置された車両用シート10のように、座席本体12の車幅方向外側がフロアパネル28に接近される。これにより、座席本体12がフロアパネル28に対して車幅方向外側へ傾動し(座席本体12が車体上下方向に対して車幅方向外側へ傾斜し)、座席本体12の上部(ヘッドレスト18)が車幅方向外側へ変位する。しかもこのとき、座席本体12は、短尺リンク部材34及び長尺リンク部材36に案内されて車幅方向外側へ変位するため、この変位によって更にヘッドレスト18が車幅方向外側へ変位する。
【0032】
なお、前述したように、不等長リンク機構22の短尺リンク部材34及び長尺リンク部材36は、軸線方向が車体前後方向に沿って配置された連結軸38、40、42、44によってシート側部材24及び車体側部材26に連結されている。このため、不等長リンク機構22は、座席本体12のフロアパネル28に対する車体前後方向の傾動を規制するようになっている。したがって、車両の加速時や減速時などに、座席本体12がフロアパネル28に対して不要に前後に傾動することを抑制できる。
【0033】
さらに、上記構成の不等長リンク機構22には、回転ばねとしてのゼンマイバネ46が取り付けられている。このゼンマイバネ46は、バネ性と減衰性を兼ね備えており、渦巻き方向一端部(外側端部)が車体側部材26に連結され、渦巻き方向他端部(内側端部)が長尺リンク部材36に連結されている。このため、長尺リンク部材36は、このゼンマイバネ46によって車体側部材26(フロアパネル28)に対する回動を抑制されており、通常は図1に示される中立位置に保持されるようになっている。
【0034】
ここで、本第1の実施形態では、ゼンマイバネ46の弾性力は、座席本体12に乗員が着座した状態で、座席本体12がフロアパネル28に対して不要に左右に傾動しない(長尺リンク部材36が車体側部材26に対して不要に回動しない)ように設定されている。また、ゼンマイバネ46の弾性力は、車両走行時に車体がせん断中心周りに捩り変形(せん断変形)するときの車体の振動数帯域よりも低い振動数帯域で座席本体12が共振するように設定されている。
【0035】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について説明する。
【0036】
上記構成の車両用シート10では、座席本体12は、不等長リンク機構22によってフロアパネル28に対して前後に傾動不能でかつ左右に傾動可能に連結されている。また、座席本体12は、不等長リンク機構22の長尺リンク部材36と車体側部材26とに連結されたゼンマイバネ46によってフロアパネル28に対する左右の傾動を抑制されており、ゼンマイバネ46が弾性変形することでフロアパネル28に対する左右の傾動を許容される。しかも、このゼンマイバネ46は、車両走行時に車体が捩り変形するときの車体の振動数帯域よりも低い振動数帯域で座席本体12が共振するようにその弾性力が設定されている。
【0037】
このため、車体が捩り変形する車体の振動数帯域においては、座席本体12が自身や着座乗員などに作用する慣性力によってゼンマイバネ46を弾性変形させ、フロアパネル28に対してその傾斜方向(図2の矢印A参照)と反対方向(フロアパネル28の傾斜を相殺する方向)へ傾動する。したがって、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体12(特に、ヘッドレスト18やシートバック16)の左右の振幅が増加することを抑制できる。
【0038】
すなわち、本第1の実施形態に係る車両のように、全高が高く且つ車体後部にバックドア用の開口部が形成された車両は、所謂セダンタイプの車両に比べて車体の捩り剛性が低いため、荒れた路面を高速で走行しているときなどには、図3に示されるように、車体100がせん断中心C周りの捩り変形を伴って左右に振動することがある。このとき、車体100のフロアパネル102は、座席104が左右に傾くような傾斜を伴って左右に振動する(図3の実線参照)。このため、座席104の上部の左右の振幅は、フロアパネル102の左右の変位による座席104の変位L1に、座席104の高さと座席104の傾斜角度θとの積の分(変位L2)が加算されて増加することになる。
【0039】
この点、本第1の実施形態では、上述のように座席本体12がフロアパネル28に対してその傾斜方向と反対方向へ傾動することで、上記加算分の変位L2を相殺することができるので、ヘッドレスト18(座席本体12の上部)の振幅を効果的に減少させることができる。
【0040】
しかも、本第1の実施形態では、上述のように座席本体12がフロアパネル28に対して傾動する際には、座席本体12が短尺リンク部材34及び長尺リンク部材36に案内されてフロアパネル28の振動方向(変位方向、図2の矢印B参照)と反対方向(フロアパネル28の左右の変位L1を相殺する方向)へ変位する。したがって、この変位によって更に座席本体12の振幅を減少させることができる。
【0041】
以上説明したように、本第1の実施形態では、車両走行時における車体の捩り変形に伴って、座席本体12の振幅が増加することを抑制できるので、乗員の乗り心地を良好にすることができる。
【0042】
しかも、本第1の実施形態では、座席本体12を車体床部20に連結する連結機構が、短尺リンク部材34及び長尺リンク部材36を備えた不等長リンク機構22とされている。このため、簡単な構成で座席本体12を車体床部20に対して左右に変位・傾斜させることができる。
【0043】
また、本第1の実施形態では、弾性部材としてゼンマイバネ46(回転ばね)が用いられているため、弾性部材の設置スペースの省スペース化を図ることができる。さらに、このゼンマイバネ46がバネ性のみならず減衰性も備えているため、座席本体12の振動を早期に収束させることができる。
【0044】
なお、上記第1の実施形態では、弾性部材としてゼンマイバネ46を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、弾性部材は、座席本体と車体との間に設けられて座席本体の車体床部に対する左右の傾動を抑制すると共に、弾性変形することで前記左右の傾動を許容するものであればよく、他の種類の回転ばねや、圧縮ばね又は引張りばね等を用いて構成してもよい。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0045】
図4には、本発明の第2の実施形態に係る車両用シート50の構成が概略的な正面図にて示されている。この車両用シート50は、前記第1の実施形態に係る車両用シート10と基本的に同様の構成とされているが、連結機構としての転がり機構51の構成が前記第1の実施形態に係る連結機構(不等長リンク機構22)と異なっている。この転がり機構51では、前記第1の実施形態に係る短尺リンク部材34及び長尺リンク部材36の代わりに、円形部材52及び楕円形部材54が設けられている。
【0046】
円形部材52は、円柱状に形成されて座席本体12の車幅方向内側に配置されており、軸線方向が車体前後方向に沿う状態でシート側部材24と車体側部材26との間に介在されている。また、楕円形部材54は、楕円柱状に形成されて座席本体12の車幅方向外側に配置されており、軸線方向が車体前後方向に沿う状態でシート側部材24と車体側部材26との間に介在されている。円形部材52及び楕円形部材54の各外周部は、シート側部材24及び車体側部材26に接触しており、これらの接触部分には滑り止め加工が施されている。
【0047】
なお、楕円形部材54には、前記第1の実施形態に係るゼンマイバネ46と同様構成の図示しないゼンマイバネの渦巻き方向一端部(内側端部)が連結されており、このゼンマイバネの渦巻き方向他端部(外側端部)は、車体側部材26に連結されている。このゼンマイバネは、楕円形部材54を図4に示される中立位置に保持している。
【0048】
ここで、この実施形態では、楕円形部材54が起立する方向へ回転すると、座席本体12の車幅方向外側端部がフロアパネル28から離間されると共に、座席本体12が円形部材52及び楕円形部材54に案内されて車幅方向内側へ変位する。また、楕円形部材54が倒れる方向へ回転すると、座席本体12の車幅方向外側端部がフロアパネル28に接近されると共に、座席本体12が円形部材52及び楕円形部材54に案内されて車幅方向外側へ変位する。したがって、座席本体12を前記第1の実施形態と同様に動作させることができる。
【0049】
なお、前記第1の実施形態及び上記第2の実施形態では、連結機構(不等長リンク機構22、転がり機構51)が、座席本体12をフロアパネル28に対して左右に変位可能に連結すると共に、当該変位に伴って座席本体12の車幅方向一端側を車体床部に対して接離移動させることで座席本体12をフロアパネル28に対して前記変位する側へ傾斜させる構成としたが、本発明はこれに限らず、連結機構は、座席本体を車体床部に対して前後に傾動不能でかつ左右に傾動可能に連結するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートの構成を示す概略的な正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートの構成を示し、座席本体が車体床部に対して傾斜した状態を説明するための図1に対応する正面図である。
【図3】車体がせん断中心周りに捩り変形した状態を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る車両用シートの構成を示す概略的な正面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 車両用シート
12 座席本体
20 車体床部
22 不等長リンク機構(連結機構)
34 短尺リンク部材
36 長尺リンク部材
46 ゼンマイバネ(回転ばね、弾性部材)
50 車両用シート
51 転がり機構(連結機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員着座用の座席本体と、
前記座席本体と車体床部との間に設けられ、前記座席本体を車体床部に対して前後に傾動不能でかつ左右に傾動可能に連結した連結機構と、
前記座席本体と車体との間に設けられて前記座席本体の前記左右の傾動を抑制すると共に、弾性変形することで前記左右の傾動を許容する弾性部材と、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記連結機構は、前記座席本体を車体床部に対して左右に変位可能に連結すると共に、当該変位に伴って少なくとも前記座席本体の幅方向一端側を車体床部に対して接離移動させることで前記座席本体を車体床部に対して前記変位する側へ傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記連結機構は、前記座席本体の幅方向他端側に設けられ、長手方向一端部が前記座席本体に回動可能に連結されると共に長手方向他端部が車体床部に回動可能に連結された短尺リンク部材と、前記短尺リンク部材よりも長尺に形成されて前記座席本体の幅方向一端側に設けられ、長手方向一端部が前記座席本体に回動可能に連結されると共に長手方向他端部が車体床部に回動可能に連結された長尺リンク部材とを有することを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記弾性部材は、渦巻状又はコイル状に形成され、巻き方向一端部が前記座席本体又は車体床部に連結されると共に巻き方向他端部が前記短尺リンク部材又は前記長尺リンク部材に連結され、前記座席本体が車体床部に対して左右に傾動する際に巻き方向一端部と巻き方向他端部とが相対的に回転される回転ばねとされていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
乗員着座用の座席本体と、
前記座席本体を車体床部に対して水平方向に変位可能に連結すると共に、当該変位に伴って少なくとも前記座席本体の一端側を車体床部に対して接離移動させることで前記座席本体を車体床部に対して前記変位する側へ傾斜させる連結機構と、
前記座席本体と車体との間に設けられて前記座席本体の前記変位を抑制すると共に、弾性変形することで前記変位を許容する弾性部材と、
を有する車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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